JP3729605B2 - 焼付硬化性が優れ常温時効が抑制されたアルミニウム合金板材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車、家電製品及び機械部品等のパネル等に使用され、塗装焼付時の加熱を利用して強度を増加させる熱処理型アルミニウム合金板として好適のアルミニウム合金板材の製造方法に関し、特に、低温短時間での塗装焼付により高い強度を得ることができ、常温時効による強度の増加を抑制することができる焼付硬化性が優れ常温時効が抑制されたアルミニウム合金板材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車、家電製品及び機械部品等のパネル等には、軽量化を目的として、アルミニウム合金板が使用されている。これらの用途でアルミニウム合金板が使用される場合、まずプレス及び曲げ等の成形加工が行われ、次いで塗装及び塗装膜に強度を与えるための加熱処理(焼付塗装、ベーキング)が行われる。このようなアルミニウム合金板としては、プレス等の成形加工時には強度が低く、成形が容易であると共に、成形加工後は焼付塗装の加熱処理によりアルミニウム合金板自体の強度が著しく向上する材料であることが理想とされている。このような要求から、この種のアルミニウム合金板としては、主として時効硬化型合金であるJIS 6000系アルミニウム合金板が使用され、種々の技術開発がなされている。
【0003】
しかし、省エネルギ及び樹脂系材料の多様化に伴い、焼付塗装の条件が低温短時間化する傾向にあり、従来のアルミニウム合金板では焼付塗装による強度の向上が十分確保できなくなってきた。そこで、本出願人は既に低温短時間での焼付塗装によっても高い強度が得られるアルミニウム合金板の製造方法を提案した(特開平1−111851号公報及び特開昭62−89852号公報)。これらのアルミニウム合金板では、低温での焼付塗装後の強度を増加させるために、マトリックス中に析出の核を発生させるという方法を採用している。
【0004】
しかし、これらのアルミニウム合金板では、室温に放置すると、強度の増加が著しく、経時変化により成形性が低下してしまう。
【0005】
近時、例えば自動車パネル等の製造においては、極めて複雑なプレス成形等の成形加工を行うことが多い。この際に、使用される材料の成形性が経時変化等により低下してしまうと、プレス成形時に割れ等が発生して製造が困難となる。そこで、アルミニウム合金の製造者側では、経時変化が生じ易い時効型のアルミニウム合金に対しては使用期間を限定することにより対応している。
【0006】
しかし、自動車メーカー等のアルミニウム合金の使用者側においては、納入されたアルミニウム合金が使用期間内で使用されることは少なく、数ヶ月間室温等で放置された後に使用されることが多い。放置されたアルミニウム合金を使用期間内の条件の下でプレス成形すると、割れが生じてしまう。このため、放置されたアルミニウム合金をプレス成形する場合には、プレス条件を設定し直してから成形を行っている。このように条件の変更を行った場合には、割れは抑制されるものの、シワ等が発生することがあり、生産性及び生産効率が低下してしまう。
【0007】
そこで、室温での時効硬化を抑制するアルミニウム合金材の製造方法が提案されている(特開平5−70907号公報)。この公報に記載されている技術は、2段階の熱処理を施すことにより、塗装焼付時の析出のための核を形成すると共に、G・Pゾーンを分解するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−70907号公報に開示された技術によっても、時効抑制効果は十分ではなく、室温に放置されると強度の増加が大きい。このため、プレス成形時に割れ等が生じることがある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、塗装焼付による強度の向上を維持したまま、常温放置による強度の増加と、それに伴う成形性の低下を抑制することができる焼付硬化性が優れ常温時効性が抑制されたアルミニウム合金板材の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る焼付硬化性が優れ常温時効が抑制されたアルミニウム合金板材の製造方法は、JIS6000系アルミニウム合金の溶湯を鋳造してアルミニウム合金鋳塊を得る工程と、この鋳塊をバーニング温度以下の温度で均質化熱処理する工程と、均質化熱処理後の鋳塊を熱間圧延し、更に冷間圧延して所定の板厚及び調質とする工程と、100℃/分以上の昇温速度で480乃至580℃でバーニング温度以下の温度に加熱して溶体化熱処理する工程と、100℃/分以上の降温速度で50乃至90℃に焼入れ処理する工程と、50乃至90℃に1乃至10時間放置する工程と、室温で時効処理する工程と、100℃/分以上の昇温速度で加熱し次いで200乃至250℃の温度範囲に30秒間以下保持する工程と、100℃/分以上の降温速度で焼入れ処理する工程とを有することを特徴とする。
