JP3738177B2 - 非水電解液二次電池及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒型リチウムイオン二次電池の如く、密閉容器内に発電要素となる電極体が収容されて、該電極体が発生する電力を正極端子部及び負極端子部から外部へ取り出すことが可能な非水電解液二次電池、並びにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯型電子機器、電気自動車等の電源として、エネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池が注目されている。例えば電気自動車に用いられる比較的大きな容量の円筒型リチウム二次電池は、図13及び図16に示す様に、筒体(15)の両端部に蓋体(16)(16)を溶接固定してなる円筒状の電池缶(1)の内部に、巻き取り電極体(5)を収容して構成されている。両蓋体(16)(16)には、正負一対の電極端子機構(110)(110)が取り付けられており、巻き取り電極体(5)と両電極端子機構(110)(110)とが、複数本の電極タブ(6)により互いに接続されて、巻き取り電極体(5)が発生する電力を一対の電極端子機構(110)(110)から外部に取り出すことが可能となっている。又、各蓋体(16)には圧力開閉式のガス排出弁(13)が取り付けられている。
【0003】
巻き取り電極体(5)は、図15に示す様に、それぞれ帯状の正極(51)と負極(53)の間に帯状のセパレータ(52)を介在させて、これらを渦巻き状に巻回して構成されている。正極(51)は、アルミニウム箔からなる帯状芯体(55)の両面にリチウム複合酸化物からなる正極活物質(54)を塗布して構成され、負極(53)は、銅箔からなる帯状芯体(57)の両面に炭素材料を含む負極活物質(56)を塗布して構成されている。セパレータ(52)には、非水電解液が含浸されている。
又、正極(51)には、正極活物質(54)の塗布されていない非塗工部が形成され、該非塗工部に、複数本の電極タブ(6)の基端部が接合されている。同様に負極(53)には、負極活物質(56)の塗布されていない非塗工部が形成され、該非塗工部に、複数本の電極タブ(6)の基端部が接合されている。
【0004】
そして、図16に示す如く、極性が同じ複数本の電極タブ(6)の先端部(61)が1つの電極端子機構(110)に接続されている。尚、図16においては、便宜上、一部の電極タブの先端部が電極端子機構(110)に接続されている状態のみを示し、他の電極タブについては、先端部が電極端子機構(110)に接続されている状態の図示を省略している。
【0005】
電極端子機構(110)は、電池缶(1)の蓋体(16)を貫通して取り付けられた電極端子(111)を具え、該電極端子(111)の基端部には鍔部(112)が形成されている。蓋体(16)の貫通孔には絶縁パッキング(113)が装着され、蓋体(16)と締結部材の間の電気的絶縁性とシール性が保たれている。電極端子(111)には、蓋体(16)の外側からワッシャ(114)が嵌められると共に、第1ナット(115)及び第2ナット(116)が螺合している。そして、第1ナット(115)を締め付けて、電極端子(111)の鍔部(112)とワッシャ(114)によって絶縁パッキング(113)を挟圧することにより、シール性を高めている。前記複数本の電極タブ(6)の先端部(61)は、電極端子(111)の鍔部(112)に、スポット溶接或いは超音波溶接によって固定されている。
【0006】
ところで、リチウムイオン二次電池においては、電池の大型化に伴って、正極及び負極の長さが大きくなるため、電極タブによる集電構造では集電性が低く、内部抵抗にばらつきが発生したり、放電容量が低下するなどの問題が生じる。
【0007】
そこで、正極及び負極の全長に亘って均一な集電性を得るべく、図14に示す如き集電構造が提案されている。該集電構造において、巻き取り電極体(7)は同様に、芯体(75)の表面に正極活物質(74)を塗布してなる正極(71)と、芯体(77)の表面に負極活物質(76)を塗布してなる負極(73)と、非水電解液が含浸されたセパレータ(72)とから構成されるが、正極(71)及び負極(73)はそれぞれセパレータ(72)上に幅方向へずらして重ね合わされ、渦巻き状に巻き取られている。これによって、巻き取り電極体(7)の巻き軸方向の両端部の内、一方の端部では、セパレータ(72)の端縁よりも外方へ正極(71)の芯体(75)の端縁(78)が突出すると共に、他方の端部では、セパレータ(72)の端縁よりも外方へ負極(73)の芯体(77)の端縁(78)が突出している。
そして、巻き取り電極体(7)の両端部にはそれぞれ円板状の集電板(62)が抵抗溶接され、該集電板(62)がリード部材(63)を介して前記電極端子機構(110)に接続される。
【0008】
しかしながら、図14に示す集電構造を有する非水電解液二次電池においては、巻き取り電極体(7)の正極(71)及び負極(73)を構成する芯体(75)(77)の端縁(78)(78)の面積が小さいため、芯体端縁と集電板(62)の間の接触面積が小さく、これによって電池の内部抵抗が大きくなる問題があった。
特に電気自動車用の電源等として用いるリチウムイオン二次電池においては、高容量であると共に、高出力を得るために出来るだけ内部抵抗を低減させることが必要となる。更に、製造コスト削減のためには、生産性に優れた集電構造が必要となる。
【0009】
そこで、生産性に優れた低抵抗な電池として、集電板の全面に均一分散状態に小径な膨出部を形成し、該膨出部を芯体端縁に接触させて抵抗溶接を施すことによって、該膨出部に電流を集中させて溶接強度を向上させたものが提案されている(例えば実開昭55−156365号参照)。
【0010】
又、図17に示す様に、平板状本体(93)に複数の折曲部(94)を形成した集電板(92)を用い、該集電板(92)を巻き取り電極体(7)の芯体端縁(78)に押し付けた状態で、該折曲部(94)を芯体端縁(78)に抵抗溶接する集電構造が提案されている(例えば特開平11−31497号参照)。
【0011】
又、集電板を2分割構造とすることによって、集電板を抵抗溶接する際の無効電流を抑制して、溶接効率を改善せんとするもの(特開平7−29564号)や、集電板の抵抗溶接部に断面V字状の突起を設けて、抵抗溶接時の電流を突起部に集中させて、溶接強度を改善せんとするもの(特公平2−8417号)が知られている。
