JP3758300B2 - 助手席用エアバッグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の助手席前方のインストルメントパネル等に配設される助手席用エアバッグ装置のエアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、助手席用エアバッグでは、袋状のエアバッグ本体の膨張完了状態の形状を規制したり、さらに、膨張時のガス流入口から流入する膨張用ガスの流れを規制して、エアバッグ本体の膨張初期形状を規制するために、エアバッグ本体の内部に、テザーを配設させていた。
【0003】
そして、図1に示すように、テザー4としては、エアバッグ本体1におけるガス流入口2周縁とガス流入口2に対向する天井壁部3とに両端を縫着させるように、配設されるものがあった。このテザー4では、テザー4におけるガス流入口側端部5の縫合部位6や天井壁部側端部7の縫合部位8が、縫合糸10をテザー4の幅方向に縫合させて、構成されていた。
【0004】
しかし、このような助手席用エアバッグB0では、膨張時に、エアバッグ本体1の天井壁部3がガス流入口2から離れるように膨張し、テザー4がその天井壁部3の突出方向への引張力に対抗するため、テザー4には、エアバッグ本体1を構成する基布1aに比べて、大きな引張力が作用し、さらに、テザー4におけるガス流入口2側の端部5には、その部位がエアバッグ本体1のエアバッグ装置への取付部位であって停止されているため、天井壁部3側の端部7に比べて、大きな引張力が作用することとなる。
【0005】
そして、図1に示すように、ガス流入口側端部5の縫合部位6において、その両端から、エッジ状のコーナ部Cを付けるように、テザー4の端部5側に直角状に曲って直線状の直線部9が配置されるように構成されると、エアバッグB0の膨張時、縫合したコーナ部Cに応力が集中し、コーナ部Cを縫合した縫合糸10が破断して、テザー4の長さを長くしてしまい、所定形状にエアバッグ本体1を規制できなくなってしまう場合があった。あるいは、縫合糸10でなく、テザー4自体が、コーナ部Cを起点に幅方向に沿って破断する場合があった。
【0006】
なお、直線部9を設ける理由は、エアバッグB0には、エアバッグ本体1の基布1aに補強布1bを縫合して、ガス流入口2の周縁を補強する必要が生ずるが、その両者を縫合する縫合部位11を縫合糸10で形成する際、糸10の処理が容易なように、連続的に縫合部位6も縫合する方が作業性が良好となるため、直線部9が設けられていた。そのため、糸10の処理を考えなければ、直線部9は無くとも良い。ちなみに、直線部9を設けない場合でも、そのエアバッグの膨張時には、縫合部位6の両端に応力集中が生ずるため、それらの両端の縫合糸10の破断は、抑え難かった。
【0007】
また、直線部9を設けずに、縫合部位6をテザー5の幅方向の全域に設けても、エアバッグの膨張時、その直線状の縫合部位6の部位でテザー5が破断する場合が生じた。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、テザーのガス流入口側端部のエアバッグ本体への連結強度を向上させて縫合でき、所定形状に膨張させることができる助手席用エアバッグを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る助手席用エアバッグは、ガス流入口を備えた袋状のエアバッグ本体が、前記ガス流入口周縁と前記ガス流入口に対向する天井壁部とを連結するように、内部に、テザーを配設させ、
該テザーが、両端をそれぞれ前記ガス流入口周縁と前記天井壁部とに対して幅方向に縫合されて、配設されている助手席用エアバッグであって、
前記テザーの前記ガス流入口周縁に対する縫合部位が、前記テザーの幅方向の両端部に、それぞれ、前記天井壁部から離れた端部側へ弧状に延びる曲線部を備えて構成されていることを特徴とする。
【0010】
前記テザーの前記ガス流入口周縁に対する縫合部位は、前記曲線部相互を連結させて、略半円状に形成し、その略半円形の直径を、前記テザーの幅寸法に略等しくすることが望ましい。
【0011】
【発明の効果】
本発明に係る助手席用エアバッグでは、テザーのガス流入口側端部における縫合部位のテザー幅方向の両端部に、天井壁部から離れた端部側へ弧状に延びる曲線部が形成されており、応力集中が生じ易いようなエッジ状のコーナ部や、切り離されたような端末が形成されていない。
【0012】
そのため、エアバッグが膨張して、テザーに大きな張力が作用しても、曲線部で引張力が分散される態様となって、縫合糸やテザー自体の破断を防止することができる。
【0013】
