JP2015147885A - 湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂、湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の製造方法及び湿式摩擦材 - Google Patents

湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂、湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の製造方法及び湿式摩擦材 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、耐久性に優れる湿式摩擦材を提供することである。【解決手段】 湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂であって、前記レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量が100以上500以下であり、前記レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造に、メチロール基とアルコキシメチル基を有することを特徴とする湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂。フェノール類とアルデヒド類を塩基性条件下で反応させてメチロール基を有する反応生成物を得る工程、得られた前記反応生成物とアルコール類を反応させて前記メチロール基の一部をアルキルエーテル化する工程を含むことを特徴とする本発明に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の製造方法。 繊維基材に、本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂を含侵してなることを特徴とする湿式摩擦材。【選択図】 なし

Description

本発明は、湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂、湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の製造方法及び湿式摩擦材に関するものである。
熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂は、主に成形品の基材となる材料同士を結合させるバインダーとして広く用いられ、優れた機械的特性や電気的特性、接着性を有することから、様々な分野で使用されている。特に近年、自動車、鉄道車両などにおけるフェノール樹脂をバインダーとして使用した摩擦材の使用量が増加している。
その中でも湿式摩擦材と呼ばれる、オートマチック車などの自動変速機などにおいて使用される摩擦材には、一般的に液状レゾール型フェノール樹脂が用いられている。この湿式摩擦材の耐久性を向上させる為には、湿式摩擦材が微細で均一な気孔を有していることが要求される。多孔質の湿式摩擦材は、内部で多量のオートマチック・トランスミッション・フルード(ATF)を保持することができる。そして、しゅう動する際には湿式摩擦材が数μm〜数10μmの圧縮変化を起こすことで内部に保持しているATFを排出し、その解放による復元に伴って再度ATFを吸収するという特徴を有している。これにより、しゅう動の際に高温となったしゅう動面の温度を下げ、内部蓄熱を防止する冷却効果が発生する。この冷却効果は、湿式摩擦材の耐久性に大きく関係している。そこで、湿式摩擦材の耐久性を向上するために、湿式摩擦材はより均一で、高気孔率な状態が要求される。
通常、摩擦材の気孔率だけに着目すると、摩擦材の樹脂の割合を減らすことで、気孔率を高めることができるが、バインダーである樹脂の割合を減らすことで摩擦材強度が低下し、結果として耐久性が劣る摩擦材となる場合があるため、樹脂量低減で気孔率を高める手法には限界がある。
また、フェノール樹脂は、耐熱性に優れるアラルキル変性やアルキルベンゼン変性などが検討され、一部実用化されている。しかしながら、これらの変性をした場合、樹脂の基材への含浸性に劣り、均一で高い気孔を形成できないため、ATFによる冷却効果が低下し、結果として十分な耐久性を発現できない場合がある。
そこで、上記要求を満たす方法として、水溶性のフェノール樹脂で構成されていることを特徴とするものが検討されている(例えば、特許文献1参照)。水溶媒のフェノール樹脂を使用することで、樹脂のマイグレーションを抑制して、摩擦材の厚さ方向で樹脂の存在比率の分布を均一にすることができるものである。しかしながら、水溶性のフェノール樹脂は極性が高くなっているため、基材の主成分であり極性が低いアラミド繊維への濡れ性が低くなり、繊維間を結合して樹脂が基材を補強するバインダー効果が低下することで機械的強度が低下する傾向にあり、結果として、耐久性が必ずしも満足するものではなかった。摩擦材の耐久性を向上させる方法について更なる改善が強く求められていた。
特許第4005350号公報
本発明の目的は、耐久性に優れる湿式摩擦材を提供することである。
このような目的は、下記[1]〜[6]項に記載の本発明により達成される。
[1]湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂であって、上記レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量が100以上500以下であり、上記レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造に、メチロール基とアルコキシメチル基を有することを特徴とするレゾール型フェノール樹脂。
