JP3635699B2 - 積層フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、臭気の少ない積層フィルムの製造方法に関する。さらに詳しくは、プラスチックフィルムを表面に有する各種基材に、ヒートシール層を形成するエチレン系樹脂を直接または中間層としてエチレン系樹脂を介して押出コーティングするにあたり、臭気の発生原因となるアンカーコート剤を使用せず、かつ内容物との接触面となるヒートシール層表面の酸化及び押出コーティングされる樹脂の過度の酸化を低減し、臭気の非常に少ない積層フィルムを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック、紙、金属箔などの異種材料のフィルム状成形物を貼り合わせて単独では有し得ない特性、例えば強度、ガスバリヤー性、防湿性、ヒートシール性、外観などを補った積層フィルムを製造することは一般に行われており、こうして得られる製品は主に包装材料などに広く使用されている。このような積層フィルムを製造する方法としては、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法、ホットラミネーション法、押出ラミネーション法などがあり、これらはその特徴に応じて適用されている。包装材料などにおいて、基材にヒートシール層を形成する方法としては、コスト面で有利さをもつ押出ラミネーション法が広く用いられている。
【0003】
押出ラミネーション法でコーティングされるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン系共重合体、アイオノマー樹脂などが用いられるのが一般的であり、1層あるいは2層以上が押出コーティングされる。なかでもポリエチレンは広範かつ多量に使用されている。
【0004】
これらの樹脂は、基材との接着性を促進するために、予め基材上にアンカーコート剤を塗布した後、その基材との接着面に溶融押出しされるのが一般的である。
【0005】
アンカーコート剤としては、有機チタネート系、有機イソシアネート系、ポリエチレンイミン系などの接着剤が用いられている。これらの接着剤は、通常トルエン、メタノール、ヘキサン等の有機溶剤で希釈して用いられている。
【0006】
アンカーコート剤を用いる場合において、例えば無極性のポリエチレンを押出してプラスチック基材と接着させるためには、加工時にその表面を空気によって酸化させる必要があり、そのためダイから出た溶融ウエブの温度は通常300℃以上となるように設定される。さらに低温で加工する場合には、溶融ウエブにオゾン処理を施す方法が広く知られている。
【0007】
しかしながら、アンカーコート剤を用いるこれらの方法は、有機溶剤などのアンカーコート剤成分が最終製品である積層フィルムに残留して臭気の原因になることや、また基材との接着性を付与するために行うポリオレフィン系樹脂の過度の酸化及び分解で発生する低分子量生成物が臭気の原因になるなど、特に食品、医療品包装の分野で問題になっている。
【0008】
臭気の少ないラミネート物の製造方法として、各種基材に熱可塑性樹脂を押出ラミネートするにあたり、溶融ウエブの基材との接触面のみを酸化し、反対面の酸化を防止し、更にラミネート工程中に溶融ウエブから揮散する低分子量ガスを適切な方法によって除去することによりこれらのガスがラミネート物に巻き込まれ、吸着することを防ぎ、臭気の非常に少ないラミネート物を製造する方法が報告されている(特公昭60−51438号公報)。この方法は、溶融ウエブの片面である冷却ロール側の表面(シール面)の酸化を低減し、かつ溶融ウエブの冷却ロール側と基材側の両表面から揮発する低分子量ガスがラミネート物に巻き込まれ、吸着することを防ぐことにより、酸化生成物あるいは低分子量分解ガスのラミネート物中への混入に起因する臭気の抑制に一応の効果を得ている。しかしこの方法で、溶融ウエブの冷却ロール側のごく表面の酸化を低減し、また低分子量分解ガスの混入を防止しただけではラミネート製品の臭気はまだ充分低減されているとはいえない。また、プラスチック基材に対するアンカーコート剤の使用に対して特に制限が成されていない上、アンカーコート剤を使用しない場合においてはプラスチック基材との膜接着力が充分とは言えず、用途が限定される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