【0012】
又、円板状の集電板に代えて、図18に示す如く複数のスリット(96)が凹設された集電部材(95)を巻き取り電極体(7)の端部に設置し、該集電部材(95)のスリット(96)へ芯体端縁(78)を嵌入せしめた状態で、集電部材(95)の表面にレーザビームを照射して、レーザ溶接を施す集電構造が提案されている(特開平10−261441号)。
【0013】
更に又、円板状の集電板に、先端角が90°以下の断面V字状の複数の突起部を形成し、該集電板を芯体端縁に押さえつけた状態で、前記突起部にレーザビームを照射することによって、集電板を極板群に溶接する構造が提案されている(特公平2−4102号)。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、集電板の全面に均一分散状態に小径な膨出部を形成した上述の集電構造(実開昭55−156365号)では、集電板と芯体の間の接触状態が不安定であり、接触状態によっては電流が流れず、溶接不良が発生する問題があった。
【0015】
又、集電板に断面V字状の突起や折曲部を形成して、該集電板を抵抗溶接する集電構造(特開平11−31497号、特開平7−29564号、特公平2−8417号)においては、リチウムイオン二次電池の如く芯体の厚さが極めて小さい場合には、溶接強度が低い問題があった。
【0016】
又、複数のスリットが凹設された集電部材を芯体端縁にレーザ溶接する集電構造(特開平10−261441号)では、複雑な形状を有する集電部材が必要となるばかりでなく、芯体端縁を集電部材の各スリットに挿入する作業が、極めて煩雑である問題があった。
【0017】
更に、円板状の集電板に断面V字状の突起部を形成して、該集電板を極板群にレーザ溶接する構造(特公平2−4102号)では、突起部の断面形状が鋭角のV字状であるために、突起部と芯体端縁の間の接触面積が小さく、これによって接触抵抗が大きくなる問題点があった。又、レーザビームを照射すべきV字状突起部と芯体端縁の間の接合面が、ビーム照射方向に対して鋭角を為すため、レーザビームが接合面の溶接に有効に作用せず、溶接不良が発生する虞があった。
【0018】
そこで本発明の目的は、電極体を構成する芯体が極めて薄い場合にも芯体端縁と集電板を大きな接触面積で接合せしめることが可能であって、然も生産性に優れた集電構造を有する非水電解液二次電池、並びにその製造方法を提供することである。
【0019】
【課題を解決する為の手段】
本発明に係る非水電解液二次電池においては、電池缶(1)の内部に、正極(71)と負極(73)の間に非水電解液を含むセパレータ(72)を介在させてこれらを積層した電極体(7)が収納され、正極(71)及び負極(73)はそれぞれ、帯状芯体の表面に活物質を塗布して構成され、該電極体(7)が発生する電力を一対の電極端子から外部へ取り出すことが可能である。
ここで、電極体(7)の少なくとも何れか一方の端部には、正極(71)或いは負極(73)を構成する帯状芯体の端縁(78)が突出し、該端縁(78)には集電板(8)が接合され、集電板(8)には、芯体端縁(78)との対向面に、断面形状が円弧状若しくは4角以上の多角形状(例えば台形状)に突出する複数条の凸部(82)が形成され、各凸部(82)が芯体端縁(78)に食い込んだ状態で、集電板(8)が芯体端縁(78)に溶接されると共に、一方の電極端子と連結されている。
【0020】
又、本発明に係る非水電解液二次電池の製造方法は、
正極(71)及び負極(73)を夫々セパレータ(72)上に幅方向へずらして重ね合わせ、これらを渦巻き状に巻き取って、正極(71)及び負極(73)の各芯体の端縁(78)がセパレータ(72)の端縁よりも外側に突出した電極体(7)を作製する工程と、
導電性を有する平板状本体(81)に、断面形状が円弧状若しくは4角以上の多角形状に突出する複数条の凸部(82)を形成して、集電板(8)を作製する工程と、
電極体(7)の各端部に突出する芯体端縁(78)に集電板(8)を被せて押し付け、集電板(8)の凸部(82)を芯体端縁(78)に食い込ませた状態で、該凸部(82)にレーザビーム若しくは電子ビームを照射して、芯体端縁(78)に集電板(8)を溶接する工程と、
電池缶(1)の内部に、集電板(8)(8)が溶接された電極体(7)を収容して、各集電板(8)を各電極端子に連結する工程
とを有している。
【0021】
上記本発明の非水電解液二次電池及びその製造方法においては、電極体(7)の芯体端縁(78)に集電板(8)を押し付けることによって、該集電板(8)の各凸部(82)が芯体端縁(78)に食い込んで、芯体端縁(78)には、凸部(82)の表面形状に応じた接合面、例えば円筒面からなる接合面が形成される。該接合面は、凸部(82)を断面V字状に形成した場合よりも大きな面積となる。
従って、各凸部(82)と芯体端縁(78)の接合部にレーザビーム又は電子ビームを照射して、芯体端縁(78)に集電板(8)を溶接することによって、集電板(8)は大きな接触面積で芯体端縁(78)に接合されることとなり、この結果、接触抵抗が小さくなって、高い集電性が得られる。
又、集電板(8)の凸部(82)と芯体端縁(78)の接合面は、その中央部にて、ビーム照射方向に対して90°若しくはそれに近い角度を為すこととなるため、レーザビーム若しくは電子ビームが接合面の溶接に有効に作用し、この結果、大きな接合面積による高い溶接強度が得られることになる。
【0022】
具体的構成において、集電板(8)は、平板状本体(81)に、前記複数の凸部(82)を形成すると共に、1或いは複数の注液孔(83)を開設して構成され、これらの注液孔(83)による開口面積は、平板状本体(81)の平面形状が有する面積の15%以上に設定されている。該具体的構成によれば、電池の組立工程において電池缶(1)の内部に電解液を注入したとき、該電解液は、集電板(8)の注液孔(83)を通過して、電極体(7)へ供給されるので、セパレータ(72)、正極(71)及び負極(73)に電解液を含浸させる時間が短縮される。尚、集電板(8)の注液孔(83)による開口率が15%を下回ると、集電板(8)によって電解液の通過が困難となるため、電解液の含浸に長い時間が必要となる。但し、注液孔(83)による開口率が90%を越えると、電流の流路が非常に狭くなるため、集電板(8)の電気抵抗が増大し、集電性が低下することになる。従って、集電板(8)の注液孔(83)による開口率としては、15%〜90%の範囲が好ましいと言える。
【0023】
