JP2009138781A - 回転速度検出装置付き車輪用軸受装置 - Google Patents

回転速度検出装置付き車輪用軸受装置 Download PDF

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Abstract

【課題】回転速度検出装置の組立が簡便化できると共に、軸受内部に異物が侵入するのを防止し、長期間に亘って耐久性を確保した回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】内輪5の外径が、大径部24と、この大径部24から所定の段差で小径部25が形成され、大径部24にエンコーダ19が接合されたベース22が圧入されると共に、小径部25と嵌合環11との間に形成される環状空間の開口部にインナー側のシール9が装着され、このシール9が、断面略L字状に形成されて互いに対向配置され、嵌合環11の円筒部11cに内嵌された芯金16、およびこの芯金16に一体に接合されたシール部材17からなる環状のシール板14と、内輪5の小径部25に圧入されたスリンガ15とからなり、シール部材17が、スリンガ15に摺接するサイドリップ17aとラジアルリップ17b、17cを備えている。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車等の車輪の回転速度を検出する回転速度センサが内蔵された回転速度検出装置付き車輪用軸受装置に関するものである。
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承すると共に、アンチロックブレーキシステム(ABS)を制御するために車輪の回転速度を検出する装置が軸受に内蔵された回転速度検出装置付き車輪用軸受装置が一般的に知られている。従来、このような車輪用軸受装置は、転動体を介して転接する内方部材および外方部材の間にシール装置が設けられ、円周方向に磁極を交互に並べてなる磁気エンコーダを前記シール装置に一体化させると共に、磁気エンコーダと、この磁気エンコーダに対面配置され、車輪の回転に伴う磁気エンコーダの磁極変化を検出する回転速度センサとで回転速度検出装置が構成されている。
前記回転速度センサは、懸架装置を構成するナックルに車輪用軸受装置が装着された後、当該ナックルに装着されているものが一般的である。しかし、この回転速度センサと磁気エンコーダとのエアギャップ調整作業の煩雑さを解消すると共に、よりコンパクト化を狙って最近では、回転速度センサをも軸受に内蔵した回転速度検出装置付き車輪用軸受装置が提案されている。
このような回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一例として図4に示すような構造が知られている。この回転速度検出装置は、内輪50に外嵌された磁気エンコーダ51と、この磁気エンコーダ51に対向するように外方部材52の端部に装着された円環状のセンサホルダ53と、このセンサホルダ53を構成する保持部57に包埋され、磁気エンコーダ51に所定の軸方向すきまを介して対峙する回転速度センサ54とを備えている。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図4の左側)、中央寄り側をインナー側(図4の右側)という。
磁気エンコーダ51は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入されたゴム磁石からなり、周方向に交互に磁極N、Sが着磁され、車輪回転速度の検出用のロータリエンコーダを構成している。この磁気エンコーダ51は、内輪50の外径に圧入固定され、鋼板からプレス加工によって断面L字状に、全体として円環状に形成されたベース55の側面に一体に加硫接着されている。
センサホルダ53は、外方部材52の端部に装着された嵌合環56と、この嵌合環56に一体モールドされた保持部57とからなる。嵌合環56は耐食性を有するステンレス鋼板等をプレス加工にて形成され、外方部材52の外周に圧入された円筒状の嵌合部56aと、この嵌合部56aから径方向内方に延びる鍔部56bと、この鍔部56bから軸方向に延びる円筒部56cとからなる。また、この円筒部56cの周方向複数箇所には穿孔58が形成され、保持部57が合成樹脂で一体モールド成形されている。
また、シール59は、保持部57を挟んで磁気エンコーダ51と軸方向に対向してインナー側の配設されている。このシール59は、互いに対向して配置された環状のシール板60とスリンガ61とからなる。シール板60は、嵌合環56の円筒部56cに内嵌され、断面L字状に形成された芯金62と、この芯金62に一体に加硫接着されたシール部材63とからなる。シール部材63は、サイドリップ63aとグリースリップ63bおよび中間リップ63cを一体に有している。