かかる事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、プラスチック基材を表面に有する各種基材に、ヒートシール層を形成するエチレン系樹脂を直接または中間層としてエチレン系樹脂を介して押出コーティングするにあたり、臭気の発生原因となるアンカーコート剤を使用せず、かつ内容物との接触面となるヒートシール層表面の酸化及び押出コーティングされるエチレン系樹脂の過度の酸化を低減することにより、臭気の非常に少ない積層フィルムを製造する方法を提供する点に存する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、プラスチック基材を表面に有する各種基材に、各種エチレン系樹脂を直接または中間層としてエチレン系樹脂を介して押出コーティングする場合について、臭気発生の諸原因を製造方法との関係から鋭意検討した結果、アンカーコート剤を使用せずとも充分な膜接着強度が得られ、また押出コーティングされるエチレン系樹脂から発生する臭気を大巾に低減可能な積層フィルムの製造方法を見出すに至り、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、プラスチック基材及びヒートシール層を形成するエチレン系樹脂からなる積層フィルムの製造方法であって、該ヒートシール層を直接またはエチレン系樹脂を介してプラスチック基材に押出コーティングする際にアンカーコート剤を使用せず、下記(1)〜(5)の加工条件を満足し、かつ(6)〜(9)の工程を含み、(8)の工程後直ちに工程(9)に付する積層フィルムの製造方法に係るものである。
〔加工条件〕
(1)ヒートシール層積層時の引取速度(L)について、下記(式1)の関係が成立すること
L(m/min)≧0.3×G+T+25×Log(MFR)−150×SR
−500×D+473 (式1)
(A) ただし、次のとおりとする。
G:ヒートシール層を形成する側のエアーギャップ(mm)
T:ヒートシール層を形成する側のダイ直下樹脂温度(℃)
MFR:ヒートシール層を形成する樹脂のメルトフローレート(g/10分)
SR:ヒートシール層を形成する樹脂のスウェリング比
D:ヒートシール層を形成する樹脂の密度(g/cm3)
(2)ヒートシール層積層時のダイ直下樹脂温度(T)について、下記(式2)の関係が成立すること
180℃≦T(℃)≦320℃ (式2)
(3)ヒートシール層積層時の冷却ロール温度(C)について、下記(式3)の関係が成立すること
0℃≦C(℃)≦70℃ (式3)
(4)基材とヒートシール層の間に一層以上のエチレン系樹脂を中間層として介する場合の該中間層積層時の引取速度(Ln)について、下記(式4)の関係が成立すること
L(m/min)≦Ln(m/min) (式4)
(5)基材とヒートシール層の間に一層以上のエチレン系樹脂を中間層として介する場合の該エチレン系樹脂のダイ直下樹脂温度(Tn)について、下記(式5)の関係が成立すること
T(℃)≦Tn(℃)≦330℃ (式5)
〔工程〕
(6)ヒートシール層積層時に、共押出ダイまたはTダイより押出された溶融ウエブの冷却ロール側の面(シール面)に不活性ガスを吹付ける工程
(7)プラスチック基材に対して、エチレン系樹脂を押出コーティングする際に、共押出ダイまたはTダイより押出された溶融ウエブの基材と接触する側の面にオゾン処理を施す工程
(8)プラスチック基材の少なくとも一面に表面酸化処理を施す工程
(9)プラスチック基材の表面酸化処理面と(7)の工程で得られたフィルムのオゾン処理面を接触させ、該フィルムと該プラスチック基材を圧着する工程
【0012】
