JP3647026B2 - 銅塩および芳香族ハロゲン化合物により安定化されたポリアミド組成物 - Google Patents

銅塩および芳香族ハロゲン化合物により安定化されたポリアミド組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は安定化されたポリアミド組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリマーは加熱によって酸化されると劣化し、この材料の脆化やこれから製造された製品の機械的損失となる。したがって、異なった活性でもって脆化時間を遅延させる特定の化学的化合物を添加する。これらのいわゆる抗酸化剤は、大抵フェニル系誘導体、アミン系誘導体あるいはリン系誘導体をもとにして構成される。抗酸化剤の特殊な変種(variant)は、ポリアミンとともに使用される。特に、他のポリマーでは活性を示さない1つの活性な化合物群が、いわゆる銅安定剤である。
【0003】
これらのタイプの安定化系は、古くから公知であり、ポリアミドの調製、例えば、タイヤコードの製造に使用されるポリアミドフィラメントおよび工業用途、特に工業用エンジニアリング(自動車)および電子産業(スイッチ、印刷回路板)の分野におけるポリアミド押出成形部品などに広く使用されている。
【0004】
これらの銅安定化剤は通常、2つの成分からなる。第1成分としては、塩化銅または他の銅塩などの化合物が使用される。抗酸化剤として効果的であるためには、第2成分としてハロゲン化合物が大過剰に添加されなければならない。この点では、特に、ヨウ化カリウムおよび臭化カリウムもまた使用されている。ハロゲンに対する銅の使用モル比は通常、1:5〜15である。推奨される量は、一般的に銅30〜200ppm、したがって、ハロゲン150〜3,000ppmである。
これらの銅安定化剤はいくらかポリアミドにおいて満足すべき効果を示す。
【0005】
しかしながら、これらの共通して使用される銅安定化剤は、いくぶん厳しい欠点を示す。
ポリアミドは(コンディショニング中に)約3%の水を吸収する。もしも温度変化があると、水可溶性成分がポリアミドから表面に抽出され、鱗状物(scale) を生成することとなる。もしも塩化銅、塩化カリウムまたは他の可溶性塩化物が使用されると、これらは表面に抽出されて、大抵、酸と反応する吸湿性鱗状物を生成するであろう。したがって、耐トラッキング性は減少するであろう。電気的成分とともに、これは損失となるであろう。もしも金属と接触すると、接触箇所は大きな腐食を受けるであろう。したがって、耐トラッキング性の問題に関する電子産業や自動車産業の要求を満足することは困難である。
【0006】
同時に、これらの安定化剤をポリアミド中に分散させることは難しい。安定化ポリアミドを調製する場合、使用する安定化剤を細かく粉末化し、確実にポリアミドと非常に均一に混合できることが重要である。通常、使用する成分が凝集するという傾向が、これに関連して問題となる。したがって、原料は非常に細かく粉砕して、再凝集に対して保護されなければならない。添加そのものが通常、制御が非常に難しいから、マスターバッチを製造してから添加する。それでも溶融物中における固体粒子の異質な混合は、フェノール系、アミン系および他の抗酸化剤を使用する場合のように、安定化剤そのものが溶融可能であって、作業条件下に均質に分散することができると仮定された場合と比べると、決して最適なものではでない。安定化剤の結晶性粒子は、たとえそれらが細かく分散されていても、ポリアミドの物理的性質にネガティブに作用する。これは可能性ある非均質性に起因するのみならず、微細粒子がポリマー中でより高い結晶性となる結晶化核剤として作用するとの事実による。これはネガティブな副作用となり得る。衝撃強度は、たとえば非安定化ポリアミドの初期値に比べて20〜30%ほど減少し得る。
【0007】
さらに、通常の安定化化合物は、コンディショニング(conditioning)後にポリアミド中で、しばしば青色または緑色の変色となる。加工中に高い剪断応力が与えられた結果、ガラス繊維で補強されたポリアミドはさらに、酸化銅は生成による茶色の変色を示す。特に、生産サイクル中の変色の変動はネガティブであり、これは生産された材料を無色または着色製品に使用することを難しくさせるであろう。したがって、このようなポリアミドは通常、黒色に着色した後に使用されている。
