JP3671175B2 - 麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法,麺製造方法並びに餃子・シューマイ等の皮の製造方法 - Google Patents

麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法,麺製造方法並びに餃子・シューマイ等の皮の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造技術に係るものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ラーメンや蕎麦等の麺にコシを与えることで、良好な食感を有し、茹で溶けが少なく茹で延び耐性に秀れた麺を製造する技術として、特許第3086679号公報のように、原料となる小麦粉に柿渋を加えて麺を製造する技術がある(以下、従来例という。)。
【0003】
この従来例は、前述のように、原料となる小麦粉に柿渋を加えて麺を製造することで、該柿渋が有するタンパク質凝集作用により、麺にコシを与え、茹で溶けや茹で延びが起こりにくい麺を製造する技術である。
【0004】
しかしながら、この従来例に係る製造方法により製造した麺は、添加するタンニン量が多い為、良好な味とならず且つコスト高となる問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するもので、食味の低下が起こらず、コスト高にもならず、更に、変色がなく食感も良好となる秀れた麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造技術を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨を説明する。
【0007】
小麦粉若しくは小麦粉調整物にポリフェノールを添加し麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品を形成するための生地を製造する方法であって、前記小麦粉若しくは小麦粉調整物にタンニン量が0.002乃至0.03%(重量)となるようにポリフェノールを添加した後に、炭酸カリウム,炭酸ナトリウム若しくはリン酸塩等のアルカリ性塩類及び食塩を添加し、その後、常法により麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地を形成することを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法に係るものである。
【0008】
また、請求項1記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法において、アルカリ性塩類及び食塩に、更にアルコールを添加したことを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法に係るものである。
【0009】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法であって、前記小麦粉若しくは小麦粉調整物に柿渋を加えることで該小麦粉若しくは小麦粉調整物に柿渋由来のポリフェノールを添加することを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法に係るものである。
【0010】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法であって、前記小麦粉若しくは小麦粉調整物に生理的後期落果期若しくは結実期の柿の搾汁液を加えることで該小麦粉若しくは小麦粉調整物に柿渋由来のポリフェノールを添加することを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法に係るものである。
【0011】
また、請求項1〜いずれか1項に記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法であって、前記タンニン量は、バニリン硫酸法若しくは凝集反応法によるタンニン換算で求められるものであることを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法に係るものである。
【0012】
また、請求項記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法において、前記タンニン量は0.01%(重量)程度であることを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法に係るものである。
【0013】
また、請求項1〜いずれか1項に記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法により得られた生地を裁断若しくは練り出して麺を製造することを特徴とする麺の製造方法に係るものである。
