JPH10251434A - ポリスチレン系樹脂板状発泡体の製造方法 - Google Patents

ポリスチレン系樹脂板状発泡体の製造方法

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JPH10251434A
JPH10251434A JP9072631A JP7263197A JPH10251434A JP H10251434 A JPH10251434 A JP H10251434A JP 9072631 A JP9072631 A JP 9072631A JP 7263197 A JP7263197 A JP 7263197A JP H10251434 A JPH10251434 A JP H10251434A
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polystyrene resin
polystyrene
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広行 極楽
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 押出機内でポリスチレン系樹脂と発泡剤とを
溶融混練した後、この発泡性組成物を押出機から低圧雰
囲気下に押出発泡せしめて発泡体を製造するにあたり、
従来、低密度(高発泡倍率)の発泡体を得ることが困難
とされていた発泡剤を用いた場合でも、低密度で機械的
強度等に優れたポリスチレン系樹脂発泡体を製造する方
法を提供する。 【解決手段】 ポリスチレン系樹脂に発泡剤を含有させ
てなる発泡性組成物を押出発泡させてポリスチレン系樹
脂板状発泡体を製造する方法において、220℃の温度
条件下で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角
周波数:ω=10-1〜101 (rad/sec.)の範
囲において、貯蔵弾性率:G´の傾き値が0.8〜1.
2の範囲にあり、且つZ平均分子量が5×105 以上
で、重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの
比:Mw/Mnが3.2未満のポリスチレン系樹脂を原
料樹脂として用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は主に建築物の壁、
床、屋根等の断熱材や畳芯材等として好適に使用される
ポリスチレン系樹脂板状発泡体の製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】ポリスチレン系樹脂板状発泡体は、優れ
た断熱性及び良好な機械的強度を有することから断熱材
等の用途に幅広く用いられている。
【0003】ポリスチレン系樹脂板状発泡体の製造方法
としては、従来より種々の方法が知られているが、一般
には、発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂の発泡性組
成物を、押出機内より低圧雰囲気下に押出発泡せしめて
発泡体を得る押出発泡法が採用されている。
【0004】従来、ポリスチレン系樹脂板状発泡体を製
造するために用いる発泡剤としては、気体状態での熱伝
導率が空気に比べて低く、また、ポリスチレン系樹脂に
対する透過速度が空気に比べて極めて遅いため、得られ
る発泡体の経時による断熱性の低下を防止し易いという
理由から、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロ
メタン、トリクロロトリフロロエタン等の塩素化フッ素
化炭化水素(以下、CFCと称する。)が広く用いられ
ていた。
【0005】しかしながら、これらのCFCは、大気中
で分解され難くオゾン層まで到達して分子中の塩素原子
がオゾン層を破壊するという問題を有しているので、環
境保護の観点から、近年、その使用が制限されている。
このためポリスチレン系樹脂発泡体の製造に用いられて
いるCFCを、分子中に水素原子を有し大気中で比較的
分解され易いオゾン破壊係数の小さい塩素化フッ素化炭
化水素(以下、HCFCと称する)や、分子中に水素原
