JP3692411B2 - ポリカーボネート樹脂板状発泡体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリカーボネート樹脂押出発泡体の製造方法に関するものであり、更に詳しくは機械的強度に優れるポリカーボネート樹脂板状発泡体を連続的に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は耐熱性、耐老化性、耐水性が高く、電気的及び機械的性質も良好であり、自動車や建築用内装材、包装材、各種容器への用途展開が期待されている。特にポリカーボネート樹脂発泡体は耐熱性、耐老化性、耐水性、自消性及び優れた機械的性質の要求される、建材用途の軽量構造材、断熱材、内装材等に幅広く用途が期待されている。
このようにポリカーボネート樹脂発泡体は利用価値が高いが、樹脂の流動開始点が高く、溶融粘度も高いことから高温高圧条件下での押出発泡が強いられ、更に、該条件下では溶融張力も小さいため、通常の押出発泡法では所望の発泡体を得るのは困難である。そのため、溶解度係数6.5以上の有機物を発泡剤とする方法(特開平2−261836号公報)、沸点50〜150℃のイソパラフィンを発泡剤とする方法(特公昭47−43183号公報)等が提案されている。これらの方法により得られる発泡体は機械的強度、厚みにおいても不十分なものである等の問題を抱えていた。
【0003】
前記した押出発泡法のほか、シート状のポリカーボネート樹脂に発泡剤を含浸させて加熱発泡させる方法(特公昭46−31468号公報、特開平7−33094号公報、特開平7−332587号公報)等も提案されている。しかし、これらの方法で製造される発泡体は押出法の発泡体に比べ、コスト高となる上に、製造過程で厚み精度、表面平滑性、寸法安定性、生産性、発泡倍率、厚みにおいて不十分なものであり必ずしも有利な製造方法ではない。
一方、従来よりストラクチュラルフォームとしてポリカーボネート樹脂を基材樹脂とする射出発泡体の製造方法が知られているが、金型を使用しなくてはならず連続的に生産することは出来ず生産性に劣るものであり、厚みや寸法の発泡体の形状変更が難しく形状の決まった特殊用途の容器等にしか採用することの出来ないものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来、射出発泡による金型成形でなければ得られなかったポリカーボネート樹脂板状発泡体を連続的に製造することを可能にし、しかも発泡倍率及び厚みにおいて適宜選択可能で選択の幅が広げられ、寸法安定性、表面平滑性、厚み精度、機械的強度においても良好な板状発泡体を製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来技術にみられる前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、射出発泡法によらなくても、押出連続発泡法に適する特定のポリカーボネート樹脂を選択し、押出発泡後の基材樹脂の発泡力を十分厚みに反映できる成形方法を採用することにより、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば、250℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数ω=10−1〜101〔rad/sec〕の範囲での貯蔵弾性率G′〔dyn/cm2〕が、下記近似式の関係を満足するポリカーボネート樹脂及び発泡剤からなる混合物を高圧帯域から大気圧帯域へ押出し発泡体を製造する方法であって、押出発泡直後に、押出発泡体表面を大気に開放された上下板又は上下ベルトコンベアーからなる成形装置に接触通過させ、密度が30〜600kg/m3、厚み方向垂直断面の面積が少なくとも20cm2以上、厚みが0.7cm以上の板状発泡体を得ることを特徴とするポリカーボネート樹脂板状発泡体の製造方法が提供される。
logG′=αlogω+βα=0〜2.0
β=2.20〜5.70
(但し、α及びβはlogω=−1、logω=1に対応するlogG′の2点間の傾き及び切片である。)
