JP3657027B2 - 車両故障診断装置の時間管理システム及び方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の故障診断装置の時間管理に係わり、特には産業車両の故障診断装置における複数のコントローラ間の標準的な時間を管理するための、車両故障診断装置の時間管理システム及び方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両のエンジンやトランスミッション等の電子制御化が急速に進められている中で、各コンポーネント制御への要求機能が高度化して来ている。この要求機能を満足させるために、各コンポーネント制御のコントローラにマイクロコンピュータ(以下、CPUと呼ぶ)を使用するものが多くなっている。この結果、1台の車両の電子制御装置の中に、CPUを使用したコントローラが複数個搭載されることになる。このような電子制御装置の機能の高度化に伴いこの故障診断も困難となり、故障時に故障箇所をいかに短時間で見つけて車両のダウンタイムを短縮できるかは重要な問題である。
【0003】
上記問題を解決するために、各コントローラのCPUがそれぞれのコントローラに関する故障診断を行ない、この診断結果を表示して診断の容易化を図った車両用故障診断装置が提案されている。例えば、特開平4−304589号の公報には図5に示されるような車両用故障診断装置が提案されており、この車両用故障診断装置について以下に説明する。車両の電子制御装置は、マスタコントローラ1及び複数台のコントローラ(11a、11b、11c、…11n)から構成され、各コントローラ間はお互いにネットワーク通信バス10によって接続されている。そしてマスタコントローラ1及び各コントローラは、それぞれCPUを中核にしたマイクロコンピュータシステムで構成されている。
【0004】
各コントローラは、それぞれ車両の各コンポーネントを制御するために、センサやスイッチ等の信号を入力し、この信号に基づいてアクチュエータ等の制御信号を出力する。また、各コントローラは上記接続されたセンサやアクチュエータの故障を検出する故障検出部を有しており、ここで検出された故障データを常時マスタコントローラ1へネットワーク通信バス10を介して送信している。
【0005】
マスタコントローラ1はCPU2、ネットワークインタフェース3、メモリ4、操作スイッチ6及び表示器7等から構成されている。ここで、メモリ4は演算結果、通信データ及び各コントローラの故障情報等を記憶しておくメモリである。マスタコントローラ1のCPU2は、例えばポーリング方式を用いて常時各コントローラ(11a、11b、11c、…11n)から故障データを受信し、この受信データの故障項目の中に故障検出されたことを示す”1”が書き込まれたビットがあるか否かをチェックする。”1”が書き込まれたビットがあった場合は、このビットの故障項目に対応するエラ−コードをメモリ4内の所定の記憶エリアに書き込むと共に、故障が発生してからの経過時間を所定の記憶エリアに書き込む。
【0006】
上記エラ−コード及びその経過時間が記憶される所定記憶エリアは、発生した時間の順序に記憶される故障履歴の形式になっている。すなわち、所定記憶エリアには発生した順にエラ−コード及びその経過時間が記憶され、所定の個数のエラ−コードが記憶されたら、次からは上記所定記憶エリアの先頭番地に戻って記憶される。このように、最も古く発生したエラ−コード及びその経過時間が最新のエラ−コード及びその経過時間に更新されて記憶される。また、各経過時間は故障が発生してから所定時間(例えば1時間)毎にそれまでの経過時間に更新されるようになっている。
【0007】
また、マスタコントローラ1には操作スイッチ6及び表示器7があって、オペレータが故障原因を調査するときに操作スイッチ6を操作してこれまでの故障履歴を表示器7に表示することができる。この故障履歴データを解析することによって、原因調査を短時間で行えるようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
