JP3757654B2 - レーザー熱転写用インクシートおよびレーザー熱転写記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザー熱転写用インクシート、レーザー熱転写用記録媒体およびレーザー熱転写記録方法に関し、詳しくは比較的広い範囲の剥離条件においても安定して剥離現像可能であるレーザー熱転写用インクシート、レーザー熱転写用記録媒体およびレーザー熱転写記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタルデータからの画像形成技術が普及したことに伴い、特に印刷の分野ではダイレクトデジタルカラープルーフ(DDCP)のニーズが高まっている。DDCPにおいては印刷物の色再現・安定再現が求められる。
【0003】
かかる場合、熱転写記録媒体の剥離条件(熱転写後の経時による記録媒体の温度変化、速度、角度)により、インク層の転写性が変化する。そのため剥離条件が不安定であると、転写も不安定にる。
【0004】
特に高解像度のレーザー熱転写記録方法を用い、熱転写後の経時を伴って、冷時剥離を行う場合で、且つ剥離角度が小さい場合は顕著であり、剥離ムラはそのまま濃度ムラなどの欠陥を生じやすい。
【0005】
また、剥離角度が十分に取れない場合、レーザー光強度の弱い部分の転写が起こりにくくなるために、その部分が未転写となり、レーザー走査方向にスダレ状に欠陥が生じることがあった。
【0006】
この状況を回避するためには、記録材料のインク層と光熱変換層との剥離性を良くする素材を選択したり(特開平8−267916号参照)、剥離角度をなるべく大きくとりながら一定条件で剥離するために、径の比較的小さい剥離ローラーを用いて剥離条件を一定化していた。
【0007】
しかしながら、従来の記録材料及び中間転写記録媒体では、高エネルギー記録において、剥離強度が大きくなり、剥離ムラが生じることがあった。また、剥離ローラーを用いることは装置が複雑になること、材料が高い曲率を持って搬送されるために画像に傷がついたりするなどと言った弊害があった。
【0008】
剥離ローラーを簡単な剥離ガイド等により設計する方が、装置コストの低減、搬送トラブルの防止に有効であるが、記録材料は剥離現像が剥離条件に依存しないものに改善する必要が生じた。
【0009】
本発明ではインクシート、中間転写媒体(受像シート)の物性値等を数値限定することにより、比較的広い範囲の剥離条件においても安定して剥離現像可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、比較的広い範囲の剥離条件においても安定して剥離現像可能であるレーザー熱転写用インクシート、レーザー熱転写用記録媒体およびレーザー熱転写記録方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、50〜100μmの厚みを有する支持体上に少なくとも光熱変換層とインク層とを有するレーザー熱転写用インクシートにおいて、該インク層が60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂を65重量%以上95重量%以下含有し、且つ0.52g/m2以上0.90g/m2以下の膜厚を有し、更に、該インク層の膜厚より大きい粒径のマット材を有し、該マット材のインク層の表面からの突出高さが3.5μm未満であり、且つ突出部位が400〜4000個/mm2の頻度であることを特徴とするレーザー熱転写用インクシートである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂は、2種類以上の組み合わせからなり、軟化点の最も高い熱可塑性樹脂と、最も低い熱可塑性樹脂との軟化点の差が20〜80℃であることを特徴とする請求項1記載のレーザー熱転写用インクシートである。
【0015】
上記課題を解決する請求項3に記載の発明は、50〜100μmの厚みを有する支持体上に少なくとも光熱変換層とインク層を有するレーザー熱転写用インクシートと、少なくとも熱可塑性樹脂層と前記レーザー熱転写用インクシートのインク層を受容しうる受像層とを有するレーザー熱転写用受像シートとを用い、前記レーザー熱転写用インクシートのインク層面と前記レーザー熱転写用受像シートの受像層面とを減圧密着させ、該インク層側からレーザー光を照射し光熱変換して該インク層を受像層側に熱転写し、十分に前記レーザー熱転写用インクシートの熱が放出された後にレーザー熱転写用インクシートをレーザー熱転写用受像シートから剥離してレーザー熱転写用受像シート上に熱転写画像を形成するレーザー熱転写記録方法において、前記レーザー熱転写用インクシートとしてインク層が60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂を65重量%以上95重量%以下含有し、且つ0.52g/m2以上0.90g/m2以下の膜厚を有し、更に、該インク層の膜厚より大きい粒径のマット材を有し、該マット材のインク層の表面からの突出高さが3.5μm未満であり、且つ突出部位が400〜4000個/mm2の頻度であるものを用い、前記レーザー熱転写用インクシートとレーザー熱転写用受像シートの剥離の際に剥離ガイドもしくは剥離ロール等の部材によって剥離角度を30度未満に規制することを特徴とするレーザー熱転写記録方法である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂は、2種類以上の組み合わせからなり、軟化点の最も高い熱可塑性樹脂と、最も低い熱可塑性樹脂との軟化点の差が20〜80℃であることを特徴とする請求項3記載のレーザー熱転写記録記録方法である。
【0018】
請求項5に記載の発明は、50〜100μmの厚みを有する支持体上に少なくとも光熱変換層とインク層を有するレーザー熱転写用インクシートと、少なくとも熱可塑性樹脂層と前記レーザー熱転写用インクシートのインク層を受容しうる受像層とを有するレーザー熱転写用受像シートとを用い、前記レーザー熱転写用インクシートのインク層面と前記レーザー熱転写用受像シートの受像層面とを減圧密着させ、該インク層側からレーザー光を照射し光熱変換して該インク層を受像層側に熱転写し、十分に前記レーザー熱転写用インクシートの熱が放出された後にレーザー熱転写用インクシートをレーザー熱転写用受像シートから剥離してレーザー熱転写用受像シート上に熱転写画像を形成するレーザー熱転写記録方法において、前記レーザー熱転写用インクシートとしてインク層が60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂を65重量%以上95重量%以下含有し、且つ0.52g/m2以上0.90g/m2以下の膜厚を有し、前記レーザー熱転写用受像シートの熱可塑性樹脂層を構成する樹脂のvicat軟化点が80℃以下であり、前記インク層に該層膜厚より大きい粒径のマット材を含有し、該マット材のインク層の表面からの突出高さが3.5μm未満であり、且つ突出部位が400〜4000個/mm2の頻度であることを特徴とするレーザー熱転写用記録媒体を用い、前記レーザー熱転写用インクシートとレーザー熱転写用受像シートの剥離の際に剥離ガイドもしくは剥離ロール等の部材によって剥離角度を30度未満に規制することを特徴とするレーザー熱転写記録方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
