JP2005030547A - 回転速度検出装置付転がり軸受ユニット - Google Patents

Abstract

【課題】 小型に構成でき、しかも十分なシール性能を確保できる構造を実現する。
【解決手段】 ハブを構成する内輪３の肩部３４に、支持環３１とスリンガ４６とを外嵌固定する。この支持環３１を構成する支持円輪部３２の内側面に、エンコーダ２７を支持する。又、外輪１に内嵌固定した芯金３５に、回転検出センサ２８を支持固定すると共に、シール材４９の基端部を結合固定する。そして、このシール材４９のシールリップ５０ａ、５０ｂ、５０ｃの先端縁を上記スリンガ４６に、それぞれ全周に亙って摺接させる。上記芯金３５に上記回転検出センサ２８と上記シール材４９とを支持する事で、小型化を図れる。又、上記スリンガ４６と上記支持環３１とを独立させる事で、上記各シールリップ５０ａ、５０ｂ、５０ｃの先端縁を摺接させる面の幅寸法を確保して、シール性を良好にできる。
【選択図】 図２

Description

この発明は、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する為に利用する、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの改良に関する。

自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するのに、転がり軸受ユニットを使用する。又、アンチロックブレーキシステム（ＡＢＳ）或はトラクションコントロールシステム（ＴＣＳ）を制御する為には、車輪の回転速度を検出する必要がある。この為、上記転がり軸受ユニットに回転速度検出装置を組み込んだ回転速度検出装置付転がり軸受ユニットにより、上記車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する事が、近年広く行なわれる様になっている。

この様な目的で使用される回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの１例として、特許文献１には、図７〜８に示す様な構造が記載されている。この従来から知られている回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、図示しない懸架装置に支持固定して使用時にも回転しない外輪１の内径側に、ハブ本体２と内輪３とを組み合わせて成るハブ４を、回転自在に支持している。上記外輪１は、外周面にこの外輪１を懸架装置に取り付ける為の、外向フランジ状の取付部５を、内周面に複列の外輪軌道６、６を、それぞれ有する。又、上記ハブ本体２は、外周面の外（軸方向に関しては、自動車の組み付け状態で車両の幅方向外側。本明細書で同じ。図８を除く各図の左側。）端寄り部分に、車輪を支持する為のフランジ７を設けている。又、上記ハブ本体２の外周面の中間部に第一の内輪軌道８を形成し、同じく内（軸方向に関しては、自動車の組み付け状態で車両の幅方向中央側。本明細書で同じ。図８を除く各図の右側。）端寄り部分に形成した小径段部９に、その外周面に第二の内輪軌道１０を形成した上記内輪３を外嵌している。

又、上記各外輪軌道６、６と上記各内輪軌道８、１０との間には、それぞれ複数個ずつの転動体１１、１１を転動自在に設け、上記外輪１の内径側に、上記ハブ４を回転自在に支持している。又、上記外輪１の外端開口部と上記ハブ本体２の中間部外周面との間に、第一のシールリング１２を設けている。この第一のシールリング１２は、上記各転動体１１、１１を設置した円筒状空間１３の外端開口を塞ぎ、この円筒状空間１３内のグリースが外部に漏洩したり、或は外部に存在する異物がこの円筒状空間１３内に進入する事を防止する。尚、図示の例では、転動体１１として玉を使用しているが、重量が嵩む自動車用の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合には、転動体としてテーパころを使用する場合もある。又、上記ハブ本体２の中心孔１４に駆動軸１５を挿通自在とし、この駆動軸１５の外周面とこの中心孔１４の内周面とをスプライン係合自在としている。自動車の走行時には、この駆動軸１５をその内端部に設けた等速ジョイント１６を介して、上記ハブ本体２を回転駆動する。

一方、上記内輪３の内端部で前記第二の内輪軌道１０から外れた部分の外周面と、上記外輪１の内端部内周面との間には、組み合わせシールリング１７を設けて、上記円筒状空間１３の内端開口を塞いでいる。そして、この組み合わせシールリング１７を構成する、回転側シールリング１８の芯金２６の外径側半部を櫛歯状に形成し、この外径側半部の内側面の磁気特性を円周方向に関して交互に且つ等間隔に変化させる事で、上記芯金２６の外径側半部に、エンコーダとしての機能を持たせている。

