JP3640545B2 - 非水系二次電池用正極活物質ニッケル酸リチウムの製造方法 - Google Patents

非水系二次電池用正極活物質ニッケル酸リチウムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はLiNiO2又はLiNi1-XX2(0<X<0.5、Mは遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素)の製造方法、及びそのLiNiO2又はLiNi1-XX2(0<X<0.5、Mは遷移金属又は3B、4B、5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素)を正極活物質として用いた非水系二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のニッケル酸リチウム(LiNiO2)の製造方法の代表的なものとして次のような報告がある。
【0003】
ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.),76,1499(1954)に示されているLiNiO2の製造方法の一例では、固体の無水水酸化リチウムと金属ニッケルとを混合し、空気雰囲気で焼成する。
【0004】
また、特開平2−40861号公報に示されるLiNiO2の製造方法の一例では、固体の水酸化ニッケル一水和物と固体の酸化ニッケルとを混合する。まず、その混合物を600℃、空気雰囲気で焼成する。そして、焼成物を粉砕し、再び600℃〜800℃で焼成する。
【0005】
また、特開平5−205741号公報に示されるLiNiO2の製造方法の一例では、固体の過酸化リチウムと酸化ニッケルを混合し、750℃以下で焼成した後急冷させる。
【0006】
また、特開平5−251079号公報に示されるLiNiO2の製造方法の一例では、固体の硝酸リチウムと、固体の水酸化ニッケルあるいはオキシ水酸化ニッケルの少なくともいずれか1つとを混合し、500℃〜1000℃で焼成する。
【0007】
また、特開平6−203834号公報に示されるLiNiO2の製造方法の一例では、酢酸ニッケルと酢酸リチウムとをエチレングリコールに加熱溶解させ、さらに加熱し固化させた物質を400℃、空気中で熱処理、粉砕後、酸素気流下700℃で焼成する。そして、この焼成物を再び酸素気流下800℃で焼成する。
【0008】
また、ケミストリー・エキスプレス(Chemistry Express),6,161(1991)に示されるLiNiO2の製造方法の一例では、4.5Mの水酸化リチウム水溶液と1.0Mの硝酸ニッケル水溶液を60℃で等モル混合する。この混合溶液を減圧下において、撹拌混合しながら蒸発乾固させ、得られた固形物質を粉砕し、300℃で予備焼成した後、800℃で再び焼成する。
【0009】
また、特開平6−44970号公報に示されるリチウムとニッケルの複合酸化物の製造方法の一例では、ハロゲン化ニッケル、硫酸ニッケル、リン酸ニッケル、酢酸ニッケル、蓚酸ニッケルの中から選ばれる少なくとも1種のニッケル塩による飽和水溶液に、このニッケル塩と等モルの水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウムの中から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩による飽和水溶液を注加する。この混合物を空気中又は減圧下において、撹拌混合しながら蒸発乾固させ、得られたケーキ状固形物質を600℃〜800℃で焼成する。
【0010】
また、特開平6−44971号公報に示されるリチウムとニッケルの複合酸化物の製造方法の一例では、酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルの中から選ばれる少なくとも1種の、水に難溶性又は不溶性のニッケル化合物粉末に、ハロゲン化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、リン酸リチウム、ホウ酸リチウム、酢酸リチウム、蓚酸リチウムの中から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩による飽和水溶液を注加して充分に撹拌練合する。この混合物を空気中あるいは減圧下において、撹拌しながら蒸発乾固させ、得られたケーキ状固形物質を600℃〜800℃で焼成する。
【0011】
また、特開平6−96769号公報に示されるLiNiO2の製造方法の一例では、リチウム源とニッケル源において、リチウム源中のリチウムのモル量とニッケル源中のニッケルのモル量との比が1:1になるように混合する。このとき、分散媒として少量の水を加える。この混合物を乾燥させ、650℃〜800℃で焼成する。
【0012】
また、特開平9−156931号公報に示されるLiNiO2の製造方法の一例では、酸化ニッケルの粉末と水酸化リチウム又は硝酸リチウムのいずれかのリチウム化合物をリチウムとニッケルのモル量の比が1:1になるように秤量する。そして、リチウム化合物の溶融温度以上500℃以下で溶融させたリチウム化合物を酸化ニッケルの粉末に浸透させ、酸素あるいは酸素富化ガスの存在下で焼成する。
【0013】
上述した非水系二次電池用正極活物質の製造方法において、固体状態でリチウム化合物とニッケル化合物を混合させる方法では、焼成前の両者の混合状態が均一ではないという問題があった。
【0014】
また、水溶液の状態でリチウム化合物とニッケル化合物を混合させる方法では、混合水溶液の乾燥固化の際、それぞれの溶質の溶解度が異なるので溶質の析出が同時におこらない。従って、得られる固形物質ではリチウム化合物とニッケル化合物が均一に混ざり合っていない。
【0015】
また、酢酸ニッケルと酢酸リチウムをエチレングリコールに加熱溶解させ、さらに加熱し乾燥固化させた固形物質を2度焼成する方法は、長い焼成時間を要し、製造工程が複雑になるという面で好ましくない。しかも、この方法で得られた焼成前の固形物質でもリチウム化合物とニッケル化合物の混合状態は十分ではない。
【0016】
また、水に難溶性又は不溶性のニッケル化合物粉末をリチウム塩水溶液に分散させる方法やリチウム化合物とニッケル化合物を水に分散させて撹拌練合させる方法では、分散媒である水を除去する際に溶質が均一に析出しないので、得られた物質はリチウム化合物とニッケル化合物が均一に混合されたものではない。
【0017】
また、リチウム化合物の溶融塩を酸化ニッケル粉末に浸透させる方法でも、両者の混合状態は幾分改善されるものの、それでもまだ不十分である。
【0018】
混合状態が十分でない物質による焼成物を正極活物質に用いた非水系二次電池は、充放電サイクル数の増加に伴って放電容量は著しく低下し、電極の劣化が早い。
【0019】
上記の問題点を解決するため、特開平10−106564号公報に開示されているLiNiO2の製造方法では、まず水溶性リチウム化合物と水溶性ニッケル化合物を水に溶解させて水溶液を作製する。次に、この水溶液に蓚酸を添加してリチウム化合物とニッケル化合物を共沈させる。得られた沈澱物を乾燥させた後、焼成する。
【0020】