【0014】
また、請求項1〜いずれか1項に記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法により得られた生地を圧延若しくは引き延ばして餃子・シューマイ等の皮を製造することを特徴とする餃子・シューマイ等の皮の製造方法に係るものである。
【0015】
【発明の作用及び効果】
本発明は、繰り返した実験により得られた作用効果を請求項としてまとめたものである。
【0016】
原料となる小麦粉若しくは小麦粉調整物に、ポリフェノールを添加すると、このポリフェノールの収斂作用(タンパク質凝集作用)により、小麦粉若しくは小麦粉調整物のタンパク質(グルテン)は収斂されて凝固する。
【0017】
小麦粉若しくは小麦粉調整物にポリフェノールを添加する前に塩類(カンスイ等)を添加したり、小麦粉若しくは小麦粉調整物にポリフェノールを塩類と同時に添加すると、該ポリフェノールのタンパク質に対する収斂作用(タンパク質凝集作用)が十分に発揮される前に、ポリフェノールと塩類とが反応してしまい、これにより、ポリフェノールが有するタンパク質に対する収斂作用、即ち、タンパク質を凝集(凝固)する作用が十分に発揮されない。
【0018】
この点、本発明は従来例と異なり、小麦粉若しくは小麦粉調整物にポリフェノールを添加して該小麦粉若しくは小麦粉調整物のタンパク質(グルテン)に該ポリフェノールのタンパク質に対する収斂作用(タンパク質凝集作用)を十分に発揮させた後に塩類(カンスイ等)を添加するため、上記ポリフェノールのタンパク質に対する収斂作用(タンパク質凝集作用)は良好に発揮される。
【0019】
よって、本発明によれば、ポリフェノールのタンパク質に対する収斂作用(タンパク質凝集作用)が良好に発揮されるため、従来例に比して粘弾性が良く、即ち、コシが強く歯ごたえがあり茹で溶けや茹で延びが起こりにくい品質の良い麺類や餃子の皮等の食品を製造することができる。
【0020】
また、小麦粉若しくは小麦粉調整物に柿渋等のポリフェノールを添加する場合には、該ポリフェノールの変敗を防止するためにアルコール(酒精等)を添加するが、小麦粉若しくは小麦粉調整物にポリフェノールを添加する前にアルコールを添加したり、小麦粉若しくは小麦粉調整物にポリフェノールをアルコールと同時に添加すると、該ポリフェノールのタンパク質に対する収斂作用(タンパク質凝集作用)が十分に発揮される前に、ポリフェノールとアルコールとが反応して不溶性の化合物が生成されてしまい、これにより、ポリフェノールが有するタンパク質に対する収斂作用(タンパク質凝集作用)が十分に発揮されず、また、前記不溶性の化合物により食味の低下が生じてしまう。
【0021】
この点、本発明は、小麦粉若しくは小麦粉調整物のタンパク質(グルテン)にポリフェノールのタンパク質に対する収斂作用(タンパク質凝集作用)を十分に発揮させた後にアルコールを添加するため、タンパク質(グルテン)に対する収斂作用(タンパク質凝集作用)は良好に発揮される。
【0022】
本発明は上述のようにするから、食味の低下が起こらず、コスト高にもならず、更に、変色がなく食感も良好となる秀れた麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品が得られる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例について、以下に説明する。
【0024】
先ず、原料となる小麦粉にポリフェノールを添加し混合する。尚、小麦粉の代わりに小麦粉調整物でも良く、この小麦粉調整物とは市販のグルテン含有のそば粉や米粉等のことである。
【0025】
このポリフェノールとしては、柿果実の搾汁液(柿渋含有液:以下柿渋という。)を採用する。
【0026】
この柿渋は、柿果実を選別、除蔕、洗浄、切断したものに、還元剤を添加してホモジナイズ若しくは直接搾汁したものを用いると良い。更にこの柿渋をろ過、遠心分離、加熱の操作を単一若しくは組み合わせて処理したものを用いる方が好ましい。
【0027】
また、前記柿渋としては、柿渋成分(特にタンニン)含有の多い生理的後期落果期以降の摘果若しくは落果した柿果実を搾汁したものを採用する。尚、柿は、有効な収斂性を有していれば、品種,摘果若しくは落下時期にかかわらず採用しても良い。
【0028】
また、前記柿渋は原料となる小麦粉に、該柿渋中のポリフェノールが、バニリン硫酸法若しくは凝集反応法によるタンニン換算で0.2%(重量)以下(0.2%重量以上になると、タンニンによる渋味が強くなって食品としては好ましくない。)、より好適には、0.002%(重量)乃至0.03%(重量)のタンニン量となる量添加する。尚、最適は0.01%(重量)程度であることが実験により確認されている。
【0029】
小麦粉に柿渋由来のポリフェノールを添加した後、例えば、該ポリフェノールを添加した小麦粉に酒精(アルコール等)やカンスイ(炭酸カリウム,炭酸ナトリウム,リン酸塩等)を加え、更にミキシングを行い、常法(混練等)により麺や餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地を得る。