一方、前述のごとく各コンポーネント制御の機能の高度化に伴い、故障診断の解析が複雑になり、各コンポーネント間の入出力信号のタイミングや各コンポーネント内の信号の状態経過等を詳細に解析する必要が生じる場合が多くなった。そして、このために故障履歴データ及び入出力信号の状態経過等を詳細に又大量に記憶して置く必要がある。よって、上記従来の車両用故障診断装置においては、マスタコントローラ1内に故障履歴データ等記憶するためのメモリ容量を大量に準備しなければならない。ところが、車両搭載のコントローラであるため、耐振動、耐塵埃及び防水等の耐環境性を考慮するとRAM等の半導体メモリを使用しなければならず、かつコントローラの小型化のために体積等も考慮すると、上記メモリ容量の大きさに制約があって十分に大きくできない。
【0009】
これに対応するために、各コントローラの上記故障履歴データ及び入出力信号の状態経過等はそれぞれ各コントローラ内のメモリに分散して記憶させる構成が考えられる。これによると、各コントローラ毎にそれぞれの大きさの制約の範囲以内で大容量のメモリを準備することができる。そして、各コントローラの内部にはそれぞれ稼働積算時計又は時刻時計等を有し、故障発生時の故障データ及び入出力信号の状態と、これらの時計を使用して故障発生時間や故障発生時からの経過時間等とを上記各コントローラ内のメモリに記憶する。これらの記憶した故障履歴データ及び入出力信号の状態経過をマスタコントローラ1の要求に応じて送信し、マスタコントローラ側の表示器7等によって故障解析が可能となる。
【0010】
しかしながら、この場合に以下のような問題が生じる。各コントローラ毎に有する上記稼働積算時計は、各コントローラの電源が投入されている間だけ作動する。ところが、各コンポーネントの故障や点検のためにコントローラの電源を個別に切断されることや、ある期間使用されたコントローラを車両から取り外して別の車両に装着することがある。これらによって、切断されたコントローラや新たに装着されたコントローラの稼働積算時計は他のコントローラ及びマスタコントローラ1の稼働積算時計と差を生じてくる。また、上記稼働積算時計や時刻時計は計時素子等のバラツキによるコントローラ間の時計誤差を持っている。したがって、同じ時刻に発生した故障や現象であるにもかかわらず、記憶された上記時計値が各コントローラ間で異なってしまう可能性がある。このことは、各コントローラの故障履歴データ及び入出力信号の状態経過を解析して故障原因を調査することに対して大きな障害となり、故障診断に逆に時間がかかる恐れが有る。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、故障履歴データ及び入出力信号の状態経過等と共に発生時間及び/又は経過時間等を各コントローラ毎にメモリに記憶し、これらを利用して故障診断を行なう車両故障診断装置において、上記の記憶する時間の各コントローラ間の矛盾や誤差を無くし、正確な時間により故障診断が確実にできる車両故障診断装置の時間管理システム及び方法を提供することを目的をしている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、センサ及びアクチュエータの故障を検出し、この故障データを通信ネットワークを介して送信する複数のコントローラを備えた車両故障診断装置において、計時した時間を標準時間としてコントローラへ送信するマスタコントローラと、故障を検出したときは受信した標準時間に基づいて故障診断に関する時間を求めるコントローラとを備え、前記各コントローラは、前記標準時間に基づいて求められた各コントローラが交換された時の交換時間を記憶する交換時間記憶手段を、各コントローラ内部に備えたことを特徴としている。
【0013】
上記の車両故障診断装置の時間管理システムのマスタコントローラ1は、
前記標準時間となる時間を計時する標準時間計時手段9と、
この標準時間を前記通信ネットワーク10を介して前記コントローラ11a,11b,11c,…,11nへ送信する制御器8とを備えていても良い。
【0014】
上記の各コントローラ11a,11b,11c,…,11nは、
標準時間を記憶する標準時間記憶手段63と、
