JP3655253B2 - 建築板及びその製造方法 - Google Patents

建築板及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、起伏(凹凸)のある意匠面にグラビアオフセット印刷によって化粧印刷を施した建築板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より紙を対象とするカラー印刷の分野において、グラビアオフセット印刷技術が適用されている。窯業系建築板の化粧加工の分野においても、かかるグラビアオフセット印刷技術が適用されている。例えば、特開平9−30099号公報、特開平11−20297号公報等には、グラビアオフセット印刷機を用いて建築板に柄模様を印刷する技術が記載されている。また、グラビアオフセット印刷によって、例えばレンガ調の化粧印刷を施した窯業系建築板が実用化されている。
【0003】
グラビアオフセット印刷は、凹版であるグラビアロールに付着させたインクをオフセットロール(ゴムロール)表面上に写し(オフ)て、さらに、オフセットロール表面から被印刷面に対してインクを転写(セット)するものである。
【0004】
凹版(グラビア版)は、セルと称する微細な窪みを多数有し、個々のセルの深さを画像の濃度(階調)に応じて異ならしめることで、個々のセルに詰めるインク層の厚さを異ならしめ、これによって連続階調を表現する。具体的には、凹版(グラビア版)の表面に、例えばセル幅の1/5程度の幅を有する仕切り(土手)が形成され、この仕切り(土手)によって区切られた窪み(セル)の深さを、原稿の階調に応じて変化させるよう版が形成されている。仕切り(土手)がなければ、インクには流動性があるので、インクの層の厚みの相違を保つことができない。仕切り(土手)は、感光の際にグラビアスクリーンと称する特殊なスクリーンを用いて版面に形成される。グラビアスクリーンは、1インチ当たり150線〜200線(1cm当たり約60本〜80本)程度の細かいものが使用される。窪み(セル)の深さは、一般に2〜50μmである。
【0005】
しかしながら、グラビアオフセット印刷が適用されるのは、あくまでも印刷面が平坦であることが前提となっている。ところで、石肌のような自然な感じを出すためには、建築板の意匠面に凹凸模様が形成される必要がある。そこで、本出願人は特願2000−284124号で、凹凸のある意匠面を有する建築板に対しても、グラビアオフセット印刷技術を適用できるようにした建築板の塗装装置を提案している。
【0006】
図6は、建築板の印刷装置の構成例を示す図である。図6に示すグラビアオフセット印刷装置51は、グラビア版ロール52と、オフセットロール53と、クリーニングロール54と、バックアップロール55と、不要インク除去用ブレード56と、残留インク除去用ブレード57と、エアー吹き付け装置58と、残留インク強制乾燥装置59とを備える。
【0007】
インクIは、図示しないインク容器から図示しないインク供給路を介してグラビア版ロール52に供給される。不要インク除去用ブレード56の先端はグラビア版ロール52の表面に当接されており、グラビア版ロール52の表面に付着したインクIを掻き落とす(セル部以外のインクIを掻き落とす)。グラビア版ロール52の各セル部に保持されたインクIは、グラビア版ロール52の回動とともに移送され、グラビア版ロール52に転接されたオフセットロール53の表面に転写される。
【0008】
オフセットロール53は、例えばシリコンゴム製でゴム硬度の低いもの(例えばゴム硬度が15〜30度)で形成されている。ゴム硬度を低くすることで、走行する建築板41の意匠面の起伏に追随させることができる。オフセットロール53の表面にグラビア版ロール52から転写されたインクIを確実に固定するために、この例では、インクIがオフセットロール53の表面に転写された直後に、エアー吹き付け装置58からのエアー吹き付けによってインクIを半乾燥状態とし、この状態でもって、走行する建築板41に対するオフセットロール53の圧接によって、インクIの転写を行う。
【0009】
またこの例では、オフセットロール53の表面に残留したインクIは、クリーニングロール54に転移された後、残留インク強制乾燥装置59からのエアー吹き付けによって強制乾燥されて固定状態となった残留インクIは、残留インク除去用ブレード57によって掻き取り除去される。