本発明に用いられるプラスチック基材としては、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン系樹脂、セロハン、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、フッソ樹脂、ポリアクリルニトリルなどの樹脂の単体及びこれらの積層フィルム又はシート、更にその延伸物、塗工物、織物が用いられる。また、更にこれらプラスチック基材とアルミニウム、鉄、紙などとの貼合品であって、これら樹脂並びにエチレン系樹脂を接合面に設けた積層体などが用いられる。これらプラスチック基材には必要に応じて予めその表面がコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理などの表面処理が施されているもの、また、予め印刷が施こされていてもよい。基材の肉厚は押出ラミネート加工が可能であれば特に制約を受けるものではないが、好ましくは1〜10000μ、更に好ましくは5〜500μの範囲がよい。
【0013】
本発明において使用するエチレン系樹脂としては、例えばイオン重合法で製造される高密度ポリエチレン、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体、高圧ラジカル重合法で製造される低密度ポリエチレン、エチレンと例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル等の炭素数4〜8の不飽和カルボン酸のエステル化物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ネオ酸ビニル等のビニルエステル類等の各種コモノマーとの共重合体等を用いることができる。エチレンと共重合されたコモノマー種は、一種でも複数種のものでも使用することがでるが、本発明で使用されるエチレン系樹脂に含まれるコモノマー成分の含有量は、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下のものが臭気の点で好適に用いることができる。これらエチレン系樹脂は単独または二種以上の混合物として用いることができる。更に必要に応じて、他の樹脂を50重量%未満の範囲で混合したものも用いることができる。
【0014】
また、本発明において使用するエチレン系樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤、例えば抗酸化剤、アンチブロッキング剤、耐候剤、中和剤、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、分散剤、顔料、有機または無機の充填剤などが併用されていてもよい。
【0015】
本発明の積層フィルムの製造方法における加工条件は以下の(1)〜(5)によって規定される。
(1)ヒートシール層積層時の引取速度(L)が
好ましくは
より好ましくは
である。
ただし、次のとおりとする。
G:ヒートシール層を形成する側のエアーギャップ(mm)
T:ヒートシール層を形成する側のダイ直下樹脂温度(℃)
MFR:ヒートシール層を形成する樹脂のメルトフローレート(g/10分)
SR:ヒートシール層を形成する樹脂のスウェリング比
D:ヒートシール層を形成する樹脂の密度(g/cm3 )
【0016】
ここでエアーギャップは、ダイ出口から冷却ロールとニップロールの圧着点までの距離を意味し、任意に設定することができるが、この間隙において共押出ダイまたはTダイより押出された溶融ウエブは空気酸化またはオゾンによる酸化を受けるため、できるだけ短い距離に設定することが溶融ウエブの酸化を低減する上で好ましい。
【0017】
またダイ直下樹脂温度は任意に設定可能であるが、ダイ直下樹脂温度が高いほど酸化を受けやすくなるため、できるだけ低い温度に設定することが溶融ウエブの酸化を低減する上で好ましい。
【0018】
また樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に従って、190℃,2.16kg荷重の条件で測定され、本発明で用いられるエチレン系樹脂は任意のMFRのものを使用可能であるが、通常0.1〜100g/10minの範囲である。MFRが高いと、低分子量成分の含有量も高くなり、酸化された後臭気成分となりやすく、また低すぎても押出機内での発熱による分解が生じ臭気の発生原因となるため、本発明で用いられるエチレン系樹脂のMFRは1〜50g/10min、更に2〜30g/10minの範囲にあることが好ましい。