【0008】
通常の安定化化合物はしばしば、分散を最適化するために、水溶液として重合中に添加されている。しかしながら、1つの欠点は、この添加が使用する容器および溶融押出機の金属表面上に金属銅または酸化銅のスケールを形成することにつながることにある。これは色の変動およびそれゆえに生産が非連続となるであろう。フィラメントの紡糸中に、ノズルに鱗状物を形成することがしばしば、発生し、工程の非連続化につながるであろう。
【0009】
これらの欠点を考慮して、いくつかの改良が提案されている。
EP−A−390277には、安定化ポリアミド4.6組成物が記載されている。この特定の高融点ポリアミドは不溶性銅塩およびハロゲン置換有機化合物の添加によって安定化され得る。これらの組成物は電気または電子用途に好適である。
【0010】
GB-A-1131933およびGB-A-1143826には、ポリアミドに可溶性の銅化合物と多くとも7個の炭素原子を有する特定のハロゲン含有有機脂肪族化合物の混合物により安定化された安定化線状ポリアミドが記載されている。しかしながら、これらの有機化合物は高い揮発性を有する。これは有機化合物の流出による材料の望ましくない脆化となるであろう。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
先行技術に関する上記した問題から見て、したがって、本願発明の目的は長期温度安定性を同時に改良しつつ、上記した欠点を示さない安定化されたポリアミド組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この問題は、安定化剤として少なくも1種の銅塩と、(a)芳香族化合物、(b)脂肪族ホスフェート、(c)パラフィンまたはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機ハロゲン含有化合物が含まれ、但し、芳香族化合物が臭素含有スチレンオリゴマーである場合には、ポリアミドはポリアミド4.6ではないことを特徴とする安定化されたポリアミド組成物である本発明によって解決される。
驚くべきことに、このような安定化ポリアミド組成物は改良された性質および増大した長期温度安定性を示すことが見出された。
【0013】
さらに、本発明は少なくとも1種のポリアミド、少なくとも1種の銅塩および(a)芳香族化合物、(b)脂肪族ホスフェート、(c)パラフィンまたはこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種のハロゲン含有化合物の混合を含み、但し、芳香族化合物が臭素含有スチレンオリゴマーである場合には、ポリアミドはポリアミド4.6でない安定化ポリアミド組成物の調製方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明はポリアミド組成物の安定化のために、上記した少なくとも1種の銅塩および少なくとも1種の有機ハロゲン含有化合物の使用を提供する。
【0015】
【発明の実施の態様】
化合物(a)および/または(b)がそれぞれの場合、好ましい。
本発明による少なくとも1種のポリアミドはいかなるポリアミドであってもよい。ポリアミドは、ポリマー骨格中に繰返し炭素アミド基、−CO−NH−を示すポリマーである。ポリアミドは
(a)アミノカルボン酸およびその機能的誘導体、例えばラクタムまたは
(b)ジアミンとジカルボン酸またはそれらの機能的誘導体
から製造される。
【0016】
モノマー単位を変化させることによって、ポリアミドは様々な形で得られる。本発明によれば、すべてのポリアミドは、例えばコポリアミドまたはホモポリアミドでも安定化されるであろう。さらに、ポリアミドとポリエーテルのブロックコポリマーおよび他のポリマー変性ポリアミドも使用可能である。もっとも一般的なタイプは、ε−カプロラクタムから得たポリアミド6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸から得たポリアミド66である。他の重要なポリアミドとしてはポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、PACM−12、MPBI−1、PPD−Tおよびアラミドがある。
