JP2016060874A - フェノール樹脂成形材料 - Google Patents

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彰人 石井
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Abstract

【課題】成形性、耐熱性、寸法精度及び機械的強度を損なうことなく、熱安定性に優れるフェノール樹脂成形材料の提供。
【解決手段】レゾール型フェノール樹脂及び無機充填材を含有するフェノール樹脂成形材料であって、前記レゾール型フェノール樹脂が、オルソ化率が70%以上であるベンジリックエーテル型フェノール樹脂であり、前記ベンジリックエーテル型フェノール樹脂のフェノール核1モル当たりの置換基比率としてそれぞれ求められるメチレン結合置換比、ベンジリックエーテル結合置換比及びメチロール基置換比の合計を100%としたとき、前記ベンジリックエーテル結合置換比の割合が10.0%以上40.0%以下であり、且つ前記メチロール基置換比の割合が15.0%以上40.0以下であり、前記無機充填材が、ガラス繊維、炭酸カルシウム及びウォラストナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記無機充填材の含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対し65質量部以上370質量部以下の成形材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱安定性に優れた各種部品を製造するのに好適なフェノール樹脂成形材料に関するものであり、特に、自動車部品や電気部品に好適に用いられるフェノール樹脂成形材料に関するものである。
フェノール樹脂を含有する成形材料は、耐熱性、寸法精度、耐摩耗性、機械的強度、コスト等のバランスに優れた材料として、各分野において幅広く用いられている。また、近年、自動車分野において、例えばブレーキピストン、エンジンオイルポンプ用バルブ等のエンジンやブレーキ付近の金属部品の樹脂化が進んでいる。このような自動車部品には、一般に耐熱性、寸法精度、耐摩耗性、機械的強度に加えて、更に熱安定性が要求される。
しかし、一般的にフェノール樹脂成形材料は、成形時射出成形時のシリンダー内で加熱され溶融された状態では、樹脂の硬化反応の進行によって粘度が増大し流動性を失う性質を有している。このため、従来のフェノール樹脂成形材料を射出成形する場合、射出成形機のシリンダー内で溶融された成形材料は、熱安定性が良好であるとは言えなかった。
この不都合を解決するため、種々の検討がなされている。その一例として、数平均分子量や全結合ホルムアルデヒド中のジメチレンエーテル結合の割合や軟化点を特定したジメチレンエーテル型フェノール樹脂に、ノボラック型フェノール樹脂を配合してなるフェノール樹脂組成物が提案されている(特開平6−184405号公報)。このような樹脂組成物を用いれば、レゾール型フェノール樹脂の自硬化性の特長を生かしながら、ノボラック型フェノール樹脂の配合により成形機シリンダー内での熱安定性及び射出成型性を高めることができる。しかし、このフェノール樹脂組成物を用いた場合、ノボラックを併用することにより硬化性が遅くなり、成形サイクルが長くなる。また、樹脂中のレゾール樹脂の比率が少なくなるので、靭性効果などのレゾール樹脂の利点が減少する。
また、他の提案として、レゾール型フェノール樹脂に、低分子ポリオレフィン化合物とカルナバワックス及び充填材を配合することが提案されている(特開平10−158469号公報)。このような成形材料によれば、射出成形機シリンダー内における溶融状態での流動性と熱安定性に富み、金型内での硬化性に優れたフェノール樹脂成形材料を得ることができる。しかし、このフェノール樹脂成形材料は、金型内での硬化が遅くなる。滑材量を増やすと成形材料の強度が落ちる可能性がある。
成形材料の強度を低下させずに、課題を改善させる提案としては、ジメチレンエーテル基(−CH2 −O−CH2 −)をフェノール核結合官能基の主体とするジメチレンエーテル型レゾール樹脂に、ヘキサメチレンテトラミンおよびガラス繊維などの無機充填材を必須成分として配合することが検討されている(特開平11−12434号公報)。この成形材料によれば、機械的強度、寸法安定性および射出成形性に優れ、金属部品の代替が可能なフェノール樹脂成形材料を得ることができる。しかし、このフェノール樹脂成形材料は、ヘキサメチレンテトラミンを配合する為、インサート金具入り成形品を得る場合、金具を腐食する。
さらに他の提案として、ノボラック型フェノール樹脂などフェノール樹脂に、活性炭微粉末および木粉やタルクなど充填剤を配合することが検討されている(特開2001−234030号)。この成形材料によればシリンダー内における流動性と熱安定性に富み、金型内での硬化特性に優れると思われるが、ヘキサメチレンテトラミンを配合するため、インサート金具入り成形品などを得る場合、金具を腐食する。また、充填剤として活性炭微粉末および木粉やタルクを用いているため、機械的強度が低下する可能性がある。
特開平6−184405号公報 特開平10−158469号公報 特開平11−12434号公報 特開2001−234030号公報
本発明は、以上のような問題点に鑑みなされたものであり、成形性、耐熱性、寸法精度及び機械的強度を損なうことなく、熱安定性に優れるフェノール樹脂成形材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を克服するために鋭意研究した結果、特定のレゾール型フェノール樹脂に、特定の無機充填材と、反応促進剤を特定の割合で配合することによって、上記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、レゾール型フェノール樹脂及び無機充填材を含有するフェノール樹脂成形材料であって、前記レゾール型フェノール樹脂が、オルソ化率が70%以上であるベンジリックエーテル型フェノール樹脂であり、前記ベンジリックエーテル型フェノール樹脂のフェノール核1モル当たりの置換基比率としてそれぞれ求められるメチレン結合置換比、ベンジリックエーテル結合置換比及びメチロール基置換比の合計を100%としたとき、前記ベンジリックエーテル結合置換比の割合が10.0%以上40.0%以下であり、且つ前記メチロール基置換比の割合が15.0%以上40.0以下であり、前記無機充填材が、ガラス繊維、炭酸カルシウム及びウォラストナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記無機充填材の含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対し65質量部以上370質量部以下であることを第1の特徴とする。