【0019】
また樹脂のスウェリング比(SR)は、MFR測定時に採取されたストランドの直径を測定し、下記の式より求めることができ、本発明で用いられるエチレン系樹脂は任意のSRのものを使用可能であるが、通常1.05〜2.00の範囲である。
SR=ストランドの直径(mm)/オリフィスの内径(mm)
【0020】
SRの大小は、臭気と直接の相関が認められる訳ではないが、SRが小さいものは臭気が強い傾向があり、また、SRが大きいと高速での加工が行いにくくなる傾向があるため、本発明で用いられるエチレン系樹脂のSRは1.1〜1.9、更に1.2〜1.8の範囲にあることが好ましい。
【0021】
また樹脂の密度は、JIS K6760に従って、100℃で1時間のアニール後測定され、本発明で用いられるエチレン系樹脂は任意の密度のものを使用可能であるが、通常0.870〜0.970g/cm3 の範囲である。密度が低いと臭気が強い傾向にあるため、臭気の点では密度の高い方が好ましい。
【0022】
本発明者らは、臭気発生の諸原因が上記の通り、エアーギャップ、ダイ直下樹脂温度、樹脂のMFR、樹脂のSR、樹脂の密度に影響することを見出し、臭気の少ない積層フィルムを得るための加工条件の1つとして、それぞれの設定及び用いる樹脂の物性に応じて、ヒートシール層積層時の引取速度(L)を(式1)で表した。引取速度がこの範囲未満であると、臭気の充分な改良効果が得られないため好ましくない。
【0023】
(2)ヒートシール層積層時のダイ直下樹脂温度(T)が
180℃≦T(℃)≦320℃ (式2)
好ましくは
190℃≦T(℃)≦310℃ (式2’)
より好ましくは
200℃≦T(℃)≦300℃ (式2’’)
である。ヒートシール層積層時のダイ直下樹脂温度(T)が180℃未満であると、樹脂の延展性が不良となり、肉厚が均一な溶融膜を得ることが困難であるため好ましくない。一方、320℃を超えると、溶融ウエブの酸化が多くなり臭気が悪化するため好ましくない。
【0024】
(3)ヒートシール層積層時の冷却ロール温度(C)が
0℃≦C(℃)≦70℃ (式3)
好ましくは
5℃≦C(℃)≦60℃ (式3’)
より好ましくは
10℃≦C(℃)≦50℃ (式3’’)
である。ヒートシール層積層時の冷却ロール温度(C)が0℃未満であると、冷却ロール表面は結露しやすくなり好ましくなく、一方70℃を超えて高すぎると溶融ウエブの冷却が不十分なためロールリリース性が劣ったり、またヒートシール層の酸化が進行して臭気が悪化するため好ましくない。
【0025】
(4)基材とヒートシール層の間に一層以上のエチレン系樹脂を中間層として介する場合の該中間層積層時の引取速度(Ln)が
L(m/min)≦Ln(m/min) (式4)
である。該中間層積層時の引取速度(Ln)がヒートシール層積層時の引取速度(L)より遅い場合は、該中間層の過度の酸化が進み、臭気が悪化するため好ましくない。
【0026】
(5)基材とヒートシール層の間に一層以上のエチレン系樹脂を中間層として介する場合の該エチレン系樹脂のダイ直下樹脂温度(Tn)が
T(℃)≦Tn(℃)≦330℃ (式5)
好ましくは
T(℃)≦Tn(℃)≦320℃ (式5’)
より好ましくは
T(℃)≦Tn(℃)≦310℃ (式5’’)
である。該中間層のダイ直下樹脂温度がヒートシール層積層時のダイ直下樹脂温度より低い場合は、プラスチック基材との膜接着性が充分得られない恐れがあり好ましくなく、また逆に、充分な膜接着性が得られる場合は、臭気低減のため、ヒートシール層積層時のダイ直下樹脂温度を該中間層のダイ直下樹脂温度より低い温度に設定すべきである。330℃を超えて高すぎる場合は、該中間層の酸化が著しく進行し、臭気を悪化させるため好ましくない。
【0027】