一方、スリンガ61は、耐食性を有するステンレス鋼板等をプレス加工にて形成され、内輪50に圧入された円筒部61aと、この円筒部61aから径方向外方に延びる立板部61bと、この立板部61bの先端部に軸方向に突設された環状の舌片61cとからなる。そして、嵌合環56の円筒部56cと僅かな径方向すきまを介して対向してラビリンスシール64を構成している。なお、サイドリップ63aはスリンガ61の立板部61bに摺接し、グリースリップ63bおよび中間リップ63cはスリンガ61の円筒部61aにそれぞれ摺接している。
このように、円環状のセンサホルダ53に回転速度センサ54が配設され、この回転速度センサ54のインナー側にシール59が内嵌されると共に、さらに、このシール59のインナー側にラビリンスシール64が構成されているので、過酷な環境となる実走時において、磁気エンコーダ51と回転速度センサ54の検出部との間に外部から磁性粉末等の異物が侵入するのを確実に防止することができ、車輪の回転速度検出の信頼性を向上させることができる。
特開2005−300289号公報
こうした従来の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置では、過酷な環境となる実走時において、磁気エンコーダ51と回転速度センサ54の検出部との間に外部から磁性粉末等の異物が侵入するのを確実に防止することができ、車輪の回転速度検出の信頼性を向上させることができる。然しながら、このような従来の回転速度検出装置は、磁気エンコーダ51が一体に接合されたベース55とシール59を構成するスリンガ61が内輪50の外径にそれぞれ圧入固定されているため、ベース55を圧入した後にスリンガ61を圧入することになる。ところが、このような構造では幾つかの不具合が発生する恐れがある。
1.ベース55の圧入距離が長くなり圧入に時間を要し、軸受に余分な負荷が掛かる。
2.ベース55の圧入により内輪50の外径に軸方向に延びる擦り傷が発生し、その外径にスリンガ61を圧入した場合、嵌合面から泥水等の異物が侵入し、密封性が低下する。
3.圧入するスリンガ61がベース55に干渉してベース55が移動し、磁気エンコーダ51と回転速度センサ54との軸方向すきま(エアギャップ)が変動するため、スリンガ61の位置決め精度が厳しく規制される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、回転速度検出装置の組立が簡便化できると共に、軸受内部に異物が侵入するのを防止し、長期間に亘って耐久性を確保した回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供することである。
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、外周に懸架装置に取り付けるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、前記外方部材のインナー側の端部外周面に圧入された嵌合環、およびこの嵌合環に結合され、回転速度センサが包埋された合成樹脂製の保持部からなるセンサホルダと、前記内輪に外嵌され、周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化し、前記回転速度センサに所定のエアギャップを介して対峙するエンコーダとを備えた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記内輪の外径が、大径部と、この大径部から所定の段差で小径部が形成され、前記大径部に前記エンコーダが圧入されると共に、前記小径部とセンサホルダとの間に形成される環状空間の開口部で、前記保持部を挟んで、前記エンコーダと軸方向に対向して前記インナー側のシールが装着されている。
このように、外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、外方部材のインナー側の端部外周面に圧入された嵌合環、およびこの嵌合環に結合され、回転速度センサが包埋された合成樹脂製の保持部からなるセンサホルダと、内輪に外嵌され、周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化し、回転速度センサに所定のエアギャップを介して対峙するエンコーダとを備えた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、内輪の外径が、大径部と、この大径部から所定の段差で小径部が形成され、大径部にエンコーダが圧入されると共に、小径部とセンサホルダとの間に形成される環状空間の開口部で、保持部を挟んで、エンコーダと軸方向に対向してインナー側のシールが装着されているので、エンコーダの圧入距離が短くなって圧入時間が短縮でき、軸受に余分な負荷が掛かるのを防止することができると共に、エンコーダとシールの嵌合面が異なるため、エンコーダの圧入によるシール装着部の擦り傷の発生を防止し、密封性が低下するのを防止することができる。