[2]アセチル化処理した上記湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂を、重アセトン溶媒で測定した場合のH−NMRスペクトルにおける、シフト値が4.9ppm以上5.5ppm以下であるピークの積分値を(a)、シフト値が4.3ppm以上4.9ppm未満であるピークの積分値を(b)、シフト値が3.8ppm以上4.3ppm未満であるピークの積分値を(c)としたとき、(b)/{(a)+(b)+(c)}が0.1以上0.7以下である上記[1]項に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂。
[3]上記アルコキシメチル基が、炭素数2以上6以下のアルコキシメチル基である上記[1]又は[2]項に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂。
[4]上記アルコキシメチル基が、n−ブトキシメチル基、iso−ブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基から選ばれるブトキシメチル基である上記[1]ないし[3]項のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂。
[5]フェノール類とアルデヒド類を塩基性条件下で反応させてメチロール基を有する反応生成物を得る工程、得られた上記反応生成物とアルコール類を反応させて上記メチロール基の一部をアルキルエーテル化する工程を含むことを特徴とする上記[1]ないし[4]項のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
[6]繊維基材に、上記[1]から[4]項のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂を含侵してなることを特徴とする湿式摩擦材。
本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂をバインダーに用いた場合、摩擦材の引張り強さを低下させることなく、気孔率が高く、繊維基材への油浸透性に優れ、耐久性に優れた湿式摩擦材を得ることができる。
本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂は、上記レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量が100以上500以下であり、上記レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造に、メチロール基とアルコキシメチル基を有することを特徴とする。これにより、湿式摩擦材用樹脂の繊維基材への含浸性を向上し、湿式摩擦材の気孔を均一にし、かつ気孔率を高めることができる。また、基材の主成分であるアラミド繊維などの繊維基材への濡れ性が高くなるため、バインダー効果が高くなり耐久性も向上する。
また、本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の製造方法は、フェノール類とアルデヒド類を塩基性条件下で反応させてメチロール基を有する反応生成物を得る工程、得られた上記反応生成物とアルコール類を反応させて上記メチロール基の一部をアルキルエーテル化する工程を含むことを特徴とする。この製造方法は、湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂を低コストで製造することができ、得られる湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂は含浸性、繊維基材との濡れ性が優れる。
さらに、本発明の湿式摩擦材は、繊維基材に、本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂を含侵してなることを特徴とする。これにより、湿式摩擦材の引張り強さを低下させることなく、気孔率が高く、耐久性に優れた湿式摩擦材を得ることができる。
以下に、本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂、湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の製造方法及び湿式摩擦材について詳細に説明する。
まず、本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂について説明する。
従来、湿式摩擦材用のフェノール樹脂は、重量平均分子量が500より大きく1200以下のアルコキシメチル基を有さないレゾール型フェノール樹脂が使用されている。このようなアルコキシメチル基を有さないレゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量が500より小さい場合、樹脂中に残存するメチロール基の量が多くなり、極性が高くなることで、繊維基材であるアラミド繊維との濡れ性が劣り、これを使用した湿式摩擦材の耐久性が改良されず好ましくない。また重量平均分子量が1200より大きい場合は、繊維基材への含浸性が低下し、繊維基材との密着性が低下して、最終的に複合材である湿式摩擦材としての耐久性が改良されず好ましくない。
