JP3633104B2 - 回転速度検出装置付転がり軸受ユニット - Google Patents

回転速度検出装置付転がり軸受ユニット Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明に係る回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、自動車の車輪を懸架装置に回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する為に利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、アンチロックブレーキシステム(ABS)、或はトラクションコントロールシステム(TCS)を制御すべく、この車輪の回転速度を検出する為の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットとして、従来から種々の構造のものが知られている。この様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに組み込まれる回転速度検出装置は何れも、車輪と共に回転する、被検出素子であるトーンホイールと、このトーンホイールの回転速度に比例した周波数で変化する出力信号を出すセンサとを備える。例えば発明協会公開技報94−16051には、図5〜6に示す様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットが記載されている。
【0003】
内輪相当部材であるハブ1の外端部(外とは車両への組み付け状態で車両の幅方向外となる側を言い、図3を除く各図の左)外周面には、車輪を固定する為のフランジ部2を形成し、中間部外周面には内輪軌道3aと段部4とを形成している。又、このハブ1の外周面には、その外周面に内輪軌道3bを形成し、上記ハブ1と共に内輪相当部材を構成する内輪5を、その外端面を上記段部4に突き当てた状態で外嵌支持している。尚、上記内輪軌道3aは、ハブ1の外周面に直接形成する代りに、ハブ1とは別体の内輪(図示せず)に形成し、この内輪と上記内輪5とを、ハブ1に外嵌固定する場合もある。
【0004】
又、ハブ1の内端寄り部分(内とは、車両への組み付け状態で車両の幅方向中央寄りとなる側を言い、各図の右)には雄ねじ部6を形成している。そして、この雄ねじ部6に螺合し更に緊締したナット7により、上記内輪5をハブ1の外周面の所定部分に固定して、上記内輪相当部材を構成している。ハブ1の周囲に配置された、外輪相当部材である外輪8の中間部外周面には、この外輪8を懸架装置に固定する為の取付部9を設けている。又、この外輪8の内周面には、それぞれが上記各内輪軌道3a、3bに対向する外輪軌道10a、10bを形成している。そして、これら各内輪軌道3a、3bと外輪軌道10a、10bとの間に、それぞれ複数ずつの転動体11、11を設けて、上記外輪8の内側でのハブ1の回転を自在としている。尚、図示の例では、転動体11、11として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車用の転がり軸受ユニットの場合には、転動体としてテーパころを使用する場合もある。又、上記外輪8の外端部内周面と、ハブ1の外周面との間には、シールリング12を装着して、外輪8の内周面と上記ハブ1の外周面との間に存在し、上記複数の転動体11、11を設けた空間の外端開口部を塞いでいる。
【0005】
上記内輪5の内端部で上記内輪軌道3bから外れた部分には、トーンホイール13の基端部(図5〜6の左端部)を外嵌固定している。このトーンホイール13は、鋼板等の磁性金属板により全体を円環状(短円筒状)に形成したもので、互いに同心に形成された小径部14と大径部15とを、段部16により連続させて成る。この様なトーンホイール13は、上記大径部15を内輪5の端部外周面に外嵌し、上記段部16をこの内輪5の端縁部に当接させた状態で、この内輪5に支持固定している。従って上記小径部14は、上記内輪5と同心に支持される。そして、この小径部14に複数の透孔17を、円周方向に亙り等間隔に形成して、円周方向に亙る磁気特性を交互に且つ等間隔に変化させている。各透孔17は同形状で、軸方向(図5〜6の左右方向)に長い矩形としている。
【0006】
