JP2016188333A - 液状フェノール樹脂組成物及び湿式摩擦材 - Google Patents
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Abstract
【課題】摩擦材に高温負荷がかかった際の耐久性に優れる湿式摩擦材を得ることができ、硬化性に優れた、液状フェノール樹脂樹脂組成物を提供すること。【解決手段】本発明の液状フェノール樹脂組成物は、含浸用に用いられる液状フェノール樹脂組成物であって、レゾール型フェノール樹脂(A)とアラルキルフェノール樹脂(B)とを含んで構成され、すべての芳香環に対する、水酸基を有さない芳香環のモル比率が3%以上9%以下であることを特徴とする。また、本発明の湿式摩擦材は、繊維基材に、本発明の液状フェノール樹脂組成物を含浸してなることを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、液状フェノール樹脂組成物及び湿式摩擦材に関するものである。
熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂は、主に成形品の基材となる材料同士を結合させるバインダーとして広く用いられ、優れた機械的特性や電気的特性、接着性を有することから、様々な分野で使用されている。特に近年、自動車、鉄道車両などにおけるフェノール樹脂をバインダーとして使用した摩擦材の使用量が増加している。
その中でも湿式摩擦材と呼ばれる、オートマチック車等の自動変速機等において使用される摩擦材には、一般的にレゾール型液状フェノール樹脂が用いられる。その湿式摩擦材用フェノール樹脂に対する要求特性は年々高まっており、特に近年はエネルギー、環境問題による低燃費指向から自動変速機の小型軽量化が進んでおり、湿式摩擦材にも小径化、枚数低減が求められている。これにより従来の湿式摩擦材ではトルク容量が不足するため、これを補うために押し付け荷重を大きくすると、摩擦熱が増大して熱劣化による湿式摩擦材の耐久サイクル数低下が生じてしまう。したがって、高面圧下における湿式摩擦材の耐久サイクル数の向上が強く求められており、その解決のために湿式摩擦材の耐熱性向上が必須である。湿式摩擦材の耐熱性向上のためには、湿式摩擦材に使用される繊維基材の中で、耐熱性が良好なアラミド繊維の使用比率を上げて耐熱性を向上させる検討もなされているが、同時にバインダーであるフェノール樹脂の耐熱性向上も強く求められている。
バインダーの耐熱性向上のため、ビスマレイミドなどの高耐熱樹脂の適用も検討されているが、硬化速度が遅く、安定した摩擦係数が得られなかったり、樹脂の粘度が高いため繊維基材への含浸性が低下し、十分な結合力を発揮できずに湿式摩擦材としての耐久サイクル数が低下したりするなどの問題がある。そこで上記問題を解決する方法としてp−キシリレンハライドまたはp−キシリレンアルコール誘導体で変性された湿式摩擦材用液状フェノール樹脂が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
上記のような変性フェノール樹脂を使用することで、高温時に酸化を受けやすいフェノール性水酸基の濃度が低くなり、樹脂硬化物の加熱減量で評価される耐熱性が向上できるものであった。しかしながらこのような変性フェノール樹脂は、硬化性がよいとは言えず、また近年増長する耐熱性向上の要求に対しては、耐熱性の向上が十分とはいえなかった。本発明の目的は、高面圧時の耐久性、耐熱性に優れる湿式摩擦材を得ることができ、硬化性に優れる液状フェノール樹脂組成物を提供することである。
このような目的は、下記[1]〜[3]項に記載の本発明により達成される。
[1] 含浸用に用いられる液状フェノール樹脂組成物であって、レゾール型フェノール樹脂(A)とアラルキルフェノール樹脂(B)とを含んで構成されることを特徴とする液状フェノール樹脂組成物。
[2] [1]に記載の液状フェノール樹脂組成物において、すべての芳香環に対する、水酸基を有さない芳香環のモル比率が3%以上9%以下である液状フェノール樹脂組成物。
[3] 繊維基材に、[1]または[2]に記載の液状フェノール樹脂組成物を含浸してなることを特徴とする湿式摩擦材。
[1] 含浸用に用いられる液状フェノール樹脂組成物であって、レゾール型フェノール樹脂(A)とアラルキルフェノール樹脂(B)とを含んで構成されることを特徴とする液状フェノール樹脂組成物。
