JP2008168289A - 重金属含有塩基性廃棄物の無害化処理方法 - Google Patents

重金属含有塩基性廃棄物の無害化処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】重金属、特にPbを含有する塩基性廃棄物(例、塩基性レンガ屑等の塩基性廃耐火物、塩基性スラグ、塩基性煤塵、塩基性汚泥)を、薬剤コスト不要の方法で、重金属の溶出が防止されるように無害化処理する。
【解決手段】重金属および/またはFを含有する粒度25mm以下の製鋼工場で発生した塩基性廃棄物を、鉄鋼製品の製造工程で排出された、3〜10質量%の鉄イオンを含有する無機酸である酸洗廃液と、混合後の液pHが8〜13の範囲内となる割合で混合した後、混合物を大気中で放置または加温して養生する。重金属は難溶性マグネタイト化合物として固定化され、その溶出が防止される。
【選択図】なし

Description

本発明は産業廃棄物の無害化処理方法に関し、より具体的には、廃棄物である酸洗廃液、すなわち廃酸を利用して、重金属を含有する固形または泥状の塩基性廃棄物を、重金属の溶出を防止するように無害化処理する方法に関する。
製鉄所、製鋼所等の鉄鋼業の事業所においては、重金属を含有する固形または泥状の塩基性廃棄物が発生する。例えば、製鉄所内の製鋼工場における取鍋や連続鋳造設備のタンディッシュの補修時に発生するレンガ屑や不定形耐火物の屑(産業廃棄物としては陶磁器屑に分類されるが、広義には廃耐火物である)、ならびに製鋼工場における精錬炉や取鍋や連続鋳造設備のタンディッシュ等で発生する製鋼スラグは、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物や炭酸塩を多量に含有し、強い塩基性を示すことが多い。また、製鋼工場の集塵機から出る廃水の水処理設備等からは、泥状の塩基性廃棄物が発生する。
固形の塩基性廃棄物は、例えばPb、Crのような重金属を含有していても、埋立て条件下での重金属の溶出濃度が「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下、「廃棄物処理法」という)に定められる埋立て基準値以下であれば、そのまま埋立て処分することができる。しかし、固形塩基性廃棄物が重金属を含有し、その溶出濃度が埋立て基準値を超える場合には、重金属が溶出しないように無害化処理してから埋立て処分する必要がある。重金属の溶出量は、固形塩基性廃棄物の粒径が小さいほど多くなり、従って一般に重金属を含有する固形塩基性廃棄物が微粒状または粉状であると、重金属の溶出を防止するための無害化処理が必要となることが多い。
スラッジのような泥状の塩基性廃棄物の場合には、わずかでも重金属を含有していると、周囲への重金属の溶出は避けられないことが多いので、溶出を防止するための無害化処理が一般に必要になる。
埋立て以外の塩基性廃棄物の処分法として、コスト面で採算がとれれば、路盤材、土木用材、セメント原料等に再利用される場合がある。しかし、廃棄物が重金属を含有している場合には、重金属の溶出濃度を土壌汚染に関する環境基準値以下にする必要があるため、このような再利用は一般に困難であり、埋立て処分せざるを得ないことが多い。
重金属を含有する固形塩基性廃棄物の無害化処理方法としては、特開平10−113641号公報に記載されているように、リン酸またはキレートを反応させて重金属を固定化する方法が知られている。
前者のリン酸を反応させて固定化する方法では、固形塩基性廃棄物にリン酸(リン酸2水素ナトリウムやリン酸水素2ナトリウムでもよい)を作用させると、次式に示すように廃棄物中のCaがリン酸イオンと反応して難溶性のアパタイトが生成することを利用した方法であり、そのためアパタイト法(以下、アパタイト法と呼ぶ)とも呼ばれる。
5Ca2++3PO4 3-+OH-→Ca5(PO4)3OH↓(アパタイト)
重金属(M)は、次式のようにアパタイト中のCaと置換し、金属アパタイト化合物を形成する。
5M2++Ca5(PO4)3OH→M5(PO4)3OH(金属アパタイト)+Ca2+
金属アパタイトは、溶解度が極めて小さいため、水が存在しても周囲にはほとんど溶出しない。
固形塩基性廃棄物がMgを含有している場合にも、上にCaについて示したのと同様の反応が起こる。
後者のキレートを反応させて固定化する方法(以下、キレート法と呼ぶ)では、各種のジチオカルバミン酸またはその塩が使用される。上記公報に記載されているように、このような化合物それ自体を使用することもできるが、高分子の側鎖にジチオカルバミン酸ナトリウム基(−NH−C(=S)SNa)を含有させたイオン交換樹脂が重金属イオン捕捉用のキレート樹脂として市販されており、それを利用することもできる。ただし、そのようなキレート樹脂は、排水中の重金属除去のような水処理における重金属の捕捉に使用するのには適しているが、固形または泥状の廃棄物には使用しにくい。
