JP3576336B2 - 深絞りガスパック包装体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融状態で相溶性のない2種以上の樹脂をブレンドすることにより形成された、凝集破壊タイプのシール層を有する深絞りガスパック包装体に関する。特に、生鮮食品や加工食品の包装に適した、易開封性深絞りガスパック包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
生鮮食品や加工食品の包装には、ガスバリアー性の高いプラスチックフィルムを使用したさまざまな形態があるが、近年、賞味期限表示に伴う対応から鮮度保持や微生物制御などをする必要性があり、ガスパック包装が盛んになってきた。すなわち、ガスパック包装は、包装体内部の空気を脱気して、その代わりに二酸化炭素あるいは窒素などのガスを充填する包装技術であり、ガス置換することによって、内容物の保存性を高めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
さらに、深絞り形態のガスパック包装体においては、これを構成する蓋材および底材として複合フィルムが選ばれ、ガスバリアー性およびヒートシール性だけではなく、易開封性をも充足する、層構成が定められるようになった。例えば、全ヘーズが6%以下の複合フィルムで、シール層とその隣接する基材層との層間接着強度を、シール強度(ヒートシールしたシール層界面の接着強度)よりも弱くしたことを特徴とする層間剥離タイプの層構成が提案された。
【0004】
たしかに、これによって、包装体流通時には、密封性が保持されるだけでなく、被包装物取り出し時には、シール層と隣接基材層との間を剥離することができるので、再開封も容易なものが得られるようになった。しかし、この種の層間剥離タイプのシール層の問題点は、高温ではピール強度が低下する傾向にあることに起因し、ヒートシール時に熱せられたシール層が基材層との間で層間剥離を起こす点にある。しかも、ヒートシール時に熱板との接触不良によるシール不良等の欠陥が発生した場合、これを確認する手段がなく、シール不良のまま流通すると内容物が早く傷んでしまう危険性もあった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意検討した結果、溶融状態で相溶しない2種以上の樹脂をブレンドすることにより形成された、凝集破壊タイプのシール層を採用し、しかも適切な蓋材および底材を選択することによって、深絞りガスパック包装体において、ヒートシールされた部分の透明性がヒートシール前に比し明らかに向上し、底材および蓋材併せた全ヘーズが1〜7%となるようにした。従って、万一、シール不良があればその部分の透明性は向上していないので、不良位置を容易に確認することができる。また、流通時にシール部の剥離が発生すれば、その部分の透明性が低下するので、これも容易に確認することができる。
【0006】
すなわち、本発明は、複合フィルムからなる蓋材および底材とからなる深絞りガスパック包装体において、蓋材および底材を構成する複合フィルムのいずれか一方が、凝集破壊タイプのシール層を有する複合フィルムで、全ヘーズが10〜20%の範囲内にあり、他方の複合フィルムの全ヘーズが6%以下であり、これらをヒートシールすることにより、両者を併せた全ヘーズが1〜7%の範囲内にあることを特徴とする深絞りガスパック包装体に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の深絞りガスパック包装体は、内容物を収容するための蓋材および底材からなり、さらに該蓋材および該底材はいずれも複合フィルムによって構成される。しかして、蓋材および底材を構成する複合フィルムは、基本的には、包装体に密封性を付与するためのシール層とガスバリアー性等を付与するための基材層とからなる。本発明のシール層の材料としては、特に制限はなく、慣用のものから選択できるが、通常、コスト面、低温ヒートシール性の面から、厚み1〜50μmのポリオレフィン系樹脂が用いられる。
【0008】
しかし、本発明に用いる複合フィルムのシール層は、包装体に易開封性を付与するために、いずれか一方が、凝集破壊タイプであることが必要である。
一般に、一旦、シールされたガスパック包装体を、シールされた部分で再開封しようとするとき、複合フィルムの層構成によって、開封の際に破壊される部位を異にする。すなわち、シール層と隣接基材層との間で起こる、層間剥離タイプ、両シール層の界面で起こる、界面剥離タイプ、および一方のシール層内で起こる、凝集破壊タイプの3つに大別される。しかして、凝集破壊は、シール層を構成する材料の凝集力(ピール強度)が、隣接基材層との層間接着強度およびもう一方のシール層とヒートシールしたときのシール界面の強度(シール強度)のいずれよりも、十分に弱いときに起こる。
【0009】
従って、凝集破壊タイプのシール層としては、