他の具体的構成において、集電板(8)は、平板状本体(81)に、前記複数の凸部(82)を形成すると共に、短冊状のリード部(85)を一体に形成して構成され、該リード部(85)の先端が電極端子と連結されている。該具体的構成によれば、リード部(85)を電極端子に連結する作業が容易になると共に、電極体(7)と電極端子の間の電気抵抗を小さく抑えることが出来る。
【0024】
更に他の具体的構成において、集電板(100)の平板状本体(101)の外周部には、凸部(102)の近傍位置に、該位置の芯体(77)の先端部を電極体(7)の内側に向けて押さえつける芯体押え部(106)が設けられている。該具体的構成においては、前記芯体(77)の先端部が、芯体押え部(106)によって押さえつけられて、電極体(7)の内側へ変位しており、これに伴って集電板の凸部(102)との接触位置も電極体(7)の内側へ変位している。従って、集電板の凸部を芯体(77)の先端部に溶接する際、レーザビーム若しくは電子ビームを、集電板の凸部の外周側の端部まで照射する必要はなく、該端部よりも少し内側、即ち、芯体(77)の前記変位箇所が接触している位置まで照射すればよい。この結果、ビームが集電板(100)の外周縁よりも外側へ照射されることがなくなり、よって、芯体(77)やセパレータ(72)が直接にビームの照射をうけて溶融することが防止される。
【0025】
又、前記芯体押え部(106)の芯体(77)に対する押え付け面と、集電板(100)の平板状本体(101)の表面とが為す角度は、30°以上、45°以下の範囲である。前記角度をこの範囲内に設定することによって、前記芯体(77)の先端部を電極体(7)の内側へ変位させる効果が十分に得られる。
【0026】
又、上記本発明の非水電解液二次電池の製造方法において、集電板(8)の凸部(82)の幅は、レーザビーム又は電子ビームのスポット径の0.8倍以上に形成することが好ましい。例えば、集電板(8)の凸部(82)の断面形状が半円状の場合、該半円の直径が、レーザビーム又は電子ビームのスポット径の0.8倍以上であることが好ましい。又、集電板(8)の凸部(82)の断面形状が台形状の場合、該台形の上辺(短辺)の幅が、レーザビーム又は電子ビームのスポット径の0.8倍以上であることが好ましい。これによって、集電板(8)の凸部(82)と芯体端縁(78)との接合部にレーザビーム若しくは電子ビームのエネルギーが集中的に与えられるので、接合部が充分に溶融して、大きな接合面積と高い溶接強度が得られる。
【0027】
尚、集電板(8)の凸部(82)の突出距離は、0.5mm以上、3mm以下であることが好ましい。凸部(82)の突出距離が0.5mmよりも小さくなると、電極体(7)の芯体端縁(78)が一平面に揃っていない場合において、凸部(82)を全ての芯体端縁(78)に対して充分に食い込ませることが出来ず、この結果、十分な溶接強度が得られない。又、凸部(82)の突出距離が3mmよりも大きくなると、溶接強度向上の効果が飽和する一方、電池缶(1)内のデッドスペースが増大し、体積エネルギー密度が低下することになる。
【0028】
又、集電板(8)の厚さは0.1mm以上、2mm以下であることが好ましい。集電板(8)の厚さが0.1mmよりも小さくなると、集電板(8)の電気抵抗が増大して、集電性が低下する。又、集電板(8)の厚さが2mmよりも大きくなると、集電性向上の効果が飽和する一方、リード部(85)を一体に成形した場合のリード部(85)の加工性に問題が生じる。
【0029】
又、集電板(8)の凸部(82)の板厚は平板状本体(81)の板厚よりも小さいことが好ましい。該構成においては、平板部分の厚さが大きいので集電性が低下することはなく、然もビーム照射部の厚さが小さいので、低いエネルギーで溶接を行なうことが出来る。
【0030】
集電板(8)の材質としては、Cu、Al、Ni、SUS、Ti、或いはこれらの金属の合金を採用することが出来る。これによって、非水電解液に対する耐腐食性や導電性に優れた電池を提供することが出来る。
【0031】
【発明の効果】
本発明に係る非水電解液二次電池及びその製造方法によれば、電極体を構成する芯体が極めて薄い場合にも芯体端縁と集電板を大きな接触面積で接合せしめることが可能であって、生産性も良好となる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を円筒型リチウムイオン二次電池に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
【0033】
全体構成
本実施例の円筒型リチウムイオン二次電池は、図1に示す如く、筒体(15)の両端部に蓋体(16)(16)を溶接固定してなる円筒状の電池缶(1)の内部に、巻き取り電極体(7)を収容して構成されている。両蓋体(16)(16)には、正負一対の電極端子機構(110)(110)が取り付けられている。尚、電極端子機構(110)は、従来と同一の構成を具えている。又、各蓋体(16)には圧力開閉式のガス排出弁(13)が取り付けられている。
【0034】
巻き取り電極体(7)の両端部にはそれぞれ集電板(8)が設置され、芯体端縁(78)にレーザ溶接されている。該集電板(8)の端部に突設されたリード部(85)の先端は、電極端子機構(110)を構成する電極端子(111)の鍔部(112)に、スポット溶接、超音波溶接或いはレーザ溶接によって接合されている。
【0035】
巻き取り電極体 ( 7 )
巻き取り電極体(7)は、図2に示す様に、それぞれ帯状の正極(71)と負極(73)の間に帯状のセパレータ(72)を介在させて、これらを渦巻き状に巻回して構成されている。正極(71)は、アルミニウム箔からなる帯状芯体(75)の両面にリチウム複合酸化物からなる正極活物質(74)を塗布して構成され、負極(73)は、銅箔からなる帯状芯体(77)の両面に炭素材料を含む負極活物質(76)を塗布して構成されている。セパレータ(72)には、非水電解液が含浸されている。
【0036】
正極(71)には、正極活物質(74)の塗布されている塗工部と、正極活物質の塗布されていない非塗工部とが形成されている。又、負極(73)にも、負極活物質(76)の塗布されている塗工部と、負極活物質の塗布されていない非塗工部とが形成されている。
