JP3715801B2 - H形鋼の圧延設備用多機能圧延機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、H形鋼のエッジャー圧延とユニバーサル圧延とを単一の圧延機を用いて行うことができるH形鋼の圧延設備用多機能圧延機に関する。
【0002】
【従来の技術】
H形鋼を圧延する設備として、例えば、特開昭56−109101号公報に記載されているH形鋼の圧延設備Bがあり、その構成を図10及び図11に簡単に示す。
図示するように、H形鋼の圧延設備Bは、直列に配列された、ブレークダウン圧延機90と、ユニバーサル粗圧延機91と、エッジャー圧延機92と、ユニバーサル仕上げ圧延機93とから構成されている。
【0003】
上記H形鋼の圧延設備Bを用いた圧延方法において、まず、ブレークダウン圧延機90によって、スラブ、ビームブランク等の素材としての被圧延材107を、図10及び図11に示すように所定の形状に粗造形し、その後、ユニバーサル粗圧延機91とエッジャー圧延機92による複数パスの中間圧延を経て、ユニバーサル仕上げ圧延機93において、最終的にH形鋼106製品に圧延する。
【0004】
即ち、図11に示すように、ブレークダウン圧延機90において、被圧延材107はブレークダウンロール94、95によって粗造形され、ユニバーサル粗圧延機91において、水平ロール96、97と竪ロール98、99により、それぞれ、ウェブとフランジが圧延され、エッジャー圧延機92において、エッジャーロール100、101によりフランジ両側縁部の圧下がなされ、フランジの幅寸法が設定される。また、ユニバーサル仕上げ圧延機93では、水平ロール102、103及び竪ロール104、105によりそれぞれウェブとフランジが圧延され、フランジの角度はウェブに対して90°に成形される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したH形鋼の圧延設備Bは、未だ、以下の解決すべき課題を有している。
即ち、図10に示すように、ブレークダウン圧延機90以降の工程において、ウェブ及びフランジを圧延するためには、ユニバーサル粗圧延機91とユニバーサル仕上げ圧延機93が必要であり、また、フランジ側縁部の圧下のためにはエッジャー圧延機92が必要であるため、設備費が高価になると共に、ライン長さも長くなっていた。
【0006】
そこで、このような問題を解決するため、フランジ厚み圧下用ロールからなる左右一対の竪ロールと、ウェブ厚み圧下用ロール部とその両端にロール退避機構を介してフランジ幅圧下用ロール部を上下方向に移動自在に設けてなる上下一対の水平ロールとで構成し、竪ロールと水平ロールとでH形鋼のフランジ厚み及びウェブ厚みの圧下時に、水平ロールのフランジ幅圧下用ロール部を上下に移動させ、竪ロールに前記水平ロールのフランジ幅圧下用ロール部が干渉しないように構成した多機能圧延機を用いることが考えられる。この場合、中間・仕上げ圧延に必要な圧延機を2台とすることができ、設備費を廉価にすると共に、その分、ライン長さを短縮でき、必要建屋長さも短くすることができると考えられる。
【0007】
しかし、この場合において、ウェブ厚み圧下用ロール部のみを回転駆動装置で駆動する、即ち、フランジ幅圧下用ロール部をアイドラーロールとして用いて圧延する場合には、以下の問題が生じることになる。
即ち、ウェブ厚みがフランジ厚みに比べて極端に薄いH形鋼を圧延する場合には、エッジングパスにおいて、ウェブ厚み圧下用ロール部のみを駆動してウェブにおける材料を押し出し、この材料押出力によってアイドラーロールであるフランジ幅圧下用ロール部でフランジを圧延すると、ウェブにおける全体の伸び量が大きいにもかかわらず、フランジにおける伸び量は小さいので、ウェブの進行方向にいわゆるウェブ波が生じるおそれがある。
【0008】