【0017】
さらに、ポリアミドと他のポリマーとのブレンドを使用することも可能である。しかしながら、安定化化合物はブレンド成分に関してはネガティブな影響を示すであろう。したがって、これらは注意深く選択されなければならない。
【0018】
本発明によれば、いかなる銅塩を使用してもよい。
無機酸または有機酸の1価または2価銅の塩が好ましい。好適な銅塩の例としては、Cu、CuClまたはCuCNなどの銅(I)塩、CuCl、CuBr、Cu−酢酸塩、Cu−硫酸塩、Cu−ステアリン酸塩、Cu−プロピオン酸塩、Cu−酪酸塩、Cu−乳酸塩、Cu−安息香酸塩またはCu−硝酸塩などの銅(II)塩ならびに上記した塩のアンモニウム錯体がある。
【0019】
さらに、Cu−アセチルアセトン錯体またはCu−EDTAなどの化合物を使用してもよい。さらに、異なった銅塩の混合物を使用することも可能である。随時、銅粉末を使用してもよい。これはポリアミド溶融物と反応して銅化合物を生成する。Cu(I)塩化物および有機酸のCu−塩が好ましく、特に、CuおよびCu−酢酸塩が好ましい。
【0020】
安定化ポリアミド組成物に使用する銅の量は、ポリアミドの機械的性質に不利益に影響しないかぎり、特に限定されない。通常、その量は全組成物に対して、銅10〜1000ppmである。好ましくは、銅20〜700ppm、特に50〜150ppmが使用される。
【0021】
本発明の有機ハロゲン含有化合物としては、いかなる芳香族および/またはいかなる脂肪族ホスフェートおよび/またはいかなるパラフィンを使用してもよい。芳香族臭素含有化合物、臭素含有脂肪族ホスフェートおよび塩素または臭素含有パラフィンが好ましい。本発明で使用する化合物の分子量は限定されない。化合物が非常に揮発性でなく、該化合物はポリアミドと容易に、かつ均質に混合されて、最終組成物中でわずかな泳動(migration)傾向を示すにすぎないように選択されるべきである。さらに、臭素含有芳香族オリゴマー性エポキシ樹脂、特にテトラブロモビスフェノール−Aをもとにした化合物が好ましい。
【0022】
使用可能なパラフィンの例としては、特に、ハロゲン化、特にフッ素化、塩素化または臭素化パラフィンがある。さらに、ソフトならびにハードパラフィンが使用可能である。クロロパラフィン(例えば、平均分子式C2024Cl18を有する)、テフロンワックス(例えば、平均分子式C202220を有する)、およびビトン(Viton) コポリマー(ヘキサフルオロプロプレンとフッ化ビニリデンとのコポリマー)などの化合物が好ましい。
【0023】
好適な化合物の例としては、トリ−(ネオブロモペンチル)ホスフェート(ホスフェート1)、ジブロモジオキシホスホリナン誘導体および塩素含有ポリホスフェートおよびデカブロモフェニル、デカブロモフェニルエーテル、ポリジブロモスチレン、テトラブロモビスフェノール−A、塩素化および臭素化スチレンオリゴマー、テトラブロモビスフェノール−A誘導体(BEB500C(EP−オリゴマー1)およびBEB6000(EP−オリゴマー2)など(その構造は以下に示される))、および塩素化ジメタンジベンゾ(a,e)シクロオクテン誘導体がある。トリス(ジブロモネオペンチル)ホスフェートおよびデカブロモフェニルおよびポリジブロモスチレンが好ましい。さらに、有機ハロゲン含有化合物の混合物を使用することも可能である。
【0024】
ハロゲン含有有機化合物の添加量は通常、10重量%以下である。一般には、このような量は、全組成物に対してハロゲン50〜30,000ppm、好ましくは100〜10,000ppm、より好ましくは500〜1500ppmが存在するように添加される。
【0025】
したがって、通常、安定化ポリアミド組成物中のハロゲンに対する銅の割合、1:1〜1:3000が得られる。(モル比に基づいて)1:2〜1:100の領域、特に1:5〜1:15の範囲が好ましい。
【0026】