一方、上記外輪４の内端部外周面に、金属板をプレス成形する事により、断面が略Ｌ字形で全体を円環状に造ったカバー１９を外嵌固定している。そして、このカバー１９の内側に回転検出センサ２０を支持している。この回転検出センサ２０は、合成樹脂２１に包埋した状態でその検出部を、上記エンコーダとして機能する、上記芯金２６の外径側半部の内側面に対向させている。上記回転検出センサ２０は、軸方向（図７の左右方向）に亙って着磁した永久磁石２２と、ホールＩＣ、磁気抵抗素子等の磁気検出素子２３とから成る。そして、上記回転検出センサ２０の信号を、ハーネス２４により、ＡＢＳやＴＣＳを制御する為に車体側に設けた、図示しない制御器に送れる様にしている。

上記カバー１９の内端部内周面にはシールリング２５を、全周に亙り添設している。そして、前記ハブ本体２の中心孔１４に前記駆動軸１５を挿通した状態で上記シールリング２５の先端縁を、前記等速ジョイント１６の表面に、全周に亙り摺接させる様にしている。

上述の様に構成する特許文献１に記載された回転速度検出装置付転がり軸受ユニットによれば、上記ハブ本体２に固定した車輪を、前記外輪１を支持した懸架装置に対し回転自在に支持できる。又、車輪の回転に伴ってハブ本体２の内端部に外嵌固定した内輪３と共にエンコーダとして機能する芯金２６が回転すると、回転検出センサ２０の磁気検出素子２３に送られる磁束の密度が変化する為、この回転検出センサ２０の抵抗値や出力電圧が変化する。この様に、回転検出センサ２０の抵抗値、或は出力電圧が変化する周波数は、上記車輪の回転速度に比例する。この為、上記回転検出センサ２０の出力信号を図示しない制御器に入力すれば、上記車輪の回転速度を求め、ＡＢＳやＴＣＳを適切に制御できる。

又、図７〜８に示した従来構造の場合、カバー１９の内周面の内端部にシールリング２５を添設し、このシールリング２５の先端縁を等速ジョイント１６の表面に、全周に亙り摺接させる為、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの使用時に、上記カバー１９内に、磁性粉末等の異物が入り込む事を防止できる。従って、上記回転検出センサ２０の永久磁石２２の近傍に磁性粉末等の異物が付着して、車輪の回転速度検出の精度が悪化するのを防止できる。

図７〜８に示した従来構造の場合、各転動体１１、１１を設置した円筒状空間１３の内端開口部を塞ぐ為の組み合わせシールリング１７の構成部材である芯金２６にエンコーダとしての機能を持たせているが、回転検出センサ２０は、上記組み合わせシールリング１７とは独立したカバー１９に支持している。この為、回転速度検出装置部分の小型化が難しいだけでなく、この回転速度検出装置部分の組立作業が面倒になる。これに対して特許文献２、３には、エンコーダだけでなく回転検出センサも、組み合わせシールリング部分に組み込んだ、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの構造が記載されている。上記特許文献２、３に記載された構造によれば、回転速度検出装置部分の小型化、並びに、この回転速度検出装置部分の組立作業の容易化が可能になる。

但し、上記特許文献２に記載された構造は、実際に自動車用の転がり軸受ユニットに適用する場合には、センサ及びエンコーダとして、寸法が極端に小さいものが必要になる。従って、現在の技術水準では、到底実用化できるものではない。これに対して特許文献３に記載された発明の場合には、センサ及びエンコーダとして、現実的な寸法を有するものが記載されている。但し、ハブの内端部に外嵌固定したスリンガの円輪部の内側面にエンコーダを支持すると共に、このスリンガの円筒部の外周面とこの円輪部の内側面外径寄り部分とに、シール材の先端縁を摺接させている。この様な特許文献３に記載された構造の場合、このシール材の先端縁を摺接させる部分の幅寸法が狭い等、組み合わせシールリングとしてかなり無理のある設計となっている。この為、使用時に転がり軸受ユニットに加わる荷重により外輪とハブとが変位した場合に、上記シール材の先端縁が相手面から外れて、必要とするシール性能を確保できなくなる可能性がある。