一方、ウェブ厚み圧下用ロール部の圧下量が小さすぎる場合には、アイドラーロールであるフランジ幅圧下用ロール部によるフランジの圧延に必要なトルクを発生させるための材料押出力が出せず、材料駆動力(搬送力)は近接するユニバーサル粗圧延機に依存することになる。従って、ユニバーサル粗圧延機から多機能圧延機に向けて材料を流す場合、ユニバーサル粗圧延機が材料を蹴り出した瞬間に搬送力が不足し、材料が止まってしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、従来の中間・仕上げ圧延に最低限3台必要であった圧延機を2台とし、設備費を廉価にすると共に、その分、ライン長さを短縮でき、必要建屋長さも短くすることができ、さらに、ウェブ厚みがフランジ厚みに比べ極端に薄いH形鋼においても、円滑にH形鋼を圧延することができるH形鋼の圧延設備用多機能圧延機を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明に係るH形鋼の圧延設備用多機能圧延機は、フランジ厚み圧下用ロールからなる左右一対の竪ロールと、ウェブ厚み圧下用ロール部とその両端にロール退避機構を介して左右一対のフランジ幅圧下用ロール部を上下方向に移動自在に設けてなる上下一対の水平ロールで構成されている。
また、竪ロールと水平ロールとでH形鋼のフランジ厚み及びウェブ厚みの圧下時に、水平ロールのフランジ幅圧下用ロール部を上下に移動させ、竪ロールに水平ロールのフランジ幅圧下用ロール部が干渉しないように構成されている。
【0011】
さらに、ウェブ厚み圧下用ロール部のみならず、フランジ幅圧下用ロール部も回転駆動装置によって回転駆動される。
このように、ウェブ厚み圧下用ロール部のみならずフランジ幅圧下用ロール部も回転駆動装置によって回転駆動することによって、H形鋼のウェブに所定の材料押出力を加えながら押し出すと共に、H形鋼のフランジにも所定の材料押出力を加えながら押し出す。従って、ウェブ厚み圧下用ロール部の圧下力を小さくしてウェブ波の発生を防止することができる。また、近接するユニバーサル粗圧延機から多機能圧延機に向けてH形鋼を流す場合、ユニバーサル粗圧延機からH形鋼が蹴り出された後でも、H形鋼に十分な搬送力を付与することができ、H形鋼の圧延作業を円滑に行うことができる。
この際、回転駆動装置の駆動制御によって、フランジ幅圧下用ロール部の外周面の周速を、ウェブ厚み圧下用ロール部の外周面の周速と同期させることもできる。
【0012】
ここで、上記した本発明に係るH形鋼の圧延設備用多機能圧延機は、以下の構成とする。
上、下水平ロール軸の一端が第1の回転駆動装置にそれぞれ連動連結され、上、下水平ロール軸の中央部にウェブ厚み圧下用ロール部が固着されている。上、下水平ロール軸においてウェブ厚み圧下用ロール部の両側をなす個所に左右一対のフランジ幅圧下用ロール部が回転自在に取付けられ、フランジ幅圧下用ロール部はH形鋼のフランジに押圧されるテーパ状筒部と直筒部からなり、直筒部にバックアップロールが押し付けられている。そして、バックアップロールは第2の回転駆動装置に連動連結されている。
【0013】
従って、第1の回転駆動装置の駆動によって、上、下水平ロール軸を介してウェブ厚み圧下用ロール部が回転駆動され、この回転駆動によってH形鋼のウェブに材料押出力が付与される。一方、第2の回転駆動装置の駆動によって、バックアップロールを介してフランジ幅圧下用ロール部が回転駆動され、この回転駆動によってH形鋼のフランジに材料押出力が付与されることになる。
また、上記したフランジ幅圧下用ロール部の直筒部に第1の歯車を形成すると共に、バックアップロールに第1の歯車に噛合する第2の歯車を形成した場合には、フランジ幅圧下用ロール部とバックアップロールとの間のすべりを無くすことができるので、バックアップロールの回転駆動力をフランジ幅圧下用ロール部に確実に伝達することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図5を参照して、本発明の一実施の形態に係る多機能圧延機11を説明する。
【0015】
図1に本発明の一実施の形態に係る多機能圧延機11を一部とするH形鋼の圧延設備Aの全体構成が概念的に示されている。
図示するように、H形鋼の圧延設備Aは、直列に配列されたブレークダウン圧延機10と、本発明に係る多機能圧延機11と、ユニバーサル粗圧延機12とから構成されている。
ここで、ブレークダウン圧延機10は、スラブ、ビームブランク等の素材を、H形状に粗造形するものであり、図示しないが、一対のブレークダウンロールから構成される。
