JP3711845B2 - 可変コンデンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は可変コンデンサ、特に、ロータをステータに対して回転させることにより、静電容量を可変としたチップ型の可変コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の可変コンデンサとして、例えば特開平11−260666号公報に記載のものが知られている。図1〜図3はこの公報に記載された可変コンデンサ1を示している。
【0003】
可変コンデンサ1は、大略、ステータ2、ロータ3およびカバー4を備える。
ステータ2はその主要部がセラミック誘電体で構成されたものであり、全体として長方形板状に形成されている。ステータ2の表層部近傍の内部にはステータ電極5,6が左右対称形状に形成されている。これらステータ電極5,6にそれぞれ電気的に接続されるように、ステータ2の長さ方向の両端部外側面には、導電膜よりなるステータ端子7,8が形成されている。なお、2つのステータ電極5,6および2つのステータ端子7,8を形成したのは、ステータ2を左右対称形状とし、可変コンデンサ1の組立においてステータ2の方向性を無くすためである。したがって、このような必要性がない場合であれば、ステータ電極5,6のいずれか一方およびステータ端子7,8のいずれか一方を省略してもよい。
【0004】
ステータ2の下面には、その対向する両側縁から内方へ向かって延びる凹部9,10が形成されている。ロータ3はステータ2の上面に配置されるものであって、黄銅のような金属材料で構成される。ロータ3の下面には、突出する段部をもって略半円状のロータ電極11が形成されている。また、ロータ3の下面には、ロータ電極11の高さと等しい高さを有する凸部12が形成され、ロータ3の傾きを規制している。
【0005】
ロータ3の上面には、これを回転操作するためのドライバ等の工具を受け入れるドライバ溝13が形成されている。カバー4は、ロータ3の上面を覆うとともにステータ2に固定されるもので、ステンレス鋼などのばね弾性のある金属で構成される。このカバー4によって、ロータ3は、ステータ2に対して回転可能に保持される。カバー4には、ロータ3のドライバ溝13を露出させる窓穴14が形成されている。
【0006】
窓穴14の周囲には、導電性のワッシャ19を介してロータ3の上面を押圧し、ロータ3をステータ2に向かって圧接させるためのばね作用部15が設けられている。ばね作用部15は、窓穴14の周囲において、中心に向かって下方へ傾斜するテーパ形状となっている。カバー4の両側部には下方へ延びる一対の係合爪16,17が一体に形成され、これら係合爪16,17は、ステータ2の長辺側の両側面に沿って下方へ延び、ステータ2の下面に形成された凹部9,10に係合するように、後で折り曲げられる。
【0007】
カバー4には、係合片16,17が設けられた位置とは異なる位置から下方へ、ステータ2の側面に沿って延びるカバー端子18が一体に設けられている。カバー端子18は、ステータ2に設けられたステータ端子8と対向する位置に延びており、これらカバー端子18とステータ端子8との間に半田(図示せず)を付与することで、カバー4とステータ2とを強固に固定するとともに、ステータ端子8をカバー端子18として機能させることができる。
【0008】
可変コンデンサ1の組立状態において、図2に示されているように、ロータ電極11は、ステータ電極5に対して、ステータ2を構成するセラミック誘電体の表層部を介して対向し、静電容量を形成している。ロータ3を回転操作すると、ロータ電極11のステータ電極5に対する有効対向面積が変化し、静電容量を変化させることができる。この静電容量は、ステータ電極5に電気的に接続されたステータ端子7と、ロータ電極11を有するロータ3に対してばねワッシャ19を介して電気的に接続されるカバー4に設けられたカバー端子18との間で出力される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、カバー4はステンレス鋼のようなばね弾性を有する金属で形成される。ステンレス鋼は、接触抵抗が大きくかつ不安定であるため、カバー4のばね作用部15の下面とワッシャ19との間での電気的導通の信頼性に欠けるという問題がある。また、ステンレス鋼は半田付け性の悪い金属でもあるため、カバー4に一体に形成されたカバー端子18での半田付け性も劣る。そのため、この可変コンデンサ1を配線基板PCB上に実装するとき、半田がカバー端子18になじみにくく、実装の信頼性に劣るという問題もある。
【0010】