【0010】
このように、オフセットロール53をシリコンゴム製としそのゴム硬度を低くすることで、建築板の凹凸(起伏)のある意匠面に対しても、グラビアオフセット印刷を良好に施すことができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
図7は、図6に示した建築板の印刷装置の問題点を示す図である。オフセットロールのゴム硬度を低くしたにもかかわらず、図7(a)に示すように、意匠面の鋭角な窪み部分に対しては、オフセットロールが窪みの深くまで侵入することができずに、図7(b)に示すように、その部分については印刷できないという不具合(所謂、印刷柄抜け)を発生してしまう。
【0012】
図8は、印刷柄抜けが生じた意匠面を示す図である。印刷柄抜けの箇所については、印刷柄の間よりベース色が発色されており(何故なら、全面スプレー塗装(中塗り)やロールコータ塗装によってベース色に塗装されている)、それが意匠面において違和感を与えてしまう虞れがある。
【0013】
一方、意匠面に凹凸がある場合でも、非接触印刷方式であるインクジェット方式(例えば、特許第2784529号公報や特許第3115136号公報に記載された建築板の塗装方法)を使用すれば、凹凸面全体を印刷できる。ところが、使用するインクは顔料を溶剤に分散溶解させたものであるため、熱風吹き付け乾燥などの場合には、その熱風吹き付け方向に顔料が移動し、意匠面の凹凸状況に応じて、部分的に不自然な濃色部となって発現する不具合現象(所謂、額縁現象と言われる顔料成分の凝集に起因した不具合現象のことである)は避け難い。インク凝集部(額縁)の発生例を図9に示す。そして、この問題の解決のためには、インクの改良(乾燥性や顔料の分散性など)を待つしかないというのが現状である。また、上記のインクジェット方式では、図9に示すように、凹部は通常、インクが溜まり易く、インクが凝集するという問題があり、また、島状凸部のエッジ部についてはインクが溝部に流れてしまうために塗装できないという問題もある。
【0014】
本発明は、グラビアオフセット印刷ならびにインクジェット塗装における上記夫々の問題点を解決するためなされたものであり、グラビアオフセット印刷による良好な仕上がり品質を持った凹凸意匠面を有する建築板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の建築板は、溝部と、鋭角な窪み部分が存在する島状の凸部と、からなる意匠面を有する建築板であって、前記凸部の鋭角な窪み部分及びその周囲に形成されているインクジェット塗装層と、前記鋭角な窪み部分を除く前記凸部において、少なくとも一部は該インクジェット塗装層に重ねて形成されているグラビア印刷層とを備える。
【0018】
また、前記インクジェット塗装層の下に、ロールコータ塗装層又はスプレー塗装層が形成されていることで、耐候性能を大きく高めることができる。また、全面スプレーによる中塗り塗装層であるスプレー塗装層に対して、インクジェット塗装を施すことも可能である。
【0019】
また、本発明の建築版の製造方法は、溝部と、鋭角な窪み部分が存在する島状の凸部と、からなる意匠面を有する建築板の製造方法であって、前記凸部の鋭角な窪み部分及びその周囲にインクジェット塗装を施すインクジェット塗装工程と、その次に前記鋭角な窪み部分を除く前記凸部にグラビアオフセット印刷を施すグラビアオフセット印刷工程とを備える。
【0022】
また、前記インクジェット塗装工程の前に、ロールコータ塗装を施すロールコータ塗装工程又はスプレー塗装を施すスプレー塗装工程を更に備えることで、耐候性能を大きく高めることができる。また、全面スプレーによる中塗り塗装層であるスプレー塗装層に対して、インクジェット塗装を施すことも可能である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る建築板の製造工程図、図2は、本発明の一実施の形態に係る建築板の断面図である。建築板41の意匠面の全面にスプレー塗装を施して下塗り層1を形成し(ステップS1)、乾燥させる(ステップS2)。次に、全面スプレー塗装によって中塗り層2を形成し(ステップS3)、乾燥させる(ステップS4)。次に、ロールコータによる凸部塗装を行って、ロールコータ塗装層(上塗り層)3を形成する(ステップS5)。次に、凸部にインクジェット塗装を施してインクジェット塗装層4を形成し(ステップS6)、次に、凸部にグラビアオフセット印刷によってグラビア印刷層5を形成する(ステップS7)。そして、意匠面の全面にクリア塗装を施してクリア塗装層6を形成し(ステップS8)、乾燥させる(ステップS9)。