[2] [1]に記載の液状フェノール樹脂組成物において、すべての芳香環に対する、水酸基を有さない芳香環のモル比率が3%以上9%以下である液状フェノール樹脂組成物。
[3] 繊維基材に、[1]または[2]に記載の液状フェノール樹脂組成物を含浸してなることを特徴とする湿式摩擦材。
本発明の液状フェノール樹脂組成物は硬化性に優れており、本発明の液状フェノール樹脂組成物を用いることにより、高面圧時の耐久性、耐熱性に優れた湿式摩擦材を得ることができる。
本発明の液状フェノール樹脂組成物は、繊維基材に含浸して用いられる液状フェフェノール樹脂組成物であって、レゾール型フェノール樹脂(A)とアラルキルフェノール樹脂(B)とを、含んで構成されることを特徴とする。レゾール型フェノール樹脂を含むことで良好な硬化性を保つことができ、アラルキルフェノール樹脂を含むことで高温時に酸化を受けやすいフェノール性水酸基の濃度を低くすることができ、良好な耐熱性を示すことができる。また本発明の湿式摩擦材は繊維基材に、本発明の液状フェノール樹脂組成物を含浸してなることを特徴とする。これにより硬化性に優れ、高面圧時の耐久性に優れる湿式摩擦材を得ることができる。以下に、本発明の液状フェノール樹脂組成物、及び湿式摩擦材について詳細に説明するが、これらは望ましい実施形態の一例を示すものである。
まず、本発明の液状フェノール樹脂組成物について説明する。本発明の液状フェノール樹脂組成物は、繊維基材に含浸して用いられる液状フェフェノール樹脂組成物であって、レゾール型フェノール樹脂(A)とアラルキルフェノール樹脂(B)とを、含んで構成されることを特徴とする。
従来、湿式摩擦材のバインダーとして用いられる液状フェノール樹脂組成物には、レゾール型フェノール樹脂が使用されている。特に耐久性が要求される場合には、一般的に硬化物の加熱減量が少なく、湿式摩擦材としたときに硬度に優れる未変性のレゾール型フェノール樹脂が使用される。このような未変性レゾール型フェノール樹脂では、より高い耐熱性、耐久性が要求される場合には、耐熱性が十分でなく、適用できない場合があった。
これに対して本発明の液状フェノール樹脂組成物に含まれるアラルキルフェノール樹脂は、未変性のレゾール型フェノール樹脂が有するフェノール性水酸基を有していない。アラルキルフェノール樹脂を含むことで、高温時に酸化しやすく加熱減量の大きいフェノール性水酸基の濃度を低くし、加熱減量を小さくすることができるため、本発明の液状フェノール樹脂組成物は耐熱性に優れる。以下、本発明の液状フェノール樹脂組成物の製造方法及びそれに用いられる各成分について、詳細に説明する。
本発明の液状フェノール樹脂組成物に含まれるアラルキルフェノール樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではないが、フェノール類と、アラルキルエーテル類を酸性触媒の存在下で反応させて得ることができる。
アラルキルフェノール樹脂の製造で用いられるフェノール類としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールなどのキシレノール類、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノールなどのハロゲン化フェノール類、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノールなどの1価フェノール置換体、及び、1−ナフトール、2−ナフトールなどの1価のフェノール類、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシンなどの多価フェノール類などが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。これらのフェノール類の中でも、フェノール、クレゾール類、から選ばれるものが、より硬化物の加熱減量を少なくすることができるという点で好ましい。
アラルキルフェノール樹脂の製造で用いられるアラルキルエーテル類としては、特に限定されるものではないが、例えば、α,α'−ジメトキシ−p−キシレン、α,α'−ジエトキシ−p−キシレン、α,α'−ジメトキシ−m−キシレン、α,α,α'−トリメトキシ−p−キシレンなどのアラルキルエーテル類が挙げられる。これらアラルキルエーテル類の中でも、α,α'−ジメトキシ−p−キシレンがコストを低くできるという点で好ましい。