より高い添加量は通常、安定化効果の増加につながらない。有機ハロゲン含有化合物を5%以上含有するポリアミドは有意な低安定性を示す。それらはポリマー鎖の大きな解裂を示し、製品の早まった脆化および強い変色となる。好ましくは有機ハロゲン含有化合物の含量は、3重量%以下、特に1重量%以下である。 上記した銅塩および有機ハロゲン含有化合物は、以下に安定剤成分と呼ばれるであろう。
【0027】
本発明によるポリアミド組成物は改良された長期温度安定性、改良された耐トラッキング性および低変色性を示す。本発明の組成物のこれらの利点は、少量だけ添加されなければならない有機ハロゲン含有化合物の相乗効果によると考えられる。
【0028】
CTI−値として測定される耐トラッキング性は、有機化合物の使用によって大きく改良される。したがって、本発明のポリアミド組成物のための実施領域は、電気または電子産業に使用される製品にまで広げられる。
【0029】
電気製品のためのポリアミドは、CTI−値600、しかしながら、少なくとも550を有するべきである。この値は純粋なポリアミドでもって達成する。CTI−値はDIN−IEC112に従って測定される。
【0030】
本発明のポリアミド組成物では、さらに、通常の銅/ハロゲン塩安定化剤と比べて、改良された電気的強度を示す。
使用された有機化合物は、ハロゲン塩に比べて、ポリマー溶融物において改良された分散性を示す。したがって、複雑な均質化は省略され得る。同時に、ステアリル酸銅などの銅塩を使用するならば、安定化剤自体は溶融可能であって、したがって、ポリアミド中に容易に分散する。
安定化成分は全ての種類のポリアミンと相溶である。したがって、加工装置(ノズル、押出機、金型)および生産された部分およびフィラメントでのブルーミングが生じない。
【0031】
さらに、本発明のポリアミド組成物は、変色に対して非常に限定された傾向のみを示す。特に、従来の銅安定化剤を使用したガラス繊維強化ポリアミドでは、変色は非常に強く、これらの組成物は黒色に着色した後にのみ使用可能であった。したがって、この変色が本発明のポリアミド組成物では生じてもわずかであることは驚くべきことである。色素誘導体を使用しないで顔料で着色された組成物を得ることが可能である。TiOで着色した組成物ですら、クリアな白色を維持する。これは、着色ポリアミドの新しい応用分野を、改良された長期熱安定性であって、強い変色となる欠点を有する一般的な安定化剤でのみ得られうる非常に長い安定性を要求する領域へと開く。
したがって、本発明のポリアミド組成物は、改良された長期温度安定性との利点を有し、同時に顔料で着色可能でり、通常の変色が顔料着色を変化させる危険性は存在しない。
【0032】
本発明のポリアミド組成物の着色に関して、二酸化チタン、鉛白、亜鉛華、リトポン(lipone は誤記)、アンチモン白、カーボンブラック、鉄黒、マンガン黒、コバルト黒、アンチモン黒、クロム酸鉛、鉛丹、亜鉛黄、亜鉛グリーン、カドミウムレッド、コバルトブルー、紺青、ウルトラマリン、マンガンバイオレット、カドミウムイエロー、シュバインフルト(schweinfurt) グリーン、モリブデンオレンジ、モリブデンレッド、クロムオレンジおよびクロムレッド、酸化鉄レッド、酸化クロムグリーン、ストロンチウムイエロー、酸化クロムグリーン、モリブデンブルー、チョーク、オーカー、黄土(umbra) 、緑土、シエーナ土(terra di sienna) およびグラファイトなどの一般的な顔料すべてが好適である。
【0033】
さらに、本発明のポリアミド組成物は加水分解に対する安定性についても優れている。それらは、塩溶液、グリコール水混合物、および高温脂肪または油脂および有機溶媒に比べて、酸性および塩基性条件下に改良された長期安定性を示す。したがって、通常、認識される機械強度 (衝撃強度、引張強度) の減少およびポリアミドの脆化の傾向は大きく減少し、長期耐性が向上した。フェノール系またはアミン系化合物または一般的な銅/ハロゲン塩安定化剤などの通常、使用される安定化剤に比べて、改良された効果が得られる。
【0034】
さらに、本発明のポリアミド組成物は、所望の安定化効果に不利益な影響を与えることなく、潤滑剤、可塑剤、結晶化促進剤および顔料などのさらに別な添加剤と制限なく混合し得る。ある場合には、使用した添加剤ですら、ポリアミド中で熱分解または変色に対して安定化される。したがって、BBSなどの可塑剤、モンタン蝋などのワックスと混合したポリアミドは、本発明のポリアミド組成物中に使用した場合には、もはや高い老化の傾向を示さない。
