JP3675006B2 - 回転速度検出装置付転がり軸受ユニット - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明に係る回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、自動車の車輪を懸架装置に回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する為に利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、アンチロックブレーキシステム(ABS)、或はトラクションコントロールシステム(TCS)を制御すべく、この車輪の回転速度を検出する為の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットとして、従来から種々の構造のものが知られている。この様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに組み込まれる回転速度検出装置は何れも、車輪と共に回転する、被検出素子であるトーンホイールと、このトーンホイールの回転速度に比例した周波数で変化する出力信号を出すセンサとを備える。例えば発明協会公開技報94−16051には、図3〜4に示す様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットが記載されている。
【0003】
ハブ1の外端部(外とは車両への組み付け状態で車両の幅方向外となる側を言い、各図の左)外周面(回転周面)には、車輪を固定する為のフランジ部2を形成し、中間部外周面には、回転軌道面である内輪軌道3aと段部4とを形成している。又、このハブ1の外周面には、その外周面(回転周面)にやはり回転軌道面である内輪軌道3bを形成し、上記ハブ1と共に回転輪を構成する内輪5を、その外端面を上記段部4に突き当てた状態で外嵌支持している。尚、上記内輪軌道3aは、ハブ1の外周面に直接形成する代りに、ハブ1とは別体の内輪(図示せず)に形成し、この内輪と上記内輪5とを、ハブ1に外嵌固定する場合もある。
【0004】
又、ハブ1の内端寄り部分(内とは、車両への組み付け状態で車両の幅方向中央寄りとなる側を言い、各図の右)には雄ねじ部6を形成している。そして、この雄ねじ部6に螺合し更に緊締したナット7により、上記内輪5をハブ1の外周面の所定部分に固定して、上記回転輪を構成している。ハブ1の周囲に配置された、固定輪である外輪8の中間部外周面には、この外輪8を懸架装置に固定する為の取付部9を設けている。又、固定周面である、この外輪8の内周面には、それぞれが上記各内輪軌道3a、3bに対向する、固定軌道面である外輪軌道10a、10bを形成している。そして、これら各内輪軌道3a、3bと外輪軌道10a、10bとの間に、それぞれ複数ずつの転動体11、11を設けて、上記外輪8の内側でのハブ1の回転を自在としている。尚、図示の例では、転動体11、11として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車用の転がり軸受ユニットの場合には、転動体としてテーパころを使用する場合もある。又、上記外輪8の外端部内周面と、ハブ1の外周面との間には、シールリング12を装着して、外輪8の内周面と上記ハブ1の外周面との間に存在し、上記複数の転動体11、11を設けた空間の外端開口部を塞いでいる。
【0005】
上記内輪5の内端部で上記内輪軌道3bから外れた部分には、トーンホイール13の基端部(図3〜4の左端部)を外嵌固定している。このトーンホイール13は、鋼板等の磁性金属板により全体を円環状(短円筒状)に形成されている。このトーンホイール13は、互いに同心に形成された小径部14と大径部15とを、段部16により連続させて成る。この様なトーンホイール13は、上記大径部15を内輪5の端部外周面に外嵌し、上記段部16をこの内輪5の端縁部に当接させた状態で、この内輪5に支持固定している。従って上記小径部14は、上記内輪5と同心に支持される。そして、この小径部14に複数の透孔17を、円周方向に亙り等間隔に形成して、円周方向に亙る磁気特性を交互に且つ等間隔に変化させている。各透孔17は同形状で、軸方向(図3〜4の左右方向)に長い矩形としている。
【0006】