本発明に用いられる露光装置の一例を図1に基づいて説明する。
【0021】
図1において、1はレーザー熱転写用インクシートおよび受像シートを収納する材料収納部であり、5はインクシート収納部、6は受像シート収納部である。
【0022】
2は材料収納部1から受像シート及びインクシートを露光ドラム9に供給する材料供給部である。7は受像シート及びインクシートを搬送するためのガイド板であり、8は受像シート及びインクシートに付着したゴミを除去するための粘着ロールである。3は露光部であり、レーザーヘッド10とレーザーヘッドキャリッジ11が備えられている。
【0023】
先ず、受像シート収納部6から受像シートが露光部3に供給され、露光ドラム9に受像面を上にして巻き付けられる。次にインクシート収納部5から供給されたインクシートが、そのインク層が露光ドラム9に巻き付けられた受像シートの受像面に接するように巻き付けられ、レーザーヘッド10から供給されるレーザーで露光される。露光によりインクシートの色材は受像シート上に転写され、受像シート上に画像を形成する。
【0024】
4は露光済みの受像シート及びインクシートを排出する排出部である。排出部4では先ず露光済みのインクシートが装置背面(図面上右側)に排出され、続いて受像面に画像が形成された受像シートが排出される。受像シートは図示のように一旦水平方向に搬出された後、再度方向転換し、図面の左上方に搬出される。このような搬出方向の転換をはかると、画像面の傷つき防止等に効果的である。
【0025】
本発明のレーザー熱転写用インクシートは、少なくとも光熱変換層とインク層とを有するレーザー熱転写用インクシートにおいて、該インク層が60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂を65重量%以上95重量%以下含有し、且つ0.52g/m2以上0.90g/m2以下の膜厚を有することを特徴とする。
【0026】
この発明において、環球法軟化点は、JIS K‐2531により規定された方法で測定できる。
【0027】
60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂としては、エチレン系共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ロジン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アイオノマー樹脂、石油系樹脂、および特開平6−312583号に記載のインク層バインダー用樹脂等で、60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0028】
この発明において、環球法軟化点が150℃を越えると、十分な熱転写感度が得られない。また60℃未満では熱転写感度を有していても、圧力カブリが生じたり、保存時にブロッキングを起こすなどの弊害が生じる。
【0029】
またこの発明において、安定した剥離を実現するには、凝集破壊を起こしやすい顔料が主体では好ましくなく、熱可塑性樹脂が65重量%以上であることがよい。
【0030】
また0.52g/m2以上の膜厚程度の付き量があると剥離時にインク層が途中で破断しにくく、剥離が安定する。
【0031】
この発明において、上記の60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂は、2種類以上の組み合わせからなり、軟化点の最も高い熱可塑性樹脂と、最も低い熱可塑性樹脂との軟化点の差が20〜80℃であることが好ましい。軟化点の高い樹脂は露光加熱時の軟化粘度が高いため均一な転写性が得られ、軟化点の低い樹脂は熱転写感度を高める効果があると共に、軟化点が異なる樹脂を用いると、露後部と非露後部との境界にてインク層の凝集力を下げる効果があるため、露光後のインクシート剥離時に剥離力を下げることが出来、結果として安定した剥離と均一濃度のインク転写を行うことが可能となる。
【0032】
軟化点の差が80℃を越えると、軟化点が150℃以上の樹脂を用いることとなり、感度の減少を招くとともに、インク層の冷時における凝集力を高めることから安定した剥離が得られない。軟化点差が20℃未満では均一な転写性と剥離力の低減を両立させることが難しくなる。
【0033】
またこの発明において、インク層が、該インク層膜厚より大きい粒径のマット材を有し、該マット材の突出高さが3.5μm未満であり、且つ突出部位が400〜4000個/mm2の頻度であることが好ましい。
【0034】
ここで、突出高さというのは、インク層の表面から突出したマット材の高さの水平距離をいう。即ち、図2に示すように、突出高さはインク層15の表面とマット材16の上端の水平距離をいう。この測定は、光学的な方法で行う。
【0035】
突出部位の頻度は、受像面を上から光学顕微鏡にて観察し、突出したマットの頻度を計測する。
【0036】
突出高さは、3.5μmより大きいと、受像面とインク面との距離が離れすぎ、十分な熱転写感度が得られにくい。
【0037】
また頻度が4000個/mm2より大きいと受像面とインク面との露光加熱時の密着性が阻害され、十分な感度が得られにくいのみならず、断熱効果によってレーザー光照射時における光熱変換層の到達温度が高まりインク層と光熱変換層が熱融着を起こす結果、インクシートの剥離力が過度に上昇し安定した剥離現像が出来ず画像ムラの発生、インクシート剥離時に受像シートが減圧ドラムから離脱するといった弊害が生じる。400個/mm2未満ではインク面と受像面との局所密着性が強くなりすぎ、減圧密着を行う際シートの端部のみ密着するため、シート中央部は十分な減圧密着性が得られず、均一なインク層転写が阻害されてしまう。
【0038】
本発明のレーザー熱転写用記録媒体は、少なくとも光熱変換層とインク層を有するレーザー熱転写用インクシートと、少なくとも熱可塑性樹脂層と前記インクシートのインク層を受容しうる受像層を有するレーザー熱転写用受像シートによって少なくとも構成されるレーザー熱転写用記録媒体において、前記受像シートの熱可塑性樹脂層を構成する樹脂のvicat軟化点が80℃以下であり、前記受像層とインク層のいずれか一方に該層膜厚より大きい粒径のマット材を含有し、該マット材の突出高さが3.5μm未満であり、且つ突出部位が400〜4000個/mm2の頻度であることを特徴とする。
【0039】
この発明において、vicat軟化点は、JIS K‐6760により規定される。受像シートの熱可塑性樹脂層を構成する樹脂のvicat軟化点が80℃を越えると、紙などの最終画像担持体へのラミネートによる転写性が劣るので好ましくない。
【0040】
