JP4684464B2 - 耐火物組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉、混銑車、転炉、取鍋、溶融還元炉等の溶融金属容器の内張りや、連続鋳造設備に具備されるノズル、浸漬ノズル、ロングノズル、スライディングノズル、ストッパー等、その他非鉄金属用溶解炉などに好適に使用される耐火物組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記の用途に使用される耐火物組成物は、耐火骨材にバインダー成分としてのフェノール樹脂を配合し、これをシンプソンミル、メランジャ、アイリッヒ、スピードマラー、ワールミックスなどの混練装置で混練することによって調製されるのが一般的であり、これをオイルプレス、フリクションプレス、真空プレス、静水圧プレスなどでプレス成形した後に加熱して、乾燥硬化あるいは焼成して耐火物を得ている。上記の混練装置は、バインダー成分の形態や性状に応じて、また混練方法に応じて使い分けられている。
【0003】
ここで、使用するバインダー成分としては、固体状のものと液体状のものとがある。そして固体状のものに求められる特性としては、耐火骨材に分散し易くて偏析を起し難いこと、耐火骨材の表面に付着あるいはコーティングさせるために使用する溶剤に溶解し易くまた乾燥し易いこと、プレス成形する際に荷重をかけたときに変形し易く成形性が良いこと、高温度で処理されて焼成されたときに残留炭素量が高いことなどがある。また液体状のものに求められる特性としては、耐火骨材に濡れ易く細孔にまで浸透し易いこと、プレス成形する際に成形性が良いこと、高温度で処理されて焼成されたときに残留炭素量が高いことなどがあり、さらに、混練して調製された耐火物組成物(杯土)が成形するまでの間に吸湿したり乾燥することによって杯土の湿潤度が変化すると、成形性が安定せず、成形厚みが厚くなったり薄くなったりして、れんがの歩留まりが低下する不具合が生じるので、杯土を作製した後成形するまでの間に吸湿し難くまた溶剤が蒸発し難いことも求められる特性の一つである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの特性のうち、成形性と残留炭素量は重要な因子の一つである。そこでバインダー成分として固体状のものを用いるときには、耐火骨材にバインダー成分を配合する際に使用したメタノールやエタノールなどの溶剤の一部を可塑性を与えるために耐火物組成物に残したり、高沸点の溶剤を可塑剤として耐火物組成物に添加したりして、耐火物組成物の流動性を高め、成形性を向上させるようにしている。しかし、溶剤は耐火物組成物を成形して乾燥したり焼成したりする際に揮発物として揮散してしまうために、耐火物の残留炭素量に溶剤は寄与することはなく、残留炭素量が高く緻密な耐火物を得ることはできない。しかも溶剤が蒸発するに従って耐火物組成物の湿潤度が変化し、成形性を一定に保つことが難しい。
【0005】
また液体状のバインダー成分の場合にも、樹脂の粘度を下げたりするためにエチレングリコールやプロピレングリコールなどを用いるのが一般的であるが、この場合も耐火物組成物を成形して乾燥したり焼成したりする際にエチレングリコールやプロピレングリコールは揮発物として揮散し、耐火物の残留炭素量に寄与することはなく、残留炭素量が高く緻密な耐火物を得ることはできない。しかもエチレングリコールやプロピレングリコールは吸湿し易いため、耐火物組成物を成形するまでの間にその湿潤度が変化して成形性を一定に保つことが難しい。
【0006】
さらに、これらのいずれの場合も、耐火物組成物を成形して乾燥・硬化したり焼成したりする際に、成形性を与えるために用いた溶剤類や、バインダーが硬化したり炭化する時に生成する揮発物により環境が汚染されるおそれがあると共に、また溶剤類や揮発物で耐火物の気孔率が高くなって、耐食性が低下するという問題もあった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、成形性及び成形の安定性に優れ、しかも残留炭素量が高く耐食性の良好な耐火物を得ることができる耐火物組成物を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る耐火物組成物は、耐火骨材に、バインダー成分としてフェノール樹脂及び大気圧における沸点が130℃以上で且つ側鎖が−CHOである複素環式化合物が配合された耐火物組成物であって、フェノール樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を用いると共にその硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン、トリオキサン、テトラオキサン、アセタール樹脂から選ばれるものを配合し、耐火骨材100質量部に対して上記フェノール樹脂の配合量を2〜40質量部、上記複素環式化合物の配合量を1〜50質量部の範囲に設定して成ることを特徴とするものである。
【0009】
また請求項2の発明は、請求項1において、耐火骨材として、少なくとも炭素質材料を配合するようにしたものである。