一方、鉄鋼業の事業所では、例えば、鋼材の脱スケール処理として塩酸や硫酸の希水溶液を利用した酸洗が行われることがあり、この酸洗により溶解した鉄イオンを含む廃酸が生ずる。
このような廃酸の有効活用に関して、特開昭60−90093および60−90094公報には、この廃酸を鋼滓と混和して中和することが開示されている。前者には廃酸中のCr6+がCr3+に無害化されることが記載されているが、固形塩基性廃棄物である鋼滓の微量重金属を無害化することについては全く記載がない。
特開昭58−156399号公報には、廃酸を鉄鋼スラグと混合して固化する廃酸の固化処理方法が開示されている。ただし、酸洗廃液の処理の場合には、石灰乳で中和した中和スラリーをスラグと混合して固化処理している。また、この処理では、酸洗廃液中のCdやPbが無害化されることが記載されているが、鉄鋼スラグの微量重金属を無害化することについては全く記載がない。
特開平10−113641号公報(請求項3、段落0028〜31) 特開昭60−90093号公報 特開昭60−90094号公報 特開昭58−156399号公報
本発明者らが特許文献1に記載のアパタイト法とキレート法を試験してみたところ、どちらの方法も固形塩基性廃棄物からPbなどの重金属を効果的に固定して、その溶出を抑止することができることがわかった。しかし、これらの方法はいずれも薬剤コストが高くなるという難点がある。
本発明の目的は、産業廃棄物である重金属を含有する固形または泥状の塩基性廃棄物を、重金属の溶出が防止されるように無害化処理することができる、安価に実施可能な方法を提供することである。
本発明者らは、薬剤コストをゼロにするために、廃棄物、特に鉄鋼製品の処理工程で排出される廃酸を利用して上記目的を達成することに着目した。その結果、酸洗工程から排出される酸洗廃液のような、鉄イオンを含有する廃酸により、重金属含有塩基性廃棄物を効果的に無害化処理できることを見出した。
ここに、本発明は、重金属を含有する固形または泥状の塩基性廃棄物を、鉄イオンを含有する無機酸と混合した後、混合物を養生することにより重金属を固定化することを特徴とする、塩基性廃棄物の無害化処理方法である。鉄イオンを含有する無機酸は、好ましくは酸洗廃液のような、鉄鋼業の事業所で発生する廃酸である。
廃酸中に溶解している鉄イオンは大部分が2価鉄イオンである。
本発明により塩基性廃棄物中の重金属が無害化されるメカニズムは、次の反応によるものではないかと推測される。
まず、廃棄物中の重金属(M)に無機酸中の2価鉄イオンが作用して、マグネタイト前駆体である水酸化物が生成する。
(3−x)Fe2++xM2++6OH- → Fe3-xx(OH)6
その後に養生(大気中でのエージングまたは加温)を行うと、水酸化物は、酸化反応および結晶化を経て、スピネル構造のフェライト、すなわち、マグネタイトが生成する。
2Fe3-xx(OH)6+O2→2MxFe3-x4+6H2
生成したマグネタイトは、一般に黒色外観を持つ難溶性の結晶質固体であって、強磁性を示す。こうして、塩基性廃棄物中の重金属が鉄イオンと反応して、廃棄物の内部または表面に結合した難溶性マグネタイトとなり、このマグネタイト内に重金属Mが固定化されることにより、重金属は廃棄物からの溶出が防止される。この反応は、固形廃棄物の粒径が小さければ、粒子内部まで鉄イオンが浸透して起こり、粒子内部まで重金属を固定化することができる。
廃棄物が重金属を含有する泥状物(スラッジ)である場合も、重金属と鉄イオンとの反応は上記と同じである。この場合には、上記反応によりスラッジ中の重金属が難溶性スピネル結晶質のマグネタイトになることにより、スラッジは養生中に固形化する。
このように鉄イオンと重金属との反応により難溶性マグネタイトを生成して重金属を固定化することは、水処理において排水中に溶解している重金属を除去する目的では知られている。しかし、固形物中または泥状物中の固体に含有されている重金属に適用することはこれまで試みられたことはなかった。また、そのような固体中に存在する重金属に鉄イオンが固体中を浸透して、固体内部まで重金属を固定できるということは、当業者といえでも予測することができないことである。
本発明は下記の態様を包含する。
・塩基性廃棄物が塩基性廃耐火物および塩基性スラグから選ばれる;
・塩基性廃棄物が粒度25mm以下の固形廃棄物である;
・塩基性廃棄物が製鋼工場から発生するものである;
・重金属がPbである;
・鉄イオンを含有する無機酸が鉄鋼製品の製造過程で発生した廃酸である;
・塩基性廃棄物と鉄イオンを含有する無機酸との混合を、得られた混合物のpH値が8.0以上、13.0未満となるように行う;
・無機酸の鉄イオン含有量が3〜10質量%である;
・塩基性廃棄物と鉄イオンを含有する無機酸との混合を、得られた混合物の含水比が17〜25%となるように加水して行う。
