JP3620341B2 - フッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法および安定化処理剤 - Google Patents

フッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法および安定化処理剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法および安定化処理剤に関するものであり、例えば、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグさらには二次精錬スラグ等といった、フッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法および安定化処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、近年、各種の産業廃棄物の排出総量が増加するに伴って、環境保護の観点から、その適正かつ効率的な処理が強く求められている。
【0003】
産業廃棄物の一例である製鋼スラグの我が国における排出総量は、例えば1996年の1年間において、約970 万トンにも達した。この排出総量のうちの42%強に相当する約410 万トンの製鋼スラグが、土木工事および埋め立てに用いられた。
【0004】
ところで、製鋼過程においては、スラグの融点を下げて流動性を向上させ、スラグと溶鋼との反応性を高めるために、蛍石CaFが添加される。このため、一般的に、製鋼スラグにはフッ素が不可避的に含有される。近年、このフッ素を長期間にわたって多量に摂取すると、歯牙フッ素症、骨フッ素症さらには運動障害性フッ素症等の各種障害を引き起こすことが、わかってきた。このため、我が国においても、フッ素は水質および地下水環境基準項目に指定されている。
【0005】
したがって、産業廃棄物として多量に発生する製鋼スラグを、前述した土木工事や埋め立てに用いる場合には、製鋼スラグにフッ素溶出の抑制処理を行って、埋め立て後の製鋼スラグからのフッ素の溶出に起因した環境汚染の防止に充分に配慮することが望ましい。
【0006】
しかし、従来の我が国の産業廃棄物最終処分基準では、埋め立て処分品についてのフッ素溶出量規制値が制定されていないこともあり、産業廃棄物からのフッ素溶出の抑制法は、これまで全く検討されていなかった。
【0007】
産業廃棄物を対象とするものではないが、溶液中に高濃度に含まれるフッ素を除去する方法として、石灰をフッ素含有溶液に添加することにより、安定なフッ化カルシウムを沈殿させることにより、フッ素を除去する技術が知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、溶液中のフッ素濃度が低下するに伴って、溶液中でのフッ化カルシウムの生成反応が進行し難くなる。このため、この技術では、廃水処理基準値を下回ることはできるものの、工業的規模で産業廃棄物に含まれるフッ素の濃度を所望の程度に抑制することは、現実には困難である。
【0009】
ここに、本発明の目的は、フッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法および安定化処理剤を提供することであり、例えば、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグさらには二次精錬スラグ等といった、フッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法および安定化処理剤を提供することである。
【0010】
本発明は、フッ素を含む産業廃棄物に対して、CaO・Al2O3、5CaO・3Al2O3、12CaO・7Al2O3、9CaO・5Al2O3、2CaO・Al2O3若しくは3CaO・Al2O3、若しくはこれらの混合物を鉱物相として含むとともに最大粒径が150μm以下である固定剤の粉末を添加して、H2Oの存在下でフッ素を含む産業廃棄物と固定剤の粉末とを、 60 ℃以上に加温すること、蒸気養生を行って 80 ℃以上に加温すること、または、オートクレーブ処理を行って 100 ℃以上に加温加圧することによって産業廃棄物に含まれるフッ素を捕捉することを特徴とするフッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法である。
【0011】
この本発明に係るフッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法では、フッ素を含む産業廃棄物が、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ、塊状若しくは粉状の二次精錬スラグ、ステンレス鋼の酸洗スラッジ、都市ゴミダストまたは、直接溶融炉から排出されるスラグおよびダストであることが例示される。
【0012】
これらの本発明にかかるフッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法において、フッ素を含む産業廃棄物に固定剤の粉末を添加した後に、水の存在下で 60 ℃以上に加温すること、蒸気養生を行って 80 ℃以上に加温すること、または、オートクレーブ処理を行って 100 ℃以上に加温加圧することにより、 CaAl 2 (OH) 8-X F X Ca 3 Al 2 (OH) 8-X F X yH 2 O Ca 2 Al(OH) 7-X F X 3H 2 O 3CaO Al 2 O 3 Ca(OH) 2-X F X 18H 2 O CaAl(OH) 5-X F X H 2 O Ca 3 Al 2 (OH) 12-X F X または Ca 3 Al 2 (OH) 2 F 10 H 2 O の生成を促進することができ、これにより、フッ素を含む産業廃棄物の安定化処理を効果的に行うことができる。