【0010】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、複素環式化合物として、25℃における蒸気圧が13.3hPa(10mmHg)以下のものを用いるようにしたものである。
【0011】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、フェノール樹脂として固体のものを用いるようにしたものである。
【0012】
また請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、フェノール樹脂として液体のものを用いるようにしたものである。
【0013】
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、複素環式化合物を、耐火骨材にフェノール樹脂を配合する際に同時に配合するようにしたものである。
【0014】
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、複素環式化合物を、フェノール樹脂に複素環式化合物を混合した状態で耐火骨材に配合するようにしたものである。
【0015】
また請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、複素環式化合物は、その一部を予めフェノール樹脂と反応させるようにしたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
本発明において耐火骨材としては、電融アルミナ、電融マグネシア等の電融品、焼成マグネシア等の焼成品、またボーキサイト、アンダリュサイト、シリマナイト等の天然原料の他、仮焼アルミナ、シリカフラワー等の超微粉原料など、粗粒から微粉まで任意の耐火原料を粒度配合して用いられる。また耐食性を向上させるために、溶融スラグとの濡れ性が悪い炭素質材料の粉末を耐火骨材として配合するのが好ましい。この炭素質材料としては天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、カーボンブラック、キッシュ黒鉛、メソフェースカーボン、木炭など任意の炭素質のものを用いることができるが、できるだけ高純度のものを用いるのが好ましい。耐火骨材としてはさらに、Al,Mg,Ca,Siやこれらの合金の一種あるいは二種以上を配合して用いることもできる。さらに炭素材料の酸化防止剤などとして各種の炭化物、硼化物、窒化物、例えばSiC,B4C,BN,Si3N4等を用いることもできる。
【0018】
これらの耐火骨材にバインダー成分を配合して混練することによって、耐火物組成物を得ることができるが、本発明ではバインダー成分としてフェノール樹脂及び複素環式化合物を用いるようにしたところに特徴を有するものである。
【0019】
ここで、フェノール樹脂はフェノール類とアルデヒド類を反応触媒の存在下で反応させることによって調製したものを用いることができる。フェノール類はフェノール及びフェノールの誘導体を意味するものであり、例えばフェノールの他にm−クレゾール、レゾルシノール、3,5−キシレノールなどの3官能性のもの、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルメタンなどの4官能性のもの、o−クレゾール、p−クレゾール、p−ter−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4又は2,6−キシレノールなどの2官能性のo−又はp−置換のフェノール類を挙げることができ、さらに塩素又は臭素で置換されたハロゲン化フェノールなども用いることができる。勿論、これらから一種を選択して用いる他、複数種のものを混合して用いることもできる。
【0020】
またアルデヒド類としては、水溶液の形態であるホルマリンが最適であるが、パラホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンのような形態のものも用いることもでき、その他、ホルムアルデヒドの一部を2−フルアルデヒドやフルフリルアルコールに置き換えて使用することも可能である。
【0021】
上記のフェノール類とアルデヒド類の配合比率は、モル比で1:0.5〜1:3.5の範囲になるように設定するのが好ましい。また反応触媒としては、ノボラック型フェノール樹脂を調製する場合は、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、あるいはシュウ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸、さらに酢酸亜鉛などを用いることができる。
【0022】
保存安定性の面や、耐火骨材が酸性(例えばケイ石)か塩基性(例えばMgO)を問わず使用可能な点などを考慮すると、ノボラック型フェノール樹脂が最も好ましく、本発明ではノボラック型フェノール樹脂を単独で使用するものである。ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、トリオキサン、テトラオキサン、アセタール樹脂などを用いることができる。
【0023】