正極(71)及び負極(73)は、それぞれセパレータ(72)上に幅方向へずらして重ね合わせ、正極(71)及び負極(73)の前記非塗工部をセパレータ(72)の両端縁からそれぞれ外側へ突出させる。そして、これらを渦巻き状に巻き取ることによって巻き取り電極体(7)が構成される。該巻き取り電極体(7)においては、巻き軸方向の両端部の内、一方の端部では、正極(71)の非塗工部の芯体端縁(78)が、セパレータ(72)の一方の端縁よりも外方へ突出し、他方の端部では、負極(73)の非塗工部の芯体端縁(78)が、セパレータ(72)の他方の端縁よりも外方へ突出している。
【0037】
集電構造
集電板(8)は、図2及び図3に示す如く、円形の平板状本体(81)を具え、該平板状本体(81)には、放射状に伸びる複数本の円弧状凸部(82)が一体成型され、巻き取り電極体(7)側に突出している。又、平板状本体(81)には、中央孔(84)が開設されると共に、該中央孔(84)の周囲に、複数の注液孔(83)が開設されている。更に平板状本体(81)の端部には、短冊状のリード部(85)が一体に形成されている。 尚、集電板(8)の円弧状凸部(82)は、図4に示す如く平板状本体(81)の半径線に直交する断面形状が半円の円弧を呈している。
【0038】
他の集電構造
図9及び図10は、他の構造を有する集電板(100)を表わしている。該集電板(100)は、円形の平板状本体(101)を具え、該平板状本体(101)には、放射状に伸びる複数本の台形状凸部(102)が一体成型され、巻き取り電極体(7)側に突出している。又、平板状本体(101)には、中央孔(104)が開設されていると共に、該中央孔(104)の周囲に、複数の注液孔(103)が開設されている。又、平板状本体(101)の端部には、短冊状のリード部(105)が一体に形成されている。
更に、平板状本体(101)の外周部には、各凸部(102)の両側近傍位置に、前記巻き取り電極体(7)の芯体(77)の先端部を、巻き取り電極体(7)の内側に向けて押さえつける芯体押え部(106)が下向きに突設されている。芯体押え部(106)は、平板状本体(101)の外周部に切断及び折り曲げ加工を施すことによって、図10に示す幅Xが2mm、長さYが5mmの短冊状に形成されている。
【0039】
製造方法
図1に示す電池缶(1)、電極端子機構(110)、図2に示す巻き取り電極体(7)、及び集電板(8)をそれぞれ作製した後、図5に示す如く、巻き取り電極体(7)の各端部に形成されている芯体端縁(78)に集電板(8)を押し付ける。
【0040】
これによって、集電板(8)の円弧状凸部(82)は、図6に示す如く巻き取り電極体(7)の芯体端縁(78)に食い込み、円弧状凸部(82)と芯体端縁(78)の間には、円筒面からなる接合面が形成される。
【0041】
この状態で、図中に矢印で示す様に、集電板(8)の円弧状凸部(82)の内周面に向けてレーザビームを照射し、レーザ溶接を施す。この結果、集電板(8)の円弧状凸部(82)と巻き取り電極体(7)の芯体端縁(78)とが、大きな接触面積で互いに接合されることになる。
【0042】
又、図11及び図12に示す集電板(100)を用いた場合、集電板(100)を巻き取り電極体(7)の端部に押し付けることによって、芯体(77)の先端部が、芯体押え部(106)によって押さえつけられて、巻き取り電極体(7)の内側へ変位し、これに伴って該先端部と集電板(100)の凸部(102)との接触位置も巻き取り電極体(7)の内側へ変位することになる。一方、集電板(100)を巻き取り電極体(7)の端部にレーザ溶接する際、レーザビームは、図11中に二点鎖線でそのスポット(107)の軌跡を示す様に、集電板(100)の凸部(102)に沿って、例えば集電板(100)の内周側から外周側へ向けて移動させるが、最も外周側のスポット(107a)の位置は、上述の芯体(77)先端部の変位に伴って、集電板(100)の凸部(102)の外周側の端部(102a)よりも少し内側にとどめることが可能となる。仮に、最も外周側のスポット(107a)の位置を集電板(100)の凸部(102)の外周側の端部(102a)まで進めるとすれば、そのレーザビームの一部が集電板(100)の外周縁よりも外側へ照射されて、巻き取り電極体(7)の最外周部に位置する芯体(77)やセパレータ(72)を溶融させる虞がある。これに対し、図11及び図12に示す構造においては、最も外周側のスポット(107a)が、集電板(100)の外周縁から外側へはみ出ることはないから、芯体(77)やセパレータ(72)がレーザビームの照射によって溶融する虞はない。従って、巻き取り電極体(7)の最外周部に位置する芯体(77)についても、集電板(100)との溶接が確実に行われ、この結果、巻き取り電極体(7)と集電板(100)の間の接合面積が増大して、集電効率が向上する。
【0043】
電池の組立て
次の様にして、本発明電池A、B、C、D、E、及び比較電池F、G、H、Iを作製した。
本発明電池Aについては、図2に示す如く、厚さ20μmのアルミニウム製の芯体(75)にコバルト酸リチウムからなる正極活物質(74)を塗布してなる正極(71)と、厚さ20μmの銅製の芯体(77)に黒鉛からなる負極活物質(76)を塗布してなる負極(73)と、イオン透過性のポリプロピレン製微多孔膜からなるセパレータ(72)とを重ね合わせて、これらを渦巻き状に巻き取って、巻き取り電極体(7)を作製した。尚、正極(71)及び負極(73)の幅方向の端部には、一定幅の非塗工部が設けられている。
【0044】
又、厚さ1mmの平板状本体(81)に複数本の円弧状凸部(82)が放射状に形成されると共に、複数の注液孔(83)が50%の開口率で開設されたアルミニウム製の集電板(8)を作製し、該集電板(8)を巻き取り電極体(7)の正極側の芯体端縁(78)に被せて、上部から治具により押さえつけた。尚、集電板(8)の円弧状凸部(82)の肉厚Tは1mm、内径Rは1.2mmとした。
【0045】
この状態で集電板(8)の円弧状凸部(82)の内周面に向けて図6の如くレーザビームを照射し、集電板(8)の円弧状凸部(82)の外周面を芯体端縁(78)に溶接した。その後、厚さ1mmのアルミニウム製リード片の基端部を集電板(8)の表面に、先端部をアルミニウム製電極端子の裏面にレーザ溶接し、正極側の集電構造を構成した。又、電極端子、集電板、及びリード片がニッケル製であること以外は正極側の集電構造と同様に、負極側の集電構造を構成した。
【0046】
その後、筒体(15)の内部に巻き取り電極体(7)を収容し、筒体(15)の両開口部にそれぞれ、電極端子機構(110)が組み付けられた蓋体(16)を溶接固定した後、支持電解質として6弗化燐酸リチウムを1M/Lで含むエステル系有機電解液を注入し、素電池である電力容量180Wh級の電池を組み立てた。