【0016】
ユニバーサル粗圧延機12は、図3に示すように、それぞれ、ブレークダウン圧延機10によって粗造形されたH形鋼13のウェブとフランジをそれぞれユニバーサル粗圧延するウェブ厚み圧下用ロール12a、12bとフランジ厚み圧下用ロール12c、12dを具備する。
また、多機能圧延機11は、以下、図2、図4及び図5を参照して詳細に説明するように、H形鋼13の仕上げウェブ厚みを設定するウェブ厚み圧下用ロール部22、23と、H形鋼13の仕上げフランジ厚みを設定するフランジ厚み圧下用ロール30、31と、H形鋼13のフランジ側縁部を圧下する左右一対のフランジ幅圧下用ロール部32〜35とを具備する。ここで、フランジ厚み圧下用ロール30、31によって左右一対の竪ロールが形成されると共に、ウェブ厚み圧下用ロール部22、23とフランジ幅圧下用ロール部32〜35によって上下一対の水平ロールが形成されることになる。但し、本実施の形態では、後述するように、ウェブ厚み圧下用ロール部22、23とフランジ厚み圧下用ロール30、31は、ユニバーサル仕上げ圧延のみならず、ユニバーサル粗圧延にも用いることができる。
【0017】
図2に示すように、多機能圧延機11を挿通する圧延材であるH形鋼13の直上及び直下には上、下水平ロール軸14、15が配置されており、上、下水平ロール軸14、15の両端部は、それぞれ、水平チョック16、17に回転自在に支承されている。水平チョック16、17は、それぞれ、水平圧下装置18と水平圧上装置19に取付けられており、上、下方向に相互に独立して移動することができる。上、下水平ロール軸14、15の一端は、自在継ぎ手20、21を介して、それぞれ、回転モータ等からなる第1の回転駆動装置20a、21aに連通連結されている。
【0018】
図2に示すように、上、下水平ロール軸14、15の中央部には、それぞれ、ウェブ厚み圧下用ロール部22、23が固定キー14a、15aによって固着状態に嵌合されており、このウェブ厚み圧下用ロール部22、23の平坦な外周面をH形鋼13のウェブの上、下面に押圧状態に当接させることによって、H形鋼13の仕上げウェブ厚みを設定したり、ユニバーサル粗圧延を行うことができる。なお、ウェブ厚み圧下用ロール部22、23は上、下水平ロール軸14、15と一体的に形成することもできる。
【0019】
一方、図2に示すように、H形鋼13の左、右側方には、竪ロール軸24、25が配置されており、竪ロール軸24、25の両端部は、それぞれ、竪チョック28、29に取付けられ、竪圧下装置26、27にて左右方向へ自在に位置決めできる。
そして、竪ロール軸24、25には、それぞれ、フランジ厚み圧下用ロール30、31が回転自在に支承されており、このフランジ厚み圧下用ロール30、31の平坦な外周面をH形鋼13のフランジの左、右側面に押圧状態に当接させることによって、H形鋼13の仕上げフランジ厚みを設定したり、ユニバーサル粗圧延を行うことができる。
【0020】
また、本実施の形態では、図2に示すように、上、下水平ロール軸14、15の中央部であって、水平ロールを構成するウェブ厚み圧下用ロール部22、23の両側には、ロール退避機構36(図4、図5参照)を介して、H形鋼13のフランジ側縁部を圧下するエッジャー圧延ロールとしての左右一対のフランジ幅圧下用ロール部32、33、34、35が取付けられている。
【0021】
これらのフランジ幅圧下用ロール部32、33、34、35は、図2に示すように、H形鋼13のフランジ先端部を圧下する際には、H形鋼13のパスラインPに向けて進出した圧下位置にある。しかし、上記したウェブ厚み圧下用ロール部22、23及びフランジ厚み圧下用ロール30、31によってH形鋼13の仕上げウェブ厚みと仕上げフランジ厚みを設定する場合やユニバーサル粗圧延を行う場合には、図8に示すように、フランジ幅圧下用ロール部32、33、34、35は、以下に説明するロール退避機構36によって、容易かつ確実に退避位置まで移動されることになる。従って、フランジ幅圧下用ロール部32〜35及びフランジ厚み圧下用ロール30、31の干渉により圧延作業を阻害することがない。
【0022】