外輪8の内端開口部は、ステンレス鋼板、アルミニウム合金板等の金属板を絞り加工する等により有底円筒状に造られた、カバー18で塞いでいる。このカバー18を構成する円筒部19の内周側に、円環状のセンサ20を包埋した、やはり円環状の合成樹脂21を保持固定している。このセンサ20は、永久磁石22と、鋼板等の磁性材により造られたステータ23と、コイル24とを備えており、これら各部材22、23、24を上記合成樹脂21中に包埋する事で、全体を円環状に構成している。
【0007】
上記センサ20の構成各部材のうちの永久磁石22は、全体を円環状(円輪状)に形成されて、直径方向に亙り着磁されている。そして、この永久磁石22の内周面を、上記トーンホイール13を構成する小径部14の基端部で、上記透孔17を形成していない部分の外周面に、微小隙間25を介して対向させている。又、上記ステータ23は、断面が略J字形で全体を円環状に造られている。そして、このステータ23を構成する外径側円筒部26の端部内周面と上記永久磁石22の外周面とを、近接若しくは当接させている。又、上記ステータ23を構成する内径側円筒部27の内周面を、上記トーンホイール13の一部で、上記複数の透孔17を形成した部分に対向させている。更に、上記内径側円筒部27には複数の切り欠き28を、この内径側円筒部27の円周方向に亙って、前記透孔17と等ピッチ(中心角ピッチ)で形成している。従って、上記内径側円筒部27部分は、櫛歯状に形成されている。
【0008】
更に、上記コイル24は、非磁性材製のボビン29に導線を巻回する事により円環状に形成され、上記ステータ23を構成する外径側円筒部26の内周側部分に配置されている。このコイル24に惹起される起電力は、カバー18の外面に突設した、信号取り出し手段であるコネクタ30から取り出す。
【0009】
上述の様に構成される回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの使用時、ハブ1と共にトーンホイール13が回転すると、このトーンホイール13と対向するステータ23内の磁束密度が変化し、上記コイル24に惹起される電圧が、上記ハブ1の回転速度に比例した周波数で変化する。ステータ23を流れる磁束の密度変化に対応して上記コイル24に惹起される電圧が変化する原理は、従来から広く知られた回転速度検出用センサの場合と同じである。又、トーンホイール13の回転に応じてステータ23に流れる磁束の密度が変化する理由は、次の通りである。
【0010】
上記トーンホイール13に設けた複数の透孔17と、ステータ23に設けた切り欠き28とは、互いのピッチが等しい為、トーンホイール13の回転に伴って全周に亙り同時に対向する瞬間がある。そして、これら各透孔17と各切り欠き28とが互いに対向した瞬間には、隣り合う透孔17同士の間に存在する磁性体である柱部と、やはり隣り合う切り欠き28同士の間に存在する磁性体である舌片とが、前記微小隙間25を介して互いに対向する。この様にそれぞれが磁性体である柱部と舌片とが互いに対向した状態では、上記トーンホイール13とステータ23との間に、高密度の磁束が流れる。
【0011】
これに対して、上記透孔17と切り欠き28との位相が半分だけずれると、上記トーンホイール13とステータ23との間で流れる磁束の密度が低くなる。即ち、この状態では、トーンホイール13に設けた透孔17が上記舌片に対向すると同時に、ステータ23に設けた切り欠き28が上記柱部に対向する。この様に柱部が切り欠き28に、舌片が透孔17に、それぞれ対向した状態では、上記トーンホイール13とステータ23との間に比較的大きな空隙が、全周に亙って存在する。そして、この状態では、これら両部材13、23の間に流れる磁束の密度が低くなる。この結果、前記コイル24に惹起される電圧が、前記ハブ1の回転速度に比例して変化する。前記センサ20は上述の様に作用する事により、コイル24に惹起される出力電圧を、ハブ1の回転速度に比例した周波数で変化させる。
【0012】
更に、欧州特許公開EP 0 557 931 A1には、図5に示す様に、外輪8の内端開口部を塞ぐカバー18aを合成樹脂製とし、このカバー18aを構成する合成樹脂内にセンサ20aを包埋した構造が記載されている。上記カバー18aの開口端部外周面には、鋼板等、十分な剛性を有する金属板により、断面L字形で全体を円環状に造られたスリーブ31を固定している。このスリーブ31は、上記カバー18aを射出成形する際にキャビティ内にセットしておく事により、上記合成樹脂中にモールドする。
【0013】