外輪8の内端開口部は、ステンレス鋼板、アルミニウム合金板等の金属板を絞り加工する等により有底円筒状に造った、カバー18で塞いでいる。このカバー18を構成する円筒部19の内周側に、円環状のセンサ20を包埋した、やはり円環状の合成樹脂21を保持固定している。このセンサ20は、永久磁石22と、鋼板等の磁性材により造られたステータ23と、コイル24とを備える。そして、これら各部材22、23、24を上記合成樹脂21中に包埋する事により、全体を円環状に構成している。
【0007】
上記センサ20の構成各部材のうちの永久磁石22は、全体を円環状(円輪状)に形成されて、直径方向に亙り着磁されている。そして、この永久磁石22の内周面を、上記トーンホイール13を構成する小径部14の基端部で、上記透孔17を形成していない部分の外周面に、微小隙間25を介して対向させている。又、上記ステータ23は、断面が略J字形で全体を円環状に構成している。そして、このステータ23を構成する外径側円筒部26の端部内周面と上記永久磁石22の外周面とを、近接若しくは当接させている。又、上記ステータ23を構成する内径側円筒部27の内周面を、上記トーンホイール13の一部で、上記複数の透孔17を形成した部分に対向させている。更に、上記内径側円筒部27には複数の切り欠き28を、この内径側円筒部27の円周方向に亙って、前記透孔17と等ピッチ(中心角ピッチ)で形成している。従って、上記内径側円筒部27部分は、櫛歯状に形成している。
【0008】
更に、上記コイル24は、非磁性材製のボビン29に導線を巻回する事により円環状に形成し、上記ステータ23を構成する外径側円筒部26の内周側部分に配置している。このコイル24に惹起される起電力は、カバー18の外面に突設した、信号取り出し手段であるコネクタ30から取り出す。
【0009】
上述の様に構成される回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの使用時、ハブ1と共にトーンホイール13が回転すると、このトーンホイール13と対向するステータ23内の磁束密度が変化し、上記コイル24に惹起される電圧が、上記ハブ1の回転速度に比例した周波数で変化する。ステータ23を流れる磁束の密度変化に対応して上記コイル24に惹起される電圧が変化する原理は、従来から広く知られた回転速度検出用センサの場合と同じである。又、トーンホイール13の回転に応じてステータ23に流れる磁束の密度が変化する理由は、次の通りである。
【0010】
上記トーンホイール13に設けた複数の透孔17と、ステータ23に設けた切り欠き28とは、互いのピッチが等しい為、トーンホイール13の回転に伴って全周に亙り同時に対向する瞬間がある。そして、これら各透孔17と各切り欠き28とが互いに対向した瞬間には、隣り合う透孔17同士の間に存在する、磁性体である柱部と、やはり隣り合う切り欠き28同士の間に存在する、磁性体である舌片とが、前記微小隙間25を介して互いに対向する。この様にそれぞれが磁性体である柱部と舌片とが互いに対向した状態では、上記トーンホイール13とステータ23との間に、高密度の磁束が流れる。
【0011】
これに対して、上記透孔17と切り欠き28との位相が半分だけずれると、上記トーンホイール13とステータ23との間で流れる磁束の密度が低くなる。即ち、この状態では、トーンホイール13に設けた透孔17が上記舌片に対向すると同時に、ステータ23に設けた切り欠き28が上記柱部に対向する。この様に柱部が切り欠き28に、舌片が透孔17に、それぞれ対向した状態では、上記トーンホイール13とステータ23との間に比較的大きな空隙が、全周に亙って存在する。そして、この状態では、これら両部材13、23の間に流れる磁束の密度が低くなる。この結果、前記コイル24に惹起される電圧が、前記ハブ1の回転速度に比例して変化する。前記センサ20は上述の様に作用する事により、コイル24に惹起される出力電圧を、ハブ1の回転速度に比例した周波数で変化させる。
【0012】
更に、欧州特許公開EP 0 557 931 A1には、図7に示す様に、外輪8の内端開口部を塞ぐカバー18aを合成樹脂製とし、このカバー18aを構成する合成樹脂内にセンサ20aを包埋した構造が記載されている。上記カバー18aの開口端部外周面には、鋼板等、十分な剛性を有する金属板により、断面L字形で全体を円環状に造られたスリーブ31を固定している。このスリーブ31は、上記カバー18aを射出成形する際にキャビティ内にセットしておく事により、上記合成樹脂中にモールドする。
【0013】
