JP3623094B2 - ガラス板面の酸処理方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫酸等の酸性液でガラス板面を酸処理しシラノール基を増大させる方法、および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、乗り物用の窓ガラスを撥水処理し、ワイパーを摺動させなくても雨滴を撥くようにした撥水ガラスが商品化されているが、ガラス板面に撥水膜を形成する過程で撥水剤とガラス板面との密着性を向上させる手段として酸処理を行うことにより、シラノール基を増大させることが知られている。このため、ガラス板面を硫酸液等で酸処理する必要があった。
【0003】
一方従来より、ガラス板の表面に薬液を塗布する場合、スプレーガンを用いて塗布する方法や、刷毛により塗布する方法、あるいは溶液槽中にガラス板を浸漬させて塗布する浸漬法等のさまざまな方法や装置が知られている。
【0004】
特に、ガラス板の表面を硫酸や硝酸等の酸性液により酸処理する必要がある場合、酸性液中にガラス板を1枚づつ、あるいは複数枚まとめて浸漬させる浸漬法が良く知られている。
【0005】
スプレーにより塗布するものでは、例えば特開平5−76811号公報に、基板を水平方向に搬送しながら処理液を吐出して処理を行う処理槽において、処理槽内の処理液を複数に分割して処理槽から流出する機能を備えた液処理槽と、該液処理槽を複数個並べ、それらの中で連続して基板の処理を行い、各液処理槽の回収タンクのオーバーフロー処理液を、基板の搬送方向と逆方向側の液処理槽の回収タンクに流出させる機能を有する液処理装置として、特にガラス基板やシリコン基板の洗浄処理、および洗浄、現像、剥離、エッチング後の濯ぎ処理に用いられる液処理槽に係わるものが開示されている。
【0006】
また、浸漬法により塗布するものでは、例えば特開平6−114311号公報に、少なくとも第1の槽及び第2の槽、並びに洗滌液を供給できる第1の主配管及び排出用の第2の主配管にバルブを介して接続され、第2の槽から第1の主配管を介して第1の槽へ処理液を送ると共に、第1の槽から第2の主配管を介して第2の槽へ処理液を送るポンプが設けられた化学処理装置が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
スプレーガンにより処理液をスプレーする方法である前記特開平5−76811号は、ガラス基板の洗浄処理を目的としたものであり、通常硫酸や硝酸のような危険物の処理液を塗布する場合については用いられることが少なく、ガラス表面以外の周辺部への飛散も多く、また塗布する薬液が硫酸や硝酸のような酸性液の場合には周辺部の腐食防止対策や、危険物という点で安全上の管理や取り扱い等に細心の注意が必要となるという問題点があった。
【0008】
また、特開平6−114311号公報中に従来技術として記載されているガラス基板を1枚づつハンドリングして薬液槽中に浸漬させるもの、および本公報中に記載の複数枚のガラス基板を処理槽中に入れ、薬液を順次循環させるようにしたもののいずれにおいても、ガラス基板のハンドリングが必要となり、特に車両用の窓ガラスのような大面積のガラス板で行う場合、ハンドリングも容易ではないという問題点があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点の解決を図る、すなわち簡易な構成にして、ガラス板を搬送しながらその上部片側面のみに酸性液を塗布ムラもなく均一に、自動的に散布して酸処理し、散布液が硫酸や硝酸のような危険な酸性液であっても周辺への飛散を最小限とし、取扱いも安全なものであることを目的とする。
すなわち、本発明は、搬送コンベアにより水平姿勢で連続的に搬送される車両用のガラス板の上部面に酸性液を散布処理する方法において、ガラス板の搬送手段の上方位置にシャワー液槽を設け、該液槽の底部に複数個の細孔を互いに等間隔となるよう均一に配列し、供給手段によって供給される酸性液の該液槽内の液面レベルを一定にし、さらに、シャワー液槽を、ガラス板の搬送方向に対して直角方向に揺動させて、下部細孔から酸性液を搬送移動するガラス板の上部側表面に自然落下させて、ガラス板の上部片側面のみに酸性液を均一に散布させるようにしたことを特徴とするガラス板面の酸処理方法である。