上述の様なカバー18aは、上記スリーブ31を、固定輪である外輪8の内端開口部に内嵌する事により、この外輪8に固定される。この様な合成樹脂製のカバー18aを組み込んだ構造の場合には、前述の図3〜4に示した構造に比べて構成部材の点数を少なくできて、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットのコスト低減を図れる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合には、次に述べる様な解決すべき点がある。先ず、図3〜4に示した従来の第1例の構造の場合には、センサ20を包埋した合成樹脂21とコネクタ30を構成する合成樹脂とが金属板製のカバー18を挟んで配置されている為、製造作業が面倒でコストが嵩む。即ち、図3〜4に示した様な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを造る場合には、先ず合成樹脂21中にセンサ20を包埋した後、この合成樹脂21をカバー18に内嵌し、次いでこのカバー18を成形型内にセットした状態で、上記コネクタ30を射出成形する。この為、射出成型工程が2回必要になり(或は別々に射出成形された合成樹脂21とコネクタ30とを接着する工程が必要になり)、製作費が嵩む。
【0015】
又、図5に示した従来の第2例の構造の場合には、専用のプレス機がないと組み立てる事が難しい。この為、専用のプレス機を備えていない整備工場で、カバー18aに装着されたセンサ20aの交換を行なえず、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを設置した部分の点検、修理に要するコストが嵩む。
本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、これらの不都合を何れも解消すべく発明したものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、前述の図5に示した従来の第2例の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットと同様に、固定周面に固定軌道面を有する固定輪と、上記固定周面と対向する回転周面に回転軌道面を有する回転輪と、上記固定軌道面と回転軌道面との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、上記回転輪にこの回転輪と同心に固定された、円周方向に亙る特性を交互に且つ等間隔に変化させた被検出素子と、上記固定輪の開口端部に嵌合固定された合成樹脂製のカバーと、このカバーの一部に保持されて上記被検出素子と対向し、この被検出素子の回転速度を検出するセンサと、このセンサの検出信号を取り出す信号取り出し手段とを備える。尚、この信号取り出し手段は、上記カバーの一部にコネクタを設けたり、或は先端にコネクタを設けたハーネスを、上記カバーの一部から取り出す事で構成する。
【0017】
特に、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに於いては、上記構成要素に加えて、固定輪に嵌合固定される固定環と、カバーに設けられた係合筒部とを備える。このうちの固定環は、ステンレスのばね鋼等、弾性を有する金属板により全体を円環状に造られて、上記固定周面の開口端部に嵌合固定自在な固定筒部と、この固定筒部から連続して設けられて上記固定輪の端部開口から軸方向に突出する突出部とを備える。そして、この突出部の軸方向に亙る寸法を弾性的に圧縮自在としている。
【0018】
又、上記係合筒部は、上記カバーの一部に設けられて、上記固定筒部に嵌合自在である。この係合筒部の基端部で上記固定環に対向する対向周面には第一の突部を、又、この対向周面の一部でこの第一の突部から軸方向に離隔した位置には第二の突部を、それぞれこの対向周面から突出する状態で形成している。
【0019】
そして、上記固定環を軸方向に亙る寸法を弾性的に圧縮した状態で上記第一の突部と第二の突部との間に押し込み、この第一の突部と上記突出部の先端部とを、上記第二の突部と上記固定筒部の端縁とを、それぞれ弾性的に突き当てる事により、上記カバーを上記固定輪に、上記固定環を介して結合固定している。
【0020】
【作用】