上述の様なカバー18aは、上記スリーブ31を、外輪相当部材である外輪8の内端開口部に内嵌する事により、この外輪8に固定する。この様な合成樹脂製のカバー18aを組み込んだ構造の場合には、前述の図5〜6に示した構造に比べて構成部材の点数を少なくでき、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットのコスト低減を図れる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合には、次に述べる様な解決すべき点がある。先ず、図5〜6に示した従来の第1例の構造の場合には、センサ20を包埋した合成樹脂21とコネクタ30を構成する合成樹脂とが金属板製のカバー18を挟んで配置されている為、製造作業が面倒でコストが嵩む。即ち、図5〜6に示した様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを造る場合には、先ず合成樹脂21中にセンサ20を包埋した後、この合成樹脂21をカバー18に内嵌し、次いでこのカバー18を成形型内にセットした状態で、上記コネクタ30を射出成形する。この為、射出成型工程が2回必要になり(或は別々に射出成形された合成樹脂21とコネクタ30とを接着する工程が必要になり)、製作費が嵩む。
【0015】
又、図7に示した従来の第2例の構造の場合には、専用のプレス機がないと組み立てる事が難しい。この為、専用のプレス機を備えていない整備工場で、カバー18aに装着されたセンサ20aの交換を行なえず、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを設置した部分の点検、修理に要するコストが嵩む。又、外輪8から上記カバー18aを抜き取る際に、スリーブ31の外周面と外輪8の端部内周面との間に作用する大きな摩擦力に基づいてこのスリーブ31の先端縁(図7の左端縁)が、上記カバー18aを構成する合成樹脂の先端外周寄り部分32を強く押す。この結果、この部分32の基部に剪断方向の力が加わって、この部分32が破損する可能性が高くなる。この部分32が破損したカバー18a及びこのカバー18aに包埋されたセンサ20aは再使用できなくなる為、やはり点検、修理に要するコストが嵩む原因になる。
【0016】
外輪8から上記カバー18aを抜き取る際に、上記先端外周寄り部分32に上述の様な剪断応力が加わるのを防止する為には、上記スリーブ31の基端部(図7の右端部)に形成した鍔部33の外径を大きくする事が考えられる。この鍔部33の外径を大きくし、この鍔部33の外周寄り部分を上記カバー18aの外周面よりも直径方向外方に突出させて、この突出部分に工具を引っ掛ければ、上記破損に結び付く剪断応力の発生を防止できる。ところが、単に上記鍔部33の外径を大きくした場合には、降雨時、或は洗車時に鍔部33の外側面に吹き付けられた水が、上記スリーブ31と外輪8との接触面間を伝ってこの外輪8の内側に入り込み易くなる為、採用できない。
【0017】
更に、カバーを合成樹脂のみで形成し、このカバーと外輪との間を断面X字形のシールリングによりシールする構造が、実開平5−14634号公報に記載されている様に、従来から知られている。この公報に記載された構造の場合には、上記問題がない代わりに、外輪に対するカバーの嵌合部が合成樹脂製である為、この嵌合部による上記カバーの支持剛性を十分に確保する事が難しい。本発明は、この様な事情に鑑みて、外輪に対する嵌合部を金属製としたカバーを利用し、しかも十分なシール性を確保できる構造を提供すべく発明したものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、前述した従来の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットと同様に、内周面に外輪軌道を有し、回転しない外輪相当部材と、外周面に内輪軌道を有し、回転する内輪相当部材と、上記外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、上記内輪相当部材の一部にこの内輪相当部材と同心に固定された、円周方向に亙る特性を交互に且つ等間隔に変化させた被検出素子と、上記外輪相当部材の開口端部に嵌合固定されたカバーと、このカバーの一部に保持されて上記被検出素子と対向し、この被検出素子の回転速度を検出するセンサとを備える。
【0019】