【0013】
別の観点からは、本発明は、CaO・Al2O3、5CaO・3Al2O3、12CaO・7Al2O3、9CaO・5Al2O3、2CaO・Al2O3若しくは3CaO・Al2O3、若しくはこれらの混合物を鉱物相として含むとともに最大粒径が150μm以下の粉末からなり、H2Oの存在下でフッ素を含む産業廃棄物とともに、 60 ℃以上に加温されること、蒸気養生を行って 80 ℃以上に加温されること、または、オートクレーブ処理を行って 100 ℃以上に加温加圧されることによって、産業廃棄物に含まれるフッ素を捕捉することを特徴とするフッ素を含む産業廃棄物の安定化処理剤である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるフッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法および安定化処理剤の実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の実施形態の説明では、フッ素を含む産業廃棄物が、製鋼スラグである場合を例にとる。
【0022】
図1は、本実施形態の安定化処理方法により、塊状の製鋼スラグ1a〜1dに安定化処理を施す状況を模式的に示す説明図である。
同図に示す本実施形態では、合成されたカルシウムアルミネート化合物2a、天然に産するカルシウムアルミネート鉱物2b、および、カルシウムアルミネートを含む二次精錬スラグ2cの1種または2種以上に由来する、カルシウムアルミネートを含む粉末2を固定剤として用い、フッ素を含む製鋼スラグ1a〜1dの安定化処理を行っている。
【0023】
また、図2は、本実施形態の安定化処理方法により、粉状の二次精錬スラグ1d’ に安定化処理を施す状況を模式的に示す説明図である。
同図に示す本実施態様でも、合成されたカルシウムアルミネート化合物2a、天然に産するカルシウムアルミネート鉱物2b、および、カルシウムアルミネートを含む二次精錬スラグ2cの1種または2種以上に由来する、カルシウムアルミネートを含む粉末2を固定剤として用い、フッ素を含む粉状の二次精錬スラグ1d’ の安定化処理を行っている。
そこで、以降の説明では、製鋼スラグ1、固定剤2、製鋼スラグ1の安定化処理について、順次説明する。
【0024】
[製鋼スラグ1]
本実施形態において安定化処理が行われる製鋼スラグ1は、図1に示すフッ素を含む溶銑予備処理スラグ1a、フッ素を含む転炉スラグ1b、フッ素を含む電気炉スラグ1cおよびフッ素を含む二次精錬スラグ(塊状)1dと、図2に示すフッ素を含む二次精錬スラグ(粉状)1d’ の5種である。
【0025】
本発明では、製鋼スラグ1が生成される製鋼工程の形態は、何らの限定を要さない。このような製鋼スラグ1として、▲1▼例えばトーピード、溶銑鍋または転炉により生成される溶銑予備処理スラグ1a、▲2▼上吹き操業、底吹き操業または上下吹き操業等により生成される転炉スラグ1b、▲3▼高周波加熱またはアーク加熱により生成される電気炉スラグ1c、▲4▼高周波加熱またはアーク加熱により生成される二次精錬スラグ1dが例示される。なお、本発明における「製鋼スラグ」には、これらのスラグだけではなくて、これらの操業の際に生じるフッ素を含むダストも包含される。
【0026】
製鋼スラグ1a〜1dの性状は、主に塊状である。しかし、一部の二次精錬スラグでは、スラグ中のP濃度が低いことに起因して冷却時に相変態を起こし、粉状の二次精錬スラグ1d’ となる。
【0027】
製鋼スラグ1の組成は、当然のことながら、例えば操業法や溶鋼組成等の各種要因により、変動する。しかし、溶銑予備処理スラグ1a、転炉スラグ1b、電気炉スラグ1c、二次精錬スラグ(塊状)1dおよび二次精錬スラグ(粉状)1d’ のいずれもが、フッ素を含んでいる。例えば、溶銑予備処理スラグ1aは0.1 〜7.1 重量%のフッ素を、転炉スラグ1bは0.2 〜3.5 重量%のフッ素を、電気炉スラグ1cは1.0 〜8.9 重量%のフッ素を、さらに二次精錬スラグ1dおよび1d’ では0.1 〜5.7 重量%のフッ素を、それぞれ含有する。
【0028】
製鋼スラグ1に含まれるこれらのフッ素は、製鋼スラグ1a〜1d’ 中において、例えばCaF、CaF(PO、3CaO・2SiO・CaF、 (2CaO・SiO・CaF、 (3CaO・SiOまたは11CaO・7Al・CaF等として存在する。これらの鉱物相のうちのいずれの鉱物相が存在するかは、スラグ組成、操業法さらにはスラグ冷却条件といった各種要因により、変動する。また、2CaO・SiO、3CaO・SiO、2CaO・SiO・Al または2CaO・TiOの各鉱物相中には0.5 〜12重量%のフッ素が含まれる。
【0029】
[固定剤2]
本実施形態では、カルシウムアルミネートを含む粉末2として、合成されたカルシウムアルミネート化合物2a、天然に産するカルシウムアルミネート鉱物2b、および、カルシウムアルミネートを含む二次精錬スラグ2cの1種または2種以上に由来する粉末2を、固定剤として用いる。