また、本発明によれば、該ポリカーボネート樹脂が、250℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数ω=10−1〜101〔rad/sec〕の範囲での、貯蔵弾性率G′に対する損失弾性率G″の比tan(δ)=G″/G′の値が1乃至70の範囲内にあることを特徴とする上記ポリカーボネート樹脂板状発泡体の製造方法が提供される。更に、本発明によれば、上下板からなる成形装置によりポリカーボネート板状発泡体表面を基材樹脂の軟化温度以下に冷却することを特徴とする上記ポリカーボネート樹脂板状発泡体の製造方法が提供される。
【0006】
本発明者らは、ポリカーボネート系樹脂自体の発泡性改善のために、ポリカーボネートの溶融張力、溶融粘度に着目し、それらの改良に主眼をおいて研究を重ねてきたが、押出発泡が不可能であったり、気泡の破泡、収縮が激しかったり、発泡困難であったりと、溶融張力、溶融粘度だけの検討では特に、密度、厚みにおいて自在にコントロールして満足のいく発泡体を得ることは難かしかった。そこで、本発明者らは、溶融張力、溶融粘度は重要なファクターであることを踏まえ、更に良好な押出発泡適性を示すものの研究を重ねた。
その結果、フローテスターで得られる溶融粘度の値は非常に高剪断領域におけるものであり、別な方法で発泡の際の非常にミクロ的な分子の動きにおける低剪断領域における樹脂の特性を見る必要があること、又、メルトテンションの測定も大変形時の樹脂の抵抗を見るものであり、気泡が形成後、維持される時の樹脂の抵抗を見る必要があることを見い出した。
上記見解に基づき、更に鋭意研究を重ねた結果、押出発泡の際に必要な気泡の保持能力は、ある微妙な低剪断における樹脂の持つ弾性力に着目する必要があるという結論を得ることができた。
【0007】
ここで、ポリカーボネート樹脂の押出発泡特性を評価するにあたり、角周波数ωの変化と複素弾性率G*、位相差δの変化を測定し、貯蔵弾性率G′、損失弾性率G″、tan(δ)の変化の関係を求める動的粘弾性試験により評価することを試みた。
動的粘弾性試験においては、樹脂に振動歪みをかけ、樹脂に生ずる応力および歪みと応力の位相差を測定する。純粋な弾性体であれば歪みと応力の位相差は0°で、純粋な粘性体の場合は位相差は90°であるが、樹脂の場合は弾性と粘性を合せ持つので位相差は0°と90°の間の値となる。更に、温度一定で角周波数ωを変化させると樹脂の特性に応じて応力と位相差は一義的に変化する。
【0008】
ここで、貯蔵弾性率G′は樹脂の弾性を、損失弾性率G″は樹脂の粘性を表し、
G*=G′+iG″、
G′=|G*|・cos(δ)、
G″=|G*|・sin(δ)、
tan(δ)=G″/G′
の関係が成り立つ。
なお、コックス・メルツの経験則から、角周波数ωとせん断速度γは等しく、ω=γとみなすことができる。
【0009】
ポリカーボネート樹脂においては、角周波数ω(rad/sec)が103〜104付近では、G′>G″、tan(δ)<1となる。これは角周波数が大きい領域、即ち、剪断歪み速度が大きい領域では、弾性的な性質が支配的なことを意味し、発泡の初期段階の急激な変化に対応している性質であると考えることができる。
一方、10-2〜101の領域では逆にG′<G″、tan(δ)>1となる。これは角周波数が小さい低剪断領域では弾性よりも粘性的な性質が強くなることを意味する。粘性的な性質が強いことは時間の経過と共に樹脂が流動し、発泡が終了した後に気泡の形状を保持し得ないと考えることができる。
そこで、この低剪断領域において、弾性的な性質が強く特定の範囲内にあれば樹脂が流動して気泡が損なわれるのに抵抗する力が強いことになり、緩和時間が長いことにもなる。従って、低剪断領域での弾性的な性質が強く特定の範囲内であれば、冷却する時間が確保できることにもなり、良好な気泡を得ることができる。
【0010】
本発明は、一定条件下で、ある特定の貯蔵弾性率を有するポリカーボネート樹脂が、独立気泡率が高く、発泡倍率の高い表面状態の良好なポリカーボネート樹脂押出発泡体を得る押出発泡適性において優れること、すなわち、本発明は、動的粘弾性測定装置であるレオメータ(ダイナミックアナライザーSR200型レオメトリックスファーイースト社製)を用いて、測定温度250℃で角周波数分散を測定し得られる貯蔵弾性率G′を基に、縦軸をlogG′、横軸をlogωとしてプロットした曲線を求め、次に、該曲線を下記比例式に近似し、下記近似式を満足するポリカーボネート樹脂を用いた場合、前記目的を達成しうることを見い出した。
【数1】
logG′=α・logω+β
α=0〜2.0
β=2.20〜5.70
(但し、α及びβはlogω=−1、logω=1に対応するlogG′の2点間の傾き及び切片である)