本発明によれば、レンガ屑などの廃耐火物、製鋼スラグ、汚泥といった、重金属を含有する固形または泥状の塩基性廃棄物を、鉄鋼製品の処理工程で排出される廃酸を利用して、薬剤コスト0円で無害化処理することができる。さらに、処理に用いる廃酸それ自体が一部は再利用されるものの、大半は産業廃棄物として中和により固形物化して埋め立て処分されているのが現状である。さらに、製鋼工場から発生する塩基性廃棄物に対し、同じ事業所において鉄鋼製品の処理工程で排出される廃酸の一部を本発明の処理に使用することにより、廃酸の処理コストも低減できるという、鉄鋼業にとって一石二鳥の経済的かつ環境に有益な効果が得られる。
重金属の無害化処理に従来から使用されてきたアパタイト法(リン酸を使用)やキレート処理法では、重金属含有塩基性廃棄物を1トン処理するのに薬剤コストが少なくとも数千円は必要であるが、本発明の方法では薬剤コストは0である。さらに、本発明の方法では、処理液として廃酸を使用することで、処理に用いた分の廃酸の処理コストが不要になる。塩基性廃棄物1トンについて、数百円分の廃酸の処理コストが不要になると見込まれる。
製鉄所や製鋼所等の鉄鋼業の事業所から発生する重金属含有塩基性廃棄物の量は膨大であり、実際に本発明による経済的効果をある製鉄所について試算したところ、薬剤コストが不要になることと廃酸の一部の処理費用が不要になることを合わせて、処理費用は従来の約1/3となり、大幅な経費節減に繋がることが判明した。
本発明の方法により無害化処理できる重金属を含有する固形または泥状の塩基性廃棄物は、無害化処理が必要なものであれば、特に制限されるものではない。
本発明において「廃棄物」とは、本発明の方法に従って処理することにより重金属の溶出が防止される結果、路盤材、土木用材やセメント原料等に再利用可能となるものも含み、有償または無償で廃棄物処理業者に引き取られて埋立てされるものだけに制限されない。
塩基性廃棄物の例としては、製鋼工場の取鍋や連続鋳造設備のタンディッシュのレンガ屑や不定形耐火物の屑といった製鋼設備で用いる塩基性の廃耐火物、製鋼工程の精錬炉や連続鋳造設備のタンディッシュ等で発生する塩基性スラグ、製鋼工場の集塵機から出る塩基性煤塵や廃水の水処理設備等で発生する塩基性汚泥等が挙げられる。また、製鋼工場以外から発生するものとして、例えば、焼却炉や鉛の精錬炉より発生する塩基性の廃耐火物、溶融スラグ、ダスト等が挙げられる。
塩基度の高いレンガ屑としては、特に製鋼工場の取鍋や連続鋳造設備のタンディッシュの内張りに用いられる塩基性耐火物(耐火レンガ)のレンガ屑、具体的には、カルシアやマグネシアやドロマイトを多量に含有する耐火レンガの屑がある。
塩基度の高い製鋼スラグとしては、脱リン・脱硫等の目的でフラックス成分としてCaOやMgOを添加した製鋼工程において生ずるスラグが挙げられる。CaOを添加した製鋼において生ずるスラグは、例えば、質量%で、CaO:30〜45%、Al23:5〜20%、SiO2:10〜25%の組成を有する。
廃棄物に含有される無害化処理が必要な重金属としては、Pb、Cr等が例示される。Pbは、例えば、棒鋼や線材等において、鋼の被削性を改善するためにごく少量が鋳造前の溶湯に添加されることがあり、その場合には周囲の耐火物およびスラグにPbが付着または混入する。Crは周知のように、鋼に強度向上等の目的で添加され、また、ステンレス鋼や耐熱鋼などの特殊鋼に合金元素として広く利用されている。
本発明による無害化処理方法の対象となる廃棄物は、重金属を含有する前述したような固形または泥状廃棄物のうち、塩基度が高いもの、すなわち、無機酸と混合した後も塩基性を示すものである。廃棄物自体が塩基性であることにより、前述の化学反応によってマグネタイト前駆体である水酸化物を生成させることができる。
上記2つの理由により、本発明の廃棄物の処理方法においては、塩基性廃棄物と鉄イオンを含有する無機酸と混合した後のpHは8.0以上、13.0未満とするのが望ましい。pHが8.0未満となると、後述のマグネタイトの前駆体である水酸化物を形成する反応が進みにくくなり、一方pHが13.0以上になると、スピネル構造のフェライト、すなわち難溶性のマグネタイトが生成しても、前述のpHが高すぎるために重金属の溶出が起こり、固定化効果が充分発揮できない。より望ましくは、塩基性廃棄物と鉄イオンを含有する無機酸と混合した後のpHは9.0以上、12.5以下とする。
上記pHは、本発明の方法により無害化した後に埋立て処分する場合には昭和48年2月17日環境庁告示第13号(ロ)に準じ、また本発明の方法により無害化した後に路盤材や土木用材に再利用する場合には平成3年8月23日環境庁告示第46号に準じ、廃棄物と無機酸の混合物に対し、その10倍の水と混合して測定を行うことにより得られた値である。
本発明により無害化処理する固形塩基性廃棄物は、酸の浸透性を考慮して、粒度が25mm以下のものであることが好ましい。泥状物の場合は、一般に粒度は非常に小さい。
