JP4217229B2 - ポリスチレン系樹脂押出発泡体 - Google Patents

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Description

本発明はポリスチレン系樹脂押出発泡体に関し、殊に、肉厚のポリスチレン系樹脂押出発泡体であって、その中央部分の気泡径が球形に近似した形状を有し、断熱性、寸法安定性がよく、押出方向、幅方向および厚み方向の各方向における圧縮強さの均一性に優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体に関する。
ポリスチレン系樹脂発泡体は、種々の分野に広く利用されており、肉厚の発泡体は、例えば、建築用断熱材、冷凍車用断熱材、床板芯材、畳床芯材、防振材、排水材、盛土材、地中埋込み材などの建築、土木用資材等に使用されている。
ポリスチレン系樹脂押出発泡体は、発泡剤を含有する発泡性樹脂溶融物を、押出機に付設されたダイから押出し、上下に板状物あるいはベルト等を設けた成形用治具(ガイダー)の内壁面に沿わせて移動させ発泡体を製造する。このようにして得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体は、該発泡体の表面付近の気泡は気泡径が押出方向に引き伸ばされた形状であり、発泡体断面の中央部付近の気泡は気泡径が表面付近の気泡に比べて大きく厚み方向に縦長の形状を示すものとなる。この傾向は発泡体の肉厚が厚くなるほど顕著に現われる。
このような厚み方向に縦長の気泡形状を有する発泡体は、厚み方向の圧縮強さは強いが、押出方向や幅方向の圧縮強さは弱く、また、押出方向や幅方向に曲げた場合折れ易く、使用する方向により強度が異なる欠点があった。
ポリスチレン系樹脂押出発泡体において、気泡形状が厚み方向に縦長の場合は圧縮強さが高いが断熱性、寸法安定性に劣り、押出方向および/または幅方向に長い場合には圧縮強さが劣る傾向にある。したがって、発泡体の気泡形状が球形に近いことが、発泡体の各方向における曲げ強さ、圧縮強さの均一性に優れ、断熱性、寸法安定性が良好なものとなる。
従来、比較的肉厚のポリスチレン系樹脂押出発泡体における気泡径、気泡形状等に注目し、圧縮強さが大きいスチレン系樹脂発泡体として、例えば、厚さが10〜50mm、密度が25〜35kg/m3であり、表皮から厚さ1mmを除いた部分における押出方向の平均気泡径が、幅方向及び厚み方向の平均気泡径よりも大きく、その比が1.2〜2.0の範囲内であって、その値が発泡体の厚み方向の中心に近づくにしたがって次第に1に近づくような平均気泡径のスチレン系樹脂発泡体が、畳床芯材用に好適なものであることが報告されている(特許文献1参照)。
また、ポリスチレン系樹脂板状発泡体の幅方向における両端部とそれ以外の部分の気泡構造の異なるポリスチレン系樹脂板状発泡体、すなわち幅方向の両末端から全幅長の少なくとも2%に相当する幅長部分が、幅方向の平均気泡径(b)に対し厚み方向の平均気泡径(a)が1.10以上、すなわちa/b≧1.10で、押出方向の平均気泡径(c)に対し厚み方向の平均気泡径(a)が1.10以上、すなわちa/c≧1.10であり、上記以外の部分が、幅方向の平均気泡径(b')に対し厚み方向の平均気泡径(a')、および、押出方向の平均気泡径(c')に対し厚み方向の平均気泡径が0.70以上,すなわちa'/b'≧0.70、a'/c'≧0.70で、かつa'/b'<a/bで、a'/c'<a/cである、密度25〜50kg/m3、平均気泡径1mm以下である、畳床用ポリスチレン系樹脂押出発泡体が報告されている(特許文献2参照)。
しかしながら、上記特許文献1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体は、表皮部分を除いた発泡体の気泡は、押出方向の平均気泡径が幅方向および厚み方向の平均気泡径よりも大きく、その比が1.2〜2.0のものであること、すなわち押出方向に長い形状の気泡であることを特徴とする。発泡体の厚みは10〜50mmのものであることが記載されているが、実際にはその実施例においては厚さ25mmのものが示されているに過ぎず、45mmを超える肉厚の発泡体については何ら開示されていない。また、特許文献2に記載の発泡体は、厚み方向に縦長の気泡形状を有するものである(例えば、公報第2頁、右欄10〜11行の記載)。しかし、発泡体の厚みは明示されておらず、実施例の記載から28mm程度のものであることが伺えるが、45mmを超える肉厚の発泡体については何ら開示されていない。
また、特許文献3には、断面の気泡形状が上下表層部において幅方向および/または押出方向に引き伸ばされ、中央層において厚み方向に引き伸ばされており、5%圧縮強さが2.0kg/cm2以上3.0kg/cm2未満、10%圧縮強さが2.5kg/cm2以上の圧縮強さを有するポリスチレン系樹脂押出し発泡体からなる畳床用芯材が示されている。この特許文献3に記載の押出発泡体は、気泡の形状が、発泡体の上下表層部の形状と中央層の形状が異なる気泡形状として圧縮強さを改良した畳床芯材に関する。
しかしながら、特許文献3には厚みが45mmを超える肉厚のポリスチレン系樹脂押出発泡体であって、中央部付近において発泡体の気泡形状が略球形であるポリスチレン系樹脂押出発泡体については何ら開示されていない。
また、特許文献4には、多層押出発泡成形により表面層と発泡層とが一体に成形された発泡成形体を製造する方法として、ダイ内にトーピードを配して樹脂流路を狭めダイ内の樹脂圧を高めて口金開口部からサイザー内に押出しコア層(発泡層)の発泡を外側方向、すなわち表面層方向に向かって膨張させコア層(発泡層)と表面層とを一体化した表面層を有する多層押出発泡成形体とすることが開示されている。