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で用いた動的粘弾性装置は、ダイナミックアナライザーSR200型(レオメトリックスファーイースト社)である。
【0012】
また、貯蔵弾性率G′は、樹脂にある歪みを与えた時に一周期当たりに貯蔵され、かつ回復されるエネルギーの尺度である。
これは、このまま発泡時の樹脂に与えられる歪みに対する樹脂が持つ抵抗力に置きかえることができることを見い出した。つまり、温度条件250℃、線形領域内において角周波数ωと貯蔵弾性率G′が下記近似式を満足する場合に本発明の目的とする発泡体が得られる。
【数1】
logG′=α・logω+β
α=0〜2.0
β=2.20〜5.70
(但し、α及びβはlogω=−1、logω=1に対応するlogG′の2点間の傾き及び切片である)
しかしβが2.20を下回る場合は、発泡という歪みに対する抵抗するエネルギーが樹脂に無く、破泡を起こし満足な発泡体が得られず、逆に、βが5.70を超える様なものは、抵抗力が強すぎるために発泡が困難となってしまう。
また、αが0を下回ることはなく、一方αが2.0を超える場合は気泡を維持する力が急激に低下することになり、やはり破泡を起こし満足な発泡体が得られない。
更に、αの好ましい範囲は0.9〜1.8であり、βの好ましい範囲は2.30〜5.00である。
また、貯蔵弾性率G′により樹脂の気泡形成・維持に係る発泡の挙動を掌握できるが、更に損失弾性率G″により代表される粘性体の性質を考慮することにより、より一層、低密度、高厚み、そして広幅の発泡体を得ることができる。
つまり、前述の特定のG′挙動にに加え特定のG″とG′との比、tan(δ)=(G″/G′)の挙動を有するものが密度、厚み、幅においてより一層優れたものとなる。
上述の優れた効果が達成されるtan(δ)の好ましい範囲は、角周波数ω=10-1〜101の範囲内において1〜70の範囲内、更に好ましくは1〜20の範囲内である。
尚、動的粘弾性測定は発泡体に使用する基材樹脂(但し、添加剤を加える場合は、添加剤を含有するもの)を測定サンプルとして使用する。参考までに、基材樹脂を発泡させることにより得られた発泡体をヒートプレスにより脱泡させ樹脂板とし、該樹脂板を測定サンプルとして、動的粘弾性測定を行なった結果と、該発泡体の基材樹脂を測定サンプルとして動的粘弾性測定を行なった結果との比較より、発泡前後においてポリカーボネート樹脂の角周波数ωと貯蔵弾性率G′で表わされる動的粘弾性挙動は、ほぼ同様であることが判かる。よって、発泡体から前記方法により得られた動的粘弾性挙動は、ほぼ、その基材樹脂の動的粘弾性挙動であると言える。
また、動的粘弾性測定の温度条件250℃の選択理由は、次の通りである。
250℃における動的粘弾性の測定は発泡温度にて押出発泡される溶融ポリカーボネート樹脂が押出機ダイスから押出され気泡形成から発泡体固化までの温度低下にともなう粘弾性体の弾性率変化を角周波数低下にともなう弾性率変化と対応させた場合、ポリカーボネート樹脂の温度低下にともなう弾性率変化の挙動を顕著に表すことのできる動的粘弾性測定温度条件として採用されたものである。
【0013】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、炭酸とグリコール又はビスフェノールから形成されるポリ炭酸エステルの1種又は2種以上の混合物の内、高分量成分や長鎖分岐を有するものであると考えられる。そして、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、結晶性が高く高融点の上に、耐熱性、耐候性及び耐酸性に優れているため好適である。このようなポリカーボネートとしては、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン等のビスフェノールから誘導されるポリカーボネートから選択されるものである。尚、上記ポリカーボネートから少なくとも高分子量タイプのものを含む2種以上を選択し混合することによるもの、上記ポリカーボネートの分岐化を行ない、分岐鎖の長さを調整することによるものが好ましいが、必ずしも上記選択、調整によって得られるもの全てが、本発明における前記した特定の基材樹脂に相当するものとなるとは限らず、適宜、ポリカーボネート樹脂の選択、混合比、混合条件、分岐化剤量、分岐化条件等の調整が必要である。