上述の様に構成される本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットが、車輪を懸架装置に回転自在に支持したり、或はこの車輪の回転速度を検出する際の作用自体は、前述した従来構造の場合と同様である。特に、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合には、固定輪に対してカバーを、がたつきなく、且つ脱落の恐れなく確実に固定できる。
【0021】
即ち、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを構成すべく、固定輪にカバーを結合固定する場合には、先ず、固定環の固定筒部を固定輪の開口端部に嵌合固定する。嵌合固定作業は、弾性金属板製の固定環を直接押圧する事により行なう。従って、嵌合強度を確保すべく、締め代を大きくした場合でも、合成樹脂製のカバーには何らの損傷も発生しない。そして、上記固定環を固定輪に嵌合固定した後、上記固定筒部にカバーの係合筒部を嵌合させる。この嵌合作業の際、第一の突部により上記固定環の突出部を軸方向に押圧して、この突出部を軸方向に亙って弾性的に圧縮する。この状態で、上記固定環が第一の突部と第二の突部との間に押し込まれ、この第一の突部と上記突出部の先端部とが、上記第二の突部と上記固定筒部の端縁とが、それぞれ弾性的に突き当たり、上記固定環にカバーが結合固定される。この結果、このカバーが上記固定輪に、上記固定環を介して結合固定される。この状態で、固定環は固定輪に対して大きな締め代を持って十分に強く固定され、カバーは固定環の弾性によりこの固定環に対してがたつきなく固定される。従って、上記カバーは上記固定輪に、がたつきなく、且つ脱落の恐れなく確実に固定される。
【0022】
【実施例】
図1は本発明の第一実施例を示している。尚、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの特徴は、回転速度検出装置を構成するセンサ20bを支持するカバー18bを、転がり軸受ユニットを構成する外輪8に結合固定する部分の構造にある。転がり軸受ユニット部分の構造に就いては、前述の図3に示した従来構造の第1例と同様である。この為、転がり軸受ユニット部分に就いては、重複する図示及び説明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0023】
外輪8の開口端部(図1の右端部)には合成樹脂製のカバー18bを、固定環32を介して被着する事により、この外輪8の内端開口部を塞いでいる。上記固定環32は、ステンレスのばね鋼等、弾性を有する金属板を折り曲げ形成する事により、全体を円環状に造られている。即ち、この固定環32は、固定周面である外輪8の内周面の内端開口部に内嵌固定自在な固定筒部33と、この固定筒部33から連続して設けられ、上記外輪8の内端開口から軸方向(図1の左右方向)内方に突出する突出部34とを備える。この突出部34は、直径方向内方が開口したコ字形の断面形状を有する。従ってこの突出部34は、軸方向に亙る寸法を弾性的に圧縮自在である。即ち、この突出部34は、軸方向に離隔して配置された1対の円輪部35、36とこれら両円輪部35、36の外周縁同士を連続させる円筒部37とから成る。このうち、内方に位置する円輪部35の内周縁は、外方に位置する円輪部36の内周縁よりも直径方向外方に位置する。
【0024】
一方、上記カバー18bの外側面側には上記センサ20bを包埋している。円環状に形成された、このセンサ20bは、上記カバー18bの外側面から外方に突出している。又、上記カバー18bの内側面には、上記センサ20bの検出信号を取り出す為のコネクタ30を、このカバー18bと一体に形成している。この様なカバー18bの外側面で、外周縁よりも少し直径方向内方に寄った部分には、外方に突出した係合筒部38を、全周に亙り形成している。更に、この係合筒部38よりも更に直径方向内方に寄った部分には、やはり外方に突出する凸部39を、上記係合筒部38と同心に、且つ全周に亙り形成している。上記センサ20bは、この凸部39に包埋している。
【0025】
又、上記カバー18bの外周縁部は上記係合筒部38の外周面(固定環32に対向する対向周面)よりも直径方向外方に突出させて、外向フランジ状の第一の突部40としている。又、上記係合筒部38の外周面中間部には、この外周面から直径方向外方に突出する第二の突部41を、全周に亙って、或は円周方向に亙り間欠的に形成している。この第二の突部41は、上記係合筒部38の先端寄り(図1の左端寄り)に位置する外側面を傾斜面42とし、基端寄り(図1の右端寄り)に位置する内側面を、上記外周面に対して直交する直交面43としている。
