JP3639083B2 - 自動車の後部フロア構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はトランクフロアやバン型車のラッゲージフロア等、自動車の後部フロア構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の中には、例えばスズキ自動車(株)1996年発行のカルタス・クレセント取扱説明書に示されているように、後部フロアに凹設したスペアタイヤパンのスペアタイヤ上方部分に合成樹脂製のトレイを配置して、該トレイ内に工具や小物類を収納し得るようにしたものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
トレイはその開口部周縁に周縁フランジを張り出して一体成形してあって、この周縁フランジをスペアタイヤパンの開口部周縁に係合してスペアタイヤパン内に、スペアタイヤと離間状態に挿入配置されるため、トレイ内に工具や小物類等を収納した場合に、これら収納物品の重量によってトレイの周縁フランジおよび底壁が変形して見栄えおよび品質感を損なってしまう。
【0004】
また、トレイの底壁がスペアタイヤ上方に離間状態にあるため、車両の走行時振動等によってトレイ内の収納物品が揺動すると、一般にドラミングと称される不快な打音が生じる不具合がある。
【0005】
そこで、本発明はトレイの周縁フランジや底壁の変形を生じたり、ドラミングを生じることがなく品質感および信頼性を一段と向上することができる自動車の後部フロア構造を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1にあっては、後部フロアに凹設したスペアタイヤパンに、開口部周縁に側方に張り出す周縁フランジを形成した物品収納用のトレイを挿入配置するようにした構造において、前記トレイの内部に複数個の前後方向仕切り板と、該前後方向仕切り板に格子状に組み合わせられる複数個の車幅方向仕切り板とからなる間仕切りを挿脱自在に配置して、該トレイ内部を複数に区画し、このトレイの前壁と後壁とを傾斜角度を異ならせたそれぞれ上向きの傾斜壁として形成する一方、前後方向仕切り板の前,後端部を、前記トレイの前,後壁の傾斜角度に合わせて傾斜成形し、かつ、各前後方向仕切り板の後端部上縁に、これら前後方向仕切り板の後端部上に跨って載置する物品のホルダー溝を形成し、そして前記トレイの底壁にスペアタイヤパンに収納したスペアタイヤに当接するスペーサを設けて、トレイの周縁フランジをスペアタイヤパン周りの後部フロア上から離間配置したことを特徴としている。
【0007】
請求項2にあっては、請求項1に記載のスペーサが、トレイの底壁外面の略全面に設けたフエルト材で形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3にあっては、請求項1に記載のスペーサが、トレイの底壁外面に突設されて、スペアタイヤ側面の凹凸形状に略沿って当接する複数条の環状リブで形成されていることを特徴としている。
【0011】
【発明の効果】
請求項1によれば、トレイはその底壁に設けたスペーサを介してスペアタイヤパンに収納したスペアタイヤ上に定置されて、該トレイの周縁フランジがスペアタイヤパン周りの後部フロア上から離間配置されているため、トレイ内に収納した物品の重量で前記周縁フランジが撓み変形することがなく、また、トレイの底壁もスペアタイヤで支承されるため該底壁が撓み変形することもなく、見栄えおよび品質感を向上することができる。
【0012】
また、トレイ底壁がスペーサを介してスペアタイヤ上に当接しているため、該トレイ底壁の振動が抑制されて不快なドラミングの発生を回避することもできる。しかも、トレイの内部を格子状の間仕切りで複数に区画してあるため、物品を各区画内に整然と収納できると共に、物品の揺動を抑制できてドラミング防止効果を更に高めることができる。
また、間仕切りは挿脱自在であるため面積の大きな物品を収納する場合には該間仕切りを外せばよく些かも不都合を生じることはない。
更に、間仕切りの前後方向仕切り板の前後端末を、対応するトレイの傾斜角度の異なる前,後壁の角度に合わせて形成してあるから、前後方向仕切板にトレイ内への挿入方向性が得られて、ホルダー溝を設けた後端部が必ずトレイの後壁側となるから、例えば緊急取出しが求められる物品をトレイ後部の最も取出し易いホルダー溝部分にガタツキなく定置,収納することができる。
【0013】
請求項2によれば、請求項1の効果に加えて、スペーサをトレイの底壁外面の略全面にフエルト材を設けて形成しているため、スペーサの形成が容易であることは勿論、フエルト材によるトレイ底壁の振動抑制作用が得られてドラミング防止効果をより一層高めることができる。
【0014】
請求項3によれば、請求項1の効果に加えて、トレイの底壁外面に突設したスペーサとしての複数条の環状リブが、スペアタイヤ側面の凹凸形状に略沿って当接するため、これら環状リブとスペアタイヤ側面との係合によってトレイの位置決めを行えて、トレイのずれ動きを防止することができる。
【0015】
また、複数条の環状リブが補強リブとしても機能するから、トレイ底壁の剛性を高められて該トレイ底壁の撓み変形防止効果、および振動防止効果を更に高めることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0020】