前記ベンジリックエーテル結合置換比の割合が20.0%以上39.5%以下であり、且つ前記メチロール基置換比の割合が15.5%以上38.0%以下であることを第2の特徴とし、フェノール核1モルに対して、前記メチレン結合置換比が0.42モル以上0.55モル以下、前記ベンジリックエーテル結合置換比が0.26モル以上0.38モル以下及び前記メチロール基置換比が0.14モル以上0.20モル以下であることを第3の特徴とする。
また、反応促進剤を5質量部〜75質量部さらに含有することを第4の特徴とし、スパイラルフローが200mm以上800mm以下であることを第5の特徴とする。
更に、前記フェノール樹脂成形材料が自動車部品・電気部品に用いられることを第6の特徴とする。
本発明のフェノール樹脂成形材料によれば、フェノール樹脂成形材料はシリンダー内での溶融状態の流動性と熱安定性に富み、高温時の硬化性に優れている。このため、射出成形において成形機シリンダー内で溶融樹脂の粘度上昇を抑え、かつ金型内では急速に硬化するため成形性に非常に優れている。
また、主に自動車部品の成形材料として用いられるものであると良いが、特に成形品金具をインサート成形するような電装関連部品などで使用されると特に良い。当該フェノール樹脂成形材料を電装関連部品の成形材料として用いることで、ヘキサメチレンテトラミンによる金具腐食なども起こらず、製品の長寿命化への期待が出来成形性及び成形品特性が優れていることで、生産のコスト削減、良品率の向上への期待もできる。
以下、本発明のフェノール樹脂成形材料及びその製造方法について詳細に説明する。
本発明のフェノール樹脂成形材料は、レゾール型フェノール樹脂及び無機充填材を含有する。該フェノール樹脂成形材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として反応促進剤を含有していてもよく、その他に添加剤を含有していてもよい。
本発明におけるレゾール型フェノール樹脂は、該フェノール樹脂成形材料における主体樹脂である。このレゾール型フェノール樹脂は、(A)ハイオルソ構造であること、及び(B)樹脂のフェノール核1モルあたりのメチレン結合比率(メチレン結合置換比)、ベンジリックエーテル結合比率(ベンジリックエーテル結合置換比)、メチロール基比率(メチロール基置換比)の合計量を100%としたときに、かかるベンジリックエーテル結合置換比の割合が10.0〜40.0%の範囲内にあり、且つメチロール基置換比の割合が15.0〜40.0%の範囲内にあることを、構成要件とするものである。
そして、そのような本発明におけるレゾール型フェノール樹脂における構成要件(A)に係るハイオルソ構造に関しては、樹脂のフェノール核のオルソ位に置換基が結合している割合であるオルソ化率は、通常知られているハイオルソレゾールが有するオルソ結合の比率の70%以上である必要があり、好ましくは75〜90%であることが望ましい。なお、かかる上限の90%は、製造し得る想定の数値であり、実際には、オルソ化率の上限はなく、高いほど望ましいと言うことができる。また、そのようなオルソ結合の比率が高くなるほど、炭素化工程において緻密な炭化物が形成され易くなるため、残留炭素率が向上するようになるのである。これは、樹脂がハイオルソで、リニアな構造であると、炭素化工程における環化・芳香族化から、固相における重縮合化に至るときに、隙間のない芳香族平面が形成され易くなるものと考えられる。
ここで、オルソ化率は、公知の手法に従って、核磁気共鳴装置を用いて、樹脂サンプルを13C−NMR測定することにより、容易に求めることが出来る。即ち、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂におけるフェノール核の各オルソ、パラ位に結合しているメチレン結合、ベンジリックエーテル結合及びメチロール基の13C−NMRのケミカルシフトは、公知となっているところから(Andre Knop., Louis A. Pilato.著,瀬戸正二監訳,『フェノール樹脂』,第110頁)、それらのケミカルシフト情報に基づいて、オルソ−オルソ、オルソ−パラ、パラ−パラ位に結合しているメチレン結合、ベンジリックエーテル結合及びオルソまたはパラ位に結合しているメチロール基の各炭素のピークの積分強度比を求め、それにより、全結合を100%としたときのオルソ結合の比率を算出することができるのである。
また、本発明におけるベンジリックエーテル型フェノール樹脂に係る構成要件(B)に関して、樹脂中のフェノール核1モルあたりの置換基比率としてそれぞれ求められるメチレン結合置換比、ベンジリックエーテル結合置換比及びメチロール基置換比の合計を100%としたベンジリックエーテル型フェノール樹脂において、高い残留炭素率を得るためには、上記した(A)の条件に加えて、ベンジリックエーテル結合置換比の割合が10.0〜40.0%であり、且つメチロール基置換比の割合が15.0〜40.0%である必要がある。中でも、縮合工程〜蒸留減圧濃縮工程〜排出工程の1サイクルのみで容易に製造することが出来、且つ残留炭素率のより一層の向上のために、ベンジリックエーテル結合置換比の割合は、20.0〜39.5%であり、且つメチロール基置換比の割合が15.5〜38.0%であることが、望ましい。なお、それら結合成分の個々の割合に関して、ベンジリックエーテル結合置換比の割合は、その下限を10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上とするのが良い一方、その上限は、40%以下、好ましくは39.5%以下、より好ましくは30%以下とするのが良い。また、メチロール基置換比の割合は、その下限を15%以上、好ましくは15.5%以上、より好ましくは17%以上とするのが良い一方、その上限は、40%以下、好ましくは38%以下、より好ましくは30%以下とするのが良い。そして、メチレン結合置換比の割合は、それらベンジリックエーテル結合置換比及びメチロール基置換比の各割合の合計量を、100%から減じた値となるのである。