【0030】
明細書では、「カルシウムアルミネート」とはCaO・Al2O3、5CaO・3Al2O3、12CaO・7Al2O3、9CaO・5Al2O3、2CaO・Al2O3若しくは3CaO・Al2O3、若しくはこれらの混合物意味する。
【0031】
合成されたカルシウムアルミネート化合物2aとしてはCaO・Al2O3、5CaO・3Al2O3、12CaO・7Al2O3、9CaO・5Al2O3、2CaO・Al2O3 3CaO・Al2O3 若しくはこれらの混合物である。これらは、いずれも、いわゆる高温焼成法により合成される
【0032】
天然に産するカルシウムアルミネート鉱物2bとしては、例えば、12CaO・7Al2O3組成の鉱物としてMayeniteある。
【0033】
二次精錬スラグ2cとは、真空精錬法、取鍋精錬法または簡易取鍋精錬等の二次精錬(炉外精錬)を行った際に生成されたスラグを意味し、石灰(CaO)およびアルミナ(Al2O3)を主成分として含むものである。このような二次精錬スラグ2cについて、X線回折法等の適宜方法により鉱物相を同定すると、二次精錬スラグ2c中の石灰およびアルミナ濃度が高い場合には、CaO・Al2O3相、12CaO・7Al2O3および 3CaO Al 2 O 3 が主要鉱物相として認められる。
【0034】
固定剤として用いる二次精錬スラグ中のSiOの濃度が高い場合には、二次精錬スラグから溶出したSiイオンが、二次精錬スラグから溶出したCaイオンと直ちに反応し、CaO−SiO−HO 化合物を生成する。また、二次精錬スラグから溶出したSiイオンが、二次精錬スラグから溶出したCaイオンおよびAlイオンと直ちに反応し、CaO−Al−SiO−HO 化合物を生成する。それらの結果、フッ素の固定化に有効なCaO−Al−HO 化合物の生成量が減少し、固定化されるフッ素イオン量が少なくなる。このことから、二次精錬スラグをフッ素の固定剤として用いるためには、二次精錬スラグ中のSiOの濃度は10重量%以下、より好適には5重量%以下であることが望ましい。
【0035】
また、固定剤として用いる二次精錬スラグ中の鉄酸化物の濃度が高い場合には、二次精錬スラグから溶出したFeイオンが、二次精錬スラグから溶出したCaイオンおよびAlイオンと直ちに反応し、CaO−Al−Fe−HO 化合物を生成する。その結果、フッ素の固定化に有効なCaO−Al−HO 化合物の生成量が減少し、固定化されるフッ素イオンの量が少なくなる。このことから、二次精錬スラグをフッ素の固定剤として用いるためには、二次精錬スラグ中の全鉄酸化物の濃度は5重量%以下、より好適には3重量%以下であることが望ましい。
【0036】
本発明では、「カルシウムアルミネート」であるCaO・Al2O3、5CaO・3Al2O3、12CaO・7Al2O3、9CaO・5Al2O3、2CaO・Al2O3若しくは3CaO・Al2O3、若しくはこれらの混合物いずれによっても、製鋼スラグ1に含まれるフッ素を、容易かつ確実に固定することができる。
【0037】
本実施形態では、固定剤である粉末2の平均粒径が大きくなるにしたがい、水存在下において、これらの粉末2と製鋼スラグ1から溶出したフッ素との反応界面積が減少し、製鋼スラグ1からのフッ素溶出量より粉末2へのフッ素吸着量が少なくなる。したがって、溶出するフッ素の処理基準値が0.8mg/L 以下である場合には、粉末2の平均粒径が150 μmを超えると、製鋼スラグ1に含まれるフッ素の固定化が不十分になるおそれがある。また、水存在下において、粉末2からのカルシウムおよびアルミニウムの溶出速度が小さくなり、製鋼スラグ1から溶出したフッ素との反応による固定化が不十分になるおそれがある。
【0038】
そこで、溶出するフッ素の処理基準値が0.8mg/L 以下である場合には、粉末2の平均粒径は150 μm以下であることが望ましい。同様の観点から、粉末2の平均粒径は50μm以下であることがより望ましい。このような観点からは、粉末2の平均粒径の下限は限定を要さないが、10μm未満の平均粒径であると、粉末2の取り扱いが面倒になるため10μm以上であることが望ましい。
【0039】
また、固定剤である粉末2の添加量が少な過ぎると、水存在下において、これらの粉末2と製鋼スラグ1から溶出したフッ素との反応界面積が十分でないために、製鋼スラグ1からのフッ素溶出量より粉末2へのフッ素吸着量が少なくなり、フッ素の固定化が不十分になるおそれがある。また、水存在下において、粉末2からのカルシウムおよびアルミニウムの溶出量が少なくなり、製鋼スラグ1から溶出したフッ素との反応による固定化が不十分になるおそれがある。これらの傾向は、フッ素濃度の高い製鋼スラグ1において、よりいっそう顕著になる。一方、粉末2の添加量が多過ぎると、フッ素の安定化効果が飽和するとともに、コスト高となって減容化を阻害する。
【0040】
そこで、溶銑予備処理スラグ1a、転炉スラグ1b、電気炉スラグ1c、または、二次精錬スラグ1d (塊状) および二次精錬スラグ1d (粉状) 1d’ の安定化処理を行う際には、フッ素を含む製鋼スラグ100 重量部に対して、粉末2を5〜80重量部、より好適には20〜80重量部添加することが、望ましい。
【0041】
[塊状の製鋼スラグ1a〜1dの安定化処理]
図1に示すように、本実施形態では、上述した粉末2を用い、溶銑予備処理スラグ1a、転炉スラグ1b、電気炉スラグ1cまたは二次精錬スラグ1dの安定化処理を行う。
【0042】