【0030】
生地を得る為のミキシング時には、前記柿渋、酒精、カンスイ等を同時に原料小麦粉に加えたりしない。具体的には、上述のように、最初に原料となる小麦粉に、予め所定濃度に希釈した柿渋を拡散するように均一に加えて混合し、その後、酒精、カンスイなどを添加してミキシングを行う2段階加水―ミキシング操作を行う。
【0031】
上記方法により得た生地で麺(中華麺等)を製造する場合には、該生地を裁断若しくは練り出しすることで麺を製造する。また、この裁断操作以降は通常の製麺操作を行うが、前記麺はポリフェノールが有するタンパク質に対する収斂作用(タンパク質凝集作用)により該麺中(小麦粉中)のタンパク質が十分に収斂されているため、例えば、該麺の熟成は通常製麺等よりも短時間でかまわない。
【0032】
また、上記方法により得た生地で餃子・シューマイ等の皮を製造する場合には、該生地を圧延若しくは引き延ばして餃子・シューマイ等の皮を製造する。この圧延操作以降は通常の製皮操作を行うが、前記皮はポリフェノールの収斂作用(タンパク質凝集作用)により該皮中(小麦粉中)のタンパク質が十分に収斂されているため、麺の場合と同様、該皮の熟成は通常製皮等よりも短時間でかまわない。
【0033】
本実施例によれば、原料となる小麦粉にポリフェノールを添加した際、酒精やカンスイが存在しない為、ポリフェノールの収斂作用(タンパク質凝集作用)が阻害されず、該ポリフェノールの収斂作用(タンパク質凝集作用)が十分に発揮され、よって、食感が極めて良好な麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品を製造できる。
【0034】
また、小麦粉に添加したポリフェノールの有効成分のほとんどが該小麦粉に作用することになるため、該ポリフェノールの使用量は非常に少なくて済む。
【0035】
また、小麦粉にポリフェノールを添加した際、該ポリフェノールのほとんど全てが小麦粉に作用し、小麦粉にポリフェノールを添加した後に加える酒精と結合するポリフェノールはほとんど存在しないため、麺等を茹で上げた後に遊離のポリフェノールが生成されず、これにより、不快な味の麺等にならない。
【0036】
また、一般的に麺等のコシを強くするための従来の改良剤の多くは、小麦グルテンの網状構造を成すジスルフィド基を酸化的にすることで同基を介した分子間結合を強固とし、これにより、麺等の物理的特性を変えるという機構を利用しているが、本実施例のポリフェノールによるコシの増強は、ポリフェノールの収斂性によりタンパク質を凝固させてグルテンの粘弾性が強くなるように作用するものであるから、タンパク質自体が凝固して秀れた粘弾性を発揮でき、これにより、従来の麺等と比較して腰の強い歯ごたえのある麺等を得ることができる。
【0037】
また、本実施例は生理的後期落果期若しくは結実期に摘果又は落下した柿果実から得たタンニンを多く含んだ柿渋を使用することで、該タンニン(ポリフェノール)のタンパク質(グルテン)を収斂する作用を十分に発揮でき、これにより、該タンパク質の凝集固化がより一層良好に発揮されるため、形成した麺の熟成を短時間で行うことができ、よって、麺類の製造時間が短縮される効果が安定的に得られることになる。
【0038】
ところで、従来においては、特開平5−316977号公報のように酸化・還元剤を麺の食感改良のために使用する試みが知られている。更に、特開平11−42613号公報や特開2000−253841公報のようにタンパク質重合酵素製剤を使用する試みが知られている。しかし、消費者の指向は化学合成製剤や未変性酵素製剤の安全性を疑問視する傾向になっている。このことから、これらの製剤の添加により麺類の硬さやコシを調整する方法は、実施し難いという問題点があった。
【0039】
また、この他にも特許第2997954号公報のように、小麦粉に馬鈴薯澱粉またはタピオカ澱粉、活性粉末グルテン及び卵白を配合して製造する方法が知られている。しかし、これらの方法は、馬鈴薯澱粉,タピオカ澱粉,活性粉末グルテン,卵白等の添加が厄介であり、更に、減圧下で製造を行う装置の導入が必要であり、これらの理由からコストが高く、安価で消費者に提供することができないという問題点があった。
【0040】
同様の技術として、特開平11−266813号公報も知られているが、これも前記特許第2997954号公報のように減圧下で製造を行う装置の導入が必要であり、消費者に製品を安価で提供できないという問題点があった。
【0041】
また、ポリフェノールを麺の食感の改質に使用する技術として、特開2000−14344公報のように、小麦粉等に栗のシブ皮粉末を添加することにより、熟成時間の短期、食感の向上、着色、日持ち向上を図る試みが知られている。しかし、当該製造方法は着色麺や蕎麦の製造を目的にしており、栗のシブ皮の色やポリフェノールの重合による着色が強く見られる。そのため、褐色であることが好まれない製品、例えばうどん、そうめん、中華麺類、緑色を特徴とする蕎麦には使用できないという問題点があった。