子を有し且つ塩素原子を有していないオゾン破壊係数が
0のフッ素化炭化水素(以下、HFCと称する)に代替
移行することが急務となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、押出発泡法
によりポリスチレン系樹脂板状発泡体を製造する場合、
発泡性組成物の発泡は、該組成物が押出機内よりも低圧
雰囲気下に押出された後に始まらなければならない。発
泡性組成物が押出機内から押し出される前に、発泡性組
成物内の発泡剤の分離や気化が生じて押出機内のダイス
内部で発泡が起こると、均一な気泡構造が得られないば
かりか、発泡体の外観が著しく悪化し、更には押出機の
運転条件も不安定になり、良好な発泡体を得ることがで
きなくなってしまう。このため押出機内のダイス内部に
おける圧力を、発泡剤の分離や気化が起こらないような
一定以上の高い圧力に維持しておく必要がある。
【0007】しかしながら、前記HCFCやHFCは、
発泡剤として従来より用いられてきたCFCに比べ、ポ
リスチレン系樹脂との相溶性や均一分散性に劣るものが
あり、そのようなHCFCやHFCを発泡剤として用い
ると、押出機内で原料樹脂と発泡剤とが分離し、通常使
用されているフラットダイスの内部で発泡が起こり易く
なってしまう。そして、このような傾向は発泡剤の使用
量を多くしたときに顕著となるが、特に上記HCFCや
HFCを発泡剤として用いた場合には、発泡剤の使用量
を多少多くしただけで押出機内のリップ付近における樹
脂の圧力を高く維持することが困難となる。このため、
ポリスチレン系樹脂との相溶性に劣るHCFCやHFC
を発泡剤として用いた場合、低密度のポリスチレン系樹
脂発泡体を得るのに必要十分な量の発泡剤を添加するこ
とができず、従って高発泡倍率(低密度)の発泡体を得
ることは困難であった。
【0008】一方、押出温度を低くして発泡性組成物の
粘度を上げ、これによって押出機内のリップ付近の樹脂
圧力を高く保つようにすれば、押出機内のダイス内部に
おいて、発泡剤の原料樹脂からの分離や気化が生じるの
を防ぐことが一応可能である。
【0009】しかしながら、この場合には、発泡性組成
物の温度が低くなっているので、押出発泡後、発泡体の
温度が原料樹脂の熱変形温度を短時間で下回ってしま
い、このため発泡開始から終了までの時間が短く、発泡
剤の膨張力が残っている間に発泡性組成物の温度が原料
樹脂の熱変形温度未満になってしまう。従って、発泡剤
が十分に気化する前に発泡が終了する温度へ到達してし
まい、発泡剤の膨張力を十分に生かし切れないため、目
的とする低密度の発泡体が得られ難いという問題があ
る。
【0010】更に、MFRの小さな原料樹脂を用いるこ
とにより、押出温度を下げることなく発泡性組成物の粘
度を高くし、押出機内のリップ付近の樹脂圧力を高く維
持する方法も考えられる。
【0011】しかしながら、この場合には、原料樹脂の
MFRを極端に小さくしなければならず、その結果、原
料樹脂の流動性が損なわれてリップから押し出される樹
脂の流れに乱れが生じてしまうため、発泡成形性が悪く
なり、特に、発泡体を平滑な板状に成形するのが困難と
なってしまうという問題がある。
【0012】本発明者らは上記知見に鑑み鋭意研究を重
ねたところ、原料樹脂のMFRを発泡体の発泡成形性が
損なわれない範囲としたまま押出機内のリップ付近での
樹脂の圧力を高くするために、原料樹脂のz平均分子
量:Mzを5×105 以上にして該原料樹脂中に高分子
量成分が多く含まれるようにするとともに、重量平均分
子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比:Mw/Mnを
3.2以上として原料樹脂の分子量分布を広くし、低分
子量の成分もある程度以上含まれるようにして低分子量
成分の存在により原料樹脂の流動性を確保することで、
ポリスチレン系樹脂との相溶性に劣るHCFCやHFC
を発泡剤として用いた場合であっても低密度のポリスチ
レン系樹脂板状発泡体を良好に製造することができるこ
とを見出して先に提案した(特願平8−298120
号)。しかしながら更に本発明者等は鋭意研究した結