本発明の積層フィルムの製造方法における工程(6)は、積層フィルムとした場合に内容物との接触面となるヒートシール層表面の酸化を防止して臭気の発生を低減するために行う工程である。使用される不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等を例示することができる。ヒートシール層積層時に、共押出ダイまたはTダイより押出された溶融ウエブの冷却ロール側の面(シール面)に不活性ガスを吹付ける場合には、例えば、ダイ下エアーギャップ間に設けたノズルまたはスリット状の吹出し口から、溶融ウエブのシール面に向けて、ヒートシール層を形成するエチレン系樹脂押出重量1kg当たり通常0.01〜2Nm3 を連続して吹付けることにより行われる。この際、吹付けられた不活性ガスが特定の部分に滞留することなく、また、溶融ウエブのシール面全体に吹付けられるようにするのが好ましい。不活性ガスの吹付けを行わないと、臭気の改良効果が充分得られないので好ましくない。
【0028】
また、不活性ガスの吹付けを行う際には、公知の押出ラミネーターの通常ダイ上部に設置されている排気装置を作動させ、加工時に発生する発煙等を排気することが臭気の悪化を防ぐ観点から好ましい。
【0029】
本発明の積層フィルムの製造方法における工程(7)〜(9)は、臭気発生原因となるアンカーコート剤を使用せずに、プラスチック基材との膜接着性を付与するための工程である。
【0030】
(7)プラスチック基材に対して、エチレン系樹脂を押出コーティングする際に、共押出ダイまたはTダイより押出された溶融ウエブの基材と接触する側の面にオゾン処理を施す工程において、オゾン処理は、例えばダイ下エアーギャップ間に設けたノズルまたはスリット状の吹出し口から、オゾンを含ませた気体(空気など)を連続的に吹付けることにより行われる。この際、吹付けられたオゾンを含ませた気体が特定の部分に滞留することなく、また、溶融ウエブの基材と接触する側の面全体に吹付けられるようにするのが好ましい。尚、オゾンノズルがダイ下に設置できない場合は、圧着ラミネートする直前のプラスチック基材上に吹付けてもよい。吹付けるオゾンの量は溶融フィルムの通過単位面積に対し、
1≦オゾン処理量(mg/m2 )≦−0.5×Tx+170 (式6)
好ましくは
1≦オゾン処理量(mg/m2 )≦−0.5×Tx+165 (式6’)
更に好ましくは
1≦オゾン処理量(mg/m2 )≦−0.5×Tx+160 (式6’’)
である。
ただし次の通りとする。
Tx:オゾン処理を行うエチレン系樹脂のダイ直下樹脂温度(℃)
オゾン処理量が1mg/m2 未満であるとプラスチック基材との膜接着強度が充分得られないため好ましくなく、また、[−0.5×Tx+170]mg/m2 を超えると溶融ウエブ表面の過度の酸化を生じ、臭気が悪化するので好ましくない。
【0031】
また、オゾン処理を行う際には、公知の押出ラミネーターの通常ダイ上部に設置されている排気装置を作動させ、加工時に発生する発煙等を排気することが臭気の悪化を防ぐ観点から好ましい。
【0032】
(8)プラスチック基材の少なくとも一面に表面酸化処理を施す工程において、表面酸化処理は、プラスチック基材の接着面に一定レベル以上の酸化活性点を発生させるため、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレームプラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等の公知の方法により行うことができる。ただし表面酸化処理後は、できるだけ速いうちに工程(9)の圧着を完了することが好ましい。
【0033】
コロナ放電処理は、例えば公知のコロナ放電処理器を用い、発生させたコロナ雰囲気にプラスチック基材を通過させることにより行われる。ここで、膜接着強度を高水準に維持するという観点からは、コロナ放電密度は、10W・min/m2 以上、好ましくは25W・min/m2 以上、更に好ましくは40W・min/m2 以上である。
【0034】
プラズマ処理は、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン、キセノン、水素、窒素、空気などの単体または混合気体をプラズマジェットで電子的に励起せしめた後、帯電粒子を除去し、電気的に中性とした励起不活性ガスを、プラスチック基材の表面に吹付けることにより実施できる。