受像層とインク層のいずれか一方に含有されるマット材としては、有機又は無機の微粒子が使用できる。有機系マット材としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、その他のラジカル重合系ポリマーの微粒子、ポリエステル、ポリカーボネートなど縮合ポリマーの微粒子などが挙げられる。
【0041】
マット化はインク面、受像面どちらにしてもよく、受像層とインク層のいずれか一方に該層膜厚より大きい粒径のマット材を含有することにより、減圧密着時に均一な密着を得ることができ、結果として剥離ムラを軽減することができる。
【0042】
突出高さ及び頻度の臨界効果は上記の発明と同義である。
【0043】
本発明のレーザー熱転写記録方法は、少なくとも光熱変換層とインク層を有するレーザー熱転写用インクシートと、少なくとも熱可塑性樹脂層と前記インクシートのインク層を受容しうる受像層とを有するレーザー熱転写用受像シートとを用い、前記インクシートのインク層面と前記受像シートの受像層面とを減圧密着させ、該インク層側からレーザー光を照射し光熱変換して該インク層を受像層側に熱転写し、十分に前記インクシートの熱が放出された後に、即ち、冷時剥離によってインクシートを受像シートから剥離して受像シート上に熱転写画像を形成するレーザー熱転写記録方法において、前記インクシートとしてインク層が60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂を65重量%以上95重量%以下含有し、且つ0.52g/m2以上0.90g/m2以下の膜厚を有するものを用い、前記インクシートと受像シートの剥離の際に剥離ガイドもしくは剥離ロール等の部材によって剥離角度を30度未満に規制することを特徴とする。
【0044】
図3及び図4は剥離部材の構成を示す図であり、図3において、20は露光ドラム9の上部に設けられた剥離ガイドである。図3に示す形態では、この剥離ガイド20を剥離方向を挟んで両側にそれぞれ設けているが、いずれか一方のみに設けられるものでもよい。図4において、21は露光ドラム9の上部に設けられた剥離ローラーである。
【0045】
剥離角度というのは、剥離工程における受像シートに対するインクシートとの剥離内角を表す。詳しくは図5に示すように、インクシート12と受像シート13は剥離され、その剥離角度は30度を示している。
【0046】
剥離角度が大きいと、剥離後インクシートの排出パスが複雑となる問題があるので、剥離が剥離ガイドによって剥離角度が規制され、かつ剥離角度が30度未満であることが重要である。
【0047】
本発明の方法において、好ましい態様は、60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂は、2種類以上の組み合わせからなり、軟化点の最も高い熱可塑性樹脂と、最も低い熱可塑性樹脂との軟化点の差が20〜80℃であることであり、またインク層が、該インク層膜厚より大きい粒径のマット材を含有し、該マット材の突出高さが3.5μm未満であり、且つ突出部位が400〜4000個/mm2の頻度であることである。
【0048】
本発明の他のレーザー熱転写記録方法は、少なくとも光熱変換層とインク層を有するレーザー熱転写用インクシートと、少なくとも熱可塑性樹脂層と前記インクシートのインク層を受容しうる受像層とを有するレーザー熱転写用受像シートとを用い、前記インクシートのインク層面と前記受像シートの受像層面とを減圧密着させ、該インク層側からレーザー光を照射し光熱変換して該インク層を受像層側に熱転写し、十分に前記インクシートの熱が放出された後にインクシートを受像シートから剥離して受像シート上に熱転写画像を形成するレーザー熱転写記録方法において、前記受像シートとの熱可塑性樹脂層を構成する樹脂のvicat軟化点が80℃以下であり、前記受像層とインク層のいずれか一方に該層膜厚より大きい粒径のマット材を含有し、該マット材の突出高さが3.5μm未満であり、且つ突出部位が400〜4000個/mm2の頻度であることを特徴とするレーザー熱転写用記録媒体を用い、前記インクシートと受像シートの剥離の際に剥離ガイドもしくは剥離ロール等の部材によって剥離角度を30度未満に規制することを特徴とするレーザー熱転写記録方法である。
【0049】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0050】
本発明において好ましく採用されるレーザー熱転写記録方法は、インク層の転写は溶融型転写、アブレーションによる転写、昇華型転写のいずれでもよく、レーザービームを熱に変換しその熱エネルギーを利用してインクを受像シートに転写し、受像シート(受像シート上の画像は紙などの最終画像担持体に転写されるので、この受像シートは中間転写媒体と称されることがある。)上に画像を形成する方法である。
【0051】
中でも溶融・アブレーション型は印刷に類似した色相の画像を作成するという点で好ましい。
【0052】
(インクシート)
本発明に用いられるインクシートは、光熱変換機能およびインク(色材)転写機能を有するフィルムであり、支持体上に少なくとも光熱変換機能を有する光熱変換層及びインク層を有してなり、必要に応じてこれらの層と支持体との間にクッション層、剥離層等を有することができる。
【0053】
支持体としては、剛性を有し、寸法安定性が良く、画像形成の際の熱に耐えるものならば何でもよく、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ナイロン、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムを使用することができる。
【0054】
支持体の厚みは50〜100μmの範囲が本発明の効果を良好に発揮する上で好ましい。
【0055】
本発明では、レーザー光をインクシートの裏面側から照射して画像を形成するので、支持体は透明であることが望ましい。また支持体は、搬送に適した剛性と柔軟性を有することが好ましい。
【0056】
レーザー溶融熱転写法において、インク層は、加熱時に溶融又は軟化して着色剤とバインダー等を含有する層毎転写可能である層であり、完全な溶融状態で転写しなくてもよい。
【0057】
上記着色剤としては、例えば無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄ならびに鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等)及び有機顔料(アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系の顔料、バット染料顔料、フタロシアニン顔料及びその誘導体、キナクリドン顔料等)などの顔料ならびに染料(酸性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、含金属油溶性染料又は昇華性色素等)を挙げることができる。
【0058】
例えばカラープルーフ材料とする場合、イエロー、マゼンタ、シアンがそれぞれ、C.I.21095又はC.I.21090,C.I.15850:1,C.I.74160の顔料が好ましく用いられる。
【0059】
