JP3932071B2 - ポリカーボネート樹脂板状発泡体 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂板状発泡体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、断熱材、構造材、型枠材等に使用されるポリカーボネート樹脂厚板状発泡体に関するものであり、更に詳しくは、密度が小さく(発泡倍率が高いと同義である)、厚みが厚く、しかも、独立気泡率の高い、機械的強度、非吸水性、断熱性等に優れたポリカーボネート樹脂板状発泡体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は耐熱性、耐老化性、耐水性が高く、電気的及び機械的性質も良好であり、自動車分野や建築、土木分野への用途展開が期待されている。特にポリカーボネート樹脂発泡体は耐熱性、耐老化性、耐水性、自消性及び優れた機械的性質の要求される、建材用途の軽量構造材、断熱材、内装材等に幅広く用途が期待されている。
このようにポリカーボネート樹脂発泡体は利用価値が高いが、樹脂の流動開始点が高く、溶融粘度も高いことから高温高圧条件下での押出発泡が強いられ、更に、該条件下では溶融張力(メルトテンション)も小さいため、通常の押出発泡法では所望の発泡体を得るのは困難である。そのため、溶解度係数6.5以上の有機物を発泡剤とする方法(特開平2−261836号公報)、沸点50〜150℃のイソパラフィンを発泡剤とする方法(特公昭47−43183号公報)等が提案されている。しかし、これらの方法により得られる発泡体は機械的強度、厚みにおいても不十分なものである等の問題を抱えていた。
【0003】
前記した押出発泡法のほか、シート状のポリカーボネート樹脂に発泡剤を含浸させて加熱発泡させる方法(特公昭46−31468号公報、特開平7−33094号公報、特開平7−332587号公報)等も提案されている。しかし、これらの方法で製造される発泡体は押出法の発泡体に比べ、コスト高となる上に、厚み精度、表面平滑性、寸法安定性、生産性、発泡倍率、厚みにおいて不十分なものである。
一方、従来よりストラクチュラルフォームとしてポリカーボネート樹脂を基材樹脂とする射出発泡体の製造方法が知られているが、金型を使用しなくてはならず連続的に生産することは出来ず生産性に劣るものであり、高い発泡倍率のものは得られず、厚みや寸法の発泡体の形状変更が難しく形状の決まった特殊用途の容器等にしか採用することの出来ないものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリカーボネート樹脂板状発泡体において、従来得ることのできなかった厚み15〜50mm、密度0.18g/cm以下のポリカーボネート樹脂板状発泡体で、その独立気泡率が50%以上であり、そのことにより吸水、吸湿性が低く断熱性、機械的強度、軽量性を兼備するものを提供することをその課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来技術にみられる前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、射出発泡法によらなくても、押出連続発泡法に適する特定のポリカーボネート樹脂を選択し、押出発泡後の基材樹脂の発泡力を十分厚みに反映できる成形方法を採用することにより、250℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数ω=10-1〜101〔rad/sec〕の範囲での貯蔵弾性率G′〔dyn/cm2〕が、下記近似式の関係を満足するポリカーボネート樹脂及び発泡剤からなる混合物を高圧帯域から大気圧帯域へ押出し発泡体を製造する方法であって、押出発泡直後に、押出発泡体表面を大気に開放された上下板又は上下ベルトコンベアーからなる成形装置に接触通過させ、密度が30〜600kg/m3、厚み方向垂直断面の面積が少なくとも20cm2以上、厚みが0.7cm以上の板状発泡体を得ることを特徴とするポリカーボネート樹脂板状発泡体の製造方法を完成し先に出願した(特願平8−257857参照)。
logG′=αlogω+β
α=0〜2.0
β=2.20〜5.70
