JP3843188B2 - 深絞り成形用複合フィルム及びその製造方法 - Google Patents

深絞り成形用複合フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は深絞り包装体用途の複合フィルムに関し、特に電子レンジで加熱することができるガスパック包装体用途又はレトルト(加熱加圧殺菌)用途に好適な耐熱性を備えた複合フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
包装体の中に食品を入れ、窒素ガス等の不活性ガスを封入してシールするガスパック包装のための深絞り包装体には、成形性、耐低温衝撃性、密封性および酸素遮断性等の特性が要求される。特に電子レンジで加熱して使用される食品の包装体については、耐熱性も必要とされる。そこで、該電子レンジ用途の包装体は、耐熱性の高いポリプロピレン樹脂を支持層に用い、ガスバリアー層及びシール層を順次積層した構造の複合フィルムが用いられている。ガスバリアー層及びシール層は、個別のフィルムとして、あるいは共押出し法により複合フィルムへと成形された複合フィルムとして、ドライラミネート法によりポリプロピレン層に積層される。
【0003】
しかし、ドライラミネート法は通常ウレタン系の接着剤を使用し、該接着剤の残留溶剤が気泡となってラミネート強度を低下させ、及び溶剤臭により内容物の風味を損なうという問題がある。また、ポリプロピレン樹脂は、接着剤に対する塗れ性が悪い為、ラミネート処理に先立ち、表面をコロナ放電などにより処理する必要があるが、該表面処理により製造コストが高くなるだけでなく、処理の仕方に依存してラミネート強度が不足し、密封性や安定したイージーピール性を保持できない場合がある。
【0004】
これらのドライラミネート法における諸問題を解決する手段として、支持層、ガスバリアー層及びシール層を共押出しする方法がある。しかし、共押出し法には以下の不都合がある。すなわち、共押出し法では近年の包装体に対する多様化されたニーズ、例えば無機フィラーを添加して剛性を向上させる、又は顔料を添加して着色する等、に対応することは、生産性の著しい低下を招くため困難である。また、イージーピール層を設ける場合には、該層の厚みが1〜20μmと薄いため、約500μm程度の厚い支持層との流動バランスをとる都合上、イージーピール層として使用する樹脂の粘度が制限され、使用可能な樹脂が限られる。その結果、所望するイージーピール性が得られない場合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、ポリプロピレン樹脂を含む支持層、ガスバリアー層及びシール層が順次積層されてなる深絞り成形用フィルムにおいて、該支持層と該ガスバリアー層との間に、該支持層のポリプロピレン樹脂と熱融着性の樹脂を含む層をさらに備え、該熱融着性の樹脂を含む層は、その一の表面側が該支持層と熱融着されてなり且つ他の表面側が接着性樹脂層を介してガスバリアー層と積層されており、及び該支持層の厚みが100μm以上1000μm以下であることを特徴とする深絞り成形用複合フィルムに関する。前記熱融着性の樹脂がポリプロピレンホモポリマー樹脂またはポリプロピレン−ポリエチレンコポリマー樹脂であることが好ましい。また、前記シール層表面にイージーピール性樹脂層が施与されていることが好ましい。さらに、前記支持層が無機充填剤を含むことが好ましい。
【0006】
また、本発明は、ポリプロピレン樹脂を含む支持層、ガスバリアー層及びシール層が順次積層されてなる深絞り成形用フィルムの製造において、
(イ)該支持層のポリプロピレン樹脂と熱融着性の樹脂を含む層、ガスバリアー層及びシール層を共押出しして複合フィルムを調製し、
(ロ)前記複合フィルムとは別個に、支持層フィルムを厚みが100μ m 以上1000μm以下となるように押出して調製し、
(ハ)前記複合フィルムの前記熱融着性の樹脂を含む層と前記支持層フィルムとを熱融着させる、
ことを特徴とする深絞り成形用複合フィルムの製造方法にも関する。前記工程(ハ)が、工程(イ)及び(ロ)と連続的に行われることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、支持層はポリプロピレン樹脂を含む。該ポリプロピレン樹脂はポリプロピレンホモポリマーに限られず、他のポリマーとのコポリマーであってもよい。例えば、ポリエチレンとのコポリマー、プロピレンとα−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等とのコポリマー、が挙げられ、これらのブロックコポリマーまたはランダムコポリマーを使用することができる。耐熱性、成形性の点から、ポリプロピレン−ポリエチレン−ブロックコポリマーが好ましい。コモノマー量は10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下である。また、支持層の厚みには特に制限はないが、好ましくは100〜1,000μm、より好ましくは200〜800μmである。