【0025】
凸部ロールコーティング塗装(ステップS5)は、凸部インクジェット塗装(ステップS6)に先立って行う。これは先述したように、インクジェット塗装が凸部周辺の縁部までインクを供給できないこと、インクジェット塗装のみでは厳しい耐候性能を得るための塗装厚が確保できないことなどの理由からであるが、グラビア印刷に対してもロールコータにより形成した上塗り層3は下地色となっている。
【0026】
このように本発明では、ロールコータによる上塗り層3を下地にして、ロール硬度の低いオフセットロールを使用することで、凸部に対するグラビア印刷を行うものとしている。
【0027】
そして、本実施の形態では、凸部ロールコータ塗装に続いて、インクジェット塗装による鋭角な窪み7をも含む凸部着色塗装を行った後、その上からグラビア印刷を施すものとしており、最終的に耐候性向上のためのクリア塗装を建築板の全表面に行うことで目的とする建築板を得る。
【0028】
なお、中塗り工程(ステップS3)後の乾燥工程(ステップS4)により、建築板41は熱を保有しているので、ステップS5〜S8においては、建築板は、走行中に乾燥してゆくため、最終的にクリア塗装を経た後に、本格乾燥を行うものとしている。
【0029】
図3は、本発明に係る建築板の意匠面の模式図である。鋭角な窪み部がグラビアオフセット印刷によって印刷柄抜け部となっても、その部分はインクジェット塗装によってグラビア印刷の代表色に近似の色に着色されているか、又は、ぼかし塗装が施されているので、印刷柄抜けが目立たない。また、インクジェット塗装面の上にグラビア印刷面を形成しているので、インクジェット塗装の不具合現象として先述した額縁現象が隠蔽されて、全体としての意匠の仕上がりが大幅に向上する。
【0030】
図4は、インクジェット塗装装置の側面図、図5は、インクジェット塗装装置の正面図である。図4、図5において、コンベア12は建築板41を前方に搬送し、コンベア12の上方の前後に近接してインクジェット塗装装置11の第1塗装ヘッド13、第2塗装ヘッド14が備えられ、これら第1塗装ヘッド13、第2塗装ヘッド14の下端にはそれぞれコンベア12の幅方向全体に亘ってジェットノズル15〜15,15〜15が所要のピッチで並設されている。第1塗装ヘッド13,第2塗装ヘッド14にはそれぞれインクタンク16,17内の塗料18,19を送り込むポンプ20,20が接続されるとともに、レリーフ弁21,21を介してインクタンク16,17が接続されている。
【0031】
バルブ制御装置22,23はそれぞれ第1塗装ヘッド13,第2塗装ヘッド14の各ジェットノズル15〜15,15〜15を個別に制御する。パターンデータ記憶部25は塗装すべき色柄模様に対応する色柄パターンを記録している。コンピュータ26はインプットされたパターンデータに基づきバルブ制御装置22,23に制御信号を供給する。光電式センサ27の投光器28と受光器29はコンベア12上の建築板搬送路の両側の所定位置に設けられ、検出信号をコンピュータ26に供給するものである。エンコーダー30はコンベア12の駆動ロール31に連結し、極小回転角、例えば2000分の360度の極小回転角毎にコンピュータ26にパルスを送信するものである。
【0032】
表面に縦横の溝部42〜42を介して多数の凸部43〜43を区画した建築板41に対して、ぼかし色柄模様を形成する領域を決め、そのパターンデータ記憶部25に記憶した色柄パターンをコンピュータ26にインプットする。インクタンク16,17には、それぞれぼかし色柄模様の基色となる異色の塗料18,19を収容する。
【0033】