(但し、α及びβはlogω=−1、logω=1に対応するlogG′の2点間の傾き及び切片である。)
【0006】
しかし、上記方法により得られた板状発泡体は独立気泡率の面で用途によっては必ずしも十分な効果を達成できるものではなかった。詳しくは、密度0.18g/cm以下又は厚み10mmを超えるものについては独立気泡率が50%以上とすることが困難であり、そのため吸水性、吸湿性が高く、そして吸水に起因する断熱性更には物性低下を防ぐことが難しかった。そこで、本発明者らは更に鋭意研究を行なった結果、上記製造方法において成形具で賦形して板状発泡体を得る際の引取速度を発泡性樹脂の押出速度よりも遅くして成形具内に押出された該樹脂を充満させる工程において発泡により形成される気泡に歪を発生させる応力の影響により、気泡膜が破壊される現象が、特に厚みを大きくする場合や、密度を小さくする場合に生じていると考えられ、基材樹脂の溶融張力と使用する発泡剤との特定の組み合せにより気泡の破壊を抑制できることを見い出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、溶融張力が5gf以上のポリカーボネート樹脂を基材樹脂とし、厚さが15〜50mm、幅が200mm以上、密度が0.18g/cm以下、独立気泡率が50%以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂板状発泡体が提供される。また、本発明によれば、厚み方向の平均気泡径が0.5〜3.0mmであることを特徴とする前記ポリカーボネート樹脂板状発泡体が提供される。さらに、本発明によれば、溶融張力が7gf以上のポリカーボネート樹脂を基材樹脂とし、密度が0.12g/cm以下であることを特徴とする前記ポリカーボネート樹脂板状発泡体が提供される。さらにまた、本発明によれば、ポリカーボネート樹脂からなる基材樹脂と発泡剤とを高温高圧条件下の押出機内にて混練して発泡性溶融混合物を得、該溶融混合物を押出機から上下板又は上下ベルトコンベアーからなる成形具内へ押出し、該成形具の内面と押出された樹脂とを接触させて成形することにより得られた前記ポリカーボネート樹脂板状発泡体が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の板状発泡体は独立気泡率が50%以上であり、好ましくは70%以上のものである。その上限値は、100%である。独立気泡率が50%未満の場合は用途によっては発泡体に水分を吸収してしまうおそれがあるし、発泡体が高倍率のものになる程独立気泡率が低下するため、圧縮、曲げ等の機械的強度が低いものとなる虞れがある。又、発泡体の水分の吸収は、色々な不具合を招く。例えば建築分野において夏場80℃を超える屋根の下地として高耐熱、高強度の断熱構造材として独立気泡率の低いポリカーボネート樹脂板状発泡体を使用すると、もし該発泡体が吸湿していた場合、断熱性は吸湿していないものと比較して低下したものとなり、高温条件と重なることにより基材樹脂の加水分解反応が進み、発泡体の物性低下を引き起こすことが考えられる。
尚、本発明における独立気泡率の値は、エアピクノメーター法(空気比較式比重計を使用する方法)により、下記式で算出される値である。
Figure 0003932071
但し、式中、Fc、Vx、Va、ρf、ρsは次のことを表す。
Fc:独立気泡率(%)
Vx:発泡体の実容積(cm3
Va:発泡体の見掛けの容積(cm3
ρf:発泡体の密度(g/cm3
ρs:発泡体の基材樹脂の密度(g/cm3
【0008】
また、本発明の発泡体の発泡体密度は0.18g/cm3以下であり、好ましくは0.12〜0.05g/cm3である。発泡体の密度が0.18g/cm3を超えるものは、強度においては申し分ないが、断熱性、軽量性において不十分であり、板材としての多少の柔軟性の要求される場合は不適なものとなる。一方、発泡体密度の下限値は概ね0.03g/cm3である。更に、0.03g/cm3を下回る密度の発泡体を得ようとする場合には、吐出量の大きな大型の押出機を使用し、かつ、押出発泡時の温度コントロールを極めて正確に行なう必要があり、その結果、生産性が悪くなってしまう。
【0009】