また、特許文献5には、表皮層を有し内部発泡層を有するポリスチレン系樹脂押出発泡体からなる複合体を製造する方法として、トーピードを備えたダイの出口に成形品の形状寸法と同じサイザーを接続してダイあるいはトーピードのいずれか一方を移動させてダイ出口面とトーピードの出口面の相対的位置を変えて押出発泡し任意の表面層厚さを有する発泡製品を製造することが開示されている。
しかしながら、これらの特許文献4および特許文献5は、いずれも実体は見かけ密度がおおよそ0.7g/cm3以上の合成木材として使用される発泡成形体、およびその製造方法に関するもので、発泡体の厚さが45mmを超える肉厚の見かけ密度が小さな押出発泡成形体で、発泡体の気泡形状が略球形である本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体については何ら開示されていない。
特開平4−189526号公報 特開昭56−10434号公報 実公平2−25863号公報 特開平11−170331号公報 特公昭47−47096号公報
従来の比較的厚みの厚いポリスチレン系樹脂押出発泡体は、その表面付近の気泡は押出方向に引き伸ばされた形状を有し、中央部付近は押出方向に垂直な断面において厚み方向に縦長の気泡形状を有する。このような発泡体は、厚み方向の圧縮強さは強いが、押出方向、幅方向の曲げ強さに弱い欠点があったり、寸法安定性にも劣るという問題があった。
一方、ポリスチレン系樹脂押出発泡体を得る為の物理発泡剤としては従来、ジクロロジフルオロメタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンなどの塩素化弗素化炭化水素(以下、特定フロンという)が使用されていたが、オゾン層破壊問題からその使用が制限されている。そして近年、特定フロン代替用の物理発泡剤が種々提案されているが、いずれも特定フロンと比較して物理発泡剤としての性能は劣るものである。具体的には、オゾン層破壊係数が0(ゼロ)の弗素化炭化水素はスチレン系樹脂への溶解性に劣るものであり、見かけ密度が小さく、厚みの厚い発泡体を得ることが難しい。また、ブタン等の脂肪族炭化水素なども特定フロン代替用の物理発泡剤として注目されているが、該発泡剤は得られる発泡体中に残存し、可燃性物質であるためポリスチレン系樹脂押出発泡体における難燃性基準を満足させるためにその使用量はおのずと制限されるため見かけ密度が小さく、厚みの厚い発泡体を得ることが難しいという課題を有する。
そのような状況下において、厚みの厚いポリスチレン系樹脂押出発泡体を得るために物理発泡剤とポリスチレン系樹脂とからなる発泡性樹脂溶融物の発泡能力を最大限に引き出して気泡が破れる寸前まで発泡させ製造せざるを得ない。このため、該発泡体の気泡構造は中央部付近が厚み方向に縦長の気泡形状を有する形態になっている。即ち、特定フロンを使用しないで得られるポリスチレン系樹脂押出発泡体においては、見かけ密度が0.015〜0.06g/cm3を有し、厚さが45mmを超える肉厚のもので、発泡層の中央部付近の気泡形状がほぼ球形に近いポリスチレン系樹脂押出発泡体は、これまで見出されていないのが実情である。
本発明は、特定フロンを使用しないで得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体で、厚さが45mm以上の肉厚を有し、見かけ密度が0.015〜0.06g/cm3の発泡体であって、発泡層の中央部付近の気泡形状がほぼ球形に近いものであり、特に肉厚の発泡体に要求される圧縮強さ等の機械的物性の均一性に優れ、更に、肉厚の発泡体に顕著に現れる経時収縮による寸法変化の少ない寸法安定性に優れるポリスチレン樹脂押出発泡体を提供することにある。
本発明は、特定フロンを使用しないで得られたポリスチレン系樹脂押出発泡体であって、厚さが45mm以上の肉厚のポリスチレン系樹脂押出発泡体における両表面から各々厚みの10%の部分を除いた部分を指す中央層の気泡形状が特定の要件を満足し、厚み方向、幅方向および押出方向の圧縮強さの均一性に優れており、断熱性、寸法安定性にも優れるポリスチレン系樹脂押出発泡体に関する。
すなわち、本発明は、(1)発泡体中に塩素化弗素化炭化水素からなる残存ガスを含有せず、弗素化炭化水素、脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素から選択される残存ガスを含み、厚みが45〜150mm、見かけ密度が0.015〜0.06g/cmのポリスチレン系樹脂発泡体であって、該発泡体の両表面から夫々発泡体厚みの10%の部分を除いた中央層の気泡形状が、下記式(1)および(2)を満足し、発泡体押出方向に対する垂直断面の中央層において、該中央層全体の厚み方向の平均気泡径が70〜700μmであるとともに、該中央層に厚み方向の平均気泡形が50〜500μm(ただし、該中央層全体の厚み方向の平均気泡径未満)の微細気泡層が1層以上存在し、厚み方向、幅方向および押出方向の圧縮強さが下記式(3)〜(5)を満足することを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡体。
(数
0.80≦DVD/DTD<1.20 ・・・・・・・(1)
0.80≦DVD/DMD<1.20 ・・・・・・・(2)
0.65≦(PVD+PTD+PMD)/3PVD≦1.40 ・・・・・・(3)
0.85≦(PVD+PTD+PMD)/3PTD1.35 ・・・・・・(4)
0.85≦(PVD+PTD+PMD)/3PMD1.35 ・・・・・・(5)