特開平９−２１８２２号公報 特開平３−２７９０６１号公報 米国特許第６５５９６３３号明細書

本発明は、上述の様な事情に鑑みて、回転速度検出装置部分の小型化、並びに、この回転速度検出装置部分の組立作業の容易化を図れ、しかも十分なシール性能を得られる実用的な回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを実現すべく発明したものである。

本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、外輪と、ハブ本体と、内輪と、複数個の転動体と、支持環と、エンコーダと、芯金と、回転検出センサと、スリンガと、シール材とを備える。
このうちの外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時にも回転しない。
又、上記ハブ本体は、外周面の外端寄り部分に車輪を支持する為のフランジを有し、同じく中間部に上記複列の外輪軌道のうちの外側の外輪軌道と対向する第一の内輪軌道を、直接若しくは別の部材を介して設けている。
又、上記内輪は、外周面に上記複列の外輪軌道のうちの内側の外輪軌道と対向する第二の内輪軌道を有し、上記ハブ本体の内端部に外嵌固定されている。
又、上記各転動体は、上記各外輪軌道と第一、第二の内輪軌道との間に複数個ずつ、転動自在に設けられている。
又、上記支持環は、上記内輪の外周面でこの第二の内輪軌道から内側に外れた部分に外嵌固定されている。
又、上記エンコーダは、上記支持環の内側面に全周に亙って支持されており、被検出部である内側面の磁気特性を円周方向に関して交互に変化させている。
又、上記芯金は、上記外輪の内端部に支持固定されている。
又、上記回転検出センサは、上記芯金の一部に支持された状態でその検出部を、上記エンコーダの被検出部に対向させている。
又、上記スリンガは、上記内輪の外周面でこの第二の内輪軌道から内側に外れた部分に外嵌固定されている。
更に、上記シール材は、上記芯金と上記スリンガとのうちの一方の部材にその基端部を支持されて、その先端縁をこれら芯金とスリンガとのうちの他方の部材に、全周に亙って摺接させている。

上述の様に構成する本発明の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合、芯金に回転検出センサを支持すると共にこの芯金とスリンガとのうちの一方の部材にシール材の基端部を支持しているので、小型化を図れる。又、このシール材の先端縁をこれら芯金とスリンガとのうちの他方の部材に摺接させて、この他の部材と、エンコーダを支持する為の支持環とを分けている為、このシール材の先端縁を摺接させる部分の幅寸法を確保して、十分なシール性能を確保できる。

本発明を実施する為に好ましくは、請求項２に記載した様に、芯金として、全体を円環状とされ、外輪に内嵌固定される円筒部と、この円筒部の内端部から径方向内方に折れ曲がった円輪部とを備えたものを使用する。そして、回転検出センサを包埋支持した合成樹脂製のホルダの内側面に突設された柱状部の先端部を、上記円輪部に形成した通孔を通じてこの円輪部の内側面から突出させ、この円輪部の内側面側に設けられた別の合成樹脂製の結合板部の一部と上記柱状部の先端部外周面に形成した係合溝とを凹凸係合させて、上記ホルダと上記結合板部とを上記芯金に対し固定する。
この様に構成すれば、上記回転検出センサを上記芯金に対し、容易に、且つ、確実に支持固定できる。
この場合に於いて、更に好ましくは、請求項３に記載した様に、上記結合板部を外輪の内周面よりも径方向外方にまで延長して設ける。そして、回転検出センサの信号を取り出す為のハーネスの端部の少なくとも一部を、上記外輪の内周面を軸方向内方に延長した内径側仮想円筒面と、この外輪の外周面を軸方向内方に延長した外径側仮想円筒面との間で、上記延長した部分から導出する。
この様に構成すれば、上記ハーネスをスリンガと干渉させる事なく、上記結合板部から取り出せる為、このスリンガの回転に伴って上記ハーネスが損傷を受ける事を確実に防止できる。