特に、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに於いては、上記カバーは、合成樹脂製の主体と金属板により造られたスリーブとから成り、上記センサはこのうちの主体に包埋している。そして、この主体は、上記外輪相当部材の開口端部を覆える大きさを有する板部の片面に、この外輪相当部材の端面に付当て自在な円筒部を形成して成る。又、上記スリーブは、小径部と大径部とを段部により連続させたクランク形の断面形状を有すると共に、全体を円環状に形成している。この様なスリーブは、その基半部となる上記小径部を上記円筒部に包埋している。又、上記大径部の基端寄り部分の内径面と上記円筒部の先端寄り部分の外周面と上記段部の片面とにより断面の三方を囲まれる環状の凹溝の内側にはシールリングを係止している。そして、このシールリングが、上記大径部の先半部を上記外輪相当部材の開口端部に外嵌した状態で、この外輪相当部材の開口端面と上記段部の片面との間で弾性的に挟持されて、上記外輪相当部材の開口端面と上記カバーを構成する主体の円筒部の先端面との突き合わせ部分を密封している。
【0020】
【作用】
上述の様に構成される本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットが、車輪を懸架装置に回転自在に支持したり、或はこの車輪の回転速度を検出する際の作用自体は、前述した従来構造の場合と同様である。特に、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合には、カバーを構成する合成樹脂製の主体を傷める事なく、このカバーを外輪相当部材に着脱できるだけでなく、この外輪相当部材の内部に水が入り込む事を確実に防止できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1〜3は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの特徴は、回転速度検出装置を構成するセンサ20bを支持するカバー18bを、転がり軸受ユニットを構成する外輪8に結合固定する部分の構造にある。転がり軸受ユニット部分の構造に就いては、前述の図5に示した従来構造の第1例と同様である。この為、転がり軸受ユニット部分に就いては、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0022】
外輪8の開口端部(図1〜2の右端部)には合成樹脂製の主体34と金属板製のスリーブ35とから成るカバー18bを被着する事により、この外輪8の内端開口部を塞いでいる。上記主体34は、合成樹脂により一体に形成された円板部36と、この円板部36の外側面外周寄り部分に突設した円筒部37とを備える。上記センサ20bは、この円板部36の外側面側に包埋支持している。円環状に形成された、このセンサ20bは、上記円板部36の外側面から外方に突出している。又、この円板部36の内側面には、上記センサ20bの検出信号を取り出す為のコネクタ30を、上記主体34と一体に形成している。この様な主体34を構成する円板部36の外側面で上記円筒部37よりも直径方向内方に寄った部分には、外方に突出する凸部38を、全周に亙り形成している。上記センサ20bは、この凸部38に包埋している。この様に凸部38に包埋したセンサ20bの外周面と上記円板部36の内周面との間には、全周に亙って厚さ寸法が均一な円筒状隙間39を形成し、この円筒状隙間39内に、後述するトーンホイール13aの一部を挿入自在としている。
【0023】
一方、上記スリーブ35は、鋼板、ステンレス鋼板等、十分な剛性を有する金属板に、プレス機によりバーリング加工を施す事により、或は深絞り加工を施す事により、断面クランク形で全体を円環状に形成している。即ち、このスリーブ35は、内半寄りの小径部40の外端縁と外半寄りの大径部41の内端縁とを段部42により連続させると共に、上記小径部40の内端縁部を直径方向内側に折り曲げる事により、折り曲げ係止縁43を形成している。この様なスリーブ35は、内半部に設けられてその基半部となる上記小径部40を、上記円筒部37の基半寄り(内寄り)部分に包埋している。上記折り曲げ端縁43は、この様に小径部40を円筒部37に包埋した状態で、この円筒部37に対する小径部40の結合強度を向上させる役目を果たす。
【0024】