【0026】
又、上記係合筒部38の先端部外周面には係止凹溝47を、全周に亙り形成している。そして、この係止凹溝47に係止したOリング48の外周縁を、上記外輪8の内周面に全周に亙り当接させている。更に、図示の実施例の場合には、上記外輪8の内周面の内端部に、他の部分よりも内径が大きい段部49を形成している。この段部49の軸方向寸法は、前記固定環32を構成する固定筒部33の軸方向寸法よりも大きくしている。従って、上記固定環32の固定筒部33を上記外輪8に内嵌固定した状態では、この固定筒部33の端縁と段部49の基端部(図1の左端部)との間に係合凹溝50が、全周に亙って形成される。
【0027】
上述の様に構成される本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合には、固定輪に対してカバーを、がたつきなく、且つ脱落の恐れなく確実に固定できる。即ち、本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを構成すべく、固定輪である外輪8にカバー18bを結合固定する場合には、先ず、固定環32の固定筒部33を上記外輪8の内端開口部に内嵌固定する。内嵌固定作業は、弾性金属板製の固定環32を直接押圧する事により行なう。即ち、前記突出部34を構成する1対の円輪部35、36のうち、外方の円輪部36の内径寄り部分で、内方の円輪部35の内周縁よりも直径方向内方に突出した部分の内側面に、押し込み治具の端面を突き当てて、上記固定環32を構成する固定筒部33を上記外輪8の内端部に内嵌固定する。この内嵌固定作業を円滑に行なえる様にすべく、上記外輪8の内端開口部内周縁には面取りを施してある。従って、嵌合強度を確保すべく、上記外輪8に対する固定筒部33の締め代を十分に大きくできる。そして、大きくした場合でも、後から上記固定環32に結合固定する合成樹脂製のカバー18bに何らの損傷を発生する事はない。
【0028】
上述の様にして上記固定環32を外輪8に嵌合固定した後、上記固定筒部33にカバー18bの係合筒部38を内嵌する。先ず、この係合筒部38の先端部を上記固定筒部33の内側に挿入する。この挿入作業により、内輪5に外嵌固定したトーンホイール13aと、上記カバー18bに支持したセンサ20bとの心合わせが図られる。これら両部材13a、20b同士の心合わせが図られた状態から、更に上記係合筒部38を固定筒部33に押し込むと、前記傾斜面42と固定環32との係合に基づき、前記第二の突部41(及び係合筒部38)が直径方向内方に弾性変形しつつ、この第二の突部41が上記固定筒部33の内側を通過する。そして、通過後は上記第二の突部41(及び係合筒部38)が弾性的に復元する事によりこの第二の突部41が、前記係合凹溝50の内側に進入する。又、この様に第二の突部41が係合凹溝50の内側に進入する状態では、前記第一の突部40が上記突出部34を軸方向に押圧して、この突出部34を軸方向に亙って弾性的に圧縮する。
【0029】
従って、上記第二の突部41が上記係合凹溝50の内側に進入した状態で上記カバー18bを外輪8に向け押圧している力を解除すると、上記固定環32が上記第一の突部40と第二の突部41との間で突っ張る。即ち、第二の突部41と上記固定筒部33の先端縁とが、上記第一の突部40と上記突出部34の円輪部35とが、それぞれ弾性的に突き当たる。この結果、上記固定環32にカバー18bが結合固定され、このカバー18bが上記外輪8に、上記固定環32を介して結合固定される。この状態で、固定環32は外輪8に対して大きな締め代を持って十分に強く固定され、カバー18bは固定環32を構成する突出部34の弾性により、この固定環32に対してがたつきなく固定される。従って、上記カバー18bは上記外輪8に、がたつきなく、且つ脱落の恐れなく確実に固定される。又、この状態では、前記Oリング48が係合筒部38の先端部外周面と外輪8の内周面との間をシールして、外部に存在する塵芥や雨水等の異物が外輪8内に入り込む事を防止する。
【0030】
尚、固定筒部33と外輪8との嵌合強度を確保できる材料を使用すると上記突出部34の弾性が大きくなり過ぎる様な場合には、この突出部34に1乃至複数の切り欠きを形成して、この突出部34の弾性を調節する事もできる。例えば、この突出部34の先端部を構成する円輪部35及び円筒部37を櫛歯状に形成すれば、上記嵌合強度を確保すべく、大きな弾性を有する板材を使用しても、上記突出部34の弾性を、合成樹脂製のカバー18bを傷めない程度に低くできる。或は、上記突出部34の外周部分に、軸方向に長いスリット状の透孔を複数形成する事によっても、同様の目的を達成できる。