【0047】
本発明電池Bについては、図8に示すように、断面が台形状の凸部(121)を形成した集電板(120)を用いたこと以外は本発明電池Aと同様にして、電池の組立を行なった。但し、本発明電池Bとしては、注液孔による開口率が10%、15%、30%、50%、70%、90%、及び93%とした7種類の本発明電池B1〜B7を作製した。台形状凸部(120)を形成する溝の深さHは1.2mm、溝底面の溝幅Bは1.6mmである。
【0048】
本発明電池Cについては、平板状本体に同じ板厚のリード部が一体成型されていること以外は本発明電池Bと同様にして、電池の組立を行なった。複数の注液孔による開口率は50%とした。又、リード部の先端は電極端子の裏面にレーザ溶接した。
【0049】
本発明電池Dについては、基本的には本発明電池Cと同様に電池の組立を行なったが、下記の如く台形状凸部を形成する溝の形状寸法が異なる23種類の本発明電池D1〜D23を作製した。開口部の面積は全体面積の50%とした。
即ち、本発明電池D1〜D5は、溝底面の溝幅Bをそれぞれレーザスポット径の0.6倍、0.8倍、1.0倍、1.2倍、1.6倍としたものである。本発明電池D6〜D14は、溝深さHをそれぞれ0.3mm、0.5mm、0.8mm、1.2mm、1.6mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mmとしたものである。又、本発明電池D15〜D23は、集電板の厚さTをそれぞれ0.05mm、0.10mm、0.20mm、0.50mm、1.00mm、1.50mm、2.00mm、2.50mm、3.00mmとしたものである。
【0050】
但し、本発明電池D1〜D5については、集電板の厚さTを1mm、凸部の溝深さHを1.2mm、凸部の板厚Sを1mmとし、本発明電池D6〜D14については、集電板の厚さTを1mm、凸部の溝幅Bを1.6mm、凸部の板厚Sを1mmとし、本発明電池D15〜D23については、凸部の板厚Sは集電板の厚さTと同じとし、凸部の溝幅Bは1.6mm、凸部の溝深さHは1.2mmとした。
【0051】
本発明電池Eについては、図8に示す集電板(120)の厚さTを1mm、台形状凸部(121)の板厚Sを0.5mmとしたこと以外は本発明電池Dと同様にして、電池の組立を行なった。注液孔による開口率は50%とした。又、凸部の溝深さHは1.2mm、凸部の溝底面における溝幅Bは1.6mmとした。
【0052】
一方、比較電池Fについては、図17に示す如く、厚さ1mmの平板状本体(93)に4つの折曲部(94)を形成した集電板(92)を作製し、該集電板(92)を巻き取り電極体(7)の芯体端縁(78)に設置して、2本の電極棒によるスポット溶接を施した。その後、集電板(92)及び電極端子にリードの両端をスポット溶接して、集電構造を構成し、前記電池と同様の方法で電池を組み立てた。
【0053】
比較電池Gについては、図18に示す如く複数のスリット(96)を有する集電部材(95)を作製して、該集電部材(95)のスリット(96)に巻き取り電極体(7)の芯体端縁(78)を差し込んで、該集電部材(95)を芯体端縁(78)にレーザ溶接した。その後、集電部材(95)及び電極端子にリードの両端をレーザ溶接して、集電構造を構成し、前記電池と同様の方法で電池を組み立てた。
【0054】
又、比較電池Hについては、図7に示す如く、先端角45°の断面V字状凸部(91)を具えた厚さ1mmのアルミニウム製集電板(9)を、厚さ20μmのアルミニウム製芯体を具えた巻き取り電極体の正極側の芯体端縁(78)に押し付け、この状態でV字状凸部(91)にレーザビームを照射して、レーザ溶接を施した。その後、集電板(9)及び電極端子に、厚さ1mmのアルミニウム製リードの両端をレーザ溶接して、正極側の集電構造を構成した。
又、電極端子、リード及び集電板がニッケル製であること以外は正極側の集電構造と同様にして、負極側の集電構造を構成した。
【0055】
本発明電池Iについては、図9及び図10に示すように、断面が台形状の凸部(102)を形成した集電板(100)を用いて、集電板(100)の厚さTを1mm、凸部の溝深さHを1.2mm、凸部の板厚Sを0.5mm、凸部の溝幅Bを1.6mm、注液孔(103)による開口率を50%、芯体押え部(106)の幅Xを2mm、長さYを5mmとして、本発明電池Dと同様にして電池の組立を行なった。尚、本発明電池Iとしては、図12に示す如く、芯体押え部(106)の芯体(77)に対する押え付け面と、集電板(100)の平板状本体(101)の表面とが為す角度θが、15°、30°、40°、45°、60°、及び80°とした6種類の本発明電池I1〜I6を作製した。
【0056】
試験
次に、上述の複数の電池を用いて以下の性能確認試験を行ない、出力特性の比較を行なった。
各電池の構成及び出力の測定結果を表1〜3にまとめて示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
本発明電池Aと比較電池F、G、Hの出力特性の比較
本発明電池Aと比較電池F、G、Hについて、0.125Cで4.1Vまで充電を行なった後、0.5Cで40%の放電深度まで電池を放電させ、その後、電流値:4C、放電時間:10秒間の条件で、出力特性試験を行なった。その結果を表4に示す。出力密度の算出に際しては、上記条件での電圧・電流特性をもとに出力値を算出し、その結果を電池の重量で除して、出力密度とした。
尚、本発明電池Aにおけるレーザ溶接の条件は、レーザ出力:400W、パルス周波数:15Hz、レーザビームのスポット径D:1mmである。
【0061】
【表4】
【0062】
表4の結果より、本発明電池Aは比較電池Fに比べて出力特性が高いことが分かる。これは、比較電池Fの芯体が20μmと非常に薄いために、スポット溶接による溶接面積が小さく、この結果、内部抵抗が増大したためであると考えられる。
【0063】
比較電池Gでは、出力が比較電池Fよりも向上しているが、本発明電池Aの出力には及ばない。これは、本発明電池Aは、放射状に伸びる4本の円弧状凸部(82)によって集電を行なっているために、放電時の電位分布が少ないのに対して、比較電池Gでは、芯体と集電部材の接触面積は本発明電池Aよりも大きいにも拘わらず、円周方向の一部から集電を行なう構造を採用しているため、本発明電池Aよりも高率放電時の電位分布が大きくなるためであると考えられる。
【0064】