インク層における着色剤の含有率は、所望の塗布膜厚で所望の濃度が得られるように調整すればよく、特に限定されないが、通常5〜70重量%の範囲内にあり、好ましくは10〜60重量%である。
【0060】
インク層のバインダーとしては、環球軟化点が60〜150℃の熱可塑性樹脂が用いられるが、更に熱溶融性物質、熱軟化性物質等を用いることもできる。
【0061】
熱溶融性物質は、通常、柳本MJP−2型を用いて測定した融点が40〜150℃の範囲内にある固体又は半固体の物質である。具体的には、カルナウバ蝋、木蝋、オウリキュリー蝋、エスパル蝋等の植物蝋;蜜蝋、昆虫蝋、セラック蝋、鯨蝋等の動物蝋;パラフィンワックス、マイクロクリスタルワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、酸ワックス等の石油蝋;並びにモンタン蝋、オゾケライト、セレシン等の鉱物蝋等のワックス類を挙げることができ、更にこれらのワックス類などの他に、パルミチン酸、ステアリン酸、マルガリン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸;パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、マルガニルアルコール、ミリシルアルコール、エイコサノール等の高級アルコール;パルミチン酸セチル、パルミチン酸ミリシル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸ミリシル等の高級脂肪酸エステル;アセトアミド、プロピオン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アミドワックス等のアミド類;並びにステアリルアミン、ベヘニルアミン、パルミチルアミン等の高級アミン類などが挙げられる。
【0062】
また本発明では上記の環球軟化点が60〜150℃の熱可塑性樹脂以外に天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ジエン系コポリマー等のエラストマー類;エステルガム、ロジンマレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、水添ロジン等のロジン誘導体;並びにフェノール樹脂、テルペン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂等の高分子化合物などを併用することもできる。
【0063】
上記熱溶融性物質及び熱可塑性物質を適宜に選択することにより、所望の熱軟化点あるいは熱溶融点を有する熱転写性を有するインク層を形成することができる。
【0064】
本発明においては、熱分解性の高いバインダーを使用することにより、アブレーション転写により画像形成も可能である。かかるバインダーとしては、平衡条件下で測定されたときに望ましくは200℃以下の温度で急速な酸触媒的部分分解を起こすポリマー物質が挙げられ、具体的にはニトロセルロース類、ポリカーボネート類およびJ.M.J.フレチェット(Frechet)、F.ボーチャード(Bouchard)、J.M.ホーリハン(Houlihan)、B.クリクズク(Kryczke)およびE.エイクラー(Eichler)、J.イメージング・サイエンス(Imaging Science)、30(2)、pp.59‐64(1986)に報告されているタイプのポリマー類、およびポリウレタン類、ポリエステル類、ポリオルトエステル類、およびポリアセタール類、並びにこれらの共重合体が含まれる。また、これらのポリマーは、その分解メカニズムと共に、上述のホーリー等の出願により詳細に示されている。
【0065】
顔料の粒径を揃えることで高濃度が得られることは特開昭62−158092号に開示されているが、顔料の分散性を確保し、良好な色再現を得るために、各種分散剤を使用することが有効である。
【0066】
その他の添加剤としては、インク層の可塑化により感度アップを図る可塑剤の添加、インク層の塗布性を向上させる界面活性剤の添加、インク層のブロッキングを防止するサブミクロンからミクロンオーダーの粒子の添加が可能である。
【0067】
本発明において、インク層の膜厚は、0.3〜0.7μmの範囲が好ましい。
【0068】
光熱変換層に用いられる光熱変換物質としては、光源によっても異なるが、光を吸収し効率良く熱に変換する物質がよく、例えば半導体レーザーを光源として使用する場合、近赤外に吸収帯を有する物質が好ましく、近赤外光吸収剤としては、例えばカーボンブラックやシアニン系、ポリメチン系、アズレニウム系、スクワリリウム系、チオピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン系色素等の有機化合物、フタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系の有機金属錯体などが好適に用いられ、具体的には特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−97589号、同3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
光熱変換層におけるバインダーとしては、Tgが高く熱伝導率の高い樹脂、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アラミド等の一般的な耐熱性樹脂や、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレン・スルフィド類、ポリピロール類、および、これらの誘導体または、これらの混合物からなるポリマー化合物を使用することができる。
【0070】
又、光熱変換層におけるバインダーとしては、水溶性ポリマーも用いることができる。水溶性ポリマーはインク層との剥離性も良く、又、レーザー照射時の耐熱性が良く、過度な加熱に対しても所謂飛散が少ない点で好ましい。水溶性ポリマーを用いる場合には、光熱変換物質を水溶性に変性(スルホ基の導入等により)したり、水系分散することが望ましい。又、光熱変換層へ各種の離型剤を含有させることで、光熱変換層とインク層との剥離性を上げ、感度を向上することもできる。離型剤としては、シリコーン系の離型剤(ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイルなど)、弗素系の界面活性剤(パーフルオロ燐酸エステル系界面活性剤)、その他、各種界面活性剤等が有効である。
【0071】
光熱変換層における光熱転換物質の含有量は、通常、画像記録に用いる光源の波長での吸光度が0.3〜3.0、更に好ましくは0.7〜2.5になるように決めることができる。光熱変換層としてカーボンブラックを用いた場合、光熱変換層の膜厚が1μmを超えると、インク層の過熱による焦付きが起こらない代わりに感度が低下する傾向にあるが、露光するレーザーのパワーや光熱変換層の吸光度により変化するため適宜選択すればよい。
【0072】
光熱変換層の厚みは、0.05〜0.6μmの範囲が好ましい。
【0073】