耐火骨材とフェノール樹脂との接着性を高めるために、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤を添加して使用することもできる。
【0024】
また、本発明において使用される複素環式化合物は、フェノール樹脂をある程度溶解する能力を有し、そして大気圧(蒸気圧が水銀柱で760mm(0.101MPa))における沸点が130℃以上のものから選ばれるものである。沸点が高いほうが好ましいが、実用上300℃程度が上限である。また使用環境温度で液状である必要があり、融点が50℃以下であることが望ましく、さらに、25℃における蒸気圧が13.3hPa(10mmHg)以下のものが好ましい。蒸気圧は低いほうが好ましいが、実用上0.133hPa(0.1mmHg)程度が下限である。沸点は、同じか近いものでも、常温に近い温度での蒸気圧の違いにより、低温域でその蒸発温度の差が大きいことがある。
【0025】
複素環式化合物としては、1種を単独で用いる他、2種以上を併用することもできるが、側鎖に−CHOを有する複素環式化合物がより好ましく、2−フルアルデヒドなどを挙げることができる。
【0026】
しかして、耐火骨材にバインダー成分として上記のフェノール樹脂及び複素環式化合物を配合して混練することによって、耐火物組成物を調製することができるものであるが、フェノール樹脂としては固体のものを用いることも、液体のものを用いるようにしてもいずれでもよい。そして、複素環式化合物はバインダー成分であると同時にフェノール樹脂の溶剤としても作用し、耐火物組成物を調製することができるものである。耐火骨材に対するフェノール樹脂や複素環式化合物の配合量は、特に制限されるものではないが、耐火骨材100質量部に対して、フェノール樹脂を2〜40質量部、複素環式化合物を1〜50質量部の範囲が好ましい。複素環式化合物の溶解能力は種類によって多少異なるものであり、フェノール樹脂が完全には溶解せず、一部が沈殿物や固形物として残ってもよい。
【0027】
上記の複素環式化合物は耐火骨材にフェノール樹脂を配合する際に同時に、あるいはフェノール樹脂とは別に配合するようにしてもよいが、予めフェノール樹脂に複素環式化合物を混合した状態で耐火骨材に配合するようにしてもよい。フェノール樹脂として固体のものを用いる場合、複素環式化合物にフェノール樹脂を溶解して液状にした状態で、耐火骨材に混合することができるものであり、またフェノール樹脂として液体のものを用いる場合、フェノール樹脂の粘度を複素環式化合物で下げた状態で、耐火骨材に混合することができるものであり、いずれも、耐火骨材に対するフェノール樹脂の混合・混練の作業性を高めることができるものである。さらに、複素環式化合物にフェノール樹脂を溶解して加熱することによってフェノール樹脂を複素環式化合物で変性することができ、このように複素環式化合物の一部を予めフェノール樹脂と反応させた状態で使用することもできる。
【0028】
ここで、上記の複素環式化合物は耐火骨材などに対して濡れ易く、耐火骨材のポアーな部分など細部まで浸透し易いものであり、従って複素環式化合物とフェノール樹脂からなるバインダー成分を耐火骨材に均一に混合・混練することができるものである。また上記の複素環式化合物はフェノール樹脂を溶解し、フェノール樹脂を濃度高く溶解しても溶液は粘度を低く維持することができるので、他の溶剤を多量に併用したりする必要がなくなるものである。
【0029】
そして、複素環式化合物は耐火物組成物の可塑剤として働き、耐火物組成物を成形するにあたって、成形性が良好になるものである。また複素環式化合物は沸点が130℃以上と高いことに加えて、25℃での蒸気圧が13.3hPa以下であるため、耐火物組成物中の複素環式化合物の蒸発は極めて少なく、しかも上記の複素環式化合物は脂肪族化合物に比較して空気中の水分を吸湿することも極めて小さい。従って、耐火物組成物を混練して調製してから成形するまでの間、耐火物組成物の湿潤度が変化せず安定するものであり、成形性を一定に保つことができるものである。
【0030】
そして耐火物組成物を成形した後、この成形物を加熱して乾燥や硬化したり、あるいは焼成したりすることによって、耐火物を得ることができるものである。ここで、上記のように多量の溶剤を配合する必要がないので、耐火物組成物を成形した後に乾燥したり焼成したりする際に揮発する溶剤で環境を汚染することが少なくなると共に、溶剤の揮発で耐火物の気孔率が高くなって耐火物の耐食性が低下することがなくなるものである。さらに側鎖に−CHO基を有する複素環式化合物はフェノール樹脂のフェノール核と容易に反応して高分子化すると共に、それら自身も自己縮合して高分子化し、焼成されることによって炭素として耐火物中に残留するものであり、耐火物の残留炭素量を増加させることができるものである。
【0031】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0032】
(実施例1)
反応容器にフェノール940質量部、37質量%ホルマリン673質量部、シュウ酸5.6質量部を仕込み、約60分を要して還流させ、そのまま180分間反応させた後、水と未反応のフェノールを留去することによって、軟化点が99℃の固形のノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0033】