製鋼工場で取鍋や連続鋳造設備のタンディッシュの補修により発生したレンガ屑の処理は、例えば、次のように行う。まず、レンガ屑を例えば粒径25mm以下に粉砕した後、フルイにより粗粒(例えば粒径が10mmを超え25mm以下)と微粒(例えば粒径が10mm以下)に分ける。そして、粗粒のレンガ屑と微粒のレンガ屑について、それぞれ重金属(例、Pb)の溶出量がどの程度であるかを調べる。重金属の溶出量は、産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(昭和48年2月17日環境庁告示第13号(ロ))に基づき、レンガ屑50gを室温の純水500gに6時間振とうした後、原子吸光法により定量分析して求める
分析により重金属の溶出量が廃棄物処理法により定められた埋立て基準値を下回ると判定されたレンガ屑については、そのまま埋立て処分することができる。一方、重金属の溶出量が埋立て基準値を上回るレンガ屑については無害化処理が必要であり、その処理を本発明の方法に従って実施すればよい。フルイにより粗粒と微粒に分けるのは、粉砕の際に通常重金属は微粒側に多く含まれる傾向があり、例えば、粒径が10mmを超える粗粒については、廃棄物処理法により定められた埋立て基準値を大幅に下回り、無害化処理せずに埋立て処分することができる場合が多いからである。その場合には、それより粒度の小さいレンガ屑のみを本発明に従って無害化処理すればよい。もちろん、粗粒であっても廃棄物中のPb含有量が高い場合には、本発明に従って無害化処理する必要があることは言うまでもない。
従って、本発明により無害化処理すべき固形塩基性廃棄物の粒度については、そのPb溶出量に応じて選択すればよく、このPbの溶出量は、廃棄物の粒度やPb含有量に依存する。埋立て処分した場合に地中への重金属の溶出量が廃棄物処理法に定められた埋立て基準値を満たすことができない廃棄物に対して、本発明に従って無害化処理を適用すると、Pbその他の重金属が固定化されて溶出が防止され、埋立て処分が可能となる。
塩基性スラグも、同様に、まず重金属の溶出量について分析し、そのままでは埋立て処分ができない塩基性スラグに本発明を適用して、重金属を固定化し無害化すればよい。
廃棄物が重金属を含有する汚泥である場合は、汚泥中の重金属は周囲に拡散するので、固形廃棄物のように粒度や重金属の溶出量によって選別することなく、原則として全量を無害化処理する。
本発明によれば、固形または泥状の塩基性廃棄物をまず鉄イオンを含有する無機酸と混合する。鉄イオンを含有する無機酸は、適当な無機酸(例、塩酸、硫酸など)に鉄を溶解して調製することができ、そのような無機酸も、もちろん使用可能である。しかし、そうすると処理液の調製に薬剤コストがかかる。本発明の好ましい方法では、鉄イオンを含有する無機酸として、鉄鋼製品の製造過程で発生した廃酸を使用することにより、薬剤コストをゼロにする。
好ましい廃酸は、鋼材の脱スケール処理の酸洗工程や、表面処理(例、めっき)の前処理として行われる酸洗工程で発生する酸洗廃液といった、鉄鋼業の事業所内で発生する廃酸である。酸洗は鋼材表面の酸化鉄を溶解・除去する目的で行われるので、廃酸にはかなり多量の鉄イオンを2価鉄イオンとして含有する。酸洗に使用される酸は、通常は塩酸または硫酸であるが、酸の種類はそれに制限されるものではない。
無機酸(好ましくは廃酸)中の鉄イオンの含有量は好ましくは3〜10質量%である。無機酸の鉄イオン濃度が低すぎると、廃棄物中の重金属の固定化効率が著しく低下する。一方、無機酸の鉄イオン濃度が10質量%を超えると、鉄イオンが析出することがあり、溶液が不安定化する。無機酸のより好ましい鉄イオン濃度は5〜8質量%の範囲である。廃酸を使用する場合、鉄イオン濃度が低すぎる場合には、鉄屑などの鉄分を投入し、必要であれば60℃前後に加温して溶解させることにより鉄イオン濃度を増大させることができる。
固形または泥状の塩基性廃棄物と鉄イオンを含有する無機酸、好ましくは廃酸、との混合は、適当な混合装置(例えば、パグミルまたはモルタルミキサー)のような装置を用いて実施することができる。混合装置としてミキサー車を用いる場合には、養生を行う場所までの運搬中に塩基性廃棄物と廃酸の混合を行うことができる。この場合には、廃酸(特に廃硫酸)を先に投入するとミキサー車内部を腐食するおそれがあるので、ミキサー車へは、塩基性廃棄物を投入した後に廃酸を投入するのが望ましい。また、ミキサー車を毎日洗浄することで、ミキサー車内部の腐食を防止することができる。塩基性廃棄物と廃酸の混合時間は、均一に混ざれば特に制限されない。混合物の流動性にもよるが、混合時間は通常は約5分間以上が好ましい。塩基性廃棄物の流動性が低い場合には、事前に廃酸とある程度混合した後に、ミキサー車に投入することで流動性を改善することができる。
廃酸を加えただけではその混合物の流動性が低い場合には、廃酸の他に水を微量に添加し、含水比を高めて流動性を確保するのが望ましい。混合物の好ましい含水比は、JISA 1203(土の含水比試験方法)に基づく測定値で17〜25%程度であり、より望ましくは17〜23%程度である。なお、混合時間や混合方法を調整して十分な混合効果が得られれば、含水比が低くてもよい。