光熱変換層としては、この他にも蒸着層を使用することも可能であり、カーボンブラック、特開昭52−20842号に記載の金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、アンチモン、テルル、ビスマス、セレン等のメタルブラックの蒸着層の他、周期律表のIb、IIb、IIIa、IVb、Va、Vb、VIa、VIb、VIIbおよびVIII族の金属元素、並びにこれらの合金、またはこれらの元素とIa、IIa及びIIIb族の元素との合金、あるいはこれらの混合物の蒸着層が挙げられ、特に望ましい金属にはAl、Bi、Sn、InまたはZnおよびこれらの合金、またはこれらの金属と周期律表のIa、IIaおよびIIIb族の元素との合金、またはこれらの混合物が含まれる。適当な金属酸化物または硫化物には、Al、Bi、Sn、In、Zn、Ti、Cr、Mo、W、Co、Ir、Ni、Pb、Pt、Cu、Ag、Au、ZrまたはTeの化合物、またはこれらの混合物がある。また更に、金属フタロシアニン類、金属ジチオレン類、アントラキノン類の蒸着層も挙げられる。
【0074】
蒸着層の膜厚は、500オングストローム以内が好ましい。
【0075】
なお、光熱変換物質はインク層の色材そのものでもよく、又、上記のものに限定されず、様々な物質が使用できる。
【0076】
光熱変換層が支持体下層との接着性に劣る場合は、光照射時あるいは熱転写後に、中間転写媒体からインクシートを剥離する際、膜剥がれを起こし、色濁りを起こすことがあるので、支持体下層との間に接着層を設けることも可能である。
【0077】
接着層としては、一般的にポリエステル、ウレタン、ゼラチンなどの従来公知の接着剤が使用できる。又、同様な効果を得るために、接着層を設ける代わりにクッション層に粘着付与剤、接着剤を添加することもできる。
【0078】
クッション層はインクシートと中間転写媒体との密着を増す目的で設けられる。このクッション層は熱軟化性又は弾性を有する層であり、加熱により十分に軟化変形しうるもの、又は低弾性率を有する材料あるいはゴム弾性を有する材料を使用すればよい。
【0079】
クッション層はクッション性を有する層であり、ここで言うクッション性を表す指針として、弾性率や針入度を利用することができる。例えば、25℃における弾性率が1〜250kg/mm2程度の、あるいは、JIS K2530−1976に規定される針入度が15〜500程度の層が、色校正用カラープルーフ画像の形成に対して好適なクッション性を示すことが確認されているが、要求される程度は目的とする画像の用途に応じて変わるものである。
【0080】
クッション層はTMA軟化点が70℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以下である。
【0081】
クッション層の好ましい特性は必ずしも素材の種類のみで規定できるものではないが、素材自身の特性が好ましいものとしては、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、ポリイソプレン樹脂(IR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)、アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブチルゴム、ポリノルボルネン等が挙げられる。
【0082】
これらの中でも、比較的低分子量のものが本発明の要件を満たし易いが、素材との関連で必ずしも限定できない。
【0083】
又、上記以外の素材でも、各種添加剤を加えることによりクッション層に好ましい特性が付与できる。このような添加剤としては、ワックス等の低融点物質、可塑剤などが挙げられる。具体的にはフタル酸エステル、アジピン酸エステル、グリコールエステル、脂肪酸エステル、燐酸エステル、塩素化パラフィン等が挙げられる。又、例えば「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧」、化学工業社(昭和45年発行)などに記載の各種添加剤を添加することができる。
【0084】
これら添加剤の添加量等は、ベースとなるクッション層素材との組合せで好ましい物性を発現させるのに必要な量を選択すればよく、特に限定されないが一般的に、クッション層素材量の10重量%以下、更に5重量%以下が好ましい。
【0085】
クッション層は或る程度の厚さを持たせるために塗布(ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター等)あるいはラミネート(例えばホットメルトによる押出しラミネーション法等)、フィルムの貼合せなどにより行い、更に表面平滑性を出すために、塗布にて仕上げることもできる。
【0086】
又、特殊なクッション層として熱軟化性あるいは熱可塑性の樹脂を発泡させたボイド構造の樹脂層を用いることも可能である。
【0087】
表面平滑性が必須な目止めクッション層を更に形成する場合、これは各種塗布方式によってコーティングを行うことが望ましい。
【0088】
クッション層の膜厚は0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.3〜7μmである。
【0089】
(受像シート又は中間転写媒体)
本発明に用いられる受像シート(以下、特に断らない限り中間転写媒体という)とは、基本的に支持体上に受像層を有するものであればよいが、中でも支持体の一方の面にバックコート層、他方の面にクッション層、受像層を順次積層した構成から成る中間転写媒体が好ましい。
【0090】
中間転写媒体に用いられる支持体としては、寸法安定性が良く画像形成の際の熱に耐えるものならば何でもよく、具体的には特開昭63−193886号2頁左下欄12〜18行に記載のフィルム又はシートを使用することができる。支持体は、搬送に適した剛性と柔軟性を有することが好ましい。
【0091】
支持体の厚みは、50〜125μmの範囲が好ましい。
【0092】
バックコート層に用いられるバインダーとしては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、芳香族ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、弗素樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、テフロン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセテート、ポリカーボネート、有機硼素化合物、芳香族エステル類、弗化ポリウレタン、ポリエーテルスルホンなど汎用ポリマーを使用することができる。
【0093】
バックコート層のバインダーとして架橋可能な水溶性バインダーを用い、架橋させることは、マット材の粉落ち防止やバックコートの耐傷性の向上に効果がある。又、保存時のブロッキングにも効果が大きい。
【0094】
この架橋手段は、用いる架橋剤の特性に応じて、熱、活性光線、圧力の何れか一つ又は組合せなどを特に限定なく採ることができる。場合によっては、支持体への接着性を付与するため、支持体のバックコート層を設ける側に任意の接着層を設けてもよい。