この共沈反応により、沈澱物中のリチウム化合物とニッケル化合物は、均一に混合された状態にある。従って、これを焼成して得られるLiNiO2を正極活物質に用いた非水系二次電池は充放電サイクル特性が改善される。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平10−106564号公報に開示されているLiNiO2の製造方法では、リチウムとニッケルを複合蓚酸塩として析出させているため、リチウム化合物とニッケル化合物が均一に混合された前駆体が得られるものの、蓚酸リチウムは比較的水に溶解しやすいために、前駆体を作製する毎に、前駆体中のリチウムとニッケルのモル比(リチウム/ニッケル)にバラツキが生じ、再現性が十分でなかった。
【0022】
また、蓚酸を添加する前のリチウム化合物とニッケル化合物の水溶液を作製する工程において、原料であるリチウム化合物をニッケル化合物に対してリチウムとニッケルのモル比で数倍〜十倍程度加えなければならなかった。
【0023】
そのため、この共沈反応によって生成した前駆体を焼成して得られるLiNiO2を正極活物質に用いた非水系二次電池は、初期放電容量が改善され、良好な充放電サイクル特性が得られるものの、安定した活物質が得られないという問題点と、原材料費の面でコストがかかるという問題点と、資源的に無駄が多いという問題点があった。
【0024】
本発明は、安定した充放電特性を示す非水系二次電池用正極活物質LiNiO2を低コストで資源的に無駄なく製造する方法を提供し、また充放電サイクル特性の良好なリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1のLiNiO2を含む非水系二次電池用正極活物質の製造方法は、まず酢酸リチウム又は水酸化リチウム酢酸ニッケル酸と酢酸リチウムから成る緩衝溶液に溶解させて水溶液を作製する。次に、この水溶液に蓚酸を添加して、沈澱物を生成させる。生成した沈澱物を濾過、遠心分離等で水溶液から濾別する。得られた沈澱物を乾燥させた後、焼成する。そして、沈澱物を濾過した際に排出される溶液から溶液中に残っている蓚酸イオンを蓚酸塩として水に溶解しにくいカチオンを含む酢酸塩、酸化物、水酸化物のいずれか一つの化合物を加えてそれぞれの添加したカチオンを含む蓚酸塩として除去する。次に酢酸を蒸留、抽出等で分離して、蓚酸を添加する前の条件に再度溶液を調製することにより濾液を繰り返し用いる。
【0031】
また、請求項のLiNi1-XX2(0<X<0.5、Mは遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素)を含む非水系二次電池用正極活物質の製造方法は、まず酢酸リチウム又は水酸化リチウム酢酸ニッケル及び遷移金属又は3B族元素又は4B族元素5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物を酸と酢酸リチウムから成る緩衝溶液に溶解させて水溶液を作製する。次に、この水溶液に蓚酸を添加して、沈澱物を生成させる。生成した沈澱物を濾過、遠心分離等で水溶液から濾別する。得られた沈澱物を乾燥させた後、焼成する。そして、沈澱物を濾過した際に排出される溶液から溶液中に残っている蓚酸イオンを蓚酸塩として水に溶解しにくいカチオンを含む酢酸塩、酸化物、水酸化物のいずれか一つの化合物を加えてそれぞれの添加したカチオンを含む蓚酸塩として除去する。次に酢酸を蒸留、抽出等で分離して、蓚酸を添加する前の条件に再度溶液を調製することにより濾液を繰り返し用いる。
【0032】
また、請求項の発明は、請求項又は請求項のLiNiO2を含む非水系二次電池用正極活物質又はLiNi1-XX2(0<X<0.5、Mは遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素)を含む非水系二次電池用正極活物質の製造方法において、蓚酸イオンを除去する方法として、酢酸カルシウムを濾液に添加して蓚酸カルシウムとして沈澱させる。
【0033】
請求項乃至請求項の構成によると、濾液を繰り返し用いる際に、溶液のpHを加味し、溶液中のリチウムイオン及び酢酸濃度の精度を高めるようにしているので、複合蓚酸塩として得られる沈澱物は、さらに混合状態が均一となる。この沈澱物を乾燥後、焼成した焼成物は充放電サイクル特性の安定した非水系二次電池用正極活物質として用いることができる。特に、請求項によると、濾液中に含まれる蓚酸イオンを酢酸カルシウムを添加して除去するようにしたので、上述した溶液のpHやリチウムイオン及び酢酸濃度の精度をさらに向上させることができる。
【0034】
また、請求項の発明は、請求項1乃至のいずれかのLiNiO2を含む非水系二次電池用正極活物質又はLiNi1-XX2(0<X<0.5、Mは遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素)を含む非水系二次電池用正極活物質の製造方法において、焼成条件として、650℃以上900℃以下の温度で、好ましくは700℃以上850℃以下の温度で、空気中あるいは空気中より酸素の体積割合が高い21%以上100%以下、好ましくは50%以上100%以下の雰囲気で焼成を行う。これらの条件で焼成することにより結晶性が向上し、不純物の残存量は少なくなる。
【0035】
また、酢酸リチウム又は水酸化リチウム及び酢酸ニッケルは、沈澱物を濾過した後の濾液を繰り返し用いる観点から、毎回類似の組成比に調製しやすい面と、沈澱物を焼成した時点で不純物として残存しにくい面から好適である。
【0036】
また、緩衝溶液として酢酸と酢酸リチウムの混合水溶液を用いることにより、原材料コストの削減や資源の有効利用が可能になる。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明に係るLiNiO2の製造方法を詳述する。図1は本発明に係る濾液循環プロセスによるLiNiO2の製造方法を示した図である。まず、このフローチャートについて説明する。
【0039】
ステップ#5では、水溶性リチウム化合物と水溶性ニッケル化合物を緩衝溶液に溶解させて、水溶液を作製する。リチウム化合物として水酸化リチウム又は酢酸リチウムのいずれかを用いるのが濾液を繰り返し循環させる面で好ましい。また、ニッケル化合物として、同じ理由から酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。また、緩衝溶液として、これも同じ理由で酢酸と酢酸リチウムあるいは水酸化リチウムの混合水溶液を用いるのが好ましい。
【0040】
ステップ#10では、ステップ#5で作製した水溶液に蓚酸を添加することで、リチウム化合物を共沈させる。共沈反応によって生成した沈澱物中のリチウム化合物と、ニッケル化合物は均一に混合された状態にある。
【0041】
上記のリチウム化合物とニッケル化合物を溶解した水溶液中に、蓚酸を加えることにより共沈させることができる。蓚酸は水溶液の状態あるいは、固体の状態で加えてもよい。水溶液で加えることにより、均一な微粒子が形成されるため好ましい。また、固体で加えることにより、共沈反応を制御しやくすくなるためこの方法も好ましい。
【0042】
尚、蓚酸を加える量は、水溶液中のニッケルイオンに対してモル比で1.3〜2.5倍が好ましい。1.3倍より少ない場合は、溶液のpHが制御し難くなり、沈澱物を焼成してLiNiO2を得ることができない。また、2.5倍より多い場合は、沈澱物を焼成して得られたLiNiO2に不純物が多く含まれるため好ましくない。