即ち、図2、図4及び図5に示すように、上水平ロール軸14に配設されているウェブ厚み圧下用ロール部22の両側には内側ベアリング37、38を介して偏心リング39、40が嵌合されており、偏心リング39、40の外側には外側ベアリング41、42を介してフランジ幅圧下用ロール部32、33が嵌合されている。
【0023】
図4及び図5に示すように、偏心リング39、40は、内径と外径の中心間距離がaである円板カムから形成されており、その外周面の一部には略140°の円弧角度でセクターギヤ43、44が設けられている。セクターギヤ43、44は、共に、昇降フレーム(図示せず)に回転自在に取付けられた回転軸45に設けたピニオン46に噛合されている。一方、回転軸45の一端には継ぎ手47を介して偏心リング駆動アクチュエータ48が連動連結されている。なお、偏心リング駆動アクチュエータ48としては、電動モータや油圧モータを好適に用いることができる。
【0024】
上記した構成によって、偏心リング駆動アクチュエータ48を駆動すると、回転軸45→ピニオン46→セクターギヤ43、44を介して偏心リング39、40の中心O2 が上水平ロール軸14の中心O1 の回りに回転移動するので、偏心リング39、40に外側ベアリング41、42を介して嵌合されているフランジ幅圧下用ロール部32、33の位置決めを容易に行うことができる。
【0025】
即ち、図5に示すように、偏心リング39、40は、内径と外径との中心間距離がaである円板カムから形成されているため、円板カムが上水平ロール軸14回りの任意の設定位置において、偏心リング39、40の回転角度を、中立線mを境として各々θ1 、θ2 とすると、上下方向で、各々、a・sinθ1 及びa・sinθ2 の変位が生じる。従って、偏心リング39、40の外周部に外側ベアリング41、42を介して嵌合されているフランジ幅圧下用ロール部32、33の外周部の軌跡は、偏心リング39、40の外周部の軌跡と同様で、上下方向で、各々a・sinθ1 及びa・sinθ2 の変位が生じる。これにより、上水平ロール軸14の軸線位置が一定時において、フランジ幅圧下用ロール部32、33の上下方向位置を、ウェブ厚み圧下用ロール部22の位置に対しても可変とすることができる。
【0026】
また、図2〜図7、特に、図6及び図7に示すように、本実施の形態では、フランジ幅圧下用ロール部32、33、34、35も、回転モータ等からなる第2の回転駆動装置50によって回転駆動可能に構成されている。
即ち、図6及び図7から明らかなように、上水平ロール軸14の一側に内側ベアリング37と外側ベアリング41を介して回転自在に取付けられているフランジ幅圧下用ロール部32は、テーパ状筒部52と直筒部53とからなり、直筒部53にはバックアップロール54が押し付けられ、バックアップロール54は第2の回転駆動装置50に連動連結されている。
【0027】
また、図6及び図7に示すように、バックアップロール54は揺動アーム55の先部に回転自在に取付けられており、揺動アーム55の基部は枢軸56によって多機能圧延機11のハウジングに上下方向に揺動自在に枢支連結されている。そして、揺動アーム55の中途には、バックアップロール54をフランジ幅圧下用ロール部32に向けて押圧するための押圧力付与シリンダ57のロッドの先部が連結されている。
従って、押圧力付与シリンダ57を駆動して、バックアップロール54を介して押圧力をフランジ幅圧下用ロール部32に付与しながら、第2の回転駆動装置50を回転してバックアップロール54を回転することによって、フランジ幅圧下用ロール部32を確実に回転することができる。そして、このフランジ幅圧下用ロール部32の回転によって、H形鋼13のフランジにも所定の材料押出力を加えながら押し出すことができる。
【0028】
なお、図示しないが、フランジ幅圧下用ロール部32の直筒部53に第1の歯車を形成すると共に、バックアップロール54に第1の歯車に噛合する第2の歯車を形成することによって、フランジ幅圧下用ロール部32とバックアップロール54との間のすべりを無くすことができるので、バックアップロール54の回転駆動力をフランジ幅圧下用ロール部32に確実に伝達することができる。
【0029】
次に、上記した構成を有する多機能圧延機11によって圧延材を圧延し、H形鋼13を製造する方法について、図1〜図9、特に、図9に示すパススケジュールを参照して説明する。