なお、本発明における上記(B)の規定範囲から外れた場合、例えば、(B)の範囲よりベンジリックエーテル結合の割合が多くなると、残留炭素率が低くなるが、これは、ベンジリックエーテル結合を加熱すると、ホルムアルデヒドが外れて、メチレン結合が生じるようになるが、その際に架橋構造が緻密になるのを阻害したり、または脱離する大量のホルムアルデヒドにより、炭化物の緻密化が阻害されるためであると思われる。また、(B)の範囲よりメチロール基の割合が多くなると、そのような組成のベンジリックエーテル型レゾール樹脂を製造することが困難になる。更に、かかる(B)の規定範囲より、ベンジリックエーテル結合やメチロール基、或いはその両方が低下すると、相対的にメチレン結合の割合が多くなり、そのため反応基の不足により架橋密度が低くなって、残留炭素率が低下するようになる。
また、本発明におけるベンジリックエーテル型フェノール樹脂においては、その残留炭素率を優位に高める上において、樹脂のフェノール核の1モルに対して、メチレン結合の置換比率が0.42〜0.55モルであり、ベンジリックエーテル結合の置換比率が0.26〜0.38モルであり、更にメチロール基の置換比率が0.14〜0.20モルである構成が、有利に採用されることとなる。
ここにおいて、本発明にて対象とするベンジリックエーテル型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるものであって、そこにおいて、本発明におけるベンジリックエーテル型フェノール樹脂は、公知の如く、フェノール類とアルデヒド類とを所定の触媒の存在下において反応させて得られるものであり、その製法については、特に限定されるものではなく、またそこでは、公知の材料が適宜に選択されて用いられることとなる。
具体的には、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂は、よく知られているように、フェノール類とアルデヒド類とを、一般に、二価金属塩等の触媒を用いて、反応させて得られるものである。なお、そこにおいて、フェノール類とアルデヒド類の使用割合については、フェノール1.0モルに対して、アルデヒド類が、好ましくは1.0〜2.0モル、より好ましくは1.1〜1.6モルの割合で使用される。このアルデヒド類の使用割合が1.0モル未満となると、樹脂中の反応基が足りず、硬化後の焼成で充分な残留炭素率を得られない可能性がある一方、2.0モルよりも多くなると、製造時や硬化時におけるホルムアルデヒドの発生量が多くなって、臭気、製造時の減圧ラインの閉塞等の問題に加えて、品質にも悪影響を及ぼし、残留炭素率も減少する問題を生じる。
また、本発明におけるベンジリックエーテル型フェノール樹脂において、その重量平均分子量(Mw)は、一般に、2,000よりも大きく、30,000よりも小さいものであって、より好ましくは3,000〜20,000であることが、望ましい。これは、かかる重量平均分子量が2,000よりも小さくなると、メチロール基の置換比率が大きくなり過ぎて、本発明に係る(B)の規定範囲を外れるだけでなく、樹脂が常温下で固化しないために、取り回しの観点からも不利であり、また重量平均分子量が30,000よりも大きくなると、メチレン結合の置換比率が大きくなり過ぎて、本発明に係る(B)の規定範囲を外れると共に、樹脂のゲル化を惹起する可能性があるからである。
さらに、本発明におけるベンジリックエーテル型フェノール樹脂中に含まれる未反応フェノールの量については、何等限定されるものではないが、質量基準で5%以下であることが、好ましい。未反応フェノールが多く含まれると、硬化前の昇温時に、大量にフェノールが蒸発して、残留炭素率の低下や、樹脂の発泡を招く恐れがある。また、環境衛生上の観点からしても、未反応フェノールの含有量は、上述の如く、5%以下であることが好ましいのである。
ところで、目的とするベンジリックエーテル型フェノール樹脂の製造に用いられるフェノール類としては、従来からフェノール樹脂の製造に用いられている一般的な各種のフェノール類を挙げることが出来る。
具体的には、そのようなフェノール類として、例えば、フェノール;m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール等のクレゾール類、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール等のキシレノール類、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−エチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、6−tert−ブチル−3−メチルフェノール等のアルキルフェノール類;p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−エトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−プロポキシフェノール、m−プロポキシフェノール等のアルコキシフェノール類;o−イソプロペニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2−メチル−4−イソプロペニルフェノール、2−エチル−4−イソプロペニルフェノール等のイソプロペニルフェノール類;4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール等のポリヒドロキシフェノール類;フェニルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、ナフタレンジオール類等を挙げることが出来る。中でも、本発明にあっては、好ましくは、フェノール及びフェノールとホルムアルデヒドとの反応によって得られる多核体が、有利に用いられることとなる。フェノール核に他の官能基がついたフェノール類は、残留炭素率を悪くする傾向にあるために、そのような官能基のつかないフェノール類が、好適に用いられるのである。勿論、本発明が、かかる例示に限定されるものでないことは言うまでもないところであり、また、上記のフェノール類は、単独で用いられる他、2種以上を併用することも可能である。