【0095】
バックコート層に好ましく添加されるマット材としては、有機又は無機の微粒子が使用できる。有機系マット材としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、その他のラジカル重合系ポリマーの微粒子、ポリエステル、ポリカーボネートなど縮合ポリマーの微粒子などが挙げられる。
【0096】
バックコート層は0.5〜5 g/m2程度の付量で設けられることが好ましい。0.5 g/m2未満では塗布性が不安定で、マット材の粉落ち等の問題が生じ易い。又、5 g/m2を大きく超えて塗布されると好適なマット材の粒径が非常に大きくなり、保存時にバックコートによる受像層面のエンボス化が生じ、特に薄膜のインク層を転写する熱転写では記録画像の抜けやムラが生じ易くなる。
【0097】
マット材は、その数平均粒径が、バックコート層のバインダーのみの膜厚よりも2.5〜20μm大きいものが好ましい。マット材の中でも、8μm以上の粒径の粒子が5mg/m2以上必要で、好ましくは6〜600mg/m2である。これによって特に異物故障が改善される。又、粒径分布の標準偏差を数平均粒径で割った値σ/rn(=粒径分布の変動係数)が0.3以下となるような、粒径分布の狭いものを用いることで、異常に大きい粒径を有する粒子により発生する欠陥を改善できる上、より少ない添加量で所望の性能が得られる。この変動係数は0.15以下であることが更に好ましい。
【0098】
バックコート層には、搬送ロールとの摩擦帯電による異物の付着を防止するため、帯電防止剤を添加することが好ましい。帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、高分子帯電防止剤、導電性微粒子の他、「11290の化学商品」化学工業日報社、875〜876頁等に記載の化合物などが広く用いられる。
【0099】
バックコート層に併用できる帯電防止剤としては、上記の物質の中でも、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫などの金属酸化物、有機半導体などの導電性微粒子が好ましく用いられる。特に、導電性微粒子を用いることは、帯電防止剤のバックコート層からの解離がなく、環境によらず安定した帯電防止効果が得られるために好ましい。
【0100】
又、バックコート層には、塗布性や離型性を付与するために、各種活性剤、シリコンオイル、弗素系樹脂等の離型剤などを添加することも可能である。
【0101】
バックコート層は、クッション層及び受像層のTMA(Thermomechanical Analysis)により測定した軟化点が70℃以下である場合に特に好ましい。
【0102】
TMA軟化点は、測定対象物を一定の昇温速度で、一定の荷重を掛けながら昇温し、対象物の位相を観測することにより求める。本発明においては、測定対象物の位相が変化し始める温度を以てTMA軟化点と定義する。TMAによる軟化点の測定は、理学電気社製Thermoflexなどの装置を用いて行うことができる。
【0103】
中間転写媒体に設けられるクッション層は、インクシートで用いたものと同様のものを用いることができる。
【0104】
次に中間転写媒体を構成する受像層について説明する。受像層は、バインダーと必要に応じて添加される各種添加剤から成る。
【0105】
受像層バインダーは、TMA測定による軟化点が70℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以下である。
【0106】
受像層バインダーの具体例としては、ポリ酢酸ビニルエマルジョン系接着剤、クロロプレン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等の接着剤、天然ゴム、クロロプレンゴム系、ブチルゴム系、ポリアクリル酸エステル系、ニトリルゴム系、ポリサルファイド系、シリコンゴム系、石油系樹脂などの粘着材、再生ゴム、塩化ビニル系樹脂、SBR、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルエーテル、アイオノマー樹脂、SIS、SEBS、アクリル樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、塩ビグラフトEVA樹脂、EVAグラフト塩ビ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、各種変性オレフィン、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0107】
受像層のバインダーの膜厚は0.8〜2.5μmが好ましい。
【0108】
中間転写媒体には、受像層とクッション層との間に剥離層を設けることもできる。剥離層は、中間転写媒体から画像を形成した受像層を最終支持体に再転写する場合に特に有効である。
【0109】
剥離層のバインダーとしては、具体的にポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリパラバン酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、エチルセルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン,アクリロニトリルスチレン等のスチレン類及びこれら樹脂を架橋したもの、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アラミド等のTgが65℃以上の熱硬化性樹脂及びそれら樹脂の硬化物が挙げられる。硬化剤としてはイソシアナート、メラミン等の一般的硬化剤を使用することができる。
【0110】
上記物性に合わせて剥離層のバインダーを選ぶとポリカーボネート、アセタール、エチルセルロースが保存性の点で好ましく、更に受像層にアクリル系樹脂を用いるとレーザー熱転写後の画像を再転写する際に剥離性良好となり特に好ましい。
【0111】
又、別に、冷却時に受像層との接着性が極めて低くなる層を剥離層として利用することができる。具体的には、ワックス類、バインダー等の熱溶融性化合物や熱可塑性樹脂を主成分とする層とすることができる。
【0112】
熱溶融性化合物としては、特開昭63−193886号に記載の物質等がある。特にマイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックスなどが好ましく用いられる。熱可塑性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等のエチレン系共重合体、セルロース系樹脂等が好ましく用いられる。
【0113】
このような剥離層には添加剤として、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、アミド類、高級アミン等を必要に応じて加えることができる。
【0114】