【0011】
このように、本発明は、MgとSiを主成分とするJIS 6000系アルミニウム合金の鋳塊を作製し、バーニング温度以下で均質加熱処理し、熱間圧延及び冷間圧延を施し、100℃/分以上の昇温速度で480乃至580℃であってバーニング温度以下の温度に加熱して溶体化熱処理した後、100℃/分以上の降温速度で50乃至90℃に焼入れ処理し、50乃至90℃に1乃至10時間放置して、室温で時効し、100℃/分以上の昇温速度で加熱し次いで200乃至250℃の温度範囲に30秒間以下保持し、その後、100℃/分以上の降温速度で焼入れ処理するものであり、これにより、低温短時間での塗装焼付による硬化性を維持したまま、常温時効性を抑制し、室温に数ヶ月間放置しても、強度の増加及び成形性の低下を防止することができる。
【0012】
なお、前記冷間圧延の開始前及び/又はその途中に中間焼鈍を施すことが望ましい。中間焼鈍を施すことにより、冷間圧延での成形性を向上することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本願発明者等が前記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、従来のJIS6000系アルミニウム合金において常温時効により成形性が低下する原因として、焼入れ処理時に合金中の空孔濃度が高いために、室温においてJIS 6000系合金特有の空孔及び溶質原子の集合体(クラスタ)が析出していることに想到した。そして、適切な熱処理を行うことにより、室温で析出するクラスタを消失させると共に、空孔濃度を低減し、常温時効を抑制できることを見出した。
【0014】
以下、本発明の熱処理条件について説明する。先ず、JIS 6000系アルミニウム合金材を溶解し、鋳造し、アルミニウム合金鋳塊を作製する。次いでバーニング温度以下の温度で均質化熱処理し、その後、熱間圧延を行い、更に必要に応じて中間焼鈍を行う。その後、冷間圧延を行い、所定の板厚とする。その後、本発明の特徴である熱処理等を施す。
【0015】
即ち、先ず、JIS 6000系アルミニウム合金材を100℃/分以上の降温速度で50乃至60℃に溶体化焼入れした後、この温度に1乃至10時間放置することにより、焼付塗装時の析出のための核を生成させる。次に、室温に放置することにより、クラスタを析出させる。そして、100℃/分以上の昇温速度で200乃至250℃の温度範囲に30秒間以下保持し、100℃/分以上の降温速度で焼入れ処理を行うことにより、室温での放置により析出したクラスタを再溶解させると共に、空孔濃度を低減する。こうして、焼付硬化性を維持したまま、常温時効を抑制する。
【0016】
次に、各熱処理条件について説明する。先ず、JIS 6000系Al合金を通常の方法により溶解した後、鋳造し、アルミニウム合金鋳塊を得る。その後、このアルミニウム合金鋳塊に均質化熱処理を施す。均質化熱処理では、以下の条件によりアルミニウム合金鋳塊を均質化することが好ましい。
【0017】
均質化熱処理温度:480乃至580℃
均質化熱処理は添加元素の偏析を均一分散させて、分散析出物のサイズ及び体積含有率を制御するために行われる熱処理である。均質化熱処理温度が480℃未満であると、粗大化合物の偏析又は添加元素の粗大析出が生じるため、成形性が低下することがある。一方、均質化熱処理温度が580℃を超えると、バーニングが発生し熱間圧延時に割れが発生することがある。従って、均質化熱処理における温度は480乃至580℃とすることが好ましい。なお、アルミニウム合金の組成によっては、580℃以下でバーニングが発生する場合もあり、均質化熱処理温度はバーニングが発生しない範囲内で組成に応じて、できるだけ高い温度にするのが好ましい。また、保持時間は適宜決められる。
【0018】
次に、熱間圧延処理及び冷間圧延処理を行うが、熱間圧延処理と冷間圧延処理との間に中間焼鈍処理を行うと、成形性をより一層向上させることができる。
【0019】
中間焼鈍処理温度:300乃至450℃
中間焼鈍処理温度が300℃未満であると、焼鈍が十分には行われず、成形性の向上効果が小さい。一方、中間焼鈍処理温度が450℃を超えると、余分な析出物が析出することがあり、十分なベークハード性を得にくい。従って、中間焼鈍処理温度は300乃至450℃とすることが好ましい。