塊状の製鋼スラグである溶銑予備処理スラグ1a、転炉スラグ1b、電気炉スラグ1cまたは二次精錬スラグ1dの安定化処理は、これらスラグ1a〜1dに粉末2を適量添加した後、機械3を用いて十分混合することにより、これら製鋼スラグ1a〜1dから溶出したフッ素を固定化して、安定化処理品である土中埋設用材料5を得る処理である。
【0043】
また、製鋼スラグ1a〜1dと粉末2との混合の際に、水を適量添加し、60℃以上に加温することにより、製鋼スラグ1中のフッ素の固定化が促進される。この際、オートクレーブ4を用いて100 ℃以上に加温加圧することが、製鋼スラグ1中のフッ素の固定化を促進させるためには、より望ましい。
【0044】
さらに、製鋼スラグ1に粉末2を適量添加し、機械3を用いて十分混合した後、水を適量添加してから、オートクレーブまたは蒸気養生装置4により80℃以上に加温加圧して、製鋼スラグ1中のフッ素を固定化して、安定化処理品である土中埋設用材料5を得ることとしてもよい。
【0045】
[粉状の製鋼スラグ1d’ の安定化処理]
図2に示すように、本実施形態では、上述した粉末2を用い、粉状の二次精錬スラグ1d’ の安定化処理を行う。
【0046】
粉状の製鋼スラグである二次精錬スラグ1d’ の安定化処理は、二次精錬スラグ1d’ と粉末2とに水を適量添加した後、例えば混練機や造粒機あるいは混練および造粒の二つの機能を併せ持つ機械6等を用いて、粉状二次精錬スラグ1d’ と粉末2を混練して所望の形状 (例えば円柱状) の造粒物である土中埋設用材料7’とする処理である。
【0047】
また、造粒物7を60℃以上に加温することにより、二次精錬スラグ1d’ 中のフッ素の固定化が促進される。この際、オートクレーブ4を用いて100 ℃以上に加温加圧することが、二次精錬スラグ1d’ 中のフッ素の固定化を促進させるためには、より望ましい。
【0048】
さらに、造粒物7を、オートクレーブまたは蒸気養生装置4によりオートクレーブ処理または蒸気養生を行うことにより、80℃以上に加温加圧して、二次精錬スラグ1d’ 中のフッ素を固定化してもよい。
【0049】
なお、安定化処理の際に、二次精錬スラグ1d’ および粉末2と共存させる水は、本発明では、転動造粒、攪拌造粒等により凝集造粒現象を生じさせて造粒物7を形成するために用いられる。そのため、土中埋設用材料である造粒物7’に求める強度や硬度等に応じて、水とともに適当な溶媒を用いてもよい。このような溶媒としては、例えば、デキストリン、リグニン等を例示することができる。
【0050】
[安定化処理の作用]
このような安定化処理により、図1に示す溶銑予備処理スラグ1a、転炉スラグ1b、電気炉スラグ1c、二次精錬スラグ (塊状)1d 、および図2に示す二次精錬スラグ (粉状)1d’にそれぞれ含まれるフッ素が固定化される機構を説明する。
【0051】
本発明者らは、フッ化水素酸を蒸留水で希釈した溶液を攪拌しながら、高温焼成によって合成した CaO・Al 、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al の小塊を浸漬して3〜12時間反応させ、反応後の CaO・Al 、12CaO・7Alまたは3CaO・Al の小塊表面の鉱物相をX線マイクロアナライザにより同定した。また、フッ化水素酸を蒸留水で希釈した溶液に、高温焼成によって合成した CaO・Al、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al の粉末を添加し、3〜12時間攪拌して、反応後の粉末について、その鉱物相をX線回折法により同定した。
【0052】
その結果、 CaO・Al 粉末の場合にはCaAl(OH)8−x、CaAl(OH)8−x・yHO、CaAl(OH)7−x・3HOが、また、 12CaO・7Al粉末および3CaO・Al 粉末の場合には3CaO・Al・Ca(OH)2−x・18HO 、CaAl(OH)5−x・HO 、CaAl(OH)12−x、CaAl(OH)10・HO がそれぞれ存在することが認められた。
【0053】
このようにしてカルシウムアルミネートを含む粉末によりフッ素が安定化されることは、下記の反応機構により説明される。例えば、 CaO・Al 粉末が水共存下でフッ素イオンと反応してCaAl(OH)8−xが生成する場合、 pH に応じて、CaO ・Al 粉末からカルシウムおよびアルミニウムが溶出してイオンとなる反応(▲1▼式または▲1▼’ 式)と、カルシウムイオンおよびアルミニウムイオンがフッ素イオンと反応してCaAl(OH)8−xが生成する反応(▲2▼式または▲2▼’ 式)とが進行する。
【0054】
Figure 0003620341
一方、12CaO・7Al粉末が水共存下でフッ素イオンと反応して3CaO・Al・Ca(OH)2−x・18HO が生成する場合、 12CaO・7Al粉末からカルシウムおよびアルミニウムが溶出してイオンとなる反応(▲3▼式または▲3▼’ 式)と、カルシウムイオンおよびアルミニウムイオンがフッ素イオンと反応して3CaO・Al・Ca(OH)2−x・18HO が生成する反応(▲4▼式または▲4▼’ 式)とが進行する。
【0055】
Figure 0003620341