【0008】
上記支持層は、タルク、シリカ、クレー等の無機フィラー、各種顔料等の添加剤を含有してもよい。タルク等の無機フィラーを添加することにより、耐熱性が向上されるので好ましい。添加量は、支持層の成形性が損なわれない範囲であれば任意であるが、好ましくは支持層全体の10〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%である。
【0009】
本発明の複合フィルムは、上記支持層とガスバリアー層とが、支持層のポリプロピレン樹脂と熱融着性の樹脂を含む層(以下「融着性樹脂層」ということがある)を介して積層されることを特徴とする。熱融着は、支持層ポリプロピレン樹脂層と熱融着性の樹脂層または該樹脂層を含む複合フィルムとを、それぞれ融点の20℃以上の温度に加熱して、ポリプロピレン樹脂面と熱融着性の樹脂面とを貼り合せて、2kg/cm2以上の圧力で圧着して行なう。冷却後における、双方の樹脂層界面の剥離強度は、典型的には1kg/cm2以上である。かかる熱融着を利用することにより、接着剤の使用を回避することができる。その結果、該接着剤に含まれる溶剤の気泡または臭気に起因する問題を回避することができる。また、支持層以外の層と、支持層とを別個に調製して、融着すればよいので、支持層に対する無機フィラーの添加等の修飾が容易であり、且つ該支持層との流動バランスを取るために要求されていた、イージーピール層に対する樹脂粘度上の制約がなくなる。
【0010】
熱融着性樹脂としては、上記ポリプロピレン樹脂と上述したような熱融着を実現することができる樹脂であれば任意の樹脂を用いることができるが、好ましくはポリプロピレンを含む樹脂であり、ポリプロピレンホモポリマー又は他のポリマーとのコポリマーが好ましい。コポリマーとしては、例えばポリプロピレン−ポリエチレン−コポリマーが好ましく、特にポリプロピレン−ポリエチレン−ランダムコポリマーは、好適な流動性を示すことから、好ましく使用される。最も好ましいのは、支持層と同種のポリプロピレン樹脂である。融着性樹脂層の厚みは、用途に応じて任意に設定することができるが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜20μmである。上記下限値よりも薄いと製膜が困難であり、一方上記上限値よりも厚いと押出しの際に流動バランスを取ることが困難となる。
【0011】
ガスバリアー層としては、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂等が好ましく用いられる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン含有量が30〜60%であることが好ましく、また、けんか度は部分的(水酸基88モル%)、中程度(同96%)、完全(98%)のいずれであってもよいが、物性及びガスバリアー性の点から95%以上のものが好ましい。ポリアミド樹脂としては、メタキシレンジアミン−6−ナイロン、ナイロン−6、ナイロン−6とナイロン−6,6との共重合体である6−6,6−ナイロン等が好ましく使用される。ガスバリアー層の厚みには特に制限はないが、好ましくは、10〜50μm、より好ましくは20〜40μmである。
【0012】
シール層としては直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」と称することがある)、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂(以下「PP」と称することがある)、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン樹脂共重合体、を使用することができる。透明性の点から、PP、LLDPEが好適に使用される。シール層の厚みには特に制限はないが、好ましくは、20〜100μm、好ましくは30〜80μmである。
【0013】
本発明の複合フィルムにおいては、シール層表面、すなわち蓋材とシールされる面、にイージーピール性を付与することが好ましい。ここで「イージーピール性」とは易剥離性を意味し、イージーピール性を有するフィルム(以下「イージーピール性フィルム」と略することがある)をシール層上に施与することにより、ガスパック包装体の蓋材の剥離が容易になる。好適な剥離を得るためには、イージーピール層と蓋材との剥離強度(15mm巾の試験片を切り取り、引張り試験機で測定する)が、100〜2,000gf/15mm巾であることが好ましく、より好ましくは200〜1,000 gf/15mmである。