次に、このノボラック型フェノール樹脂を粉砕して、粒径100μm以下の粉末にし、この粉末100質量部にヘキサメチレンテトラミン10質量部を加えて良く混合し、ノボラック型フェノール樹脂Aを得た。
【0034】
そして、耐火骨材として電融アルミナ80質量部、純度98%の天然黒鉛18質量部、Alの粉末2質量部を用い、これをミキサーに投入すると共に、さらに上記のノボラック型フェノール樹脂Aを9質量部投入し、10分間混練した後、70〜80℃で、これに2−フルアルデヒド(沸点161.8℃、蒸気圧3.3hPa(2.5mmHg)/25℃)を3質量部添加し、20分間混練することによって、湿潤状態の混練物(杯土A)を得た。この杯土Aに用いた配合でフェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン及び2−フルアルデヒドを混合したものについてJIS K 6910(1999)に準拠して測定した固定炭素量は58.5質量%であった。
【0035】
次に、杯土Aの混練を行なった翌日に、この杯土を200℃で1時間乾燥し、揮発分を測定した。その結果は3.1質量%であった。また混練翌日の杯土を油圧プレスを用いて98MPa(1000kgf/cm2)で成形し、成形物を200℃で10時間乾燥することによって、れんがを得た。このれんがのかさ比重は2.224、曲げ強さは10.1MPaであった。
【0036】
また、上記の杯土Aをステンレスバットに入れ、このステンレスバットを上面を開放した状態で温度30℃、湿度90%RHに設定した恒温恒湿機中に入れて1週間放置した。この杯土について上記と同様にして揮発分を測定したところ、3.4質量%であり、またこの杯土から上記と同様にして得たれんがのかさ比重は2.216、曲げ強さは10.5MPaであった。
【0037】
(比較例5)
反応容器にフェノール940質量部、37質量%ホルマリン632質量部、シュウ酸5.6質量部を仕込み、約60分を要して還流させ、そのまま180分間反応させた後、水と未反応のフェノールを留去することによって、軟化点が93℃の固形のノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0038】
次に、同じ反応容器中にこのノボラック型フェノール樹脂25質量部に対してフルフリルアルコール(沸点171℃、蒸気圧0.8hPa(0.6mmHg)/25℃)75質量部を加え、100℃で120分間混合溶解して、ノボラック型フェノール樹脂溶液Bを得た。このノボラック型フェノール樹脂溶液Bの25℃における粘度は24mPa・sであった。
【0039】
そして、実施例1と同じ耐火骨材100質量部に、実施例1のノボラック型フェノール樹脂Aを9質量部添加し、これをミキサーに投入して10分間混練した後、さらに70〜80℃で、上記のノボラック型フェノール樹脂溶液Bを4質量部投入し、20分間混練することによって、湿潤状態の混練物(杯土B)を得た。この杯土Bに用いた配合でフェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン及びフルフリルアルコールを混合したものについてJIS K 6910(1999)に準拠して測定した固定炭素量は51.2質量%であった。
【0040】
次に、杯土Bの混練を行なった翌日に、実施例1と同様にして杯土の揮発分を測定したところ3.1質量%であり、またこの杯土を実施例1と同様に成形・乾燥して得たれんがのかさ比重は2.220、曲げ強さは11.1MPaであった。さらに、実施例1と同様に1週間放置した後の杯土の揮発分は3.4質量%であり、またこの杯土から実施例1と同様にして得たれんがのかさ比重は2.215、曲げ強さは11.5MPaであった。
【0041】
(実施例2)
反応容器にフェノール940質量部、37質量%ホルマリン567質量部、シュウ酸5.6質量部を仕込み、約60分を要して還流させ、そのまま180分間反応させた後、水と未反応のフェノールを留去することによって、軟化点が80℃の固形のノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0042】
次に、同じ反応容器中にこのノボラック型フェノール樹脂60質量部に対して2−フルアルデヒド40質量部を加え、100℃で120分間混合溶解して、ノボラック型フェノール樹脂溶液Cを得た。このノボラック型フェノール樹脂溶液Cの25℃における粘度は7.7Pa・sであった。
【0043】
そして、実施例1と同じ耐火骨材100質量部に、上記のノボラック型フェノール樹脂溶液Cを8質量部及びヘキサメチレンテトラミン0.8質量部を添加し、これをミキサーに投入して70〜80℃で40分間混練することによって、湿潤状態の混練物(杯土C)を得た。この杯土Cに用いた配合でフェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン及び2−フルアルデヒドを混合したものについてJIS K 6910(1999)に準拠して測定した固定炭素量は45.3質量%であった。
【0044】