本発明によれば、このようにして、カルシウムを含む化合物およびアルミニウムを含む化合物を用いてフッ素が捕捉されて、フッ素が固定化される。すなわち、カルシウムアルミネートを含む粉末、すなわち、合成されたカルシウムアルミネート化合物2a、天然に産するカルシウムアルミネート鉱物2b、および、カルシウムアルミネートを含む二次精錬スラグ2cの1種または2種以上に由来する、カルシウムアルミネートを含む粉末2を、固定剤として用いることにより、溶銑予備処理スラグ1a、転炉スラグ1b、電気炉スラグ1c、二次精錬スラグ (塊状)1d および二次精錬スラグ (粉状)1d’の安定化処理が行われる。
【0057】
なお、粉状の二次精錬スラグ1d’ の安定化処理に際しては、セメント8を粉末2とともに固定剤として複合添加することが望ましい。セメント8を粉末2とともに複合添加することにより、造粒物7の周囲に、セメント8の緻密組織を生成することができ、固定化処理をさらに完全なものとすることができる。
【0058】
通常、ポルトランドセメント中には2CaO・SiO、3CaO・SiO、2CaO・Al・SiO相とともに、3CaO・Al相が8〜11%含まれている。このことから、セメントを添加することにより、製鋼スラグの周囲にセメントの緻密組織が生成しフッ素が溶出し難くなる効果、またはフッ素固定相の周囲にセメントの緻密組織が生成してフッ素固定相の再溶解が起こらなくなる効果の他に、セメント中の3CaO・Al相によるフッ素の固定化が起こる。しかし、セメントを過度に添加すると、土中埋設材料が強く固化し、土中埋設材料の掘り起こしを困難にするとともにコストの上昇をもたらす。これらのことから、セメントによってもフッ素の固定化は可能であるものの、セメントの使用量は制限される。
【0059】
したがって、セメント8の緻密性を確保するためには、ブレーン比表面積値が1000cm/g 以上の微粒子セメント (例えばポルトランドセメント) を、粉末2の30重量%以下添加することが望ましい。
【0060】
このようにして得られた土中埋設用材料である安定化処理品5、7’は、いずれも、水質および地下水環境基準値である「フッ素溶出量:0.8 mg/L以下」を十分に満足するため、路盤材や埋め戻し材等として土木現場において、環境汚染を防止しながら有効に利用することができる。
【0061】
このように、本実施形態によれば、溶銑予備処理スラグ1a、転炉スラグ1b、電気炉スラグ1cまたは二次精錬スラグ (塊状)1d および二次精錬スラグ (粉状)1d’といった、フッ素を含む製鋼スラグを、確実に安定化処理することができる。また、この処理に際して、低コストの二次精錬スラグ2cを用いることもできる。したがって、この場合には、処理コストの顕著な低減が可能となる。
【0062】
また、安定化処理に用いるカルシウムアルミネートを含む粉末2は、製鋼スラグ1に含まれるフッ素と効果的に反応するため、粉末2の使用量の増加も可及的に抑制される。このため、この面からも、処理コストの低減が可能となる。
【0063】
さらに、本発明を実施例を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の各実施例の説明では、溶出するフッ素の処理基準値を0.8mg/L 以下に設定した場合を、例にとる。
【0064】
【実施例】
(実施例1)
スラグヤードで採取された溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグおよび二次精錬スラグの化学組成を表1にそれぞれ示す。
【0065】
【表1】
Figure 0003620341
【0066】
これらの各スラグについて、平成3年環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行った。フッ素の溶出量と、水質および地下水環境基準値とを表2に対比して示す。
【0067】
【表2】
Figure 0003620341
【0068】
表2に示す結果から、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ、二次精錬スラグ (塊状) および二次精錬スラグ (粉状) のいずれも、フッ素の溶出量が水質および地下水環境基準値を大幅に超えるため、フッ素の固定化処理を行う必要があることが明らかであった。
【0069】
そこで、本発明にしたがい、これらの製鋼スラグのうちで溶銑予備処理スラグ100 重量部に対して、粒度 (最大粒径) が250 μm以下150 μm超、150 μm以下100 μm超、100 μm以下32μm超、または32μm以下の4水準の CaO・Al 、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al 合成品の粉末を、50重量部添加し、水の存在の下で反応させた。
【0070】
得られた処理品について、平成3年環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行った。溶出液中のフッ素濃度と CaO・Al 、 12CaO・7 Al または3CaO・Al 合成品の粒度との関係を図3にグラフで示す。
【0071】
図3に示すグラフから、スラグ粒度が150 μm以下であれば、溶出液中のフッ素濃度は、水質および地下水環境基準値である0.8 mg/Lを下回ることがわかる。
なお、フッ素の処理基準値が例えば2.4mg/L である場合には、スラグ粒度が例えば400 μm程度であっても、この処理基準値を満足することができる。
【0072】
(実施例2)
本発明にしたがい、溶銑予備処理スラグ100 重量部に対して、粒度150 μm以下の CaO・Al 、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al 合成品の粉末を5〜100 重量部添加し、水の存在の下で反応させた。