果、動的粘弾性測定によって求められる貯蔵弾性率:G
´が特定の条件を満たし、Mw/Mnが3.2未満であ
るポリスチレン系樹脂を用いると、HCFCやHFCの
ポリスチレン系樹脂との相溶性によらず、低密度で優れ
た板状のポリスチレン系樹脂発泡体が得られるととも
に、上記方法よりも更に機械的強度等に優れたポリスチ
レン系樹脂発泡体を得ることができることを見出し本発
明を完成するに至った。
【0013】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明のポリスチ
レン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリスチレン系樹脂に
発泡剤を含有させてなる発泡性組成物を押出発泡させて
ポリスチレン系樹脂板状発泡体を製造する方法におい
て、上記ポリスチレン系樹脂が、220℃の温度条件下
で振動歪みを与える動的粘弾性測定において、角周波
数:ω=10-1〜101 (rad/sec.)の範囲に
おいて、貯蔵弾性率:G´の傾き値が0.8〜1.2の
範囲にあり、且つZ平均分子量が5×105 以上で、重
量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比:Mw
/Mnが3.2未満の樹脂であることを特徴とする。本
発明方法において、発泡剤としては1,1,1,2−テ
トラフロロエタン又はそれを含む混合物が好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明において原料樹脂として使
用するポリスチレン系樹脂としては、例えばスチレンホ
モポリマーや、スチレンを主成分とするスチレン−無水
マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、
スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アク
リロニトリル−ブタジエン共重合体、耐衝撃性ポリスチ
レン等を挙げることができる。上記スチレン系共重合体
におけるスチレン成分含有量は好ましくは70重量%以
上である。
【0015】本発明において原料として用いるポリスチ
レン系樹脂は、220℃の温度条件下で振動歪みを与え
る動的粘弾性測定において、角周波数:ω=10-1〜1
1(rad/sec.)の範囲において、貯蔵弾性
率:G´の傾き値が0.8〜1.2の範囲にあるもので
あり、好ましくはこの傾き値が0.9〜1.1の範囲に
あるものである。
【0016】上記貯蔵弾性率:G´の傾き値は、動的粘
弾性測定機(例えばレオメトリック・サイエンティフィ
ック・エフ・イー社製のダイナミックアナライザーSR
200型等)により測定することができる。貯蔵弾性
率:G´の傾き値とは、220℃に温度を保持した状態
で、線形領域内において角周波数:ωを変化させて動的
粘弾性測定を行って得た貯蔵弾性率:G´の対数値を縦
軸に、G´に対応するωの対数値を横軸にプロットした
結果より求めることができる。本発明方法において動的
粘弾性の測定は、厚さ2mmの測定用サンプル樹脂板を
調製し、このサンプルを動的粘弾性測定機の直径25m
mのパラレルプレート間に挟んで220℃に昇温し、更
に約10分間放置した後、線形領域内(応力1×104
dyn/cm2 )で行った。本発明における貯蔵弾性
率:G´の傾き値とは、上記のようにして求めたG´の
対数値を縦軸に、そのG´に対応するωの対数値を横軸
にプロットし、べき乗回帰計算により、回帰式
【0017】
【数1】G´=A×ωB ・・・(1)
【0018】のBの値として求められる。尚、ω=10
-1〜101 の範囲におけるωとG´との値は対数値のグ
ラフ上においてほぼ等間隔に選択される10点以上のデ
ータを基に算出するものとする。図1に動的粘弾性測定
によって求められるω=10-1〜102 の範囲のωに対
するG´を表す曲線A、ω=10-1〜101 の範囲にお
いてべき乗回帰計算により求めたωとG´の近似的な直
線関係を表す直線B、及びωに対するtanδ(損失弾
性率G´´÷貯蔵弾性率G´)を表す曲線Cを示す。直
線Bは、ω=10-1〜101 の範囲におけるグラフ上、