次に、杯土Cの混練を行なった翌日に、実施例1と同様にして杯土の揮発分を測定したところ2.9質量%であり、またこの杯土を実施例1と同様に成形・乾燥して得たれんがのかさ比重は2.259、曲げ強さは11.5MPaであった。さらに、実施例1と同様に1週間放置した後の杯土の揮発分は2.7質量%であり、またこの杯土から実施例1と同様にして得たれんがのかさ比重は2.260、曲げ強さは11.8MPaであった。
【0045】
(比較例6)
反応容器にフェノール940質量部、37質量%ホルマリン1217質量部をとり、これに触媒として20質量%濃度のカセイソーダ水溶液を60質量部加え、60分を要して還流させ、そのまま90分間反応を行なった。その後、直ちに13300Paの減圧下で100℃まで脱液し、半固体状のレゾール型フェノール樹脂を得た。
【0046】
次に、同じ反応容器中にこのレゾール型フェノール樹脂80質量部に対して2−フルアルデヒド20質量部を加え、2時間混合して溶解させ、レゾール型フェノール樹脂溶液Dを得た。このレゾール型フェノール樹脂溶液Dの25℃における粘度は9.8Pa・sであった。
【0047】
そして、実施例1と同じ耐火骨材100質量部に、上記のレゾール型フェノール樹脂溶液Dを8質量部及びヘキサメチレンテトラミン0.8質量部を添加し、これをミキサーに投入して70〜80℃で40分間混練することによって、湿潤状態の混練物(杯土D)を得た。この杯土Dに用いた配合でフェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン及び2−フルアルデヒドを混合したものについてJIS K 6910(1999)に準拠して測定した固定炭素量は51.5質量%であった。
【0048】
次に、杯土Dの混練を行なった翌日に、実施例1と同様にして杯土の揮発分を測定したところ3.1質量%であり、またこの杯土を実施例1と同様に成形・乾燥して得たれんがのかさ比重は2.261、曲げ強さは10.8MPaであった。さらに、実施例1と同様に1週間放置した後の杯土の揮発分は3.0質量%であり、またこの杯土から実施例1と同様にして得たれんがのかさ比重は2.263、曲げ強さは11.5MPaであった。
【0049】
(比較例1)
2−フルアルデヒドの代りにエチレングリコール(沸点197.8℃、蒸気圧0.9hPa(0.7mmHg)/25℃)を用い、50分間混練するようにした他は、実施例1と同様にして湿潤状態の混練物(杯土E)を得た。この杯土Eに用いた配合でフェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン及びエチレングリコールを混合したものについてJIS K 6910(1999)に準拠して測定した固定炭素量は40.3質量%であった。
【0050】
次に、杯土Eの混練を行なった翌日に、実施例1と同様にして杯土の揮発分を測定したところ3.2質量%であり、またこの杯土を実施例1と同様に成形・乾燥して得たれんがのかさ比重は2.336、曲げ強さは10.1MPaであった。さらに、実施例1と同様に1週間放置した後の杯土の揮発分は5.6質量%であった。この1週間放置後の杯土はべた付き、成形時に水と思われる液状物がしみ出して金型に貼り付き、成形物を得ることができなかった。
【0051】
(比較例2)
2−フルアルデヒドの代りにエチレングリコールを用いるようにした他は、比較例6と同様にしてノボラック型フェノール樹脂溶液Eを得た。このノボラック型フェノール樹脂溶液Eの25℃における粘度は8.6Pa・sであった。
【0052】
そしてこのノボラック型フェノール樹脂溶液Eを用いて実施例2と同様にして湿潤状態の混練物(杯土F)を得た。この杯土Fに用いた配合でフェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン及びエチレングリコールを混合したものについてJIS K 6910(1999)に準拠して測定した固定炭素量は37質量%であった。
【0053】
次に、杯土Fの混練を行なった翌日に、実施例1と同様にして杯土の揮発分を測定したところ3.6質量%であり、またこの杯土を実施例1と同様に成形・乾燥して得たれんがのかさ比重は2.240、曲げ強さは9.5MPaであった。さらに、実施例1と同様に1週間放置した後の杯土の揮発分は5.1質量%であった。この1週間放置後の杯土はべた付き、成形時に水と思われる液状物がしみ出して金型に貼り付き、成形物を得ることができなかった。
【0054】
(比較例3)
2−フルアルデヒドの代りにエチレングリコールを用いるようにした他は、比較例6と同様にしてレゾール型フェノール樹脂溶液Fを得た。このレゾール型フェノール樹脂溶液Fの25℃における粘度は10.5Pa・sであった。
【0055】
そしてこのレゾール型フェノール樹脂溶液Fを用いて比較例6と同様にして湿潤状態の混練物(杯土G)を得た。この杯土Gに用いた配合でフェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン及びエチレングリコールを混合したものについてJIS K 6910(1999)に準拠して測定した固定炭素量は37.5質量%であった。
【0056】
