JP3723637B2 - 撮影レンズ - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、主に電子スチルカメラのような小型の撮像機器に用いられる撮影レンズに関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
近年、従来の銀塩フィルムを使用するカメラと比較して撮影及び鑑賞が容易な電子スチルカメラが普及しつつある。また一般家庭に普及が進んできたパーソナルコンピュータ等に対する簡単な静止画像入力装置としても小型で高解像の電子スチルカメラが望まれている。
【0003】
このような目的で利用される電子スチルカメラは、高い性能が望まれるとともに、小型化と低コスト化の要求が非常に高い。さらに、撮像素子を用いる電子スチルカメラでは、撮像素子の小型化に伴い1画素の大きさが小さくなり、非常に高解像度の撮影光学系が必要とされる。また、この種の撮像素子においては、画素の前にRGB色分解フィルターを配置する場合が多く、画面中央と周辺とでは画素に入射する光線の角度が異なるので色ムラを発生する原因となり、画素に垂直に光線が入射するような、いわゆるテレセントリックな光学系が必要とされる。
【0004】
この種の光学系としては、ビデオカメラ、監視用カメラ等で用いられている従来の光学系を使用することも可能であるが、これら従来の光学系は、動画を対象としている場合が多く、電子スチルカメラ等で利用するには、解像度が低く改善の余地がある。例えば、特開平1−265216号公報記載のレンズは、監視カメラ用ということもあり、明るく広画角であるが非常に歪曲収差が大きく電子スチルカメラとしては、好ましくない。また、特開平3−63613号公報記載のレンズは、画角的には、本発明の撮影レンズとほぼ同等であるが、像面湾曲が比較的大きく高解像度であるとは言い難く、歪曲収差も大きく好ましくない。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、高解像で歪曲収差が小さく、バックフォーカスが長く、テレセントリック性も良好で、コンパクトで構成枚数の少ない撮影レンズを提供することを目的とする。
【0006】
【発明の概要】
本発明の撮影レンズは、物体側から順に、像側に凹面を有する負レンズと、像側に凸面を有する正レンズの2枚のレンズからなる第1レンズ群と;開口絞りと;正の屈折力を有する第2レンズ群と;より構成され、第2レンズ群は、正レンズと負レンズを接合した接合レンズを少なくとも1組含み、第2レンズ群の最も物体側のレンズは像側に凸面を有するメニスカス単レンズからなり、さらに、次の条件式(1)ないし(6)を満足することを特徴としている。
(1)0.5<|fI-1 /fI-2 |<1.3
(2)0.8<FII/F<1.6
(3)0.15<D/F<0.75
(4)0.4<|d II-1 /r II-1 |<1.0
(5)0.1<N n −N P <0.35
(6)0.7<|R/F|<1.5
但し、
I-1 :第1レンズ群の負レンズの焦点距離、
I-2 :第1レンズ群の正レンズの焦点距離、
II:第2レンズ群の焦点距離、
F:レンズ全系の焦点距離、
D:第1レンズ群中の負レンズと正レンズの空気間隔、
II-1 :第2レンズ群中の上記メニスカス単レンズのレンズ肉厚、
II-1 :第2レンズ群中の上記メニスカス単レンズの像側の面の曲率半径、
n :第2レンズ群中の接合レンズの負レンズのd線の屈折率、
P :第2レンズ群中の接合レンズの正レンズのd線の屈折率、
R:第2レンズ群中の接合レンズの接合面の曲率半径
である。
【0007】
第1レンズ群中の負レンズと正レンズはそれぞれ、好ましくは、像側に強い凹面を有するメニスカス負レンズと像側に凸面を有する正レンズとから構成し、次の条件式(7)を満足させることが好ましい。
(7)0.3<|r2 /r4 |<0.6
但し、
2 :第1レンズ群中の負レンズの像側の面の曲率半径、
4 :第1レンズ群中の正レンズの像側の面の曲率半径、
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の撮影レンズは、物体側から順に、負レンズと正レンズの2枚のレンズからなる第1レンズ群と、空気間隔をあけて、正の屈折力を有する第2レンズ群を配置したレンズ構成からなり、第1レンズ群と第2レンズ群の間に絞りを配置したレンズ構成とする。また、第2レンズ群は、1組の正レンズと負レンズの接合レンズを含むレンズ構成とする。
【0010】
条件式(1)は、第1レンズ群中の負レンズと正レンズのパワーに関するものである。第1レンズ群は全体として弱い正または負のパワーを有するが、条件式(1)の範囲内で、負レンズと正レンズのパワーと適切に配分することにより、第2レンズ群へ入射する光束を適度に補正して、良好な性能を得ることが可能になる。
条件式(1)の下限を越えて、第1レンズ群中の負レンズのパワーが強くなると、バックフォーカスを長くすることは可能となるが、歪曲収差、コマ収差が悪化するとともにレンズの全長を短くすることが困難になる。上限を越えて、第1レンズ群の正レンズのパワーが強くなりすぎると、ペッツバール和が増大し、良好な軸外性能を得ることが困難になるとともに、バックフォーカスを長くすることが困難になる。