前記マスタコントローラ1から受信した標準時間に基づいて標準時間記憶手段63に記憶された標準時間を更新すると共に、故障が発生したときは更新された標準時間に基づいて故障診断に関する時間を求める制御器8とを備えていても良い。
【0015】
また故障が発生したとき、この故障データと共に、上記サブ標準時間に基づいて求めた発生時間や経過時間を記憶することによって、故障診断時に各発生時間や経過時間を正しく認識できる。よって、上記の各コントローラ11a,11b,11c,…,11nは、
前記故障データと、前記標準時間に基づいて求められる故障発生時間及び/又は経過時間とを記憶する故障情報記憶手段64を備えた方が望ましい。
【0016】
また、センサ信号の入力及びアクチュエータへの出力等の遷移状態をその経過時間と共に記憶しておくと、故障診断時の解析が容易となる。よって、上記の各コントローラ11a,11b,11c,…,11nは、
センサ信号の入力状態及びアクチュエータへの出力状態と、前記標準時間に基づいて求められる前記入出力状態の発生時間とを記憶する車両状態記憶手段65を備えた方が好ましい。
【0017】
さらに、故障診断時に各コントローラの交換履歴を参照すると、故障診断が容易となる。よって、上記の各コントローラ11a,11b,11c,…,11nは、
前記標準時間に基づいて求められた各コントローラ11a,11b,11c,…,11nの交換時間を記憶する交換時間記憶手段66を備えた方が良い。
【0018】
【作用】
複数台のコントローラの内の一台をマスタコントローラとし、このマスタコントローラが計測したメイン標準時間を通信ネットワークを通じて各コントローラに送信する。各コントローラは、受信したメイン標準時間に基づいて自身のサブ標準時間を更新する。これによって、車両故障診断装置内の各コントローラ間の標準時間の誤差が無くなり、装置全体での統一的な標準時間の管理ができる。
そして、各コントローラは発生した故障データ等を故障情報記憶手段に記憶するときに、上記サブ標準時間に基づいて求めた発生時間や経過時間を共に記憶することができる。よって、故障診断時にこれらの故障データを参照すると、各コントローラ間での故障発生時間等に誤差や矛盾が無いので、誤りなく短時間で故障診断が可能となる。
【0019】
また、故障発生時及び所定の周期毎に、上記の故障データ以外にセンサからの入力信号やアクチュエータへの出力信号等の車両状態データをサブ標準時間に基づいて求めた発生時間と共に車両状態記憶手段に記憶する。そして、故障診断時にこの車両状態データも参照して入出力信号のタイミング等を調査することによって、故障解析が容易になり、診断時間を短縮することができる。
【0020】
コントローラが故障したときに、新しいコントローラと交換する場合がある。この交換した時間を上記メイン標準時間に基づいて求め、これを交換時間記憶手段に記憶する。これによって、故障診断時に各コントローラの交換履歴を参照することができ、診断が容易になる。
【0021】
【実施例】
以下に、図1から図4を参照しながら実施例を説明する。
まず、図1の本実施例を表す機能構成ブロック図によって構成を説明する。マスタコントローラ1及びコントローラ11a、11b、11c、…11nは、車両の各コンポーネント、例えばエンジン、トランスミッション、ブレーキ等を制御するものである。各コントローラは通信ネットワーク10によってお互いに接続され、この通信ネットワーク10を通じて制御情報や故障情報を送受信することによって全体として車両制御装置を構成している。
【0022】
コントローラ11a、11b、11c、…11nの構成は同じなので、ここではコントローラ11aを例に取って説明する。尚、以下の説明ではコントローラ11a、11b、11c、…11nを簡単のためにコントローラ11と言う。コントローラ11は、処理の中心となる制御器8を有し、この制御器8に接続された次のような各処理手段を有している。故障検出手段62は、センサからの入力信号及びアクチュエータへの出力信号によってセンサ又はアクチュエータの故障を検出し、故障検出信号を制御器8へ出力する。標準時間記憶手段63は、制御器8からコントローラ内の標準時間(以後、サブ標準時間と呼ぶ)を入力して記憶する。故障情報記憶手段64は、故障発生時に、上記故障検出手段62によって検出された故障検出信号に対応するエラーコードやこのエラーコードの発生回数等の故障データと、このときの標準時間記憶手段63に記憶されたサブ標準時間とを制御器8から入力し、これを共に記憶するものである。
