JP3676496B2 - 自動二輪車のエンジン冷却装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体フレームに搭載されたエンジンを覆うカウリング内に、作動時エンジンに冷却風を供給し得る冷却ファンを設けた、自動二輪車のエンジン冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水冷式のエンジンをカウリングで覆った自動二輪車において、エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、このラジエータを通風により冷却する電動式のラジエータファンとをカウリング内に配設してなるエンジン冷却装置は広く知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の上記エンジン冷却装置は、一般に、エンジンの冷却水が比較的低温であるときは、冷却水の循環をエンジン内部で留めると共に、ラジエータファンを停止させ、且つエンジンのアイドリング回転数を高めに設定して、エンジンの暖機を促進するようにしている。
【0004】
しかしながら、このようなエンジンの暖機運転中、即ちフアストアイドル状態でも、特に排気管の根元周縁部は排気熱による昇温が早く、過熱され易い。このため、合成樹脂製カウリングの、排気管に近接した部位には断熱シートを裏張する等してカウリングへの熱害を防止するようにしているが、こうしたことはカウリングの構造を複雑化させるのみならず、その重量増を招くことになり、好ましくない。
【0005】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、エンジンのフアストアイドル状態での過熱を防止し得る、前記自動二輪車の冷却装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、車体フレームに搭載されたエンジンを覆うカウリング内に、作動時エンジンに冷却風を供給し得る冷却ファンを設けた、自動二輪車のエンジン冷却装置において、少なくとも、変速機が中立で且つエンジン回転数がフアストアイドル回転数以上の状態が一定時間以上継続した前記エンジンのフアストアイドル状態のときに、前記冷却ファンを作動するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また上記目的を達成するために、請求項2の発明は、車体フレームに搭載されたエンジンを覆うカウリング内に、作動時エンジンに冷却風を供給し得る冷却ファンを設けた、自動二輪車のエンジン冷却装置において、少なくとも、前記エンジンの絞り弁がフアストアイドル開度以下で且つエンジン回転数がフアストアイドル回転数以上の状態が一定時間以上継続した前記エンジンのフアストアイドル状態のときに、前記冷却ファンを作動するようにしたことを特徴とする
【0009】
さらに請求項3の発明は、請求項1又は2の前記特徴に加えて、前記冷却ファンを、水冷式エンジンの冷却用ラジエータに通風させる電動式のラジエータファンとしたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0011】
図1は自動二輪車の側面図、図2はその平面図、図3はその正面図である。これらの図面において、車体フレームFは、ヘッドパイプ1と、このヘッドパイプ1から互いに離隔しながら後方且つ下向きに延出する左右一対のメインフレーム2と、これらメインフレーム2の後端に結合されて下方へ延びる左右一対のセンタフレーム3と、これらセンタフレーム3の上部に結合されて後方且つやや上向きに延びるシートステー4とから構成され、ヘッドパイプ1に、前輪Wfを支持するフロントフォーク5が操向可能に軸支され、また左右のセンタフレーム3に、後輪Wrを支持するリヤフォーク6が上下揺動可能に軸支される。
【0012】
エンジンEは、水冷直列多気筒型(図示例では4気筒)に構成されたものであって、センタフレーム3の直前で左右のメインフレーム2間にヘッド部Ehを挿入するように配置されると共に、これらメインフレーム2及びセンタフレーム3にボルト結合される。このエンジンEの動力は、エンジンEに組込まれた変速機及びチェン伝動装置7を介して後輪Wrに伝達される。
【0013】
また左右のメインフレーム2上には、燃料タンク8が架橋状態で取付けられ、シートステー4上にはタンデムシート9が取付けられる。
【0014】