本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂は、その重量平均分子量が100以上500以下であり、かつ、レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造に、メチロール基とアルコキシメチル基を有するレゾール型フェノール樹脂である。湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量を500以下とすることで、樹脂が繊維の隙間に浸透することが容易となり、さらにレゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造にメチロール基とアルコキシメチル基を有することで、アラミド繊維などの繊維基材との濡れ性の低下を抑え、繊維基材との密着性を向上させる効果が得られる。
本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、100以上500以下であり、さらに好ましくは200以上400以下を用いることができる。この範囲のとき、湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂が繊維基材の繊維の隙間に浸透し易くなり、含侵性が向上する。
ここで、本発明のレゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めることができる。検量線はポリスチレン標準物質を用いて作成したものを使用でき、GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で測定できる。装置は、本体:東ソー製HLC−8020、分析用カラム:東ソー製TSKgelG1000HXL 1本、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、を使用できる。
本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造にメチロール基とアルコキシメチル基を有する。レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造にメチロール基とアルコキシメチル基を有するとは、1つないし複数のレゾール型フェノール樹脂の高分子鎖中にメチロール基とアルコキシメチル基を有することをいう。レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造に対するメチロール基とアルコキシメチル基の結合位置は、レゾール型フェノール樹脂のフェノール環の2、4、6位が挙げられる。
レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造にメチロール基(−CHOH)とアルコキシメチル基(−OCH)を有することを確認する方法は、例えば、プロトン核磁気共鳴分光法(H−NMR)、赤外分光法などが挙げられる。H−NMRにより確認する方法として、例えば、アセチル化処理をしてメチロール基をアセチルメチル基(−CHOC(O)CH)に置換した樹脂をフラスコの中に入れて、フラスコに重アセトン、重クロロホルム、重水などの重溶媒で溶解させ、樹脂溶解液をNMR用試験管へ入れ、H−NMR装置(JEOL社製、共鳴周波数300MHz)によりH−NMRスペクトルを得て、シフト値が4.9ppm以上5.5ppm以下にあるアセチルメチル基中のメチレン基(−CH−OC(O)CH)由来のピークと、シフト値が4.3ppm以上4.9ppm未満であるアルコキシメチル基中のメチレン基(−CH−OR)由来のピークが存在することを確認する方法が挙げられる。また、シフト値が3.8ppm以上4.3ppm未満であるピークはフェニレン基(−Ph−)間のメチレン基(−Ph−CH−Ph−)に対応するシグナルである。
本発明のレゾール型フェノール樹脂は、1つないし複数のレゾール型フェノール樹脂の高分子鎖中にメチロール基とアルコキシメチル基を有するため、メチロール基とアルコキシル基の割合が存在し、その割合によっては樹脂の硬化性や繊維基材の濡れ性をより優れたものとすることができる。すなわち、アセチル化処理した本発明の湿式摩擦用レゾール型フェノール樹脂を、重アセトン溶媒で測定した場合のH−NMRスペクトルにおける、シフト値が4.9ppm以上5.5ppm以下であるピークの積分値を(a)、シフト値が4.3ppm以上4.9ppm未満であるピークの積分値を(b)、シフト値が3.8ppm以上4.3ppm未満であるピークの積分値を(c)としたとき、(b)/{(a)+(b)+(c)}が0.1以上0.7以下であることが好ましく、0.2以上0.5以下がさらに好ましい。(b)/{(a)+(b)+(c)}が上記範囲にあるということは、レゾール型フェノール樹脂の全ての置換基に対して、アルコキシメチル基中のメチレン基(−CH−OR)の割合が適当な範囲にあることを表す。この範囲のとき、レゾール型フェノール樹脂の硬化性を維持しつつ、レゾール型フェノール樹脂の極性の低下によるアラミド繊維などの繊維基材への濡れ性が向上する。
アセチル化処理は、NMR測定時におけるメチロール基に対応するメチレン基のシグナルとアルコキシメチル基に対応するメチレン基のシグナルを分離するため、メチロール基に対応する水酸基をアセチル化させ、メチロール基(−CHOH)をアセチルメチル基(−CHOC(O)CH)に変化させる処理である。また、水酸基はシフト値が測定の度に変化するため、正確な分析のために行う。アセチル化処理の方法は、特に限定はないが、下記の方法が挙げられる。フェノール樹脂を、シャーレ上に広げて真空乾燥機で脱水及び脱溶剤を行い、得られたフェノール樹脂をフラスコの中に入れて、ピペットでピリジン、無水酢酸をいれて栓をして樹脂を溶解させ、氷冷しながら、三角フラスコの栓をシールして、回りをアルミ箔で覆って光をカットして24時間放置した後、純水中にフラスコの内容物を入れる。次いで、ろ紙を用いて沈殿物を取り出し、ろ紙上で沈殿物を純水でよく洗浄し、最後に沈殿物をアセトンに溶かして、フラスコに入れて、真空乾燥機で、室温で減圧を行い、溶剤、水分を除去して、樹脂のアセチル化を行うことができる。