又、比較電池Gでは、集電部材のスリットに複数の芯体を挿入する作業が必要であり、工程が複雑となるが、本発明電池Aでは、集電板を芯体端縁に押さえ付けるだけで溶接が可能であり、工程が簡略化される。
【0065】
比較電池Hでは、出力が比較電池Gよりも向上しているが、本発明電池Aの出力には及ばない。これは、比較電池Hでは、本発明電池Aと同様に巻き取り電極体の芯体の全体から集電を行なっているが、図7の如く凸部(91)の断面形状がV字状になっているため、該凸部(91)と芯体端縁(78)との接合面の幅W′が、同じ深さ及び幅を有する円弧状凸部(82)と芯体端縁(78)との接合面の幅Wよりも小さくなり、接触面積が狭くなるためであると考えられる。
【0066】
本発明電池Aと本発明電池B4の出力特性の比較
本発明電池Aと本発明電池B4について、レーザ出力:400W、パルス周波数:15Hzの同一条件で集電板を溶接した場合の出力特性の比較を行なった。その結果を表5に示す。出力特性の試験方法としては、0.125Cで4.1Vまで充電を行なった後、0.5Cで40%の放電深度まで電池を放電させ、その後、電流値:4C、放電時間:10秒間の条件で出力を測定した。
【0067】
【表5】
【0068】
表5の結果より、本発明電池Aよりも本発明電池B4の方が出力特性に優れていることが分かる。この理由としては、本発明電池Aの円弧状凸部(82)よりも本発明電池B4の台形状凸部(102)の方が、芯体端縁(78)との接触面積が大きくなることと、本発明電池B4の方がレーザビームの照射部が広い範囲で平坦となっているために、レーザビームのエネルギーが有効に作用して、充分な接合面積による溶接が行なわれたことが考えられる。
【0069】
本発明電池B1〜B7の電解液含浸時間の比較
次に、本発明電池B1〜B7について、次の電解液含浸試験を行なって、巻き取り電極体に電解液を含浸させるのに要した時間の測定を行なった。
本発明電池B1〜B7について、集電板を取り付けた巻き取り電極体の重量を測定した後、アルゴンガス雰囲気のドライボックス内で、巻き取り電極体をSUS製の容器に収容し、該容器内に電解液を満たし、5kg/cm2で加圧した。そして、10分毎に容器から巻き取り電極体を取り出して、重量を測定し、所定量の電解液が含浸されるまでの時間を測定した。その結果を表6に示す。
【0070】
【表6】
【0071】
表6の結果より、開口部の面積が15%より小さくなると、電解液を完全に含浸させるのに要する時間が大幅に増大することが分かる。
【0072】
次に、これらの巻き取り電極体と同一仕様を有する別の巻き取り電極体を用いて電池を作製し、出力特性の比較を行なった。その結果を表7に示す。出力特性の試験方法としては、0.125Cで4.1Vまで充電を行なった後、0.5Cで40%の放電深度まで電池を放電させ、電流値:4C、放電時間:10秒間の条件で出力を測定した。
【0073】
【表7】
【0074】
表7の結果より、集電板の注液孔による開口率が90%よりも大きくなると、出力特性の低下が大きくなることが分かる。これは、集電板の凸部領域を除く殆どの領域が開口部となって、集電性が低下するためであると考えられる。
以上の結果より、集電板の注液孔による開口率は15%〜90%の範囲が好ましいと言える。
【0075】
本発明電池B4と本発明電池Cの出力特性の比較
本発明電池B4と本発明電池Cについて、0.125Cで4.1Vまで充電を行なった後、0.5Cで40%の放電深度まで電池を放電させた後、電流値:4C、放電時間:10秒間の条件で出力を測定した。その結果を表8に示す。
【0076】
【表8】
【0077】
表8の結果より、本発明電池B4よりも本発明電池Cの方が出力特性に優れていることが分かる。この理由としては、本発明電池Cでは集電板のリードが一体成型されているのに対し、本発明電池B4ではリードが集電板に溶接されているために、接触抵抗が増大して出力特性に差が生じたものと考えられる。
【0078】
本発明電池D1〜D5の出力特性の比較
本発明電池D1〜D5について、レーザ出力:400W、パルス周波数:15Hzの同一条件で集電板を溶接した場合の出力特性の比較を行なった。その結果を表9に示す。尚、レーザビームのスポット径Dは1mmである。出力特性の試験方法としては、0.125Cで4.1Vまで充電を行なった後、0.5Cで40%の放電深度まで電池を放電させ、電流値:4C、放電時間:10秒間の条件で出力特性を測定した。
【0079】
【表9】
【0080】
表9の結果より、集電板の凸部を形成している溝の底面での溝幅がレーザビームのスポット径Dの0.8倍よりも小さくなると、出力の低下が大きくなることが分かる。この理由としては、凸部の溝幅がレーザビームのスポット径Dの0.8倍よりも小さくなると、凸部の両端部、即ち芯体端縁に溶接されない領域にまでレーザビームが照射されることとなり、溶接のために有効に利用されるレーザビームのエネルギーが減少して、被溶接部の溶融が不十分となり、この結果、集電板と芯体端縁の間の接触面積が減少し、集電性が低下するためであると考えられる。
従って、集電板の凸部の溝幅はレーザビームのスポット径Dの0.8倍以上に形成することが好ましい。
【0081】
本発明電池D6〜14の出力特性の比較
本発明電池D6〜D14について、レーザ出力:400W、パルス周波数:15Hzの同一条件で集電板を溶接した場合の出力特性の比較を行なった。その結果を表10に示す。尚、レーザビームのスポット径Dは1mmである。出力特性の試験方法としては、0.125Cで4.1Vまで充電を行なった後、0.5Cで40%の放電深度まで電池を放電させ、電流値:4C、放電時間:10秒間の示す条件で出力を測定した。
【0082】
【表10】
【0083】
表10の結果より、凸部の溝深さが0.5mmよりも小さくなると、出力低下が大きくなることが分かる。これは、凸部の溝深さが0.5mmより小さくなると、巻き取り電極体の芯体端縁が一平面に揃っていない場合において、凸部が全ての芯体に対して充分に食い込まず、この結果、接触面積が減少して、集電性が低下するためであると考えられる。
【0084】
又、凸部の溝深さが3mmよりも大きくなっても出力特性に変化がないのは、巻き取り電極体の芯体端縁のずれは通常2mm以下であるため、溝深さを3mmより大きくしても、接触面積増大の効果は変わらないためであると考えられる。但し、集電板の凸部の溝深さが過大になると、電池缶内で集電板の占める溶接が増大して、電池の体積エネルギー密度が減少することになる。