剥離層の別の構成は、加熱時に溶融又は軟化することによって、それ自体が凝集破壊することで剥離性を持つ層である。このような剥離層には過冷却物質を含有させることが好ましい。
【0115】
過冷却物質としては、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリオキシエチレン、ベンゾトリアゾール、トリベンジルアミン、バニリン等が挙げられる。
【0116】
更に、別の構成の剥離性層では、受像層との接着性を低下させるような化合物を含ませる。このような化合物としては、シリコーンオイルなどのシリコン系樹脂;テフロン、弗素含有アクリル樹脂等の弗素系樹脂;ポリシロキサン樹脂;ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール等のアセタール系樹脂;ポリエチレンワックス、アミドワックス等の固形ワックス類;弗素系、燐酸エステル系の界面活性剤等を挙げることができる。
【0117】
剥離層の形成方法としては、前記素材を溶媒に溶解又はラテックス状に分散したものをブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター等の塗布法、ホットメルトによる押出しラミネーション法などが適用でき、クッション層上に塗布し形成することができる。又は、仮ベース上に前記素材を溶媒に溶解又はラテックス状に分散したものを、上記の方法で塗布したものとクッション層とを貼り合わせた後に仮ベースを剥離して形成する方法がある。
【0118】
剥離層の膜厚は0.3〜3.0μmが好ましい。膜厚が大きすぎるとクッション層の性能が現れ難くなるため、剥離層の種類により調整することが必要である。
【0119】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳説するが、かかる実施例によって本発明が限定されるものではない。なお以下の実施例において、「部」とあるのは特に断りがない限り「重量部」を意味している。
【0120】
実施例1
インクシート試料Y1、Y2、Y3、Y4の作成
厚さ100μmのダイヤホイルヘキスト社製PET(ポリエチレンテレフタレートフィルム、T100、#100)を支持体として、その上に下記組成の中間層塗布液をリバースロールコーターによって塗布、乾燥して、乾燥後の厚みが7μmの中間層を形成し、次いで巻き取り前に下記組成の光熱変換層塗布液をワイヤーバーコーティングにより塗布、乾燥して、光熱変換層を設けた。この光熱変換層の乾燥後の付量は0.6g/m2であった。
【0121】
(中間層塗布液1)
SEBS(クレイトンG1657、シェル化学社製) 14部
タッキファイヤー(スーパーエステルA100、荒川化学社製) 6部
メチルエチルケトン 10部
トルエン 80部
【0122】
(光熱変換層塗布液)
【0123】
上記シートの光熱変換層の塗工面と反対の面に下記組成のバックコート層塗布液をワイヤーバーにて塗布、乾燥して、乾燥後の付き量が0.6 g/m2のバックコート層を形成し、次いで巻き取り前に下記組成のインク層塗布液を分散により作成し、ワイヤーバーにて光熱変換層上に塗布、乾燥して、乾燥後の付き量が表1に記載のようになるようにインク層を設け、インクシート試料Y1、Y2、Y3、Y4を得た。
【0124】
(バックコート層塗布液1)
ポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績社製) 9.6部
シリコンオイル(X−24−8300、信越化学社製) 0.1部
メチルエチルケトン 36部
シクロヘキサノン 36部
トルエン 18部
【0125】
(インク層塗布液1)
【0126】
【表1】
【0127】
受像シート(被転写記録媒体)は標準品であるカラーデシジョン受像フィルム(コニカ社製 CD‐1R)を使用した。CD‐1Rは受像層以外に約30μmの熱可塑性樹脂層を有しており、かつ受像面はマット材を含有し、マットの突出高さは2.7μm、頻度は約1200個/m2である。
【0128】
(記録評価方法)
コニカ社製「EV‐laser‐Proofer」(レーザー発振波長830nm、周長29inch)にて、カラーデシジョン受像フィルムCD‐1Rに、露光面照度70〜100mW/1ch、回転数400〜600rpmにて、各種テストパターンを露光した。
【0129】
インクシートの剥離はドラムの接線方向となるように(剥離角度=0℃)剥離現像し、次いでインクが転写された受像シートをEV‐laser‐laminaterにてアート紙へ転写し、最終画像を得た。
【0130】
(評価項目)
以下の項目について、以下の評価基準に従って評価し、その結果を表1に示した。
【0131】
表2中、A〜Fは以下の通りである。
A=感度:ベタ濃度が一定となる上限の回転数
B=アブレーションポイント:光熱変換層が飛散し画像が汚れる上限の回転数 C=画像均一性(剥離ムラ):175線50%の平網をA2サイズで出力し、剥離ムラによる画像濃度ムラが全く生じないものには○、わずかに生じるものを△、はっきり分かるムラが生じたものには×とした。
D=画像均一性(インク転写性):ベタ部が均一に転写されているか評価した。インクの転写性が劣る場合には、レーザーヘッドの走査ピッチに沿って(EV‐laser‐prooferの場合、0.203mmピッチ)走査方向に転写不良部分が生じ、完全なベタ画像が得られない。この画像ムラが目視で全く生じてないものには○、わずかに分かるものを△、はっきり分かるムラが生じたものには×とした。
E=レーザー転写率:インク全体の付量に対し、受像層へ転写したインクの付量の比率
F=搬送ジャム:剥離時にインクシートと受像シートとの剥離強度が強く、ドラムから受像シートが剥離するかどうか確認した。受像シートが全くドラムから浮かないものが○、剥離は行えたがドラムから受像シートが浮く状態が生じた場合は△、受層シートがドラムから脱離した場合は×とした。
【0132】
【表2】
【0133】
実施例2
実施例1のインクシートY1において、顔料、分散剤、熱可塑性樹脂を表3のように代え、膜付き量を表3のように代えた以外は、同様にインクシートを作成し、それぞれインクシートM1〜M7とした。
【0134】
【表3】
【0135】
表3において、熱可塑性樹脂、環球法軟化点、樹脂組成及びメーカー名を以下に示す。マゼンタ顔料はブリリアントカーミン613(野間化学工業社製)を用いた。
【0136】
【0137】
画像の評価方法は実施例1と同様に行い、以下の表4に示した。
【0138】
【表4】
【0139】
実施例3
以下の手順で受像シートを作成した。支持体(100μmPETフィルム)上にEV40Y(前出、vicat軟化点=40℃以下)のトルエン溶解物を乾燥膜厚25μmになるように塗布し、次いでエチルセルロースのイソプロピルアルコール溶液をEV40Y層上に塗布し、乾燥膜厚1.7g/m2とした。
【0140】
更に受像層としてアクリルラテックス(ヨドゾールA‐5805、日本エヌエスシー)/フッ素系樹脂(スミレーズレジンFP150、住友化学製)=95/5(固形分比)からなる混合塗布溶液を乾燥膜厚1.3g/m2となるように塗設し、受像シートR1とした。