又、好ましくは、請求項４に記載した様に、上記芯金を構成する円輪部の断面形状をクランク形とし、この円輪部の内径側半部を同じく外径側半部よりも軸方向外側に存在させる。
この様に構成すれば、上記芯金の円輪部の外径側半部とスリンガの円輪部とを径方向に重畳させて、支持環と芯金とスリンガとを設置した部分の軸方向寸法を短縮する事ができ、限られた空間の有効利用を図れる。
或は、請求項５に記載した様に、スリンガの内端部を内輪の内端面よりも内方に突出させる。
この様に構成すれば、内輪の軸方向寸法が限られている場合でも、上記スリンガの軸方向寸法を確保して、シール材の先端縁が摺接する部分の幅を広くし、シール性を十分に確保できる。
更には、請求項６に記載した様に、支持環の内周縁部に形成した円筒部とスリンガの内周縁部に形成した別の円筒部とを互いに径方向に重ね合わせた状態で、内輪の内端部に外嵌固定する。
この様に構成すれば、内輪の軸方向寸法が限られている場合でも、上記支持環及びスリンガの内周縁部に形成した各円筒部の軸方向寸法を十分に大きくして、上記内輪に対するこれら支持環及びスリンガの嵌合強度を十分に確保できる。

図１〜２は、請求項１〜３に対応する、本発明の実施例１を示している。尚、本発明の特徴は、ハブ４ａの回転速度を検出する為のエンコーダ２７と回転検出センサ２８との配置を工夫する事により、小型化とシール性能確保との両立を図る点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述の図７〜８に示した従来構造と同様であるから、同等部分に関する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分及び上記従来構造と異なる部分を中心に説明する。

本例の場合には、ハブ本体２ａの内端部を径方向外方に塑性変形する事で構成したかしめ部２９により、このハブ本体２ａの小径段部９に外嵌した内輪３の内端面を抑え付けて、この内輪３をこのハブ本体２ａに対し固定している。又、このハブ本体２ａの中心孔１４の内周面と、等速ジョイント１６に付属の駆動軸１５の外周面との間に止め輪３０を掛け渡して、この駆動軸１５が上記中心孔１４から抜け出る事を防止している。

本例の場合、上記内輪３の中間部外周面で、この内輪３の外周面に形成した第二の内輪軌道１０から内側に外れた部分である肩部３４に、支持環３１を外嵌固定している。この支持環３１は、ＳＰＣＣの如き鋼板等の磁性金属板に、プレスによる曲げ加工を施す事により、断面Ｌ字形で全体を円環状に形成したもので、支持円輪部３２の内周縁に支持円筒部３３を設けている。この様な支持環３１は、この支持円筒部３３の先端縁を内方に向けた状態で、言い換えれば上記支持円輪部３２を外方に位置させた状態で、上記支持円筒部３３を上記肩部３４に、締り嵌めで外嵌している。この状態で上記支持円輪部３２は、この肩部３４の外端部周囲に存在する。

この様にして、上記内輪３の中間部周囲に設けられた、上記支持円輪部３２の内側面に、前記エンコーダ２７を全周に亙って支持している。このエンコーダ２７は、ゴム或は合成樹脂中にフェライト等の強磁性粉末を混入した、所謂ゴム磁石或はプラスチック磁石で、軸方向に着磁されている。着磁方向は、円周方向に亙って交互に且つ等間隔で変化している。従って、上記エンコーダ２７の被検出部である内側面には、Ｓ極とＮ極とが、交互に且つ等間隔に配置されている。

又、外輪１の内端部内周面に、芯金３５を内嵌固定している。この芯金３５は、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板等の耐食性を有する金属板に、プレスによる曲げ加工を施す事により、断面Ｌ字形で全体を円環状に形成したもので、外径側円輪部３６の外周縁に外径側円筒部３７を設けている。この様な芯金３５は、この外径側円筒部３７の先端縁を外方に向けた状態で、言い換えれば上記外径側円輪部３６を内方に位置させた状態で、上記外径側円筒部３７を上記外輪１の内端部内周面に、締り嵌めで内嵌している。この状態で上記外径側円輪部３６は、この外輪１の内端部内径側部分に存在する。

この様な芯金３５の一部に、前記回転検出センサ２８を支持固定している。この回転検出センサ２８は、ホールＩＣ、磁気抵抗素子等の磁気検出素子を備えたものである。本例の場合、上記エンコーダ２７が永久磁石製である為、上記回転検出センサ２８側には永久磁石を設けてはいない。この様な回転検出センサ２８を支持する為に本例の場合には、上記外径側円輪部３６の一部に通孔３８を形成している。又、上記回転検出センサ２８を、合成樹脂製のホルダ３９内に包埋支持している。そして、このホルダ３９の内側面に突設された柱状部４０の先端部を、上記通孔３８を通じて上記外径側円輪部３６の内側面から突出させている。

