JP6211442B2 - ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法 - Google Patents
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特許文献1の方法により、水と二酸化炭素とを含む混合発泡剤を用いると共に、HBCDを難燃剤として用いた場合に、単峰分布の気泡構造の押出発泡体を製造することが可能になった。しかし、この方法では、HBCD代替臭素系難燃剤を使用した場合には、小気泡が発生し、双峰分布の気泡構造となってしまうか、或いは全体的に気泡が微細化してしまい、場合によっては板状の押出発泡体自体を得ることが困難となる場合があった。
<1>ポリスチレン系樹脂と、炭素数3〜5の飽和炭化水素及び水を含む物理発泡剤と、臭素系難燃剤とを混練してなる発泡性樹脂溶融物を押出して独立気泡率85%以上の押出発泡体を製造する方法において、該発泡性樹脂溶融物に、ポリプロピレンカーボネート系樹脂が配合されていることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
<2>前記ポリプロピレンカーボネート系樹脂の配合量がポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部であることを特徴とする<1>に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
<3>前記ポリスチレン系樹脂100重量部に対する水の配合量が1.5重量部以上であることを特徴とする<1>又は<2>に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法においては、ポリスチレン系樹脂、難燃剤及び発泡剤を押出機にて混練してなる発泡性樹脂溶融物を、ダイを通して高圧の押出機内より低圧域に押出して発泡させることにより、ポリスチレン系樹脂押出発泡体(以下、単に押出発泡体、又は発泡体ともいう)が製造される。この際、該ダイの出口に、平行あるいは入口から出口に向かって緩やかに拡大するよう設置された上下2枚のポリテトラフルオロエチレン樹脂等からなる板で構成される装置(以下、ガイダーとも言う)や成形ロール等の成形具を配置し、押出された発泡体を該成形具を通過させることによって、板状に賦形することができる。
この理由は定かではないが、水のポリスチレン樹脂中への溶解度を向上させるほどの配合量ではなく、極少量の配合でも前記効果が得られていることから、ポリアルキレンカーボネート系樹脂が発泡性ポリスチレン系樹脂溶融物中に微細に分散しやすく、微細に分散したポリアルキレンカーボネート系樹脂が、発泡性ポリスチレン系樹脂溶融物中への水の分散を向上させていることにより小気泡の発生を抑制するとともに気泡径を均一化しているものと推察される。
一方、前記ポリアルキレンカーボネート系樹脂の上限は、押出発泡体の機械的強度を維持する観点から5重量部以下が好ましく、4重量部以下がより好ましく、3重量部以下がさらに好ましい。
かかる観点から、水の配合量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.5重量部以上が好ましく、より好ましくは1.0重量部以上、さらに好ましくは1.5重量部以上である。最も好ましくは1.6重量部以上である。もっとも、水の配合量があまりにも多すぎると、ダイ内で水が分離しやすくなり、発泡体の表面に穴が発生しやくなることから、その上限値は3重量部以下とすることが好ましい。
前記有機系物理発泡剤としては、例えば、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチル、蟻酸エチルプロピオン酸メチルなどのカルボン酸エステル類、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキルなどが挙げられる。また、フッ化炭化水素の中でも、地球温暖化係数の小さい1、3、3、3−テトラフルオロプロペンなどのハイドロフルオロオレフィン等を用いることもできる。前記無機系物理発泡剤としては、例えば二酸化炭素、窒素などが挙げられる。
これら、その他の物理発泡剤は、単独または2種以上混合して使用することができる。
[式中,Zは、CH3−C−CH3、CH2、SO2から選ばれる有機基、R4,R5は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−Y−Xで表される有機基(式中,Yは炭素数1〜6のアルキレン基、Xはエポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、フェニル基である)、およびフェニル基のうちから選ばれるもの、および、これらの原子及び原子団のうち、少なくとも1つの水素原子が臭素原子に置換されている有機基である。尚、R4,R5の原子及び原子団は相互に異なる有機基であっても同じものであってもよい。]
