JP3741155B2 - 3−メチルテトラヒドロフランの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は3−メチルテトラヒドロフランの新規製造方法に関する。3−メチルテトラヒドロフランはスパンデックスファイバーの原料であるポリエーテルグリコールのコモノマーとして利用される。
【0002】
【従来の技術】
3−メチルテトラヒドロフランは種々の方法により製造可能である。特開昭63−218669号によれば,3−メチルテトラヒドロフランはクエン酸の水素添加により3−及び4−メチルブチロラクトンと共に生成するがその選択率は約70%である。米国特許第3956318 号によれば,液相,プロトン酸の存在下エポキサイドを接触水素化すると生成するがその原料エポキサイドは高価である。特開平2-62835 号によれば,アルデヒドの存在下4−ヒドロキシブチルアルデヒドまたは2−ヒドロキシテトラヒドロフランの接触水素化で得られるジオールを環化すると生成するがその原料も高価であり,テトラヒドロフランの副生を伴う。また、メチルマレイン酸またはメチルコハク酸の水素化による方法(特開昭49−9463号)も開示されているが、出発原料の入手が困難であるばかりでなく水素化条件も過酷であり工業的実施が困難なことは明白である。
【0003】
特開昭48-22405号によれば1,4−ブテンジオールをヒドロホルミル化し,触媒分離後そのヒドロホルミル化された生成物(2−ホルミル−1,4−ブテンジオールと推定される) の水溶液を接触水素化し得られた2−メチル−1,4−ブテンジオールを環化し3−メチルテトラヒドロフランを得ている。また特開平5-117258号及び特公平4-55179 号によれば,アルデヒドの存在下1,4−ブチンジオールまたは1,4−ブテンジオールを接触水素化し,得られたジオールを環化し3−メチルテトラヒドロフランを得ている。しかしこれらの方法で原料として用いている1,4−ブテンジオールおよび1,4−ブチンジオールは,アセチレンから得られるものであるため高価であり,またテトラヒドロフランの副生を伴う。特開平6−219981号によれば,イタコン酸,3−ホルミル−2−メチルプロピオン酸またはこれらのエステルを接触水素化すると2−メチル−1,4−ブタンジオールと共に生成するが,その原料イタコン酸および3−ホルミル−2−メチルプロピオン酸は高価である。以上既往の3−メチルテトラヒドロフランの製造方法は原料が高価であるとか3−メチルテトラヒドロフランへの選択性が低いため等, 工業的に満足すべきものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は前記の欠点を有しない,安価な原料を用いる選択性の高い3−メチルテトラヒドロフランの製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題を達成するため鋭意検討を行った結果(1)青酸とメタクリル酸メチルから3−シアノイソ酪酸メチルを製造する第一工程、(2)前記第一工程で得られた3−シアノイソ酪酸メチルを水及び硫酸と反応させ、ついで同反応生成物に対して2−6倍モルのメタノールを還流下反応温度80−130℃を保つように断続的または連続的に供給し、メタノールと反応させメチルコハク酸ジメチルを製造する第二工程、及び(3)前記第二工程で得られたメチルコハク酸ジメチルを接触水素化して3−メチルテトラヒドロフランを製造する第三工程よりなる3−メチルテトラヒドロフランの製造方法を見いだした。本製造法に於いてはメタクリル酸樹脂原料として大量、安価に製造されているメタクリル酸メチルを原料として使用する。また上記の第一、第二、第三の各工程はいずれも高選択的に進行するため3−メチルテトラヒドロフランへの選択性は高い。化1に本発明の製造方法の全工程を概略的に示す。
【0006】
【化1】
【0007】
以下に本発明の方法について詳細に説明する。本発明に於ける青酸とメタクリル酸メチルから3−シアノイソ酪酸メチルを製造する第一工程は公知の方法で実施されるもので低級アルキル置換ピロリドン或いはジメチルスルホキシド溶媒のもとアルカリ金属シアン化合物を触媒として40-130℃前後で行われれる。
【0008】