更に、この外径側円輪部３６の内側面側に、合成樹脂製の結合板部４１（必ずしも板状のものに限らず、ピース状、ブロック状のものを含む）を設けている。この結合板部４１は、上記柱状部４０の先端部を上記外径側円輪部３６の内側面から突出させた状態で、この柱状部４０の先端部をその一部に包埋する状態で、後述するパッキング４４を圧縮しつつ射出成形する。この柱状部４０の先端部外周面には係合溝４２が形成されており、上記結合板部４１を構成する合成樹脂の一部は、この係合溝４２内に進入して固化する。この結果、この結合板部４１を構成する合成樹脂の一部と、上記柱状部４０の先端部外周面に形成した上記係合溝４２とが凹凸係合して、上記ホルダ３９と上記結合板部４１とを上記芯金３５に対し固定する。尚、上記ホルダ３９の内側面で上記柱状部４０の基端部を囲む部分に形成した係止溝４３に、Ｏリング等のパッキング４４を係止している。上記ホルダ３９を上記芯金３５に固定した状態でこのパッキング４４は、上記係止溝４３の底面と上記外径側円輪部３６の外側面との間で弾性的に挟持されて、上記通孔３８を通過した雨水等の異物が、上記エンコーダ２７及び回転検出センサ２８を備えた空間内に侵入するのを防止する。

上述の様にして上記回転検出センサ２８を上記芯金３５の一部に支持固定した状態で、この回転検出センサ２８の検出部は、上記エンコーダ２７の被検出部である内側面に、転がり軸受ユニットに外部荷重を負荷しない状態で０．５〜２mm程度の隙間を介して近接対向する。又、上記結合板部４１は、前記外輪１の内周面よりも径方向外方にまで延長して設けている。そして、上記回転検出センサ２８の信号を取り出す為のハーネス４５の端部（の全体）を、この延長した部分に接続している。この状態でこのハーネス４５の端部は、上記外輪１の内周面を軸方向内方に延長した内径側仮想円筒面αと、この外輪１の外周面を軸方向内方に延長した外径側仮想円筒面βとの間に位置する。上記ハーネス４５の端部をこの様な位置に配設する事で、このハーネス４５の一部が前記ハブ４ａと共に回転する部分と擦れ合う事を防止して、このハーネス４５の損傷防止を図れる。尚、このハーネス４５の導線は、上記柱状部４０内に配設して、上記回転検出センサ２８に接続している。

又、前記内輪３の肩部３４の内半部で前記支持円筒部３３よりも内方に突出した部分に、スリンガ４６を外嵌固定している。このスリンガ４６は、ＳＵＳ３０４の如きステンレス鋼板、クロムメッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板等の耐食性を有する金属板に、プレスによる曲げ加工を施す事により、断面Ｌ字形で全体を円環状に形成したもので、内径側円輪部４７の内周縁に内径側円筒部４８を設けている。上記内径側円輪部４７の外径は、上記外輪１の内端部の内径よりも小さい。この様なスリンガ４６は、この内径側円筒部４８の先端縁を外方に向けた状態で、言い換えれば上記内径側円輪部４７を内方に位置させた状態で、上記内径側円筒部４８を上記肩部３４に、締り嵌めで外嵌固定している。

更に、前記芯金３５の外径側円輪部３６の内周縁に、ゴムの如きエラストマー等の弾性材製のシール材４９の基端部を結合している。尚、このシール材４９を構成する弾性材として好ましくは、優れた耐熱性を有するアクリルゴムを使用する。この理由は、上記シール材４９を上記芯金３５に焼き付け固定した後、この芯金３５を成形型内にセットした状態で前記結合板部４１を射出成形する際に、上記シール材４９が熱により劣化するのを防止する為である。本例の場合、このシール材４９は、３本のシールリップ５０ａ、５０ｂ、５０ｃを有する。これら各シールリップ５０ａ、５０ｂ、５０ｃのうち、内端部のシールリップ５０ａは、上記スリンガ４６の内径側円輪部４７の外側面に、残り２本のシールリップ５０ｂ、５０ｃは同じく内径側円筒部４８の外周面に、それぞれ全周に亙って摺接させている。