まず、図1に示すように、ブレークダウン圧延機10によってスラブ、ビームブランク等の素材を、H形状に粗造形してH形鋼13とする。
【0030】
図1、図2及び図9に示すように、H形鋼13を多機能圧延機11に移送し、第1回目のユニバーサル粗圧延を行う(H(UF−1))。この際、図8に示すように、H形鋼13は、上下一対のウェブ厚み圧下用ロール部22、23によって、ウェブを圧下して拘束すると共に、左、右のフランジ厚み圧下用ロール30、31を、図示しない圧下スクリューによって内側に移動させ、H形鋼13のフランジ外面を圧下する。この際、偏心リング駆動アクチュエータ48を駆動して、フランジ幅圧下用ロール部32、33、34、35を、偏心リング39、40の回転・固定により退避させる。
【0031】
次に、H形鋼13をユニバーサル粗圧延機12に移送し、ユニバーサル粗圧延機12による第1回目のユニバーサル粗圧延(X(UR−1))及び第2回目のユニバーサル粗圧延(X(UR−2))を行う。この際、図3に示すように、ユニバーサル粗圧延機12のウェブ厚み圧下用ロール12a、12bとフランジ厚み圧下用ロール12c、12dにはテーパ角度αがついているため、H形鋼13のフランジの角度もαとなる。
【0032】
その後、H形鋼13を多機能圧延機11に戻し、第1回目のエッジング圧延を行う(E(UE−1))。この際、図2に示すように、一対の上、下水平ロール軸14、15に取付けたウェブ厚み圧下用ロール部22、23によって、ウェブを圧下すると共に、フランジ幅圧下用ロール部32、33、34、35を偏心リング39、40の回転・固定により、H形鋼13のパスラインPに向けて進出した圧下位置とし、フランジの側縁部を圧下し、H形鋼13のエッジング圧延を行うが、フランジ幅圧下用ロール部32、33、34、35の圧下面がフランジに直角に当たるように、フランジ厚み圧下用ロール30、31の中心に向けて左右対称に直径が漸次小さくなる環状テーパ面としている。この環状テーパ面のテーパ角度は好ましくは4°〜6°とする。
【0033】
以降、同様にして、多機能圧延機11による第2回目のユニバーサル粗圧延(H(UF−2))、ユニバーサル粗圧延機12による第3回目及び第4回目のユニバーサル粗圧延(X(UR−3)、X(UR−4))、多機能圧延機11による第2回目のエッジング圧延(E(UE−2))、多機能圧延機11による第3回目のユニバーサル粗圧延(H(UF−3))、ユニバーサル粗圧延機12による第5回目及び第6回目のユニバーサル粗圧延(X(UR−5)、X(UR−6))、多機能圧延機11による第3回目のエッジング圧延(E(UE−3))及び多機能圧延機11による第4回目のユニバーサル仕上げ圧延(H(UF−4))を行う。このユニバーサル仕上げ圧延において、図示しない圧下スクリューによって左、右のフランジ厚み圧下用ロール30、31を内側に移動させ、H形鋼13のフランジ外面を圧下し、フランジをウェブに対して90°に成形することができる。
【0034】
このように、本実施の形態では、多機能圧延機11とユニバーサル粗圧延機12の2台のみを用いることによって、ユニバーサル粗圧延と、エッジング圧延と、ユニバーサル仕上げ圧延を行うことができる。即ち、本実施の形態によれば、多機能圧延機11において、ブレークダウン圧延機10以降に、少なくとも、3台必要であった圧延機の数を2台に減らせると共に、建屋、基礎の長さを短くでき、H形鋼の圧延設備を廉価とすることができる。
【0035】
また、本実施の形態では、図9に示すパススケジュールから明らかなように、多機能圧延機11とユニバーサル粗圧延機12の両方にユニバーサル粗圧延を適用し、H形鋼13のウェブとフランジに圧下を加えて厚みを薄くすることにより、ユニバーサルラインでの粗成形をユニバーサル粗圧延機12と多機能圧延機11で行うこともできる。この場合、ユニバーサルラインでのパス回数を減らして生産性を上げることができる。
なお、図9に示すパススケジュールにおいて、多機能圧延機11でのユニバーサル粗圧延(H(UF−1)、H(UF−2)、H(UF−3))の3パスのいずれについても、多機能圧延機11の持つ機能により、エッジング圧延とすることも可能であるし、空パスとすることもできる。