本発明の湿式摩擦用レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造に有するアルコキシメチル基は、特に限定されないが、炭素数2以上6以下を含むアルコキシメチル基であることが好ましく、さらに炭素数2以上5以下を含むアルコキシメチル基であることが好ましい。この範囲のとき、アラミド繊維等の繊維基材との密着性が向上する。なお炭素数2以上6以下を含むアルコキシメチル基とは、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、iso−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、iso−ブトキシエチル基、sec−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、ペントキシメチル基、エトキシエトキシメチル基などが挙げられる。また、アルコキシメチル基は、n−ブトキシメチル基、iso−ブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基から選ばれるアルコキシメチル基であることが好ましい。これより、アルキルエーテル化する工程により生成する水と得られるレゾール型フェノール樹脂の分離が容易であり、さらに、アルキルエーテル化に用いられるアルコール類の沸点が十分に高く、アルキルエーテル化する工程の反応温度を高くすることできるため、容易にメチロール基をエーテル基とすることができ、より安価に生産でき、基材への含浸性、繊維への濡れ性が向上する。
本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂においては、樹脂を希釈するために有機溶媒を用いることができる。希釈に用いられる有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒及びこれらの混合物を用いることができる。
次に、本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の製造方法について説明する。
本発明の湿式用摩擦材用のレゾール型フェノール樹脂を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、フェノール類とアルデヒド類を塩基性条件下で反応させてメチロール基を有する反応生成物を得る工程(第一工程)、得られた反応生成物とアルコール類を反応させてメチロール基の一部をアルキルエーテル化する工程(第二工程)を含む方法が挙げられる。第二工程では、酸性条件下でメチロール基はアルコールと反応しやすいため、所望により、硫酸水溶液、塩酸水溶液などの無機酸性水溶液または、パラトルエンスルホン酸などの有機酸性水溶液を用いられ、安価で酸性度が強いという観点から硫酸水溶液が好適に用いることができる。また、第二工程の反応温度は、使用するアルコール類が蒸発しない温度であることが好ましく、これに限らないが60℃以上120℃以下が好ましい。また、第二工程では反応により副生成物として水が生成するので、反応を促進させるため、100℃以上110℃以下で脱水しながら反応させることがさらに好ましい。
ここで用いられるフェノール類としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールなどのキシレノール類、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノールなどのエチルフェノール類、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノールなどのブチルフェノール類、p−tert−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノールなどのアルキルフェノール類、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノールなどのハロゲン化フェノール類、p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノールなどの1価フェノール置換体、及び、1−ナフトール、2−ナフトールなどの1価のフェノール類、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシンなどの多価フェノール類などが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。これらのフェノール類の中でも、フェノール、クレゾール類、から選ばれるものが好ましい。これにより、本発明のフェノール樹脂を用いた湿式摩擦材において、アラミド繊維などの繊維基材への濡れ性を高めることができる
また、アルデヒド類としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒドなどが挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。これらのアルデヒド類の中でも、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドから選ばれるものが好ましい。これにより、本発明のフェノール樹脂を用いた湿式摩擦材において、アラミド繊維などの繊維基材への濡れ性を高めることができる。