また、本発明で用いられるアルデヒド類としては、従来からフェノール樹脂の製造に用いられている、一般的なアルデヒド類の何れもが対象とされ、例えば、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられ、好ましくはホルマリン、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン等のホルムアルデヒド類が用いられる。なお、本発明が、そのような例示のものに限定されるものでないことは勿論、それらアルデヒド類は、単独で、又は2種以上を組み合わせて、用いられることとなる。特に、ホルムアルデヒド類の中では、ホルマリン水溶液やパラホルムアルデヒドが好適に用いられるが、縮合時の反応速度や減圧蒸留時の蒸発熱による内温低下の関係から、パラホルムアルデヒドの使用が、より望ましい。
そして、上記したフェノール類とアルデヒド類とを反応せしめて、本発明におけるベンジリックエーテル型フェノール樹脂を得るための触媒としては、二価金属塩を用いることが望ましく、例えば、二価金属塩の形態においての使用の他、二価金属の酸化物若しくは水酸化物、或いはその両方と、酸性化合物若しくは塩基性化合物とを組み合わせて、使用することも出来る。そのような触媒としての二価金属塩は、本発明における樹脂構造の構成要件である(A)及び(B)を実現し得るものであれば、特に限定されず、無水物や水和物の何れの形態であっても、何等差し支えない。また、酸性化合物としては、例えばホウ酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸等があり、塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化亜鉛、トリエチルアミン等が挙げられる。この酸性化合物や塩基性化合物を用いることで、組成の調整が容易となる。また、酸性化合物の使用により、メチレン結合が多くなる傾向を生じさせる一方、塩基性化合物の使用は、メチレン結合を少なくする傾向を生じさせることとなる。
なお、かかる二価金属塩としては、好ましくは、亜鉛化合物、例えば塩化亜鉛、酢酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、又はホウ酸と水酸化亜鉛の混合物等が有利に用いられることとなる。また、そのような二価金属塩としての亜鉛化合物は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いることも、可能である。複数の二価金属塩を組み合わせて用いる場合には、亜鉛化合物からなる二価金属塩が、フェノール類に対して0.1モル%以上で、且つ他の二価金属塩のモル数が亜鉛化合物からなる二価金属塩のモル数以下の範囲で、含有されていることが、樹脂を(B)の規定範囲になるようにする上において、好ましい。
また、触媒の使用量は、その種類により適宜に決定されるところであって、一義的に決めることは困難であるが、一般的には、フェノールの100質量部に対して、0.01〜100質量部、好ましくは0.05〜20質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲内で、用いられることとなる。この触媒量が多くなり過ぎると、反応速度が増大して、樹脂の製造が難しくなり、一方、触媒量が少なくなり過ぎると、残留炭素率は低下する傾向となる。
さらに、本発明においては、反応系内の粘度や、原料の溶解の状態に応じて、適宜、反応容器内に水を添加することが出来る。その場合において、水は、フェノール類の100質量部に対して、0〜50質量部の割合で添加することが、望ましい。水の添加量が50質量部を超えるようになると、反応速度の低下により、縮合時間が長時間となり、蒸留工程において水の除去に手間がかかって、非効率となる。
加えて、反応系への他の添加剤として、消泡剤、酸やアルカリ、造粒剤等を用いることも可能である。そこで、消泡剤は、蒸留工程における過剰な樹脂の発泡を抑制させるために使用され、また酸やアルカリは反応速度調整のために使用され、更に造粒剤は、生じるフェノール樹脂を造粒して、粒子として取り出すのに使用される。
ところで、本発明におけるベンジリックエーテル型フェノール樹脂を製造するに際しては、従来と同様な製造手順が採用されることとなる。具体的には、原料を反応容器内に投入して、加熱昇温した後、所定の時間の間、還流させて、縮合反応を行う縮合工程と、かかる縮合反応にて生じた反応生成物の減圧蒸留を行うことで、残留フェノールや水分等の除去と高分子量化を行う蒸留工程と、分子量が所定の状態に達したら、反応生成物(ベンジリックエーテル型フェノール樹脂)の排出を行う(系外への取出し)排出工程とが、採用されるのである。
そこにおいて、先ず、縮合工程においては、フェノール類とアルデヒド類と触媒と水とを反応缶(容器)内に投入して混合した後、加熱昇温させて、好ましくは還流温度にて、それらフェノール類とアルデヒド類との縮合反応が進行せしめられる。このときの昇温速度としては、常温から加熱し始めて、0.1℃/min〜5.0℃/minの範囲、より好ましくは0.3℃/min〜1.3℃/minの範囲が採用され、80〜120℃まで昇温することが望ましい。これは、5.0℃/minより昇温速度が早くなり過ぎると、反応初期の反応熱が大きくなり、ゲル化を伴う危険性や、系内のアルデヒド類が系外に排出されることや、急激な反応によるメチロール基の消費によって、所定の樹脂中のベンジリックエーテル結合率、メチロール基率が得られず、残留炭素率の低下を招くようになるからである。また、0.1℃/minよりも遅くなり過ぎると、製造効率が悪くなり、縮合工程に時間が掛かり、経済的な面から不利になるためである。以上のことから、昇温速度を0.1℃/min〜5.0℃/minの範囲にすることにより、残留炭素率の高い樹脂を有利に得ることが出来るのである。また、縮合時間は、縮合温度、原料の配合比率、系内の粘度や、縮合の度合い等を考慮しながら、適宜に決定されることとなるが、一般に、1〜10時間程度であることが望ましい。