本発明の発泡体の厚みは15〜50mmである。発泡体の厚みが上記下限値未満の場合は断熱性、発泡体が広幅のものの場合は機械的強度の面で不十分なものとなる。一方、発泡体の厚みが厚すぎる場合は板状発泡体の施工性が悪くなり、製造面において発泡体の表面状態、発泡体断面の気泡の均一性等に劣ったものとなる虞れがある。また、発泡体の幅は200mm以上、好ましくは300〜1000mmのものである。発泡体の幅が200mm未満の場合は施工効率、生産効率が低下してしまう。また、発泡体の幅の上限値は概ね1500mmである。この上限値を超えると発泡体の厚みの均一性、平滑性が不十分なものとなる虞れがあり、施工性も悪化してしまう。
【0010】
次に、本発明の発泡体の気泡構造について説明する。
本発明の板状発泡体は厚み方向垂直断面において気泡形状が略球状のものとすることがより高い独立気泡構造のものを得る上で好ましい。また、発泡体表面を構成する表層の厚みは0.1〜3.0mm、更に0.1〜0.5mmとすることが好ましい。表層の厚みを大きくするために押出機より成形具内に押出された、溶融樹脂を成形具内と高い圧力で接触させると気泡の変形、座屈等により独立気泡率が低くなる虞れがあり、また、このことは前述の略球状の気泡形状のものがより独立気泡率の高いものとなることと同じ理由である。
その他、本発明の発泡体の気泡構造としては、発泡体の厚みがより厚い厚みを有するもの程、発泡体厚み方向垂直断面の厚み方向中央付近の気泡が縦長な形状となる傾向がある。
本発明の板状発泡体の平均気泡径は0.5〜3.0mmであることが好ましい。平均気泡径が0.5mm未満の場合は、板状発泡体の平滑性、圧縮強度において不十分なものとなる虞れがあり、平均気泡径が3.0mmを超える場合は、断熱性が不十分なものとなる虞れがある。尚、平均気泡径は、ASTM−D3576に準拠した測定方法により発泡体の厚み方向垂直断面を顕微鏡等を用いてスクリーンまたはモニター等に拡大投影し、投影画像上に厚さ方向に直線を引き、その線分と交差する気泡数をカウントし、線分の長さ(mm)を気泡数で割ることによって得られた値を更に0.616で割ることにより算出した値をもってその値とする。
【0011】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、炭酸とグリコール又はビスフェノールから形成されるポリ炭酸エステルの1種又は2種以上の混合物の内、高分量成分や長鎖分岐を有するものであると考えられる。そして、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐候性及び耐酸性に優れているため好適である。このようなポリカーボネートとしては、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン等のビスフェノールから誘導されるポリカーボネートから選択されるものである。尚、上記ポリカーボネートから少なくとも高分子量タイプのものを含む2種以上を選択し混合することによるもの、上記ポリカーボネートの分岐化を行ない、分岐鎖の長さを調整することによるものが好ましいが、必ずしも上記選択、調整によって得られるもの全てが、本発明におけるメルトテンション5gf以上の基材樹脂に相当するものとなるとは限らず、適宜、ポリカーボネート樹脂の選択、混合比、混合条件、分岐化剤量、分岐化条件等の調整をすることにより得られる。
また、本発明において用いるポリカーボネート樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等の他の樹脂を本発明の効果を妨げない範囲で50重量%未満混合したものを基材樹脂としてもよい。尚、その場合ポリカーボネート樹脂に他の樹脂を混合したものの溶融張力(メルトテンション)が5gf以上であることを要する。
【0012】
上記の通り本発明に用いるポリカーボネート樹脂の溶融張力(メルトテンション)は5gf以上のものである。基材樹脂の溶融張力は目的とする発泡体の密度が小さい場合は溶融張力の高いものを選定する等、目的とする発泡体の密度や使用する発泡剤の種類を考慮して決められる。基材樹脂の溶融張力の好ましい範囲としては、目的とする発泡体の密度が0.07〜0.18g/cm3の場合は、7〜20gf、該密度が0.07g/cm3未満の場合は10〜30gfである。また、該溶融張力の上限値は概ね50gfである。溶融張力が5gf未満の場合は厚みの10mm以上、又は密度が0.18g/cm3以下の発泡体を得る場合気泡の破壊が起こり、独立気泡率の高いものが得られない。一方、溶融張力が高すぎる場合には発泡性溶融樹脂の樹脂の延びが悪く発泡時の気泡の成長の妨げとなり密度の小さい発泡体を得ることが難しくなる。