ガラスボール、ガラス繊維、金属添加物または他の強化材を含むポリアミド はさらに、一般的な安定化剤に比べて、有意に改良された長期熱的老化安定性を示す。
【0035】
本発明のポリアミド組成物はさらに、通常の充填材および強化材を含んでいてもよい。好適な充填材および強化材は、繊維、あらより糸、ビーズまたは粉末の形をしたガラス材料、シリカ、アルミナ、またはアルミニウムシリケートなどの酸化物材料ならびにグラファイトまたはプラスチック繊維またはウイスカーである。
【0036】
本発明のポリアミド組成物の上記した利点は、それらを繊維の調製および電気または電子産業の部品、主にプラグ部品、プレート (電気接触基板) およびケーシング部品に使用することが可能となる。
【0037】
さらに、本発明のポリアミド組成物は、変色傾向のさらなる改良が達成され得たか否かを決定するために評価された。驚くべきことに、さらなる変色の減少は有機ホスファイトまたは無機ホスフォネートまたは無機次亜リン酸塩を添加して達成されることが見出された。これらの物質はポリアミドの色安定化剤として公知である。しかしながら、これらの安定化剤はしばしば銅塩とともに銅酸化物を生成することも公知である。したがって、灰色変色または茶色/黒色変色が生じた。したがって、本発明の組み合わせがいかなる変色も生じないこと、さらに調整後に時々生じる青色変色は有機ホスファイトまたは無機ホスフォネートまたは無機次亜リン酸塩の添加によって減少されることは驚くべきことであった。この混合中に生じるわずかな変色は色安定性ポリアミドの調製において交雑(cross) 染色され得る。
また、この添加が熱的貯蔵中にポリアミドの老化をさらに遅延させることを見出した。この効果は特に有機ホスファイトにおいて有意である。
【0038】
使用可能な有機ホスファイトは亜リン酸のエステルである。脂肪族ならびに芳香族エステルまたはその混合エステルが使用可能である。典型的な例としては、例えば、ジメチルおよびジエチルホスファイト、トリメチルおよびトリエチルホスファイトならびにプラスッチク加工産業において公知である添加剤がある。典型的な例は、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(ホスファイト20)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ホスファイト21)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト(ホスファイト23)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソオクチルホスファイト、ジステアリルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(p−ノニルフェニル)ホスファイトがある。これらの化合物は、Irgafos 、Alkanox およびWestonとの商品名にて、Ciba、WestonおよびThe Great Lakes から入手可能である。好ましいものは、特にホスファイト20、ホスファイト21、ホスファイト22およびホスファイト23である。
【0039】
使用可能な無機ホスフォネートは、ホスフォン酸の塩である。アルカリ金属、アルカリ土類金属および他の通常の金属全てが塩ビルダーとして使用可能である。特に、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびアルミニウムが好ましい。特にナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムが好ましい。好ましいホスフォネートはホスフォン酸水素ジナトリウムである。
【0040】
使用可能な無機次亜リン酸塩は次亜リン酸の塩である。塩形成に関しては無機ホスフォネートに関して列記した上記金属が参照される。次亜リン酸のナトリウム塩は使用可能な次亜リン酸塩の好ましい例である。