尚、この様なスリーブ35は、上記主体34をコネクタ30と共に射出成形する際に、上記大径部41及び段部42を除いて、この主体34の外周寄り部分に包埋する。尚、このスリーブ35を上記センサ20bと共に主体34内に包埋する際には、これら両部材35、20bを成形型内に互いに同心にセットする。この状態で上記主体34を射出成形すれば、上記スリーブ35を構成する上記小径部40及び折り曲げ係止縁43が、上記主体34を構成する円筒部37部分に包埋される。
【0025】
又、上記円筒部37の先端部(外端部)の外径は、基端寄り部分(内端寄り部分)の外径よりも小径にする事により、この円筒部37の先端部外周面に段部44を形成している。上述の様に小径部40を円筒部37に包埋した状態で、上記スリーブ35の段部42の片面(内側面)は、上記円筒部37の外周面に形成した段部44の奥端面に当接している。又、上記スリーブ35の大径部41の基端部は、上記段部44の周囲に位置する。従って、円筒部37の先端部には、上記スリーブ35を構成する大径部41の基端部内周面と同じく段部42の外側面と上記円筒部37の先端部に形成した段部44の外周面とにより三方を囲まれる凹溝45を、全周に亙り形成している。そして、この凹溝45の内側に、Oリング46等のシールリングを係止している。このOリング46の自由状態での断面の直径(太さ)は、上記凹溝45の深さ寸法よりも少し大きい。又、Oリング46全体としての自由状態での内径は、上記凹溝45の内周側面を構成する、上記段部44の外周面の直径よりも少し小さい。従って、上記Oリング46を上記凹溝45内に装着した状態で、このOリング46の内周縁は上記段部44の外周面に、全周に亙って弾性的に当接する。
【0026】
更に、上記大径部41の先半部は、上記円筒部37の先端面(外端面)よりも外方に突出している。この大径部41の自由状態での内径寸法は、カバー18bを固着すべき、前記外輪8の内端部の外径寸法よりも僅かに小さくしている。上記カバー18bを上記外輪8の内端部に固着するには、上記大径部41の外端縁を上記外輪8の内端部外周縁に整合させ、上記主体34の内側面の外周寄り部分を、上記外輪8に向け押圧する。この押圧作業により、上記大径部41が、直径を弾性的に広げつつ上記外輪8に外嵌される。この外嵌作業は、上記円筒部37の先端面と上記外輪8の内端面とを突き当てるまで行なう。これら円筒部37の先端面と上記外輪8の内端面とが突き当たった状態では、上記Oリング46が、これら先端面と内端面との間で弾性的に圧縮される。又、上記大径部41の先半部が上記外輪8の内端部に、締まり嵌めにより外嵌固定される。
【0027】
又、上記円筒部37の中間部外周面には凹溝47を、全周に亙り、或は周方向に亙り間欠的に形成している。この凹溝47は、回転速度検出装置の分解修理を行なうべく、上記カバー18bを上記外輪8から取り外す際に、取り外し工具の先端部を係止する為に利用する。尚、上記凹溝47は、全周に亙って形成しても良いが、円周方向に亙り間欠的に形成すれば、上記カバー18bを上記外輪8に装着すべく、前記主体34の外径寄り部分を外輪8に向け押し付ける際に、この主体34の外周縁部分に加わる圧縮応力の軽減を図れる。
【0028】
又、上記主体34の外周縁部で、上記カバー18bを外輪8に装着した状態で、この外輪8外周面の取付部9に形成したねじ孔48に整合する位置には、図3に示す様な、円弧形の切り欠き部49を形成している。この切り欠き部49は、上記ねじ孔48に螺合するボルトを緊締する為のインパクトレンチと、上記主体34の外周縁部との干渉を防止する為に設けている。
【0029】
尚、合成樹脂製の主体34の射出成形時にスリーブ35を包埋した場合でも、スリーブ35を構成する金属板と主体34の円筒部37を構成する合成樹脂との境目に微小隙間が存在する事が避けられない。この微小隙間を通じて泥水等が侵入する可能性が考えられるが、本発明の構造の場合には、上記金属板と合成樹脂との境目を通じて泥水等進入しようとした場合でも、この泥水等は前記Oリング46に遮られて、上記外輪8の内側に入り込む事を阻止される。即ち、上記カバー18bの装着部を通じて上記外輪8内に泥水等が入り込もうとする経路は、図2に矢印イ、イで示した、前記大径部41の内周面と上記外輪8の外周面との嵌合面を通じての経路と、同図に矢印ロ、ロで示した、上記微小隙間を通じての経路との、2通りの経路が存在する。本発明の構造の場合には、これら何れの経路を通じて外輪8内に入り込もうとする泥水等も、上記Oリング46に遮られて、上記外輪8内に入り込む事はない。