【0043】
ステップ#15では、生成した沈澱物を濾過、遠心分離等で濾別する。そして、ステップ#20で濾別により得られた沈澱物を乾燥させ、ステップ#25でこれを焼成する。
【0044】
焼成は650℃〜900℃の温度で、かつ酸素が20%〜100%の雰囲気で焼成されることが好ましい。特に、良好な電極特性を得るために700℃〜850℃の温度で、酸素が50%〜100%の雰囲気で焼成されることが好ましい。この範囲外では結晶の発達が遅い、結晶が分解してしまう、あるいは不純物が多く混在している等の問題点がある。
【0045】
次に、沈澱物を濾過した後の濾液を母液として繰り返し用いる濾液循環プロセスについて説明する。本発明は、この濾液循環プロセスとして2通りの方法を提供する。
【0046】
第1の方法は、ステップ#15で生成した沈澱物を濾過した後に排出される濾液を緩衝溶液として再び用いるものである。すなわち、図1中の▲1▼で示すようにステップ#5に戻り、上述したようにして再び沈澱物を得る。これを繰り返して濾液を循環させる。
【0047】
第2の方法は、濾液を繰り返し用いる際に、溶液中の酢酸及びリチウムイオンの濃度の精度を高めるため、以下のようにする。すなわち、ステップ#15で生成した沈澱物を濾過した後、排出される濾液にステップ#30で蓚酸塩として水に溶解しにくいカチオンを含む酢酸塩、酸化物、水酸化物のいずれか一つの化合物を加えて、濾液中の蓚酸イオンをそれぞれの添加したカチオンを含む蓚酸塩として沈澱させ、ステップ#35で沈澱した蓚酸塩を濾過して分離除去する。
【0048】
ステップ#30で添加する酢酸塩としては、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、二酢酸水酸化アルミニウム、酢酸銀、酢酸カドミウム、酢酸コバルト、酢酸銅、酢酸鉄、酢酸ランタン、酢酸マンガン、酢酸ニッケル、酢酸鉛、酢酸錫、酢酸イットリウム、酢酸亜鉛等の酢酸塩が好ましい。中でも、コストとリサイクル性の面から酢酸カルシウム、二酸化水酸化アルミニウム、酢酸ニッケル等の酢酸塩がさらに好ましい。
【0049】
同様にステップ#30で添加する酸化物としては、酸化カルシウム、酸化銀、酸化バリウム、酸化カドミウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化錫、酸化イットリウム、酸化亜鉛等がある。
【0050】
同様にステップ#30で添加する水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、水酸化カドミウム、水酸化セリウム、水酸化コバルト、水酸化銅、水酸化鉄、水酸化ガリウム、水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、水酸化ニッケル、水酸化イットリウム、水酸化亜鉛等がある。
【0051】
さらに、濾過によって得られた濾液からステップ#40で蒸留、抽出等で酢酸を分離させる。酢酸を分離した溶液をステップ#45で適当に調製して蓚酸を添加する前の溶液として再び用いる。この操作を繰り返し、上記と同様にして前駆体を得て、これを焼成することにより均一なLiNiO2を製造することができる。
【0052】
ここで説明した本発明に係る濾液循環プロセスによるLiNiO2の製造方法は、LiNi1-XX2(0<X<0.5、Mは遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素)の製造方法にも適用できるが、具体的には図1のステップ#5にステップ#50で示した遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を添加する工程が加わるだけなので、詳しい説明は省略する。
【0053】
ステップ#50で添加する遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素として、ステップ#15で沈澱物を濾過した際の濾液を繰り返し循環させる面と、最終的に沈澱物を焼成した時点で不純物として残存しにくい面とから、酢酸バナジウム、酢酸クロム、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸イットリウム、酢酸ランタン等の酢酸塩を用いるのが好ましい。
【0054】
次に、本発明に係るLiNiO2の製造方法によって得られたLiNiO2を正極活物質として正極に用いた非水系二次電池について説明する。ただし、非水系二次電池の作製方法はこれに限られるものではない。
【0055】
正極はLiNiO2、導電材、結着材及び場合によっては、固体電解質等を混合した合材を用いて形成される。導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素類、黒鉛粉末(天然黒鉛、人造黒鉛)、金属粉末、金属繊維等を用いることができるが、これに限定されるものではない。結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマー等のポリオレフィン系ポリマー、スチレンブタジエンゴム等を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0056】
この混合比は活物質100重量部に対して、導電材を1〜50重量部、結着材を1〜30重量部とすることができる。導電材が1重量部より少ないと、電極の抵抗あるいは分極が大きくなり、放電容量が小さくなるため、実用的な二次電池を作製できない。導電材が50重量部より多い(混合する導電材の種類により重量部は変わる)と、電極内に含まれる活物質量が減るため、正極としての放電容量が小さくなる。また、結着材が1重量部より少ないと決着力が無くなってしまい、30重量部より多いと、導電材の場合と同様に、電極内に含まれる活物質量が減り、さらに上記に記載の如く電極の抵抗あるいは分極等が大きくなり、放電容量が小さくなるため実用的ではない。
【0057】
この混合物を成形するには圧縮してペレット状にする方法、あるいは混合物に適当な溶剤を添加したペーストを集電体上に塗布し、乾燥、圧延してシート状にする方法があるが、これに限定されない。また、正極には電子の授受を担う集電体が設けられる。この集電体としては金属単体、合金、炭素等を用いる。例えば、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼等がある。また、銅、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、チタン、銀を処理させたもの、これらの材料を酸化したものも用いられる。特に、アルミニウム、ステンレス鋼がコストの面で好ましい。その形状は箔の他、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体等である。厚みは1μm〜1mmのものが用いられるが、特に限定はされない。
【0058】