また、本発明において用いるポリカーボネート樹脂としてはポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等の他の樹脂を本発明の効果を妨げない範囲で50重量%未満混合したものを基材樹脂としてもよい。
【0014】
本発明において用いるポリカーボネート樹脂から成る基材樹脂は前記したようにポリカーボネート樹脂のうちでも、前記試験機を用いて測定温度250℃(一定)にし線形領域内において角周波数分散を測定し貯蔵弾性率G′〔dyn/cm2〕をプロットした曲線から近似される下記近似式の関係を満足するポリカーボネート樹脂、又はポリカーボネート系樹脂混合物である。
【数1】
logG′=α・logω+β
α=0〜2.0
β=2.20〜5.70
(但し、α及びβはlogω=−1、logω=1に対応するlogG′の2点間の傾き及び切片である)
なお、本発明における動的粘弾性測定は線形領域内において行なうものとする。
上記動的粘弾性測定は、動的粘弾性試験機(例えば、レオメトリックスファーイースト社製の動的粘弾性試験機:SR200型等)によって、応力制御方式により、線形領域内で測定され、通常この線形領域内での測定は応力を2×104dyn/cm2とすることにより行なわれる。
尚、応力制御方式での測定において、ポリカーボネート樹脂は最大周波数100rad/secまで測定を行う場合、応力が1×104〜3×104dyn/cm2であれば線形領域となると言える。また、言うまでもなく、線形領域とは、歪率と応力とが比例関係にある領域のこと、即ち貯蔵弾性率等の粘弾性の測定値が応力の影響を受けない範囲のことである。動的粘弾性試験では厚さ約2mmの測定サンプル樹脂板を直径25mmのパラレルプレートの間に狭み、250℃に達するまで約10分放置し、その後、樹脂板を僅かに押さえ付けて溶融樹脂板とパラレルプレートのなじみを良くし、更に溢れ出た樹脂を削り取ってから角周波数ωを変化させて、貯蔵弾性率G′、損失弾性率G″及びtan(δ)を測定する。
また、角周波数ωと該貯蔵弾性率G′の関係が上記範囲を外れるポリカーボネート樹脂であっても、他の樹脂を混合させることにより、角周波数と該貯蔵弾性率の関係をこの範囲に調整したものも本発明における基材樹脂として用いることができる。
弾性率の調整は、一般にω=1〔rad/sec〕の時の貯蔵弾性率が1×105dyn/cm2を超えるものと2×102dyn/cm2を下まわるものとを混合することにより行なうことが容易であり、その混合比率を変えることにより、所望の弾性率とすることができる。その他、前述の方法によっても調整される。このことにより、リサイクル原料樹脂や従来発泡が困難であった特定のポリカーボネート樹脂も本発明における基材樹脂として用いることができる。
【0015】
このように、ポリカーボネート樹脂の角周波数ωと貯蔵弾性率G′との関係を満足する基材樹脂は、次いで押出機から押出される際の温度(樹脂温度)の制御を行ないながら、押出発泡することにより、発泡体が得られる。
本発明によるポリカーボネート系樹脂板状発泡体の製造方法を以下に記述する。
▲1▼押出機内に前述の基材樹脂と気泡調整剤等の添加剤とを仕込み、該機内で加熱・溶融・混練する。
▲2▼混練物に所望量の発泡剤を圧入して混練物に発泡剤を練り込む。
▲3▼発泡剤が練り込まれている混練物を、所定温度で押出機先端のダイスから大気圧域に押し出す。
【0016】
発泡体製造の際に使われる発泡剤は、無機発泡剤、揮発性発泡剤、分解型発泡剤のいずれも使用可能であるが、押し出し発泡法の場合は分解型発泡剤を使うと発泡シートの気泡が微細化してしまったり、発泡倍率の高い発泡体が得られ難いから、無機発泡剤や揮発性発泡剤を使用するのが好ましい。
揮発性発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサン等の低級脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン等の低級脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の低級芳香族炭化水素;メタノール、エタノール等の脂肪族低級一価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、エチルクロライド、メチルクロライド等の低沸点ハロゲン化炭化水素;等が例示される。