【0030】
これに対して、図4に示す様に、Oリング46を係止する為の凹溝45aを、スリーブ35a自体に深絞り加工を施す事により形成した場合には、上記微小隙間に対応する部分を通じて外輪8内に泥水等が入り込もうとする事を阻止できない。又、この図4に示した様な構造の場合には、スリーブ35aの製作費が嵩むだけでなく、スリーブ35aの内径寸法が小さくなる為、このスリーブ35aとの干渉防止を図る必要上、後述するセンサ20b及びトーンホイール13aの直径を大きくする事が難しくなる。この直径を大きくする事が難しくなると、上記センサ20bの出力向上を図る事が難しくなる。
【0031】
上述した様な主体34とスリーブ35とから成るカバー18bを備えた本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを構成する場合、前述した様に、上記スリーブ35の大径部41の先半部を外輪8の内端開口部に、締まり嵌めにより内嵌固定する。上記Oリング46は、予め前記凹溝45に装着しておく。前記円筒部37の先端面と上記外輪8の内端面とが突き当たるまで上記大径部41を外輪8に外嵌し、上記Oリング46を上記先端面と内端面との間で弾性的に圧縮した状態で、外輪8への組み付け作業が完了する。この状態でセンサ20bを包埋したカバー18bが上記外輪8に対して、がたつきなく確実に固定される。
【0032】
この様にカバー18bを外輪8の内端開口部に固定する際、前記円板部36の内面外径寄り部分に、押し込み治具の先端面を突き当てる。又、点検、修理等の為に上記カバー18bを外輪8の内端開口部から取り外す際には、前記凹溝47に引き抜き治具の先端部を係合させて、この引き抜き治具を内方に引っ張る。
【0033】
更に、図示の例の場合には、センサ20bとトーンホイール13aとの対向面同士の相対速度を大きくすると共に、これら両部材20b、13a同士の間の磁気抵抗を2個所で同時に変化させる事により、このセンサ20bの出力変化を大きくしている。このセンサ20bは、軸方向(図1の左右方向)に着磁した円環状の永久磁石22aを含んで構成される。この永久磁石22aの軸方向外端面(図1の左端面)には第一のステータ50の基端部を当接させ、この第一のステータ50の先端部外周面を、上記トーンホイール13aを構成する大径部15aの中間部内周面に、微小隙間25を介して対向させている。又、上記永久磁石22aの軸方向内端面(図1の右端面)に、第二のステータ51の基端部を当接させ、この第二のステータ51の先端部外周面を上記大径部15aの軸方向内端部内周面に、やはり微小隙間25を介して対向させている。
【0034】
上記トーンホイール13aを構成する大径部15aの内半部には切り欠き52、52を形成する事により、上記第一のステータ50及び第二のステータ51の先端部にはそれぞれ切り欠き28、28を形成する事により、それぞれの部分を櫛歯状に形成している。勿論、これら各切り欠き52、28のピッチ(中心角ピッチ)は互いに等しい。又、第一、第二のステータ50、51に形成した切り欠き28、28の位相は互いに一致している。又、上記永久磁石22aと第一のステータ50と第二のステータ51とにより囲まれる部分にはコイル24aを設けている。そして、上記各部材22a、50、51を流れる磁束の密度変化により、上記トーンホイール13aの回転速度に比例した周波数で変化する電圧を上記コイル24aに惹起させる様にしている。
【0035】
上述の様に構成される為、上記トーンホイール13aの回転に伴って磁束の流れに対する抵抗が、第一のステータ50の先端部と大径部15aとの対向部分だけでなく、第二のステータ51の先端部と大径部15aとの対向部分でも同時に変化する。従って、上記トーンホイール13aの回転に伴う磁束密度の変化が大きくなり、センサ20bの出力を大きくできる。更に、図示の例では、センサ20bをトーンホイール13aを構成する大径部15aの内径側に配置し、この大径部15aの内周面とセンサ20bの外周面とを対向させている為、これら両周面同士の相対速度が、前述した従来構造の場合に比べて速くなる。この様に、上記両周面同士の相対速度が速くなる事によっても、上記センサ20bの出力が大きくなる。
【0036】