負極にはリチウム、リチウム合金又は/及びリチウムを吸蔵・放出可能な物質を用いる。例えば、リチウム金属、リチウム/アルミニウム合金、リチウム/スズ合金、リチウム/鉛合金、ウッド合金等リチウム合金類、さらに電気化学的にリチウムをドープ・脱ドープできる物質、例えば導電性高分子(ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン等)、熱分解炭素、触媒の存在下で気相熱分解された熱分解炭素、ピッチ、コークス、タール等から焼成した炭素等や、リチウムイオンのインターカレーション/デインターカレーションの可能な黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等)、リチウムイオンをドープ・脱ドープできる無機化合物(WO2、MoO2等)等の物質あるいはこれらの複合体を用いることができる。
【0059】
これらの負極活物質のうち、熱分解炭素、触媒存在下で気相熱分解された熱分解炭素、ピッチ、コークス、タール等から焼成した炭素、高分子より焼成した炭素等や、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等)が電池特性、特に安全性の面で好ましい二次電池を作製することができる。
【0060】
負極活物質に導電性高分子、炭素、黒鉛、無機化合物等を用いて負極とする場合、導電材と結着材が添加されてもよい。導電材にはカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素類、黒鉛粉末(天然黒鉛、人造黒鉛)、金属粉末、金属繊維等を用いることができるが、これに限定されるものではない。結着剤にはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマー等のポリオレフィン系ポリマー、スチレンブタジエンゴム等を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0061】
イオン伝導体には、例えば有機電解液、固体電解質(高分子固体電解質、無機固体電解質)、溶融塩等を用いることができ、この中でも有機電解液を好適に用いることができる。有機電解液は、有機溶媒と電解質から構成される。有機溶媒として非プロトン性有機溶媒であるプロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどのエステル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の置換テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル等が挙げられる。これらのうち1種あるいは2種以上を混合して用いる。
【0062】
また、電解質は過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウム、リンフッ化リチウム、6フッ化砒素リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ハロゲン化リチウム、塩化アルミン酸リチウム等のリチウム塩が挙げられ、これらのうち1種あるいは2種以上を混合して用いる。上記で選ばれた溶媒に電解質を溶解することによって電解液を調製する。電解液を調製する際に使用する溶媒、電解質は上記に挙げたものに限定されない。
【0063】
無機固体電解質には、リチウムの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩等が知られている。例えば、Li3N、LiI、Li3N−LiI−LiOH、Li4SiO4、Li4SiO4−LiI−LiOH、Li3PO4−Li4SiO4、硫化リン化合物、Li2SiS3等がある。
【0064】
有機固体電解質では、上記の電解質と電解質の解離を行う高分子から構成された物質、高分子にイオン解離基を持たせた物質等がある。電解質の解離を行う高分子としては、例えば、ポリエチレンオキサイド誘導体あるいは該誘導体を含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体あるいは該誘導体を含むポリマー、リン酸エステルポリマー等がある。その他に、上記非プロトン性極性溶媒を含有させた高分子マトリックス材料、イオン解離基を含むポリマーと上記非プロトン性電解液の混合物、ポリアクリロニトリルを電解液に添加したものもある。また、無機固体電解質と有機固体電解質を併用することもできる。
【0065】
電解液を保持するためのセパレータは、電気絶縁性の合成樹脂繊維、ガラス繊維、天然繊維等の不織布、織布、あるいはミクロポア構造材料、またアルミナ粉末等の成形体等が挙げられる。中でも、合成樹脂のポリエチレン、ポリプロピレン等の不織布、ミクロポア構造体が品質の安定性等から好ましい。
【0066】
これら合成樹脂の不織布・ミクロポア構造体では、電池が異常発生した場合に、セパレータが熱により溶解して正極と負極の間を遮断する機能を付加したものもあり、安全性の観点からこれらも好適に使用することができる。セパレータの厚みは特に限定はないが、必要量の電解液を保持することが可能で、且つ正極と負極との短絡を防ぐ厚さがあればよい。通常、0.01mm〜1mm、好ましくは0.02mm〜0.05mm程度のものを用いることができる。
【0067】
電池の形状にはコイン型、ボタン型、シート型、円筒形、角型等がある。コイン型電池やボタン型電池のときには、電極はペレット状に形成する。円筒形電池及び角型電池では主に電極をシート状とし、この電極を電池缶に入れ、缶と電極を電気的に接続する。
【0068】
電解液を注入し、電池缶の開口部を絶縁パッキンを介して封口板で封じる。あるいは、ハーメチックシールにより封口板と缶を絶縁して封じる。このとき、安全素子を備え付けた安全弁を封口板として用いることができる。例えば、安全素子には過電流防止素子として、ヒューズ、バイメタル、PTC素子等がある。また、安全弁の他に電池缶の内圧上昇の対策として、ガスケットに亀裂を入れる方法、封口板に亀裂を入れる方法、電池缶に切り込みを入れる方法等を用いる。また、過充電や過放電対策を組み込んだ外部回路を用いてもよい。
【0069】
ペレット状やシート状の電極はあらかじめ乾燥、脱水されていることが好ましい。乾燥、脱水方法としては、一般的な方法を利用することができる。例えば、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線及び低湿風等を単独あるいは組み合わせて用いる方法がある。温度は50℃〜380℃の範囲が好ましい。
【0070】
次に、本発明の実施例とそれを用いた特性実験の結果を、従来技術による比較例と共に説明する。
【0071】
<実施例1〜3>
酢酸リチウムと酢酸をモル比で1:1となるようにそれぞれ水に溶解させ、緩衝溶液を作製する。この緩衝溶液に水酸化リチウム無水物0.03モルと酢酸ニッケル・4水和物0.03モルを溶解させる。この水溶液に粉末の蓚酸を添加して、室温で2時間撹拌する。蓚酸の添加量は、0.045モルとする。
【0072】
蓚酸添加による共沈反応で生成した沈澱物を濾過乾燥させる。この沈澱物を700℃、酸素雰囲気で10時間焼成し、得られた焼成物を粉砕する。これを実施例1とする。
【0073】