また、かかる縮合工程でのフェノールの反応率は、一般に、85%以下であることが望ましく、好ましくは40%〜85%、より好ましくは50%〜84%であることが望ましい。つまり、本発明においては、未反応フェノールが15%以上となるようにして、縮合工程を進行せしめることが、望ましいのである。これは、反応率が85%以上を超えるようになると、系内の粘度が上昇し、その後の減圧下での蒸留工程時に粘度が上昇することによって、撹拌装置に高負荷がかかったり、排出時に、樹脂が反応缶内から排出しづらくなったりするためである。また、減圧蒸留時に発泡が激しくなり、反応生成物が減圧蒸留ラインに吸い込まれて、固化し、減圧蒸留ラインを閉塞してしまう恐れがある等の悪影響を惹起するようになるからである。また、反応率が40%よりも低くなると、収率が低下する問題を生じるようになる。
次いで、上記した縮合工程の終了後に採用される蒸留工程においては、反応生成物からの未反応原料や水等の除去が、特別な装置や水蒸気蒸留等を行わず、引き続き反応釜内にて反応生成物を攪拌翼により攪拌することによって、行われることとなる。なお、蒸留温度には、8.0kPa以下の圧力となる減圧下において、好ましくは100〜150℃、より好ましくは100〜120℃が採用される。この蒸留工程における減圧は、必要な分子量になるまで行われることとなる。この蒸留工程においては、未反応フェノールの除去が行なわれるが、その場合において、未反応フェノールの残留量が5.0%以下となるようにすることが好ましく、その残留フェノール量が5.0%より多くなると、硬化時にフェノールが蒸発して、残留炭素率が低下する問題を生じる。
また、この減圧蒸留工程においては、同時に、反応生成物の重量平均分子量の測定が行われて、系内の樹脂(反応生成物)が2,000超、30,000未満の重量平均分子量に達した時点で、減圧蒸留を停止して、そのまま、系内の樹脂(反応生成物)を系外に排出するようにするのである。なお、ベンジリックエーテル型レゾール樹脂は、蒸留工程後期において分子量が大きくなるにつれて、急激に分子量が増大して、ゲル化するようになるため、終点管理には、充分に注意する必要がある。更に、系内の樹脂が、加熱溶融状態から、冷却により固化し得る形態の樹脂として形成される場合には、分子量が増大すると、粘度が上昇し、排出しづらくなるため、重量平均分子量が10,000以下の段階で、排出することが好ましい。また、系内の樹脂を粒子として形成する場合には、分子量の上昇によって排出しづらくなることはないので、重量平均分子量が30,000未満の状態で排出すれば良い。なお、系内の樹脂を最も早く排出するには、本発明の(A)の規定範囲になるように、重量平均分子量が2,000以上になった時点から、排出するようにすれば良い。
ここで、かかる減圧蒸留時の重量平均分子量の測定方法としては、系内の樹脂の重量平均分子量を測定できる手法であるなら、特に限定されるものではないが、分子量を測定した時点から減圧蒸留を停止して分子量の増大を阻止するまでのタイムラグを短くするため、例えば、コーンプレートなどにより粘度測定しながら、予め粘度と分子量との相関を取っておいて、その規定粘度から分子量を導き出し、所定の分子量になったときに、直ちに排出工程に移行するようにすることが、好適な方法として挙げられる。なお、この時点で、樹脂組成等を調整するために、反応系にハイオルソノボラック樹脂やアルカリレゾール樹脂等を投入して、混合することが、可能である。
そして、排出工程においては、先の減圧蒸留工程で未反応フェノールが除去され、且つ系内の樹脂が所定の分子量に達した時点で、そのまま、系外への排出が行われることとなるのであるが、それとは別に、減圧蒸留途中で溶剤を加えて溶液化して、排出するようにすることも可能であり、また、水とアラビアガム等の造粒剤を投入して、系内の樹脂を造粒させた後、ろ過・乾燥を行って、固形粒子として、排出することも出来る。また、樹脂組成の調整を行うために、排出の後、他のハイオルソノボラック樹脂やアルカリレゾール樹脂を混合せしめることも可能である。
かくして得られる本発明におけるベンジリックエーテル型フェノール樹脂は、そのまま各種の用途に用いられる他、それを必須成分として、これに、ハイオルソノボラック樹脂やアルカリレゾール樹脂等の他の樹脂を配合したり、また各種添加剤等を配合して、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂組成物を形成して、用いるようにすることが出来る。なお、樹脂組成物の配合は、最終的に出来上がった樹脂組成物が、本発明の構成要件である(A)及び(B)を満たすものであれば、特に限定されるものではない。
本発明における無機充填材は、フェノール樹脂成形材料の線膨張率、成形収縮率及び収縮異方性を小さくし、成形品の曲げ強度等の機械的強度や寸法安定性を向上させるものである。本発明において無機充填材として用いられるものは、ガラス繊維、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、クレー、タルク、シリカ、アラミド繊維、カーボン繊維等が好ましく、中でもガラス繊維、炭酸カルシウム、ウォラストナイトが特に好ましい。これらを単独で用いても、二種以上を併用してもよいが、ガラス繊維と他の無機充填材とを併用することが好ましい。特に、耐摩耗性と耐熱性の向上という観点からウォラストナイト(珪灰石)を選択し、機械的強度と耐熱性向上及び耐摩耗性を低下させない観点からガラス繊維を選択し、両者を組合せることが好ましい。
また、無機充填材の配合量は、レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、65質量部以上370質量部以下であり、好ましくは100質量部以上250質量部以下であり、更に好ましくは130質量部以上170質量部以下である。機械的強度などの物性を低下させないためには、65質量部以上であることが好ましく、成形可能な材料の流動性を確保するためには、370質量部以下であることが好ましい。