尚、上述の様な回転速度検出装置部分の構造に就いては、本発明の要旨ではない。本発明を実施する場合に、回転速度検出装置の構造自体は、前述の図5〜7に示した従来構造を含み、種々の構造を採用できる。例えば、図示の例の様に回転速度を磁気的に検出する構造の他、光学的に検出する構造を採用する事もできる。光学的に検出する構造を採用する場合には、被検出素子として、円周方向に多数のスリットを等間隔に形成した板片を使用し、センサとして発光素子と受光素子とを備えたものを使用する。又、磁気的に検出する構造の場合でも、永久磁石製のトーンホイールと、MR素子、或はホール素子を組み込んだアクティブ型のセンサとを組み合わせる事もできる。更に、引き抜き治具の先端部を係合させる為の係合部も、必ずしも全周に亙る凹溝である必要はなく、円周方向複数個所(好ましくは3か所以上)に形成した凹部であっても良い。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、面倒な製造作業を要する事なく安価に構成でき、しかも特別な装置を使用しなくても、点検、修理の為の分解、組立作業を、構成部品を傷める事なく行なえる。従って、メンテナンスに要する費用が安く済む回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す、図5と同様の断面図。
【図2】泥水等の進入経路を説明する為の、図1のA部に相当する拡大断面図。
【図3】図1のB矢視図。
【図4】好ましくない構造の1例を示す、図2と同様の図。
【図5】従来構造の1例を示す断面図。
【図6】図5の右部拡大図。
【図7】従来構造の第2例を示す断面図。
【符号の説明】
1 ハブ
2 フランジ部
3a、3b 内輪軌道
4 段部
5 内輪
6 雄ねじ部
7 ナット
8 外輪
9 取付部
10a、10b 外輪軌道
11 転動体
12 シールリング
13、13a トーンホイール
14 小径部
15、15a 大径部
16 段部
17 透孔
18、18a、18b カバー
19 円筒部
20、20a、20b センサ
21 合成樹脂
22、22a 永久磁石
23 ステータ
24、24a コイル
25 微小隙間
26 外径側円筒部
27 内径側円筒部
28 切り欠き
29 ボビン
30 コネクタ
31 スリーブ
32 先端外周寄り部分
33 鍔部
34 主体
35、35a スリーブ
36 円板部
37 円筒部
38 凸部
39 円筒状隙間
40 小径部
41 大径部
42 段部
43 折り曲げ係止縁
44 段部
45、45a 凹溝
46 Oリング
47 凹溝
48 ねじ孔
49 切り欠き部
50 第一のステータ
51 第二のステータ
52 切り欠き

Claims (1)

  1. 内周面に外輪軌道を有し、回転しない外輪相当部材と、外周面に内輪軌道を有し、回転する内輪相当部材と、上記外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、上記内輪相当部材の一部にこの内輪相当部材と同心に固定された、円周方向に亙る特性を交互に且つ等間隔に変化させた被検出素子と、上記外輪相当部材の開口端部に嵌合固定されたカバーと、このカバーの一部に保持されて上記被検出素子と対向し、この被検出素子の回転速度を検出するセンサとを備えた回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに於いて、上記カバーは、合成樹脂製の主体と金属板により造られたスリーブとから成り、上記センサはこのうちの主体に包埋されており、この主体は、上記外輪相当部材の開口端部を覆える大きさを有する板部の片面に、この外輪相当部材の端面に付当て自在な円筒部を形成したものであり、上記スリーブは、小径部と大径部とを段部により連続させたクランク形の断面形状を有すると共に全体を円環状に形成され、その基半部となる上記小径部を上記円筒部に包埋されており、上記大径部の基端寄り部分の内径面と上記円筒部の先端寄り部分の外周面と上記段部の片面とにより断面の三方を囲まれる環状の凹溝の内側にはシールリングが係止されており、このシールリングが、上記大径部の先半部を上記外輪相当部材の開口端部に外嵌した状態で、この外輪相当部材の開口端面と上記段部の片面との間で弾性的に挟持されて、上記外輪相当部材の開口端面と上記カバーを構成する主体の円筒部の先端面との突き合わせ部分を密封している事を特徴とする回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
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