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記外方部材のインナー側の端部内周に環状の凹所が形成され、この凹所内に、前記エンコーダと保持部が収容され、検出部が前記外方部材のインナー側の端面から軸受内方側に配置されていれば、回転速度検出装置の軸方向のコンパクト化を図ることができる。
また、請求項3に記載の発明のように、前記嵌合環が、前記外方部材のインナー側の端部外周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に延び、前記外方部材の端面に密着される鍔部と、この鍔部から軸方向に延びる円筒部とからなり、この円筒部と前記内輪の小径部との間に形成される環状空間の開口部に前記インナー側のシールが装着されていれば、径方向のコンパクト化ができると共に、回転速度センサ等の取り巻きを簡素化でき、組立作業性が一段と向上する。また、内輪の外径に段差を設けられたことにより、この段差分、シールの断面高さを大きくすることができ、設計自由度が拡大すると共に、これによりシールの密封性を向上させることができる。
また、請求項4に記載の発明のように、前記エンコーダが、前記内輪の大径部に圧入されたベースと、このベースに一体に接合され、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石とからなると共に、前記インナー側のシールが、断面略L字状に形成されて互いに対向配置され、前記嵌合環の円筒部に内嵌された芯金、およびこの芯金に一体に接合されたシール部材からなる環状のシール板と、前記内輪の小径部に圧入されたスリンガとからなり、前記シール部材が、前記スリンガに摺接するサイドリップとラジアルリップを備えていれば、強固な密封性を発揮してエンコーダと回転速度センサとの検出部を外部から遮断することができると共に、ベースとスリンガの嵌合面が異なるため、ベースの圧入により、従来のようにスリンガが圧入される内輪の小径部に軸方向に延びる擦り傷が発生することがなくなる。したがって、スリンガと内輪との嵌合面の気密性を高め、嵌合面から泥水等の異物が侵入して密封性が低下するのを確実に防止することができる。さらに、圧入するスリンガがベースに干渉することがなくなり、エンコーダと回転速度センサとの軸方向すきまが組立時に変動することはない。したがって、スリンガの位置決め精度を厳しく規制する必要がなくなり、組立作業が簡便化できる。
また、請求項5に記載の発明のように、前記ベースが、防錆能を有する強磁性体の鋼鈑からプレス加工によって形成されていれば、エンコーダの出力信号が強くなり安定した検出精度を確保することができる。
また、請求項6に記載の発明のように、前記保持部が非磁性の合成樹脂材から射出成形によって形成され、繊維状強化材が充填されていれば、回転速度センサの感知性能に悪影響を及ぼさず、また、耐食性に優れ、長期間に亘って強度・耐久性を向上させることができる。
また、請求項7に記載の発明のように、前記保持部が配設される位相が、嵌合環の水平位置よりも径方向上部に配置され、この保持部の接線方向にハーネスが接続されていれば、例えセンサホルダ内に外部から雨水等が浸入したとしても下部方向に排出され、この回転速度センサの近傍に滞留するのを防止することができると共に、ハーネスの取り巻きが簡素化でき、組立作業性が向上する。
本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、外周に懸架装置に取り付けるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、前記外方部材のインナー側の端部外周面に圧入された嵌合環、およびこの嵌合環に結合され、回転速度センサが包埋された合成樹脂製の保持部からなるセンサホルダと、前記内輪に外嵌され、周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化し、前記回転速度センサに所定のエアギャップを介して対峙するエンコーダとを備えた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記内輪の外径が、大径部と、この大径部から所定の段差で小径部が形成され、前記大径部に前記エンコーダが圧入されると共に、前記小径部とセンサホルダとの間に形成される環状空間の開口部で、前記保持部を挟んで、前記エンコーダと軸方向に対向して前記インナー側のシールが装着されているので、以下に挙げる格別な効果を奏することができる。
1.エンコーダの圧入距離が短くなって圧入時間が短縮でき、軸受に余分な負荷が掛かるのを防止することができる。
2.エンコーダとシールの嵌合面が異なるため、エンコーダの圧入により、従来のようにシールが装着される内輪の外径に軸方向に延びる擦り傷が発生することがなくなり、シールの密封性を高めることができる。