【0141】
インクシートとして、実施例2のM1処方にマット材として、「トスパール120」(東芝シリコーン製、マット粒経2.0μm)を3重量部加えたこと以外はM1同様に作成し、M8とした。
【0142】
M8はインク面からのマット突出高さが1.5μm、マット頻度は約3000個/mm2である。
【0143】
M1処方にマット材としてMX500(総研化学製、マット粒経5.0μm)を6重量部加えたこと以外はM1同様に作成し、M9とした。
【0144】
M9はインク面からのマット突出高さが4.5μm、マット頻度は約400個/mm2である。
【0145】
M1,M8,M9のインクシート、上記受像シートの組み合わせにて、実施例1、2と同様の露光、剥離テストを行った他、剥離は1インチ径の剥離ローラーをドラムに当てながらインクシートを剥離した場合の2種類について評価した。
【0146】
その結果を表5に示す。
【0147】
【表5】
【0148】
実施例4
実施例3で用いた受像層を以下の処方に代えたこと以外は同様に作成し、受像シートR2とした。
【0149】
R2受像層処方
【0150】
受像層は付量1.3g/m2で、マット突出高さは2.6μm、頻度は約1200個/m2である。
【0151】
また、実施例3で用いた受像層を以下の処方に代え、付量を代えたこと以外は同様に作成し、受像シートR3とした。
【0152】
R3受像層処方
【0153】
受像層は付量1.0g/m2で、マット突出高さは4.0μm、頻度は約570個/m2である。
【0154】
インクシートはM1を用い、実施例3同様、剥離条件を代え、評価を行った。その結果を下記表6に示す。
【0155】
【表6】
【0156】
【発明の効果】
本発明によれば、比較的広い範囲の剥離条件においても安定して剥離現像可能であるレーザー熱転写用インクシート、レーザー熱転写用記録媒体およびレーザー熱転写記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる露光装置の一例を示す図
【図2】本発明におけるマット材の突出高さを説明する図
【図3】剥離ガイドの使用状態を示す図
【図4】剥離ローラーの使用状態を示す図
【図5】インクシートと受像シートの剥離状態を示す図
【符号の説明】
1:材料収納部
2:材料供給部
3:露光部
4:排出部
5:インクシート収納部
6:受像シート収納部
7:ガイド板
8:粘着ローラー
9:露光ドラム
10:レーザーヘッド
11:レーザーヘッドキャリッジ
12:インクシート
13:受像シート
15:インク層
16:マット材
20:剥離ガイド
21:剥離ローラ
Claims (5)
- 50〜100μmの厚みを有する支持体上に少なくとも光熱変換層とインク層とを有するレーザー熱転写用インクシートにおいて、該インク層が60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂を65重量%以上95重量%以下含有し、且つ0.52g/m2以上0.90g/m2以下の膜厚を有し、更に、該インク層の膜厚より大きい粒径のマット材を有し、該マット材のインク層の表面からの突出高さが3.5μm未満であり、且つ突出部位が400〜4000個/mm2の頻度であることを特徴とするレーザー熱転写用インクシート。
- 60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂は、2種類以上の組み合わせからなり、軟化点の最も高い熱可塑性樹脂と、最も低い熱可塑性樹脂との軟化点の差が20〜80℃であることを特徴とする請求項1記載のレーザー熱転写用インクシート。
- 50〜100μmの厚みを有する支持体上に少なくとも光熱変換層とインク層を有するレーザー熱転写用インクシートと、少なくとも熱可塑性樹脂層と前記レーザー熱転写用インクシートのインク層を受容しうる受像層とを有するレーザー熱転写用受像シートとを用い、前記レーザー熱転写用インクシートのインク層面と前記レーザー熱転写用受像シートの受像層面とを減圧密着させ、該インク層側からレーザー光を照射し光熱変換して該インク層を受像層側に熱転写し、十分に前記レーザー熱転写用インクシートの熱が放出された後にレーザー熱転写用インクシートをレーザー熱転写用受像シートから剥離してレーザー熱転写用受像シート上に熱転写画像を形成するレーザー熱転写記録方法において、前記レーザー熱転写用インクシートとしてインク層が60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂を65重量%以上95重量%以下含有し、且つ0.52g/m2以上0.90g/m2以下の膜厚を有し、更に、該インク層の膜厚より大きい粒径のマット材を有し、該マット材のインク層の表面からの突出高さが3.5μm未満であり、且つ突出部位が400〜4000個/mm2の頻度であるものを用い、前記レーザー熱転写用インクシートとレーザー熱転写用受像シートの剥離の際に剥離ガイドもしくは剥離ロール等の部材によって剥離角度を30度未満に規制することを特徴とするレーザー熱転写記録方法。
- 60〜150℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂は、2種類以上の組み合わせからなり、軟化点の最も高い熱可塑性樹脂と、最も低い熱可塑性樹脂との軟化点の差が20〜80℃であることを特徴とする請求項3記載のレーザー熱転写記録方法。
- 50〜100μmの厚みを有する支持体上に少なくとも光熱変換層とインク層を有するレーザー熱転写用インクシートと、少なくとも熱可塑性樹脂層と前記レーザー熱転写用インクシートのインク層を受容しうる受像層とを有するレーザー熱転写用受像シートとを用い、前記レーザー熱転写用インクシートのインク層面と前記レーザー熱転写用受像シートの受像層面とを減圧密着させ、該インク層側からレーザー光を照射し光熱変換して該インク層を受像層側に熱転写し、十分に前記レーザー熱転写用インクシートの熱が放出された後にレーザー熱転写用インクシートをレーザー熱転写用受像シートから剥離してレーザー熱転写用受像シート上に熱転写画像を形成するレーザー熱転写記録方法において、前記レーザー熱転写用インクシートとしてインク層が 60 〜 150 ℃の環球法軟化点を持つ熱可塑性樹脂を 65 重量%以上 95 重量%以下含有し、且つ 0.52g/m 2 以上 0.90g/m 2 以下の膜厚を有し、前記レーザー熱転写用受像シートの熱可塑性樹脂層を構成する樹脂の vicat 軟化点が 80 ℃以下であり、前記インク層に該層膜厚より大きい粒径のマット材を含有し、該マット材のインク層の表面からの突出高さが 3.5 μm未満であり、且つ突出部位が 400 〜 4000 個 /mm 2 の頻度であることを特徴とするレーザー熱転写用記録媒体を用い、前記レーザー熱転写用インクシートとレーザー熱転写用受像シートの剥離の際に剥離ガイドもしくは剥離ロール等の部材によって剥離角度を 30 度未満に規制することを特徴とするレーザー熱転写記録方法。
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