【0023】
また、車両状態記憶手段65は上記センサやアクチュエータの入出力信号の遷移経過を制御器8から入力して記憶するもので、例えば所定周期毎に記憶すると共に、故障発生時にも記憶する。交換時間記憶手段66は、コントローラ11が新しく交換された時の上記サブ標準時間を制御器8から入力し、これを記憶する。制御器8は、以上のデータをネットワークインタフェース13を介して通信ネットワーク10を通じ、マスタコントローラ1と送受信する。
【0024】
マスタコントローラ1は上記コントローラ11と基本的に同じ構成であるが、次のような標準時間計時手段9を有する点で異なっている。標準時間計時手段9は、車両故障診断装置全体の標準となる時間(以後、メイン標準時間と呼ぶ)を計時するものであり、所定の時間(例えば、1分)単位でカウントしてゆく。マスタコントローラ1の制御器8がこのカウントしたメイン標準時間値を入力し、コントローラ11と同様にこの制御器8はメイン標準時間値を自身の故障情報記憶手段64、車両状態記憶手段65及び交換時間記憶手段66等に故障診断のために記憶する。したがって、このマスタコントローラ1はこれに限定されるものではなく、同じ車両制御装置内にある複数台のコントローラ11の内のいずれか1台をマスタコントローラとして選択し、このコントローラに上記標準時間計時手段9を設けても良い。そして、上記メイン標準時間値はネットワークインタフェース13を介して他のコントローラ11へ送信される。各コントローラ11の制御器8はこのメイン標準時間値を受信し、これに基づいて自身の前記サブ標準時間を更新して標準時間記憶手段63に書き込む。
【0025】
また本実施例においては、マスタコントローラ1が操作スイッチ6及び表示器7を有する場合を示しており、それぞれマスタコントローラ1の制御器8に接続されている。操作スイッチ6は、故障診断時に各コントローラ11の前記故障情報、車両状態及び交換時間等を表示させるための表示対象を指定する入力スイッチである。表示器7はこれらを表示するものであり、例えばエラーコードや発生時間を表示できるLED表示器や、エラー内容等を表示できる文字表示器等で構成される。そして、マスタコントローラ1の制御器8は操作スイッチ6から入力した表示対象指定信号を通信ネットワーク10を介して他のコントローラ11へ送信し、他のコントローラ11の制御器8はこの表示対象指定信号に対応する故障情報、車両状態及び交換時間等を通信ネットワーク10を介してマスタコントローラ1へ送信する。マスタコントローラ1の制御器8は、この受信データを表示器7に出力する。
【0026】
故障情報、車両状態及び交換時間等を表示させるための上記のような操作スイッチ6及び表示器7は、通信ネットワーク10に接続可能なサービスツール51に設けても良い。サービスツール51は故障診断専用として接続されるものであり、常時通信ネットワーク10に接続されても良いし、故障診断時のみに接続されても良い。このサービスツール51は、上記同様操作スイッチ6及び表示器7の他にネットワークインタフェース13等を有している。
【0027】
次に、図2に従って回路ブロック図を説明する。各コントローラ11は、CPU12を中核としたマイクロコンピュータシステムで構成されている。故障検出回路18はセンサからの入力信号及びアクチュエータ等へ出力した制御信号によってセンサ又はアクチュエータの故障を検出し、この検出した故障データをCPU12に出力する。またメモリ14は故障情報、車両状態及び交換時間等のデータを記憶するための書き込み可能なメモリであり、コントローラ11の電源が切断されてもその記憶内容を保持できる、例えばバッテリーバックアップされたCMOS型のRAM等で構成される。CPU12は、ネットワークインタフェース13を介する通信ネットワーク10を通じて、他のコントローラ11、マスタコントローラ1及びサービスツール51とデータの送受信ができる。