また、無機発泡剤としては、二酸化炭素、空気、窒素等が好ましく用いられる。
以上に詳記した発泡剤は、単独又は2種以上混合して使用可能であり、例えば無機発泡剤と揮発性発泡剤のように異なった型の発泡剤の併用も可能である。
【0017】
発泡剤使用量は発泡剤の種類や所望する発泡倍率によっても異なり、発泡倍率によって該発泡体の密度が定まるから、主に所望する発泡体の密度で発泡剤の使用量が定まると云える。
そのために必要な発泡剤量は基材樹脂100重量部当り揮発性発泡剤では0.5〜10重量部、無機発泡剤では0.3〜15重量部程度である。
【0018】
本発明では、ポリカーボネート樹脂組成物を円滑に発泡させるために、基材樹脂と発泡剤との溶融混練物中に必要に応じて気泡調整剤を添加することができる。この場合の気泡調整剤としては、タルクやシリカ等の無機粉末、多価カルボン酸の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの混合物等が好ましい。その添加量は、基材樹脂100重量部当り0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが良い。
【0019】
ポリカーボネート樹脂には、難燃剤、熱安定剤、耐候性向上剤、着色剤等のような、通常の発泡体に添加される公知の添加剤も添加することができる。
【0020】
ポリカーボネート樹脂発泡体は、例えば、ダイスを温調することにより、押出時の樹脂温度を極力下げ、気泡の破壊による近接する気泡との合体が原因の巨大気泡の形成や、気泡破壊が原因の発泡剤の抜けによる気泡のつぶれや気泡骨格の座屈を抑えて気泡を形成することができる。その上で、発泡剤の使用量を少なく調整したり、発泡剤の蒸気圧を低く調整すること、押出発泡後の発泡体の冷却を十分行うことにより、気泡形状を保ちながら、発泡体の独立気泡率も調整することができる。
【0021】
次に、本発明においては、得られた発泡体を十分な厚み、発泡倍率を有し、かつ、寸法安定性、表面平滑性、厚み精度及び圧縮等の機械的強度において良好な板状発泡体とするために図1(a)、(b)に示すように押出発泡直後に押出発泡体両表面を大気に開放された上下板又は上下ベルトコンベアーからなる成形装置に接触通過させる。このことにより、未硬化の発泡体は押出方向に対する抵抗を受け成形装置内に充満し厚みを増し、かつ、表面には薄皮が形成され、目的とする密度30〜600kg/m3、厚み方向垂直断面において、面積が20cm2以上、厚みが0.7cm以上のポリカーボネート樹脂板状発泡体が得られる。
尚、上下板又は上下ベルトコンベアーからなる成形装置は通常平行に設けられるが、気泡形状、密度、厚み等の調整のために、傾斜をつけることもある。また、成形装置は上下のみならず左右にも設けることができる。
【0022】
尚、上下板からなる成形装置は、より良好な表面平滑性を得るために発泡体との接触面がポリカーボネート樹脂と接着しないようにポリテトラフルオロエチレン等により形成されているものや、非接着性の鍍金処理された接触面を持つもの等ポリカーボネート樹脂と非接着手段を有するものが好ましい。
【0023】
また、上下板からなる成形装置にチラー配管などを設けて、ポリカーボネート樹脂発泡体表面を基材樹脂の軟化温度以下に冷却することが好ましく、このことにより発泡体表面は接触冷却されて、より良好な薄皮を形成することができ、表面平滑性、厚み精度が更に良好なものが得られるようになる。
【0024】
尚、本発明における基材樹脂の軟化温度とは、JIS K7206のA法により求められるビカット軟化温度のことである。
【0025】
また、成形装置の温度調整、押出発泡ライン速度、成形装置の上下板又は上下ベルトコンベアー間隔及び傾斜の調整により、板状発泡体の厚み方向の垂直断面気泡形状を中央部においては厚み方向に引き伸ばされた楕円球状に調整することが好ましく、更に表層部においては略球状に調整することが好ましい。中央部において、気泡形状を上記楕円球状に調整することによって、気泡膜が構造物に多数設けられた壁のような構造をとり、また気泡径も厚み方向に1000μm以上と大きい分、気泡膜の厚みも厚く、そのことより圧縮強度に特に優れたものとなる。また、表層部において気泡形状を略球状に調整することによって、柔軟な板法発泡体表面となり、風合い、フィット感が良好なものとなる。
【0026】