【0073】
得られた処理品について、平成3年環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行った。CaO・Al 、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al 合成品 (固定剤) の重量/溶銑予備処理スラグ重量の比と、溶出液中のフッ素濃度との関係を図4にグラフで示す。
【0074】
図4に示すグラフにおいて、 CaO・Al 、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al 合成品の重量/溶銑予備処理スラグ重量の比が0.2 を下回ると、溶出液中のフッ素濃度は、水質および地下水環境基準値である0.8 mg/Lを上回ることがわかる。これにより、溶銑予備処理スラグ100 重量部に対して、 CaO・Al 、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al の合成品の粉末が20重量部以上であれば、溶出液中のフッ素濃度は、水質および地下水環境基準値を下回ることがわかる。また、CaO・Al 、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al 合成品の重量/溶銑予備処理スラグ重量の比が0.8 を超えると、フッ素溶出の抑制効果が飽和し、処理コスト増となることがわかる。したがって、溶銑予備処理スラグ100 重量部に対してCaO ・Al、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al合成品の粉末を20〜80重量部添加することが望ましいことがわかる。
【0075】
なお、フッ素の処理基準値が例えば2.4mg/L である場合には、例えば、CaO・Al 、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al合成品の重量/溶銑予備処理スラグ重量の比が0.2 を下回っても、この処理基準値を満足することができる。
【0076】
(実施例3)
本発明にしたがい、溶銑予備処理スラグ100重量部に対して、粒度150μm以下の溶出しない程度のフッ素を含む二次精錬スラグの粉末を50重量部添加し、水の存在下で反応させた。なお、二次精錬スラグの組成は、F:0.1重量%未満、CaO:47.9重量%、SiO2:5.1重量%、Al2O3:35.0重量%、T.Fe:1.0重量%、MgO:8.0重量%、MnO:1.3重量%あった。
【0077】
得られた処理品について、平成3年環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行った。二次精錬スラグを用いて安定化処理を行った溶銑予備処理スラグについて、溶出液中のフッ素濃度を表3に示す。
【0078】
【表3】
Figure 0003620341
【0079】
本発明にかかるいずれの固定剤を用いた場合も、溶出液中のフッ素濃度は、水質および地下水環境基準値である0.8 mg/Lを下回ることがわかる。
【0080】
(実施例4)
本発明にしたがい、転炉スラグ、電気炉スラグまたは二次精錬スラグ(塊状)100重量部に対して、粒度が150μm以下のCaO・Al2O3、12CaO・7Al2O3、3CaO・Al2O3の合成品、または、二次精錬スラグの粉末を50重量部添加し、水の存在下で反応させた。
得られた処理品について、平成3年環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行った。溶出液中のフッ素濃度を表4に示す。
【0081】
【表4】
Figure 0003620341
【0082】
本発明にかかるいずれの固定剤を用い場合も、溶出液中のフッ素濃度は、水質および地下水環境基準値である0.8 mg/Lを下回ることがわかる。
【0083】
(実施例5)
転炉スラグ中には遊離石灰が含まれている。この遊離石灰が水と反応することによってCa(OH)となり、体積膨張が起こる。このため、転炉スラグをそのまま路盤材として使用すると、転炉スラグ中の遊離石灰が雨水や地下水等と反応して膨張し、路盤隆起の原因となる。そこで、この体積膨張に起因した路盤隆起を防ぐため、転炉スラグを路盤材として用いる前に、予め転炉スラグ中の遊離石灰をCa(OH)にするエージング処理が行われている。
【0084】
本実施例では、カルシウムアルミネートによる転炉スラグ中のフッ素の安定化処理に及ぼす、エージング処理の影響を調べるために、転炉スラグ100重量部に対して、粒度が150μm以下の12CaO・7Al2O3または、二次精錬スラグの粉末を20重量部添加して混合した後、適量の水を加え、20℃で96時間、80℃ (エアバス中)で24時間、または、120℃(オートクレーブ中)で6時間養生した。
得られた処理品について、平成3年環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行った。溶出液中のフッ素濃度を表5に示す。
【0085】
【表5】
Figure 0003620341
【0086】
本発明にかかるいずれの固定剤を用いた場合も、エージング処理には影響を受けず、溶出液中のフッ素濃度は、水質および地下水環境基準値である0.8 mg/Lを下回ることがわかる。