【0011】
条件式(2)は、第2レンズ群のパワーに関するもので、第2レンズ群に入射する光束を良好に収差補正して結像させるためのものである。
条件式(2)の下限を越えて、第2レンズ群のパワーが強くなると、バックフォーカスを長くすることが困難になるとともに、像面に結像する光束のテレセントリック性が悪化する。上限を越えて、第2レンズ群のパワーが弱くなると、特に像面湾曲、非点収差が劣化し軸外性能が悪くなるとともに、レンズ全長を短くすることが困難になる。
【0012】
条件式(3)は、第1レンズ群中の負レンズと正レンズの空気間隔に関するものである。第1レンズ群と第2レンズ群をこの条件式(3)で規定する適切な空気間隔を開けて配置することにより、良好な収差補正が可能となる。
条件式(3)の下限を越えて、空気間隔が狭くなると、コマ収差、非点収差が増大し良好な像面を得ることが困難となる。上限を越えると、特に歪曲収差の補正が困難となるとともに、レンズ全長も長くなるため好ましくない。
【0013】
条件式(4)は、第2レンズ群の最も物体側のレンズの形状に関するものである。条件式(4)の下限を越えて、像側の面の曲率半径が小さくなると、それに伴って物体側の面の曲率半径も小さくなるため、レンズの加工の容易さ、コストの点で好ましくない。上限を越えて、像側の面の曲率半径が大きくなると、軸上の球面収差と軸外の像面湾曲のバランスをとることが困難になる。
【0014】
条件式(5)及び(6)は、第2レンズ群中の接合レンズの負レンズと正レンズの屈折率差、及び接合面の曲率半径に関する条件で、特に色収差を良好に補正するための条件である。
【0015】
条件式(5)の下限を越えると、接合面の曲率半径を緩くすることが困難になり加工上好ましくない。上限を越えると、正レンズの屈折率が低くなり像面湾曲を小さくすることが困難になる。
【0016】
条件式(6)の下限を越えると、接合面の曲率半径が小さくなりすぎ、加工コストの増加の原因となる。上限を越えると、軸上色収差、倍率色収差を良好に保ったまま像面湾曲、非点収差を小さく抑えることが困難となる。
【0017】
条件式(7)は、第1レンズ群を構成する負レンズと正レンズの形状に関する条件であり、条件式(7)の範囲内で負レンズ、正レンズの形状を定めることにより良好に諸収差を補正することが可能となる。条件式(7)の下限を越えると、負レンズのパワーが強くなりすぎ、コマ収差の発生が大きくなるとともにコンパクトにできない。上限を越えると、正レンズのパワーが強くなりすぎ、ペッツバール和が大きくなるため、像面湾曲、非点収差を良好に補正できない。
【0018】
以下、具体的な数値実施例について、本発明を説明する。以下の実施例1ないし8は、いずれも、物体側から順に、像側に凹面を有する負レンズ1n、像側に凸面を有する正レンズ1pから構成される第1レンズ群10、開口絞りS、メニスカス単レンズ2mと、正レンズ2p及び負レンズ2nとの接合レンズとを有する第2レンズ群20、及び撮像素子のカバーガラスである平行平面ガラスGを基本構成とする。平行平面ガラスGは、この種の撮影レンズ系では、水晶フィルタ、赤外線カットフィルタ、カバーガラスが用いられ、その像側の面が撮像面である。
【0019】
第2レンズ群20は、実施例1ないし3では、メニスカス単レンズ2m、及び正レンズ2pと負レンズ2nの接合レンズだけから構成され、実施例4では、正レンズ2pと負レンズ2nの接合レンズの後方に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズ2eがさらに配置され、実施例5ないし8では、メニスカス単レンズ2mと、正レンズ2pと負レンズ2nの接合レンズとの間に、正レンズ2fが配置されている。また、第2レンズ群20の接合レンズは、実施例4を除き、物体側から正、負の順であり、実施例4は負、正の順である。
【0020】
[実施例1]
図1及び図2は、本発明の撮影レンズの第1の実施例を示すもので、図1はそのレンズ構成図、図2はその諸収差図である。
このレンズの具体的数値データを表1に示す。諸収差図中、d線、g線、C線は、それぞれの波長における、球面収差によって示される色収差と倍率色収差、Sはサジタル、Mはメリディオナルを示している。
【0021】
表および図面中、FNO はFナンバー、F はレンズ全系の焦点距離、W はレンズの半画角、fBはバックフォーカスを表す。Rは曲率半径、Dはレンズ厚またはレンズ間隔、Nd はd線の屈折率、νd はd線のアッベ数を示す。バックフォーカスfBは、実施例1ないし3では第2レンズ群の最終面(r9面)から平行平面ガラスGの像側面(r11)迄の距離の空気換算距離(fB=d9+(d10/N10)、実施例4ないし8では、第2レンズ群の最終面(r11面)から平行平面ガラスGの像側面(r13)迄の距離の空気換算距離(fB=d11+(d12/N12 )である。
【0022】
【表1】
Figure 0003723637
【0023】
[実施例2]
図3及び図4は、本発明の撮影レンズの第2の実施例を示すもので、図3はレンズ構成図、図4は諸収差図である。表2は具体的数値データである。
【0024】
【表2】
Figure 0003723637
【0025】
[実施例3]
図5及び図6は、本発明の撮影レンズの第3の実施例を示すもので、図5はレンズ構成図、図6は諸収差図である。表3は具体的数値データである。