尚、表層部における略球状の気泡の平均気泡径は200μmを超えると柔軟性による風合い等が失われる恐れがあり、表層部の平均気泡系は200μm以下、更に150μm未満のものが好ましい。また、表層部の厚みは0.3〜7mmであることが好ましく、成形装置の冷却により調整される。
【0027】
また、ポリカーボネート樹脂板状発泡体は、厚み方向断面の面積が20cm2以上であり、厚み方向垂直断面の厚みが0.7cm以上である。
【0028】
すなわち、本発明のポリカーボネート樹脂発泡体は従来の発泡体と比較して厚みがあり、0.7cm以上、好ましくは1cm以上である。本発明のポリカーボネート樹脂発泡体の厚みが0.7cm未満の場合、ダイス先端の口金のクリアーをかなり狭くしなければならず、そのため、ダイス先端の口金より樹脂が押し出された時にコルゲートが発生し易く、表面状態の良好な発泡体が得にくくなる。また、断面積が20cm2未満の場合、発泡体の幅、厚みの関係上、板状発泡体として利用価値の低いものとなってしまう。
【0029】
本発明の方法にて得られるポリカーボネート樹脂板状発泡体の密度は30〜600kg/m3のものである。密度が30kg/m3未満の場合、密度減少による発泡体強度、特にじん性の低下が大きくなる傾向にある。一方、発泡体密度が600kg/m3を越えると発泡体は重くなり、また、切断等の二次加工性が悪くなってしまうため多種多様の用途展開が難しくなる。発泡体密度が、更に好ましくは50〜300kg/m3である。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0031】
実施例1〜3
ビスフェノールAよりなる分岐化ポリカーボネート樹脂100重量部に気泡調整剤としてタルクを加え、これを押出機内で、加熱、溶触、混練してから発泡剤としてn−ペンタンを表1に示す割合で押出機内に圧入して、押出機先端のダイスリップよりガイダーを通し、発泡剤を含浸した上記基材樹脂を押出し、押出発泡直後に押出発泡体両表面を図1に示す通り、上下板からなる成形装置に接触通過させて基材樹脂の軟化温度以下に板状発泡体表面を冷却して、引取機により引取りポリカーボネート樹脂板状発泡体を得た。押出発泡に使用したポリカーボネート樹脂のα、β、tanδ及び得られた板状発泡体の密度、厚み、幅方向における厚み方向垂直断面の断面積、物性等を表1に示す。
【0032】
実施例4〜5
ビスフェノールAよりなる高分子量成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして板状発泡体を得た。使用したポリカーボネート樹脂のα、β、tanδ及び得られた板状発泡体の密度、厚み、幅方向における厚み方向垂直断面の断面積、物性等を表1に示す。
【0033】
実施例6
実施例4で使用したポリカーボネート樹脂40重量部と回収ポリカーボネート樹脂60重量部との混合芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして板状発泡体を得た。使用したポリカーボネート樹脂のα、β、tanδ及び得られた板状発泡体の密度、厚み、幅方向における厚み方向垂直断面の断面積、物性等を表1に示す。
【0034】
比較例1
押出発泡直後に上下板からなる成形装置を通過させずに発泡体を引取機により引き取った以外は実施例4と同様にして発泡体を得た。使用したポリカーボネート樹脂のα、β、tanδ及び得られた板状発泡体の密度、厚み、幅方向における厚み方向垂直断面の断面積、物性等を表1に示す。実施例4と比較して厚み、表面平滑性において劣るものであった。
【0035】
比較例2
ビスフェノールAよりなる市販の芳香族ポリカーボネート樹脂を使用し、実施例1と同様にして板状発泡体を得ようとしたが、気泡破壊が激しく板状発泡体は得られなかった。
【0036】
比較例3
比較例2とは別のビスフェノールAよりなる市販の芳香族ポリカーボネート樹脂を使用し、実施例1と同様にして板状発泡体を得たが、十分な厚みのものが得られず、表面状態も不良であった。
【0037】
なお、表1中、諸物性等の評価等は下記に示すとおりである。