[式中、R1,R2,R3は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−Y−Xで表される有機基(式中、Yは炭素数1〜6のアルキレン基、Xはエポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、フェニル基である)、およびフェニル基の中から選択される有機基、および、これらの原子及び原子団のうち、少なくとも1つの水素原子が臭素原子に置換されている有機基である。但し、R1,R2,R3のうち少なくとも1つは、前記原子及び原子団のうち少なくとも1つの水素原子が臭素原子に置換されている有機基とする。
尚、R1,R2,R3の原子及び原子団は相互に異なる有機基であっても同じものであってもよい。]
また、前記共重合体を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、臭素化スチレン、塩素化スチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチルスチレンなどが例示でき、これらの中でも、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン又はこれらの混合物が好ましく、より好ましくはスチレンである。
上記の中でも、ポリスチレン系樹脂との相溶性を考慮すると、ポリスチレン重合体ブロックと臭素化ポリブタジエンブロックとのブロック共重合体であることがより好ましい。
本発明で好ましく用いられるポリスチレン−臭素化ポリブタジエン共重合体難燃剤としては、Chemtura社のEmerald3000、ICL−IP社のFR122Pなどの市販品が挙げられる。
一方、押出発泡体幅方向の平均気泡径(DW:mm)は、押出発泡体の幅方向垂直断面(押出発泡体の押出方向と直交する垂直断面)に存在する個々の気泡に対して、厚み方向及び幅方向に平行な四辺を有し、かつ気泡に外接する長方形の幅方向の辺の長さを計測して、各気泡の幅方向の気泡径を求め、それらの算術平均値を幅方向の平均気泡径(DW)とする。また、押出発泡体の水平方向の平均気泡径(DH:mm)は、DLとDWの相加平均値とする。
V(mm)={Σ(DTi−DT)2/(n−1)}1/2 (4)
変動係数(Cv)は(4)式により求めた標準偏差(V)を用いて、次式(5)によって求められる。
Cv(%)=(V/DT)×100 (5)
測定試料は、押出発泡体において中央部および幅方向両端部付近の計3箇所からカットサンプルを切り出して各々のカットサンプルについて独立気泡率を測定し、3箇所の独立気泡率の算術平均値を押出発泡体の独立気泡率とする。なお、カットサンプルは押出発泡体から縦25mm×横25mm×厚み20mmの大きさに切断された、押出発泡体表皮を有しないサンプルとし、厚みが薄く厚み方向に20mmのサンプルが切り出せない場合には、例えば縦25mm×横25mm×厚み10mmの大きさに切断された試料(カットサンプル)を2枚重ねて測定する。
ただし、Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm3)(押出発泡体のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
VA:測定に使用されたカットサンプルの外寸法から算出されたカットサンプルの見かけ上の体積(cm3)
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:押出発泡体を構成する樹脂の密度(g/cm3)
内径65mmの第1押出機と内径90mmの第2押出機とが直列に連結されており、発泡剤注入口が第1押出機の終端付近に設けられており、間隙2mm×幅65mmの幅方向断面が長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイが第2押出機の出口に連結されており、該フラットダイの樹脂出口には、これと平行するように設置された上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる板により構成された賦形装置(間隔50mm)が付設されている装置を用いた。
ポリスチレン系樹脂としては、以下に示すポリスチレン系樹脂を用いた。