等間隔の11点のデータ(下記表1中、No.6〜16
のωとG´の値)を基にべき乗回帰計算により求めた直
線であり、G´の傾きは1.02である。
【0019】
【表1】
【0020】尚、貯蔵弾性率はポリスチレン系樹脂の溶
融状態において、測定温度をより低くした場合には貯蔵
弾性率:G´の傾き値は小さくなり、より高くした場合
には貯蔵弾性率:G´の傾き値は大きくなる傾向がある
ため測定温度を特定する必要がある。本発明者等が貯蔵
弾性率の測定温度として220℃を選定した理由は次の
通りである。即ち、ダイスリップ内での発泡剤を含む樹
脂の粘性挙動を非ニュートン流体の矩形スリットと仮定
し、一般的に用いられている式より、ダイスリップ内の
見かけ粘度を求める。また、フローテスタの等速昇温試
験(装置:島津フローテスタCFT−500、オリフィ
ス:直径1mm、ランド長:2mm、荷重:10kg、
昇温速度:5℃/分)によって樹脂の見かけ粘度を求め
る。ここでは、フローテスタによって求められた220
℃での樹脂の見かけ粘度が、ダイスリップ内での見かけ
粘度とほぼ一致するため、動的粘弾性の測定温度を22
0℃に選定した。
【0021】上記G´の傾き値が0.80未満の場合に
は、発泡時の樹脂の弾性が高いことにより気泡の成長が
妨げられ、非常に細かい気泡構造のものしか得られなく
なり、発泡成形性が悪くなり、大幅な低密度化を図るこ
とができなくなる。またG´の傾き値が1.20を超え
る場合には、リップ付近の樹脂圧力を保持することが困
難となり、圧力を保持するためには発泡温度を下げなけ
ればならなくなり、この結果、発泡倍率の向上が望めな
くなる。
【0022】本発明で用いる原料樹脂は、また、z平均
分子量が5×105 以上のものである。z平均分子量が
5×105 未満の場合、原料樹脂中の高分子量成分が少
ないため、機械的強度に優れた発泡体が得られ難くな
る。
【0023】本発明で用いる原料樹脂としては、更に重
量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比:Mw
/Mnが3.2未満のものを用いる。Mw/Mnが3.
2以上の場合には低分子量成分が多く含まれるため、機
械的強度が低下し易くなるが、Mw/Mnが3.2未満
のものを用いることにより、機械的強度に優れた発泡体
を得ることが可能となる。
【0024】本発明において、上記z平均分子量、重量
平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーション
クロマトグラフィー法により求めるものとし、原料樹脂
10mgをテトラヒドロフラン20mlに溶解し、これ
を分別カラムに通して分子量を測定する。詳しくは、上
記分子量は、島津製作所社製GPC−LC3A型(HS
Gシリーズ充填カラムHSG−60、HSG−50、H
SG−40を直列に連結したもの)と島津製作所社製示
差屈折計検出機RID−4型を使用し、カラム温度:室
温、流速:1.7ml/分の測定条件にて測定される値
を採用した。
【0025】貯蔵弾性率:G´の傾き値、z平均分子量
及びMw/Mnの値が、上記した本発明の範囲内となる
ポリスチレン系樹脂は、例えば3官能以上の有機過酸化
物を重合開始剤として用い、以下、従来周知の通りスチ
レンモノマーを重合して、本発明にて特定される範囲の
ものを重合条件等の調整により得ることができる。また
2種以上のポリスチレン系樹脂混合物やポリスチレン系
樹脂とその他の樹脂との混合物の混合比等を検討して上
記本発明の範囲内のポリスチレン系樹脂を調製すること
もできる。
【0026】本発明において原料樹脂として用いるポリ
スチレン系樹脂は、2種以上のポリスチレン系樹脂の混
合物であっても良い。この場合、混合によって貯蔵弾性
率:G´の傾き値、z平均分子量及びMw/Mnの値
が、本発明の範囲内のものとなるように調製する。本発
明において用いるポリスチレン系樹脂は、MFRが1〜
10g/10分のもの、更に1〜5g/10分のものが
好ましい。
【0027】必要に応じて上記原料樹脂中には、本発明
の所期の目的を妨げない範囲で、例えばタルク等の気泡
調整剤、ヘキサブロモシクロドデカン等の難燃剤、流動
パラフィン等の流動性向上剤等の各種添加剤や、更に着