(ただし、DVDは中央層の厚み方向の平均気泡径、DTDは中央層の幅方向の平均気泡径、
MDは中央層の押出方向の平均気泡径であり、PVDは発泡体厚み方向の圧縮強さ、PTDは発泡体幅方向の圧縮強さ、PMDは発泡体押出方向の圧縮強さである。)
)また、本発明は、発泡体中に弗素化炭化水素からなる残存ガスを含有していないことを特徴とする上記(1)に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体。
)さらに、本発明は、熱伝導率が0.02〜0.04W/m・K、厚み方向の圧縮強さが0.15〜0.80N/mmであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体、
を要旨とするものである。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体(以下、単に、押出発泡体ということがある。)は、厚みが厚く、見かけ密度が小さな板状の押出発泡体であって、中央層の気泡形状が略球形であり、厚み方向、幅方向および押出方向の圧縮強さの均一性に優れ、断熱性、寸法安定性が良好なものであるので、そのままで、或いは、スライス加工して使用され、建築用断熱材、冷凍車用断熱材、床板芯材、畳床芯材、防振材、排水材、盛土材、地中埋込み材などの建築、土木用資材等に有用なものである。
(1)本発明請求項1に記載の発明は、特定のフロンを使用しないで得られる、厚さが45mm以上の肉厚のポリスチレン系樹脂発泡体であって、該発泡体における両表面から発泡体厚みの10%の部分を除いた発泡層の気泡形状が前記の式(1)及び(2)で示される条件を満足し、厚み方向、幅方向および押出方向の圧縮強さの均一性に優れており、断熱性、寸法安定性が良好なポリスチレン系樹脂押出発泡体を提供することができる。
(2)また、本発明請求項に記載の発明は、押出発泡体の中央層部分に少なくとも1層の微細気泡層が形成されており、断熱性により優れた押出発泡体を提供することができる。
(3)さらに本発明請求項に記載の発明は、フロンを全く使用しないで得られる押出発泡体において上記の請求項における効果を達成することができるものである。
(4)さらに本発明請求項に記載の発明は、上記請求項1または2の効果を兼備すると共に熱伝導率および圧縮強さにおいて特に優れたポリスチレン系樹脂押出発泡体である。
本発明は、特定フロンを使用することなく得られた厚みが45〜150mmの肉厚の板状ポリスチレン系樹脂押出発泡体であって、該押出発泡体の中央層の気泡形状が厚み方向に大きく縦長となることがなく略球形であり、圧縮強さ等の機械物性および断熱性、寸法安定性に優れた物性を有するものである。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体に使用されるポリスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体やスチレンを主成分とするスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−ジメチルスチレン共重合体、スチレン−エチルスチレン共重合体、スチレン−ジエチルスチレン共重合体等が挙げられる。上記スチレン系共重合体におけるスチレン成分含有量は50モル%以上が好ましく、特に好ましくは80モル%以上である。
また、上記ポリスチレン系樹脂としては、本発明の目的、作用、効果が達成される範囲内において、その他の重合体を混合したものであってもよい。その他の重合体としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−エチレン共重合体等が挙げられ、概ね50重量%未満、更に30重量%未満、特に10重量%未満の範囲で目的に応じて混合することができる。
上記ポリスチレン系樹脂は、JIS K7210(1976)のA法の試験条件8により測定されるメルトフローレイト(以下、MFRという。)が0.5〜30g/10分、更に1〜10g/10分の範囲のものを用いることが、押出発泡体を製造する際の押出発泡成形性に優れ、外観、発泡性等の優れた押出発泡体が得られると共に、機械的強度においても更に優れたものが得られる点から好ましい。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造に使用される発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン等の弗素化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル、メタノール、エタノール等の低級アルコール、塩化メチル、塩化エチル等の塩素化炭化水素等の有機系物理発泡剤、二酸化炭素、窒素、空気、水等の無機系物理発泡剤が使用される。これらの発泡剤は2種以上を混合して使用することができる。
また、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体にあって、低い見かけ密度の発泡体を得るためには、上記物理発泡剤の中でも、ポリスチレン系樹脂に対する溶解性が良好で、ポリスチレン系樹脂に対する可塑化効果が極端に大きくない炭素数3〜6の脂肪族炭化水素や炭素数5〜6の脂環式炭化水素が好ましい。更に、高い断熱性を示す発泡体を得るためには、ポリスチレン系樹脂に対する溶解性が良好で低い見かけ密度のものが得られ、発泡体中に長期に亘り残存するイソブタン、イソペンタンが好ましい。しかしながら、上記の脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素は可燃性ガスであり発泡体の難燃性の点においては好ましいものではない。特に、イソブタン、イソペンタンなどは高い断熱性を示す発泡体を得るためには好適なものではあるが、可燃性ガスであり長期に亘り発泡体中に残存するため難燃性の点においては課題を有する。よって、本発明の押出発泡体を得るために使用される発泡剤は、塩素化炭化水素、エーテル、アルコール、無機系物理発泡剤から選ばれる単体又は2種以上の発泡剤(以下、早期逸散発泡剤という。)と、上記の脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素とを併用することが好ましい。