尚、溶融張力は、例えば、株式会社東洋精器製作所製のメルトテンションテスターII型等によって測定することができる。具体的には、ノズル径2.095mm、長さ8mmのノズルを有するメルトテンションテスターを用い、上記ノズルから樹脂温度250℃、ピストン速度10mm/分の条件で樹脂を紐状に押し出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛けた後、巻き取り速度を徐々に(約5rpm/秒(紐状物の引張加速度:1.3×10-2m/秒)増加させていきながら巻き取りローラーで巻き取り、張力検出用プーリーと連結する検出器により検出される紐状物の張力をチャートに表し、その巻き取り速度100rpm(但し、巻き取りローラーの直径:50mm)での溶融張力の値を溶融張力とする。ただし、巻き取り速度が100rpmに満たないうちに紐状物が切れてしまう場合には、紐状物が切れたときの巻き取り速度、すなわち、紐状物が切れたときの巻き取り速度をRrpmとしたときに、Rrpmでの溶融張力の値を当該溶融張力値とする。
【0013】
以下、本発明のポリカーボネート樹脂板状発泡体の製造方法について説明する。
本発明の板状押出発泡体を得るためには、例えば前述のポリカーボネート樹脂及び発泡剤からなる混合物を、ダイスの樹脂押出口が水平なフラットダイス又は縦型スリットが多数並列に設けられているスリットダイスを通して高圧帯域から低圧帯域へ押出し発泡体を得る。更に、押出発泡直後に、押出発泡体表面を大気圧に開放された上下板又は上下ベルトコンベアーからなる成形具内を接触通過させることにより、表面平滑性が良好で厚み及び発泡倍率の高い板状発泡体を得ることができる。
【0014】
また、密度が低く、厚みや幅の大きな発泡体を製造する上で、前述のポリカーボネート樹脂の中でも特に以下の粘弾性特性を有するポリカーボネート樹脂の使用が好ましい。
すなわち、250℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数ω=10-1〜101〔rad/sec〕の範囲での貯蔵弾性率G′〔dyn/cm2〕が下記近似式の関係を満足するポリカーボネート樹脂である。
【数1】
logG′=α・logω+β
α=0〜2.0
β=2.20〜6.50
(但し、α及びβはlogω=−1、logω=1に対応するlogG′の2点間の傾き及び切片である)
【0015】
更に好ましいのは、250℃の温度条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波数ω=10-1〜101〔rad/sec〕の範囲でのtan(δ)の値が1乃至100の範囲内にあるポリカーボネート樹脂である。
α及びβ、更にtanδの値が上記範囲内のものは、厚み及び倍率において高いものを容易に製造することができる。
【0016】
尚、α及びβ、更にtanδの値は、下記のようにして求められる。
α及びβの値:
動的粘弾性装置〔ダイナミックアナライザーSR200型(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)〕を使用し、温度を250℃一定にし、線形領域内のおいて角周波数ω〔rad/sec〕を変化させ、貯蔵弾性率G′〔dyn/cm2〕を求め、縦軸にlogG′、横軸にlogωとしたグラフ上に曲線を得る。次に、logω=−1及びlogω=1の時のlogG′の値を曲線上から読み取り、その2点の値を基にlogG′=α・logω+βの一次式に近似し、該近似式で与えられる2点間の傾きをα、近似式の切片をβとする。なお、厚さ約2mmの測定サンプル樹脂板を直径25mmのパラレルプレート間に挾んで250℃に昇温し、更に250℃で約10分間放置した後、応力制御方式により線形領域内(応力2×104dyn/cm2)で測定を行なう。
【0017】
tan(δ)の値:
ダイナミックアナライザーSR200型(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)を使用し、温度を250℃一定にし、線形領域内において角周波数ω〔rad/sec〕を変化させ、貯蔵弾性率G′を求めるのと同様にしてtan(δ)=G″/G′を求める。
【0018】
更に、本発明の発泡体は独立気泡率が高いものであり、密度が0.18g/cm以下、厚みが15〜50mm、幅が200mm以上のものにおいて独立気泡率が50%以上のものを得るためには、前述の通り目的の発泡体密度に応じた溶融張力が5gf以上のポリカーボネート樹脂を使用することと併せて、目的の発泡体密度に応じて発泡剤を選定して使用することが重要である。発泡剤の選定にあたっては、下記の点に留意しなければならない。本発明に用いる発泡剤は、その種類によって、ポリカーボネート樹脂との溶解性が異なり、そのため、発泡の速度、すなわち、発泡性溶融混合物が発泡時にリップから排出された後、発泡剤と樹脂が分離し、気泡を生成する速度も異なる。また、ポリカーボネート樹脂に対する溶解性が一定範囲内のものに関しては、沸点が高いものは発泡剤と樹脂の分離が遅いため、発泡速度が遅く、そのために気泡を生成する途中に樹脂が軟化点以下の温度に低下してしまい、そのため独立気泡率は高いものの高い発泡倍率のものが得られなくなり、また、反対に沸点が低いものは、発泡剤と樹脂の分離が速いため、発泡速度が早く、そのために気泡膜が気泡の成長に耐えられず連泡になり、高い独立気泡率のものが得られなくなる傾向にある。その結果、樹脂に対する溶解性が一定の範囲内の発泡剤に関しては、沸点の低いものは発泡倍率向上効果が高く密度の小さい発泡体を製造する際に特に好適であり、一方、沸点の高いものは発泡速度が沸点の低いものと比較して遅く、樹脂発泡時の気泡破壊が抑制され独立気泡率を向上させる効果に優れ、独立気泡率の高いものを製造する際に好適である。尚、上記発泡速度の速さは、発泡倍率6〜10倍程度のポリカーボネート樹脂、押出発泡体を得る条件にて発泡剤の種類以外は同様の条件にて押出発泡を行なった時、発泡性樹脂を押出し後最高到達倍率となるまでの時間を比較することにより判定することができ、本発明においてはn−ペンタンよりも該時間が長いものを発泡速度が遅いものとする。
【0019】
これらのことから、密度0.18g/cm以下、0.12g/cmを超え、厚み15〜50mm、幅200mm以上の独立気泡率50%以上の板状発泡体を得る場合は、基材樹脂の溶融張力は5gf以上とし、発泡剤は溶解度係数が5〜10の発泡剤を1種又は2種以上を混合したものを選定すればよい。また、密度0.12g/cm以下、0.085g/cmを超え、厚み15〜50mm、幅200mm以上の独立気泡率50%以上の板状発泡体を得る場合は、基材樹脂の溶融張力を7gf以上とし、発泡剤はその密度が0.18g/cm以下でかつ0.12g/cmを超える発泡体を得る場合と同様の発泡剤を選定すればよい。また密度0.085g/cm以下、厚み15〜50mm、幅200mm以上の独立気泡率50%以上の板状発泡体を得る場合は、基材樹脂の溶融張力を7gf以上とし、発泡剤として溶解度係数が5〜10、好ましくは6〜9で且つ沸点が−50〜40℃の発泡剤5〜95重量%と溶解度係数が5〜10、好ましくは6〜9で且つ沸点が40℃を超え150℃以下の発泡剤95〜5重量%との混合発泡剤を全発泡剤量に対して60〜100重量%選定して使用すればよい。尚、溶解度係数が5〜10の発泡剤としては、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ブタン、i−ブタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルクロライド、エチルクロライド、その他、弗素化炭化水素系発泡剤や弗素化エーテル系発泡剤等が挙げられる。これらの発泡剤の中で沸点が−50〜40℃のもの(沸点が低いもの)はn−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、n−ブタン、i−ブタン等であり、沸点が40℃を超え150℃以下のもの(沸点が高いもの)は、n−ヘキサン、i−ヘキサン、シクロヘキサン、メチレンクロライド、エチレンクロライド等である。本発明における発泡剤の溶解度係数は凝集エネルギー密度(cal/cc)の平方根として求められる値である。