3.内輪の外径に段差を設けることにより、この段差分、シールの断面高さを大きくすることができ、設計自由度が拡大すると共に、これによりシールの密封性を向上させることができる。
外周に懸架装置に取り付けるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、前記外方部材のインナー側の端部外周面に圧入された嵌合環、およびこの嵌合環に結合され、回転速度センサが包埋された合成樹脂製の保持部からなるセンサホルダと、前記内輪に外嵌されて前記回転速度センサに所定のエアギャップを介して対峙し、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石からなる磁気エンコーダとを備えた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記内輪の外径が、大径部と、この大径部から所定の段差で小径部が形成され、前記大径部に前記エンコーダが接合されたベースが圧入されると共に、前記小径部と嵌合環との間に形成される環状空間の開口部で、前記保持部を挟んで、前記エンコーダと軸方向に対向して前記インナー側のシールが装着され、このシールが、断面略L字状に形成されて互いに対向配置され、前記嵌合環の円筒部に内嵌された芯金、およびこの芯金に一体に接合されたシール部材からなる環状のシール板と、前記内輪の小径部に圧入されたスリンガとからなり、前記シール部材が、前記スリンガに摺接するサイドリップとラジアルリップを備えている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図2は、図1の要部拡大図、図3は、図1の側面図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
この車輪用軸受装置は駆動輪用の第3世代構造と呼称され、外方部材1と内方部材2と複列の転動体(ボール)3、3とを備えている。外方部材1はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼からなり、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ1bを一体に有し、内周に複列の外側転走面1a、1aが一体に形成されている。そして、これらの複列の外側転走面1a、1aが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
一方、内方部材2は、ハブ輪4と、このハブ輪4に固定された内輪5とからなる。ハブ輪4は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ6を一体に有し、外周に前記複列の外側転走面1a、1aに対向するアウター側(一方)の内側転走面4aと、この内側転走面4aから軸方向に延びる円筒状の小径段部4bが形成され、内周にトルク伝達用のセレーション(またはスプライン)4cが形成されている。なお、車輪取付フランジ6の円周等配位置にはハブボルト6aが植設されている。
ハブ輪4はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼からなり、内側転走面4aをはじめ、後述するアウター側のシール8が摺接する車輪取付フランジ6の基部6bから小径段部4bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
内輪5は、外周に前記複列の外側転走面1a、1aに対向するインナー側(他方)の内側転走面5aが形成され、ハブ輪4の小径段部4bに所定のシメシロを介して圧入されている。この内輪5および転動体3はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
外方部材1の複列の外側転走面1a、1aと、これらに対向するハブ輪4の内側転走面4aおよび内輪5の内側転走面5a間には複列の転動体3、3が収容され、保持器7、7によって転動自在に保持されている。そして、内輪5の小径側(正面側)の端部がハブ輪4の肩部4dに突合せ状態で衝合し、所謂背面合せタイプの複列アンギュラ玉軸受を構成している。また、外方部材1と内方部材2との間に形成される環状空間の開口部にはシール8、9が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。
ここで、本実施形態では、センサホルダ10が外方部材1のインナー側の端部に装着されている。このセンサホルダ10は、図2に拡大して示すように、嵌合環11と、この嵌合環11に結合された保持部12とからなる。嵌合環11は、外方部材1のインナー側の端部外周面1cに圧入される円筒状の嵌合部11aと、この嵌合部11aから径方向内方に延び、外方部材1の端面1dに密着する鍔部11bと、この鍔部11bから軸方向に延びる円筒部11cとからなり、全体が円環状に形成されている。