上記した早期逸散発泡剤の併用は、発泡剤として押出発泡時の発泡に寄与して押出発泡体の見かけ密度の低下をもたらし、かつ、可燃性ガスである脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素の使用量の低減に寄与して難燃性の向上をもたらすというさらに優れた効果を示す。また、この早期逸散発泡剤は押出発泡直後、或いは押出発泡後の早い時期に発泡体中から逸散する。これらのことにより、得られる押出発泡体は、難燃性能を悪化させずに低い見かけ密度を有し高い断熱性に優れる発泡体を得ることができると共に、断熱性能及び難燃性能を早期に安定化させることができる。
上記発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする押出発泡体の見かけ密度、ポリスチレン系樹脂の種類等により増減するものであり特定することが難しいが、ポリスチレン系樹脂1kgに対して概ね0.7〜2.5モル、好ましくは0.85〜2.0モル(複数の物理発泡剤を併用する場合は構成発泡剤の合計モル数。)の範囲で添加される。
また、本発明の押出発泡体おいて、発泡体中の残存ガス量、特に、発泡体中のイソブタン残存量は、該発泡体1kgあたり0.40〜0.90モル、更に0.45〜0.75モル、特に0.50〜0.65モルであることが好ましい。イソブタンの残存量が上記範囲内にあることにより、高い断熱性を有する押出発泡体となる。具体的には、後述する押出発泡体の好ましい厚み方向の平均気泡径の構成を兼備することによって、JIS A9511(2003)記載の押出ポリスチレンフォーム保温板3種の熱伝導率が0.028W/m・K以下の押出発泡体を得ることが可能となる。
本明細書における発泡体中の発泡剤残存ガスの残存量は、ガスクロマトグラフを用いて測定する。具体的には、押出発泡体の中央部から切り出したサンプルをトルエンの入った蓋付き試料ビン中に入れ、蓋を閉めた後、十分に攪拌し該押出発泡体中の発泡剤をトルエンに溶解させたものを測定試料とし、該試料についてガスクロマトグラフィー分析を行ない内部標準法により定量することより発泡体に含有されるイソブタン等の残存量を求めることができる。
上記弗素化炭化水素、脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素から選ばれる発泡剤と早期逸散発泡剤を使用して得られる押出発泡体において、早期逸散発泡剤は前記の通り、押出発泡体製造後の早い時期に発泡体中から逸散してしまい、それ以外の発泡剤、即ち、弗素化炭化水素、脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素が押出発泡体中に残存ガスとして含有されることとなる。また、本発明の押出発泡体は発泡剤として特定フロンを使用して得られたものでない。そのことは、特定フロンを使用して得られた押出発泡体中には特定フロンが残存ガスとして含まれるため、押出発泡体中に特定フロンが残存ガスとして含まれていないことにより確かめられる。
本発明の押出発泡体は、先に記述したように、厚みが45〜150mm、見かけ密度が0.015〜0.06g/cmのポリスチレン系樹脂押出発泡体の両表面から夫々発泡体厚みの10%の部分を除いた中央層の気泡形状が下記式(1)および(2)を満足し、厚み方向、幅方向および押出方向の圧縮強さが下記式(3)〜(5)を満足するポリスチレン系樹脂押出発泡体である。
(数
0.80≦DVD/DTD<1.20 ・・・・・・・(1)
0.80≦DVD/DMD<1.20 ・・・・・・・(2)
0.65≦(PVD+PTD+PMD)/3PVD≦1.40 ・・・・・・(3)
0.85≦(PVD+PTD+PMD)/3PTD1.35 ・・・・・・(4)
0.85≦(PVD+PTD+PMD)/3PMD1.35 ・・・・・・(5)
(ただし、DVDは中央層の厚み方向の平均気泡径、DTDは中央層の幅方向の平均気泡径、DMDは中央層の押出方向の平均気泡径であり、PVDは発泡体厚み方向の圧縮強さ、PTDは発泡体幅方向の圧縮強さ、PMDは発泡体押出方向の圧縮強さである。)
上記の式(1)および(2)を満足する押出発泡体は、中央層の気泡の形状がほぼ球状に近い状態のものであることを意味するものである。また式(3)〜(5)を満足する押出発泡体は、発泡体厚み方向の圧縮強さ、発泡体幅方向の圧縮強さ、および発泡体押出方向の圧縮強さがバランスの取れた押出発泡体であることを意味するものである。