廃酸の混合量は、混合後のpHが8.0以上、13.0未満となるような量とすることが好ましい。また、水を微量添加する場合にも混合後のpHは8.0以上、13.0未満となるような量とすることが好ましい。
この混合により、塩基性廃棄物中の重金属が廃酸中の鉄イオンと反応し、マグネタイトの前駆体となる鉄と重金属との複合水酸化物が生成する。この状態では、重金属は固定されていないが、その後に養生(大気中での放置)を行うと、この水酸化物が酸化反応し、難溶性のマグネタイト(スピネル結晶構造のフェライト)が生成し、重金属は溶出し難い形態となって固定化される。その後に水分(例、雨水)と接触しても重金属の溶出が防止されるので、こうして無害化処理された塩基性廃棄物はそのまま安全に埋立て処分することができる。
廃酸の混合量が多すぎて、pHが7.0より小さい酸性になるような多量の廃酸を混合すると、Pbのような重金属では処理後の溶出量が処理前より多くなる可能性がある。これからもわかるように、本発明の方法は、上記特許文献2、3に開示されているような、廃酸と塩基性廃棄物との単なる中和処理ではない。また、特許文献4に記載されているような廃酸の固化処理でもない。
廃酸と混合した塩基性廃棄物の養生は、通常は大気中で放置するだけで十分であるが、反応促進のために加温してもよい。養生は、マグネタイトが生成し、かつ水分が蒸発するように行う。大気放置の場合の放置期間は10時間以上とすることが好ましく、より好ましくは1日以上である。養生は屋外で行うこともできる。養生中に雨水がかかっても、重金属は固定されており再溶解することはない。加温する場合の加温温度は、例えば60〜80℃とすればよいが、それより低温または高温も可能である。ただし、100℃以下で十分である。養生の雰囲気は大気で十分であるが、他の酸素含有雰囲気とすることもできる。
養生中に廃棄物中の一部の成分(例、CaO、MgO)が大気中の炭酸ガスと反応して炭酸塩化することがある。生成した炭酸塩は一般に中性の不溶性化合物であるので、廃棄物の無害化に益はあっても、有害となることはない。
上記のように、廃酸の混合量は混合後の液pHが8.0以上となる量とすることが好ましく、従って廃酸の混合量は、塩基性廃棄物を湿潤させるといった程度の量である。重金属と反応しなかった廃酸中の酸イオンは、塩基性廃棄物中の塩基性成分(例、CaOやMgO)と反応して塩を形成する。
廃酸中の水分や、反応(鉄/重金属水酸化物の酸化によるマグネタイトの生成および廃酸の酸成分と廃棄物中の塩基性成分との中和)で生じた水分は、養生中に蒸発または化合水となる。それにより、廃酸の中和で生じた塩も、それが水溶性であっても固形物となる。中和反応で生成した塩は一般に廃棄物としての安全性に問題はない。
塩基性廃棄物が汚泥のような泥状物である場合も、上記と同様にして本発明の方法により無害化処理することができる。この場合、例えば、汚泥を廃酸と混合する段階ではなお泥状物の状態であるが、廃酸と混合した後に養生する間に、泥状物は固形化するので、扱いが容易となり、そのまま埋立て処分できるようになる。
本発明の方法に従って無害化処理された固形または泥状の塩基性廃棄物は、重金属が不溶性に変化し、かつ泥状物の場合は固形となり、養生後に埋立て処分して雨水と接触しても周囲に重金属が溶出することが防止されるので、安全に埋立て処分することができる。
以下、実施例により本発明の効果を例証する。実施例中、%は特に指定しない限り質量%を意味する。
(実施例1)
本例では、廃耐火物(レンガ屑)に含まれているPbの溶出防止効果を例示する。処理に用いたレンガ屑は、粒径25mm以下に粉砕した後、フルイにより粗粒(粒径が10mmを超え25mm以下)と微粒(粒径が10mm以下)に分け、粒径が10mm以下のもの(微粒)を試験対象とした。
まず、粒径が10mm以下のレンガ屑の山の表層と内部より、それぞれ約1kgをサンプリング混合し、50gを分取して、レンガ屑の成分を分析した。CaO:10.0%、MgO:14.0%、SiO2:28.9%、Al23:24.4%、FeO:8.0%が主成分で、TFe:10.5%、Pbを0.1%含有していた。
次に、産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(昭和48年2月17日環境庁告示第13号(ロ)に準じる)に基づき、各種処理を行う前のpHとPbの溶出量を求めた。すなわち、前記表層1kgのサンプルと、前記内部の1kgのサンプルについて、各々50gを純水500gと共に6時間振とうした後、上澄液をろ過し、ろ液のpHをpHメータにより測定してpHを求めた。また、Pbの溶出量は同じろ液を用いて原子吸光法により定量した。こうして求めた処理前のpHは12.1であり、Pbの溶出量は表層と内部のいずれも0.1mg/Lであった。この溶出量は、「廃棄物処理法」に定められる埋立て基準値である「0.1mg/L以下」をかろうじて満足するレベルであった。