また、アルコール類としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノールなどが挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。これらのアルコール類の中でも、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールがより好ましい。これにより、反応させるアルコール類の沸点が十分に高いため、アルコキシメチル化する工程の反応温度を高くすることができ、アルコキメチル化が進行しやすくなり、原料であるアルコール類安価であるため、低コストの樹脂を生産するこができる。
次に、本発明の湿式摩擦材について説明する。
本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂を湿式摩擦材に用いる場合は、繊維基材に、本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂を含侵してなる。これにより、得られた湿式摩擦材は、耐熱性、硬化性など、フェノール樹脂の優れた特性を有し、かつ、耐久性にも優れた湿式摩擦材を得ることができる。
本発明の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂を含浸する繊維基材としては、特に限定されないが、天然パルプ繊維、リンターパルプ等の天然繊維、ガラス繊維等の金属繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、アラミド繊維、フェノール繊維等の化学繊維などの繊維類を単独又は2種以上使用した基材を用いることができる。これらの中で、摩擦特性、耐久性の観点から、アラミド繊維を主成分として繊維基材に使用することが好ましい。
本発明の湿式摩擦材は、所望により、カシューダスト等の摩擦調整剤、珪藻土等の無機フィラーを充填した紙基材を使用することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ここに記載されている「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
(実施例1)
(1)レゾール型フェノール樹脂1の製造
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール1000部、37%ホルマリン水溶液900部、トリエチルアミンを50部添加し、80℃に加熱昇温させ1時間撹拌し反応させた。その後、25%硫酸水溶液を125部入れた。その後、91kPaの減圧下で脱水を行い系内の温度が65℃に達したところで、n−ブタノール600部を投入し、110℃で脱水しながら還流反応を3時間反応させて、冷却をし、不揮発分40%のレゾール型フェノール樹脂1を1600部得た。
(実施例2)
n−ブタノール600部をエタノール600部とした以外は実施例1と同様の方法で実施し、液状レゾール型フェノール樹脂2を1600部得た。
(比較例1)
フェノール1000部、37%ホルマリン水溶液900部、トリエチルアミンを50部添加した後の反応温度を100℃で3時間反応させた後、n−ブタノールを投入せず、そのまま冷却をし、液状レゾール型フェノール樹脂3を1200部得た。
(比較例2)
91kPaの減圧下で脱水を行い系内の温度が65℃に達したところで、n−ブタノールを投入せず、そのまま冷却して取り出した以外は実施例1と同様の方法で実施し、液状レゾール型フェノール樹脂4を1200部得た。
(湿式摩擦材の試験片作製方法)
上述の実施例および比較例より得られたレゾール型フェノール樹脂にメタノールを添加して、レゾール型フェノール樹脂の重量パーセント濃度が30%になるレゾール型フェノール樹脂調整液を作製した。次に、それぞれの重量パーセント濃度がアラミド繊維40%、天然パルプ繊維30%及び珪藻土30%である混合物を水中に分散させて、スラリー液を作製し、このスラリー液を用いて抄造した紙を乾燥し、乾燥した抄造紙を上記調整したレゾール型フェノール樹脂調整液に30秒間浸した後、常温で30分間風乾、80℃で30分間乾燥後、200℃で30分間焼成し、ペーパー湿式摩擦材相当の試験片を作製した。
各実施例及び比較例により得られたレゾール型フェノール樹脂及び湿式摩擦材について、次の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 2015147885
(レゾール型フェノール樹脂の評価方法)
表1に記載の各評価について、レゾール型フェノール樹脂評価方法を以下に示す。
(1)重量平均分子量
上述により得られた湿式摩擦用レゾール型フェノール樹脂をテトラヒドロフランに溶解させ、GPC測定した。検量線はポリスチレン標準物質を用いて作成したものを使用でき、GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で測定した。装置は、本体:東ソー製HLC−8020、分析用カラム:東ソー製TSKgelG1000HXL 1本、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、を使用した。
(2)H−NMR