特定フロンを使用しないで得られる本発明の肉厚の押出発泡体において、前記式(1)および(2)の値が1.20以上のものである場合は、厚み方向の圧縮強さは高い値を示すものの、幅方向および押出方向の圧縮強さは厚み方向の圧縮強さと比較して極端に低い値を示すものとなると共に断熱性においても不十分なものとなる。また、前記式(1)および(2)の下限である0.80を下回る場合には、厚み方向の圧縮強さは低い値を示し、厚み方向、幅方向および押出方向の圧縮強さの均一性において不十分となる。更に、前記式(1)および(2)を満足しないものは、押出発泡後の寸法変化が大きく、約24時間経過後には押出発泡体の押出方向両端部の寸法が押出方向中央部の寸法よりも短くなる収縮現象が発生し寸法安定性に劣るものとなる。また、曲げ強さなどの機械的物性においても幅方向と押出方向との値のバラツキが大きいものとなる。尚、本発明において、DVD/DTDおよびDVD/DMDの値は0.85〜1.10であることが更に好ましい。また、より優れた断熱性を有する押出発泡体とする観点からDVDは、75〜350μm、更に80〜200μmであることが好ましい。
本発明の押出発泡体において、前記式(1)および(2)を満足すると共に、押出方向垂直断面または幅方向垂直断面に存在する中央層の気泡の80%(個数%)以上において、厚み方向の気泡径/押出方向の気泡径の値が0.80以上、1.20未満であると共に、厚み方向の気泡径/幅方向の気泡径の値が0.80以上、1.20未満であることが更なる機械的物性の均一性の点から好ましい。
また、前記式(3)〜(5)において、(PVD+PTD+PMD)/3PVDの値は0.75〜1.35、更に0.80〜1.30であることが好ましく、(PVD+PTD+PMD)/3PTDおよび(PVD+PTD+PMD)/3PMDの値0.90〜1.25であることが好ましい。また、厚み方向の圧縮強さは0.15〜0.80N/mm2、更に0.20〜0.50N/mm2であることが好ましい。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体は、通常の押出発泡体を製造する押出発泡成形技術に加え、以下に説明するダイ構造を採用することにより得ることが出来る。具体的には、タルク等の周知の気泡調整剤、ヘキサブロモシクロドデカン等の周知の難燃剤とポリスチレン系樹脂とを押出機中にて加熱、混練してポリスチレン系樹脂溶融物とし、続いて前記物理発泡剤を押出機中に圧入して該溶融物と発泡剤とを十分に混練した後、発泡適正温度に冷却することにより発泡性樹脂溶融物を得る。得られた発泡性樹脂溶融物を、ダイ内部に冷却用治具を備え、ダイ内の溶融樹脂流路が上下方向に広く形成され、該流路がダイの口金開口部付近で急激に狭められた構造を有するダイに導入し、該ダイの口金開口部からダイ先端に取付けられた成形用治具(ガイダー)内に押出して発泡成形させることにより目的の押出発泡体を製造することができる。
上記において、口金開口部の間隙や幅は、および成形用治具の幅、高さ寸法等は、所望とする押出発泡体の厚み寸法、発泡体の見かけ密度等との関係で適宜選択される。また、上記製造方法においては、前記気泡調整剤や難燃剤以外にも、本発明の目的、効果を妨げない範囲において、着色剤、熱安定剤、充填剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。
上記の式(1)〜(5)を満足する本発明に係る押出発泡体は、上記した押出発泡成形方法における、発泡性樹脂溶融物を口金開口部から成形用治具内に押出し発泡成形する過程において、発泡体の厚み方向中央部付近の樹脂温度を調整し中央部付近と表面付近との温度差を小さくして発泡成形することにより製造することができる。上記の成形用治具内に押出し発泡成形する過程において、発泡体の中央部付近における樹脂温度を調整し中央部付近と表面付近との温度差を小さくする手段としては、押出機の先端と成形用治具の間に位置するダイ内部に、例えば図1において符号1で示したトーピード等の冷却用治具を配して温度調整を行い、さらに溶融樹脂流路を調整して溶融樹脂のせん断発熱を抑えつつダイ内圧を押出発泡に適する圧力に保持して発泡性樹脂溶融物を押出すことによって為し得る。
一般の押出成形技術においてトーピードを用いる技術は知られているが、その目的とするところは溶融樹脂の冷却や樹脂流路を狭めることによるダイ内の圧力保持にある。しかしながら本発明の押出発泡体を得るために使用されるダイ内のトーピード等の冷却用治具は、主に発泡性樹脂溶融物の温度を均一にすることを主たる目的として設けられている。本発明の押出発泡体を得るためにトーピード等の冷却用治具を採用する場合、該冷却用治具によってダイ内の圧力を保持しようとすると、溶融樹脂を冷却し過ぎることになり発泡性樹脂溶融物の溶融粘度が必要以上に高まり発泡性を阻害する虞があり、本発明の目的とする厚みおよび見かけ密度のものが得られない等の不具合が生ずる。
本発明においては、上記冷却用治具をダイ内に設けることに加えて、ダイ内の溶融樹脂流路の上下方向の間隔を広くし、口金開口部付近において急激に間隙を狭めることにより溶融樹脂のせん断発熱を抑えダイ内の圧力を保持することが重要となる。
図1に本発明の押出発泡体を製造するためのダイ構造を、図2に従来の押出発泡体を製造するために使用されるダイ構造を夫々示した。図1は本発明の押出発泡体を製造するダイ構造の一例を示す縦断面の部分図である。図1に示されるダイ構造は、ダイ4の内部にトーピード1が設けられており、図2に示す従来のものと比較して樹脂流路が広く形成されており、口金開口部2付近において該流路が急激に狭められた構造になっている。図1におけるダイ構造の具体的な条件として、口金開口部2の樹脂流路が急激に狭められる部位(急圧縮部)のリップ角度αは15〜35度、更に20〜30度とすることが好ましい。また、トーピード1の温度は好ましくは80〜115℃、更に好ましくは85〜90℃に温度調整されることがよい。尚、該トーピード1の温度調整が高すぎる場合には目的とする気泡構造の押出発泡体が得られない。また、該トーピード1の温度を上記範囲内において低めに設定することにより押出発泡体の中央層に前記微細気泡層を形成することができる。