沈澱物を濾過した際に排出される濾液を再び緩衝溶液として用いて共沈反応させる。即ち、この溶液に酢酸リチウム0.03モルと酢酸ニッケル・4水和物0.03モルを溶解させる。これに粉末の蓚酸0.045モルを添加して、室温で2時間撹拌する。生成した沈澱物を濾過乾燥し、実施例1と同様の条件で焼成する。得られた焼成物を粉砕する。これを実施例2とする。
【0074】
さらに実施例2に引き続き、濾液を再度緩衝溶液として用い、同様の方法で焼成物を得る。この焼成物を粉砕する。これを実施例3とする。
【0075】
以上のようにして得られたLiNiO2を活物質に用いて電極を作製する。LiNiO2、導電材となるアセチレンブラック、及び結着材となるポリテトラフルオロエチレン100:10:10の割合で乳鉢にて混合する。この混合物に集電体としてチタンメッシュを加え、加圧成形して直径20mm、重量0.10gのペレットを作製する。チタンメッシュにチタン線をスポット溶接することにより集電を取り、評価用の電極とする。
【0076】
電極の評価は、3極法により行い、対極及び参照極にリチウムを用いる。電解液にはエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:1で混合した溶媒に、過塩素酸リチウムを1Mの割合で溶解させたものを用いる。充放電電流密度は27.4mA/gとし、初めに参照極のリチウムに対して4.2Vまで定電流充電を行い、続いて2.7Vまで定電流放電を行う。2回目以降も同じ電圧の範囲、同じ電流密度で充放電を繰り返した。その結果、1回目の放電容量はそれぞれ170mAh/g、173mAh/g、175mAh/gであった。
【0077】
次に、従来技術に係る4例のLiNiO2の製造方法に沿ってLiNiO2を合成し、そのLiNiO2を用いて作製した電極の評価を行った結果を示す。
【0078】
<比較例1>
本比較例は、ともに固体であるリチウム化合物とニッケル化合物を混合するLiNiO2の製造方法である。水酸化リチウムとオキシ水酸化ニッケルをリチウムとニッケルのモル比(リチウム/ニッケル)が1.1になるように秤量した後、乳鉢で混合する。この混合物に100kg/cm2の圧力を加えてペレットを作製する。これを800℃、酸素雰囲気で2時間焼成する。得られた焼成物を粉砕する。これを比較例1とする。
【0079】
電極の作製及び評価は上述した実施例1〜3の方法に準じて行う。その結果、1回目の放電容量は124mAh/gであった。
【0080】
<比較例2>
本比較例は、リチウム化合物水溶液とニッケル化合物水溶液を混合するLiNiO2の製造方法である。水酸化リチウムと塩化ニッケルをリチウムとニッケルのモル比(リチウム/ニッケル)が1になるように秤量した後、それぞれを水に溶解させ水溶液とする。塩化ニッケル水溶液を撹拌しながら、水酸化リチウム水溶液を徐々に注加し、30℃で5時間撹拌する。この混合溶液を90℃〜100℃で乾燥させ、得られた固形物質を粉砕した後、100kg/cm2の圧力を加えてペレットを作製する。これを800℃、酸素雰囲気で2時間焼成する。得られた焼成物を粉砕する。これを比較例2とする。
【0081】
電極の作製及び評価は上述した実施例1〜3の方法に準じて行う。その結果、1回目の放電容量は120mAh/gであった。
【0082】
<比較例3>
本比較例は、ともに固体であるリチウム化合物とニッケル化合物に分散媒として水を加えるLiNiO2の製造方法である。水酸化リチウムと水酸化ニッケルをリチウムとニッケルのモル比(リチウム/ニッケル)が1になるように秤量した後、少量の水を分散媒として加え、乳鉢にて混合した。これを90℃〜100℃で乾燥させ、得られた固形物質を粉砕した後、100kg/cm2の圧力を加えてペレットを作製する。これを800℃、酸素雰囲気で2時間焼成する。得られた焼成物を粉砕する。これを比較例3とする。
【0083】
電極の作製及び評価は上述した実施例1〜3の方法に準じて行う。その結果、1回目の放電容量は110mAh/gであった。
【0084】
<比較例4>
本比較例は、固体のニッケル化合物にリチウム化合物水溶液を混合するLiNiO2の製造方法である。塩化リチウムと酸化ニッケルをリチウムとニッケルのモル比(リチウム/ニッケル)が1になるように秤量した後、塩化リチウムを水に溶解させて水溶液とする。固体の酸化ニッケルに塩化リチウム水溶液を徐々に注加し、30℃で5時間混練する。これを90℃〜100℃で乾燥させ、得られた固形物質を粉砕した後、100kg/cm2の圧力を加えてペレットを作製する。これを800℃、酸素雰囲気で2時間焼成する。得られた焼成物を粉砕する。これを比較例4とする。
【0085】
電極の作製及び評価は上述した実施例1〜3の方法に準じて行う。その結果、1回目の放電容量は127mAh/gであった。
【0086】
実施例1〜3のLiNiO2を用いて作製した電極の性能評価を行った結果、初期放電容量が170mAh/g以上の高い値が得られている。この値は、比較例1〜4のLiNiO2を用いて作製した電極より約50mAh/g以上も高い値である。
【0087】
次に、実施例1で用いた緩衝溶液を3つ用意し、これらの緩衝溶液のそれぞれから実施例1〜3と同様にして沈澱物を得た。最初の緩衝溶液から得られた沈澱物をサンプル1とする。同様に2番目、3番目の緩衝溶液から得られた沈澱物をそれぞれサンプル2、サンプル3とする。
【0088】
得られた9種の沈澱物中のリチウムとニッケルのモル比(リチウム/ニッケル)をICP発光分析を用いて測定した。これらの沈澱物中のリチウム/ニッケル比を表1に示す。
【0089】
【表1】
Figure 0003640545
【0090】
さらに、これらの沈澱物を焼成する。そして、それぞれの焼成物を活物質に用いて電極を作製し、それらの電極の評価を行った。電極の作製及び評価は実施例1〜3と同様の方法で行った。充放電1サイクル目の放電容量(mAh/g)を表2に示す。
【0091】
【表2】
Figure 0003640545
【0092】
表1、2の結果より、沈澱物を濾過した際に排出される濾液を繰り返し利用して沈澱物を得ることで、沈澱物中のリチウム/ニッケル比の制御が容易になり、沈澱物の均一性が向上する。さらに、この沈澱物を焼成したLiNiO2を活物質として電極に用いた時の初期電極特性は大幅に改善される。
【0093】
<実施例4>
酢酸リチウムと酢酸をモル比で1:1となるようにそれぞれ水に溶解させ、緩衝溶液を作製する。この緩衝溶液に水酸化リチウム無水物0.03モルと、酢酸ニッケル・4水和物0.03モルをそれぞれ溶解させる。この水溶液に粉末の蓚酸を添加して、室温で2時間撹拌する。蓚酸の添加量は0.045モルとする。
【0094】
蓚酸添加により生成した沈澱物を濾過する。濾過の際に得られる濾液に酸カルシウムを添加し、溶液中に存在している蓚酸イオンを蓚酸カルシウムとして沈澱させ、この沈澱物を濾過により除去する。さらに、濾液に含まれる過剰の酢酸を蒸留により分離し、酢酸及びリチウムイオン濃度を加味して溶液調製を行い、この溶液に酢酸リチウム0.03モルと酢酸ニッケル・4水和物0.03モルを溶解させる。これに粉末の蓚酸を添加して、室温で2時間撹拌する。得られた沈澱物を濾過乾燥させ、700℃、酸素雰囲気で10時間焼成する。この焼成物を粉砕する。これを実施例4とする。
【0095】
電極の作製及び評価は上述した実施例1〜3の方法に準じて行う。その結果、1回目の放電容量は175mAh/gであった。