本発明の処理方法として、レンガ屑を酸洗廃液である鉄イオンを含有する廃硫酸(鉄イオン約5%を含有、pH1)で処理した。前述の粒径10mm以下のレンガ屑約7トンをミキサー車に投入し、これにレンガ屑の5%または10%に相当する量の廃硫酸を加えて、ミキサー車のドラムを回転させて10分間混合した。この混合物をミキサー車から取り出し、山積みした。その山より約1kgの混合物をサンプリングし、処理前と同様のpH測定法、すなわち混合物50gを純水500gと共に6時間振とうした後、上澄液をろ過し、ろ液のpHをpHメータにより測定することでpHを測定した。混合物のpHは、廃硫酸量が5%の場合は11.8、10%の場合は11.5であった。山積みした混合物は、屋外にて24時間大気放置し、養生を行った。この養生中の降雨はなく、養生後に廃棄物の表面は乾燥していた。
こうして処理した混合物の山の表層と内部より、それぞれ約1kgサンプリングし、各々について混合物50gを純水500gと共に6時間振とうした後、上澄液をろ過し、ろ液中のPbを原子吸光法により定量した。
比較のために、従来法のアパタイト法およびキレート法によっても同じレンガ屑を処理した。処理方法は次の通りであった。
アパタイト法では、廃硫酸の代わりに、市販のリン酸系薬剤D902(栗田工業製アッシュナイト)を、レンガ屑の質量の1%の量で使用した以外は、上記の本発明の方法と同様に処理(混合と養生)を行った。
キレート法では、廃硫酸の代わりに、重金属固定用の市販のキレート薬剤L1(ミヨシ油脂製エポフロック)を、レンガ屑の質量の1%および1.5%の量で使用した以外は上記の本発明の方法と同様に処理(混合と養生)を行った。
本発明の処理方法の結果を、処理前のレンガ屑、ならびに従来法であるアパタイト法およびキレート法による処理結果と共に、表1にまとめて示す。なお、Pbの定量結果は、表層と内部の測定値の内、高い方の値を採用した。但し、表層と内部では大きな差はなかった。
Figure 2008168289
表1から判るように、本発明に従って処理を行うことにより、薬剤コストが必要な従来法と比較して、同等かあるいはさらに優れた重金属(Pb)の固定化溶出防止が達成でき、Pbの溶出量は「廃棄物処理法」に定められる埋立て基準値である「0.1mg/L以下」の1/10以下となった。
なお、Fの溶出値についても別途イオン電極法により定量したところ、3.2mg/L
と、Fについても埋立て基準値である15mg/L以下を充分に満たしていた。
さらに、上記廃硫酸にスクラップを溶解させて鉄イオン含有量を約10%に増大させたものを処理液として使用し、上記と同様に本発明に従ってレンガ屑を処理した場合にも、上の鉄イオン濃度が5%の廃硫酸処理液を用いた場合と同様の結果が得られた。
(実施例2)
本例は、製鋼工程にてPbを添加したPb含有塩基性製鋼スラグの無害化処理を例示する。処理に用いた製鋼スラグは、粒径25mm以下に粉砕した後、その全量を試験対象とした。
この製鋼スラグは、質量%で、CaO:35%、Al:14%、SiO:17%
、Pb:0.05%を含有していた。この製鋼スラグの各種処理を行う前のpHとPbの溶出量を実施例1と同様にして測定したところ、pHは12.5であり、Pbの溶出量は0.45mg/Lであり、「廃棄物処理法」に定められる埋立て基準値である「0.1mg/L以下」を満足していなかった。
上記製鋼スラグを実施例1と同様に廃硫酸(鉄イオン濃度約5%)により処理(混合と養生)および試験した。但し、廃硫酸と混合後に屋外に山積みにされた廃棄物の養生は、実施例1と同様に降雨のない条件下で24時間放置と、屋外に15日放置する(その間に累計26mmの降雨)の2条件で行った。処理液である廃硫酸の使用量は製鋼スラグに対して4%および8%の量とした。
比較のためのアパタイト法とキレート法も同様に行った。使用した薬液および製鋼スラグに対する薬液の使用量は、アパタイト法では1%および2%の市販のリン酸系薬剤D902(栗田工業製アッシュナイト)を、キレート法では1%の市販のキレート薬剤S81(栗田工業製アッシュナイト)とした。実施例1と同様にして実施した24時間の養生後の溶出試験における試験結果を表2にまとめて示す。
Figure 2008168289
表2に示すように、廃硫酸の混合量を製鋼スラグの質量の8%とした場合には、薬剤コストが必要な従来法と比較して、同等かあるいはさらに優れた重金属(Pb)の固定化溶出防止が達成でき、Pbの溶出量は「廃棄物処理法」に定められる埋立て基準値である「0.1mg/L以下」の1/10以下となった。また、屋外に15日間放置(その間に累計26mmの降雨)後に再度Pbの溶出量を測定しても、0.01mg/L未満と、その効果が継続されていることを確認した。
さらに、Fの溶出値について別途イオン電極法により定量したところ、4.7〜5.8mg/Lと、Fについても埋立て基準値である15mg/L以下を満たしていた。