そのため、前記公報では、カバー4の表面の一部に、接触抵抗が小さく、半田付け性を良好にするための表面処理(例えば、金,銀,スズなどのメッキ)を施したものが開示されている。好ましくは、ばね作用部15の底面やカバー端子18の外側面に表面処理が施される。もし、カバー4の全面に表面処理を施すと、図2に示すように、リフロー半田付け時にカバー4のカバー端子18とステータ2との接触部を介して毛細管現象により半田Sがカバー4の内部まではい上がり、ロータ3が半田Sによって固着されたり、フラックスがカバー4とワッシャ19との接触部分や、ワッシャ19とロータ3との接触部分に浸入して、電気的接続に支障をきたす可能性があるからである。
【0011】
しかしながら、このようにカバー4の表面の一部にのみ表面処理を施すことは、非常に加工コストがかかり、可変コンデンサとしてコスト上昇を招く欠点があった。また、表面処理の有無だけで、カバー4内部への半田Sの浸入を確実に防止できるとは限らない。
【0012】
そこで、本発明の目的は、カバーの形状を工夫することにより、半田がカバーの内部まで浸入するのを確実に防止できる可変コンデンサを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ステータ電極およびこのステータ電極に電気的に接続されるステータ端子を有するステータと、前記ステータの上部に配置され、前記ステータ電極に対して誘電体を介して対向するロータ電極を有するロータと、前記ロータ電極に電気的に接続され、前記ロータを前記ステータに対して回転可能に保持するべく前記ステータに固定された導電性のカバーとを備え、前記カバーに、前記ステータの上面に沿って側方へ延びる水平部と、前記ステータの側面に沿ってその下面位置近傍まで下方へ延びる垂直部とを持つ外部接続用のカバー端子が設けられた可変コンデンサにおいて、前記カバー端子の水平部と垂直部との間に、水平部と垂直部との交点より外側へ膨らむように曲げ加工をすることにより、リフロー半田付け時の半田およびフラックスの溜まり用膨出部が形成されていることを特徴とする可変コンデンサを提供する。
【0014】
カバーにはステータの側面に沿ってその下面位置近傍まで延びる外部接続用のカバー端子が一体に形成されているが、カバー端子とステータとがほぼ接触状態にある。そのため、可変コンデンサを配線基板などにリフロー半田付けを行う場合に、半田やフラックスが毛細管現象によりカバー端子とステータとの間を伝ってカバーの内側まではい上がることがある。
そこで、請求項1の発明では、カバー端子の途中に半田およびフラックスの溜まり用膨出部を形成することで、この膨出部で半田やフラックスがはい上がるのを食い止め、ロータが半田によって固着されたり、フラックスがカバーとワッシャとの接触部分、ワッシャとロータとの接触部分などに浸入して、電気的接続に支障をきたす問題を解消できる。
膨出部としては、ステータとの間に半田やフラックスの液溜まりを形成できるものであればよく、カバー端子を水平部と垂直部との交点より外側へ膨らむように曲げ加工することにより、簡単に形成できる。
【0015】
請求項2では、請求項1のような溜まり用膨出部に加えて、カバー端子のステータの側面と対向する内側面に、凹凸部または溝を形成したものである。凹凸部または溝によって空隙が形成され、毛細管現象による半田またはフラックスのはい上がりを抑制できる。
【0016】
請求項3では、毛細管現象による半田またはフラックスのはい上がりを防止するため、カバー端子のステータの側面と対向する内側面に、レジスト膜を形成したものである。この場合も、レジスト膜によって半田またはフラックスのはい上がりを抑制し、カバー内側への浸入を防止できる。
【0017】
請求項1ないし3に係る発明において、請求項4のように、カバーは半田付け性の悪い金属で構成され、前記カバーの全面に半田付け性を良好にするための表面処理が施されているのが望ましい。すなわち、本発明ではカバーの表面の一部にのみ表面処理を行う必要はなく、全面に表面処理を行うことができる。カバーの全面に表面処理を施しても、半田やフラックスの毛細管現象による浸入を膨出部、凹凸部、レジスト膜などで規制できるからである。そのため、部分的な表面処理を行う場合に比べて加工コストを削減でき、安価な可変コンデンサを得ることができる。
【0018】
請求項5のように、カバーにステータの側面を介して下面側へ折り曲げられて係合される係合爪が設けられた場合に、この係合爪の内側面に、ステータの側面との間に空隙を形成するための突起を形成してもよい。すなわち、カバーに固定用の係合爪を形成した場合、係合爪の内側面とステータの側面とがほぼ接触状態となリ、リフロー時の半田やフラックスは、係合爪とステータとの間を介しても吸い上げられ、カバーの内部に浸入する可能性がある。そこで、係合爪とステータとの間に毛細管現象を抑制できる程度の空隙を形成することで、半田やフラックスが浸入するのを抑制している。
【0019】
【発明の実施の形態】
図4,図5は本発明にかかる可変コンデンサ1’の一実施形態を示す。この実施形態は、その基本的構成において、図1および図2を参照して説明した可変コンデンサ1と同様であり、可変コンデンサ1と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0020】