図1〜5において、1は車体の後部フロアを示し、該後部フロア1には例えば平面円形のスペアタイヤパン2を凹設してあって、該スペアタイヤパン2内にスペアタイヤ3を格納できるようにしてある。
【0021】
4は後部フロア1上に設けたフロアフレームで、両側のフロアサイドに沿って前後方向に設けられると共に、リヤシート9後方のスペアタイヤパン2の近傍位置に車幅方向に設けられて、リヤエンドクロスメンバ5とでスペアタイヤパン2の上方部分を平面略方形に囲繞している。
【0022】
6は後述するトレイ10の平面形状に合わせて平面方形状の開口部7を形成したフロアトリムで、該フロアトリム6は前記フロアフレーム4およびリヤエンドクロスメンバ5上に図外のクリップ等で止着固定して後部フロア1を全体的に被覆している。
【0023】
前記リヤシート9はこの実施形態では、図外のシートクッションをその前端部を回動支点として前方へ回動すると共に、シートバック9aをその下端部を回動支点として前記シートクッションを前方回動した後の後部フロア1上に前方へ回動して略フラットに折り畳めるようにしてある。
【0024】
また、フロアトリム6はこの折り畳んだシートクッションおよびシートバック9aと略同一高さとなるようにその配設高さを設定してある一方、フロアフレーム4はその内周に2つの棚部4a,4bを多段状に形成してあり、フロアトリム6の開口部7にフロアボード8を嵌合し、上側の棚部4a上に支持することによって該フロアボード8がフロアトリム6の上面と面一に整合するようにして、前述のようにフラットに折り畳んだリヤシート9とで所謂フルフラットなフロア面が得られるようにしている。
【0025】
10は前記フロアトリム6の開口部7を通してスペアタイヤパン2に挿入配置される物品収納用のトレイを示し、該トレイ10は適宜の合成樹脂で一体成形されていて、フロアトリム6の開口部7よりも小形の平面略方形状に形成してある。
【0026】
トレイ10の開口部周縁には側方に張り出して前記フロアフレーム4の下側棚部4bの上方にラップする周縁フランジ11を形成してある。
【0027】
この周縁フランジ11の端末部は下向きに若干カーリング成形してあり、トレイ10の前側部および左右側部の周縁フランジ11の前記端末部下面には複数条の位置決めリブ12を形成してある一方、フロアフレーム4の下側棚部4bにはこれら位置決めリブ12が係合するスリット13を形成してある。
【0028】
また、トレイ10の後壁上側の略中央部には把手孔14を形成してあり、トレイ10の内側からこの把手孔14に手を掛けて該トレイ10をスペアタイヤパン2およびフロアトリム6の開口部7から取り出せるようにしてある。
【0029】
そして、前記トレイ10の底壁15の外面にスペアタイヤパン2に収納したスペアタイヤ3に当接するスペーサ20を設けて、トレイ10の周縁フランジ11をスペアタイヤパン2周りの後部フロア1上から、具体的には本実施形態にあってはフロアフレーム4の下側棚部4b上から離間配置してある。
【0030】
この実施形態ではトレイ10の内側の前,後壁16,17と左,右側壁18,19とでなす4隅部には、後部フロア1の一般面と干渉しない高さ位置に補強を兼ねた棚部10aを平面三角形状に有段成形してあり、そして、これら棚部10aの形成によって平面六角形状に形成された底壁15の外面にスペーサ20として、スペアタイヤ3と同心的に円形に形成した所要厚みのフエルト材21を接着して、該フエルト材21で底壁15の外面の略全面を被覆している。
【0031】
トレイ10の前,後壁16,17および左,右側壁18,19は何れも上向きの傾斜壁として形成してあるが、前,後壁16,17はそれらの傾斜角度を異ならせて、例えば後壁17を前壁16よりも傾斜を緩やかにして形成してある。
【0032】
また、前記把手孔14を形成した部分は、この後壁17よりも更に上向きとなるように傾斜成形して、該把孔孔14に手を挿入し易いようにしてある。
【0033】
更に、前,後壁16,17および左,右側壁18,19には各1対の縦リブで形成した複数個の位置決めスリット22を設けて、これらスリット22に例えば合成樹脂製の格子状の間仕切り23の端末を係合して、該間仕切り23をトレイ10内に挿脱自在に配設するようにしてある。
【0034】
間仕切り23は前,後端末をトレイ10の前,後壁16,17の角度に合わせた複数個の前後方向仕切り板24と、左,右端末をトレイ10の左,右側壁18,19の角度に合わせた複数個の車幅方向仕切り板25とからなり、前後方向仕切り板24の略下半部に設けたスリット24aと、車幅方向仕切り板25の略上半部に設けたスリット25aとの部分で直交して相互に係合することによって格子状に組み合わせるようになっている。
【0035】
また、各前後方向仕切板24の車体後部から手の届き易い後端部上には適宜の大きさのホルダー溝26を設けて、これらホルダー溝26の部分に跨って、例えば折り畳んだ三角表示板等の緊急取出しが求められる物品を定置,収納できるようにしてある。
【0036】