【0028】
マスタコントローラ1の基本的な構成は、コントローラ11と同様である。すなわち、CPU2(CPU12に相当)を中核としたマイクロコンピュータシステムで構成され、故障検出回路18、メモリ14及びネットワークインタフェース13等を備えている。ただし、コントローラ11と異なる構成として、マスタコントローラ1はメイン標準時間を計時するためのクロック回路5を備えている。ここでクロック回路5は、所定周波数のクロック発信回路を有し、かつ、このクロックをカウントして所定時間(例えば1分)毎にCPU2に割り込み処理要求信号を出力するものとする。
【0029】
また本実施例では、前述のようにマスタコントローラ1は操作スイッチ6及び表示器7を備えており、これらはCPU2に接続される。
サービスツール51は、CPU52を中核とした同様のマイクロコンピュータシステムで構成され、同じくメモリ54、ネットワークインタフェース13、スイッチ56及び表示器57を備えている。メモリ54は故障診断用のデータを記憶するものであり、例えばバッテリーバックアップされたCMOS型のRAMであっても良い。また、スイッチ56及び表示器57はそれぞれ上記マスタコントローラ1の操作スイッチ6及び表示器7と同等の機能を有するものである。サービスツール51は、例えば通常のパソコン等で構成することもできる。
【0030】
上記のような構成における車両故障診断装置の時間管理方法について、以下に説明する。マスタコントローラ1のCPU2の時間管理処理は、図3のフローチャートで表される。CPU2は、クロック回路5からの所定時間毎の割り込み信号によって、以下の割り込み処理を行なう。
【0031】
(ステップ100)メモリ14内の所定のメイン標準時間記憶エリアよりメイン標準時間を読み出し、ステップ101へ進む。
(ステップ101)メイン標準時間を更新する。例えば1分毎に本割り込み処理が実行される場合は、古いメイン標準時間に1分を加算して新しいメイン標準時間とする。次に、ステップ102へ進む。
(ステップ102)新しいメイン標準時間を、所定のメイン標準時間記憶エリアに書き込み、ステップ103へ進む。
(ステップ103)各コントローラ11に新しいメイン標準時間を送信し、本割り込み終了処理に進む。
【0032】
以上の割り込み処理によって、CPU2は所定時間毎にメイン標準時間を更新でき、通信ネットワーク10を介して各コントローラ11にこの更新されたメイン標準時間を送信できる。
【0033】
次に、各コントローラ11のCPU12の時間管理処理を図4のフローチャートを参照して説明する。ここで、CPU12は所定周期毎に以下の処理を行なうものとする。但しCPU12の処理周期は、CPU2がメイン標準時間を送信する上記所定周期(すなわち、サブ標準時間の更新単位時間)に対する誤差を無視できるような短い周期に設定される。
【0034】
また以下の処理において、交換時間は各コントローラ11が現車両に装着されて最初に電源を投入されたときの標準時間を表す。また、サブ標準時間は各コントローラ11内に記憶される標準時間であり、サブ稼働時間は各コントローラ11が使用された稼働時間を表す。尚、各コントローラ11は新品で最初に電源を投入されたときは、交換時間、サブ標準時間及びサブ稼働時間の各データは0に初期化されるものとする。
【0035】
(ステップ111)サブ標準時間及びサブ稼働時間を、メモリ14の所定の記憶エリアより読み出し、ステップ112に進む。
(ステップ112)マスタコントローラ1よりメイン標準時間を受信し、ステップ113に進む。
(ステップ113)サブ標準時間とメイン標準時間が等しいか比較する。等しいときはまだメイン標準時間が更新されていないので、エンド(処理終了)に進む。等しくないときはメイン標準時間が更新されているので、ステップ114に進む。
(ステップ114)サブ標準時間とメイン標準時間の差が1(更新単位時間)か否かを判断する。差が1のときは通常の時間更新でありステップ115に進み、そうでないときはステップ118に進む。
【0036】