エンジンEのヘッド部Eh背面には多連式気化器10が装着され、この気化器10の吸気道入口10a(図5参照)を開口させるエアクリーナ11は燃料タンク8に覆われるように両メインフレーム2間に配置されると共に、エンジンEのヘッド部Ehに数個所でラバーマウントされる。
【0015】
エンジンEのヘッド部Eh前面に装着される複数の排気管13は、エンジンEの直下に配管されると共に左右2組に分けられた後、後輪Wrの左右両外側に配設される左右一対の排気マフラ14に接続される。
【0016】
図4を併せて参照するに、エンジンEのヘッド部Eh前面に対面して配置されるラジエータ15は、上部をメインフレーム2に、下部をエンジンEにステー16を介して支持され、このラジエータ15の後面側に配置される電動式のラジエータファン17(冷却ファン)はファンカバー18を介してラジエータ15に支持される。ラジエータ15は公知のようにエンジンEの冷却水路に接続され、その冷却水が所定の高温状態となると、エンジンEとの間で冷却水を循環させてその冷却を図る。またラジエータファン17は、その作動によりラジエータ15に前方から後方へ空気を流してラジエータ15の放熱を促し、エンジンの冷却効果を高める。このラジエータ15の上部背面に、エンジンEのヘッド部Ehからの輻射熱を遮るヒートガード板19が配設される。
【0017】
車体フレームF及びエンジンEには、フロントフォーク5の上部前面からエンジンE及びラジエータ15を覆うカウリングCが取付けられる。このカウリングCの前壁には、ヘッドライト20がそのレンズ面を該前壁外面に連続させて取付けられ、またこのヘッドライト20の直下にエンジンEの吸気用空気取入孔21が設けられ、さらにラジエータ15及びエンジンEに向って開口する主冷却風取入孔22が設けられる。またカウリングCの左右側壁には、エンジンEのヘッド部Ehに向って開口する第1副冷却風取入口23と、排気管13に向って開口する第2副冷却風取入口24が設けられる。カウリングCの後面は開放されている。したがって、上記冷却風取入口22,23,24からカウリングC内で流入した走行風はラジエータ15及び又はエンジンEを冷却した後、カウリングCの後方に排出される。
【0018】
図5は自動二輪車の前部を、前記燃料タンク8の取外し状態で示す平面図、図6は図5の6−6線断面図である。これら図面に示すように、カウリングCの左右内壁には、前記一対の吸気用空気取入孔21にそれぞれ連通して後端を左右のメインフレーム2の前部近傍で開口する左右一対の吸気チャンバ27が形成される。一方、前記エアクリーナ11には、そのクリーナケース11a前壁を貫通する左右一対の吸気ダクト26が付設されており、これら吸気ダクト26は、それぞれ同側のメインフレーム2を跨ぐように前方へ延出して同側の吸気チャンバ27に前端の入口を突入させている。
【0019】
而して、吸気チャンバ27には、吸気用空気取入孔21から取入れた比較的綺麗で低温の空気がエンジンEの熱の影響を殆ど受けることなく蓄えられ、この空気が吸気ダクト26からエアクリーナ11及び気化器10を順次経由してエンジンEに吸入されるので、常にその吸気温度を低く抑え得ると共に、吸気圧に対する走行風の動圧の影響をなくすることができ、これにより安定した吸気特性をエンジンEに与えることができる。しかも、吸気チャンバ27は、カウリングCを利用して形成されるので、その構造が簡単であり、その上、カウリングC内のデッドスペースの有効利用が図られることになり、自動二輪車のコンパクト化に寄与し得る。
【0020】
図7は前記ラジエータファン17の電動モータの作動制御回路を示すもので、その電動モータ17aの通電回路にはサーモスイッチ31と、リレー32の接点32aとが並列に接続される。サーモスイッチ31はエンジンEに付設されたもので、その冷却水温度が100℃以上でONするようになっている。リレー32のコイル32bへの通電回路にはON−OFF用のトランジスタ33が接続され、このトランジスタ33のベース側にタイマ34及びAND回路35が順次接続される。そしてAND回路35の一方の入力端子にはエンジン回転数センサ36の出力信号が入力され、他方の入力端子には変速中立センサ37の出力信号が入力される。
【0021】
エンジン回転数センサ36は、エンジンEのフアストアイドル回転数(例えば2,000rpm )以上の回転数を検知して高レベル信号を出力するようになっており、変速中立センサ37は、エンジンEに組込まれた変速機の中立状態を検知して高レベル信号を出力するようになっている。この変速中立センサ37の出力信号は、また、変速機の中立状態を示すニュートラルランプ38の点灯にも用いられる。