そこで、ロールコータによる凸部塗装が施された建築板41がコンベア12上を搬送されてくると、建築板41の前端部の所定位置到来を光電式センサ27が検出して検出信号をコンピュータ26に供給する。一方、コンベア12の作動に伴い、駆動ロール31に設けたエンコーダー30からパルスがコンピュータ26に供給される。コンピュータ26は、光電式センサ27からの検出信号に基づいてエンコーダー30からのパルスを計数し始め、パルス数が予め記憶された設定領域に至ると、パルス数に応じてパターンデータ記憶部25に基づく制御信号を逐次、バルブ制御装置22,23に送信指令し、これによりバルブ制御装置22,23が第1,第2ヘッド13,14の各ジェットノズル15〜15、15〜15をそれぞれ開閉動作する弁24〜24、24〜24を個別に制御し、塗料18,19が弁24〜24、24〜24の開放時にジェットノズル15〜15,15〜15から搬送中の建築板41の表面の凸部43〜43の所要位置に噴出して、パターンデータ記憶部25に記憶されている色柄パターンに基づいてぼかし色柄模様が塗装される。第1塗装ヘッド13と第2塗装ヘッド14とが所定の間隔で配置されているので、第1塗装ヘッド13の塗料18と第2塗装ヘッド14の塗料19とが建築板41の所定の位置でわずかに混じり合い、これら塗料18,19が混合されたぼかし色柄模様が現出される。
【0034】
なお、上記のように、ぼかし色柄模様を発現するのではなく、グラビア印刷の代表色に近似の色の塗装を行う場合には、いずれか1系統の塗装ヘッドからグラビア印刷の代表色に近似の色の塗料を噴出させればよい。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、意匠面に鋭角な窪み部を有する建築板においても、グラビアオフセット印刷による印刷柄抜けを目立たないようにすることができ、違和感のない良好な仕上がり品質を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る建築板の製造工程図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る建築板の断面図である。
【図3】本発明に係る建築板の意匠面の模式図である。
【図4】インクジェット塗装装置の側面図である。
【図5】インクジェット塗装装置の正面図である。
【図6】建築板の印刷装置の構成例を示す図である。
【図7】図6に示した建築板の印刷装置の問題点を示す図である。
【図8】印刷柄抜けが生じた意匠面を示す図である。
【図9】インク凝集部(額縁)の発生例を示す図である。
【符号の説明】
1 下塗り層
2 中塗り層
3 ロールコータ塗装層
4 インクジェット塗装層
5 グラビア印刷層
6 クリア塗装層
7 鋭角な窪み
11 インクジェット塗装装置
12 コンベア
13 第1塗装ヘッド
14 第2塗装ヘッド
15 ジェットノズル
16,17 インクタンク
18,19 塗料
20 ポンプ
21 レリーフ弁
22,23 バルブ制御装置
24 弁
25 パターンデータ記憶部
26 コンピュータ
27 光電式センセ
28 投光器
29 受光器
30 エンコーダー
31 駆動ロール
41 建築板
42 溝部
43 凸部
51 グラビアオフセット印刷装置
52 グラビア版ロール
53 オフセットロール
54 クリーニングロール
55 バックアップロール
56 不要インク除去用ブレード
57 残留インク除去用ブレード
58 エアー吹き付け装置
59 残留インク強制乾燥装置
I インク

Claims (4)

  1. 溝部と、鋭角な窪み部分が存在する島状の凸部と、からなる意匠面を有する建築板であって、前記凸部の鋭角な窪み部分及びその周囲に形成されているインクジェット塗装層と、前記鋭角な窪み部分を除く前記凸部において、少なくとも一部は該インクジェット塗装層に重ねて形成されているグラビア印刷層とを備えることを特徴とする建築板。
  2. 前記インクジェット塗装層の下に、ロールコータ塗装層又はスプレー塗装層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の建築板。
  3. 溝部と、鋭角な窪み部分が存在する島状の凸部と、からなる意匠面を有する建築板の製造方法であって、前記凸部の鋭角な窪み部分及びその周囲にインクジェット塗装を施すインクジェット塗装工程と、その次に前記鋭角な窪み部分を除く前記凸部にグラビアオフセット印刷を施すグラビアオフセット印刷工程とを備えることを特徴とする建築板の製造方法。
  4. 前記インクジェット塗装工程の前に、ロールコータ塗装を施すロールコータ塗装工程又はスプレー塗装を施すスプレー塗装工程を更に備えることを特徴とする請求項3記載の建築板の製造方法。
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