従って、集電板の凸部の溝深さとして、0.5mm〜3mmの範囲が好ましいと言える。
【0085】
本発明電池D15〜D23の出力特性の比較
本発明電池D15〜D23について、レーザ出力:400W、パルス周波数:15Hzの同一条件で集電板を溶接した場合の出力特性を測定した。その結果を表11に示す。出力特性の試験方法としては、0.125Cで4.1Vまで充電を行なった後、0.5Cで40%の放電深度まで電池を放電させ、電流値:4C、放電時間:10秒間の条件で出力を測定した。
【0086】
【表11】
【0087】
表11の結果より、集電板の厚さが0.1mmよりも小さくなると、出力低下が大きくなることが分かる。これは、集電板の厚さが0.1mmよりも小さくなると、集電板の電気抵抗が増大して、集電性が低下するためであると考えられる。
但し、集電板の厚さを2mmよりも大きくしても集電性向上の効果が飽和する一方、集電板に突設したリード部の折曲げ等の加工性が悪化する。
従って、集電板の厚さとしては、0.1mm〜2mmの範囲が好ましいと言える。
【0088】
本発明電池D5と本発明電池Eの出力特性の比較
本発明電池D5と本発明電池Eについて、レーザ出力:350W、パルス周波数:15Hzの同一条件で集電板を溶接した場合の出力特性を測定した。その結果を表12に示す。出力特性の試験方法としては、0.125Cで4.1Vまで充電を行なった後、0.5Cで40%の放電深度まで電池を放電させ、電流値:4C、放電時間:10秒間の条件で出力特性を測定した。
【0089】
【表12】
【0090】
表12の結果より、本発明電池D5よりも本発明電池Eの方が出力特性に優れていることが分かる。この理由としては、本発明電池Eは、本発明電池D5と集電板の厚さが同一であるので集電板自体の電気抵抗に違いはないが、レーザビームが照射される凸部の板厚が薄いため、より小さなレーザエネルギーで被溶接部を溶融せしめることが出来、この結果、大きな接触面積による溶接が実現されて、集電性が高くなるためであると考えられる。
【0091】
本発明電池Aにおける円弧状凸部の半径Rについての検討
更に本発明電池Aにおいて、集電板(8)の円弧状凸部(82)の内周面での半径Rを、0.2mm、0.4mm、0.6mm、1.0mm、1.2mm、1.6mmとした6種類の電池を作製し、出力特性試験を行なった。但し、各電池の集電板(8)の平板状本体(81)の厚さは1mm、円弧状凸部(82)の板厚は1mm、円弧状凸部(82)の溝深さは1.2mmとした。又、何れの電池も、集電板(8)のレーザ溶接の条件は、レーザ出力:400W、パルス周波数:15Hzとした。出力特性の試験方法としては、0.125Cで4.1Vまで充電を行なった後、0.5Cで40%の放電深度まで電池を放電させ、電流値:4C、放電時間:10秒間の条件で出力特性を測定した。その結果を表13に示す。
【0092】
【表13】
【0093】
表13の結果より、集電板(5)の円弧状凸部(82)の半径Rがレーザビームのスポット径Dの0.4倍以上の場合に優れた出力特性が得られることが分かる。この理由としては、円弧状凸部(82)の半径Rがレーザビームのスポット径Dの0.4倍よりも小さくなると、円弧状凸部(82)の両端部、即ち芯体端縁(78)と溶接されることのない領域にまでレーザビームが照射されることとなり、溶接のために有効に利用されるレーザビームのエネルギーが減少して、被溶接部の溶融が不十分となり、この結果、集電板と芯体端縁の間の接触面積が減少し、集電性が低下するためであると考えられる。
従って、集電板(8)の円弧状凸部(82)の半径Rはレーザビームのスポット径Dの0.4倍以上に形成することが好ましい。
【0094】
本発明電池Iにおける芯体押え付け面と集電板本体表面の為す角度θの検討
本発明電池I1〜6と本発明電池E(前記角度θが0°の場合)について、出力特性試験を行なった。何れの電池も、集電板(100)のレーザ溶接の条件は、レーザ出力:400W、パルス周波数:15Hzとした。出力特性の試験方法としては、0.125Cで4.1Vまで充電を行なった後、0.5Cで40%の放電深度まで電池を放電させ、電流値:4C、放電時間:10秒間の条件で出力特性を測定した。その結果を表14に示す。
【0095】
【表14】
【0096】
表14の結果より、芯体押え部(106)が形成された発明電池I1〜6は、何れも発明電池E(前記角度θが0°)に比べて出力密度が増加することがわかる。この理由としては、芯体押え部(106)によって芯体(77)の先端部が押さえつけられて巻き取り電極体(7)の内側に変位することにより、集電板の凸部(102)との接触位置も内側に変位し、その結果、巻き取り電極体(7)の外周部に位置する芯体も溶接されるから、広い接合面積が得られて集電効率が向上したためと考えられる。
【0097】
更に、前記角度θが30°以上、45°以下の場合に、より優れた出力特性が得られることが分かる。この理由としては、前記角度θが30°よりも小さいと巻き取り電極体(7)の芯体(77)の先端部が十分に内側へ変位せず、一方、前記角度θが45°より大きくなると、芯体押え部(106)が巻き取り電極体(7)の端部に食い込んで芯体(77)の先端部が十分に内側へ変位しないことになり、いずれの場合においても、巻き取り電極体(7)の芯体(77)の先端部と集電板の凸部(102)との接触位置の内側への変位が小さいため、十分に大きな接合面積が得られないためと考えられる。従って、芯体押え部(106)の芯体(77)に対する押え付け面と、集電板(100)の平板状本体(101)の表面とが為す角度θは、30°以上、45°以下に形成することが好ましい。
【0098】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、負極集電板(3)の金属層部の材質としては、フェライト系ステンレス鋼、或いはマルテンサイト系ステンレス鋼を用いることも出来る。又、上記の実施例では、集電板の溶接にレーザビームを用いたが、これに限らず、電子ビームによる溶接を採用することも可能である。又、本発明は、リチウムイオン二次電池に限らず、広く非水電解液二次電池に実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るリチウムイオン二次電池の要部を示す一部破断正面図である。
【図2】巻き取り電極体及び集電板の分解斜視図である。