次に、杯土Gの混練を行なった翌日に、実施例1と同様にして杯土の揮発分を測定したところ3.3質量%であり、またこの杯土を実施例1と同様に成形・乾燥して得たれんがのかさ比重は2.264、曲げ強さは9.8MPaであった。さらに、実施例1と同様に1週間放置した後の杯土の揮発分は5.4質量%であった。この1週間放置後の杯土はべた付き、成形時に水と思われる液状物がしみ出して金型に貼り付き、成形物を得ることができなかった。
【0057】
(比較例4)
2−フルアルデヒドの代りにジオキサン(沸点101.3℃、蒸気圧53.3hPa(40mmHg)/25℃)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして湿潤状態の混練物(杯土H)を得た。この杯土Hに用いた配合でフェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミン及びエチレングリコールを混合したものについてJIS K 6910(1999)に準拠して測定した固定炭素量は43.5質量%であった。
【0058】
次に、杯土Hの混練を行なった翌日に、実施例1と同様にして杯土の揮発分を測定したところ3.0質量%であり、またこの杯土を実施例1と同様に成形・乾燥して得たれんがのかさ比重は2.214、曲げ強さは9.3MPaであった。さらに、実施例1と同様に1週間放置した後の杯土の揮発分は2.8質量%であり、この杯土を成形したれんがのかさ比重は2.208、曲げ強さは8.9MPaであった。
【0059】
上記の実施例1〜2及び比較例1〜6の配合及び測定結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1にみられるように、実施例1〜2のものは、残留炭素量が多く、また杯土の性状やれんがの物性の経時変化が殆どみられないものであった。
【0062】
【発明の効果】
上記のように本発明に係る耐火物組成物は、耐火骨材に、バインダー成分としてフェノール樹脂及び大気圧における沸点が130℃以上で且つ側鎖が−CHOである複素環式化合物を配合して調製したものであり、またフェノール樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を用いると共にその硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン、トリオキサン、テトラオキサン、アセタール樹脂から選ばれるものを配合し、耐火骨材100質量部に対して上記フェノール樹脂の配合量を2〜40質量部、上記複素環式化合物の配合量を1〜50質量部の範囲に設定したものであるから、この複素環式化合物はフェノール樹脂の溶剤として作用し、成形性を高めることができると共に、この複素環式化合物は焼成によって炭素化するものであって残留炭素量が高く耐食性の良好な耐火物を得ることができるものであり、しかもこの複素環式化合物は蒸発や吸湿がし難く、耐火物組成物の湿潤度が変化せず、成形性を一定に保つことができるものである。
Claims (8)
- 耐火骨材に、バインダー成分としてフェノール樹脂及び大気圧における沸点が130℃以上で且つ側鎖が−CHOである複素環式化合物が配合された耐火物組成物であって、フェノール樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を用いると共にその硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン、トリオキサン、テトラオキサン、アセタール樹脂から選ばれるものを配合し、耐火骨材100質量部に対して上記フェノール樹脂の配合量を2〜40質量部、上記複素環式化合物の配合量を1〜50質量部の範囲に設定して成ることを特徴とする耐火物組成物。
- 耐火骨材として、少なくとも炭素質材料が配合されて成ることを特徴とする請求項1に記載の耐火物組成物。
- 複素環式化合物は、25℃における蒸気圧が13.3hPa以下のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火物組成物。
- フェノール樹脂は、固体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の耐火物組成物。
- フェノール樹脂は、液体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の耐火物組成物。
- 複素環式化合物は、耐火骨材にフェノール樹脂を配合する際に同時に配合されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の耐火物組成物。
- 複素環式化合物は、フェノール樹脂に複素環式化合物を混合した状態で耐火骨材に配合されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の耐火物組成物。
- 複素環式化合物はその一部が予めフェノール樹脂と反応されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の耐火物組成物。
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