【0020】
発泡剤使用量は発泡剤の種類や所望する発泡倍率によっても異なり、発泡倍率によって該発泡体の密度が定まるから、主に所望する発泡体の密度で発泡剤の使用量が定まると云える。
そのために必要な発泡剤量は基材樹脂1kg当り0.2〜1.0モル程度である。
【0021】
本発明では、ポリカーボネート樹脂を基材樹脂として含む発泡性溶融混合物を円滑に発泡させるために、基材樹脂と発泡剤との溶融混練物中に必要に応じて気泡調整剤を添加することができる。この場合の気泡調整剤としては、タルクやシリカ等の無機粉末、多価カルボン酸の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの混合物等が好ましい。その添加量は、基材樹脂100重量部当り0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが良い。
【0022】
ポリカーボネート樹脂には、難燃剤、熱安定剤、耐候性向上剤、着色剤等のような、通常の発泡体に添加される公知の添加剤も添加することができる。
【0023】
前記、発泡剤の種類及び基材樹脂の溶融張力の選定の他、本発明においては、得られた発泡体を十分な厚み、高い発泡倍率及び高い独立気泡率を有し、かつ、寸法安定性、表面平滑性、厚み精度及び圧縮等の機械的強度において良好な板状発泡体とするために押出発泡直後に押出発泡体両表面を大気に開放された上下板又は上下ベルトコンベアー等からなる成形具に接触通過させる。このことにより、未硬化の発泡体は押出方向に対する抵抗を受け成形具内に充満し厚みを増し、所要板体形状に成形されるとともに、かつ、その表面には薄皮が形成され、目的とする密度0.18g/cm以下、幅が200mm以上、厚みが15〜50mm、独立気泡率50%以上のポリカーボネート樹脂板状発泡体が得られる。尚、上下板又は上下ベルトコンベアーからなる成形具は通常平行に設けられるが、気泡形状、密度、厚み等の調整のために、傾斜をつけることもある。また、成形具は上下のみならず左右にも設けることができる。尚、上下板からなる成形具は、より良好な表面平滑性を得るために発泡体との接触面がポリカーボネート樹脂と接着しないようにポリテトラフルオロエチレン等により形成されているものや、非接着性の鍍金処理された接触面を持つもの等ポリカーボネート樹脂と非接着性表面を有するものが好ましい。
【0024】
また、上下板からなる成形具にチラー配管などを設けて、ポリカーボネート樹脂発泡体表面をその軟化温度以下に冷却することが好ましく、このことにより発泡体表面は接触冷却されて、より良好な薄皮を形成することができ、表面平滑性、厚み精度が更に良好なものが得られるようになる。
尚、本発明における基材樹脂の軟化温度とは、JIS K7206のA法、昇温速度50℃/hにより求められるビカット軟化温度のことである。
また、成形装置の温度調整、押出発泡ライン速度、成形具の上下板又は上下ベルトコンベアー間隔及び傾斜の調整により、板状発泡体の厚み方向の垂直断面気泡形状及び表層の厚みを調整することができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の発泡体は、従来得ることのできなかった、高倍率、高厚み、広幅かつ高独立気泡率のポリカーボネート樹脂板状発泡体であり、特に独立気泡率が高いものであるため非吸水性に優れ、吸水が起因する断熱性機械的強度の低下を防ぐことができ、継続的に断熱性、機械的強度が優れたものとなる。
その他、厚み、幅が大きいものであることによりポリカーボネート樹脂発泡体の耐熱性、機械的強度、電気絶縁性等で生かした、建築、土木、電気分野等での各種用途での使用における寸法スペックに対応でき、使用可能な用途の広いものである。また、発泡倍率が高いものであることから、厚み、幅の大きいものとしても軽量なものとすることができ、独立気泡率の高いものであることとあいまって、断熱性、機械的強度においても優れたものである。
【0026】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0027】
実施例1