したがって、本発明に係る助手席用エアバッグでは、テザーのガス流入口側端部のエアバッグ本体への連結強度を向上させて縫合することができ、所定長さのテザーによって、膨張途中あるいは膨張完了時、所定形状に膨張形状を規制されて、膨張することができる。
【0014】
そして、テザーのガス流入口周縁に対する縫合部位に関し、テザー幅方向の両端の曲線部相互を連結させて、略半円状に形成し、その略半円形の直径を、テザーの幅寸法に略等しい寸法に設定した場合には、エアバッグ膨張時の引張力を分散させるように、応力集中の生じない縫合態様として、テザーの幅方向の広い範囲で、テザーをエアバッグ本体に縫合することができるため、テザーにおけるガス流入口側端部のエアバッグ本体への連結強度を一層高めることができることとなって、出力の高いインフレーター等が使用可能となり、膨張形状を規制しつつ、膨張完了までの時間を短縮することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
実施形態の助手席用エアバッグB1は、図5のAに示すように、助手席の前方のインストルメントパネル(以下、インパネと略す)13の部位に配置される助手席用エアバッグ装置Mに使用されるものであり、この助手席用エアバッグ装置Mは、エアバッグB1の他、エアバッグB1に膨張用ガスを供給するインフレーター18と、エアバッグB1やインフレーター18を収納するケース17と、エアバッグB1をケース17に取り付けるリテーナ19と、を備えて構成されている。
【0017】
インパネ13には、ケース17を覆うように、扉部14が設けられて、扉部14は、エアバッグB1の膨張時、図5のBに示すように、ヒンジ部15を回転中心として、エアバッグB1に押されて開くように構成されている。
【0018】
ケース17は、略直方体形状の板金製として、下部室17aと下部室17aより容積を大きくした上部室17bとの2室を備えて構成され、下部室17aと上部室17bとの間には、複数の貫通孔17dを有して、段差部17cが配設されている。また、ケース17には、車両の所定位置に取付固定するための図示しないブラケットが配設されている。
【0019】
インフレーター18は、膨張用ガスを吐出させるガス吐出口18aを有したシリンダタイプとして、ケース17の下部室17a内に収納保持されている。
【0020】
エアバッグB1は、図2〜5に示すように、エアバッグ本体21と、エアバッグ本体21の内部に配置されるテザー31と、から構成されている。
【0021】
エアバッグ本体21は、略四角筒形状の袋形状として、長方形形状に開口したガス流入口22を備えて構成されている。エアバッグ本体21における膨張時のガス流入口22と対向する部位が、天井壁部25である。ガス流入口22の周囲には、2つずつの取付片23・24が配設されており、各取付片23・24には、所定数の取付孔23a・24aが貫通されている。各取付片23・24は、四角環状のリテーナ19から突出するボルト19aをエアバッグ本体21の内側から各取付孔23a・24aに挿通させた状態で、ケース17の段差部17cに当接させ、段差部17cの各貫通孔17dを貫通した各ボルト19aにナット20を螺合させることにより、ケース段差部17cに取付固定されている。
【0022】
また、エアバッグ本体21は、図2・4に示すように、膨張時の上面側・天井壁部25・下面側を構成する1枚のメイン用基布26、膨張時の左右側面を構成する2枚のサイド用基布28、及び、各基布26・28におけるガス流入口22の周縁の内周面側に配置される補強布27・29、で構成されている。各基布26・28や補強布27・29は、ポリエステルやポリアミド等の織布、あるいは、それらに所定の耐熱性コーティングが施された布材から構成されている。エアバッグ本体21は、補強布27やテザー31を縫合した状態のメイン用基布26の周縁と、補強布29を縫合した2枚のサイド用基布28の周縁と、を縫合して、袋状に形成されている。
【0023】
テザー31は、基布26・28と同様な材料から形成されて、図2・3・5のAに示すように、両端を、それぞれ、縫合糸40を使用し、エアバッグ本体21のガス流入口22周縁と天井壁部25とに対して、幅方向に縫合させて、連結させている。テザー31のガス流入口側端部32の縫合部位33は、略1/4円状の弧状の曲線部33a相互を連結させて、略半円状に形成されている。この略半円形の直径は、テザー31の狭くなった幅寸法Wに略等しくなるように設定されている。テザー31の天井壁部側端部34の縫合部位35は、テザー31の幅方向に延びた長円形に形成されている。
【0024】