上述の様に構成する本例の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合、前記ハブ４ａが回転すると、前記回転検出センサ２８の検出部の近傍を、前記エンコーダ２７の被検出面に存在するＮ極とＳ極とが交互に通過する。この結果、上記回転検出センサ２８を構成する磁気検出素子内を流れる磁束の方向が交互に変化し、この磁気検出素子の特性が交互に変化する。この様に磁気検出素子の特性が変化する周波数は、上記ハブ４ａの回転速度に比例するので、上記回転検出センサ２８の検出信号を前記ハーネス４５を通じて図示しない制御器に送れば、ＡＢＳやＴＣＳを適切に制御できる。

特に、本例の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合には、前記芯金３５に上記回転検出センサ２８を支持すると共に、この芯金３５に上記シール材４９の基端部を支持している。従って、前述の図７〜８に示した従来構造で必要とした様な、カバー１９が不要になり、小型化を図れる。又、上記シール材４９に設けた上記各シールリップ５０ａ、５０ｂ、５０ｃの先端縁を摺接させる為のスリンガ４６と、前記エンコーダ２７を支持する為の前記支持環３１とを分けているので、前述の特許文献３に記載された構造に比べて、上記各シールリップ５０ａ、５０ｂ、５０ｃの先端縁を摺接させる部分の幅寸法を確保できる。この為、運転時に加わる荷重により前記外輪１に対し前記ハブ４ａが変位した場合にも、上記各シールリップ５０ａ、５０ｂ、５０ｃが上記スリンガ４６から外れる事を防止して、十分なシール性能を確保できる。

図３は、請求項１、２、３、４に対応する、本発明の実施例２を示している。本例の場合には、芯金３５ａを構成する外径側円輪部３６ａの断面形状をクランク形とし、この外径側円輪部３６ａの内径側半部５１を、同じく外径側半部５２よりも軸方向外側に存在させている。回転検出センサ２８ａは、上記内径側半部５１の外側面に突き当てた状態で、合成樹脂製のホルダ３９ａ内に包埋されている。又、支持環３１ａの支持円筒部３３ａ、並びに、スリンガ４６ａの内径側円筒部４８ａの軸方向寸法を、上述した実施例１の場合に比べ短くして、これら両円筒部３３ａ、４８ａの先端縁同士を近接させている。そして、上記外径側円輪部３６ａの外径側半部５２と、上記スリンガ４６ａの内径側円輪部４７ａとを、径方向に重畳させて軸方向に関して同じ位置としている。
本例の場合には、この様に構成する事により、上記支持環３１ａと上記芯金３５ａと上記スリンガ４６ａとを設置した部分の軸方向寸法を短縮して、限られた空間の有効利用を図っている。尚、本例の場合、ハーネス４５の端部の一部（外径側半部）は、外輪１の内周面を軸方向内方に延長した内径側仮想円筒面αと、この外輪１の外周面を軸方向内方に延長した外径側仮想円筒面βとの間に位置しているが、上記ハーネス４５の端部の他部（内径側半部）は、上記内径側仮想円筒面αよりも内径側に位置している。この様に構成する本例の場合も、上記ハーネス４５の端部を比較的外径側に位置させる事ができる為、ハブと共に回転する部分と擦れ合う事を防止して、このハーネス４５の損傷防止を図れる。その他の部分の構成及び作用は、上述した実施例１と同様である。

図４は、請求項１、２、３、５に対応する、本発明の実施例３を示している。本例の場合には、スリンガ４６ｂの内端部を、内輪３ａの内端面よりも内方に突出させている。この為に本例の場合には、このスリンガ４６ｂを構成する金属板の一部を１８０度、密に折り返す事により、内径側円筒部４８ｂ部分でこの金属板を二重にしている。更に、径方向内側の金属板の先端部を径方向内方に９０度折り曲げる事により、内向フランジ状の位置決め鍔部５３を形成している。この位置決め鍔部５３は、上記内径側円筒部４８ｂの軸方向中間部に位置する。又、上記内輪３ａの肩部３４ａの内半部外周面は、上記スリンガ４６ｂを構成する金属板の厚さ寸法分外半部よりも小径にして、係止段部５４としている。このスリンガ４６ｂは、上記内径側円筒部４８ｂをこの係止段部５４に締り嵌めで外嵌し、上記位置決め鍔部５３の外側面を上記内輪３ａの内端面に当接させる。この状態で、上記内径側円筒部４８ｂの内半部は、この内輪３ａの内端面よりも内方に突出（オーバハング）する。
本例の場合には、この様に構成する事により、上記内輪３ａの軸方向寸法が限られている場合でも、上記スリンガ４６ｂの軸方向寸法を確保できる様にしている。そして、シール材４９に設けた各シールリップ５０ａ、５０ｂ、５０ｃの先端縁が摺接する部分の幅を広くして、シール性を十分に確保できる様にしている。