本発明において反応促進剤として用いられるものは、アンモニアレゾール型フェノール樹脂である。
反応促進剤の含有量としては、レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、7質量部以上85質量部以下が好ましく、10質量部以上50質量部以下がより好ましい。反応促進剤の含有量を7質量部以上とすることで、混練時間を短縮することができる。反応促進剤の含有量を85質量部以下とすることで、成形するのに十分なシリンダー安定性を確保することができる。
添加剤としては、例えば離型剤、硬化促進剤、カップリング剤、顔料等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
離型剤としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸系ワックス等が挙げられる。硬化促進剤としては、例えば消石灰、酸化マグネシウム等が挙げられる。
レゾール型フェノール樹脂にカップリング剤を含有させることで、レゾール型フェノール樹脂と無機充填材との接着性が向上し、耐摩耗性及び機械的強度の向上を図ることができる。カップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられ、接着性の向上効果のより高いシラン系カップリング剤がより好ましい。
本発明においては、流動性を示す指標として、スパイラルフローを用いて評価を行った。成形性の観点から、本発明においてはスパイラルフローは200mm以上800mm以下であることが好ましい。
本発明のフェノール樹脂成形材料の製造方法は特に限定はされないが、加圧ニーダー、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、ミキシングロール等で加熱溶融混練した混練物をペレタイザー、パワーミル等を用いて粉砕して製造される。また、こうして得られた成形材料は射出成形、トランスファー成形及び圧縮成形等のいずれにも適用することができる。
また、本発明のフェノール樹脂成形材料は、成形機のシリンダー内で優れた熱安定性を有する。従って、本発明のフェノール樹脂成形材料は、自動車部品、電気部品、例えば成形品金具をインサート成形するような電装関連部品の成形材料として好適である。
当該フェノール樹脂成形材料を用いる場合の成形条件は、特に限定されず、例えば射出成形の場合、シリンダー温度が、通常、前部が70℃以上100℃以下、後部が30℃以上50℃以下、金型温度(硬化温度)が、通常160℃以上180℃以下とされる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例に記載の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。また、本明細書において質量部を用いて配合量を説明する場合、レゾール型フェノール樹脂を100質量部に対する質量部として記載する。
[レゾール型フェノール樹脂(1)の製造]
温度計、攪拌装置、還流冷却器を備えた反応容器内に、フェノール(P)の100質量部、92%パラホルムアルデヒド(F)の52質量部(モル基準でのF/P=1.5)、水の7.8質量部、触媒として塩化亜鉛の0.28質量部(フェノールに対して0.19mol%)、及び消泡剤(信越化学工業株式会社製:KM−73E)の0.011質量部を仕込んだ後、撹拌混合しながら、還流温度まで0.6℃/minの昇温速度で昇温して、4時間縮合反応を行った。その後、得られた反応生成物を、反応容器内において、加熱下で減圧濃縮を行う一方、反応生成物のMwを測定し、その測定したMwが5,000〜8,000の範囲となった時点で、反応容器内からの反応生成物の排出を行って、レゾール型フェノール樹脂を得た。
[レゾール型フェノール樹脂(2)の製造]
温度計、攪拌装置、還流冷却器を備えた反応容器内に、フェノール(P)の100質量部、92%パラホルムアルデヒド(F)の52質量部(モル基準でのF/P=1.5)、水の7.8質量部、触媒として、塩化亜鉛の0.11質量部(フェノールに対して0.08mol%)と酢酸マンガンの0.28質量部(フェノールに対して0.11mol%)、及び消泡剤(信越化学工業株式会社製:KM−73E)の0.011質量部を仕込んだ後、撹拌混合しながら、還流温度まで0.6℃/minの昇温速度で昇温して、4時間縮合反応を行った。その後、得られた反応生成物を、反応容器内において、加熱下で減圧濃縮を行う一方、反応生成物のMwを測定し、その測定したMwが5,000〜8,000の範囲となった時点で、反応容器内からの反応生成物の排出を行って、レゾール型フェノール樹脂を得た。
[レゾール型フェノール樹脂の特性]
得られたレゾール型フェノール樹脂の特性を下記の試験法により測定した。結果を表1に示す。
(I)樹脂組成
核磁気共鳴装置(バリアン社製:INOVA400)を用いて、常法によりアセチル化した樹脂サンプルについて、1H−NMR(400MHz、溶媒:重アセトン)測定を行い、ベンゼン環、メチレン結合、ベンジリックエーテル結合、メチロール基中の炭素に結合しているプロトンの各ピーク積分強度比を求めて、次式により、フェノール核総数を求めた後、フェノール核1モル当たりの置換基比率を計算する。
その後、フェノール核1モル当たりの置換基比率のメチレン結合置換比、ベンジリックエーテル結合置換比、及びメチロール基置換比の合計を100%として、樹脂組成におけるメチレン結合、ベンジリックエーテル結合、及びメチロール基の比率(モル)を、それぞれ求める。
A1(ベンゼン環中の炭素に結合しているプロトン)
=ケミカルシフト7.70〜6.50ppmのピーク積分強度比
A2[アセチル化されたヘミホルマール基:Ph−CH2 OCH2 OAcの炭素(−
OCH2 O−)に結合しているプロトン]
=ケミカルシフト5.42〜5.18ppmのピーク積分強度比
A3(アセチル化されたメチロール基:Ph−CH2 OAcの炭素に結合しているプ
ロトン)
=ケミカルシフト5.18〜4.91ppmのピーク積分強度比
A4[ベンジリックエーテル結合:Ph−CH2 OCH2 −Phの炭素に結合してい
るプロトンとアセチル化されたヘミホルマール基:Ph−CH2 OCH2 OA