【0035】
フレームプラズマ処理は、天然ガスやプロパンを燃焼させた時に生じる火炎内のイオン化したプラズマを、プラスチック基材の表面に吹付けることにより実施できる。
【0036】
電子線照射処理は、プラスチック基材の表面に、電子線加速器により発生させた電子線を照射することにより行われる。電子線照射装置としては、例えば、線状のフィラメントからカーテン状に均一な電子線を照射できる装置「エレクトロカーテン」(商品名)を使用することができる。
【0037】
紫外線照射処理は、例えば200〜400mμの波長の紫外線を、プラスチック基材の表面に照射することにより実施できる。
【0038】
表面酸化処理を行わない場合は、プラスチック基材に積層されるエチレン系樹脂との膜接着強度が充分得られないため好ましくない。
【0039】
また、市販のプラスチック基材には、表面への印刷性の改良のため、コロナ放電処理などの表面酸化処理が施されているものもあるが、かかる市販品について、本発明の表面酸化処理を実施することなく用いた場合には、本発明が目的とする充分に強固な膜接着強度を得ることができない。
【0040】
(9)プラスチック基材の表面酸化処理面と(7)の工程で得られたフィルムのオゾン処理面を接触させ、該フィルムと該プラスチック基材を圧着する工程において、圧着工程は、公知の押出ラミネーターを使用して行うことができ、例えば、冷却ロールとニップロールの間で圧着することを含む。本発明においては、(8)の工程である表面酸化処理工程後のプラスチック基材を直ちに圧着工程に付すことが好ましい。このことにより、より高水準の膜接着強度が発現され、かつ好ましくないフィルムのブロッキングが防止される。
【0041】
本発明においては、プラスチック基材の繰出し工程、表面酸化処理工程、圧着工程及び製品巻取り工程がプラスチック基材の流れの方向に沿って同一ライン上に順次設置された装置を用い、これらの工程を速やかに一連の作業で行うことが好ましい。
【0042】
また本発明においては、膜接着強度を一層向上させる観点から、圧着工程の後に、圧着工程で得られる積層フィルムを、保温下、熟成する工程を設けてもよい。熟成温度は通常25〜70℃、好ましくは30〜50℃、より好ましくは40〜45℃である。熟成温度が低すぎる場合は充分な膜接着強度が得られない場合があり、一方高すぎる場合は、コーティングした樹脂のヒートシール性能やホットタック性能の低下を招くことがある。熟成時間は、通常1〜120時間、好ましくは10〜120時間である。熟成時間が短か過ぎる場合は膜接着強度の改善が不十分であることがあり、一方長過ぎる場合は、コーティングした樹脂が変質することがあり、また生産性の点で不利である。熟成工程を実施するには、通常のオーブンまたは温度調整が可能な部屋を用いればよいが、元々臭気を発しているような場所では行うべきでない。
【0043】
また本発明においては、膜接着強度を一層向上させる観点から、工程(8)の表面処理工程の前に、表面酸化処理工程に付すべきプラスチック基材を、40℃以上かつプラスチック基材の融点以下の温度で加熱してもよい。
【0044】
本発明では、従来の方法で製造された積層フィルムに比べ、臭気の少ない積層フィルムが得られるため、包装材料、例えば食品包装材料、医薬品包装材料や工業用材料に好適に用いることができる。
【0045】
【実施例】
次に本発明を、実施例により詳しく説明する。
【0046】
実施例1
プラスチック基材として東洋紡績(株)社製二軸延伸ポリエステル(PET;E5100タイプ25μ)、エチレン系樹脂として住友化学工業(株)製スミカセンL718−H(MFR8g/10min、SR1.58、密度0.919g/cm3 )を用い、口径65mmφの押出機で該エチレン系樹脂を溶融混練し、Tダイからダイ直下樹脂温度285℃、エアーギャップ160mm、フィルム巾350mm、コーティング層の厚み30μ、引取速度150m/minとなる条件で押出し、次いで該溶融ウエブの冷却ロール側の面(シール面)に、ダイ下30mmの位置に設けたノズルから、不活性ガスとして窒素ガスを該エチレン系樹脂押出重量1kg当たり0.035Nm3 吹付け、また同時に、該溶融ウエブの基材と接触する側の面に、ダイ下30mmの位置に設けたノズルから、オゾン処理量が15mg/m2 となる条件でオゾンを含む空気を吹付け、次いでプラスチック基材の表面酸化処理として押出ラミネーターのインラインに設けたコロナ放電装置により該基材表面が55W・min/m2 となる条件でコロナ放電処理を施した該プラスチック基材の面に押出コーティングを行い、次いで温度20℃の冷却ロールとニップロールの間を通過させることにより圧着し、積層フィルムを得た。