(ステップ115)メイン標準時間が1(更新単位時間)か否かを判断する。メイン標準時間が1のときは、車両が新車であり、ステップ116に進む。メイン標準時間が1でないときは、通常の時間更新であり、ステップ117に進む。(ステップ116)車両が新車なので、メイン標準時間から一更新単位時間を引いて交換時間を0とする。次に、ステップ117に進む。
(ステップ117)前回の処理時より一更新単位時間が経過しているので、サブ稼働時間を一更新単位時間だけ増加し、ステップ121に進む。
【0037】
(ステップ118)メイン標準時間が1(更新単位時間)か否かを判断する。メイン標準時間が1のときは、車両が新車であり、かつステップ114の結果からコントローラはサブ標準時間が進んでいる中古品が搭載されたときであり、ステップ119に進む。メイン標準時間が1でないときは、車両が中古稼働車であり、ステップ120に進む。
(ステップ119)車両が新車なので、メイン標準時間から一更新単位時間を引いて交換時間を0とする。次に、ステップ121に進む。
(ステップ120)車両が中古稼働車なので、交換時間をメイン標準時間と等しくし、ステップ121に進む。
【0038】
(ステップ121)前回の処理時より一更新単位時間が経過しているので、サブ標準時間をメイン標準時間と等しくし、ステップ122に進む。
(ステップ122)更新された上記サブ標準時間、サブ稼働時間、交換時間をメモリ14の所定の各記憶エリアに書き込み、処理を終了する。
【0039】
このようにして、メイン標準時間が一更新単位時間だけ更新されたとき、CPU12は各コントローラ11内に記憶しているサブ標準時間、サブ稼働時間、交換時間を新しいメイン標準時間に基づいて更新する。したがって、これらの時間がマスタコントローラ1のメイン標準時間によって統一的に管理されるので、各コントローラ11間の時間誤差が無くなる。
【0040】
また各コントローラ11は、故障発生時の故障情報、車両状態等を所定のエリアに記憶するとき、この統一的な標準時間に基づいた時間データを記憶する。すなわち、CPU12は故障検出回路18が検出した故障データを入力したとき、故障発生時のサブ標準時間(以後、故障発生時間と呼ぶ)及びサブ稼働時間を読み出し、上記故障データ、故障発生時間及びサブ稼働時間を故障情報としてメモリ14の所定の故障情報記憶エリアに書き込む。さらに、故障発生時からの経過時間を故障情報として記憶することもでき、この経過時間は所定時間毎にサブ標準時間から故障発生時間を差し引いた時間として求められる。またCPU12は、入力したセンサ信号及び出力したアクチュエータ制御信号とその入出力時間とを、例えば所定周期毎に所定の車両状態記憶エリアに書き込む。
【0041】
そして、故障発生時にこれらの故障情報、車両状態及び上記交換時間等を、マスタコントローラ1の操作スイッチ6によって表示器7に表示させることができる。また、サービスツール51を接続する場合も、上記と同様に表示できる。これらの表示内容を見て、各コントローラ11での故障内容と故障発生時間及び経過時間、入出力信号とその入出力時間、及び交換時間を正しい時間順序で解析できるので、故障原因究明を確実に実施可能となる。
【0042】
【発明の効果】
複数台のコントローラの内の一台をマスタコントローラとし、マスタコントローラが計時したメイン標準時間に基づいて他のコントローラは自身のサブ標準時間を更新する。これによって、車両故障診断装置内の各コントローラ間の標準時間の誤差が無くなり、装置全体での統一的な標準時間の管理ができる。
そして、各コントローラは発生した故障データ等を故障情報記憶手段に記憶するときに、上記サブ標準時間に基づいて求めた故障発生時間や経過時間を共に記憶することができる。よって、故障診断時にこれらの故障情報を参照すると、各コントローラ間での故障発生時間等に誤差や矛盾が無いので、誤りなく短時間で故障診断が可能となる。
【0043】
また、故障発生時及び所定の周期時間毎に、上記の故障データ以外にセンサからの入力信号やアクチュエータへの出力信号等の車両状態データを上記サブ標準時間に基づいて求めた発生時間と共に車両状態記憶手段に記憶する。故障診断時にこの車両状態データも参照して入出力信号のタイミング等を調査することによって、故障解析が容易になり、診断時間を短縮することができる。