以上の実施形態の構造によれば、フロアボード8を開けてトレイ10内に工具や小物類を自由に出し入れできることは従来と略同様であるが、このトレイ10は底壁15の外面に設けたスペーサ20としてのフエルト材21がスペアタイヤパン2に収納したスペアタイヤ3に当接して該スペアタイヤ3上に定置され、トレイ10の周縁フランジ11がスペアタイヤパン2周りのフロアフレーム4の下側棚部4b上から離間配置されているため、トレイ10内に収納した図外の物品の重量で周縁フランジ11が撓み変形してめくれ上がることがなく、また、トレイ10の底壁15もスペアタイヤ3で支承されるため該底壁15が下方に撓み変形することがなく、従って、トレイ10自体の見栄えを向上することができることは勿論、周縁フランジ11のめくれ上がりによりフロアボード8が浮き上がって閉まりが悪くなって見栄えを損なうことがなく、品質感を一段と向上することができる。
【0037】
また、トレイ10の底壁が前述のようにスペーサ20としてのフエルト材21を介してスペアタイヤ3上に当接しているため、該トレイ底壁15の振動が抑制されることと、該フエルト材21がトレイ底壁15の略全面に設けられてフエルト材21自体に振動抑制作用が得られるため、トレイ10のドラミング防止効果が得られてより一層品質感を向上することができる。
【0038】
また、本実施形態ではトレイ10の内部を格子状の間仕切り23で複数に区画してあるため、物品を各区画内に整然と収納できて物品収納性を向上できると共に、物品の揺動を抑制できてドラミング防止効果を更に高めることができる。
【0039】
この間仕切り23は挿脱自在であるため、面積の大きな物品を収納する場合には該間仕切り23を外せばよく、些かも不都合を生じることはない。
【0040】
特に、この間仕切り23はその前後方向仕切り板24の前後端末を、対応するトレイ10の傾斜角度の異なる前,後壁16,17の角度に合わせて形成して、トレイ10内への挿入方向性が得られ、ホルダー溝26を設けた後端部が必ず車体後部から手の届き易いトレイ10の後壁17側となるから、折り畳んだ三角表示板等の緊急取出しが求められる物品を、このトレイ10後部の最も取出し易いホルダー溝26部分にガタツキなく定置、収納することができて利便性を高めることができる。
【0041】
図6は本発明の第2実施形態を示すもので、この実施形態にあっては、スペーサ20として、トレイ10の底壁15の外面にスペアタイヤ3の側面の凹凸形状、即ちタイヤ3aの側面弯曲およびリム3bの凹凸形状に略沿って当接する複数条の環状リブ27を突設してある。
【0042】
従って、この実施形態の構造によれば、複数条の環状リブ27がスペアタイヤ3の側面に当接、係合することによって、トレイ10の位置決めを行えて該トレイ10のずれ動きを防止できる他、これら複数条の環状リブ27が補強リブとして機能してトレイ底壁15の剛性を高められ、該トレイ底壁15の撓み変形防止効果および振動防止効果を更に高めることができる。
【0043】
なお、前記実施形態では後部フロア1上にフロアフレーム4を介してフロアトリム6を付設して、高床タイプとしたフロア構造を示したが、これらフロアフレーム4,フロアトリム6のない汎用タイプのフロア構造にも適用できることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図。
【図2】同実施形態のトレイを取出した状態の斜視図。
【図3】同実施形態のトレイの平面図。
【図4】同実施形態の間仕切りを構成する前後方向仕切り板と車幅方向仕切り板の側面図。
【図5】同実施形態のトレイ周縁フランジのフロアフレームに対する位置決め手段を示す斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
1 後部フロア
2 スペアタイヤパン
3 スペアタイヤ
10 トレイ
11 周縁フランジ
15 底壁
16 前壁
17 後壁
20 スペーサ
21 フエルト材
23 間仕切り
24 前後方向仕切り板
25 車幅方向仕切り板
26 ホルダー溝
27 環状リブ

Claims (3)

  1. 後部フロアに凹設したスペアタイヤパンに、開口部周縁に側方に張り出す周縁フランジを形成した物品収納用のトレイを挿入配置するようにした構造において、前記トレイの内部に複数個の前後方向仕切り板と、該前後方向仕切り板に格子状に組み合わせられる複数個の車幅方向仕切り板とからなる間仕切りを挿脱自在に配置して、該トレイ内部を複数に区画し、このトレイの前壁と後壁とを傾斜角度を異ならせたそれぞれ上向きの傾斜壁として形成する一方、前後方向仕切り板の前,後端部を、前記トレイの前,後壁の傾斜角度に合わせて傾斜成形し、かつ、各前後方向仕切り板の後端部上縁に、これら前後方向仕切り板の後端部上に跨って載置する物品のホルダー溝を形成し、そして前記トレイの底壁にスペアタイヤパンに収納したスペアタイヤに当接するスペーサを設けて、トレイの周縁フランジをスペアタイヤパン周りの後部フロア上から離間配置したことを特徴とする自動車の後部フロア構造。
  2. スペーサがトレイの底壁外面の略全面に設けたフエルト材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の自動車の後部フロア構造。
  3. スペーサがトレイの底壁外面に突設されて、スペアタイヤ側面の凹凸形状に略沿って当接する複数条の環状リブで形成されていることを特徴とする請求項1記載の自動車の後部フロア構造。
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