α及びβの値:動的粘弾性装置:ダイナミックアナライザーSR200型(レオメトリックスファーイースト社)を使用し温度250℃一定にし、線形領域内において角周波数ω〔rad/sec〕を変化させ、貯蔵弾性率G′〔dyn/cm2〕を求め縦軸にlogG′、横軸にlogωとしたグラフ上に曲線を得る。次にlogω=−1及びlogω=1の時のlogG′の値を曲線上から読み取り、その2点の値を基にlogG′=α・logω+βの一次式に近似し、該近似式で与えられる2点間の傾きをα、近似式の切片をβとした。なお、厚さ約2mmの測定サンプル樹脂板を直径25mmのパラレルプレート間に挟んで250℃に達するまで約10分間放置し、応力制御方式により線形領域内(応力2×104dyn/cm2)で測定を行なった。
tan(δ)の値:ダイナミックアライザーSR200型(レオメトリックスファーイースト社)を使用し温度250℃一定にし、線形領域内において角周波数ω〔rad/sec〕を変化させ、貯蔵弾性率G′を求めるのと同様にしてtan(δ)=G″/G′を求めた。
表面平滑性状態:板上発泡体表面を目視により観察する方法により評価した。
独立気泡率:独立気泡率はエアピクノメーター法(ASTM D2856)に準拠し、下記式により算出した。
Fo(%)=〔(Va−Vx)/Va〕×100
Fc(%)=100−Fo−〔(ρf/ρs)×100〕
Fo:連続気泡率(%)
Fc:独立気泡率(%)
Va:発泡体見掛け容積(cm3)
Vx:発泡体実容積(cm3)
ρf:発泡体密度(g/cm3)
ρs:ポリカーボネート系樹脂密度(g/cm3)
10%圧縮強度:JIS K7220により求められる値である。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、従来、射出発泡による金型成形でなければ得られなかったポリカーボネート樹脂板状発泡体を連続的に製造することができる。また、本発明によれば、発泡倍率及び厚みにいおいて適宜選択可能でその選択幅が広げられ、しかも寸法安定性、表面平滑性、厚み精度、機械的強度の良好な板状発泡体を容易に製造することができる。また、本発明により得られる発泡体は箱体素材等の包装分野、内装板材、防音壁材等の建築・土木分野、ピラー等の自動車分野等多種多様の分野、その他、FRP芯材等のユニットバス、プール内張材において好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリカーボネート樹脂板状発泡体の製造方法に用いられる装置の説明図。
【図2】実施例1及び2で用いたポリカーボネート樹脂の250℃の温度条件下、線形領域内における、角周波数ωと貯蔵弾性率G′及びtan(δ)との関係を表したグラフ。
【図3】実施例3で用いたポリカーボネート樹脂の、250℃の温度条件下、線形領域内における、角周波数ωと貯蔵弾性率G′及びtan(δ)との関係を表したグラフ。
【図4】実施例4及び5で用いたポリカーボネート樹脂の、250℃の温度条件下、線形領域内における、角周波数ωと貯蔵弾性率G′及びtan(δ)との関係を表したグラフ。
Claims (3)
- 250℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数ω=10−1〜101〔rad/sec〕の範囲での貯蔵弾性率G′〔dyn/cm2〕が、下記近似式の関係を満足するポリカーボネート樹脂及び発泡剤からなる混合物を高圧帯域から大気圧帯域へ押出し発泡体を製造する方法であって、押出発泡直後に、押出発泡体表面を大気に開放された上下板又は上下ベルトコンベアーからなる成形装置に接触通過させ、密度が30〜600kg/m3、厚み方向垂直断面の面積が少なくとも20cm2以上、厚みが0.7cm以上の板状発泡体を得ることを特徴とするポリカーボネート樹脂板状発泡体の製造方法。
logG′=αlogω+β
α=0〜2.0
β=2.20〜5.70
(但し、α及びβはlogω=−1、logω=1に対応するlogG′の2点間の傾き及び切片である。) - 請求項1記載のポリカーボネート樹脂が、250℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数ω=10−1〜101〔rad/sec〕の範囲での、貯蔵弾性率G′に対する損失弾性率G″の比tan(δ)=G″/G′の値が1乃至70の範囲内にあることを特徴とするポリカーボネート樹脂板状発泡体の製造方法。
- 上下板からなる成形装置によりポリカーボネート板状発泡体表面を基材樹脂の軟化温度以下に冷却することを特徴とする請求項1又は2記載のポリカーボネート樹脂板状発泡体の製造方法。
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