一方、廃硫酸の混合量を製鋼スラグの質量の4%と低くした場合には、24時間の養生では0.06mg/Lと、上記埋立て基準値を満たす溶出防止効果は得られたものの、溶出防止効果の程度は小さかった。
(実施例3)
実施例1ではレンガ屑の質量に対して5%の廃硫酸の混合量で効果を得られたのに対し、実施例2では製鋼スラグの質量に対して4%の廃硫酸の混合量では効果が小さかった。これは、処理前のPbの溶出量が、前者では0.1mg/L、後者では0.45mg/Lであり、処理前のPbの溶出量の差が一つの原因であると考えられた。
この原因をさらに追求するため、JIS A 1101(コンクリートのスランプ試験方法)により、廃硫酸添加後のレンガ屑の混合物と廃硫酸添加後の製鋼スラグの混合物について流動性を比較したところ、前者のレンガ屑の混合物では流動性を示す指標であるスランプ値が20cmであるのに対して、後者の製鋼スラグの混合物ではスランプ値が5cmであり、レンガ屑の混合物に比べて製鋼スラグの混合物の流動性が低いことが判明した。さらに、含水比を、JIS A 1203(土の含水比試験方法)に基づき測定したところ、レンガ屑の混合物では含水比は20%であるのに対し、製鋼スラグの混合物では含水比は13%と低かった。
そこで、製鋼スラグとその質量の4%の廃硫酸を金属製トレイ内で混合し、さらに水を数%程度添加して、混合物の含水比を18%とした後、養生を行って、加水の効果を調査した。含水比は、JIS A 1203(土の含水比試験方法)に基づき測定した。本例での試験結果を実施例2の試験結果とともに表3に示す。
Figure 2008168289
表3に示すように、含水比を18%とした場合には、廃硫酸の混合量が製鋼スラグの質量の4%であっても、24時間の養生でPb溶出値は0.01mg/Lまで下がった。このように、処理前のPbの溶出量が0.45mg/Lと高いレベルの塩基性廃棄物であっても、含水比を調整することにより「廃棄物処理法」に定められる埋立て基準値である「0.1mg/L以下」の1/10程度まで低くすることが可能となる、良好な結果が得られた。
(実施例4)
本例は、製鋼工場の二次精錬設備より発生した重金属を含有する塩基性煤塵の無害化処理を例示する。この煤塵の主成分は、CaO、Al23、SiO2、Pb、TFeであり、その内のPbの含有量は1.4%であった。また、pHは実施例1に記載の方法で測定して10.6であった。
この煤塵を実施例1で使用したのと同じ約5%の鉄イオンを含有する廃硫酸と混合した。廃硫酸の混合量は煤塵の8%とし、さらに水を添加して含水比24%とした。混合物のpHは実施例1に記載の方法で測定して9.2であった。煤塵と廃硫酸との混合は、金属製トレイ内で行った。混合物を次いで屋内に24時間放置して養生した。
こうして無害化処理した煤塵について、Pbの溶出量を実施例1と同様に測定したところ、処理前は4.5mg/LであったPb溶出値が、処理後は0.03mg/Lに低減し、埋立て基準値である「0.1mg/L以下」を大きく下回っていた。また、処理前の煤塵は飛散性であったのに対し、処理後の煤塵は全体が固着し、飛散性がなくなっていた。
(実施例5)
本例は、ステンレス鋼の製鋼工程で発生したCr含有塩基性製鋼スラグのCr6+の溶出に対する無害化処理を例示する。処理に用いた製鋼スラグは粒径2mm以下と微粒であったため、粉砕せずにそのまま試験対象とした。約1kgをサンプリングし、さらにそれより50gを分取して、製鋼スラグの成分を分析したところ、CaO:41.8%、MgO:19.8%、SiO2:24.2%、Al23:9.2%、FeO:1.3%が主成分であり、Crを0.67%含有していた。
次に、「土壌の汚染に係わる環境基準について(平成3年8月23日環境庁告示第46号に準じる)」に基づき、各種処理を行う前のpHとCr6+の溶出量を求めた。すなわち、pH測定は、前記1kgのサンプルより50gを分取し、純水500gと混合し、塩酸でpH5.8〜6.3に調整したものを6時間振とうした後、上澄液をろ過し、ろ液のpHをpHメータにより測定することによって行った。Cr6+の溶出量は、同じろ液を用いて吸光光度法により定量した。こうして求めた処理前のpHは10.2であり、Cr6+の溶出量は0.19mg/Lであった。このCr6+の溶出量は「廃棄物処理法」に定められる埋立て基準値である「0.5mg/L以下」は満たしているものの、「土壌の汚染に係わる環境基準について」に定められる土壌環境基準値である「0.05mg/L以下」は満足していなかった。
上記製鋼スラグを200gずつ分取し、酸洗廃液である鉄イオンを含有する廃硫酸(鉄イオン約5%を含有、pH1)とビーカー内で混合した。処理液である廃硫酸の使用量は、製鋼スラグに対して、2%および4%の量とした。この混合物各々200gより50gを分取し、処理前と同様のpH測定法、すなわち純水500gと混合し、塩酸でpH5.8〜6.3に調整したものを6時間振とうした後、上澄液をろ過し、ろ液のpHをpHメータにより測定することにより混合物のpHを測定した。混合物のpHは、廃硫酸の使用量が2%の場合は9.7、4%の場合は9.3であった。