【0042】
本実施例は、上記問題点も解決するため研究を重ねた結果、完成したもので、高品質の麺類を安定的に製造するためには、前記特許第3086679号公報のように原料小麦粉の重量に比例して柿渋容量を決定させるのではなく、原料小麦粉に必要な有効成分濃度若しくは凝集力(収斂力)により決定することで安定的な収斂性が得られるものである。
【0043】
また、収斂性を有するポリフェノールとして、タンニン(柿渋の主成分)が多い生理的後期落果期若しくは結実期に摘果又は落下した柿果実から得た柿渋を使用することで安定した物性の製品が得られる。
【0044】
また、ポリフェノールと酒精とを同時に加えると、該ポリフェノールと酒精とが結合して不溶性の化合物となり収斂性が消失するため、麺類の食感の改良効果が激減し、また、茹で上げ時にポリフェノールと結合した酒精が麺線から蒸発若しくは拡散するため、遊離のポリフェノールが麺線内に生成して口中のタンパク質と結合し不快な収斂味が発現してしまうが、本実施例は、前述のように、予め小麦粉にポリフェノールを十分に作用させた後に酒精を加えるため、このようなことは起こらず、おいしい製品が得られる。
【0045】
更に、ポリフェノールはカンスイ存在下のアルカリ性では自己重合が進み易く、急速に不溶性沈殿を生じ、変色も生じる。このとき、自己重合により収斂力が低下し、麺類の食感の改良効果も急激に減少してしまう。本実施例は、これら知見に基づいて上述のようにすることで、消費者に敬遠される酸化還元剤としての化学合成製剤やタンパク質重合酵素製剤を使用することなく、ポリフェノールを使用して製麺を良好に行うことができる。
【0046】
即ち、ポリフェノールを添加しても不快な味が感じられず、硬さやコシの改善が図れ、変色等の重大な品質低下を惹起しない。
【0047】
また、麺類の熟成時間の短縮を図る方法や茹で溶けが少なく、茹で伸び耐性を付与した麺類の製造技術となる。更に、この製造時に高価な装置や手法を用いることなく簡便・経済的な技術となる。
【0048】
尚、本実施例では、ポリフェノールとして柿果実の柿渋を採用したが、小麦粉のタンパク(グルテン)を凝集する作用(収斂作用)を十分に発揮できるものであれば、ポリフェノール源として柿、栗、トチノミ等由来のものを採用しても良いが、柿渋が最も良い。
【0049】
以下、本実施例の具体的な実験例を示す。尚、%は全て重量である。
【0050】
第一実験例
第一実験例から第六実験例までの生地の基本的配合は、中華麺の場合、準強力粉25kgに対し加水率38%(食塩1%、カンスイボーメ5.5)、酒精2%で行った。製造条件は20分間ミキシング、圧延、複合後厚さ4mmの麺帯にし、30分間乾燥を抑えて熟成後、3段階の圧延を経て0.8mmの麺帯を製造後に切歯18番で中華麺を得た。
【0051】
この中華麺の評価は、該中華麺を沸騰水中で3〜4分茹で上げ、スープに移し、2点比較法で10名の専門パネラーによる官能試験により行った。官能試験は5段階評価とし標準的に製麺を行った麺を3とし、極端に色が悪いもの、食感が不良なもの、コシがないもの、味が悪いものを1、極端に色が良いもの、食感が良好なもの、コシがあるもの、味が良いものを5として評価した。
【0052】
尚、以下に記載の第二実験例から第六実験例までの実験例は、第一実験例における製麺方法及び評価方法を採用している。
【0053】
第二実験例
柿果実の生育ステージが異なるものを3つ用意し、それぞれ5種類の搾汁液方法で柿渋を得た。この柿渋を使用して中華麺の製造を行った。この時、柿渋と酒精等の2段階添加は行わなかった。対照の中華麺は柿渋を添加しないものを用いた。
【0054】
【表1】
Figure 0003671175
【0055】
この第二実験例によれば、上記表1に示したように特許第3086679号公報の方法で柿渋を添加した場合、前期落果期の柿果実から得た柿渋は、生理的後期落果期や結実期の柿渋に比べてタンニン濃度が少ないことが確認された。更に前期落果期の柿果実から得た柿渋はタンニン濃度の変動が僅かであるにもかかわらず麺の品質変動は大きく、また、口中の収斂味が強いことが確認された。
【0056】
従って、第二実験例から、柿渋の原料である柿果実の生育ステージに配慮せずに柿渋を使用すると、前期落果期の柿果実から得た搾汁液が混入し、食感改良効果の低い麺が製造される恐れがあり、そのため、柿渋の原料である柿果実としては生理的後期落果期や結実期の柿果実に限定すると秀れた食感改良効果が発揮できるといえる。
【0057】
また、タンニン濃度(量)が確保できれば、食感改良効果が発揮されると考えられる。
【0058】
第三実験例
第三実験例では、柿渋のタンニン換算ポリフェノール濃度を測定し、添加量を加減して0.1%濃度になるように添加する手法で中華麺の製造を行った。第二実験例と同様に柿果実の生育ステージが異なるものを3つ用意し、それぞれ5種類の搾汁液方法で柿渋を得た。この柿渋を使用して中華麺の製造を行った。この時、柿渋と酒精などの2段階添加は行わなかった。対照の中華麺は柿渋を添加しないものを採用した。