【0087】
以上の実施例1〜本実施例(実施例5)より、(i) CaO・Al2O3、5CaO・3Al2O3、12CaO・7Al2O3、9CaO・5Al2O3、2CaO・Al2O3、3CaO・Al2O3、(ii)これらの混合物の合成品、(iii)石灰(CaO)およびアルミナを主成分とし、二次精錬スラグの1種および2種以上を組み合わせて、固定剤として用いることにより、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグおよび二次精錬スラグのそれぞれからのフッ素溶出を確実に抑制できることがわかる。また、これら以外に、(iv)鉱物として存在するMayenite(12CaO・7Al2O3固定剤として用いることもできる。
【0088】
(実施例6)
冷却過程で粉化した二次精錬スラグは、微細な粒子であるため、同一重量において塊状スラグより表面積がはるかに大きい。このため、スラグ中のフッ素濃度の絶対値が低くても、溶出試験におけるフッ素溶出速度および溶出量は多くなり、フッ素の安定化は困難である。そこで、本実施例においては、より固定化が困難な粉状の二次精錬スラグについての実施例を示す。
【0089】
本発明にしたがい、粉状の二次精錬スラグ100 重量部に対して、粒度が250 μm以下150 μm超、150 μm以下100 μm超、100 μm以下32μm超、または32μm以下の4水準の CaO・Al 、12CaO・7Alまたは3CaO・Al 合成品の粉末を30重量部添加し、水の存在下で反応させた。
【0090】
得られた処理品について、平成3年環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行った。溶出液中のフッ素濃度と、 CaO・Al 、12CaO ・7Alまたは3CaO・Al の合成品の粒度との関係を図5にグラフで示す。
【0091】
図5に示すグラフから、スラグ粒度が150 μm以下であれば、溶出液中のフッ素濃度は、水質および地下水環境基準値である0.8 mg/Lを下回ることがわかる。
なお、フッ素の処理基準値が例えば2.4mg/L である場合には、スラグ粒度には関係なく、この処理基準値を満足することができる。
【0092】
(実施例7)
本発明にしたがい、粉状二次精錬スラグ100重量部に対して、粒度が150μm以下の二次精錬スラグを5〜100重量部添加し、水の存在下で反応させた。
【0093】
得られた処理品について、平成3年環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行った。二次精錬スラグの重量と粉状二次精錬スラグ重量との比と、溶出液中のフッ素濃度との関係を図6にグラフで示す。
【0094】
図6に示すグラフにおいて、二次精錬スラグの重量/粉状二次精錬スラグ重量の比が0.2以上であれば、溶出液中のフッ素濃度は、水質および地下水環境基準値である0.8mg/Lを下回ることがわかる。また、0.8超では、フッ素溶出の抑制効果は飽和している。なおCaO・Al2O3合成品、12CaO・7Al2O3合成品を用いた場合についても確認したが、同様の傾向であった。
【0095】
なお、フッ素の処理基準値が例えば2.4mg/L である場合には、固定剤重量/粉状二次精錬スラグ重量の値には関係なく、この処理基準値を満足することができる。
【0096】
(実施例8)
本発明にしたがい、粉状の二次精錬スラグ100 重量部に対して、粒度が150 μm以下のCaO・Al合成品の粉末を10重量部添加し、混合した後、適量の水を
加えて混練してから円柱状に成型した。その後、20℃、80℃ (エアバス中) 、120 ℃ (オートクレーブ中) で養生した。
【0097】
得られた処理品について、平成3年環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行った。溶出試験における溶出液中のフッ素濃度と養生時間との関係を、図7にグラフで示す。
【0098】
図7にグラフで示すように、80℃および120 ℃の養生温度において、短い養生時間で、溶出液中のフッ素濃度は、水質および地下水環境基準値である0.8 mg/Lを下回り、養生時間の経過とともに、溶出液中のフッ素濃度が低下したことがわかる。
なお、フッ素の処理基準値が例えば2.4mg/L である場合には、養生時間には関係なく、この処理基準値を満足することができる。
【0109】
(実施例9)
黒鉛発熱体を有する高周波炉により、二次精錬スラグにSiO2試薬またはFeO試薬を混合したものをマグネシアるつぼを用いて溶解した。これを徐冷した後、100μm以下に粉砕することにより、種々のSiO2濃度および鉄酸化物濃度を有する二次精錬スラグを得た。そして、得られた二次精錬スラグの5〜20重量部を溶銑予備処理スラグ100重量部に加えた。
【0110】
なお、溶解に用いた二次精錬スラグの組成は、F:1.3 重量%、CaO:49.8重量%、SiO:4.7重量%、Total Fe:1.6重量%、MgO:7.6 重量%、MnO:2.2 重量%、P:0.014重量%、S:0.14重量%であった。
【0111】
得られた処理品について、平成3年環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行った。溶出試験における溶出液中のフッ素濃度と二次精錬スラグ組成および添加量との関係を表8にまとめて示す。
【0112】
【表8】
Figure 0003620341