【0020】
そして、冷間圧延により、アルミニウム合金材を所定の板厚にした後、溶体化熱処理処理を行う。
【0021】
次に溶体化熱処理の条件について説明する。
【0022】
昇温速度:100℃/分以上
溶体化熱処理においては昇温速度を100℃/分未満にすると、添加元素が固溶せず強度が低下し、ベークハード性が十分でない。従って、溶体化熱処理においては昇温速度を100℃/分以上とする。
【0023】
溶体化熱処理温度:480乃至580℃であってバーニング温度以下の温度
溶体化熱処理温度が480℃未満であると、添加元素からなる金属間化合物が固溶せず、金属間化合物が残存するため、十分な強度又はベークハード性が得られない。一方、溶体化温度が580℃を超えると、バーニングが発生し板割れが発生したり、成形が困難となる。従って、溶体化熱処理における温度は480乃至580℃であってバーニング温度以下の温度とする。なお、アルミニウム合金の組成によっては、580℃以下でバーニングが発生する場合もあり、溶体化熱処理温度はバーニングが発生しない温度範囲内で組成に応じて、できるだけ高い温度にするのが好ましい。また、保持時間は適宜決められる。
【0024】
焼入れ降温速度:100℃/分以上
溶体化熱処理後の焼入れにおいては、降温速度を100℃/分未満にすると、固溶元素が析出し、十分な強度が得られないと共に、成形性の低下が生じる。従って、降温速度は100℃/分以上とする。
【0025】
焼入れ温度:50乃至90℃
焼入れ温度が50℃未満であると、十分なベークハード性を得られない。一方、焼入れ温度が90℃を超えると、成形性が低下する。従って、焼入れ温度は50乃至90℃とする。
【0026】
焼入れ後に、ベークハード性及び成形性を向上させるために放置する。
【0027】
放置温度:50乃至90℃
放置温度が50℃未満であると、十分なベークハード性を得られない。一方、放置温度が90℃を超えると、成形性が低下する。従って、放置温度は50乃至90℃とする。
【0028】
放置時間:1乃至10時間
放置時間が1時間未満であると、十分なベークハード性を得られない。一方、放置時間が10時間を超えると、成形性が低下する。従って、放置時間は1乃至10時間とする。
【0029】
そして、溶体化熱処理及び焼入れ処理後の常温時効処理としてアルミニウム合金材を常温に24時間以上放置してクラスタ等の析出物を析出させる。なお、この常温時効処理を施さないで、次工程(再固溶のための熱処理)を行うと、アルミニウム合金材はT4状態で急激に強度が増加してしまい、成形性及び曲げ性の低下につながる。従って、再固溶のための熱処理前に常温時効処理を行う。
【0030】
再固溶熱処理時の昇温速度:100℃/分以上
常温時効の後、時効析出物を溶融させるために、再固溶のための熱処理を行う。この熱処理において、昇温速度を100℃/分未満にすると、析出物の溶融が不十分であると共に、条件により安定相の析出物が発生して低温でのベークハード性が不十分となってしまう。従って、再固溶熱処理時の昇温速度は100℃/分以上とする。
【0031】
熱処理温度:200乃至250℃
再固溶のための熱処理は時効より析出したクラスタ(空孔又は溶質原子)を再びアルミニウム合金中に溶融させる熱処理である。この熱処理温度が200℃未満であると、クラスタの溶融が十分に行われず常温時効により強度が増加する。一方、熱処理温度が250℃を超えると、安定相の析出物が発生するため低温でのベークハード性が不十分となってしまう。従って、再固溶のための熱処理温度は200乃至250℃とする。
【0032】
熱処理保持時間:30秒以下
熱処理の保持時間が30秒を超えると、安定相の析出物が発生するため、低温でのベークハード性が不十分となってしまう。従って、熱処理保持時間は30秒以下とする。なお、この熱処理温度に保持する時間は、0秒でもよく、即ち、保持しなくてもよい。
【0033】
降温速度:100℃/分以上
再固溶のための熱処理後の焼入れにおいて、冷却温度を100℃/分未満にすると、析出物の溶融が不十分であると共に、条件により安定相の析出物が発生して低温でのベークハード性が不十分となってしまう。従って、降温速度は100℃/分以上とする。
【0034】
なお、本発明で使用されるアルミニウム合金はJIS 6000系アルミニウム合金に限定されるものではなく、Si及びMgを主成分とするアルミニウム合金であればよい。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、本発明の特許請求の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