(シール強度) > 凝集力(=ピール強度)
かつ (層間接着強度)> 凝集力(=ピール強度)
の条件を満たすことが必要であり、これら各種の強度は、いずれも、15mm幅の試験片を引っ張り試験機に設置し、引っ張り速度200mm/minのときの剥離強度を測定することによって得られる。ここで注意しなければならないのは、一方の複合フィルムが凝集破壊タイプのシール層を有するか否かは、同一複合フィルムの隣接基材層のみならず、シールすべき相手の複合フィルムのシール層が、どのような材料を選択しているかによっても異なることである。
【0010】
しかして、このような凝集破壊タイプのシール層は、実際には、溶融状態で相溶しない2種以上の樹脂のブレンド物、好ましくは2種以上のポリオレフィン系樹脂のブレンド物の中から適宜選択することによって実現される。また、2種以上のオレフィン系樹脂のブレンド物としては、具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率3〜15モル%)とポリブテン−1とのブレンド樹脂、エチレン−αオレフィン共重合体とポリブテン−1とのブレンド物、エチレン−αオレフィン共重合体とポリプロピレンとのブレンド物から選択することが好ましい。
【0011】
本発明においては、さらに、蓋材を構成する複合フィルムおよび底材を構成する複合フィルムのうち、上記凝集破壊タイプのシール層を有する複合フィルムの、基材層も含めた、全ヘーズが10〜20%の範囲内にあり、他方の複合フィルムの全ヘーズが6%以下であり、これらをヒートシールすることにより、底材および蓋材併せた全ヘーズで1〜7%の範囲内にあることが必要である。
ところで、本発明において、蓋材または底材を形成すべき、複合フィルムを構成する基材層は、慣用の種々の合成樹脂製基材層を選択することができる。具体的には、透明な剛性材料としてのA−PET樹脂、PET樹脂などからなる厚み10〜500μmの層、透明なガスバリアー性材料としてのEVOH、Kコートナイロン、ナイロン、ガラス蒸着プラスチックなどからなる厚み1〜50μmの層などが挙げられる。そのほか、これら材料の複合に際し使用される厚み1〜30μmの接着剤層などが挙げられる。例えば、前記シール層と基材層の間は、接着剤層で強固に結合することが好ましい。
【0012】
このような、基材層を含む複合フィルムにあって、シール層や接着剤層も含めた全ヘーズを6%以下とすることは、それほど困難なことではない。むしろ、複合フィルムとして、ヒートシール前の全へーズで10〜20%であり、ヒートシール後には、底材および蓋材併せた全ヘーズで1〜7%まで減少させることは、前記のようなシール層に使用する樹脂の選択によって、はじめて達成される。すなわち、シール層としてポリオレフィン系樹脂のブレンド物を選択することにより、基材層も含めた複合フィルムとして、ヒートシール前の全へーズで10〜20%であり、ヒートシール後には、底材および蓋材併せた全ヘーズで1〜7%まで減少させることができる。
【0013】
また、これら複合フィルムの製造方法には特に制限はない。例えば、これら各層は、それぞれ別個に適宜の技術によって製膜し、必要に応じ延伸したフィルムを、ラミネート、ドライラミネートによって複合フィルム化したものでもよいし、塗布によって、または共押し出しによって複合フィルム化したものでもよい。
【0014】
本発明の深絞りガスパック包装体は、前記の複合フィルムに深絞りの技術を適用し、所望の形状の蓋材および底材に賦形し、これに内容物を収容し、ヒートシールして製品化される。深絞りに際しては、底材フィルムの片面より熱板による接触加熱を行い、フィルム全体が十分な熱量を与えられ軟化した時点で、圧空または真空成形により、金型通りの成形品を得る。一方、収容すべき内容物としては、生肉などの生鮮食品、ハム、ソーセージ、ウインナー、ハンバーグなどの加工食品、その他惣菜、水産ねり製品などが挙げられる。
【0015】
【実施例】
以下、実施例および比較例に従って説明するが、本発明は、これら実施例によって制約されるものではない。また、以下の実施例および比較例で使用する用語および記号は、次の意味を有する。
Figure 0003576336
【0016】
[実施例1]
蓋材を構成する複合フィルムは、PETフィルムと、EVOH、Ny、ADおよびLDPEを、この順序で複合した共押出フィルムとを、ドライラミネートして準備した。ドライラミネートに際しては、複合フィルムのシール層を構成するLDPE層とは反対側にある、共押出フィルムのEVOH層が、接着剤を介してPETフィルムと接するように重ねた。また、各層の厚みは、次の通りであった。
PET 15μm
EVOH 5μm
Ny 10μm
AD 10μm
LDPE 30μm
【0017】