色剤、熱安定剤、充填剤等の各種添加剤を添加すること
もできる。
【0028】本発明方法において用いる発泡剤として
は、ポリスチレン系樹脂に対する透過速度が空気に比べ
て極めて遅いために、得られる発泡体の経時による断熱
性能の低下を防止し易く、しかもオゾン層を破壊する虞
れがないか或いは極めて少ないHCFC、HFCが好ま
しい。本発明方法では、貯蔵弾性率:G´の傾き値、z
平均分子量及びMw/Mnの値が特定の範囲にあるポリ
スチレン系樹脂を原料樹脂として用いたことにより、H
CFCやHFCを発泡剤として用いても、曲げ強度等の
機械的強度が高く、断熱性に優れた低密度のポリスチレ
ン系樹脂板状発泡体を良好に製造することができる。
尚、1,1,1,2−テトラフロロエタン等は、従来よ
り発泡剤として用いられてきたCFCに比較してポリス
チレン系樹脂との相溶性や均一分散性に劣るため、発泡
体の低密度化を図り難い発泡剤とされていたが、このよ
うな発泡剤を用いても、上記と同様の効果が得られる。
【0029】上記、HCFCとしては例えば、1−クロ
ロ−1,1−ジフロロエタン(HCFC−142b)、
1,1−ジクロロ−1−フロロエタン(HCFC−14
1b)、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフロロエ
タン(HCFC−124)、1,1−ジクロロ−2,
2,2−トリフロロエタン(HCFC−123)、クロ
ロジフロロメタン(HCFC−22)等が挙げられ、H
FCとしては例えば、1,1,1,2−テトラフロロエ
タン(HFC−134a)、1,1−ジフロロエタン
(HFC−152a)、1,1,1−トリフロロエタン
(HFC−143)、トリフロロメタン(HFC−2
3)、ジフロロメタン(HFC−32)、1,1,1,
2,2−ペンタフロロエタン(HFC−125)等が挙
げられる。これらの発泡剤は2種以上を混合して用いて
も良い。また特に、HFC−134aを発泡剤全量に対
して30モル%以上使用する場合、本発明における前記
強度、発泡倍率向上効果はより顕著なものとなる。
【0030】本発明において原料樹脂に対する発泡剤の
使用量は、得ようとする発泡体の密度に応じて適宜選定
されるが、一般には、密度20〜40kg/m3 の発泡
体を得るための発泡剤の添加量は、原料樹脂1kgあた
り0.8〜2.0モルが好ましい。また、本発明では、
発泡体の断熱性を阻害しない程度に、補助成分として上
記したHCFCやHFC以外の発泡剤を、発泡剤全量に
対して20〜90モル%混合して用いることが、発泡倍
率向上効果、発泡体の気泡径調整効果の面で好ましい。
このような発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタ
ン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネ
オペンタン等の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチ
ル、塩化エチレン等の塩素化炭化水素、各種アルコー
ル、二酸化炭素等が挙げられ、これらの1種又は2種以
上を混合して用いることができる。また、補助成分とし
て例示した上記HCFCやHFC以外の発泡剤だけを使
用した場合でも、本発明方法によれば、従来法に比べて
より低密度の板状発泡体を得ることができる。
【0031】発泡体を製造するには、例えば押出機内で
原料樹脂に発泡剤を添加してこれらを溶融混練し、次い
でこの溶融混練物からなる発泡性組成物を押出機内より
も低圧の雰囲気に押出して発泡せしめる方法が採用され
るが、発泡性組成物を押出機のリップから押出す際の押
出温度は、発泡性組成物が発泡に適した溶融粘度となる
ような温度であることが必要がある。発泡に適した溶融
粘度となるような押出温度は、使用するポリスチレン系
樹脂の種類、ポリスチレン系樹脂への流動性向上剤の添
加の有無、流動性向上剤を添加する場合にはその種類や
添加量、更に発泡剤の添加量や発泡剤の成分組成等によ
っても異なるが、一般的には110〜140℃である。
【0032】本発明方法は、特に厚みが10〜200m