【0059】
【表2】
Figure 0003671175
【0060】
この第三実験例によれば、上記表2に示したように前期落果期の柿から得た柿渋を使用して製造を行った中華麺は着色が激しく商品性が認められなかった。また、前期落果期の柿渋を使用して製造を行った中華麺は、食感の改良効果は認められるものの、口中の収斂味が激しく柿渋のロットごとの変動も大きいことが確認された。
【0061】
従って、この第三実験例では、前期落果期の柿から得た柿渋を使用して製造を行った中華麺は、中華麺として使用するには不適であるといえる。
【0062】
更に、第二実験例と第三実験例とを比較すると、生理的後期落果期や結実期の柿果実から得た柿渋を使用した場合には、該柿渋のタンニン換算ポリフェノール濃度を測定し、一定のタンニン換算ポリフェノール添加量になるように加減して加えることで中華麺の品質の変動が小さくなっていることが確認された。
【0063】
従って、第三実験例から、生理的後期落果期や結実期の柿果実から得た柿渋を一定のタンニン換算ポリフェノール添加量になるように加減して加えることで安定した品質の麺が製造できるといえる。
【0064】
第四実験例
第四実験例では、本実施例の麺製造方法における一手法である、ミキシング時に柿渋、酒精、カンスイを同時に原料となる小麦粉に加えず、最初に小麦粉に柿渋を加えて均一に混合した後、酒精、カンスイ等を添加してミキシングを行う方法で製造を行った。対照の中華麺は予め生理的後期落果期の柿果実を搾汁して得た柿渋、酒精、カンスイ、水を混合したものをミキシング時に同時に添加した中華麺を用いた。このときタンニン換算ポリフェノールは0.1%になるように添加した。
【0065】
対照の中華麺は、タンニン換算ポリフェノールを0.1%添加した場合には、第三実験例と同様に食感の改善効果は見られるものの、着色が激しく、収斂味も強かった。また、加水時の柿渋、酒精、カンスイ、水の混合液は、沈殿が大きなフロックを形成し、更に、濃緑褐色から濃赤褐色の不透明な液体となり、この色が麺に移行していた。更に、麺帯に物性の不均一が見られ、圧延時等に支障が見られることが確認された。
【0066】
対照の中華麺は、タンニン換算ポリフェノールを0.01%添加した場合には、着色は少ないものの本実施例の目的である食感の改良効果が見られなかった。
【0067】
予め柿渋・酒精混合液とカンスイを等容量に希釈し、最初に小麦粉に柿渋・酒精混合液を添加して10分間ミキシングした後、カンスイを添加し、更に10分間ミキシングしたものを試験区Aとした。これに対し、予め柿渋・カンスイ混合液と酒精を等容量に希釈し、最初に柿渋・カンスイ混合液を添加して10分間ミキシングした後、酒精を添加し、更に10分間ミキシングしたものを試験区Bとした。これら試験区A,Bに対し、予め柿渋とカンスイ・酒精混合液を等容量に希釈し、最初に柿渋を添加して10分間ミキシングした後、カンスイ・酒精混合液混合液を添加し、更に10分間ミキシングしたものを試験区Cとした。
【0068】
【表3】
Figure 0003671175
【0069】
試験区Aでタンニン換算ポリフェノールを0.1%添加した場合には、上記表3のように対照に比べて僅かに良好な結果であった。それでも、麺の着色や口中の収斂味が強い欠点の改良には不十分であった。タンニン換算ポリフェノール添加量を少なくすると麺の食感改良効果も低下した。上記表3のようにタンニン換算ポリフェノール添加量を0.01%としたものは硬さやコシが不足であることが確認された。
【0070】
また、試験区Aは、加水時の柿渋、酒精、混合液は沈殿が大きなフロックを形成したものの、混合液の着色は少なかった。そのため、中華麺の着色は対照よりも僅かに良かった。また、対照と同様に麺帯に物性の不均一が見られ、圧延時に支障があった。
【0071】
試験区Bでタンニン換算ポリフェノールを0.1%添加した場合には上記表3のように対照や試験区Aに比べて良好な結果であった。それでも、試験区Aと同様に麺の着色や口中の収斂味が強いという欠点の改良には不十分であることが確認された。このときは、麺帯の物性不均一による圧延時の支障はなかった。
【0072】
また、試験区Bは、加水時の柿渋、カンスイ、混合液は濃緑褐色から濃赤褐色の濁のある液体となり、中華麺の着色は対照よりも僅かに良いものの試験区Aよりも悪くなることが確認された。
【0073】
試験区Cでタンニン換算ポリフェノールを0.1%添加した場合には上記表3のように対照や試験区A,Bに比べて劣る結果になった。それでも、硬さやコシは対照や試験区A,Bとは異なり食感改良効果が強すぎたため、硬さやコシの評価が下がった。味に関しては食感改良効果が強いにもかかわらず、収斂味が感じられなかった。但し、麺の着色が見られるという欠点があった。また、生地は硬いものの麺帯の物性不均一による圧延時の支障はないことが確認された。
【0074】