【0113】
表8に示す結果から、フッ素の処理基準値が例えば0.8mg/L である場合に、二次精錬スラグをフッ素固定剤として用いるためには、二次精錬スラグ中のSiO濃度は10重量%以下、より好適には5重量%以下とすることが望ましく、また、全酸化鉄濃度は5重量%以下、より好適には3重量%以下とすることが望ましいことがわかる。
【0114】
なお、フッ素の処理基準値が例えば2.4mg/L である場合には、二次精錬スラグ中のSiO濃度または酸化鉄濃度には関係なく、この処理基準値を満足することができる。
【0115】
(変形形態)
以上の各実施形態および実施例の説明では、産業廃棄物が製鋼スラグである場合を例にとった。しかし、本発明はかかる形態に限定されるものではなく、フッ素を含む産業廃棄物であれば等しく適用される。このような産業廃棄物としては、製鋼スラグ以外に、ステンレス鋼の酸洗スラッジ、Al精錬スラグ、瓦工場やりん肥料工場等から排出される残渣、都市ゴミダストまたは直接溶融炉から排出されるスラグおよびダスト等が例示される。
【0117】
以上詳細に説明したように本発明によれば、製鋼工程で不可避的に発生する溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグさらには二次精錬スラグといった、フッ素を含む製鋼スラグからのフッ素溶出を抑制し、確実に安定化処理することが可能となった。
また、この処理に際して低コストの二次精錬スラグを用いることもできるため、処理コストの上昇を可及的に低減できる。
【0118】
このように、本発明によれば、近年大きな社会問題とされている産業廃棄物 (とりわけ製鋼スラグ) を確実に処理し、環境汚染の防止を図ることができる。かかる効果を有する本発明の意義は、極めて著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の安定化処理方法により、塊状の製鋼スラグに安定化処理を施す状況を模式的に示す説明図である。
【図2】実施形態の安定化処理方法により、粉状の二次精錬スラグに安定化処理を施す状況を模式的に示す説明図である。
【図3】実施例1において、溶出液中のフッ素濃度と CaO・Al 、 12CaO・7 Al または3CaO・Al 合成品の粒度との関係を示すグラフである。
【図4】実施例2において、CaO ・Al 、 12CaO・7Alまたは3CaO・Al 合成品 (固定剤) の重量/溶銑予備処理スラグ重量の比と、溶出液中のフッ素濃度との関係を示すグラフである。
【図5】実施例6において、溶出液中のフッ素濃度と、 CaO・Al 、12CaO ・7Alまたは3CaO・Al の合成品の粒度との関係を示すグラフである。
【図6】
実施例7において、二次精錬スラグの重量と粉状二次精錬スラグ重量との比と、溶出液中のフッ素濃度との関係を示すグラフである。
【図7】実施例8において、溶出試験における溶出液中のフッ素濃度と養生時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1a:溶銑予備処理スラグ
1b:転炉スラグ
1c:電気炉スラグ
1d:二次精錬スラグ (塊状)
1d’ :二次精錬スラグ (粉状)
2:固定剤
2a:カルシウムアルミネート合成品またはその水和物
2b:天然鉱石
2c:二次精錬スラグ
3:混合装置
4:オートクレーブまたは蒸気養生装置
5:安定化処理品
6:混練および造粒の二つの機能を合わせ持つ機械
7, 7’:造粒物
8:セメント

Claims (3)

  1. フッ素を含む産業廃棄物に対して、CaO・Al2O3、5CaO・3Al2O3、12CaO・7Al2O3、9CaO・5Al2O3、2CaO・Al2O3若しくは3CaO・Al2O3、若しくはこれらの混合物を鉱物相として含むとともに最大粒径が150μm以下である固定剤の粉末を添加して、H2Oの存在下で前記フッ素を含む産業廃棄物と前記固定剤の粉末とを、 60 ℃以上に加温すること、蒸気養生を行って 80 ℃以上に加温すること、または、オートクレーブ処理を行って 100 ℃以上に加温加圧することによって前記フッ素を捕捉することを特徴とするフッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法。
  2. 前記フッ素を含む産業廃棄物は、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ、塊状若しくは粉状の二次精錬スラグ、ステンレス鋼の酸洗スラッジ、都市ゴミダストまたは、直接溶融炉から排出されるスラグおよびダストである請求項1に記載されたフッ素を含む産業廃棄物の安定化処理方法。
  3. CaO Al 2 O 3 5CaO 3Al 2 O 3 12CaO 7Al 2 O 3 9CaO 5Al 2 O 3 2CaO Al 2 O 3 若しくは 3CaO Al 2 O 3 、若しくはこれらの混合物を鉱物相として含むとともに最大粒径が 150 μm以下の粉末からなり、 H 2 O の存在下でフッ素を含む産業廃棄物とともに、 60 ℃以上に加温されること、蒸気養生を行って 80 ℃以上に加温されること、または、オートクレーブ処理を行って 100 ℃以上に加温加圧されることによって産業廃棄物に含まれるフッ素を捕捉することを特徴とするフッ素を含む産業廃棄物の安定化処理剤。
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