底材を構成する複合フィルムは、A−PETフィルムと、EVOH、Ny、ADおよびポリオレフィン系樹脂のブレンド物(EVAおよびPB−1を、重量比60:40の割合で混合したもの)を、この順序で複合した共押出フィルムとを、ドライラミネートして準備した。ドライラミネートに際しては、複合フィルムの凝集破壊タイプのシール層を構成するポリオレフィン系樹脂のブレンド物層とは反対側にある、共押出フィルムのEVOH層が、接着剤を介してA−PETフィルムと接するように重ねた。また、各層の厚みは、次の通りであった。
A−PET 300μm
EVOH 15μm
Ny 15μm
AD 10μm
樹脂ブレンド物 10μm
【0018】
上記複合フィルムからなる蓋材および底材を、深絞り賦形し、蓋材に設けられたシール層と底材に設けられた凝集破壊タイプのシール層が接するように重ねて、ヒートシールを行い、ガスパック包装体を得た。
なお、ヒートシール前における、上記蓋材および底材複合フィルムの全ヘーズを、JIS K6714のくもり価の測定方法によって測定した。ヒートシール後における包装体のヒートシール部の全ヘーズも同様にして測定した。これらの結果は、それぞれ、表1のシール前およびシール部の欄に示す通りである。
【0019】
[実施例2〜6]
実施例1において、表1に示すように、凝集破壊タイプのシール層の組成を変えた以外は、全く実施例1と同様にして、実施例2および3の包装体を得た。
また、実施例1〜3において、表1に示すように、蓋材に設けたシール層と、底材に設けた各種凝集破壊タイプのシール層とを入れ代え、しかも各層の厚みを少し変更した以外は、全く実施例1と同様にして、実施例4〜6の包装体を得た。
これらの実施例についても、実施例1と同様に、全ヘーズを測定し、その結果を表1に併せて示した。
【0020】
[比較例1]
蓋材を構成する複合フィルムは、PETフィルムと、KONyフィルムと、PPブレンド物(PPとタフマーを、重量比60:40の割合で混合したもの)およびLDPEの共押出フィルムとを、この順序でドライラミネートして準備した。ドライラミネートに際しては、複合フィルムのイージーピール層を構成するLDPE層とは反対側にある、共押出フィルムのPPブレンド物層が、接着剤を介してKONyフィルムと接するように重ねた。また、各層の厚みは、次の通りであった。
PET 15μm
KONy 16μm
ブレンド物 30μm
LDPE 3μm
【0021】
底材を構成する複合フィルムは、A−PETフィルムと、EVOH、Ny、ADおよびLDPEを、この順序で複合した共押出フィルムとを、ドライラミネートして準備した。ドライラミネートに際しては、複合フィルムのシール層を構成するLDPE層とは反対側にある、共押出フィルムのEVOH層が、接着剤を介してA−PETフィルムと接するように重ねた。また、各層の厚みは、次の通りであった。
A−PET 300μm
EVOH 15μm
Ny 15μm
AD 10μm
LDPE 10μm
【0022】
この比較例では、両シール層は同一の樹脂を使用したので、シール後の再開封の際、蓋材におけるLDPE層とPPブレンド物層との間で破壊が起こる、層間剥離タイプのシール層に相当することが判る。
この比較例についても、実施例1と同様に、全ヘーズを測定し、その結果を表1に併せて示した。
【0023】
【表1】
Figure 0003576336
【0024】
表1から、本発明複合フィルムである実施例1〜6は、シール前では、蓋材または底材のいずれか一方が、ヘーズ10〜20%の高ヘーズであるが、シール後には全ヘーズが5%以下となり、透明性が向上していることが判る。
これに対し、比較例は、凝集破壊タイプのシール層を有していないので、シール前後では、ヘーズに殆ど変化がないことが判る。
【0025】
【発明の効果】
本発明においては、2種以上のポリオレフィン系樹脂のブレンド物により形成された凝集破壊タイプのシール層を有しているので、その組成成分または混合比率を変えることによって、シール強度を調整できるとともに、10〜20%の高ヘーズにすることができる。一方、シール層とのヒートシールが適切に行われると、シール部が全ヘーズ1〜7%程度まで透明化する。従って、その透明性の変化により、シール不良を検知することが可能となった。

Claims (2)

  1. 複合フィルムからなる蓋材および底材とからなる深絞りガスパック包装体において、蓋材および底材を構成する複合フィルムのいずれか一方が、凝集破壊タイプのシール層を有する複合フィルムで、全ヘーズが10〜20%の範囲内にあり、他方の複合フィルムの全ヘーズが6%以下であり、これらをヒートシールすることにより、両者を併せた全ヘーズが1〜7%の範囲内にあることを特徴とする深絞りガスパック包装体。
  2. 上記凝集破壊タイプのシール層に使用する樹脂は、溶融状態で相溶性のない2種以上の樹脂をブレンドしたものであることを特徴とする請求項1記載の深絞りガスパック包装体。
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