JP3745603B2 - エアバッグ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両、航空機、自動車などの乗り物に採用されるエアバッグに関し、特に立体的に形成されて、体積が大きな自動車の助手席用に最適なエアバッグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にエアバッグ装置としては、車内装備品に備えたモジュール内に、エアバッグとインフレータを収納し、インフレータから噴出したガスによりエアバッグを車室内側へ膨張させて乗員を保護する構造になっている。エアバッグを設置する車内装備品としては、ステアリングホイールのセンターパッド、インストルメントパネル、ドアトリム、シートなどがある。
【0003】
特に助手席用エアバッグは、インストルメントパネルと乗員との距離が離れているため、膨張した際に大きい体積になることが要求され、その膨張形状も立体的に展開し乗員を保護することが要求されている。
【0004】
このような助手席用エアバッグとして、例えば、特開平10−315892号公報に開示されているものがある。このエアバッグを構成する基布は、一対のサイド用基布とメイン基布の3枚の基布から構成された構造となっている。しかしながら、3枚の基布からなるエアバッグは、部品点数が多く、立体的に縫製する必要があるため、縫製作業も煩雑で作業性が悪いという問題点がある。
【0005】
このような問題点につき、考慮して提案されたものとして、図6に示すようなものがある(特開平9−99795号公報参照)。このエアバッグAは、2枚の基布B、Cを上下方向で重ね合わせ、その周縁部を縫製などにより結合して形成されているため、部品点数の削減及び作業性の向上という点では優れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のエアバッグAにあっては、上下の基布B、Cを同一形状に設定してあるため、膨張した際に乗員Hの腹部H1との間に隙間Sができる可能性がある。また、図7に示すように、乗員Hが前側に着座していて、エアバッグAの下側の基布Cに当接した状態においては、乗員Hの胸部H2に押圧されて、G方向に変位してしまうおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、乗員の腹部を確実に保持できると同時に、少ない簡素な基布構成によって、結合の作業性を向上させ、製造コストが安価なエアバッグを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、上下方向に分割された2枚の基布同士を結合して形成され、各基布は膨張時に乗員に対向する後面部と、該後面部を支持する両サイド部、上面部または底面部とが形成された展開形状を有し、後面部に両サイド部、上面部または底面部をそれぞれ結合することで略箱状になった上下の基布の重合部を結合することで袋状に形成されるエアバッグであって、前記下側の基布のサイド部の後面部との結合線は、少なくとも外側で収束する2本の線で横ハ字状に構成されて、前記下側の基布の後面部に膨出部を形成する。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、乗員の腹部に当接する下側の基布の体積を増大することが出来るので、乗員に対する安全性が向上する。さらに、2枚の基布で構成された簡素な構成のエアバッグで、しかも上下の基布の重合部の長さは変更する必要がないので、上下の基布の重合作業も従来と変更することなく行え、作業性が良好であるとともに、製造コストも安価に出来る。
【0010】
請求項2記載の発明は、下側の基布のサイド部の後面部との2本の結合線は、それぞれエアバッグ内側に湾曲する円弧で形成されるとともに、前記2本の結合線は、円弧で形成された第3の結合線を介し円滑に接続されているものである。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、膨出部を3辺の連続した円弧により構成したので、乗員の腹部に当接する膨出部の表面形状を滑らかに形成でき、安全性が向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を図1乃至図4に基づいて説明する。
【0013】
この実施形態に係わるエアバッグ1は、フロントウインドウパネルWの下方に位置しているインストルメントパネル2内に設置された助手席用のものである。このエアバッグ1は、ノンコートで目付200g/m2のナイロン66織布からなる2枚の基布3、4から構成されている。
【0014】
図2に基づいて、基布3、4の展開形状について説明する。図2において、上方が車両の前方でインストルパネル2に取り付けられる側となり、下方が車両の後方で乗員Hに対向する側となる。
【0015】
基布3は、上側に位置するもので、全体として左右対称形となっており、長方形の上面部3aの両辺に概略三角形状のサイド部3bが形成され、上面部3aの後端の一辺には、概略半円状の後面部3cが形成されている。上面部3aと両サイド部3bとの境界部分には、膨張後にガスを放出するためのベント孔7が形成されている。
【0016】
基布3の全幅W3は1100mm、全長L3は1015mm、斜辺9は680mmとなっている。辺8は330mm、辺12は550mmとし、辺10はそれぞれ半径500mmの円弧で形成されている。
【0017】