なお、このテザー31は、膨張完了時のエアバッグ本体21のガス流入口22から天井壁部25までの距離を一定とするようにエアバッグ本体21の形状を規制するとともに、膨張途中で、エアバッグ本体21のテザー31より上方の上方室21aを、テザー31より下方の下方室21bに比べて、素早く膨張させるように、膨張途中の形状を規制するように配設されている。なお、上方室21aから下方室21bへの膨張用ガスは、テザー31の左右の凹部31a・31aを経て流れる。
【0025】
つぎに、このエアバッグB1の製造について述べると、各基布26・28・補強布27・29・テザー31を所定形状に裁断して準備しておき、まず、基布21に対して、補強布27・27を所定位置に配置させる。
【0026】
そして、縫合糸40を利用して、各補強布27・27を基布26に縫合するとともに、その一方の補強布27を縫合する途中で、テザー31のガス流入口側端部32をその一方の補強布27の上に当てて、縫合する。すなわち、図3に示すように、まず、補強布27を基布26に縫合する縫合部位30の内、中部30a・側部30b・上部30c・側部30d・中部30eと順に縫合した後、テザー31のガス流入口端部32を当てて、共通側部30f・共通下部30g・共通側部30hと順に縫合し、その際における共通下部30gの縫合途中において、共通下部30gの一部を二重縫いして一筆書きするように、縫合部位33を縫合する。
【0027】
ついで、テザー31の天井壁部側端部34を基布26における天井壁部25に相当する所定位置に当てて、縫合糸40により縫合部位35を形成し、テザー31を基布26に連結させ、その後、取付孔23aを穿設しておく。
【0028】
また、各サイド用基布28にも、補強布29を当てて縫合しておき、取付孔24aを穿設しておく。
【0029】
そして、各基布26・28の周縁相互を縫合すれば、エアバッグB1を製造することができる。
【0030】
その後、各ボルト19aを取付孔23a・24aから突出させるように、リテーナ19をエアバッグB1内に配置させて、エアバッグB1を折り畳み、ついで、インフレーター18を収納済みのケース17の上部室17bにエアバッグB1を収納し、各ボルト19aを貫通孔17dから突出させてナット20止めすれば、エアバッグ装置Mを組み立てることができ、さらに、ケース17の図示しないブラケットを利用して、インパネ13の下方部位に固定すれば、図5のAに示すように、エアバッグ装置Mを車両に装着することができる。
【0031】
エアバッグ装置Mの車両への装着後、インフレーター18のガス吐出口18aから膨張用ガスが吐出されれば、図5のBに示すように、膨張用ガスがガス流入口22からエアバッグ本体21内に流入されて、エアバッグ本体21が、インパネ13の扉部14を開けて膨張し、天井壁部25がガス流入口22から離れるとともに、テザー31による膨張用ガスの流れの規制により、下方室21bより上方室21aが速く膨張しつつ、テザー31が延びて、膨張を完了させることとなる。
【0032】
その膨張完了時、テザー31に大きな張力が作用しても、ガス流入口側端部32の縫合部位33には、応力集中が生じ易いようなエッジ状のコーナ部や切り離されたような端末が形成されておらず、曲線部33a・33aで引張力が分散される態様となって、縫合糸40やテザー31自体の破断を防止することができる。
【0033】
そのため、実施形態のエアバッグB1では、テザー31におけるガス流入口側端部32のエアバッグ本体21への連結強度を向上させて縫合することができ、所定長さのテザー31によって、膨張途中あるいは膨張完了時、所定形状に膨張形状を規制されて、膨張することができることとなる。
【0034】
特に、実施形態では、テザー31におけるガス流入口側端部32の縫合部位33に関し、テザー幅方向の両端の曲線部33a・33a相互を連結させて、略半円状に形成し、その略半円形の直径を、テザー31の幅寸法Wに略等しい寸法に設定しているため、エアバッグ膨張時の引張力を分散させるように、応力集中の生じない縫合態様として、テザー31の幅方向の広い範囲で、テザー31をエアバッグ本体21に縫合することができるため、テザー31のガス流入口側端部32のエアバッグ本体21への連結強度を一層高めることができることとなって、出力の高いインフレーター18が使用可能となり、膨張形状を規制しつつ、膨張完了までの時間を短縮することができる。
【0035】
なお、実施形態では、テザー31におけるガス流入口側端部32の縫合部位33について、縫合糸40を略半円形状に縫合させる場合を示したが、図6に示すエアバッグB2のように、テザー31のガス流入口側端部32におけるテザー幅方向の両端部に、略1/4円状の弧状に、天井壁部25から離れた端部側へ延びる曲線部43a・43aを形成し、相互の曲線部43a・43aを直線状に結ぶように連結部43bで連結して、テザー31のガス流入口側端部32の縫合部位43を形成しても良い。ちなみに、44は、縫合部位43を縫合する際、補強布27も同時に縫合しているため、その糸40を切断せずに縫合部位30・43を縫合できるように、直線状に縫合糸40で縫合しつつ連結した直線部である。