【0022】
タイマ34は、それに対する入力信号が一定時間(例えば10秒間)以上継続すると、その継続中、高レベル信号を出力するようになっている。
【0023】
而して、電動モータ17aは、エンジンEの冷却水が100℃以上に達したとき、サーモスイッチ31がONすることにより作動する他、エンジンEのフアストアイドル状態でも作動する。即ち、エンジン回転数がフアストアイドル回転数以上に達してエンジン回転数センサ36が高レベル信号を出力し、同時に変速機が中立状態になって変速中立センサ37が高レベル信号を出力したとき、この両出力信号を受けたAND回路35は高レベル信号をタイマ34に出力する。そしてこのような状態が所定時間以上継続したとき、これをフアストアイドル状態と認識してタイマ34はON指令信号を出力し、これを受けたトランジスタ33はON状態となってリレー32を作動させ、電動モータ17aを作動させるのである。
【0024】
したがって、エンジンEが暖機運転中で、その冷却水が充分に暖まっておらず、エンジンE及びラジエータ15間で冷却水の循環が開始していない状態でも、エンジンがフアストアイドル状態であれば、電動モータ17aの駆動によるラジエータファン17の作動により、エンジンEのヘッド部Eh周り、特に排気管13上流部に冷却風を供給し、該部の過度の昇温を抑えることができる。
【0025】
上記AND回路25、タイマ34及びトランジスタ33は、エンジンEの点火ユニット39に組込まれ、回路の一部共用化が図られる。
【0026】
図8は上記電動モータ17aの駆動制御回路の変形例を示すもので、前例の変速中立センサ37に代えて、前記気化器10における絞り弁のフアストアイドル開度以下の状態を検出して高レベル信号を出力するスロットルセンサ41を設けたものである。その他の構成は前例と同様であるので、図8中、前例と対応する部分にはそれと同一の符号を付す。
【0027】
而して、この変形例では、気化器10の絞り弁開度がフアストアイドル開度以下であり、且つエンジン回転数がフアストアイドル回転数以上である状態が一定時間以上継続した場合は、これをエンジンEのフアストアイドル状態と認識し、前例と同様に電動モータ17aを作動し、ラジエータファン17を駆動する。
【0028】
図9はエンジン用点火コイル43の取付構造を示す。点火コイル43は、コア43aと、これに巻装されるコイル部43bとからなっており、コイル部43bの両端面から突出したコア43aの両端に取付孔44が設けられている。この点火コイル43の支持部として、前記エアクリーナ11の合成樹脂製クリーナケース11aに、取付孔45を有する一対のブラケット46が一体成形され、これらにコア43aの両端部がディスタンスカラー47を挟んで重ねられ、取付孔44,45及びディスタンスカラー47を貫通するボルト48とそれに螺合するナット49とによりコア43aはブラケット46に固着される。
【0029】
このようにコア43a両端部の支持部として合成樹脂製のクリーナケース11aを利用すると、クリーナケース11aがコア43a両端部間の磁路遮断部材を兼ねることになり、簡単な構造で鉄損、渦電流損の影響による点火コイル43の性能低下を防ぐことができる。また、この場合、図5に示すように点火コイル43を前記吸気ダクト26の近傍に配置して、吸気ダクト28の吸気作用により点火コイル43の周囲に空気流を生じさせるようにすれば、点火コイル43の冷却をも図れて好都合である。
【0030】
図10及び図11は前記排気マフラ14及びピニオンステップ51の取付構造を示す。前記シートステー4には、後輪Wrの両外側に配置される左右一対のブラケット52が固着される。各ブラケット52は下端に後方屈曲部52aを有しており、この後方屈曲部52aの後端のボス53に、同側の排気マフラ14の上面に立設された支持片14aが取付ボルト54により固着される。この取付ボルト54には、ブラケット52から車体外方へ突出する延長軸部54aが一体に形成される。
【0031】
また後方屈曲部52aには、前記ボス53の前方に隣接する上下一対の支持片55が設けられており、これらにピニオンステップ51がヒンジピン56により取付けられる。このピニオンステップ51はブラケット52から車体外側方へ突出する使用位置と、後方上向きに倒れる格納位置とへ回動可能である。
【0032】