【0041】
上記した添加剤の添加量は0.005〜1.0%(50〜10,000ppm)、好ましくは0.05〜0.2%(500〜2000ppm)であり、特に、0.075〜0.15%(750〜1500ppm)が好ましい。これらの量はそれぞれ全組成物に対する。
【0042】
使用される有機ホスファイトは、好ましくは溶融可能であり、加工安定性およおび抽出に対して安定である。リン酸が解離されないため、全組成物へ不利益な効果をもたらさないことが確実である。上記した有機ホスファイト、特にホスファイト20、21、22および23は、この要求を十分に満足する。したがって、これらの化合物が特に好ましい。
【0043】
さらに、有機ホスファイト、無機ホスフォネートおよび無機次亜リン酸塩の添加は、好ましくは、安定化成分で安定化した基本組成物の調製後にのみ行なうべきであることが、本発明の安定化ポリアミド組成物の調製中に認識されている。
【0044】
もしも、請求項1の安定化ポリアミド組成物がまず生産され、そして、もしも有機ホスファイト、無機ホスフォネートまたは無機次亜リン酸塩がその後の添加工程中にのみ添加されるなら、変色は生じない。上記した手法は特に無機ホスフォネートで効果的である。有機ホスファイト、無機ホスフォネートまたは無機次亜リン酸塩はマスターバッチの形態などで添加することができる。マスターバッチ技術に関しては、これに関する前記記述が参照され、同じ原理がここでも有効である。ポリアミド組成物の生産は通常、請求項1に記載されるように選択された少なくとも1種の銅化合物と少なくとも1種のハロゲン含有化合物と少なくとも1種のポリアミドとを混合して実施される。
【0045】
その成分、いわゆる互いに混合して溶融されるポリアミドと安定化化合物を一般的な装置を使用して混合することができる。しかしながら、まずポリアミドを溶融し、続いて安定化成分を混合することが好ましい。溶融ポリアミドへマスターバッチの形態で安定化化合物を添加することがなおより好ましい。これは特に安定化成分の計量(metering)を簡単にする。
【0046】
好適な混合装置は当業者には公知であり、混合ロール、非連続混練機、連続押出機および混練機および静止ミキサーを含む。連続押出機、単式スクリュー型押出機ならびに複式スクリュー型押出機を使用することが好ましい。これらは良好な混合を可能とする。通常、ポリアミドは押出機内で溶融され、安定化成分は後から適当な開口部を通って計量され得る。この工程ならびにこれらの目的をもつ装置は、当業者には公知である。
【0047】
さらに、例えば、モノマー混合物へポリアミドを添加して、ポリアミドの製造中に安定化成分を添加することが可能である。これはさらに混合工程がないので、非常に良好な分散を生じ、製造コストおよび製造時間の減少につながる。
【0048】
もしも、安定化成分のマスターバッチを本発明のポリアミド組成物のために使用する場合、マスターバッチは非常に良好な均質混合を可能とする非連続ミキサー、例えばバス(Buss)混練機中で製造され得る。しかしながら、複式スクリュー型押出機またはZSK押出機などの連続ミキサーも通常、使用される。使用されるマトリックス材料は通常、マスターバッチと後から混合される同じポリアミドである。しかしながら、他のポリアミドまたは他のポリマーも使用可能である。安定化成分の濃度はマトリックス材料との相溶性および最終ブレンド中の所望最終濃度および良好な計量(metering)能力による。濃度50%以下のマスターバッチは、例えば、Cuおよびポリジブロモスチレンの混合物(1:10)から得られる。
【0049】
以下に、銅塩および有機ハロゲン含有化合物のいくつかの好ましい組み合わせが示される。
【0050】
【表1】
Figure 0003647026
【0051】
EPオリゴマーは特に高温安定性を有する。さらに、銅化合物との組み合わせは安価である。
ポリジブロモスチレンとEPオリゴマー1は高濃度マスターバッチの調製に好適である。これらの化合物の50%までのマスターバッチが調製され得る。
EPオリゴマー2は10%までのみ導入され得る。ポリアミド中のアミノ基とEP末端基との反応によって、粘度の強増加が現れる。しかしながら、この化学反応は最終製品中の分散と結合が増加するという利点を有する。