【0036】
このようなエアバッグB2でも、応力集中の生じ易いようなエッジ状のコーナ部や切り離されたような端末が形成されていないため、エアバッグB2が膨張して、テザー31に大きな張力が作用しても、曲線部43aで引張力が分散される態様となって、縫合糸40やテザー31自体の破断を防止することができる。
【0037】
同様に、図7に示すようなエアバッグB3でも、エアバッグB2と同様な作用・効果を得ることができる。このエアバッグB3は、テザー31のガス流入口側端部32に設けられた縫合部位53が、2つの縫合部54から構成され、各縫合部54が、テザー幅方向の両端の曲線部54a・54a相互を連結させて、略半円状に形成して構成されている。このように、複数の縫合部54から縫合部位53を構成しても良い。なお、55は、縫合部54を縫合する際、補強布27も同時に縫合しているため、縫合糸40を切断せずに縫合部位30・54・54を縫合できるように、直線状に縫合糸40で縫合しつつ連結した直線部である。
【0038】
さらに、図8に示すエアバッグB4でも、エアバッグB2と同様な作用・効果を得ることができる。このエアバッグB4は、テザー31のガス流入口側端部32におけるテザー幅方向の両端部に、略1/4円状の弧状に、天井壁部25から離れた端部側へ延びる曲線部63a・63aを形成し、相互の曲線部63a・63aをU字状に縫合した連結部63bで連結して、テザー31のガス流入口側端部32の縫合部位63を形成したものであり、このように構成しても良い。64は、縫合部位63を縫合する際、補強布27も同時に縫合しているため、その糸40を切断せずに縫合部位30・63を縫合できるように、直線状に縫合糸40で縫合しつつ連結した直線部である。
【0039】
また、エアバッグB2〜B4の縫合部位43・53・63における曲線部43a・54a・63aの半径は、膨張時に作用する引張力を円滑に分散できるようにするため、5mm以上確保することが望ましい。
【0040】
さらにまた、エアバッグB2・B4のような縫合部位43・63の幅寸法やエアバッグB3のような縫合部53の個数は、インフレーター18の出力によるテザー31の引張力に応じて、縫合糸40が破断しないように、適宜設定すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の助手席用エアバッグのテザーの縫合態様を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態の助手席用エアバッグにおける膨張時の斜視図である。
【図3】同実施形態のエアバッグにおけるテザーの縫合態様を示す図である。
【図4】同実施形態のエアバッグを構成する布材を示す図である。
【図5】同実施形態が使用されるエアバッグ装置のエアバッグの収納状態と膨張時とを示す図である。
【図6】他の実施形態のエアバッグにおけるテザーの縫合態様を示す図である。
【図7】さらに、他の実施形態のエアバッグにおけるテザーの縫合態様を示す図である。
【図8】さらに、他の実施形態のエアバッグにおけるテザーの縫合態様を示す図である。
【符号の説明】
1・31…エアバッグ本体、
2・22…ガス流入口、
3・25…天井壁部、
4・31…テザー、
5・32…ガス流入口側端部、
6・33・43・53・63…縫合部位、
33a・43a・54a・63a…曲線部、
B0・B1・B2・B3・B4…助手席用エアバッグ。
Claims (2)
- ガス流入口を備えた袋状のエアバッグ本体が、前記ガス流入口周縁と前記ガス流入口に対向する天井壁部とを連結するように、内部に、テザーを配設させ、
該テザーが、両端をそれぞれ前記ガス流入口周縁と前記天井壁部とに対して幅方向に縫合されて、配設されている助手席用エアバッグであって、
前記テザーの前記ガス流入口周縁に対する縫合部位が、前記テザーの幅方向の両端部に、それぞれ、前記天井壁部から離れた端部側へ弧状に延びる曲線部を備えて構成されていることを特徴とする助手席用エアバッグ。 - 前記テザーの前記ガス流入口周縁に対する縫合部位が、前記曲線部相互を連結させて、略半円状に形成され、
該略半円形の直径が、前記テザーの幅寸法に略等しいことを特徴とする請求項1記載の助手席用エアバッグ。
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