また本発明の液状フェノール樹脂組成物に含まれるレゾール型フェノール樹脂は熱硬化性や繊維基材への密着性に優れる特徴を持つ。このレゾール型フェノール樹脂を含むことで、液状フェノール樹脂組成物は良好な硬化性を有し、繊維基材への含浸性にも優れる特徴を持つことができる。
レゾール型樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではないが、フェノール類と、アルデヒド類を塩基性触媒の存在下で反応させて得ることができる。
レゾール型フェノール樹脂の製造で用いられるフェノール類としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールなどのキシレノール類、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノールなどのハロゲン化フェノール類、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノールなどの1価フェノール置換体、及び、1−ナフトール、2−ナフトールなどの1価のフェノール類、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシンなどの多価フェノール類などが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。これらのフェノール類の中でも、フェノール、クレゾール類、から選ばれるものがより硬化性を向上させることができるという点で好ましい。
また、レゾール型フェノール樹脂の製造で用いられるアルデヒド類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒドなどが挙げられる。これらを単独又は2種類以上組み合わせて使用することができる。これらのアルデヒド類の中でも、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドから選ばれるものが、より硬化性を向上させることができるという点で好ましい。
また、レゾール型フェノール樹脂の製造で用いることができる触媒としては、特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、トリエチルアミン、アンモニアなどが挙げられる。これらを単独又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
本発明の液状フェノール樹脂組成物には、樹脂を希釈するために有機溶媒を用いることができる。希釈に用いられる有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒及びこれらの混合物を用いることができる。希釈率としては、特に限定されるものではないが、取り扱い性、経時変化の観点から樹脂組成物の不揮発分が30%以上70%以下となるように希釈するのが好ましい。
本発明の液状フェノール樹脂組成物は、すべての芳香環に対する、水酸基を有さない芳香環のモル比率が3%以上9%以下であることが好ましく、4%以上8%以下であることがより好ましい。前記モル比率は重アセトン溶液で測定する1H―NMRにおける、フェノール性水酸基の水素と、芳香環に置換した水素の積分比率より算出することができる。モル比率を下限値以上とすることで、アラルキルフェノール樹脂による耐熱性向上効果が十分に発揮され、湿式摩擦材としたときの高面圧時における耐久性向上の効果が得られる。一方モル比率を上限値以下にすることで、レゾール型フェノール樹脂との相溶性を保つことができ繊維基材に含浸した際に十分な結合力を発揮させることができ、湿式摩擦材としたときの高面圧時の耐久性を向上させる効果を奏する。
次に、本発明の湿式摩擦材について説明する。本発明の湿式摩擦材は、繊維基材に、本発明の液状フェノール樹脂組成物を含侵してなることを特徴とする。これにより、高面圧時の耐久性に優れる湿式摩擦材を得ることができる。
本発明の液状フェノール樹脂組成物を含浸する繊維基材としては、特に限定されるものではないが、天然パルプ繊維、リンターパルプ等の天然繊維、ガラス繊維等の無機繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、アラミド繊維、フェノール繊維等の化学繊維などの繊維類を単独又は2種以上使用した基材を用いることができる。これらの中で、摩擦特性、耐久性の観点から、アラミド繊維を主成分として繊維基材に使用することが好ましい。また、繊維の形態としては、特に限定されるものではないが、不織布、織布などを用いることができる。