【0052】
【例】
下記に本発明を例によって説明する。
下記例において試験したサンプルは、以下のようにして調製して試験した。
【0053】
試料の調製
安定化剤混合物と潤滑剤であるCa−ステアリン酸塩をポリアミド顆粒とともに混合し押出機中で溶融する。この混合物を押出機中で均質化し、連続的に押し出した。続いて、顆粒を作成する。Cu濃度は常に100ppm、ハロゲン濃度は1000ppm(0.1%)およびCa−ステアリン酸塩は0.3%であった。顆粒を乾燥した後、衝撃強度(DIN53453)および曲げ強度(DIN53452)を測定するために、射出成形装置を使用してテストサンプルを成形した。
【0054】
熱老化DIN53497およびDIN53446
先に調製したテストサンプルを加熱オーブン中に、130、150および165℃にて導入し、測定が初期値の50%以下となるまで、これらの温度で貯蔵した。この値が半分となった時間がポリアミドの熱的老化安定性の値である。この値が使用した安定化剤の効果を証明する。多くのポリアミドは安定化しないと急速に老化する(150℃で24時間)から、安定化していないこれらの材料はしばしば使用できない。
【0055】
耐トラッキング性(CTI−値)
テストサンプルを大きさ3×5cm(厚さ3mm、射出成形)に製造し、DIN−IEC112に従って試験した。
【0056】
色測定
テストサンプルの変色は光学的に評価した。さらに、色強度は輝度(DIN6174;DIN5033;パート1〜7)の測定によって評価した。
【0057】
例1
PA6の安定化、150℃での熱老化、他の銅安定化剤との対比、添加量銅100ppm、ハロゲン1000pmm、値が初期値の50%に減少するまでの衝撃強度の測定(半減値測定)、耐トラッキング性の測定(CTI−値)、成形後および調整後の色、色測定(CIEラボ値、DIN6174)
【0058】
【表2】
Figure 0003647026
【0059】
【表3】
Figure 0003647026
【0060】
【化1】
Figure 0003647026
【0061】
これらの結果は本発明により安定化されたポリアミド組成物は著しく改良された耐トラッキング性および同時に長期熱安定性を示す。有害な変色は本発明のサンプルを後から着色しても見られない。
【0062】
さらに実験はホスファイトまたはホスフェート1000ppmを使用して上記のように実施した。サンプルおよび結果を表2aに示す。
【0063】
【表4】
Figure 0003647026
【0064】
【表5】
Figure 0003647026
【0065】
例2
PA66(生)の安定化、165℃の熱老化試験、例1と同様な組成物と測定、ホスファイトまたはホスフォネート1000ppmを使用した別な実験も実施した。
【0066】
【表6】
Figure 0003647026
【0067】
本発明のこれらのサンプルは改良された耐トラッキング性および熱安定性を示すから、電子領域においてこれらのサンプルを利用することが可能である。
【0068】
例3
30%ガラス繊維(GF30)強化PA66の安定化、例2と同様の実験、ホスファイトまたはホスフェートの添加量1000ppm
【0069】
【表7】
Figure 0003647026
【0070】
本発明のサンプルは、前記サンプルのようなCTI−値を示し、電気部品への使用が可能である。
【0071】
例4
銅安定化剤を使用したPA66(生)およびPA66GF30の安定化、銅100ppm、ハロゲン1000ppm、ホスファイトまたはホスフォネート1000ppm、初期衝撃強度:PA66(生)によるアイゾットおよびPA66GF30によるチャーピー(Charpy) (ノッチなし) の測定
【0072】
【表8】
Figure 0003647026
【0073】
例5
水およびエタノールによるPA66およびPA66GF30の抽出安定性、DIN53738による評価、銅100ppmおよびハロゲン1000ppm、ホスファイトまたはホスフォネート1000ppmによる安定化、16時間還流後の抽出組成物の測定
【0074】
【表9】
Figure 0003647026
【0075】
例6