また、本加工の最中は、ダイ上部に設置された排気装置を作動させ、発生する発煙を排気した。更に得られた積層フィルムはオーブンを用い、空気雰囲気下、40℃で48時間熟成させた。得られた積層フィルムについて、下記の通り測定・評価を行った。加工条件及び膜接着強度の評価結果を表1に、また臭気の評価結果を表2に示す。
【0047】
(1)膜接着強度の評価
15mm巾の積層フィルムを、東洋精機(株)製オートストレイン型引張試験機を使用して、200mm/minの引張速度で180度剥離した時の剥離強度を測定し、膜接着強度を評価した。
(2)臭気の評価
無臭のガラス製1リットル広口瓶に、10cm×5cmのサイズに切り出した積層フィルムを入れ、アルミホイルで密閉後、50℃のオーブン中で1時間状態調整を行った。しかる後、8人のパネラーによって官能検査を実施し、臭気を比較した。評価は臭気が少なくて良好とした人の数で表した。
【0048】
比較例1〜6
表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様に行った。ただし、比較例5、6においては、基材に予めポリウレタン系アンカーコート剤(日本曹達製T120、T300)の塗布を行った。加工条件及び膜接着強度の評価結果を表1に、また臭気の評価結果を表2に示す。なお、表中「−」印の欄は、該処理を実施しなかったことを表す。
【0049】
実施例2
プラスチック基材としてユニチカ(株)社製二軸延伸ナイロン(ONy;エンブレムONタイプ15μ)、中間層として使用するエチレン系樹脂として住友化学工業(株)製スミカセン L5816を用い、ヒートシール層として使用するエチレン系樹脂として住友化学工業(株)製スミカセンL CL8071(MFR10g/10min、SR1.47、密度0.915g/cm3 )を用い、口径65mmφの押出機2台で該エチレン系樹脂を溶融混練し、マルチスロット型共押出ダイから、中間層はダイ直下樹脂温度290℃、フィルム巾370mm、コーティング厚み25μ、ヒートシール層はダイ直下樹脂温度280℃、エアーギャップ160mm、フィルム巾350mm、コーティング層の厚み25μ、引取速度170m/minとなる条件で押出し、次いで該ヒートシール層の溶融ウエブの冷却ロール側の面(シール面)に、ダイ下30mmの位置に設けたノズルから、不活性ガスとして窒素ガスを該エチレン系樹脂押出重量1kg当たり0.035Nm3 吹付け、また同時に、該中間層の溶融ウエブの基材と接触する側の面に、ダイ下30mmの位置に設けたノズルから、オゾン処理量が15mg/m2 となる条件でオゾンを含む空気を吹付け、次いでプラスチック基材の表面酸化処理として押出ラミネーターのインラインに設けたコロナ放電装置により該基材表面が48W・min/m2 となる条件でコロナ放電処理を施した該プラスチック基材の面に押出コーティングを行い、次いで温度20℃の冷却ロールとニップロールの間を通過させることにより圧着し、積層フィルムを得た。また、本加工の最中は、ダイ上部に設置された排気装置を作動させ、発生する発煙を排気した。更に得られた積層フィルムはオーブンを用い、空気雰囲気下、45℃で48時間熟成させた。得られた積層フィルムについて、実施例1と同様に測定・評価を行った。加工条件及び膜接着強度の評価結果を表3に、また臭気の評価結果を表4に示す。
【0050】
比較例7〜11