また、上記廃硫酸に代えて、酸洗に用いる前の鉄イオンを含有していない硫酸(以下、「新硫酸」という)を用いて、同様の処理を行った。処理液である新硫酸の使用量も、廃硫酸と同様、製鋼スラグに対して、2%および4%の量とした。混合物のpHは、新硫酸の使用量が2%の場合は9.9、4%の場合は9.8であった。
そして、これら4種類の混合物を、屋内に24時間大気中で放置して養生した。
こうして処理した4種類の混合物より、各々について混合物50gを分取し、純水500gと共に6時間振とうした後、上澄液をろ過し、ろ液中のCr6+を吸光光度法により定量した結果を表4に示す。
Figure 2008168289
表4から判るように、鉄イオンを含有する廃硫酸で処理を行えば、Cr6+の溶出量は、製鋼スラグの質量に対して処理液である廃硫酸の使用量を2%とした場合には0.05mg/L、4%とした場合には0.03mg/Lとなり、「土壌の汚染に係わる環境基準について」に定められる土壌環境基準値である「0.05mg/L以下」を満たすことができた。一方、鉄イオンを含有しない新硫酸で処理を行っても、Cr+6の溶出防止効果は得られないことが判る。
このように、本発明に従って処理を行えば、PbだけでなくCr6+に対しても固定化溶出防止効果が得られることは明らかである。
なお、以上、塩基性廃耐火物(レンガ屑)、塩基性スラグおよび塩基性煤塵に対して例証したが、泥状の塩基性廃棄物についても、同様の結果が得られることが予想できる。
また、上記の実施例では、本発明の処理方法により、Cr6+の溶出量は土壌環境基準値を、Pbの溶出量は埋立て基準値を達成することを示したが、Pbについても処理前の溶出量が低い場合には、「土壌の汚染に係わる環境基準について」に基づくPbの土壌環境基準値を達成することも可能であると予想できる。
さらに、上記実施例では、PbとCr6+に対して例証したが、CdやAs等、他の重金属に対しても同様の結果が得られることが予想できる。
以上に例証したように、本発明によれば、レンガ屑などの廃耐火物、製鋼スラグ、汚泥といった、重金属を含有する固形または泥状の塩基性廃棄物を、鉄鋼製品の処理工程で排出される廃酸を利用して、埋立て可能な状態に無害化処理することができ、その結果、従来のアパタイト法やキレート法で必要とされてきた薬剤コストを不要とすることができる。さらに、製鋼工場から発生する塩基性廃棄物に対し、同じ事業所において鉄鋼製品の処理工程で排出される廃酸の処理コストも削減できるという、鉄鋼業にとって一石二鳥の経済的かつ環境に有益な効果が得られる。
なお、本発明の重金属含有塩基性廃棄物の無害化処理方法の前工程または後工程として、公知のF(フッ素)の溶出防止方法を適用すれば、重金属だけでなくFも固定することができ、塩基性廃耐火物(レンガ屑)や塩基性スラグを、埋立てだけでなく路盤材や土木用材へ再利用することも期待できる。

Claims (9)

  1. 重金属を含有する固形もしくは泥状の塩基性廃棄物を、鉄イオンを含有する無機酸と混合した後、混合物を養生することにより重金属を固定化することを特徴とする、塩基性廃棄物の無害化処理方法。
  2. 塩基性廃棄物が塩基性廃耐火物および塩基性スラグから選ばれる、請求項1に記載の処理方法。
  3. 塩基性廃棄物が粒度25mm以下の固形廃棄物である、請求項1または2に記載の処理方法。
  4. 塩基性廃棄物が製鋼工場から発生するものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理方法。
  5. 重金属がPbである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の処理方法。
  6. 鉄イオンを含有する無機酸が鉄鋼製品の製造過程で発生した廃酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の処理方法。
  7. 塩基性廃棄物と鉄イオンを含有する無機酸との混合を、得られた混合物のpH値が8.0以上、13.0未満となるように行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の処理方法
  8. 無機酸の鉄イオン含有量が3〜10質量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の処理方法。
  9. 塩基性廃棄物と鉄イオンを含有する無機酸との混合を、得られた混合物の含水比が17〜25%となるように加水して行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の処理方法。
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