図５は、請求項１、２、３、４、６に対応する、本発明の実施例４を示している。本例の場合には、支持環３１の内周縁部に形成した支持円筒部３３と、スリンガ４６の内周縁部に形成した内径側円筒部４８とを、互いに径方向に重ね合わせた状態で、内輪３の内端部に外嵌固定している。即ち、上記支持円筒部３３をこの内輪３の肩部３４に締り嵌めで外嵌固定し、更にこの支持円筒部３３に上記内径側円筒部４８を、締り嵌めで外嵌固定している。

又、本例の場合には、回転検出センサ２８ｂを構成する磁気検出素子２３ａと、この磁気検出素子２３ａの特性変化に応じた信号を得る為の回路ユニット５５とを別個に配置し、互いに導線で接続している。エンコーダ２７の磁極に応じて特性を変化させる上記磁気検出素子２３ａは、芯金３５ａを構成する外径側円輪部３６ａのうちの内径側半部５１の外側面部分で、合成樹脂製のホルダ３９ｂ内に包埋支持している。これに対して、比較的容積が嵩張る、上記回路ユニット５５は、上記外径側円輪部３６ａのうちの外径側半部５２の外側面部分で、上記ホルダ３９ｂ内に包埋支持している。
本例の場合、この様に構成する事で、構成各部材を効率的に配置し、且つ、上記内輪３の肩部３４の軸方向寸法が限られている場合でも、上記支持環３１及びスリンガ４６の内周縁部に形成した上記各円筒部３３、４８の軸方向寸法を十分に大きくして、上記内輪３に対する上記支持環３１及びスリンガ４６の嵌合強度を十分に確保すると共に、これら支持環３１及びスリンガ４６の中心軸と外輪１及びハブの中心軸とを一致させ易くしている。その他の部分の構成及び作用は、前述の実施例２と同様である。

次に、図６は、請求項１、２、３、５に対応する、本発明の実施例５を示している。先に述べた実施例１は、第一の内輪軌道８をハブ本体２ａの中間部外周面に直接形成した、所謂第三世代の転がり軸受ユニット（ハブユニット）に本発明を適用している。これに対して本例の場合には、第一の内輪軌道８をハブ本体（図示省略）と別体の内輪５６の外周面に形成した、所謂第二世代の転がり軸受ユニットに本発明を適用している。転がり軸受ユニットを組み立てた状態では、上記内輪５６と内輪３とを図示しないハブ本体に外嵌固定する。又、本例の場合、シール材４９ａをスリンガ４６ｂに支持している。そして、このシール材４９ａに設けたシールリップを、芯金３５ｂの外径側円輪部３６ｂの内側面及び、この外径側円輪部３６ｂの内周縁部に折り曲げ形成した円筒部５７の内周面に摺接させている。その他の部分の構成及び作用は、前述の実施例３と同様である。

本発明の実施例１を示す断面図。 図１のＡ部拡大図。 本発明の実施例２を示す、図２と同様の図。 同実施例３を示す、図２と同様の図。 同実施例４を示す、図２と同様の図。 同実施例５を示す半部断面図。 従来構造の１例を示す、図８のＢ−Ｏ−Ｂ断面図。 図７の右方から見た図。