【0031】
又、図示の実施例の場合には、センサ20bとトーンホイール13aとの対向面同士の相対速度を大きくすると共に、これら両部材20b、13a同士の間の磁気抵抗を2個所で同時に変化させる事により、このセンサ20bの出力変化を大きくしている。このセンサ20bは、軸方向(図1の左右方向)に着磁した円環状の永久磁石22aを含んで構成される。この永久磁石22aの軸方向外端面(図1の左端面)には第一のステータ44の基端部を当接させ、この第一のステータ44の先端部外周面を、上記トーンホイール13aを構成する大径部15aの中間部内周面に、微小隙間を介して対向させている。又、上記永久磁石22aの軸方向内端面(図1の右端面)に、第二のステータ45の基端部を当接させ、この第二のステータ45の先端部外周面を上記大径部15aの軸方向内端部内周面に、やはり微小隙間を介して対向させている。
【0032】
上記トーンホイール13aを構成する大径部15aの内半部には切り欠き46、46を形成する事により、上記第一のステータ44及び第二のステータ45の先端部にはそれぞれ切り欠き28、28を形成する事により、それぞれの部分を櫛歯状に形成している。勿論、これら各切り欠き46、28のピッチは互いに等しい。又、第一、第二のステータ44、45に形成した切り欠き28、28の位相は互いに一致している。又、上記永久磁石22aと第一のステータ44と第二のステータ45とにより囲まれる部分にはコイル24aを設けている。そして、これら各部材22a、44、45を流れる磁束の密度変化により、上記トーンホイール13aの回転速度に比例した周波数で変化する電圧を上記コイル24aに惹起させる様にしている。
【0033】
上述の様に構成される為、上記トーンホイール13aの回転に伴って磁束の流れに対する抵抗が、第一のステータ44の先端部と大径部15aとの対向部分だけでなく、第二のステータ45の先端部と大径部15aとの対向部分でも同時に変化する。従って、上記トーンホイール13aの回転に伴う磁束密度の変化が大きくなり、センサ20bの出力を大きくできる。更に、図示の実施例では、センサ20bをトーンホイール13aを構成する大径部15aの内径側に配置し、この大径部15aの内周面とセンサ20bの外周面とを対向させている為、これら両周面同士の相対速度が、前述した従来構造の場合に比べて速くなる。この様に、上記両周面同士の相対速度が速くなる事によっても、上記センサ20bの出力が大きくなる。
【0034】
尚、上述の様な回転速度検出装置部分の構造に就いては、本発明の要旨ではない。本発明を実施する場合に、回転速度検出装置の構造自体は、図3〜5に示した従来構造を含み、種々の構造を採用できる。例えば、図示の例の様に回転速度を磁気的に検出する構造の他、光学的に検出する構造を採用する事もできる。光学的に検出する構造を採用する場合には、被検出素子として、円周方向に多数のスリットを等間隔に形成した板片を使用し、センサとして発光素子と受光素子とを備えたものを使用する。又、磁気的に検出する構造の場合でも、永久磁石製のトーンホイールと、MR素子、或はホール素子を組み込んだアクティブ型のセンサとを組み合わせる事もできる。
【0035】
次に、図2は本発明の第二実施例を示している。本実施例の場合には、カバー18bを外輪8に結合固定する為の固定環32aの断面形状をクランク形として、この固定環32aの製造作業の容易化を図っている。即ち、突出部34aを構成する円輪部35a、36aのうち、内方に位置する円輪部35aを、円筒部37の内端縁から直径方向外方に折り曲げている。本実施例の場合も、必要に応じて上記突出部34a(上記円輪部35a及び円筒部37)に切り欠きを形成して、この突出部34aの弾性を調節できる。
【0036】
又、本実施例の場合には、センサ20cを構成する永久磁石22bを円板状に形成し、この永久磁石22bを軸方向(図2の左右方向)に亙り着磁している。これに合わせて、第一、第二のステータ44a、45aをそれぞれを丸鉢状に形成している。これら両ステータ44a、45aの外周部分はそれぞれ円筒状に形成し、互いに同位相の切り欠き28、28を形成している。29aはボビンである。この様な構造を採用する事により、上記永久磁石22bの着磁方向両端面から出て第一、第二のステータ44a、45aを流れる磁束の量を多くして、上記センサ20cの出力増大を図れる。