PS1:PSI〔ポリスチレン、PSジャパン製「GX154(MFR(200℃、5kgf)、1.5g/10分)」〕50重量%とPSII〔ポリスチレン、PSジャパン製「680(MFR(200℃、5kgf)7.0g/10分)」〕50重量%との混合樹脂。
ポリアルキレンカーボネート系樹脂として表1のポリアルキレンカーボネート系樹脂を用いた。
表2に示す難燃剤の難燃剤マスターバッチを、ポリスチレン系樹脂に対する難燃剤としての添加量が表3及び4に示す量となるようにポリスチレン系樹脂に添加した。
ポリスチレン樹脂をベースレジンとし、タルク(松村産業(株)製、商品名:ハイフィラー#12)60重量%を含有するタルクマスターバッチを用いた。
表3及び4に示す配合及び配合量となるようにポリスチレン系樹脂、ポリアルキレンカーボネート系樹脂、難燃剤、さらに気泡調整剤0.2重量部を、前記第1押出機に供給し、220℃まで加熱し、これらを溶融、混練し、発泡剤注入口から表4及び5に示す配合組成、量の発泡剤を溶融物に供給してさらに溶融混練し、得られた発泡性樹脂溶融物を、順に第2押出機に供給して樹脂温度を表4及び5に示すような発泡に適した発泡樹脂温度(押出機とダイとの接合部の位置で測定された発泡性樹脂溶融物の温度)に調整した後、吐出量70kg/hrでダイリップからガイダー内に押出し、ガイダー内を通過させることにより板状に成形(賦形)し、厚み50mmのポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
厚み方向の平均気泡径(DT)については、前記方法により測定した。すなわち、厚み方向の平均気泡径(DT)は、押出発泡体の押出方向に平行に、幅方向の中央部で二等分した垂直断面のサンプルを得て、拡大倍率50倍の拡大写真を得、写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K−proを用いて気泡の厚み方向の気泡径を計測した。それを3サンプルについて計測し、それらの値を算術平均することにより求めた。
変動係数Cvについては、上記で計測した個々の気泡の厚み方向の気泡径から前記方法により求めた。
JIS K7222(2005)に準拠して見掛け密度を測定した。
押出発泡体の幅方向中央部及び両端部付近から、それぞれ25mm×25mm×20mmのサイズの成形表皮を持たないサンプルを切り出し、前記ASTM−D2856−70の手順Cにより各サンプルの独立気泡率を測定し、それらの測定値を算術平均した値を押出発泡板の独立気泡率とした。
製造した押出発泡体の表面状態を目視により、以下の基準にて評価した。
◎:表面に凹凸や穴あきが見られず、表面平滑性が特に優れた良好なもの
○:表面に穴あきや凹凸がほとんど見られず、表面が平滑であるもの
△:ダイ内部で内部発泡は生じないが、表面に穴あきや凹凸がみられ、表面が平滑でないもの
×:ダイ内部で内部発泡を起こしてしまい、表面に凹凸や穴あきが見られたもの
一方、ポリアルキレンカーボネート系樹脂を添加しなかった比較例1の発泡体は、小気泡が発生しており、気泡径がばらついていたため、所望の見掛け密度が得られなかった。また、厚み方向の平均気泡径が0.23mm、気泡径の変動係数(Cv)が72%となり、発泡体の表面状態が△となり表面状態が良好ではなかった。
これに対して、ポリアルキレンカーボネート系樹脂を添加せず、かつ水の量を0.95mol/kgに増量した比較例2では、ダイ内部で内部発泡を起こしてしまい、表面に凹凸や穴あきが見られ、所望とする押出発泡体を得ることができなかった。
実施例14は、使用するポリアルキレンカーボネート系樹脂を変更した例であり、分子量の異なるポリアルキレンカーボネート系樹脂であっても平均気泡径が拡大され、また気泡径の変動係数(Cv)も小さくすることができ、得られた押出発泡体の表面状態は◎と極めて良好であった。
Claims (3)
- ポリスチレン系樹脂と、炭素数3〜5の飽和炭化水素及び水を含む物理発泡剤と、臭素系難燃剤とを混練してなる発泡性樹脂溶融物を押出して独立気泡率85%以上の押出発泡体を製造する方法において、該発泡性樹脂溶融物に、ポリプロピレンカーボネート系樹脂が配合されていることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
- 前記ポリプロピレンカーボネート系樹脂の配合量がポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
- 前記ポリスチレン系樹脂100重量部に対する水の配合量が1.5重量部以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
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