【0036】
さらに、本実施の形態では、第1の回転駆動装置20a、21a及び第2の回転駆動装置50によってウェブ厚み圧下用ロール部22、23のみならずフランジ幅圧下用ロール部32、33、34、35も回転駆動することによって、H形鋼13のウェブに所定の材料押出力を加えながら押し出すと共に、H形鋼13のフランジにも所定の材料押出力を加えながら押し出す。従って、ウェブ厚み圧下用ロール部の圧下力を小さくしてウェブ波の発生を防止することができる。また、ウェブ厚み圧下用ロール部の圧延が終了し圧延機から蹴り出された後でも、H形鋼13に十分な搬送力を付与することができ、H形鋼13の圧延作業を円滑に行うことができる。
【0037】
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【0038】
【発明の効果】
請求項1、2記載のH形鋼の圧延設備用多機能圧延機においては、H形鋼のウェブを圧下するウェブ厚み圧下用ロール部と、H形鋼のフランジの左、右側面を圧下するフランジ厚み圧下用ロールのみならず、H形鋼のフランジの側縁部を圧下するフランジ幅圧下用ロール部も一体的に組み込み、かつ、フランジ幅圧下用ロール部は、ロール退避機構によって、圧下位置と退避位置との間で移動できる構成としている。
従って、ブレークダウン圧延機以降に、従来、少なくとも3台必要であった圧延機の数を2台に減らせる、即ちライン長さを短くできると共に、建屋、基礎の長さを短くでき、H形鋼の圧延設備を廉価とすることができる。
【0039】
また、多機能圧延機とユニバーサル粗圧延機の両方でユニバーサル粗圧延を行うパススケジュールを設定することができるので、ユニバーサルラインでのパス回数を減らして生産性を上げることができる。
さらに、ウェブ厚み圧下用ロール部のみならず、フランジ幅圧下用ロール部も独立して回転駆動することによって、H形鋼のウェブを所定の材料押出力を加えながら押し出すと共に、H形鋼のフランジにも所定の材料押出力を加えながら押し出す。従って、ウェブ厚み圧下用ロール部の圧下力を小さくしてウェブ波の発生を防止することができる。また、隣接するユニバーサル粗圧延機から多機能圧延機に向けてH形鋼を流す場合、ユニバーサル粗圧延機からH形鋼が蹴り出された後でも、H形鋼に十分な搬送力を付与することができ、H形鋼の圧延作業を円滑に行うことができる。
【0040】
また、このH形鋼の圧延設備用多機能圧延機においては、第1の回転駆動装置の駆動によって、上、下水平ロール軸を介してウェブ厚み圧下用ロール部が回転駆動し、この回転駆動によってH形鋼のウェブに材料押出力を付与すると共に、第2の回転駆動装置の駆動によって、バックアップロールを介してフランジ幅圧下用ロール部が回転駆動し、この回転駆動によってH形鋼のフランジに材料押出力を付与するようにしている。従って、簡易な構造を付加するのみで、ウェブ厚み圧下用ロール部のみならずフランジ幅圧下用ロール部も回転駆動して、H形鋼のウェブを所定の材料押出力を加えながら押し出すと共に、H形鋼のフランジにも所定の材料押出力を加えながら押し出すことができる。
【0041】
請求項2記載のH形鋼の圧延設備用多機能圧延機においては、フランジ幅圧下用ロール部の直筒部に第1の歯車を形成すると共に、バックアップロールに第1の歯車に噛合する第2の歯車を形成することによって、フランジ幅圧下用ロール部とバックアップロールとの間のすべりを無くすことができ、バックアップロールの回転駆動力をフランジ幅圧下用ロール部に確実に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るH形鋼の圧延設備用多機能圧延機を具備するH形鋼の圧延設備の概念的構成説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るH形鋼の圧延設備用多機能圧延機の側断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るH形鋼の圧延設備用多機能圧延機を具備するH形鋼の圧延設備において用いるユニバーサル粗圧延機における圧延状態説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るH形鋼の圧延設備用多機能圧延機のロール退避機構の側断面図である。