上述により得られた湿式摩擦用レゾール型フェノール樹脂を、シャーレ上に広げて真空乾燥機で、室温で脱水、脱溶剤して、脱水、脱溶剤した樹脂2gを50ml三角共栓フラスコの中に入れて、ピペットでピリジン10ml、無水酢酸10mlをいれて栓をして樹脂を溶解させた。氷冷しながら、三角フラスコの栓をシールして、回りをアルミ箔で覆って光をカットして24時間放置した後、200mlの純水中に三角フラスコ内容物を入れた。ろ紙を用いて沈殿物を取り出し、ろ紙上で沈殿物を純水でよく洗浄した。沈殿物をアセトンに溶かして、ナス型フラスコに入れて、真空乾燥機で、室温で減圧を行い、溶剤、水分を除去して、アセチル化した樹脂を得た。アセチル化した樹脂を重アセトン溶媒で溶解させ、H−NMR装置(JEOL社製、共鳴周波数300MHz)を用いてH−NMRスペクトルを測定した。シフト値が4.9ppm以上5.5ppm以下であるピークの積分値を(a)、シフト値が4.3ppm以上4.9ppm未満であるピークの積分値(b)、シフト値が3.8ppm以上4.3ppm未満であるピークの積分値(c)とし、(b)/{(a)+(b)+(c)}の値を算出した。
(湿式摩擦材の評価方法)
表1に記載の各評価について、湿式摩擦材の評価方法を以下に示す。
(3)油浸透性
オートマチック・トランスミッション・フルード(ATF、TOYOTA純正AUTO FLUID D−2GMタイプ)4μlを得られた湿式摩擦材の上面に滴下し、湿式摩擦材の表面にATFが接触してから、湿式摩擦材の表面からATFが摩擦材の中に浸透し、湿式摩擦材の表面からATFの液滴が消えるまでの時間を計測した。なお、油浸透時間が短いほど、湿式摩擦材の気孔率が高くなっていると考えられ、湿式摩擦材の耐久性が良好なものとなる。
(4)引張り強さ
得られた湿式摩擦材について、JIS P 8113「紙及び板紙−引張特性の試験方法−」に準拠して、引張り強さを測定した。なお、含浸紙の引張り強さは、湿式摩擦材の耐久性と相関があり、値が高い方が湿式摩擦材の耐久性が良好なものとなる。
表1に記載されている評価結果より、以下のことがわかる。
実施例1および2は、いずれも、レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量が100以上500以下であり、レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造に、メチロール基とアルコキシメチル基を有するレゾール型フェノール樹脂であり、該レゾール型フェノール樹脂を用いて作製した湿式摩擦材は油浸透性および引張強さに優れる。
一方、比較例1、2は、いずれも、レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造に、アルコキシメチル基を有さないレゾール型フェノール樹脂であり、該レゾール型フェノール樹脂を用いて作製した湿式摩擦材について、いずれも、油浸透性および引張強さの優れた湿式摩擦材を得ることができなかった。
したがって、本発明で特定したレゾール型フェノール樹脂を用いることにより、引張り強さを低下させることなく、気孔率が高く、繊維基材への油浸透性に優れ、耐久性に優れた湿式摩擦材を得ることができることがわかる。

本発明で得られた湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂及び湿式摩擦材は、耐熱性、硬化性など、フェノール樹脂の優れた特性を有し、かつ、強度、基材との密着性に優れた硬化物を得られるものであるため、例えば、ペーパークラッチフェーシングなどの湿式摩擦材に好適に用いることができるものである。

Claims (6)

  1. 湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂であって、
    前記レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量が100以上500以下であり、
    前記レゾール型フェノール樹脂を構成する化学構造に、メチロール基とアルコキシメチル基を有することを特徴とする湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂。
  2. アセチル化処理した前記湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂を、重アセトン溶媒で測定した場合のH−NMRスペクトルにおいて、シフト値が4.9ppm以上5.5ppm以下であるピークの積分値を(a)、シフト値が4.3ppm以上4.9ppm未満であるピークの積分値を(b)、シフト値が3.8ppm以上4.3ppm未満であるピークの積分値を(c)としたとき、(b)/{(a)+(b)+(c)}が0.1以上0.7以下である請求項1に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂。
  3. 前記アルコキシメチル基が、炭素数2以上6以下のアルコキシメチル基である請求項1又は2に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂。
  4. 前記アルコキシメチル基が、n−ブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、iso−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基から選ばれるブトキシメチル基である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂。
  5. フェノール類とアルデヒド類を塩基性条件下で反応させてメチロール基を有する反応生成物を得る工程、
    得られた前記反応生成物とアルコール類を反応させて前記メチロール基の一部をアルキルエーテル化する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
  6. 繊維基材に、請求項1から4のいずれか1項に記載の湿式摩擦材用レゾール型フェノール樹脂を含侵してなることを特徴とする湿式摩擦材。
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