cの炭素(Ph−CH2 O−)に結合しているプロトン]
=ケミカルシフト4.91〜4.17ppmのピーク積分強度比
A5(メチレン結合:Ph−CH2 −Phの炭素に結合しているプロトン)
=ケミカルシフト4.17〜3.44ppmのピーク積分強度比
上記の積分強度比を求めた後、次式により、フェノール核総数(P)を算出する。
P(フェノール核総数)={A1+A2/2+A3/2+(A4−A2)/4+A5
/2}/5
続いて、次式により、フェノール核1モル当たりの各置換基の置換比率(モル)を求める。
メチレン結合置換比 R1=A5/(2×P)
ベンジリックエーテル結合置換比 R2=(A4−A2)/(4×P)
メチロール基置換比 R3=A5/(2×P)
そして、次式により、樹脂組成におけるメチレン結合、ベンジリックエーテル結合、及びメチロール基の比率を求める。即ち、メチレン結合置換比、ベンジリックエーテル結合置換比及びメチロール基置換比の割合であるメチレン結合率、ベンジリックエーテル結合率及びメチロール基率を、それぞれ求めるのである。
メチレン結合率(%) =R1/(R1+R2+R3)×100
ベンジリックエーテル結合率(%)=R2/(R1+R2+R3)×100
メチロール基率(%) =R3/(R1+R2+R3)×100
参考文献:J.C.Woodbrey, H.P.Higginbottom, H.M.Culbertson, J.Polym.Sci., PART A,
Vol.3, 1079-1106(1965)
(II)オルソ化率
核磁気共鳴装置(バリアン社製:INOVA400)を用いて、それぞれの樹脂サンプルについて、13C−NMR(100MHz、溶媒:重ピリジン)測定を行い、その測定値から、オルソ−オルソ位、オルソ−パラ位、又はパラ−パラ位に結合しているメチレン結合、オルソ−オルソ位に結合しているベンジリックエーテル結合、及びオルソ又はパラ位に結合しているメチロール基の各炭素のピークの積分強度比を求め、それにより、全結合を100%としたときのオルソ結合の比率を、次式により算出する。
C1(オルソ−オルソ位に結合しているメチレン結合の炭素)
=ケミカルシフト33.0〜28.0ppmのピーク積分強度比
C2(オルソ−パラ位に結合しているメチレン結合の炭素)
=ケミカルシフト38.0〜33.0ppmのピーク積分強度比
C3(パラ−パラ位に結合しているメチレン結合の炭素)
=ケミカルシフト42.0〜38.0ppmのピーク積分強度比
C4(パラ位に結合しているメチロール基の炭素)
=ケミカルシフト63.2〜60.6ppmのピーク積分強度比
C5(オルソ位に結合しているメチロール基の炭素)
=ケミカルシフト66.8〜64.2ppmのピーク積分強度比
C6(オルソ−オルソ位に結合しているベンジリックエーテル結合の炭素)
=ケミカルシフト71.0〜66.8ppmのピーク積分強度比
オルソ化率(%)
(OR)=(C1×2+C2+C5+C6)/
(C1×2+C2×2+C3×2+C4+C5+C6)×100
(III)重量平均分子量(Mw)
東ソー株式会社製ゲル濾過クロマトグラフ8020シリーズビルドアップシステム(カラム:G2000HXL+G4000HXL、検出器:UV254nm、キャリヤー:テトラヒドロフラン1ml/min、カラム温度:40℃)を用いた測定により、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求める。
(IV)未反応フェノール量
東ソー株式会社製ゲル濾過クロマトグラフ8020シリーズビルドアップシステム(カラム:G1000HL+G2000HL、検出器:UV254nm、キャリヤー:テトラヒドロフラン1ml/min、カラム温度:40℃)を用いて、検量線法により、未反応フェノールの含有量(質量基準)を測定する。
(V)残留炭素率
差動型示差熱天秤(株式会社リガク製Tg−DTA Thermoplus2 TG8120;N2 流量:500ml/min、昇温速度:10℃/min、Ptパン:φ5×5使用)を用い、それぞれの樹脂サンプルを室温〜830℃まで加熱昇温して、測定を行う。室温〜800℃までの重量減少率:W1(%)から、以下の式により残留炭素率を求める。
残留炭素率(%)=100−W1
なお、ここでは、室温〜300℃までの重量減少率を硬化時までの重量減少率とし、300〜800℃までの重量減少率を硬化後の重量減少率とする。
Figure 2016060874
<実施例1>
下記の表2に示すように、上記製造例で製造したレゾール型フェノール樹脂100質量部に、無機充填材としてガラス繊維65質量部、添加剤として消石灰3質量部、ステアリン酸カルシウム5質量部、モンタン酸系ワックス1.5質量部、カーボンブラック1質量部及びシランカップリング剤2質量部を配合し均一混合した。その後、熱ロールにて均一に加熱混練してシート状にし、冷却後パワーミルで粉砕しグラニュール状の成形材料を得た。
得られたフェノール樹脂成形材料を用い、以下の条件により射出成形を行って実施例1の試験片を得た。
成形条件
シリンダー温度:前部85℃、後部60℃
金型温度 :175℃
硬化時間 :60秒
<実施例2〜31及び比較例1〜11>
各成分の配合割合を表1に示した通りとした以外は実施例1と同様とし、実施例2〜31及び比較例1〜11試験片を調製した。なお、表1において、「−」は該当成分を添加していないことを意味する。また、実施例1〜31及び比較例1〜11で用いた各成分の詳細は、以下の通りである。
<レゾール型フェノール樹脂>
レゾール型フェノール樹脂(1) :旭有機材工業社の「RMHC−6002」
レゾール型フェノール樹脂(2) :旭有機材工業社製
<無機充填材>
ガラス繊維 :日東紡社の「227SS」
炭酸カルシウム :丸尾カルシウム社の「3S」
ウォラストナイト :関西マテック社の「KGP−H85」
<反応促進剤>
アンモニアレゾール型フェノール樹脂 :群栄化学工業社の「A−100」
<添加物>
消石灰 :入交石灰工業製
ステアリン酸カルシウム :淡南化学工業社製
モンタン酸系ワックス :クラリアントジャパン社製
カーボンブラック :三菱化学製
シランカップリング剤 :信越化学工業社の「KBM403」
(試験片の評価)