本発明に於ける3−シアノイソ酪酸メチルを水及び硫酸と反応させ,ついで同反応生成物をアルコールと反応させメチルコハク酸エステルを製造する第二工程は,前記第一工程で得られた3−シアノイソ酪酸メチルを該3−シアノイソ酪酸メチルに対し0.8-1.1 倍モル好ましくは0.9-1.05倍モルの水及び硫酸を加え, 温度50-100℃好ましくは60-80 ℃で水和反応を行わせる。次に前記3−シアノイソ酪酸メチルの水和反応終了後の生成物に3−シアノイソ酪酸メチルに対し過剰量の, 好ましくは2-20倍モルのアルコールを添加し, 温度70-160℃好ましくは100-140 ℃でエステル化反応を行う。なおエステル化反応の結果,エステルと供に酸性硫安が生成する。
【0009】
このエステル化反応を3−シアノイソ酪酸メチルに対し2-6 倍モルのアルコールを使用して, 該アルコールの還流下反応温度80-130℃を保つように,連続的あるいは断続的にアルコールを供給しながら反応を行うと,さらに好ましい結果が得られる。温度が130 ℃以上になるとアルコールの脱水によるエーテルの副生が増加するし, 温度が80℃以下の時は反応速度が遅く好ましくない。本エステル化反応に用いるアルコールとしては炭素数1-8 の脂肪族アルコールで, 好ましくは1級アルコールであり, 特に精製, 分離等のプロセスを考えるとメタノールが好ましい。
【0010】
本発明に於けるエステルの水素化はバッチ形式によっても行い得るが,さらに好ましくは固定床触媒を用いた潅液形式の反応を行うのが良く,その際のエステルの単位時間当り供給量は,重量で使用触媒量の0.05-1.0倍程度である。本接触水素化反応の条件は原料エステル及び触媒の種類によっても変わるが一般的に100-300 ℃の温度で20kg/cm2(ゲージ圧)以上の圧力下で実施される。本反応に用いる水素ガスは必ずしも高純度である必要はなく,接触水素化反応に悪影響を与えない窒素,メタン等のイナート分を含む物でも良い。
【0011】
本発明における第三工程の水素化反応に用いる触媒は,主成分として銅,または周期律表第7aおよび8族に属する元素を含有する。更に詳しくは,銅,コバルト,ニッケル,鉄,レニウム,パラジウム,ルテニウム,白金,ロジウムが本反応の触媒の主成分として有効である。また,助触媒をなす成分として,クロム,モリブデン,マンガン,バリウム,マグネシウム,および珪素,アルミニウムを含有する固体酸成分等が有効である。本反応の触媒として,特に好適なのは銅を主成分とした,一般に銅−クロマイトと称するものであり,マンガン,バリウム等を助触媒成分として含有したものなどがある。本反応の触媒として,特に好適な銅−クロマイトの場合では,反応温度は150〜280℃,また反応圧は50〜200kg/cm2(ゲージ圧)の範囲が好適である。
【0012】
本接触水素化反応に用いる触媒としては銅−クロム−バリウム(またはマンガン)触媒が好ましく, 例えば次のような方法で調製される。
(1)固体状の酸化第二銅(CuO) ,酸化第二クロム(Cr2O3) 及び二酸化マンガン(MnO2)(または酸化バリウム(BaO) )を混ぜ,更に滑材としてグラファイト等を添加して良く混合した後,一般的な方法で成形し,高温焼成後成形物を破砕して適当な大きさにして使用する。
(2)重クロム酸アンモニウムを溶かした水溶液にアンモニア水を加え,この水溶液に別途調製した硝酸第二銅(または硫酸第二銅等)と,硝酸マンガン(または硫酸マンガン等)或は硝酸バリウムとを溶かした水溶液を撹伴しながら滴下する。生成する沈澱を水洗,乾燥後,例えば空気中で350 ℃付近の温度で焼成する。この様にして得た粉末状の焼成物をそのまま反応に用いることもできるが,この焼成物に適当な粘結剤や滑剤を加えて充分に混合した後成形して使用することもできる。
【0013】
上記(1),(2)等の方法により得られた銅−クロム−バリウム(またはマンガン)触媒に含まれる各成分の重量比はCuO:Cr2O3:MnO2(またはBaO )の比率に換算してそれぞれ20-85:15-75:1-15の範囲内にあることが好ましい。触媒の形態としては粉末状またはタブレット状等何れのものでも良く,その使用形態に最適なものが使用される。これらの触媒は使用する前に例えば水素雰囲気で200 ℃付近で処理される等の適当な活性化処理をした後で反応に供せられる。使用する水素量はエステル1モル当たり4モル以上,好ましくは6-60モルが適当である。
【0014】
また本反応は溶媒を用いなくとも実施できるが,好ましくは溶媒を使用する。本反応に悪影響を与えないものはいずれも溶媒として使用できる。アルコール類,炭化水素類等が例示される。接触水素化反応液は通常蒸留にかけられ,製品の3−メチルテトラヒドロフラン及びアルコールを分離する。分離されたアルコールは第二工程のエステル化反応の原料として循環使用される。