この嵌合環11は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)等、耐食性を有する鋼板をプレス加工にて形成されている。また、円筒部11cの周方向複数箇所には穿孔13が形成され、合成樹脂からなる保持部12が一体にモールド成形されている。
保持部12は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の非磁性の特殊エーテル系合成樹脂材から射出成形によって形成され、GF(グラス繊維)からなる繊維状強化材が充填されている。これにより、回転速度センサの感知性能に悪影響を及ぼさず、また、耐食性に優れ、長期間に亘って強度・耐久性を向上させることができる。なお、保持部12の材質として、例示したPPS以外にも、例えば、PA(ポリアミド)66、PA6−12、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の射出成形可能な合成樹脂を例示することができる。
保持部12の内部には、後述する磁気エンコーダ19に所定の軸方向すきまを介して対峙する回転速度センサ20が包埋されている。回転速度センサ20は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子と、この磁気検出素子の出力波形を整える波形成形回路が組み込まれたICとからなる。これにより、低コストで信頼性の高い回転速度検出ができる。
インナー側のシール9は、センサホルダ10と内輪5との間に形成される環状空間の開口部に装着され、断面略L字状に形成された環状のシール板14とスリンガ15からなり、互いに対向して配置されている。シール板14は、センサホルダ10を構成する嵌合環11の円筒部11cに内嵌される芯金16と、この芯金16に加硫接着等で一体に接合されたシール部材17とからなる。
芯金16は冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)をプレス加工にて断面略L字状に形成されている。また、シール部材17は合成ゴム等の弾性部材からなり、サイドリップ17aとグリースリップ17bおよび中間リップ17cを一体に有している。
一方、スリンガ15は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)をプレス加工にて形成され、内輪5に外嵌される円筒部15aと、この円筒部15aから径方向外方に延びる立板部15bとを有している。そして、シール部材17のサイドリップ17aが立板部15bに、グリースリップ17bおよび中間リップ17cが円筒部15aにそれぞれ摺接している。また、スリンガ15の立板部15bの先端部は、センサホルダ10と僅かな径方向すきまを介して対向し、ラビリンスシール18を構成している。
磁気エンコーダ19は、内輪5に圧入固定されたベース22に接合されると共に、センサホルダ10の保持部12を挟んで軸方向に対向してインナー側のシール9の反対側(アウター側)に配設され、回転速度センサ20に所定の軸方向すきま(エアギャップ)を介して対峙されている。これにより、過酷な環境となる実走時においても、磁気エンコーダ19と回転速度センサ20の検出部との間に外部から泥水や磁性粉末等の異物が侵入するのを確実に防止することができ、車輪の回転速度検出の信頼性を格段に向上させることができる。
ここでは、ベース22は、防錆能を有する強磁性体の鋼鈑、例えば、フェライト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)あるいは冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によって断面略L字状に、全体として円環状に形成され、内輪5に外嵌される円筒部22aと、この円筒部22aから径方向外方に延びる立板部22bを有している。
そして、磁気エンコーダ19は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石からなり、ベース22における立板部22bのインナー側の側面に加硫接着等で一体に接合されている。このように、ベース22が強磁性体の鋼板で形成されていれば、磁気エンコーダ19の出力信号が強くなり安定した検出精度を確保することができる。なお、ここでは、磁気エンコーダ19をエラストマ製としたものを例示したが、これに限らず、例えば、フェライト等からなる強磁性体粉を金属バインダーで固めた燒結金属製であっても良い。また、本実施形態では、回転速度検出装置として、磁気エンコーダ19と、ホール素子等の磁気検出素子からなる回転速度センサ20とからなるアクティブタイプの回転速度検出装置を例示したが、本発明に係る回転速度検出装置はこれに限らず、例えば、歯車等と、磁石と巻回された環状のコイル等からなるパッシブタイプであっても良い。