【図5】同正面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るH形鋼の圧延設備用多機能圧延機におけるウェブ厚み圧下用ロール部とフランジ幅圧下用ロール部を同時に回転駆動するための構造を示す要部断面図である。
【図7】同側面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るH形鋼の圧延設備用多機能圧延機のフランジ幅圧下用ロール部の動作説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るH形鋼の圧延設備用多機能圧延機及びユニバーサル粗圧延機のパススケジュールの説明図である。
【図10】従来のH形鋼の圧延設備の概念的構成説明図である。
【図11】同H形鋼の圧延設備における各圧延機の斜視図である。
【符号の説明】
A:H形鋼の圧延設備、P:パスライン、a:中心間距離、m:中立線、α:テーパ角度、θ1 :回転角度、θ2 :回転角度、O1 :中心、O2 :中心、10:ブレークダウン圧延機、11:多機能圧延機、12:ユニバーサル粗圧延機、12a:ウェブ厚み圧下用ロール、12b:ウェブ厚み圧下用ロール、12c:フランジ厚み圧下用ロール、12d:フランジ厚み圧下用ロール、13:H形鋼、14:上水平ロール軸、14a:固定キー、15:下水平ロール軸、15a:固定キー、16:水平チョック、17:水平チョック、18:水平圧下装置、19:水平圧上装置、20:自在継ぎ手、20a:第1の回転駆動装置、21:自在継ぎ手、21a:第1の回転駆動装置、22:ウェブ厚み圧下用ロール部、23:ウェブ厚み圧下用ロール部、24:竪ロール軸、25:竪ロール軸、26:竪圧下装置、27:竪圧下装置、28:竪チョック、29:竪チョック、30:フランジ厚み圧下用ロール、31:フランジ厚み圧下用ロール、32:フランジ幅圧下用ロール部、33:フランジ幅圧下用ロール部、34:フランジ幅圧下用ロール部、35:フランジ幅圧下用ロール部、36:ロール退避機構、37:内側ベアリング、38:内側ベアリング、39:偏心リング、40:偏心リング、41:外側ベアリング、42:外側ベアリング、43:セクターギヤ、44:セクターギヤ、45:回転軸、46:ピニオン、47:継ぎ手、48:偏心リング駆動アクチュエータ、50:第2の回転駆動装置、52:テーパ状筒部、53:直筒部、54:バックアップロール、55:揺動アーム、56:枢軸、57:押圧力付与シリンダ
Claims (2)
- フランジ厚み圧下用ロールからなる左右一対の竪ロールと、ウェブ厚み圧下用ロール部とその両端にロール退避機構を介して左右一対のフランジ幅圧下用ロール部を上下方向に移動自在に設けてなる上下一対の水平ロールとで構成し、
前記竪ロールと水平ロールとでH形鋼のフランジ厚み及びウェブ厚みの圧下時に、前記水平ロールのフランジ幅圧下用ロール部を上下に移動させ、前記竪ロールに前記水平ロールのフランジ幅圧下用ロール部が干渉しないように構成し、
さらに、前記フランジ幅圧下用ロール部を回転駆動するようにしたH形鋼の圧延設備用多機能圧延機において、
上、下水平ロール軸の一端が第1の回転駆動装置にそれぞれ連動連結され、前記上、下水平ロール軸の中央部に前記ウェブ厚み圧下用ロール部が固着されると共に、前記上、下水平ロール軸のウェブ厚み圧下用ロール部の両側をなす個所に前記左右一対のフランジ幅圧下用ロール部が回転自在に取付けられ、前記フランジ幅圧下用ロール部は前記H形鋼のフランジに押圧されるテーパ状筒部と直筒部とからなり、該直筒部にバックアップロールが押し付けられ、該バックアップロールは第2の回転駆動装置に連動連結されていることを特徴とするH形鋼の圧延設備用多機能圧延機。 - 請求項1記載のH形鋼の圧延設備用多機能圧延機において、前記フランジ幅圧下用ロール部の直筒部に第1の歯車が形成されると共に、前記バックアップロールに前記第1の歯車に噛合する第2の歯車が形成されていることを特徴とするH形鋼の圧延設備用多機能圧延機。
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