【0036】
第1実施例
先ず、Si:1.0重量%、Mg:0.6重量%、Mn:0.06重量%、Ti:0.02重量%、Fe:0.15重量%を含有するJIS 6000系アルミニウム合金材を通常の方法により、溶解及び鋳造し、厚さ50mmの合金鋳塊を得た。次に、この合金鋳塊に温度560℃で4時間加熱して均質化熱処理を施し、熱間圧延をすることにより、板厚5.0mmの熱間圧延材を得た。続いて、この熱間圧延材を常温になるまで放置した後、200℃/分の昇温速度で温度500℃にして5秒間熱処理して中間焼鈍処理をし、その後、常温にて冷間圧延を施して厚さ1.0mmの圧延材を得た。そして、この圧延材を下記表1に示す条件で溶体化熱処理を施した後、100℃/分の降温速度で70℃に焼入れした。
【0037】
【表1】
【0038】
そして、70℃で2時間保持し、更に常温で36時間放置して常温時効処理を行い、その後、再固溶のための熱処理として200℃/分の昇温速度で温度を250℃にし、5秒間保持した。そして、200℃/分の降温速度で焼入れ処理を行いT4材を得た。そして、このT4材を7日間及び90日間、常温で放置してアルミニウム合金材(Al合金材)を作製し、以下に示す条件により試験を行い、評価した。
【0039】
上述の工程を施したAl合金材からJIS5号試験片を切り取り、各試験片についてオートグラフ(島津製)により引張試験を行った。強度の評価については、上述の製造後、7日間常温時効処理を施したAl合金材(7日間経過材)及び90日間常温時効処理を施したAl合金材(90日間経過材)について、夫々、0.2%耐力(以下、単に耐力という)を測定し、これらの耐力(σ0.2)の値から((90日経過材のσ0.2)−(7日間経過材のσ0.2))で算出した耐力値の変化量Δσ0.2を評価した。なお、Δσ0.2が15N/mm2以下である場合を良好とした。また、7日間経過材と90日間経過材とに、2%の引張りを付加しながら170℃の温度で、20分間の時効処理を施した後、引張試験を行い、これらの耐力の値をベークハード性として評価した(以下、この耐力をBH耐力という)。このBH耐力値が190N/mm2以上である場合を良好とした。
【0040】
これらの試験結果について、下記表2に7日間経過材並びに90日間経過材の耐力値、耐力値の変化量及びBH耐力値を示す。なお、耐力値の変化量及びBH耐力値の評価が良好である場合には、「○」とし、耐力値の変化量及びBH耐力値のうち1つでも不良がある場合には「×」として総合評価した。
【0041】
【表2】
【0042】
上記表2に示すように、実施例1乃至3においては、適切な条件の下で溶体化熱処理を施されているので、耐力値の変化量及びBH耐力値が良好であった。
【0043】
一方、比較例10においては、昇温速度が本発明範囲の下限未満であるので、BH耐力値が低く、十分なベークハードが得られなかった。
【0044】
比較例11においては、溶体化熱処理温度が本発明の下限未満であるので、BH耐力値が低く、十分なベークハードが得られなかった。
【0045】
比較例12においては、溶体化熱処理温度が本発明の上限を超えているので、バーニングによる割れが発生した。
【0046】
第2実施例
第1実施例と同様の組成を有するAl合金材を第1実施例と同様にして冷間圧延工程まで施して厚さ1.0mmの圧延材を得た。次に、この圧延材を200℃/分の昇温速度で温度530℃にして、30秒間保持して溶体化熱処理を施してから、100℃/分の降温速度で下記表3に示す温度に焼入れした。そして、下記表3に示す時間だけ焼入れ温度に保持した。
【0047】
【表3】
【0048】
そして、常温で36時間放置した後、再固溶のための熱処理として200℃/分の昇温速度で温度を250℃にし、5秒間保持した。そして、200℃/分の降温速度で焼入れ処理を行いT4材を得た。そして、このT4材を7日間及び90日間、常温で放置したAl合金材を作製し、第1実施例に示す条件によって試験を行い評価した。
【0049】
これらの試験結果について、下記表4に7日間経過材並びに90日間経過材の耐力値、耐力値の変化量及びBH耐力値を示す。なお、耐力値の変化量及びBH耐力値の評価が良好である場合には、「○」とし、耐力値の変化量及びBH耐力値のうち1つでも不良がある場合には「×」として総合評価した。
【0050】
【表4】
【0051】
上記表4に示すように、実施例4乃至6においては、適切な条件の下で保持されているので、耐力値の変化量及びBH耐力値が良好であった。