【0096】
次に、実施例4で用いた緩衝溶液を3つ用意し、これらの緩衝溶液のそれぞれから実施例4と同様にして沈澱物を得た。得られた3種の沈澱物中のリチウムとニッケルのモル比をICP発光分析を用いて行った。その結果、これらの沈澱物中のリチウム/ニッケル比は、それぞれ1.05、1.04、1.04であった。
【0097】
さらに、得られた沈澱物を焼成する。それぞれの焼成物を用いて電極を作製し、それらの電極の評価を行った。電極の作製及び評価は実施例1〜3と同様の方法で行った。その結果、1回目の放電容量は、それぞれ176mAh/g、176mAh/g、175mAh/gであった。
【0098】
以上の結果より、濾液を繰り返し用いる際に、酢酸及びリチウムイオン濃度の精度を高めるように溶液を調製した実施例4のLiNiO2の製造方法では、得られる沈澱物中のリチウム/ニッケル比のバラツキが小さくなり、より混合状態の均一な前駆体が得られる。また、これらの前駆体を焼成したLiNiO2は、優れた初期電極特性を与える活物質であることが認められる。
【0099】
<実施例5〜10、比較例5〜7>
酢酸リチウムと酢酸をモル比が1:1となるようにそれぞれ水に溶解させ、緩衝溶液を作製する。この緩衝溶液に水酸化リチウム無水物0.3モルと酢酸ニッケル・4水和物0.3モルを溶解させる。この水溶液に粉末の蓚酸を添加し、室温で2時間撹拌する。蓚酸の添加量は0.45モルとする。
【0100】
蓚酸添加により生成した沈澱物を濾過した後、濾液に酢酸リチウムを0.3モルと酢酸ニッケル・4水和物0.3モルを溶解させ、溶液を調製する。この水溶液に粉末の蓚酸0.45モルを添加し、室温で2時間撹拌する。蓚酸の添加により沈澱物が生成した水溶液を濾過し、得られた沈澱物を乾燥させる。ここでは、焼成温度と焼成物であるLiNiO2を用いて作製した電極の性能との関係を調べるため、様々な温度で焼成を行う。
【0101】
即ち、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、940℃、980℃の各温度にて沈澱物を焼成する。焼成時間はいずれも5時間とする。また、いずれも酸素雰囲気で焼成する。このときのそれぞれを、比較例5、実施例5〜10、比較例6、7とする。
【0102】
上記の製造方法により得られたLiNiO2を活物質に用いて電極を作製する。このとき、LiNiO2、導電材になるアセチレンブラック、及び結着材になるポリテトラフルオロエチレンを100:8:10の割合で混合する他は、電極作製の手順やペレットの重量及びサイズ等、上述した実施例1〜3の電極作製方法に準ずる。
【0103】
また、電解液としてエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した溶媒に、過塩素酸リチウムを1Mの割合で溶解したものを用いる他は、上述した実施例1〜3の電極評価方法に準ずる。
【0104】
図2は、焼成温度と1回目の放電容量との関係を示した図である。沈澱物を濾過した後の溶液を用いて再び沈澱物を得て、焼成することによりLiNiO2を製造した場合でも、良好な初期電極特性を与えることがわかる。また、焼成温度が650℃〜900℃、好ましくは700℃〜850℃であれば、高い値の放電容量が得られている。従って、焼成温度を650℃〜900℃とすることを特徴とした、本発明に係るLiNiO2の製造方法を用いれば、初期電極特性の良好な電極を得ることが認められた。
【0105】
<実施例11〜16、比較例8〜10>
酢酸リチウムと酢酸をモル比が1:1になるようにそれぞれ水に溶解させ、緩衝溶液を作製する。この緩衝溶液に水酸化リチウム無水物0.3モルと酢酸ニッケル・4水和物0.24モル及び酢酸コバルト0.06モルをそれぞれ溶解させる。この水溶液に粉末の蓚酸を添加し、室温で2時間撹拌する。蓚酸の添加量は0.45モルとする。
【0106】
蓚酸添加により生成した沈澱物を濾過した後、濾液に酢酸リチウム0.3モルと酢酸ニッケル0.24モル及び酢酸コバルト0.06モルをそれぞれ溶解させ、溶液を調製する。この水溶液に粉末の蓚酸0.45モルを添加し、室温で2時間撹拌する。蓚酸の添加により沈澱物が生成した水溶液を濾過し、得られた沈澱物を乾燥させる。ここでは、焼成温度と焼成物であるLiNi0.8Co0.22を用いて作製した電極の性能との関係を調べるため、様々な温度で焼成を行う。
【0107】
即ち、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、940℃、980℃の各温度にて沈澱物を焼成する。焼成時間はいずれも5時間とする。また、いずれも酸素雰囲気で焼成する。このときのそれぞれを、比較例8、実施例11〜16、比較例9、10とする。
【0108】
上記の製造方法により得られたLiNi0.8Co0.22を活物質に用いて電極を作製する。このとき、LiNi0.8Co0.22、導電材になるアセチレンブラック、及び結着材になるポリテトラフルオロエチレンを100:8:10の割合で混合する他は、電極作製の手順やペレットの重量及びサイズ等、上述した実施例1〜3の電極作製方法に準ずる。
【0109】
また、電解液としてエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した溶媒に、過塩素酸リチウムを1Mの割合で溶解したものを用いる他は、上述した実施例1〜3の電極評価方法に準ずる。
【0110】
図3は、焼成温度と1回目の放電容量との関係を示した図である。沈澱物を濾過した後の溶液を用いて再び沈澱物を得て、焼成することによりLiNi0.8Co0.22を製造した場合でも、良好な初期電極特性を与えることがわかる。また、焼成温度が650℃〜900℃、好ましくは700℃〜850℃であれば、高い値の放電容量が得られている。従って、焼成温度を650℃〜900℃とすることを特徴とした、本発明に係るLiNi0.8Co0.22の製造方法を用いれば、初期放電容量の高い電極を得ることが認められた。
【0111】
<実施例17〜22、比較例11〜18>
酢酸リチウムと酢酸をモル比が1:1となるようにそれぞれ0.3モルずつ水に溶解させ、緩衝溶液を作製する。この緩衝溶液に水酸化リチウム無水物0.3モルと酢酸ニッケル・4水和物0.3モルを溶解させる。この水溶液に粉末の蓚酸を添加し、室温で2時間撹拌する。蓚酸の添加量は0.45モルとする。
【0112】
蓚酸添加により生成した沈澱物を濾過し、得られた沈澱物を乾燥させる。ここでは、焼成雰囲気における酸素の体積割合と、生成したLiNiO2を用いて作製した電極の放電容量との関係を調べるため、様々な酸素濃度の雰囲気で焼成を行う。
【0113】
即ち、酸素と窒素の混合気体において、酸素の体積割合が10%、20%(空気中)、30%、50%、70%、80%、100%の各雰囲気で沈澱物を焼成する。ただし、いずれの場合も700℃で8時間焼成する。得られた焼成物を粉砕する。このときのそれぞれを、比較例11〜17とする。
【0114】
沈澱物を濾過した際に得られる溶液を上述した実施例4と同様に調製した後、酢酸リチウム0.3モルと酢酸ニッケル0.3モルを溶解させる。これに粉末の蓚酸0.45モルを添加して、室温で2時間撹拌する。生成した沈澱物を濾過乾燥し、上述した様々な酸素濃度の雰囲気で焼成する。