カバー4は、例えばステンレス鋼やりん青銅などのばね弾性を有する導電性金属で構成されている。カバー4の表面全面に、接触抵抗が小さく、半田付け性を良好にするための表面処理(例えば、金,銀,スズなどのめっき)が施されている。好ましくは、スズめっきが全面に施されている。
【0021】
カバー4に一体に形成されたカバー端子18の途中には、外側へ膨らんだ膨出部18aが形成されており、この膨出部18aとステータ2との間に、液溜まり部20が形成されている。この例の膨出部18aは、カバー端子18のステータ2の上面に沿って延びる水平部と、ステータ2の側面に沿って延びる垂直部との間に形成されている。膨出部18aをこの位置に形成した場合、可変コンデンサの小型化の妨げにならず、非常に有効であるが、可変コンデンサの小型化が問題とならないのであれば、膨出部18aを垂直部の途中に設けてもよい。液溜まり部20の左右および上下の寸法L,Hは、2mmサイズの可変コンデンサの場合、L=0.15mm以上、H=0.20mm以上あるのが望ましい。
【0022】
また、カバー4の両側部には、ステータ2の長辺側の両側面に沿って下方へ延び、ステータ2の下面側へ折り曲げられる係合爪16,17が設けられているが、これら係合爪16,17の内側面に、ステータ2の側面との間に空隙を形成するための突起16a,17aが形成されている(図4の右側面図参照)。突起16a,17aの高さは、0.07mm以上あることが望ましい。
【0023】
上記のようにカバー4の全面に表面処理が施されているので、カバー4のばね作用部15の下面とワッシャ19との間での電気的導通の信頼性が向上する。また、この可変コンデンサ1’を配線基板PCBにリフロー半田付けを行う際、半田がカバー端子18になじみ易く、実装の信頼性が向上する。但し、クリーム半田の塗布量が多過ぎる場合には、図2に示すように半田やフラックスが毛細管現象によりカバー端子18とステータ2との間をはい上がり、カバー4の内部にまで浸入する可能性がある。
しかし、カバー端子18の途中に膨出部18aが形成され、膨出部18aとステータ2との間に液溜まり部20が形成されているので、図5に示すように液溜まり部20で半田Rやフラックスが溜められ、それ以上カバー4の内部に浸入することがない。
同様に、リフロー時の半田やフラックスは、毛細管現象によって係合爪16,17とステータ2の側面との間をはい上がる可能性があるが、係合爪16,17の内側面に空隙を形成するための突起16a,17aが形成されているので、半田やフラックスのはい上がりを防止できる。
【0024】
図6,図7は本発明にかかる第2の実施形態を示す。
この実施形態では、カバー4のカバー端子18の、ステータ2の側面と対向する内側面に、図7に示すような複数本の溝18bを幅方向に加工したものである。ここでは、溝18bのピッチを0.1mm程度とし、溝18bの深さを0.02〜0.05mmとした。
カバー端子18の内側面に溝18bを形成することで、リフロー半田付け時に毛細管現象によりはい上がろうとする半田やフラックスを、複数の溝18bでせき止め、カバー4の内部への浸入を抑制することができる。
【0025】
図8は、第2の実施形態における変形例を示す。
図7では、幅方向に延びる溝18bを形成したものであるが、これに代えて、図8の(a)のように網目状の凹凸部18cを形成したり、図8の(b)のようになし地状の凹凸部18dを形成しても、同様の効果を得ることができる。
この場合も、網目ないしなし地のピッチを0.1mm程度、凹凸部18c,18dの深さを0.02〜0.05mmとするのがよい。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1に係る発明によれば、カバーのカバー端子の水平部と垂直部の間に外側へ膨らんだ半田およびフラックスの溜まり用膨出部を形成したので、リフロー半田付け時に、毛細管現象により半田やフラックスがはい上がっても、膨出部で食い止めることができる。そのため、ロータが半田によって固着されたり、フラックスがカバーとワッシャとの接触部分、ワッシャとロータとの接触部分などに浸入して、電気的接続に支障をきたす問題を解消できる。
【0027】
本発明は、前述のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形例が可能である。
例えば、図6〜図9に示す実施形態では、カバー端子18に図4,図5に示すような膨出部18aが形成されていない例を示したが、膨出部18aを形成してもよいことは勿論である。
図示の実施形態では、ロータ3を導電性金属で構成したが、ロータをアルミナなどの電気絶縁体で構成し、必要な部分にのみ導体を形成したもので置き換えてもよい。
また、図示の実施形態では、ステータ2は誘電体からなり、その内部にステータ電極5および6を形成し、かつその外表面上に導電膜をもってステータ端子7および8を形成した構造を有していたが、これに代えて、ステータ電極をステータの外表面上に形成し、誘電体をステータとは別の部材で形成したり、ステータ端子を金属板等によって構成してもよい。