本発明において、上記の押出発泡体の中央層のDVD、DTD、DMDは、下記の方法によって求められる。
VD(μm)及びDTD(μm)は、押出発泡体の両表面から夫々発泡体厚みの10%の部分を除いた押出発泡体の幅方向垂直断面(発泡板の押出方向と直交する垂直断面)を、またDMD(μm)は、押出発泡体の両表面から夫々発泡体厚みの10%の部分を除いた押出発泡体の押出方向垂直断面(発泡板を幅方向に二等分し、且つ、発泡板の幅方向と直交する垂直断面)を、それぞれ顕微鏡等を用いてスクリーンまたはモニター等に拡大投影し、投影画像上において測定しようとする方向に直線を引き、その直線と交差する気泡の数を計数し、直線の長さ(但し、この長さは拡大投影した投影画像上の直線の長さではなく、投影画像の拡大率を考慮した真の直線の長さを指す。)を計数された気泡の数で割ることによって、各々の方向における平均気泡径を求める。
更に詳しく説明すると、(a)厚み方向の平均気泡径DVDの測定は、該幅方向垂直断面の中央部及び両端部付近の計3箇所の厚み方向に中央層全厚みに亘る直線を引き、各々の直線の長さ(μm)と(該直線と交差する気泡の数−1)から各直線上に存在する気泡の平均径(直線の長さ(μm)/(該直線と交差する気泡の数−1))を求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を厚み方向の平均気泡径DVDとする。
(b)幅方向の平均気泡径DTDは、該幅方向垂直断面の中央部及び両端部付近の計3箇所の発泡体を厚み方向に二等分する位置に、長さ3000μmの直線を幅方向に引き、長さ3000μmの直線と(該直線と交差する気泡の数−1)から各直線上に存在する気泡の平均径(3000μm/(該直線と交差する気泡の数−1))を求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を幅方向の平均気泡径DTDとする。
(c)押出方向の平均気泡径DMDは、該押出方向垂直断面の中央部及び両端部の計3箇所の発泡体を厚み方向に二等分する位置に,長さ3000μmの直線を押出方向に引き、長さ3000μmの直線と(該直線と交差する気泡の数−1)から各直線上に存在する気泡の平均径(3000μm/(該直線と交差する気泡の数−1))を求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を押出方向の平均気泡径DMDとする。
但し、本発明押出発泡体の押出方向に対する垂直断面の中央層には、幅方向に亘る微細気泡層が1層或いは複数層形成されているものも含むため、そのような押出発泡体において中央層のDVD、DTD、DMDは、微細気泡層とそれ以外の層において夫々DVD、DTD、DMDを測定し、各層において前記式(1)および(2)の関係を満足するものとする。
(d)微細気泡層における厚み方向の平均気泡径DVDの測定は、該幅方向垂直断面の微細気泡層の中央部及び両端部付近の計3箇所の厚み方向に微細気泡層全厚み(通常1〜10mm程度である)に亘る直線を引き、各々の直線の長さ(μm)と(該直線と交差する気泡の数−1)から各直線上に存在する気泡の平均径(直線の長さ(μm)/(該直線と交差する気泡の数−1))を求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を微細気泡層の厚み方向の平均気泡径DVDとする。
(e)微細気泡層における幅方向の平均気泡径DTDは、該幅方向垂直断面の微細気泡層の中央部及び両端部付近の計3箇所の該微細気泡層を厚み方向に二等分する位置に、長さ3000μmの直線を幅方向に引き、長さ3000μmの直線と(該直線と交差する気泡の数−1)から各直線上に存在する気泡の平均径(3000μm/(該直線と交差する気泡の数−1))を求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を微細気泡層の幅方向の平均気泡径DVDとする。
(f)微細気泡層における押出方向の平均気泡径DMDは、該押出方向垂直断面の微細気泡層の中央部及び両端部付近の計3箇所の該微細気泡層を厚み方向に二等分する位置に、長さ3000μmの直線を押出方向に引き、長さ3000μmの直線と(該直線と交差する気泡の数−1)から各直線上に存在する気泡の平均径(3000μm/(該直線と交差する気泡の数−1))を求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を微細気泡層の押出方向の平均気泡径DMDとする。また、中央層に微細気泡層を含む押出発泡体において上記微細気泡層以外の層においても、上記(d)〜(f)の方法と同様にしてDVD、DTD、DMDを測定する。
また、微細気泡層が1層或いは複数層形成されている場合の本発明押出発泡体において、中央層全体の厚み方向の平均気泡径は上記(a)に記載された測定方法により求められる値を指し、微細気泡層の厚み方向の平均気泡径は上記(d)に記載された測定方法により求められる値を指す。
また、本発明におけるPVD、PTD、PMDは下記の方法によって求められる。