而して、タンデムシート9の後部に座った乗員がブーツを履いた足をピニオンステップ51に掛けると、そのブーツの踵が前記取付ボルト52の延長軸部52aに受止められ、その踵による排気マフラ14の傷つけが回避される。このように排気マフラ14用取付ボルト54を排気マフラ14に対する保護部材に兼用させたので、専用の保護部材を設ける必要がなく、部品点数の増加を抑えることができる。
【0033】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、ラジエータファン17をクラッチを介してエンジンEの回転部材に連結し、そのクラッチの断接によりラジエータファン17の作動を制御することもできる。
【0034】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、車体フレームに搭載されたエンジンを覆うカウリング内に、作動時エンジンに冷却風を供給し得る冷却ファンを設けた、自動二輪車のエンジン冷却装置において、冷却ファンを少なくともエンジンがフアストアイドル状態のとき作動するようにしたので、少なくともエンジンのフアストアイドル状態では冷却ファンの作動によりエンジンの過度の昇温を防止することができ、したがってカウリングにエンジンによる熱害対策を施す必要がなくなり、その構造の簡素化と軽量化に寄与することができる。
【0035】
また特に請求項1の発明によれば、エンジンのフアストアイドル状態を、変速機が中立で、且つエンジン回転数がフアストアイドル回転数以上の状態が一定時間以上継続したときとしたので、エンジンのフアストアイドル状態を簡単、的確に検出することができる。
【0036】
また特に請求項2の発明によれば、エンジンのフアストアイドル状態を、エンジンの絞り弁がフアストアイドル開度以下で、且つエンジン回転数がフアストアイドル回転数以上の状態が一定時間以上継続したときとしたので、エンジンのフアストアイドル状態を簡単、的確に検出することができる。
【0037】
また特に請求項3の発明によれば、冷却ファンを、水冷式エンジンの冷却用ラジエータに通風させる電動式のラジエータファンとしたので、ラジエータファンを利用してエンジンのフアストアイドル状態での過度の昇温を防ぐことができ、構造の複雑化が回避される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置を備えた自動二輪車の側面図
【図2】同自動二輪車の平面図
【図3】同自動二輪車の正面図
【図4】同自動二輪車を一部縦断して示す前部側面図
【図5】同自動二輪車を燃料タンクの取外し状態で示す前部平面図
【図6】図5の6−6線断面図
【図7】本発明のエンジン冷却装置におけるラジエータファンの電動モータ駆動制御回路図
【図8】同駆動制御回路の変型例を示す回路図
【図9】エンジン用点火コイルの取付構造を示す分解斜視図
【図10】前記自動二輪車の排気マフラ及びピニオンステップ取付部側面図
【図11】同取付部平面図
【符号の説明】
15・・・・ラジエータ
17・・・・冷却ファンとしてのラジエータファン
17a・・・電動モータ
34・・・・タイマ
36・・・・エンジン回転数センサ
37・・・・変速中立センサ
41・・・・スロットルセンサ
C・・・・・カウリング
E・・・・・エンジン
F・・・・・車体フレーム
Claims (3)
- 車体フレーム(F)に搭載されたエンジン(E)を覆うカウリング(C)内に、作動時エンジン(E)に冷却風を供給し得る冷却ファン(17)を設けた、自動二輪車のエンジン冷却装置において、
少なくとも、変速機が中立で且つエンジン回転数がフアストアイドル回転数以上の状態が一定時間以上継続した前記エンジン(E)のフアストアイドル状態のときに、前記冷却ファン(17)を作動するようにしたことを特徴とする、自動二輪車のエンジン冷却装置。 - 車体フレーム(F)に搭載されたエンジン(E)を覆うカウリング(C)内に、作動時エンジン(E)に冷却風を供給し得る冷却ファン(17)を設けた、自動二輪車のエンジン冷却装置において、
少なくとも、前記エンジン(E)の絞り弁がフアストアイドル開度以下で且つエンジン回転数がフアストアイドル回転数以上の状態が一定時間以上継続した前記エンジン(E)のフアストアイドル状態のときに、前記冷却ファン(17)を作動するようにしたことを特徴とする自動二輪車のエンジン冷却装置。 - 請求項1又は2記載のものにおいて、
前記冷却ファン(17)を、水冷式エンジン(E)の冷却用ラジエータ(15)に通風させる電動式のラジエータファンとしたことを特徴とする、自動二輪車のエンジン冷却装置。
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