さらに、図示の実施形態では、カバー4のばね作用部15が導電性のワッシャ20を介してロータ3の上面に接触し、電気的に接続されるようにしたが、ワッシャ20を省略して、ばね作用部15がロータ3の上面に直接接触するようにしてもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1に係る発明によれば、カバーのカバー端子の途中に半田およびフラックスの溜まり用膨出部を形成したので、リフロー半田付け時に、毛細管現象により半田やフラックスがはい上がろうとしても、膨出部で食い止めることができる。そのため、ロータが半田によって固着されたり、フラックスがカバーとワッシャとの接触部分、ワッシャとロータとの接触部分などに浸入して、電気的接続に支障をきたす問題を解消できる。
また、請求項2に係る発明によれば、カバー端子のステータの側面と対向する内側面に凹凸部または溝を形成したので、請求項1と同様に、凹凸部または溝によって半田やフラックスのはい上がりを規制し、カバー内部への浸入を阻止することができる。
さらに、請求項3に係る発明では、カバー端子のステータの側面と対向する内側面にレジスト膜を形成したので、半田やフラックスがカバー内部へ浸入するのを阻止できる。また、カバー端子の外側面にはレジスト膜が形成されないので、カバー端子の半田付け性を阻害することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の可変コンデンサの一例の平面図,正面図,底面図および右側面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】図1に示す可変コンデンサの一部を破断した斜視図である。
【図4】本発明にかかる可変コンデンサの一例の平面図,正面図,底面図および右側面図である。
【図5】図4に示す可変コンデンサの一部の拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の一部の正面図である。
【図7】図6のVII −VII 線断面図である。
【図8】図6に示す可変コンデンサの変形例のカバー端子を内側から見た側面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の一部の正面図である。
【符号の説明】
1’ 可変コンデンサ
2 ステータ
3 ロータ
4 カバー
5,6 ステータ電極
7,8 ステータ端子
11 ロータ電極
16a,17a 突起
18 カバー端子
18a 膨出部
20 液溜まり部
18b 溝
18c,18d 凹凸部
21 レジスト膜
Claims (5)
- ステータ電極およびこのステータ電極に電気的に接続されるステータ端子を有するステータと、
前記ステータの上部に配置され、前記ステータ電極に対して誘電体を介して対向するロータ電極を有するロータと、
前記ロータ電極に電気的に接続され、前記ロータを前記ステータに対して回転可能に保持するべく前記ステータに固定された導電性のカバーとを備え、
前記カバーに、前記ステータの上面に沿って側方へ延びる水平部と、前記ステータの側面に沿ってその下面位置近傍まで下方へ延びる垂直部とを持つ外部接続用のカバー端子が設けられた可変コンデンサにおいて、
前記カバー端子の水平部と垂直部との間に、水平部と垂直部との交点より外側へ膨らむように曲げ加工をすることにより、リフロー半田付け時の半田およびフラックスの溜まり用膨出部が形成されていることを特徴とする可変コンデンサ。 - 前記ステータの側面と対向する前記カバー端子の垂直部の内側面に、リフロー半田付け時の毛細管現象による半田またはフラックスのはい上がりを規制する凹凸部または溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変コンデンサ。
- 前記ステータの側面と対向する前記カバー端子の垂直部の内側面に、レジスト膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変コンデンサ。
- 前記カバーは半田付け性の悪い金属で構成され、前記カバーの全面に半田付け性を良好にするための表面処理が施されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の可変コンデンサ。
- 前記カバーには、前記ステータの側面を介して下面側へ折り曲げられて係合される係合爪が設けられ、この係合爪の内側面に、前記ステータの側面との間に空隙を形成するための突起が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の可変コンデンサ。
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