押出発泡体の中心部から縦(押出発泡体の押出方向)45mm、横(押出発泡体の幅方向)45mm、厚み(押出発泡体の厚み方向)45mmの立方体形状の試験片を切り出し、試験速度を10mm/分とした以外は、JIS K7220(1999)に基づいて、押出発泡体の押出方向、幅方向、厚み方向の各方向に圧縮し、5%圧縮時の荷重を求め、計算式に基づき圧縮強さを算出する。尚、各測定において試験片は新しいものを使用し、同じ試験片を繰り返して測定に使用してはならない。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体は、主に、建築用資材、土木用資材に使用される板状押出発泡体であり、厚みは用途および生産効率面において肉厚の板状発泡体に望まれる点と、従来技術においては均一な機械的物性および寸法安定性の実現が困難となる厚みである点から、厚さは45〜150mmであり、好ましくは50mmを超え150mm以下であり、特に好ましくは55〜120mmである。厚さが薄すぎる板状押出発泡体では、土木用資材として使用する際には、複数枚を積層し、結束して使用しなければならず、物性面においても曲げ強さ等の機械的強度が不十分となる虞がある。一方150mmを超えるような超肉厚の押出発泡体は製造設備が長大なものとなり製造コストが高価なものとなる。また気泡径や気泡形状をコントロールすることが困難となり、各方向における機械的物性の均一性が達成できなくなる虞がある。
土木構築用資材や高厚みの断熱用資材として、特に厚みの厚い発泡体が要求される用途分野においては、従来はその殆どがポリスチレン発泡粒子成型体でなければ対応できなかったが、本発明の押出発泡体は、上記したように45〜150mmの厚みを有し、押出方向、幅方向および厚み方向の機械的物性がバランスの取れたものであり、土木構築用資材や高厚みの断熱用資材としての用途分野に好適なものである。また、各方向における機械的物性の均一性を活かして切削、スライス等の二次加工により従来の断熱発泡板用途は勿論のこと、更に多くの分野に活用できるものである。尚、本発明の押出発泡体は、押出発泡成形により形成されたものであるため発泡体表面に表皮層(スキン層)と呼ばれる発泡体内部の見かけ密度に比べて高密度の樹脂層が形成される。この表皮層は、押出発泡体の切削仕上げにて取り除かれることもある。従って、本発明の押出発泡体は、表皮層の有無に関わらず特定の厚みおよび見かけ密度を有するポリスチレン系樹脂押出発泡体において、特定の気泡径比および物性を満足するものは本発明の請求項に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の対象とされる。
また本発明の押出発泡体の見かけ密度は、上記用途においての使用に好適な板状押出発泡体という点から、0.015〜0.06g/cm3の低密度のものであり、好ましくは0.020〜0.045g/cm3、更に好ましくは0.020〜0.038g/cm3のものである。尚、本発明における押出発泡体の見かけ密度は、JIS A9511(2003)に基づいて測定される値である。
本発明の押出発泡体は、発泡体押出方向に対する垂直断面の中央層において、該中央層全体の厚み方向の平均気泡径が70〜700μmであるとともに、該中央層に厚み方向の平均気泡径が50〜500μm(ただし、該中央層全体の厚み方向の平均気泡径未満)の微細気泡層が1層以上存在することが好ましい。更に、微細気泡層の厚み方向の平均気泡径は該中央層全体の厚み方向の平均気泡径の50〜90%、更に60〜85%であることが好ましい。
このような本発明における独特の気泡構造を有する押出発泡体において、中央層に厚み方向の平均気泡径が50〜500μmの微細気泡層が1層以上の微細気泡層が形成されるのは、上記した本発明の押出発泡成形において、例えば、ダイ内部にトーピード等の冷却用治具を配して、該冷却用治具の温度を、樹脂温度に対応して調整されるダイの調整温度に対して15〜35℃低い温度に調整して押出発泡させることにより形成できる。なお、ダイ内部に冷却用治具を上下方向に複数段設けることにより、2層以上の微細気泡層を形成することができる。このような独特の気泡構造を有する本発明の押出発泡体は、該微細気泡層の存在により更に断熱性が向上したものとなる。
本発明の押出発泡体は、断熱性において熱伝導率が0.02〜0.04W/m・Kを示すものが好ましく、また、機械的物性において厚み方向の圧縮強さが0.15〜0.80N/mm2、特に0.20〜0.50N/mm2を示すものが好ましく、更にまた、押出方向の曲げ強さおよび幅方向の曲げ強さ共に0.20〜1.00N/mm2を示すものが好ましい。また、押出発泡体の(幅方向の曲げ強さ/押出方向の曲げ強さ)の値が0.80〜1.20、更に0.90〜1.15であることが好ましい。
本発明において、押出発泡体の曲げ強さは、押出発泡体の中心部から長さ(押出発泡体の押出方向または幅方向)300mm、幅75mm、厚さ(押出発泡体の厚み)の短冊形状の試験片を切り出し、試験速度を10mm/分とし、JIS K7221−2(1999)に基づいて、押出発泡体の押出方向または幅方向の最大曲げ強さを算出しその値を採用する。尚、押出方向の曲げ強さの測定は、試験片の長さ方向を押出発泡体の押出方向とした試験片を使用して求められる最大曲げ強さであり、幅方向の曲げ強さの測定は、試験片の長さ方向を押出発泡体の幅方向とした試験片を使用して求められる最大曲げ強さである。
また、本発明において、押出発泡体の熱伝導率はJIS A 9511(1995)4.7の記載により、JIS A 1412(1994)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側35℃、低温側5℃、平均温度20℃)に基づいて測定される値である。
次に、本発明の押出発泡体について実施例により詳細に説明する。
実施例1〜5
図1に示す形態のダイ内部にトーピードを配したダイ構造を有する押出発泡成形用押出機を用いた。