本発明の湿式摩擦材には、所望により、カシューダスト等の摩擦調整剤、珪藻土等の無機フィラーを充填した紙基材を、繊維基材とともに使用することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ここに記載されている「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
ここに記載されている「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
(アラルキルフェノール樹脂の製造)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール1000部、α,α'−ジメトキシ−p−キシレン800部、ジエチル硫酸2部を添加し、150℃常圧脱水下で2時間反応を行った。反応終了後、常圧蒸留を行い150℃まで昇温し、5000Paの減圧度で、減圧蒸留を行って170℃まで昇温し、アラルキルフェノール樹脂1380部を得た。
(液状フェノール樹脂の製造)
(実施例1)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール1000部、37%ホルマリン水溶液740部、50%水酸化ナトリウム水溶液20部を添加し、100℃で30分間撹拌し、反応させた。その後91kPaの減圧下で脱水を行いながら、系内の温度が65℃に達したところでメタノール1000部を加えて溶解・冷却した。その後、アラルキルフェノール樹脂315部を添加して、固形分58%の液状フェノール樹脂2360部を得た。
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール1000部、α,α'−ジメトキシ−p−キシレン800部、ジエチル硫酸2部を添加し、150℃常圧脱水下で2時間反応を行った。反応終了後、常圧蒸留を行い150℃まで昇温し、5000Paの減圧度で、減圧蒸留を行って170℃まで昇温し、アラルキルフェノール樹脂1380部を得た。
(液状フェノール樹脂の製造)
(実施例1)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール1000部、37%ホルマリン水溶液740部、50%水酸化ナトリウム水溶液20部を添加し、100℃で30分間撹拌し、反応させた。その後91kPaの減圧下で脱水を行いながら、系内の温度が65℃に達したところでメタノール1000部を加えて溶解・冷却した。その後、アラルキルフェノール樹脂315部を添加して、固形分58%の液状フェノール樹脂2360部を得た。
(実施例2)
実施例1においてアラルキルフェノール樹脂を210部に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行い、固形分56%の液状フェノール樹脂2260部を得た。
実施例1においてアラルキルフェノール樹脂を210部に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行い、固形分56%の液状フェノール樹脂2260部を得た。
(実施例3)
実施例1においてアラルキルフェノール樹脂を105部に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行い、固形分54%の液状フェノール樹脂2150部を得た。
実施例1においてアラルキルフェノール樹脂を105部に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行い、固形分54%の液状フェノール樹脂2150部を得た。
(比較例1)
実施例1においてアラルキルフェノール樹脂を添加しない以外は、実施例1と同様に合成を行い、固形分50%の液状フェノール樹脂2100部を得た。
実施例1においてアラルキルフェノール樹脂を添加しない以外は、実施例1と同様に合成を行い、固形分50%の液状フェノール樹脂2100部を得た。
(比較例2)