基布4は、下側に位置するもので、全体として左右対称形となっており、長方形の底面部4aの両辺に概略四角形状のサイド部4bが形成され、底面部4aの後端の一辺には、概略矩形状の後面部4cが形成されている。底面部4aの前端には、ガス導入口5が形成され、そこにインフレータ(図示略)が接続され、ガスを導入できるようになっている。ガス導入口5の周囲には、リアクションカンにエアバッグ1を取付けるリテーナ(取付金具)のボルトを押通する小孔6が形成されている。これらガス導入口5、小孔6の周辺部は、補強布(図示略)が縫着されて強化されている。
【0018】
基布4の全幅W4は1100mm、全長L4は1110mm、斜辺は680mmとなっている。辺13は330mm、辺19は550mmとなっている。膨出部20を構成する辺15,16はそれぞれ半径500mmの円弧で、辺17は半径100mmの円弧で形成されている。膨出部20を3辺の連続した円弧により構成したので、乗員Hの腹部に当接する膨出部20の表面部をなめらかに形成でき安全性が向上する。
【0019】
この基布3、4は、図2に示すように、上面部3aと底面部4a及び辺8,13から斜辺9、14にかけては同一形状であるが、サイド部3b、4bの後面部3c、4cとの接合部形状が異なり、それと対応して縫着される後面部3c、4cの形状も異っている。
【0020】
次に基布3、4を結合してエアバッグ1に縫着する工程を説明する。基布3、4は、全幅W3、W4と斜辺9、14の長さと傾斜角は同一であるので、図2における上半部は基布3、4を重ねると丁度一致する。そこで基布3,4の両斜辺9、14と辺8、13の3辺をミシンで縫着する。例えばこの縫着作業は、上下の糸にそれぞれナイロン66の8番糸を用い、21番手のミシン針で運針数3.5/cmのステッチを施す。なお、以下に説明する縫着作業の条件も本作業と同一である。ついで辺12と辺19を重ね合わせて縫着すると、基布3、4はそれぞれ略箱状に形成される。
【0021】
次に略箱状となった基布3の重合部8、9、12と、基布4の重合部13、14、19とを縫着して、袋状のエアバッグ1に形成する。基布3を辺12aを摘んで引き上げ、辺10と辺11を重ね縫着する。さらに反転させて辺19aを摘んで引き上げ、辺15、16、17と辺18とを重ねて縫着する。最後に、ガス導入口5を通じてエアバッグ1の裏表を反転させて、縫着作業が完了する。サイド部3b、4bの上下方向中央部分には、前後方向に沿う重合線Jが現れる。このように2枚の基布3,4を重ね合わせて縫着するだけの簡単な作業で立体形状のエアバッグ1を形成できるので縫着の作業性が極めて向上する。
【0022】
このように形成されたエアバッグ1は、図3に示すように膨張時において乗員Hの腹部H1に対応する部分の体積が増加するので、図4に示すようにG方向への変位は極めて小さい。
【0023】
図5は、従来例のエアバッグと本実施形態のエアバッグとの側面形状の比較を示したもので、サイド部3b、4bの重合線Jから下に寸法h(200mm)分だけ下がった位置の後面部3c、4cまでの長さは、従来例(L0)は330mmで本実施形態(L)は420mmとなっており、膨張時の乗員Hの腹部H1までの距離を27%も近づけることが出来る。
【0024】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、乗員の腹部に当接する下側の基布の体積を増大することが出来るので、乗員に対する安全性が向上する。さらに、2枚の基布で構成された簡素な構成のエアバッグで、しかも上下の基布の重合部の長さは変更する必要がないので、上下の基布の重合作業も従来と変更することなく行え、作業性が良好であるとともに、製造コストも安価に出来る。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、膨出部を3辺の連続した円弧により構成したので、乗員の腹部に当接する膨出部の表面形状を滑らかに形成でき、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のエアバッグの膨張状態を示す斜視図である。
【図2】図1の各基布を示す平面図。
【図3】図1のエアバッグの膨張状態を示す側面図。
【図4】図3のエアバッグに乗員が当接した状態を示す側面図。
【図5】従来例と本発明の膨張状態のエアバッグの相違を示す側面図。
【図6】従来例のエアバッグの膨張状態を示す側面図。
【図7】図6のエアバッグに乗員が当接した状態を示す側面図。
【符号の説明】
H 乗員
1 エアバッグ
3、4 基布
3a 上面部
4a 底面部
3b、4b サイド部
3c、4c 後面部
15、16、17、18 結合線
8、9、12、13、14、19 重合部
20 膨出部

Claims (2)

  1. 上下方向に分割された2枚の基布同士を結合して形成され、各基布は膨張時に乗員に対向する後面部と、該後面部を支持する両サイド部、上面部または底面部とが形成された展開形状を有し、後面部に両サイド部、上面部または底面部をそれぞれ結合することで略箱状になった上下の基布の重合部を結合することで袋状に形成されるエアバッグであって、
    前記下側の基布のサイド部の後面部との結合線は、少なくとも外側で収束する2本の線で横ハ字状に構成されて、前記下側の基布の後面部に膨出部を形成することを特徴とするエアバッグ。
  2. 請求項1項記載のエアバッグであって、
    前記下側の基布のサイド部の後面部との2本の結合線は、それぞれエアバッグ内側に湾曲する円弧で形成されるとともに、前記2本の結合線は、円弧で形成された第3の結合線を介し円滑に接続されてなることを特徴とするエアバッグ。
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