あるいは、本発明は、搬送コンベアにより水平姿勢で連続的に搬送される車両用のガラス板の上部面に酸性液を散布処理する装置において、ガラス板を連続的に搬送する搬送手段と、搬送コンベアの上部に位置し底部に複数個の細孔を互いに等間隔に2次元的に均一に配列したシャワー液槽と、該シャワー液槽をガラス板の搬送方向に対して直角方向に揺動させ、酸性液をガラス板面上に均一に散布させるようにした揺動機構と、落下した酸性液を搬送コンベア下部の受液槽を通してタンクへ回収する回収手段と、タンク内の酸性液をシャワー液槽へ供給する供給手段とからなることを特徴とするガラス板面の酸処理装置である。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1に示すように、搬送手段10により搬送ロール11上のガラス板Gを一定速度で搬送させ、該搬送手段10の途中の所定位置の上方にシャワー液槽3を配置し、該シャワー液槽3は底部に複数の細孔4、4、・・を設けた。該シャワー液槽3とタンク32間を送液配管22で接続し、送液ポンプ21にてタンク32より硫酸液2をシャワー液槽3へ供給する供給手段20を設けた。
【0011】
また、シャワー液槽3の底部に設けた複数の細孔4、4、・・を等間隔に配置し、自然滴下する硫酸液をガラス板G上で均一になるようにした。
さらに、搬送ロール11の下方ではシャワー液槽3と対向する同一位置に受液槽31を設け、シャワー液槽3の細孔4、4、・・より自然落下した硫酸2’を該受液槽31で受け、タンク32内に回収するようにした。
【0012】
シャワー液槽3の側面部に孔部5を設け、該孔部5にオーバーフロー管34を接続したので、シャワー液槽3の液面レベル6が該孔部5の下端位置より上になると、該位置より上方の硫酸液2’はオーバーフロー管34を通ってタンク32内に回収され、該シャワー液槽3中の硫酸液2’の液面を一定レベルに保つことができる。
【0013】
また、供給手段20の送液ポンプ21によりタンク32内の酸性液2を送液配管22を通してシャワー液槽3内に供給し、オーバーフロー管34より僅かに酸性液が回収されるようにしておくことにより、運転時は常時液面レベル6がほぼ一定となるようにコントロールされる。
【0014】
さらに、ガラス板G上に滴下し、ガラス板G面上を流れ落ちた硫酸液、および直接受液槽31に落下した硫酸液は、搬送ロールの下方に設けた前記受液槽31にて集められ、受液槽31の側面下部より回収配管33を通じてタンク32内へ回収される。
【0015】
このように、湾曲したガラス板Gを搬送しながら、硫酸液を上方から自然落下させ、ガラス板の上部側表面を均一に酸処理するものである。
図1に示すものは、シャワー液槽3を図示しない架台に固定し、底部に設けた複数の細孔4、4、・・より搬送移動するガラス板G面上に硫酸液をシャワーするものであるが、シャワー液槽3をガラス板Gの搬送方向と直交する水平方向に僅かに揺動するようにした揺動手段を設けるようにしても良い。シャワー液槽3を揺動させることによりガラス板Gの上部面全面に硫酸液が行き渡るようにすることができる。
【0016】
該揺動手段は図示していないが偏芯カム等を用いたり、あるいはモーターの正転逆転により揺動させる等の種々の方法が考えられるが、これに限るものではない。
【0017】
処理するガラス板Gが湾曲ガラスである場合は、硫酸液は流れ落ちるが、フラットなガラス板Gの場合はガラス板を僅かに傾斜させて搬送させ、上部面上の硫酸液が傾斜面に沿って流れ易くするようにすると良い。
【0018】
また、シャワー液槽3やタンク32の上部には蓋を設け、塵埃等の侵入を防ぎ、さらにシャワー液槽3、搬送手段10、および受液槽31を取り囲むような保護カバー(図示しない)を取付、シャワー液槽3より滴下した硫酸液が飛散しないようにした。
【0019】
【実施例】
以下、本発明に係わるガラス板面の酸処理方法および装置を図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、市販の75%の硫酸を例えば100倍程度に薄めた0.26Nの希硫酸を用意した。
本装置の使用開始指令に基づいて、タンク32内の希硫酸2を送液ポンプ21で浅いトレー状のシャワー液槽3内に供給する。
【0021】
液面レベル6が所定のレベル、すなわちオーバーフロー管34の下端位置である例えば55mmとなったことを確認後、被処理物であるガラス板Gを搬送させ、シャワー液槽3の底面に設けた例えば3〜6mmφの複数の細孔4、4、・・より希硫酸を滴下させ、搬送中のガラス板Gの上部側表面の全面に希硫酸を散布した。この時のガラス板Gの搬送手段の搬送速度は約2m/分と低速で搬送し、次工程の洗浄工程までのシャワーリングを含めて1分から数分間の所定時間希硫酸と接触させることにより、ガラス板Gの表面のシラノール基(SiOH基)を増大させることができる。