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール800部、p−キシレングリコールジメチルエーテル424部を仕込み、さらにジエチル硫酸1部を加え、160℃で90分反応させた。その後60℃以下まで冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液6部、92%パラホルムアルデヒド180部を加えて80℃で1時間反応し、メタノール800部を加え、固形分48%の液状フェノール樹脂2100部を得た。(特開2001−316660の実施例1)
(湿式摩擦材の試験片作製)
上述の実施例及び比較例より得られた液状フェノール樹脂にメタノールを添加して、レゾール型フェノール樹脂の重量パーセント濃度が30%になるレゾール型フェノール樹脂調整液を作製した。次に、それぞれの重量パーセント濃度がアラミド繊維(東レデュポン社製、ケブラー)40%、セルロースパルプ30%、及び珪藻土(昭和化学工業株式会社製ラヂオライト#200)30%である混合物を水中に分散させて、スラリー液を作製し、このスラリー液を用いて抄造した紙を乾燥し、乾燥した抄造紙を上記で調整したレゾール型フェノール樹脂調整液に30秒間浸した後、常温で30分間風乾、80℃で30分間乾燥後、200℃で30分間焼成し、ペーパー湿式摩擦材相当の試験片(150mm×80mm×1mm厚)を作製した。
撹拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応装置に、フェノール800部、p−キシレングリコールジメチルエーテル424部を仕込み、さらにジエチル硫酸1部を加え、160℃で90分反応させた。その後60℃以下まで冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液6部、92%パラホルムアルデヒド180部を加えて80℃で1時間反応し、メタノール800部を加え、固形分48%の液状フェノール樹脂2100部を得た。(特開2001−316660の実施例1)
(湿式摩擦材の試験片作製)
上述の実施例及び比較例より得られた液状フェノール樹脂にメタノールを添加して、レゾール型フェノール樹脂の重量パーセント濃度が30%になるレゾール型フェノール樹脂調整液を作製した。次に、それぞれの重量パーセント濃度がアラミド繊維(東レデュポン社製、ケブラー)40%、セルロースパルプ30%、及び珪藻土(昭和化学工業株式会社製ラヂオライト#200)30%である混合物を水中に分散させて、スラリー液を作製し、このスラリー液を用いて抄造した紙を乾燥し、乾燥した抄造紙を上記で調整したレゾール型フェノール樹脂調整液に30秒間浸した後、常温で30分間風乾、80℃で30分間乾燥後、200℃で30分間焼成し、ペーパー湿式摩擦材相当の試験片(150mm×80mm×1mm厚)を作製した。
各実施例及び比較例により得られた液状フェノール樹脂組成物及び湿式摩擦材相当の試験片について、次の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
(すべての芳香環に対する、水酸基を有さない芳香環のモル比率の測定方法)
上述により得られた液状フェノール樹脂0.1部を重アセトン0.5mLに溶解して得られた溶液を日本電子製核磁気共鳴装置にて1H―NMR測定を行った。得られた1H―NMRスペクトルにおいて、5〜7ppm付近のフェノール性水酸基に由来するピークの積分値と、7〜8ppm付近の芳香環に置換した水素の積分値の比率より算出した。
上述により得られた液状フェノール樹脂0.1部を重アセトン0.5mLに溶解して得られた溶液を日本電子製核磁気共鳴装置にて1H―NMR測定を行った。得られた1H―NMRスペクトルにおいて、5〜7ppm付近のフェノール性水酸基に由来するピークの積分値と、7〜8ppm付近の芳香環に置換した水素の積分値の比率より算出した。
(レゾール型フェノール樹脂の評価方法)
(1)ゲル化時間
上述により得られた液状フェノール樹脂を165℃の熱板上に2g滴下し、ヘラを用いて一定の速度で混練し、ゲル化するまでの時間を測定した。
(1)ゲル化時間
上述により得られた液状フェノール樹脂を165℃の熱板上に2g滴下し、ヘラを用いて一定の速度で混練し、ゲル化するまでの時間を測定した。
(2)熱重量減少
上述により得られた液状フェノール樹脂を135℃で1時間乾燥させた後、200℃で1時間硬化させ、0.5mmの粒径に粉砕して熱重量減少を測定した。測定はアルミナを標準物質として使用し、昇温速度10℃/分で30℃から300℃までの温度範囲で測定した。装置はSII社製、TG/DTA6300を使用した。