表3に示す条件としたこと以外は、実施例2と同様に行った。ただし、比較例11においては、基材に予めポリウレタン系アンカーコート剤(日本曹達製T120、T300)の塗布を行った。加工条件及び膜接着強度の評価結果を表3に、また臭気の評価結果を表4に示す。なお、表中「−」印の欄は、該処理を実施しなかったことを表す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明により、プラスチック基材及びヒートシール層を形成するエチレン系樹脂からなる積層フィルムの製造方法であって、臭気の非常に少ない積層フィルムを得ることができる方法を提供することができた。
Claims (9)
- プラスチック基材及びヒートシール層を形成するエチレン系樹脂からなる積層フィルムの製造方法であって、該ヒートシール層を直接またはエチレン系樹脂を介してプラスチック基材に押出コーティングする際にアンカーコート剤を使用せず、下記(1)〜(5)の加工条件を満足し、かつ(6)〜(9)の工程を含み、(8)の工程後直ちに工程(9)に付する積層フィルムの製造方法。
〔加工条件〕
(1)ヒートシール層積層時の引取速度(L)について、下記(式1)の関係が成立すること
L(m/min)≧0.3×G+T+25×Log(MFR)−150×SR−500×D+473 (式1)
(A) ただし、次のとおりとする。
G:ヒートシール層を形成する側のエアーギャップ(mm)
T:ヒートシール層を形成する側のダイ直下樹脂温度(℃)
MFR:ヒートシール層を形成する樹脂のメルトフローレート(g/10分)
SR:ヒートシール層を形成する樹脂のスウェリング比
D:ヒートシール層を形成する樹脂の密度(g/cm3)
(2)ヒートシール層積層時のダイ直下樹脂温度(T)について、下記(式2)の関係が成立すること
180℃≦T(℃)≦320℃ (式2)
(3)ヒートシール層積層時の冷却ロール温度(C)について、下記(式3)の関係が成立すること
0℃≦C(℃)≦70℃ (式3)
(4)基材とヒートシール層の間に一層以上のエチレン系樹脂を中間層として介する場合の該中間層積層時の引取速度(Ln)について、下記(式4)の関係が成立すること
L(m/min)≦Ln(m/min) (式4)
(5)基材とヒートシール層の間に一層以上のエチレン系樹脂を中間層として介する場合の該エチレン系樹脂のダイ直下樹脂温度(Tn)について、下記(式5)の関係が成立すること
T(℃)≦Tn(℃)≦330℃ (式5)
〔工程〕
(6)ヒートシール層積層時に、共押出ダイまたはTダイより押出された溶融ウエブの冷却ロール側の面(シール面)に不活性ガスを吹付ける工程
(7)プラスチック基材に対して、エチレン系樹脂を押出コーティングする際に、共押出ダイまたはTダイより押出された溶融ウエブの基材と接触する側の面にオゾン処理を施す工程
(8)プラスチック基材の少なくとも一面に表面酸化処理を施す工程
(9)プラスチック基材の表面酸化処理面と(7)の工程で得られたフィルムのオゾン処理面を接触させ、該フィルムと該プラスチック基材を圧着する工程 - 工程(6)の不活性ガス吹付け量が、ヒートシール層を形成するエチレン系樹脂押出重量1kg当たり0.01〜2Nm3 である請求項1記載の製造方法。
- 工程(7)のオゾン処理量が下記(式6)を満足する請求項1記載の製造方法。
1≦オゾン処理量(mg/m2 )≦−0.5×Tx+170 (式6)
ただし、次のとおりとする。
Tx:オゾン処理を行うエチレン系樹脂のダイ直下樹脂温度(℃) - 工程(8)の表面酸化処理工程及び工程(9)の圧着工程をインラインに設け、表面酸化処理工程後のプラスチック基材を直ちに圧着工程に付す工程を含む請求項1記載の製造方法。
- 工程(6)の不活性ガスが窒素ガスである請求項1記載の製造方法。
- 工程(8)の表面酸化処理がコロナ放電処理である請求項1記載の製造方法。
- 工程(6)及び(7)が行われる際に、排気を行う請求項1記載の製造方法。
- 工程(9)の圧着工程の後に、下記工程(10)を有する請求項1記載の製造方法。
(10)圧着工程で得られる積層フィルムを、保温下、熟成する工程。 - ヒートシール層形成に使用されるエチレン系樹脂が、高圧ラジカル法低密度ポリエチレンまたはエチレン−α−オレフィン共重合体あるいはそれらの混合物である請求項1記載の製造方法。
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