m、密度が20〜40kg/m3 のポリスチレン系樹脂
板状発泡体の製造方法として好適である。また幅が厚み
の5倍以上の発泡体を製造する場合に好適な方法であ
る。
【0033】
【実施例】次に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に
詳細に説明する。
【0034】実施例1 図1の直線Bに示した、貯蔵弾性率:G´の傾き値が
1.02であるポリスチレン系樹脂(Z平均分子量=
5.44×105 、Mw/Mn=2.65、MFR=
1.6g/10分)を原料樹脂として用い、この樹脂1
00重量部当たりに対し、気泡調整剤としてタルクを
0.3重量部、難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカ
ンを2重量部添加し、更に熱安定剤を添加混合して樹脂
組成物を調製した。尚、難燃剤と熱安定剤の添加には、
両者を含むマスターバッチを用いた。
【0035】口径65mm、90mm、150mmのシ
リンダーが順次連結された押出機の、口径65mmのシ
リンダー側に上記樹脂組成物を供給して溶融するととも
に、発泡剤として1,1,1,2−テトラフロロエタ
ン、塩化メチル、イソブタンの混合物(モル比で5:
4:1の混合物)を、原料樹脂1kg当たり1.15モ
ルの割合で圧入して樹脂組成物と溶融混練した。この発
泡性組成物を、口径65mmのシリンダー側から、口径
90mmのシリンダー、口径150mmのシリンダーへ
と順次移送し、口径150mmのシリンダーの押出機内
において、表2に示す押出温度に調整した後、押出機先
端のリップから押出発泡させて発泡体を得た。押出温度
とその時のリップ付近の圧力を表2にあわせて示す。
【0036】尚、リップとしては先端に幅115mm、
間隙1mmの樹脂排出口を備えたフラットダイスを使用
した。またリップの先端には、樹脂排出口より若干大き
い入口と、厚さ26mm、幅280mmの出口とを有す
る通路を形成してなり、通路内容積が入口付近から出口
に向かって緩やかに拡大した後、平行となる構造のフッ
素樹脂製の成形具を接続しておいた。
【0037】得られた発泡体の密度、曲げ強度、及び発
泡成形性の評価を表2にあわせて示す。尚、曲げ強度は
以下の方法で測定した。また押出温度とリップ付近の樹
脂圧力との関係を図2に、リップ付近の樹脂圧力と得ら
れた発泡体の密度との関係を図3に、また得られた発泡
体の曲げ強度と密度との関係を図4に示す。
【0038】〔曲げ強度の測定〕試料幅を50mm、支
点間距離を150mmとし、JIS−A9511に準拠
して求めた。
【0039】実施例2 貯蔵弾性率:G´の傾き値、Z平均分子量、Mw/Mn
の値、MFRが表2に示す値のポリスチレン系樹脂(2
種類のポリスチレン系樹脂を混合することにより調製)
を用いた他は、実施例1と同様にして押出発泡を行い発
泡体を得た。押出温度とその時のリップ付近の圧力及
び、得られた発泡体の性状を表2にあわせて示す。また
押出温度とリップ付近の樹脂圧力との関係を図2に、リ
ップ付近の樹脂圧力と得られた発泡体の密度との関係を
図3に、また得られた発泡体の曲げ強度と密度との関係
を図4に示す。
【0040】比較例1〜5 貯蔵弾性率:G´の傾き値、Z平均分子量、Mw/Mn
の値、MFRが表2に示す値のポリスチレン系樹脂を用
いた他は、実施例1と同様にして押出発泡を行い発泡体
を得た。押出温度とその時のリップ付近の圧力及び、得
られた発泡体の性状を表2にあわせて示す。また押出温
度とリップ付近の樹脂圧力との関係を図2に、リップ付
近の樹脂圧力と得られた発泡体の密度との関係を図3
に、また得られた発泡体の曲げ強度と密度との関係を図
4示す。尚、比較例4では発泡体が得られなかったた
め、図2〜図4には比較例4の結果を示していない。
【0041】
【表2】
【0042】※1:ダイスのリップ付近内部で発泡が起
こり、良好な発泡体が得られなかった。 ※2:発泡成形が困難であり、板状の発泡体を得ること
ができなかった。
【0043】上記実施例及び比較例に示す場合には、リ
ップ付近の樹脂圧力(発泡性組成物の圧力)が45kg
/cm2 程度を境にして、これよりも樹脂圧力が低くな