【0115】
即ち、酸素の体積割合が10%、20%(空気中)、30%、50%、70%、80%、100%の各雰囲気で沈澱物を焼成する。ただし、いずれの場合も700℃で8時間焼成する。得られた焼成物を粉砕する。このときのそれぞれを、比較例18、実施例17〜22とする。
【0116】
上記のLiNiO2製造法により得られたLiNiO2を活物質に用いて、電極を作製する。このとき、LiNiO2、導電材になるアセチレンブラック、及び結着材になるポリテトラフルオロエチレンを100:15:8の割合で混合する他は、電極作製の手順やペレットの重量及びサイズ等、上述した実施例1〜3の電極作製方法に準ずる。
【0117】
また、電解液としてプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した溶媒に、リンフッ化リチウムを1Mの割合で溶解したものを用いる他は、上述した実施例1〜3の電極評価方法に準ずる。
【0118】
図4は、焼成雰囲気の酸素濃度と充放電1回目の放電容量との関係を示した図である。図4より、沈澱物を濾過した後の溶液を用いて再び沈澱物を得て、焼成することによりLiNiO2を製造した場合でも、良好な初期電極特性を与えることがわかる。また、酸素濃度が20%以上、好ましくは50%以上、特に80%以上であれば、高い値の放電容量が得られている。従って、焼成雰囲気における酸素の体積割合を20%以上とすることを特徴とした、本発明に係るLiNiO2の製造方法を用いれば、初期電極特性の良好な電極を得ることが認められた。
【0119】
<実施例23>
本実施例では、本発明に係るLiNiO2の製造方法により製造したLiNiO2を正極活物質として簡単な電池を作製して、充放電試験を行う。実施例2で述べた正極の作製方法に準じて正極を作製し、直径15mm、重量50mgのペレットとする。
【0120】
負極活物質には熱分解炭素((002)面と平行な隣接面との面間隔(d002):0.337nm、(002)面方向の結晶子の厚さ(Lc):15nm、アルゴンレーザーラマン法による散乱スペクトルの1580cm-1付近のピークに対する1360cm-1付近のピークの強度比(R値):0.45)を用いる。
【0121】
プロパンを出発原料に用いて750℃で2時間常圧気相熱分解させ、ニッケルメッシュ(表面積4cm2)の基板に堆積させる。これにニッケル線をスポット溶接して集電を取り、水分除去のために200℃で減圧乾燥させたものを負極(重量35mg)とする。
【0122】
ビーカー型セルにプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1で混合した溶媒に過塩素酸リチウムを1Mの割合で溶解させた電解液を入れ、この電解液に上述した正極及び負極を浸す。
【0123】
この電池の充放電試験は次の通りに行う。0.2mAで上限電圧4.4Vまで定電流充電を行い、続いて同じ電流で2.5Vまで定電流放電を行った。2回目以降も同様に行う。その結果、充放電1サイクル目の放電容量は7.9mAh、100サイクル目の放電容量は7.1mAhであった。
【0124】
<実施例24>
本実施例では、本発明に係るコイン型電池の充放電試験を行う。実施例2で述べたLiNiO2の製造方法により得られたLiNiO2を活物質に用いて、正極を作製し、直径15mm、厚さ0.75mm、重量0.20gのペレットとする。
【0125】
負極の作製方法は次の通りである。負極活物質にはマダガスカル産の天然黒鉛(鱗片状、粒径:11μm、(002)面と平行な隣接面との面間隔(d002):0.337nm、(002)面方向にある結晶子の厚さ(Lc):27nm、(002)面方向にある結晶層の拡がり(La):17nm、アルゴンレーザーラマン法による散乱スペクトルの1580cm-1付近のピークに対する1360cm-1付近のピークの強度比(R値):0、比表面積:8m2/g)を用いる。
【0126】
天然黒鉛と結着材となるポリテトラフルオロエチレンを、10:1の割合で混合する。この混合物に集電体としてニッケルメッシュを加え、加圧成形して直径15mm、厚さ0.59mm、重量0.1gのペレットを作製する。このペレットを水分除去のために200℃、減圧下で乾燥させる。
【0127】
これらの電極を用いたコイン型電池の構成は次の通りである。図5は本発明に係るコイン型電池の断面を示している。低い円筒形の正極缶1の内部に、側面に沿って絶縁パッキン8が載置されている。また、この絶縁パッキン8より中心側に正極集電体2と一体となった正極3が圧着されている。
【0128】
このとき、正極集電体2は正極缶1の底面に接している。この正極3の上にポリプロピレン不織布のセパレータ7と負極集電体5と一体となっている負極6が、この順に下から上へ互いに密接して配置されている。セパレータ7には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1で混合した溶媒に、リンフッ化リチウムを1Mの割合で溶解させた電解液が含浸している。
【0129】
負極6の上には負極缶4か重ねられており、この負極缶4と正極缶1は絶縁パッキン8を介在させて、かしめで密封されている。これによって、負極6は負極缶4に圧着しており、特に負極集電体5は負極缶4の内面に接している。
【0130】
このコイン型電池の充放電試験は次の通りに行う。充放電電流は1mAとし、初めに充電上限電圧4.4Vまで定電流充電を行い、続いて放電下限電圧2.5Vまで定電流放電を行う。2回目以降も同じ電流、電圧の範囲で充放電を繰り返す。
【0131】
その結果、充放電1サイクル目の放電容量は28.5mAh、100サイクル目の放電容量は25.0mAhであった。
【0132】
<実施例25>
本実施例では、本発明に係る円筒形電池の充放電試験を行う。まず、シート状の正極を作製する。実施例2で述べたLiNiO2の製造方法により正極活物質LiNiO2を製造する。
【0133】
このLiNiO2を活物質に用いた電極の作製方法は次の通りである。LiNiO2、導電材となるアセチレンブラック、及び結着材となるポリフッ化ビニリデンを100:7:10の割合で混合する。ここに、分散剤としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、正極ペーストとする。
【0134】
この正極ペーストを集電体となるアルミニウム箔(厚さ20μm)の両面に塗布し、乾燥させた後、圧延して短冊状に切断する。この正極における単位面積あたりの活物質の重量は40mg/cm2となった。また、この正極の一端に正極リードとなるアルミニウムタブを、スポット溶接にて取り付ける。
【0135】
負極活物質に人造黒鉛(粒径:8μm、(002)面の平行する隣接面との面間隔(d002):0.337nm、(002)面方向にある結晶層の厚さ(Lc):25nm、(002)面方向にある結晶層の拡がり(La):13nm、アルゴンレーザーラマン法による散乱スペクトルの波数が1580cm-1付近のピークに対する1360cm-1付近のピークの強度比(R値):0、比表面積:12m2/g)を用いる。この人造黒鉛と結着材となるポリフッ化ビニリデンを、100:10の割合で混合する。
【0136】