【0044】
コントローラが故障した場合に、新しいコントローラと交換したり、新車に既に使用された中古のコントローラを搭載したり、中古稼働車に別の中古のコントローラを搭載したりしたときの時間を上記メイン標準時間に基づいて求め、これを交換時間記憶手段に記憶する。これによって、故障診断時に各コントローラの交換履歴を参照することができ、診断が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる実施例を表す機能構成ブロック図である。
【図2】本発明に係わる実施例を表す回路ブロック図である。
【図3】本発明に係わる実施例を表すマスタコントローラ1の時間管理処理のフローチャートである。
【図4】本発明に係わる実施例を表すコントローラ11の時間管理処理のフローチャートである。
【図5】従来技術を説明する機能ブロック図である。
【符号の説明】
1 マスタコントローラ
2 CPU
3 ネットワークインタフェース
4 メモリ
5 クロック回路
6 操作スイッチ
7 表示器
8 制御器
9 標準時間計時手段
10 通信ネットワーク
11 コントローラ
12 CPU
13 ネットワークインタフェース
14 メモリ
18 故障検出回路
21 コントローラ
31 コントローラ
51 サービスツール
52 CPU
54 メモリ
56 スイッチ
57 表示器
62 故障検出手段
63 標準時間記憶手段
64 故障情報記憶手段
65 車両状態記憶手段
66 交換時間記憶手段
Claims (5)
- センサ及びアクチュエータの故障を検出し、この故障データを通信ネットワーク(10)を介して送信する複数のコントローラ(11a,11b,11c,…,11n)を備えた車両故障診断装置において、
計時した時間を標準時間としてコントローラ(11a,11b,11c,…,11n)へ送信するマスタコントローラ(1)と、故障を検出したときは受信した標準時間に基づいて故障診断に関する時間を求めるコントローラ(11a,11b,11c,…,11n)とを備え、
前記各コントローラ(11a,11b,11c,…,11n)は、前記標準時間に基づいて求められた各コントローラ(11a,11b,11c,…,11n)が交換された時の交換時間を記憶する交換時間記憶手段(66)を、各コントローラ (11a,11b,11c, … ,11n) 内部に備えたことを特徴とする車両故障診断装置の時間管理システム。 - 前記マスタコントローラ(1)が、前記標準時間となる時間を計時する標準時間計時手段(9)と、この標準時間を前記通信ネットワーク(10)を介して前記コントローラ(11a,11b,11c,…,11n)へ送信する制御器(8)とを備えたことを特徴とする請求項1記載の車両故障診断装置の時間管理システム。
- 前記各コントローラ(11a,11b,11c,…1n)が、標準時間を記憶する標準時間記憶手段(63)と、前記マスタコントローラ(1)から受信した標準時間に基づいて標準時間記憶手段(63)に記憶された標準時間を更新すると共に、故障が発生したときは更新された標準時間に基づいて故障診断に関する時間を求める制御器とを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両故障診断装置の時間管理システム。
- 請求項1、2又は3において、前記各コントローラ(11a,11b,11c,…,11n)は、前記故障データと、前記標準時間に基づいて求められる故障発生時間及び/又は経過時間とを記憶する故障情報記憶手段(64)を備えたことを特徴とする車両故障診断装置の時間管理システム。
- 請求項1、2、3又は4において、前記各コントローラ(11a,11b,11c,…,11n)は、センサ信号の入力状態及びアクチュエータへの出力状態と、前記標準時間に基づいて求められる前記入出力状態の発生時間とを記憶する車両状態記憶手段(65)を備えたことを特徴とする車両故障診断装置の時間管理システム。
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