また、回転速度センサ20が配設される位相、すなわち、保持部12が配設される位相は、図3に示すように、嵌合環11の水平位置よりも径方向上部に配置され、この保持部12の接線方向にハーネス21が接続されている。したがって、例えセンサホルダ12内に外部から雨水等が浸入したとしても下部方向に排出され、この回転速度センサ20の近傍に滞留するのを防止することができると共に、ハーネス21の取り巻きが簡素化でき、組立作業性が向上する。
ここで、本実施形態では、外方部材1のインナー側の端部内周に環状の凹所23が形成され、この凹所23内に、磁気エンコーダ19が接合されたベース22と回転速度センサ20が包埋された保持部12が収容されている。これにより、検出部が外方部材1のインナー側の端面1dからアウター側(軸受内方側)に配置され、回転速度検出装置の軸方向のコンパクト化を図ることができる。
また、内輪5の外径は、大径部24と、この大径部24から所定の段差で小径部25が形成されている。大径部24にベース22が圧入されると共に、小径部25にはスリンガ15が圧入される。これにより、本実施形態では、以下に挙げる格別な効果を奏することができる。
1.ベース22の圧入距離が短くなって圧入時間が短縮でき、軸受に余分な負荷が掛かるのを防止することができる。
2.ベース22とスリンガ15の嵌合面が異なるため、ベース22の圧入により、従来のようにスリンガ15が圧入される内輪5の小径部25に軸方向に延びる擦り傷が発生することがなくなり、スリンガ15と内輪5との嵌合面の気密性を高め、嵌合面から泥水等の異物が侵入して密封性が低下するのを確実に防止することができる。
3.ベース22とスリンガ15の嵌合面が異なるため、圧入するスリンガ15がベース22に干渉することがなくなり、磁気エンコーダ19と回転速度センサ20との軸方向すきまが組立時に変動することはない。さらに、スリンガ15の位置決め精度を厳しく規制する必要がなくなり、組立作業が簡便化できる。
4.内輪5の外径に段差を設けることにより、この段差分、シール9の断面高さを大きくすることができ、設計自由度が拡大すると共に、これによりシール9の密封性を向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、内輪回転構造のあらゆるタイプの回転速度検出装置が内蔵された車輪用軸受装置に適用することができる。
本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。 図1の要部拡大図である。 図1の側面図である。 従来の車輪用軸受装置を示す要部拡大図である。
符号の説明
1・・・・・・・・・・・・外方部材
1a・・・・・・・・・・・外側転走面
1b・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
1c・・・・・・・・・・・端部外周面
1d・・・・・・・・・・・端面
2・・・・・・・・・・・・内方部材
3・・・・・・・・・・・・転動体
4・・・・・・・・・・・・ハブ輪
4a、5a・・・・・・・・内側転走面
4b・・・・・・・・・・・小径段部
4c・・・・・・・・・・・セレーション
4d・・・・・・・・・・・肩部
5・・・・・・・・・・・・内輪
6・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
6a・・・・・・・・・・・ハブボルト
6b・・・・・・・・・・・基部
7・・・・・・・・・・・・保持器
8・・・・・・・・・・・・アウター側のシール
9・・・・・・・・・・・・インナー側のシール
10・・・・・・・・・・・センサホルダ
11・・・・・・・・・・・嵌合環
11a・・・・・・・・・・嵌合部
11b・・・・・・・・・・鍔部
11c、15a、22a・・円筒部
12・・・・・・・・・・・保持部
13・・・・・・・・・・・穿孔
14・・・・・・・・・・・シール板
15・・・・・・・・・・・スリンガ
15b、22b・・・・・・立板部
16・・・・・・・・・・・芯金
17・・・・・・・・・・・シール部材
17a・・・・・・・・・・サイドリップ
17b・・・・・・・・・・グリースリップ
17c・・・・・・・・・・中間リップ
18・・・・・・・・・・・ラビリンスシール
19・・・・・・・・・・・磁気エンコーダ
20・・・・・・・・・・・回転速度センサ
21・・・・・・・・・・・ハーネス
22・・・・・・・・・・・ベース
23・・・・・・・・・・・凹所
24・・・・・・・・・・・大径部
25・・・・・・・・・・・小径部
50・・・・・・・・・・・内輪
51・・・・・・・・・・・磁気エンコーダ
52・・・・・・・・・・・外方部材
52a・・・・・・・・・・嵌合面
53・・・・・・・・・・・センサホルダ
54・・・・・・・・・・・回転速度センサ