符号の説明

１ 外輪
２、２ａ ハブ本体
３、３ａ 内輪
４、４ａ ハブ
５ 取付部
６ 外輪軌道
７ フランジ
８ 第一の内輪軌道
９ 小径段部
１０ 第二の内輪軌道
１１ 転動体
１２ 第一のシールリング
１３ 円筒状空間
１４ 中心孔
１５ 駆動軸
１６ 等速ジョイント
１７ 組み合わせシールリング
１８ 回転側シールリング
１９ カバー
２０ 回転検出センサ
２１ 合成樹脂
２２ 永久磁石
２３、２３ａ 磁気検出素子
２４ ハーネス
２５ シールリング
２６ 芯金
２７ エンコーダ
２８、２８ａ、２８ｂ 回転検出センサ
２９ かしめ部
３０ 止め輪
３１、３１ａ 支持環
３２ 支持円輪部
３３、３３ａ 支持円筒部
３４、３４ａ 肩部
３５、３５ａ、３５ｂ 芯金
３６、３６ａ、３６ｂ 外径側円輪部
３７ 外径側円筒部
３８ 通孔
３９、３９ａ、３９ｂ ホルダ
４０ 柱状部
４１ 結合板部
４２ 係合溝
４３ 係止溝
４４ パッキング
４５ ハーネス
４６、４６ａ、４６ｂ スリンガ
４７、４７ａ 内径側円輪部
４８、４８ａ、４８ｂ 内径側円筒部
４９、４９ａ シール材
５０ａ、５０ｂ、５０ｃ シールリップ
５１ 内径側半部
５２ 外径側半部
５３ 位置決め鍔部
５４ 係止段部
５５ 回路ユニット
５６ 内輪
５７ 円筒部

Claims (6)

1. 内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時にも回転しない外輪と、外周面の外端寄り部分に車輪を支持する為のフランジを有し、同じく中間部に上記複列の外輪軌道のうちの外側の外輪軌道と対向する第一の内輪軌道を、直接若しくは別の部材を介して設けたハブ本体と、外周面に上記複列の外輪軌道のうちの内側の外輪軌道と対向する第二の内輪軌道を有し、上記ハブ本体の内端部に外嵌固定された内輪と、上記各外輪軌道と第一、第二の内輪軌道との間に複数個ずつ、転動自在に設けられた転動体と、上記内輪の外周面でこの第二の内輪軌道から内側に外れた部分に外嵌固定された支持環と、この支持環の内側面に全周に亙って支持された、被検出部である内側面の磁気特性を円周方向に関して交互に変化させたエンコーダと、上記外輪の内端部に支持固定された芯金と、この芯金の一部に支持された状態でその検出部を上記エンコーダの被検出部に対向させた回転検出センサと、上記内輪の外周面でこの第二の内輪軌道から内側に外れた部分に外嵌固定されたスリンガと、上記芯金とこのスリンガとのうちの一方の部材にその基端部を支持されてその先端縁をこれら芯金とスリンガとのうちの他方の部材に全周に亙って摺接させたシール材とを備えた回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
2. 芯金が全体を円環状とされたもので、外輪に内嵌固定される円筒部と、この円筒部の内端部から径方向内方に折れ曲がった円輪部とを備え、回転検出センサを包埋支持した合成樹脂製のホルダの内側面に突設された柱状部の先端部が、上記円輪部に形成した通孔を通じてこの円輪部の内側面から突出しており、この円輪部の内側面側に設けられた合成樹脂製の結合板部の一部と上記柱状部の先端部外周面に形成した係合溝とが凹凸係合して、上記ホルダと上記結合板部とを上記芯金に対し固定している、請求項１に記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
3. 結合板部が外輪の内周面よりも径方向外方にまで延長して設けられており、回転検出センサの信号を取り出す為のハーネスの端部の少なくとも一部が、上記外輪の内周面を軸方向内方に延長した内径側仮想円筒面と、この外輪の外周面を軸方向内方に延長した外径側仮想円筒面との間で、上記延長した部分から導出されている、請求項２に記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
4. 芯金を構成する円輪部の断面形状がクランク形で、この円輪部の内径側半部が同じく外径側半部よりも軸方向外側に存在する、請求項１〜３の何れかに記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
5. スリンガの内端部が内輪の内端面よりも内方に突出している、請求項１〜４の何れかに記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。
6. 支持環の内周縁部に形成した円筒部とスリンガの内周縁部に形成した別の円筒部とを互いに径方向に重ね合わせた状態で内輪の内端部に外嵌固定している、請求項１〜５の何れかに記載した回転速度検出装置付転がり軸受ユニット。

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