【図3】集電板の平面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図5】巻き取り電極体に集電板を押し付ける工程を示す斜視図である。
【図6】芯体端縁に集電板の円弧状凸部が食い込んだ状態を示す断面図である。
【図7】芯体端縁に集電板のV字状凸部が食い込んだ状態を示す断面図である。
【図8】芯体端縁に集電板の台形状凸部が食い込んだ状態を示す断面図である。
【図9】他の構造を有する負極集電板の斜視図である。
【図10】該負極集電板の平面図である。
【図11】負極集電板に対するレーザスポットの位置を説明する平面図である。
【図12】図11のE−E線に沿う断面図である。
【図13】従来の円筒型リチウムイオン二次電池の外観を示す斜視図である。
【図14】集電板と巻き取り電極体の分解斜視図である。
【図15】従来のリチウムイオン二次電池に用いられている巻き取り電極体の一部展開斜視図である。
【図16】従来のリチウムイオン二次電池の要部を示す一部破断正面図である。
【図17】従来の集電板と巻き取り電極体の分解斜視図である。
【図18】従来の集電部材と巻き取り電極体の分解斜視図である。
【符号の説明】
(1)電池缶
(15)筒体
(16)蓋体
(7)巻き取り電極体
(71)正極
(72)セパレータ
(73)負極
(74)正極活物質
(75)芯体
(76)負極活物質
(77)芯体
(78)芯体端縁
(8)集電板
(81)平板状本体
(82)凸部
(83)注液孔
(85)リード部
(100)集電板
(102)台形状凸部
(106)芯体押え部
(107)スポット
(111)電極端子
Claims (13)
- 電池缶(1)の内部に、それぞれ帯状の正極(71)と負極(73)の間に非水電解液を含むセパレータ(72)を介在させてこれらを積層した電極体(7)が収納され、正極(71)及び負極(73)はそれぞれ、帯状芯体の表面に活物質を塗布して構成され、該電極体(7)が発生する電力を一対の電極端子から外部へ取り出すことが出来る非水電解液二次電池において、電極体(7)の少なくとも何れか一方の端部には、正極(71)或いは負極(73)を構成する帯状芯体の端縁(78)が突出し、該端縁(78)には集電板が接合され、集電板には、芯体端縁(78)との対向面に、断面形状が円弧状若しくは4角以上の多角形状に突出する複数条の凸部が形成され、各凸部が芯体端縁(78)に食い込んだ状態で、集電板が芯体端縁(78)に溶接されると共に、一方の電極端子と連結されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
- 集電板は、平板状本体に前記複数の凸部を形成すると共に、1或いは複数の注液孔(83)を開設して構成され、これらの注液孔(83)による開口面積は、平板状本体の平面形状が有する面積の15%以上である請求項1に記載の非水電解液二次電池。
- 集電板は、平板状本体に、前記複数の凸部を形成すると共に、短冊状のリード部を一体に形成して構成され、該リード部の先端が電極端子と連結されている請求項1又は請求項2に記載の非水電解液二次電池。
- 集電板の平板状本体の外周部には、凸部の近傍位置に、電極体(7)の芯体(77)の先端部を電極体(7)の内側に向けて押さえつける芯体押え部(106)が設けられている請求項1乃至請求項3の何れかに記載の非水電解液二次電池。
- 前記芯体押え部(106)の芯体(77)に対する押え付け面と、集電板の平板状本体の表面とが為す角度は、30°以上45°以下の範囲である請求項1乃至請求項4の何れかに記載の非水電解液二次電池。
- 平板状本体に、断面形状が円弧状若しくは4角以上の多角形状に突出する複数条の凸部を形成すると共に、1或いは複数の注液孔(83)を開設して構成される非水電解液二次電池用の集電板。
- 平板状本体には、短冊状のリード部が一体に形成されている請求項6に記載の集電板。
- 集電板の平板状本体の外周部には、凸部の近傍位置に、電極体(7)の芯体(77)の先端部を電極体(7)の内側に向けて押さえつける芯体押え部(106)が設けられている請求項6又は請求項7に記載の集電板。
- 前記芯体押え部(106)の芯体(77)に対する押え付け面と、集電板の平板状本体の表面とが為す角度は、30°以上45°以下の範囲である請求項6乃至請求項8の何れかに記載の集電板。
- 電池缶(1)の内部に、正極(71)と負極(73)の間に非水電解液を含むセパレータ(72)を介在させてこれらを積層した電極体(7)が収納され、正極(71)及び負極(73)はそれぞれ、帯状芯体の表面に活物質を塗布して構成され、該電極体(7)が発生する電力を一対の電極端子から外部へ取り出すことが出来る非水電解液二次電池の製造方法において、
正極(71)及び負極(73)を夫々セパレータ(72)上に幅方向へずらして重ね合わせ、これらを渦巻き状に巻き取って、正極(71)及び負極(73)の各芯体の端縁(78)がセパレータ(72)の端縁よりも外側に突出した電極体(7)を作製する工程と、
導電性を有する平板状本体に、断面形状が円弧状若しくは4角以上の多角
形状に突出する複数条の凸部を形成して、集電板を作製する工程と、
電極体(7)の各端部に突出する芯体端縁(78)に集電板を被せて押し付け、集電板の凸部を芯体端縁(78)に食い込ませた状態で、該凸部にレーザビーム若しくは電子ビームを照射して、芯体端縁(78)に集電板を溶接する工程と、
電池缶(1)の内部に、集電板が溶接された電極体(7)を収容して、各集電板を各電極端子に連結する工程
とを有することを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法。 - 集電板の凸部の幅は、レーザビーム若しくは電子ビームのスポット径の0.8倍以上である請求項10に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 集電板の平板状本体の外周部には、凸部の近傍位置に、電極体(7)の芯体(77)の先端部を電極体(7)の内側に向けて押さえつける芯体押え部(106)が設けられている請求項10又は請求項11に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
- 集電板の芯体押え部(106)の芯体(77)に対する押え付け面と、集電板の平板状本体の表面とが為す角度は、30°以上45°以下の範囲である請求項10乃至請求項12の何れかに記載の非水電解液二次電池の製造方法。
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