ポリスチレン(日本ポリスチレン製ポリスチレン、商品番号『HH32』)および該ポリスチレン100重量部に対して表1のa項に示す量の気泡調整剤マスターバッチおよび難燃剤マスターバッチを押出機に供給し、溶融混練し、溶融混練物に押出機に設けた発泡剤注入孔より、イソブタンと塩化メチルをポリスチレン1kgに対し、表1のb項に示すモル量となるように注入して更に混練し、樹脂温度を表1のc項に示す樹脂温度に調整した後、表1のd項に示す温度に調整したオイルを循環させたトーピードを設置した樹脂温度と同じ温度に調整されたダイ(ダイ先端部に設けた口金開口部の幅、間隙及び先端開口部への導入リップ角度αは表1のe項に示す値に調整した)を通して低圧下に押出した。押出された発泡性溶融樹脂混合物を発泡させながら口金開口部下流側に連結された成形用治具内に充満させ板状に成型し、表1のf項に示す寸法の板状ポリスチレン系樹脂押出発泡体を得た。
実施例1〜5に得られた押出発泡体は、押出方向垂直断面または幅方向垂直断面に存在する中央層の気泡の90%(個数%)以上において、厚み方向の気泡径/押出方向の気泡径の値が0.80以上、1.20未満であると共に、厚み方向の気泡径/幅方向の気泡径の値が0.80以上、1.20未満のもので気泡形状の均一性に優れるものであった。また、実施例1〜5に得られた押出発泡体は、押出発泡体の製造後24時間経過時の押出方向両端部および中央部の寸法収縮が共に3mmであり、厚み方向、幅方向には寸法変化は確認されず寸法安定性に優れるものであった。また、実施例2〜5に得られた押出発泡体は押出方向に対する垂直断面の中央層を上下に二分割する位置に厚み方向に約2mmの幅の微細気泡層が1層形成されているものであった。実施例1〜5にて得られた押出発泡体の諸物性を表2に纏めて示す。
比較例1、2
トーピードを設置しない図2に示す構造の従来のダイを使用して表1に示した条件にて押出発泡を行った以外は、上記実施例と同様にして押出発泡体を得た。尚、比較例1は実施例1に対応する比較例であり、比較例2は実施例5に対応する比較例である。比較例1、2にて得られた押出発泡体は、中央層の気泡形状が厚み方向に縦長のものであった。また、比較例1、2にて得られた押出発泡体は、押出発泡体の製造後24時間経過時の押出方向両端部の寸法収縮が6mm、中央部の寸法収縮が4mmであり実施例にて得られたものと比較して収縮量が大きく、収縮寸法の端部と中央部とのバランスも悪く、寸法安定性に劣るものであった。該押出発泡体の諸物性を表2に纏めて示す。
尚、実施例および比較例において気泡調整剤マスターバッチとしては、ポリスチレン40重量%とタルク60重量%とからなるものを使用し、難燃剤マスターバッチとしては、ポリスチレン50重量%とヘキサブロモシクロドデカン50重量%とからなるものを使用した。
Figure 0004217229
Figure 0004217229
*:中央層全体の厚み方向の平均気泡径
表中、MDは押出方向、TDは幅方向、VDは厚み方向を意味する。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造に用いられるダイ構造の一例を示す縦断面の部分図である。 従来のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造装置のダイ構造を示す縦断面の部分図面である。
符号の説明
1 トーピード
2 口金開口部
3 スクリュー
4 ダイ
5 リップ角度

Claims (3)

  1. 発泡体中に塩素化弗素化炭化水素からなる残存ガスを含有せず、弗素化炭化水素、脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素から選択される残存ガスを含み、厚みが45〜150mm、見かけ密度が0.015〜0.06g/cmのポリスチレン系樹脂発泡体であって、該発泡体の両表面から夫々発泡体厚みの10%の部分を除いた中央層の気泡形状が下記式(1)および(2)を満足し、発泡体押出方向に対する垂直断面の中央層において、該中央層全体の厚み方向の平均気泡径が70〜700μmであるとともに、該中央層に厚み方向の平均気泡形が50〜500μm(ただし、該中央層全体の厚み方向の平均気泡径未満)の微細気泡層が1層以上存在し、厚み方向、幅方向および押出方向の圧縮強さが下記式(3)〜(5)を満足することを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡体。
    (数1)
    0.80≦DVD/DTD<1.20 ・・・・・・・(1)
    0.80≦DVD/DMD<1.20 ・・・・・・・(2)
    0.65≦(PVD+PTD+PMD)/3PVD≦1.40 ・・・・・・(3)
    0.85≦(PVD+PTD+PMD)/3PTD1.35 ・・・・・・(4)
    0.85≦(PVD+PTD+PMD)/3PMD1.35 ・・・・・・(5)
    (ただし、DVDは中央層の厚み方向の平均気泡径、DTDは中央層の幅方向の平均気泡径、
    MDは中央層の押出方向の平均気泡径であり、PVDは発泡体厚み方向の圧縮強さ、PTDは発泡体幅方向の圧縮強さ、PMDは発泡体押出方向の圧縮強さである。)
  2. 発泡体中に弗素化炭化水素からなる残存ガスを含有していないことを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体。
  3. 熱伝導率が0.02〜0.04W/m・K、厚み方向の圧縮強さが0.15〜0.80N/mmであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体。
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