試験区Cでタンニン換算ポリフェノールを0.01%添加した場合には上記表3のように対照や試験区A,Bに比べて非常に良好な結果になった。このことは対照や試験区A,Bの1/10の濃度のタンニン換算ポリフェノール添加でも、より秀れた中華麺を製造できることが示唆されている。また、経時的にも安定していることが確認された。
【0075】
従って、本実施例の手法である試験区Cの方法で製造することで、少ないポリフェノール量でより一層良好な食感改良効果が達成された秀れた麺が安定的に製造できることが確認された。
【0076】
第五実験例
第四実験例のタンニン換算ポリフェノール添加量0.01%濃度で製造した中華麺と、タンニン換算ポリフェノール添加を行わなかったものの茹で上げ時の溶出量を測定したところ、タンニン換算ポリフェノール添加量0.01%濃度で製造した中華麺が通常の麺の約2/3の溶出量となることが確認された。
【0077】
従って、第五実験例では、少ないポリフェノール量でより良好な食感改良効果を得ることができる上に、茹で溶けが少なく麺線表面の荒れも少ない秀れた麺を製造することが確認された。
【0078】
また、茹で溶けが少ないことで、茹で水の廃棄量も少なくてすむ。
【0079】
第六実験例
第四実験例のタンニン換算ポリフェノール添加量0.01%濃度で中華麺の他にうどん、そばの製造を行ったところ、特にうどんで僅かに着色が見られるものの食感改良効果が大きいことが確認された。また、そばの場合には着色は気にならず反対に良好な評価であることが確認された。また、添加量を0.03%にすることで最も秀れた評価を得ることが確認された。
【0080】
従って、本実施例によれば、中華麺のみならず、うどんやそばの麺の場合でも、秀れた食感改良効果が発揮されることが確認された。

Claims (8)

  1. 小麦粉若しくは小麦粉調整物にポリフェノールを添加し麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品を形成するための生地を製造する方法であって、前記小麦粉若しくは小麦粉調整物にタンニン量が0.002乃至0.03%(重量)となるようにポリフェノールを添加した後に、炭酸カリウム,炭酸ナトリウム若しくはリン酸塩等のアルカリ性塩類及び食塩を添加し、その後、常法により麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地を形成することを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法。
  2. 請求項1記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法において、アルカリ性塩類及び食塩に、更にアルコールを添加したことを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法。
  3. 請求項1,2いずれか1項に記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法であって、前記小麦粉若しくは小麦粉調整物に柿渋を加えることで該小麦粉若しくは小麦粉調整物に柿渋由来のポリフェノールを添加することを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法であって、前記小麦粉若しくは小麦粉調整物に生理的後期落果期若しくは結実期の柿の搾汁液を加えることで該小麦粉若しくは小麦粉調整物に柿渋由来のポリフェノールを添加することを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法。
  5. 請求項1〜いずれか1項に記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法であって、前記タンニン量は、バニリン硫酸法若しくは凝集反応法によるタンニン換算で求められるものであることを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法。
  6. 請求項記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法において、前記タンニン量は0.01%(重量)程度であることを特徴とする麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法。
  7. 請求項1〜いずれか1項に記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法により得られた生地を裁断若しくは練り出して麺を製造することを特徴とする麺の製造方法。
  8. 請求項1〜いずれか1項に記載の麺又は餃子若しくはシューマイの皮等の食品の生地製造方法により得られた生地を圧延若しくは引き延ばして餃子・シューマイ等の皮を製造することを特徴とする餃子・シューマイ等の皮の製造方法。
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