【0022】
ガラス板Gの表面に滴下した希硫酸はガラス板Gの湾曲面に沿って流れ落ち、搬送手段10の下方に設けた受液槽31に集められ、続いて受液槽31の側面の下端付近に設けた回収配管33を通してタンク32内に回収される。
【0023】
また、シャワー液槽3を浅いトレー状で水平に設けたので、取り替えも容易であり、シャワー液槽3中に供給手段20で硫酸液を供給するため、硫酸液2’の液面も55mm程度と低くて充分であり、大きなガラス板Gを処理する場合であっても酸性液が少なくて済む。
【0024】
本発明の酸処理装置1は金属等を腐食させる酸性液を散布するものであるため、酸性液が飛散接触する部分の材質を腐食しない樹脂等の材料で構成した。例えば、希硫酸と本発明の酸処理装置1とが接触するタンク32、シャワー液槽3、受液槽31、送液ポンプ21のポンプ部分、送液配管22、回収配管33、オーバーフロー管34の材質としては、酸液で腐食しない塩化ビニール製のものを使用したが、酸液で腐食しない材料であればこれに限るものではない。
【0025】
また、ガラス板Gを搬送する搬送ロール11等も塩化ビニール等の樹脂製としたが、強度的に困難な部分については鋼材の表面を耐酸性の樹脂ライニング処理を施した。
【0026】
もちろん、図示はしていないが、カバー、蓋等の部材についても、耐酸性の樹脂製とした。
以上好適な実施例について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【0027】
酸性液は硫酸を用いたが、硝酸や塩酸等の酸性液を用いても良い。
ガラス板Gは、フラットな板を初めとし、湾曲した板であってもよい。またガラス板は強化ガラス板、半強化ガラス板、生板等の単板、あるいは複数枚の強化ガラス相互、あるいは強化ガラスと生板ガラスを組み合わせてPVBやEVA等の中間膜または樹脂注入で接着した合わせガラス等が対象となる。
【0028】
また、ガラス板に限らず各種のパネル材にも応用できる。
さらに、酸性液の散布をさせたくない部分があれば予め耐酸性のマスキングテープ等を貼着しておけば良い。
【0029】
【発明の効果】
本発明は、フラット形状、または湾曲したガラス板を搬送すると同時に、その上方のシャワー液槽の下面に設けた細孔より酸性液を自然滴下させるようにした簡易な構成としたので、酸性液の飛散も殆どなく、ガラス板の上部面を均一に酸処理でき、浸漬法のようにガラス板をハンドリングする必要もなく、自動的に酸処理することができ、生産性、安全性に優れ、構造も簡単である。
【0030】
また、シャワー液槽を浅いトレー状で水平にしたので、取り替えも容易であり、大きなガラス板を処理する場合であっても酸性液が少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸処理装置の要部斜視図。
【図2】本発明の酸処理装置を説明する概略断面図。
【符号の説明】
G ガラス板
1 酸処理装置
2 酸性液
3 シャワー液槽
4 細孔
10 搬送手段
11 搬送ロール
20 供給手段
21 送液ポンプ
30 回収手段
31 受液槽
32 タンク
Claims (2)
- 搬送コンベアにより水平姿勢で連続的に搬送される車両用のガラス板の上部面に酸性液を散布処理する方法において、ガラス板の搬送手段の上方位置にシャワー液槽を設け、該液槽の底部に複数個の細孔を互いに等間隔となるよう均一に配列し、供給手段によって供給される酸性液の該液槽内の液面レベルを一定にし、さらに、シャワー液槽を、ガラス板の搬送方向に対して直角方向に揺動させて、下部細孔から酸性液を搬送移動するガラス板の上部側表面に自然落下させて、ガラス板の上部片側面のみに酸性液を均一に散布させるようにしたことを特徴とするガラス板面の酸処理方法。
- 搬送コンベアにより水平姿勢で連続的に搬送される車両用のガラス板の上部面に酸性液を散布処理する装置において、ガラス板を連続的に搬送する搬送手段と、搬送コンベアの上部に位置し底部に複数個の細孔を互いに等間隔に2次元的に均一に配列したシャワー液槽と、該シャワー液槽をガラス板の搬送方向に対して直角方向に揺動させ、酸性液をガラス板面上に均一に散布させるようにした揺動機構と、落下した酸性液を搬送コンベア下部の受液槽を通してタンクへ回収する回収手段と、タンク内の酸性液をシャワー液槽へ供給する供給手段とからなることを特徴とするガラス板面の酸処理装置。
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