【0015】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
実施例1
(1) 第一工程(青酸とメタクリル酸メチルからの3−シアノイソ酪酸メチルの合成)
撹拌機,温度計,滴下ロート2本を備えた内容積500ml のフラスコにN−メチルピロリドン203g,シアン化カリウム1.35g を仕込み, フラスコ内の温度を120 ℃に保ちながら青酸40g とメタクリル酸メチル163gを4時間かけて滴下する。滴下終了後さらに120 ℃に2時間保ち反応を完結させた結果, メタクリル酸メチルの転化率は88.3%,反応したメタクリル酸メチルに対して98.1%の選択率で3−シアノイソ酪酸メチルが生成していた。
フラスコを減圧系につなぎ,未反応のメタクリル酸メチルを回収後,3−シアノイソ酪酸メチル165gを得た。中間留分を含めて3−シアノイソ酪酸メチルの回収率は定量的であった。
【0016】
(2) 第二工程(3−シアノイソ酪酸メチルの水和及びエステル化)
撹拌機,温度計,滴下ロートを備えた内容積200ml のフラスコに97%硫酸5.05g ,水0.81g を仕込み,フラスコ内の温度を70℃に保ちながら3−シアノイソ酪酸メチル6.35g を約20分かけて滴下し,その後70℃で2 時間熟成して加水分解反応を行う。上記反応液を100ml の振とう式オートクレーブに3−シアノイソ酪酸メチルに対して4倍重量のメタノールを用いて移し,120 ℃で6時間エステル化反応を行った。この時のオートクレーブの圧力は約 7.5kg/cm2(ゲージ圧)であった。仕込み3−シアノイソ酪酸メチルに対して94.2モル%収率でメチルコハク酸ジメチルが得られ, 生成メチルコハク酸ジメチルに対して5モル%のジメチルエーテルの副生が認められた。
【0017】
(3) 第三工程(メチルコハク酸ジメチルの水素化)
市販の触媒である日産ガードラー社製G99C(重量組成: CuO 36%, Cr2O3 32%, MnO2 2.4%, BaO 2.2% 形状: 1/4インチ×1/4インチ ペレット)を1/8 の大きさに分割し,内径15mm,長さ300mm の反応管に20.0g充填し(触媒層高 97mm ),通常の水素還元による活性化処理(1-10%水素含有の窒素気流中,200 ℃以下で還元する)を行った後反応に供した。反応温度 230℃, 反応圧力 160kg/cm2(ゲージ圧),水素の供給量は反応管出口で10 l/hr とし,原料の30wt%メチルコハク酸ジメチルのプソイドクメン溶液を5g/hr の速度(原料供給重量速度を触媒重量で割ったWHSVは 0.075hr-1)で反応管の上部から水素と共に供給した。得られた反応液を分析した結果, 未反応メチルコハク酸ジメチルは認められず3−メチルテトラヒドロフランの収率は供給したメチルコハク酸ジメチルに対して95.5%であった。
【0018】
実施例2
実施例1,第二工程のエステル化を,常圧で3−シアノイソ酪酸メチルに対して2.6 倍モルのメタノールをメタノール還流下100 ℃,5時間かけて断続的に滴下後,エーテルの副生により生成した水の90%以上をメタノールと共に系外に除去し,3−シアノイソ酪酸メチルに対して2.6 倍モルのメタノールを新たにメタノール還流下100 ℃,5時間かけて断続的に滴下した以外は同様にして行った。仕込み3−シアノイソ酪酸メチルに対して97.6モル%の収率でメチルコハク酸ジメチルが得られた。副生ジメチルエーテルは生成したメチルコハク酸ジメチルに対して1モル%以下であった。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば各工程とも極めて高い選択率で進行し, 大量, 安価に製造されているメタクリル酸メチルを原料として使用するため, 工業的に極めて高い価値を持つ。
Claims (1)
- (1)青酸とメタクリル酸メチルから3−シアノイソ酪酸メチルを製造する第一工程、(2)前記第一工程で得られた3−シアノイソ酪酸メチルを水及び硫酸と反応させ、ついで同反応生成物に対して2−6倍モルのメタノールを還流下反応温度80−130℃を保つように断続的または連続的に供給し、メタノールと反応させメチルコハク酸ジメチルを製造する第二工程、及び(3)前記第二工程で得られたメチルコハク酸ジメチルを接触水素化して3−メチルテトラヒドロフランを製造する第三工程よりなる3−メチルテトラヒドロフランの製造方法。
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