【0052】
一方、比較例13においては、保持時間(焼入れ温度)が本発明範囲の下限未満であるので、BH耐力値が低く、十分なベークハードが得られなかった。
【0053】
比較例14においては、保持温度が本発明範囲の上限を超えているので、耐力値の変化量が大きく、成形性が低下した。
【0054】
比較例15においては、保持時間が本発明の下限未満であるので、BH耐力値が低く、十分なベークハード性が得られなかった。
【0055】
比較例16においては、保持時間が本発明範囲の上限を超えているので、耐力値の変化量が大きく、成形性が低下した。
【0056】
第3実施例
第1実施例と同様の化学成分を含有するAl合金材を第1実施例と同様にして冷間圧延工程まで施して厚さ1.0mmの圧延材を得た。次に、この圧延材を200℃/分の昇温速度で温度530℃にして、30秒間保持して溶体化熱処理を施してから、100℃/分の降温速度で70℃に焼入れした。そして、70℃で2時間保持した後、常温で36時間放置した。次に、200℃/分の昇温速度で加熱し、下記表5に示す条件で再固溶のための熱処理を施した。
【0057】
【表5】
【0058】
そして、200℃/分の降温速度で焼入れしてT4材を得た。このT4材を7日間及び90日間、常温で放置したAl合金材を作製し、第1実施例に示す条件によって試験を行い評価した。
【0059】
これらの試験結果について、下記表6に7日間経過材並びに90日間経過材の耐力値、耐力値の変化量及びBH耐力値を示す。なお、耐力値の変化量及びBH耐力値の評価が良好である場合には、「○」とし、耐力値の変化量及びBH耐力値のうち1つでも不良がある場合には「×」として総合評価した。
【0060】
【表6】
【0061】
上記表6に示すように、実施例7乃至9においては、適切な条件の下で再固溶のための熱処理が施されているので、耐力値の変化量及びBH耐力値が良好であった。
【0062】
一方、比較例17においては、熱処理温度が本発明範囲の下限未満であるので、耐力値の変化量が大きく、成形性が低下した。
【0063】
比較例18においては、熱処理温度が本発明範囲の上限を超えているので、BH耐力値が低く、十分なベークハードが得られなかった。
【0064】
比較例19においては、熱処理時間が本発明範囲の上限を超えているので、BH耐力値が低く、十分なベークハードが得られなかった。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、所定の熱処理を施すことにより、低温短時間での優れたベークハード性を保持したまま、常温時効による強度の増加を防止することができ、成形性が低下することを防止することができる。従って、Al合金板を製造した後、長期間常温に放置した後でも加工条件を変える必要がないので、材料のストックが可能となり、製造工程が簡略化されると共に、歩留も向上し、製造コストが低減される。更に、このAl合金板は優れた低温短時間でのベークハード性を有するので、この合金板を自動車、家電製品及び機械部品等に使用すると、これらの自動車、家電製品及び機械部品等の軽量化を図ることができる。そして、汎用的な工業製品への応用が可能である。
Claims (2)
- JIS6000系アルミニウム合金の溶湯を鋳造してアルミニウム合金鋳塊を得る工程と、この鋳塊をバーニング温度以下の温度で均質化熱処理する工程と、均質化熱処理後の鋳塊を熱間圧延し、更に冷間圧延して所定の板厚及び調質とする工程と、100℃/分以上の昇温速度で480乃至580℃でバーニング温度以下の温度に加熱して溶体化熱処理する工程と、100℃/分以上の降温速度で50乃至90℃に焼入れ処理する工程と、50乃至90℃に1乃至10時間放置する工程と、室温で時効処理する工程と、100℃/分以上の昇温速度で加熱し次いで200乃至250℃の温度範囲に30秒間以下保持する工程と、100℃/分以上の降温速度で焼入れ処理する工程とを有することを特徴とする焼付硬化性が優れ常温時効が抑制されたアルミニウム合金板材の製造方法。
- 前記冷間圧延の開始前及び/又はその途中に中間焼鈍を施すことを特徴とする請求項1に記載の焼付硬化性が優れ常温時効が抑制されたアルミニウム合金板材の製造方法。
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1997
- 1997-06-19 JP JP16294097A patent/JP3729605B2/ja not_active Expired - Lifetime
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