上述により得られた液状フェノール樹脂を135℃で1時間乾燥させた後、200℃で1時間硬化させ、0.5mmの粒径に粉砕して熱重量減少を測定した。測定はアルミナを標準物質として使用し、昇温速度10℃/分で30℃から300℃までの温度範囲で測定した。装置はSII社製、TG/DTA6300を使用した。
(湿式摩擦材の評価方法)
(1)引張り強さ
得られた湿式摩擦材について、JIS P 8113「紙及び板紙−引張特性の試験方法−」に準拠して、引張り強さを測定した。含浸紙の引張り強さは、湿式摩擦材の耐久性と相関があり、値が高い方が湿式摩擦材の耐久性が良好なものとなる。そのため高面圧負荷がかかった際の耐久性の指標として上述で得られた含浸紙を240℃で1時間熱処理した試験片も引っ張り強度を測定した。
(1)引張り強さ
得られた湿式摩擦材について、JIS P 8113「紙及び板紙−引張特性の試験方法−」に準拠して、引張り強さを測定した。含浸紙の引張り強さは、湿式摩擦材の耐久性と相関があり、値が高い方が湿式摩擦材の耐久性が良好なものとなる。そのため高面圧負荷がかかった際の耐久性の指標として上述で得られた含浸紙を240℃で1時間熱処理した試験片も引っ張り強度を測定した。
表1の評価結果より、以下のことがわかる。
実施例1〜3で得られたフェノール樹脂はいずれも、165℃におけるゲル化時間が60秒付近と短く、該フェノール樹脂の硬化物は500℃に加熱した際の重量減少が25%以下であり、該フェノール樹脂を用いて作製した含浸紙は熱処理後の引っ張り強度に優れる結果が得られた。一方、比較例1で得られたフェノール樹脂は165℃におけるゲル化時間が50秒と短かったが、硬化物は、500℃に加熱した際の重量減少が大きく、該フェノール樹脂を用いて作製した含浸紙は熱処理後の引っ張り強度が劣る結果となった。
比較例2で得られたフェノール樹脂は、比較例1と比較すると500℃に加熱した際の重量減少は小さく、該フェノール樹脂を用いて作製した含浸紙は熱処理後の引っ張り強度も優れていたが、実施例1から3と比較すると、500℃に加熱した際の重量減少が大きく、硬化性も劣る結果となった。したがって、本発明で特定した液状フェノール樹脂組成物を用いることにより、高面圧時の耐久性に優れた湿式摩擦材を得ることができることがわかる。
実施例1〜3で得られたフェノール樹脂はいずれも、165℃におけるゲル化時間が60秒付近と短く、該フェノール樹脂の硬化物は500℃に加熱した際の重量減少が25%以下であり、該フェノール樹脂を用いて作製した含浸紙は熱処理後の引っ張り強度に優れる結果が得られた。一方、比較例1で得られたフェノール樹脂は165℃におけるゲル化時間が50秒と短かったが、硬化物は、500℃に加熱した際の重量減少が大きく、該フェノール樹脂を用いて作製した含浸紙は熱処理後の引っ張り強度が劣る結果となった。
比較例2で得られたフェノール樹脂は、比較例1と比較すると500℃に加熱した際の重量減少は小さく、該フェノール樹脂を用いて作製した含浸紙は熱処理後の引っ張り強度も優れていたが、実施例1から3と比較すると、500℃に加熱した際の重量減少が大きく、硬化性も劣る結果となった。したがって、本発明で特定した液状フェノール樹脂組成物を用いることにより、高面圧時の耐久性に優れた湿式摩擦材を得ることができることがわかる。
本発明の液状フェノール樹脂組成物をバインダーに用いた場合、硬化性に優れ、高面圧時の耐久性に優れた湿式摩擦材を得ることができるため、本発明の液状フェノール樹脂組成物を例えば、ペーパークラッチフェーシングなどの湿式摩擦材に好適に用いることができるものである。
Claims (3)
- 含浸用に用いられる液状フェノール樹脂組成物であって、レゾール型フェノール樹脂(A)とアラルキルフェノール樹脂(B)とを含んで構成されることを特徴とする液状フェノール樹脂組成物。
- 請求項1に記載の液状フェノール樹脂組成物において、すべての芳香環に対する、水酸基を有さない芳香環のモル比率が3%以上9%以下である液状フェノール樹脂組成物。
- 繊維基材に、請求項1または2に記載の液状フェノール樹脂組成物を含浸してなることを特徴とする湿式摩擦材。
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2015
- 2015-03-30 JP JP2015069547A patent/JP2016188333A/ja active Pending
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