MT(溶融張力)=8.8gfのビスフェノールAから誘導されたポリカーボネート樹脂100重量部に気泡調整剤としてタルクを加え、これを押出機内で加熱、溶融、混合してから、発泡剤にn−ペンタンを表1に示す割合で押出機内に圧入して、押出機先端の口金よりガイダーを通し、発泡剤を含浸した樹脂を押出し、押出発泡体両表面を上下板からなる成形装置に接触通過させて基材樹脂の軟化温度以下に板状発泡体表面を冷却して、引取機により引取り、ポリカーボネート樹脂板状発泡体を得た。得られた板状発泡体の密度、厚さ及び幅、独立気泡率、気泡径を表1に示す。
【0028】
実施例2、3
表1に示すMTを有する、ビスフェノールAから誘導されたポリカーボネート樹脂を使用し、発泡剤としてノルマルヘキサン/ノルマルペンタン混合物を表1に示す割合で使用した以外は実施例1と同様にして板状発泡体を得た。得られた板状発泡体の密度、厚さ及び幅、独立気泡率、気泡径を表1に示す。
【0029】
比較例1
MT=3.5gfのビスフェノールAから誘導されたポリカーボネート樹脂を使用し、発泡剤にn−ペンタンを使用した以外は実施例1と同様にして板状発泡体を得た。得られた板状発泡体の密度、厚さ及び幅、独立気泡率、気泡径を表1に示す。
【0030】
比較例2
MT=3.5gfのビスフェノールAから誘導されたポリカーボネート樹脂を使用し、発泡剤にn−ペンタンを使用した以外は実施例1と同様にして板状発泡体を得た。得られた板状発泡体の密度、厚さ及び幅、独立気泡率を表1に示す。
この発泡体は、実施例1のものと比較して独立気泡率が低いものであった。
【0031】
比較例3
MT=8.3gfのビスフェノールAから誘導されたポリカーボネート樹脂を使用し、発泡剤にn−ペンタンを使用した以外は実施例1と同様にして板状発泡体を得た。得られた板状発泡体の密度、厚さ及び幅、独立気泡率、気泡径を表1に示す。
この発泡体は、実施例2のものと比較して独立気泡率が低いものであった。
【0032】
【表1】
Figure 0003932071
【0033】
なお、表1中のα、βの値は、以下のようにして求めた。
α及びβの値:
動的粘弾性装置〔ダイナミックアナライザーSR200型(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)〕を使用し、温度を250℃一定にし、線形領域内のおいて角周波数ω〔rad/sec〕を変化させ、貯蔵弾性率G′〔dyn/cm2〕を求め、縦軸にlogG′、横軸にlogωとしたグラフ上に曲線を得る。次に、logω=−1及びlogω=1の時のlogG′の値を曲線上から読み取り、その2点の値を基にlogG′=α・logω+βの一次式に近似し、該近似式で与えられる2点間の傾きをα、近似式の切片をβとした。なお、厚さ約2mmの測定サンプル樹脂板を直径25mmのパラレルプレート間に挾んで250℃に昇温し、更に250℃で約10分間放置した後、応力制御方式により線形領域内(応力2×104dyn/cm2)で測定を行なった。

Claims (4)

  1. 溶融張力が5gf以上のポリカーボネート樹脂を基材樹脂とし、厚さが15〜50mm、幅が200mm以上、密度が0.18g/cm以下、独立気泡率が50%以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂板状発泡体。
  2. 厚み方向の平均気泡径が0.5〜3.0mmであることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂板状発泡体。
  3. 溶融張力が7gf以上のポリカーボネート樹脂を基材樹脂とし、密度が0.12g/cm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリカーボネート樹脂板状発泡体。
  4. ポリカーボネート樹脂からなる基材樹脂と発泡剤とを高温高圧条件下の押出機内にて混練して発泡性溶融混合物を得、該溶融混合物を押出機から上下板又は上下ベルトコンベアーからなる成形具内へ押出し、該成形具の内面と押出された樹脂とを接触させて成形することにより得られた請求項1〜のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂板状発泡体。
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