この混合物に、分散剤としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、負極ペーストとする。負極ペーストを集電体となる銅箔(厚さ18μm)の両面に塗布し、乾燥させた後、圧延し、短冊状に切断する。この負極における活物質の単位面積あたりの重量は20mg/cm2となった。また、この負極の一端に負極リードとなるニッケルタブを、スポット溶接にて取り付ける。
【0137】
これらの電極を用いた円筒形電池の構成は次の通りである。図6は本発明に係る円筒形電池の断面を示している。尚、この図において、正極蓋11、絶縁パッキン12及びセパレータ14には断面を示すハッチングを省略している。正極16、負極15各1枚ずつの間にポリエチレン製微多孔質のセパレータ14が挟まれている。これらを対向するように端からスパイラル状に巻回し、円筒形の巻回要素を形成する。
【0138】
この円筒形巻回要素は上面から正極リード、下面から負極リードがそれぞれ引き出された状態で、円筒形の電池缶(直径17mm、高さ50mm、ステンレス製)内に収納されている。そして、正極リードは安全弁付き正極蓋に、負極リードは電池缶の底面にスポット溶接によってそれぞれ取り付けられている。また、巻回要素の中心部には、巻き崩れ防止のためにセンターピン17(直径3.4mm、長さ40mm、ステンレス製チューブ)が挿入されている。
【0139】
電解質として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1で混合した混合溶媒に、リンフッ化リチウムを1Mの割合で溶解させた電解液が、電池缶に注液されている。また、正極蓋11と電池缶13は絶縁パッキン12を介在させて、かしめで密封されている。
【0140】
この円筒形電池の充放電試験は次の通りに行う。25℃の恒温槽において、500mA、上限電圧4.2Vの定電流定電圧充電を3時間行い、100mA、下限電圧2.75Vの定電流放電を行った。2回目以降も同様に行う。その結果、充放電1サイクル目の放電容量は918mAh、50サイクル目の放電容量は805mAhであった。従って、本発明に係る非水系二次電池は繰り返される充放電にも、放電容量が減少しない二次電池であることが認められた。
【0141】
【発明の効果】
以上説明したように、ニッケル化合物とリチウム化合物を原料とし、これを緩衝溶液中に溶解させた後、蓚酸を加えて共沈させ、沈澱物を濾過した際に排出される濾液を緩衝溶液として再び用いて繰り返し前駆体を得るようにしたことを特徴とする本発明に係るLiNiO2の製造方法によると、リチウムとニッケルのモル比(リチウム/ニッケル)のバラツキが少ないより均一な前駆体が得られる。
【0142】
また、沈澱物を濾過した際に得られる濾液から蓚酸イオン及び酢酸を分離した後、溶液中の酢酸及びリチウムイオン濃度の精度を高めるように溶液を調製することで、更に前駆体の均一性は安定する。
【0143】
また、蓚酸を添加する前の条件に再度調製することにより、濾液を繰り返し用いてLiNiO2の前駆体を得るようにしているので、原材料を毎回大量に用いる必要がなくなりコストの削減がはかれるとともに、資源の有効利用が可能となる。
【0144】
この前駆体を焼成して得られるLiNiO2を活物質として電極に用いた、本発明に係る非水系二次電池では、高い値の初期放電容量を得ることができる。さらに、本発明に係る二次電池では、繰り返される充放電にも放電容量があまり減少しないので、寿命の長い二次電池となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るLiNiO2又はLiNi1-XX2(0<X<0.5、Mは遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素)の製造方法を示した図である。
【図2】 実施例5〜10、比較例5〜7の焼成温度と初回放電容量との関係を示した図である。
【図3】 実施例11〜16、比較例8〜10の焼成温度と初回放電容量との関係を示した図である。
【図4】 実施例17〜22、比較例11〜18の焼成雰囲気の酸素濃度と初回放電容量との関係を示した図である。
【図5】 本発明に係るコイン型電池の断面を示した図である。
【図6】 本発明に係る円筒形電池の断面を示した図である。
【符号の説明】
1 正極缶
2 正極集電体
3 正極
4 負極缶
5 負極集電体
6 負極
7 セパレータ
8 絶縁パッキン
11 正極蓋
12 絶縁パッキン
13 電池缶
14 セパレータ
15 負極
16 正極
17 センターピン

Claims (4)

  1. 酸と酢酸リチウムとから成る緩衝溶液に酢酸リチウム又は水酸化リチウム酢酸ニッケルを溶解させて水溶液を作製する工程と、該水溶液に蓚酸を添加する工程と、前記蓚酸を添加後の前記溶液から沈澱物を濾別する工程と、前記濾別工程によって得られた前記沈澱物を焼成する工程とから成り、前記濾別工程で得られた濾液から蓚酸イオン及び酢酸を分離除去した後、前記蓚酸を添加する前の条件に再度調製することにより前記濾液を繰り返し用いることを特徴とするLiNiO2を含む非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. 酸と酢酸リチウムとから成る緩衝溶液に酢酸リチウム又は水酸化リチウム酢酸ニッケルと遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物を溶解させて水溶液を作製する工程と、該水溶液に蓚酸を添加する工程と、前記蓚酸を添加後の前記溶液から沈澱物を濾別する工程と、前記濾別工程によって得られた前記沈澱物を焼成する工程とから成り、前記濾別工程で得られた濾液から蓚酸イオン及び酢酸を分離除去した後、前記蓚酸を添加する前の条件に再度調製することにより前記濾液を繰り返し用いることを特徴とするLiNi1-XX2(0<X<0.5、Mは遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素)を含む非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  3. 前記蓚酸イオンを除去する方法として、酢酸カルシウムを用いて行うことを特徴とする請求項又は請求項に記載のLiNiO2を含む非水系二次電池用正極活物質又はLiNi1-XX2(0<X<0.5、Mは遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素)を含む非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 前記焼成工程は焼成温度が650℃以上900℃以下、焼成雰囲気は空気中又は酸素の体積割合が21%以上100%以下の雰囲気で行われることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載のLiNiO2を含む非水系二次電池用正極活物質又はLiNi1-XX2(0<X<0.5、Mは遷移金属又は3B族元素又は4B族元素又は5B族元素から選ばれる少なくとも1種の元素)を含む非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
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