実施例1〜31及び比較例1〜11の試験片について、下記手法に基づき、スパイラルフロー、成形収縮率、収縮異方性、曲げ強さ、シャルピー衝撃強さ、硬化時間、成形可能ショット回数、成形ピーク圧力について評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
(1)スパイラルフロー(材料流れ性)
試験片50gをスパイラル状の金型(金型温度:165℃)内に成形圧力:97kg/cmにて流し込み、かかる金型内に成形材料が流れ込んだ距離(mm)を5mm単位で測定した。この距離(mm)が長いほど、流動性が優れていることを示す。
(2)成形収縮率
上記試験片について、JIS−K6911規格(2006年)に準じて成形収縮率を測定した。
(3)収縮異方性
上記試験片について、JIS−K6911規格(2006年)に準じた試験片の垂直方向の成形収縮率と並行方向の成形収縮率の差を平行方向の成形収縮率の値で割り、パーセンテージで表した。
(4)曲げ強さ
上記試験片について、JIS−K6911規格(2006年)に準じて曲げ強さを測定した。
(5)シャルピー衝撃強さ、
上記試験片について、JIS−K6911規格(2006年)に準じてシャルピー衝撃強さ曲げ強さを測定した。なお、測定は東洋精機製作所製のシャルピー衝撃試験機を用いて行った。用いた試験片の寸法を以下に示す。
15mm×15mm×90mm ノッチあり
(6)硬化時間
JSR社製キュラストメーターを用い、ある温度に保たれた測定機に予め3.5gはかり取りプレス機でタブレット化したものを仕込み、トルクの時間変化を測定する。
フェノール樹脂成形材料はまず溶解し、硬化反応が進行するに従ってトルクの上昇が観測される。シリンダー安定性の優劣は型内温度100℃における一定トルク(2kgf・cm)達成時間を比較する事によって判断した。また、硬化性・硬化速度の優劣は型内温度175℃における一定トルク(40kgf・cm)達成時間を比較することによって判断した。
(7)成形可能ショット回数
名機製作所製のM−100B−TS射出成形機にて、一般に行われている成形条件(金型温度160〜170℃、シリンダー温度80〜100℃、射出時間6秒)で射出成形を行い、通常成形性の優劣は一般に行われている成形条件にて5ショット中、成形不良などを起こさずに何ショット出来るかで判断した。
2min滞留成形性の優劣は同じく一般に行われている成形条件の中で、材料をチャージした後にシリンダーの中に2min滞留させた後に成形を行い、5ショット中、成形不良などを起こさずに何ショット成形できるかで判断した。
(8)成形ピーク圧力
成形圧力のピークは2min滞留させて成形する際の成形圧力のピーク値を測定した。本成形機のMax値は160kg/cmである。2min滞留成形性の試験はシリンダー安定性を図る指標として最も効果的なものである。
Figure 2016060874
Figure 2016060874
表2〜3から明らかなように、実施例1〜31の試験片は、成形収縮率及び収縮異方性が小さく、曲げ強さ、シャルピー衝撃強さ、硬化性を維持しながら、連続成形を行うのに十分なシリンダー内部の熱安定性と、生産性を損なわない硬化速度で成形が可能である。
本発明のフェノール樹脂成形材料によれば、請求項に記載されてある結合比率の残留炭素率が高いレゾール型フェノール樹脂に特定の割合で無機充填材と反応促進剤を配合することにより、従来のフェノール樹脂成形材料に比べて流動性と熱安定性に富み、高温時の硬化性に優れる成形品を提供することができる。それらは自動車部品や電気部品に好適に用いられ、成形品金具をインサート成形するような電装関連部品などにおいて特に好適に用いられる。

Claims (6)

  1. レゾール型フェノール樹脂及び無機充填材を含有するフェノール樹脂成形材料であって、前記レゾール型フェノール樹脂が、オルソ化率が70%以上であるベンジリックエーテル型フェノール樹脂であり、前記ベンジリックエーテル型フェノール樹脂のフェノール核1モル当たりの置換基比率としてそれぞれ求められるメチレン結合置換比、ベンジリックエーテル結合置換比及びメチロール基置換比の合計を100%としたとき、前記ベンジリックエーテル結合置換比の割合が10.0%以上40.0%以下であり、且つ前記メチロール基置換比の割合が15.0%以上40.0以下であり、前記無機充填材が、ガラス繊維、炭酸カルシウム及びウォラストナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記無機充填材の含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂100質量部に対し65質量部以上370質量部以下であることを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
  2. 前記ベンジリックエーテル結合置換比の割合が20.0%以上39.5%以下であり、且つ前記メチロール基置換比の割合が15.5%以上38.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
  3. フェノール核1モルに対して、前記メチレン結合置換比が0.42モル以上0.55モル以下、前記ベンジリックエーテル結合置換比が0.26モル以上0.38モル以下及び前記メチロール基置換比が0.14モル以上0.20モル以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフェノール樹脂成形材料。
  4. 反応促進剤を5質量部〜75質量部さらに含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のフェノール樹脂成形材料。
  5. スパイラルフローが200mm以上800mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のフェノール樹脂成形材料。
  6. フェノール樹脂成形材料が自動車部品・電気部品に用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のフェノール樹脂成形材料。
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