るとダイスのリップ付近内部で発泡が起こり良好な発泡
体が得られなくなった。
【0044】図2に示す結果より、同じ押出温度では実
施例の方が比較例よりもリップ付近の樹脂圧力を高く維
持できる。従って、比較例1〜3及び比較例5の場合に
はリップ付近の樹脂圧力が発泡不可領域内にあるような
押出温度であっても、実施例1、2ではリップ付近の樹
脂圧力が発泡可能領域内にあり、十分に満足できる低密
度の発泡体を得ることができるので、実施例1、2では
比較例1〜3及び比較例5の場合よりも押出温度を高く
することができることが判る。
【0045】また、図3に示す結果より、リップ付近の
樹脂圧力を押出機のダイスのリップ付近内部で発泡が起
こらない限界まで低くした場合も、比較例1〜3及び比
較例5の場合よりも、実施例1、2の場合の方が低密度
の発泡体を得ることができることが判る。
【0046】更に、図4に示すように実施例1、2で得
られたポリスチレン系樹脂板状発泡体の曲げ強度を、比
較例1〜3及び比較例5で得られた発泡体の曲げ強度と
比較すると、同じ発泡体密度において実施例1、2で得
られたものの方が優れることが判る。
【0047】このように、本発明によれば低密度のポリ
スチレン系樹脂板状発泡体を得るための押出温度やリッ
プ付近の樹脂圧力等の成形条件が広くなり、低密度のポ
リスチレン系樹脂板状発泡体を良好に製造することがで
きる。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように本発明方法は、貯蔵
弾性率:G´の傾き値、z平均分子量、Mw/Mnの値
が特定の範囲にあるポリスチレン系樹脂を原料樹脂とし
て用いたことにより、HCFCやHFC等の発泡剤を用
いて低密度のポリスチレン系樹脂発泡体を容易に得るこ
とができるとともに、HCFCやHFCは、CFCに比
べて大気中で比較的容易に分解され易いため、環境保護
の上でも利点も有する(尚、従来、低密度(高発泡倍
率)のポリスチレン系樹脂発泡体を得ることが困難とさ
れていた、HFC−134a等のポリスチレン系樹脂に
対して相溶性の悪い発泡剤を使用した場合であっても上
記効果が得られる。)。また本発明方法によれば、低密
度であるとともに、曲げ強度等の機械的強度が高く、断
熱性に優れたポリスチレン系樹脂板状発泡体を良好に製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】220℃における動的粘弾性測定によって得ら
れる、ωの値に対応するG´とtanδの値をプロット
したグラフである。
【図2】実施例及び比較例における発泡成形の際の押出
温度と、リップ付近の樹脂圧力との関係を示すグラフで
ある。
【図3】実施例及び比較例における発泡成形の際のリッ
プ付近の樹脂圧力と、得られた発泡体の密度との関係を
示すグラフである。
【図4】実施例及び比較例にて得られた発泡体の曲げ強
度と、発泡体の密度との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B29K 105:04 B29L 7:00

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリスチレン系樹脂に発泡剤を含有させ
    てなる発泡性組成物を押出発泡させてポリスチレン系樹
    脂板状発泡体を製造する方法において、上記ポリスチレ
    ン系樹脂が、220℃の温度条件下で振動歪みを与える
    動的粘弾性測定において、角周波数:ω=10-1〜10
    1 (rad/sec.)の範囲において、貯蔵弾性率:
    G´の傾き値が0.8〜1.2の範囲にあり、且つZ平
    均分子量が5×105 以上で、重量平均分子量:Mwと
    数平均分子量:Mnとの比:Mw/Mnが3.2未満の
    樹脂であることを特徴とするポリスチレン系樹脂板状発
    泡体の製造方法。
  2. 【請求項2】 発泡剤が1,1,1,2−テトラフロロ
    エタン又はそれを含む混合物である請求項1記載のポリ
    スチレン系樹脂板状発泡体の製造方法。
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