PA66GF30の加水分解安定性、100%グリコール中に135℃、48時間、貯蔵した後の機械的性質(硬度および曲げ強度)の減少、銅150ppm、ハロゲン1500ppm、ホスファイトまたはホスフォネート1000ppm
【0076】
【表10】
Figure 0003647026
【0077】
(aS):貯蔵後、ISO2039/1に従って測定したボール圧硬度、DIN53456に従って測定した曲げ強度
【0078】
【発明の効果】
本発明のサンプルおよび比較例は、本発明のポリアミド組成物が改良されさた長期温度安定性および改良された最大温度耐性および改良された耐トラッキング性を示すことを明らかにする。また、変色する傾向は従来のポリアミド組成物に比べて減少される。初期衝撃強度は塩の形態の安定化剤(Cu/K)の使用によって影響を受ける。Kを可溶性共安定化剤(ホスフェート1)に置換すると、その減少を有意に低下し、それを避けることができる。これは本発明のサンプルの優位性を証明する。

Claims (10)

  1. 安定化剤として、少なくとも1種の銅塩および少なくとも1種の有機ハロゲン含有化合物を含み、該有機ハロゲン含有化合物は、
    (a)脂肪族ホスフォネート;および
    (b)パラフィン;
    またはこれらの混合物からなる群から選択され、但し、前記有機ハロゲン含有化合物はヨウ素含有化合物でないことを特徴とする、安定化ポリアミド組成物。
  2. 銅塩が、有機酸および無機酸の銅塩から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の安定化ポリアミド組成物。
  3. 銅塩が、銅(I)ハロゲン化物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の安定化ポリアミド組成物。
  4. 脂肪族ホスフォネートが、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ジブロモジオキシホスホリナン誘導体および塩素含有ポリホスフォネートから選択される脂肪族ホスフォネートから選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の安定化ポリアミド組成物。
  5. パラフィンがクロロパラフィンまたはブロモパラフィンであることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載される安定化ポリアミド組成物。
  6. 少なくとも1種のポリアミド、少なくとも1種の銅塩および
    (a)脂肪族ホスフォネート;および
    (b)パラフィン;
    またはこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の有機ハロゲン含有化合物を互いに混合し、但し、前記有機ハロゲン含有化合物はヨウ素含有化合物でないことを特徴とする、安定化されたポリアミド組成物を製造する方法。
  7. 少なくとも1種の銅塩および少なくとも1種の有機ハロゲン含有化合物がマスターバッチの形態で添加されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 少なくとも1種の銅塩少なくとも1種の有機ハロゲン含有化合物のポリアミド安定化のための使用であって、前記有機ハロゲン含有化合物が、
    (a)脂肪族ホスフェート;および
    (b)パラフィン;
    またはこれらの混合物からなる群から選択される、ポリアミド安定化のための前記使用。
  9. さらに、少なくとも1種の有機ホスファイト、無機ホスフォネートまたは無機次亜リン酸塩を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の安定化ポリアミド組成物。
  10. さらなる工程において、少なくも1種の有機ホスファイト、無機ホスフォネートまたは無機次亜リン酸塩を、請求項6または7に従って得られた混合物に添加することを特徴とする、請求項6または7に記載の、安定化ポリアミド組成物を製造する方法。
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