55・・・・・・・・・・・ベース
56・・・・・・・・・・・嵌合環
56a・・・・・・・・・・嵌合部
56b・・・・・・・・・・鍔部
56c・・・・・・・・・・円筒部
57・・・・・・・・・・・保持部
58・・・・・・・・・・・穿孔
59・・・・・・・・・・・インナー側のシール
60・・・・・・・・・・・シール板
61・・・・・・・・・・・スリンガ
61a・・・・・・・・・・円筒部
61b・・・・・・・・・・立板部
61c・・・・・・・・・・舌片
62・・・・・・・・・・・芯金
63・・・・・・・・・・・シール部材
63a・・・・・・・・・・サイドリップ
63b・・・・・・・・・・グリースリップ
63c・・・・・・・・・・中間リップ
64・・・・・・・・・・・ラビリンスシール

Claims (7)

  1. 外周に懸架装置に取り付けるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
    一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
    この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
    前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、
    前記外方部材のインナー側の端部外周面に圧入された嵌合環、およびこの嵌合環に結合され、回転速度センサが包埋された合成樹脂製の保持部からなるセンサホルダと、
    前記内輪に外嵌され、周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化し、前記回転速度センサに所定のエアギャップを介して対峙するエンコーダとを備えた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、
    前記内輪の外径が、大径部と、この大径部から所定の段差で小径部が形成され、前記大径部に前記エンコーダが圧入されると共に、前記小径部とセンサホルダとの間に形成される環状空間の開口部で、前記保持部を挟んで、前記エンコーダと軸方向に対向して前記インナー側のシールが装着されていることを特徴とする回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  2. 前記外方部材のインナー側の端部内周に環状の凹所が形成され、この凹所内に、前記エンコーダと保持部が収容され、検出部が前記外方部材のインナー側の端面から軸受内方側に配置されている請求項1に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  3. 前記嵌合環が、前記外方部材のインナー側の端部外周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に延び、前記外方部材の端面に密着される鍔部と、この鍔部から軸方向に延びる円筒部とからなり、この円筒部と前記内輪の小径部との間に形成される環状空間の開口部に前記インナー側のシールが装着されている請求項1または2に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  4. 前記エンコーダが、前記内輪の大径部に圧入されたベースと、このベースに一体に接合され、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石とからなると共に、前記インナー側のシールが、断面略L字状に形成されて互いに対向配置され、前記嵌合環に内嵌された芯金、およびこの芯金に一体に接合されたシール部材からなる環状のシール板と、前記内輪の小径部に圧入されたスリンガとからなり、前記シール部材が、前記スリンガに摺接するサイドリップとラジアルリップを備えている請求項1乃至3いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  5. 前記ベースが、防錆能を有する強磁性体の鋼鈑からプレス加工によって形成されている請求項4に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  6. 前記保持部が非磁性の合成樹脂材から射出成形によって形成され、繊維状強化材が充填されている請求項1乃至5いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
  7. 前記保持部が配設される位相が、嵌合環の水平位置よりも径方向上部に配置され、この保持部の接線方向にハーネスが接続されている請求項1乃至6いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
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