【0037】
更に、本実施例の場合には、ハブ1の内端部に形成した雄ねじ部6aの先端部を円筒状に形成している。そして、この雄ねじ部6aにナット7を螺合し更に緊締した後、この雄ねじ部6aの一部を直径方向外方にかしめ広げる事により、このナット7の緩み止めを図っている。従って、上記センサ20cの構造を採用する事に伴って、これら雄ねじ部6aとナット7との軸方向長さが短くなっても、これら両部材6a、7同士の緩み止めは確実に図られる。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、少ない部品点数で安価に構成でき、しかも優れた耐久性及び信頼性を有する回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例を示す、図4と同様の断面図。
【図2】同第二実施例を示す、図4と同様の断面図。
【図3】従来構造の第1例を示す断面図。
【図4】図3の右部拡大図。
【図5】従来構造の第2例を示す部分断面図。
【符号の説明】
1 ハブ
2 フランジ部
3a、3b 内輪軌道
4 段部
5 内輪
6、6a 雄ねじ部
7 ナット
8 外輪
9 取付部
10a、10b 外輪軌道
11 転動体
12 シールリング
13、13a トーンホイール
14 小径部
15、15a 大径部
16 段部
17 透孔
18、18a、18b カバー
19 円筒部
20、20a、20b、20c センサ
21 合成樹脂
22、22a、22b 永久磁石
23 ステータ
24、24a コイル
25 微小隙間
26 外径側円筒部
27 内径側円筒部
28 切り欠き
29、29a ボビン
30 コネクタ
31 スリーブ
32、32a 固定環
33 固定筒部
34、34a 突出部
35、35a、36、36a 円輪部
37 円筒部
38 係合筒部
39 凸部
40 第一の突部
41 第二の突部
42 傾斜面
43 直交面
44、44a 第一のステータ
45、45a 第二のステータ
46 切り欠き
47 係止凹溝
48 Oリング
49 段部
50 係合凹溝
Claims (1)
- 固定周面に固定軌道面を有する固定輪と、上記固定周面と対向する回転周面に回転軌道面を有する回転輪と、上記固定軌道面と回転軌道面との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、上記回転輪にこの回転輪と同心に固定された、円周方向に亙る特性を交互に且つ等間隔に変化させた被検出素子と、上記固定輪の開口端部に嵌合固定された合成樹脂製のカバーと、このカバーの一部に保持されて上記被検出素子と対向し、この被検出素子の回転速度を検出するセンサと、このセンサの検出信号を取り出す信号取り出し手段とを備えた回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに於いて、弾性を有する金属板により全体を円環状に造られて、上記固定周面の開口端部に嵌合固定自在な固定筒部とこの固定筒部から連続して設けられて上記固定輪の端部開口から軸方向に突出する突出部とを備え、この突出部の軸方向に亙る寸法を弾性的に圧縮自在とした固定環と、上記カバーの一部に設けられた、上記固定筒部に嵌合自在な係合筒部と、この係合筒部の基端部で上記固定環に対向する対向周面に、この対向周面から突出する状態で形成された第一の突部と、上記対向周面の一部でこの第一の突部から軸方向に離隔した位置にこの対向周面から突出する状態で形成された第二の突部とを備え、上記固定環を軸方向に亙る寸法を弾性的に圧縮した状態で上記第一の突部と第二の突部との間に押し込み、この第一の突部と上記突出部の先端部とを、上記第二の突部と上記固定筒部の端縁とを、それぞれ弾性的に突き当てる事により、上記カバーを上記固定輪に、上記固定環を介して結合固定した事を特徴とする回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
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1995
- 1995-11-10 JP JP29266495A patent/JP3675006B2/ja not_active Expired - Fee Related
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