【0026】
【表3】
Figure 0003723637
【0027】
[実施例4]
図7及び図8は、本発明の撮影レンズの第4の実施例を示すもので、図7はレンズ構成図、図8は諸収差図である。表4は具体的数値データである。
【0028】
【表4】
Figure 0003723637
【0029】
[実施例5]
図9及び図10は、本発明の撮影レンズの第5の実施例を示すもので、図9はレンズ構成図、図10は諸収差図である。表5は具体的数値データである。
【0030】
【表5】
Figure 0003723637
【0031】
[実施例6]
図11及び図12は、本発明の撮影レンズの第6の実施例を示すもので、図11はレンズ構成図、図12は諸収差図である。表6は具体的数値データである。
【0032】
【表6】
Figure 0003723637
【0033】
[実施例7]
図13及び図14は、本発明の撮影レンズの第7の実施例を示すもので、図13はレンズ構成図、図14は諸収差図である。表7は具体的数値データである。
【0034】
【表7】
Figure 0003723637
【0035】
[実施例8]
図15及び図16は、本発明の撮影レンズの第8の実施例を示すもので、図15はレンズ構成図、図16は諸収差図である。表8は具体的数値データである。
【0036】
【表8】
Figure 0003723637
【0037】
次に、実施例1ないし8の各条件式に対する値を表9に示す。
【表9】
Figure 0003723637
【0038】
表9から明らかなように、実施例1ないし8の数値は、条件式(1)ないし(7)を満足している。また、収差図から明らかなように、各収差も良好に補正されている。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、十分なバックフォーカスを有し、高解像度で、かつコンパクトで構成枚数の少ない撮影レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による撮影レンズの第1の実施例のレンズ構成図である。
【図2】図1のレンズの諸収差図である。
【図3】本発明による撮影レンズの第2の実施例のレンズ構成図である。
【図4】図3のレンズの諸収差図である。
【図5】本発明による撮影レンズの第3の実施例のレンズ構成図である。
【図6】図5のレンズの諸収差図である。
【図7】本発明による撮影レンズの第4の実施例のレンズ構成図である。
【図8】図7のレンズの諸収差図である。
【図9】本発明による撮影レンズの第5の実施例のレンズ構成図である。
【図10】図9のレンズの諸収差図である。
【図11】本発明による撮影レンズの第6の実施例のレンズ構成図である。
【図12】図11のレンズの諸収差図である。
【図13】本発明による撮影レンズの第7の実施例のレンズ構成図である。
【図14】図13のレンズの諸収差図である。
【図15】本発明による撮影レンズの第8の実施例のレンズ構成図である。
【図16】図15のレンズの諸収差図である。
【符号の説明】
10 第1レンズ群
20 第2レンズ群
S 絞り
G 平行平面ガラス

Claims (2)

  1. 物体側から順に、像側に凹面を有する負レンズと、像側に凸面を有する正レンズの2枚のレンズからなる第1レンズ群と;開口絞りと;正の屈折力を有する第2レンズ群と;より構成され、
    第2レンズ群は、正レンズと負レンズを接合した接合レンズを少なくとも1組含み、第2レンズ群の最も物体側のレンズは像側に凸面を有するメニスカス単レンズからなり、
    さらに、下記条件式(1)ないし(6)を満足する撮影レンズ。
    (1)0.5<|fI-1 /fI-2 |<1.3
    (2)0.8<FII/F<1.6
    (3)0.15<D/F<0.75
    (4)0.4<|d II-1 /r II-1 |<1.0
    (5)0.1<N n −N P <0.35
    (6)0.7<|R/F|<1.5
    但し、
    I-1 :第1レンズ群の負レンズの焦点距離、
    I-2 :第1レンズ群の正レンズの焦点距離、
    II:第2レンズ群の焦点距離、
    F:レンズ全系の焦点距離、
    D:第1レンズ群中の負レンズと正レンズの空気間隔、
    II-1 :第2レンズ群中の上記メニスカス単レンズのレンズ肉厚、
    II-1 :第2レンズ群中の上記メニスカス単レンズの像側の面の曲率半径、
    n :第2レンズ群中の接合レンズの負レンズのd線の屈折率、
    P :第2レンズ群中の接合レンズの正レンズのd線の屈折率、
    R:第2レンズ群中の接合レンズの接合面の曲率半径。
  2. 請求項1記載の撮影レンズにおいて、第1レンズ群中の負レンズは、像側に強い凹面を有するメニスカス負レンズであり、さらに下記条件式(7)を満足する撮影レンズ。
    (7)0.3<|r2 /r4 |<0.6
    但し、
    2 :第1レンズ群中の負レンズの像側の面の曲率半径、
    4 :第1レンズ群中の正レンズの像側の面の曲率半径。
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