【0014】
イージーピール性フィルムとしては、PP、LLDPEまたはこれらにポリブテン樹脂等をブレンドした樹脂が好ましく使用される。イージーピール層の厚みは、好ましくは、1〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。また、イージーピール層は、シール層と又はシール層及びガスバリアー層と共押出しすることによって付与することが好ましい。
【0015】
本発明は、支持層、ガスバリアー層及びシール層が順次積層された深絞り成形用複合フィルムを製造する方法にも関し、該方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
(イ)該支持層のポリプロピレン樹脂と熱融着性の樹脂を含む層、ガスバリアー層及びシール層を共押出しして複合フィルムを調製し、
(ロ)前記複合フィルムとは別個に支持層フィルムを押出して調製し、
(ハ)前記複合フィルムの前記融着性の樹脂を含む層と前記支持層フィルムとを熱融着させる。
【0016】
(イ)共押出しは、多層共押出しダイを用いて慣用の方法で行うことができる。その際、層と層とを確実に接着するために、接着性樹脂層を用いることが好ましい。該接着性樹脂層としては、変性ポリオレフィン樹脂、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はこれらの共重合体、もしくはこれらとα−オレフィンとの共重合体、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体等に、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フタル酸等の酸を反応させて得られる酸変性ポリオレフィン樹脂等、が好ましく用いられる。
【0017】
また、上記工程において、前記工程(ハ)が、工程(イ)及び(ロ)と連続的に且つインラインで行われることが好ましい。すなわち、共押出しした複合フィルムの融着性樹脂層表面と、該フィルムとは別個に、例えばTダイより押出した支持層表面とを、それぞれ押出し直後に貼り合せて熱融着する。熱融着方法としては、高温高圧のニップロールに通す等の公知の方法を使用することができる。
【0018】
【実施例】
1.実施例のフィルムの調製
表1に示す構成の複合フィルムを作成した。融着性樹脂層、ガスバリアー層及びシール層を3層共押出し機により共押出しして、得られた複合フィルムの融着性樹脂面と、別個にTダイで押出した直後の支持層フィルムとをニップロールを用いてインラインで貼り合せた。なお、表1中の略称は以下の樹脂を表す。PP:ポリプロピレン樹脂、LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン、EVOH:エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、MXD6NY:メタキシレンジアミン−6−ナイロン、EP:イージーピール性フィルム(PP 300μm/6・66−NY 10μm/EVOH 10μm/PEとポリブテンとの1:1ブレンド、厚み 7μm、三菱樹脂製)、AD:変性ポリオレフィン樹脂、UR:ウレタン系接着剤(溶剤:酢酸エチル)
2.比較例のフィルムの調製
表1に示す構成のフィルムを、比較例1はガスバリアー層及びシール層を共押出しして、比較例2はガスバリアー層、シール層及びイージーピール層を共押出しして、それぞれ複合フィルムを調製し、該複合フィルムと支持層とをドライラミネート(ウレタン系接着剤使用)した。
3.フィルムの評価
上記各フィルムを、MULTIVAC R530MC包装機を用いて底材へと成形した。また、蓋材は、共押出し法により調製した。底材に試験用のハンバーグを入れて、窒素ガス下、蓋材で覆い、150℃でヒートシールしてガスパック品を作成した。該パック品を電子レンジ(600W)で5分間加熱した後に開封し、官能試験により溶剤臭の有無を評価した。また、イージーピール層を有するものについて(実施例3、4及び比較例2)、蓋材とのシール部から15mm巾の試験片を切り取り、引張り試験機で剥離強度を測定して、200〜1,000 gf/15mmであるものを○とした。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
Figure 0003843188
いずれの実施例においても、開封時に不快な臭気がしなかった。一方、比較例1及び2では、開封の際明らかに酢酸エチル臭がした。また、実施例3及び4において、イージーピールフィルムの共押出しも何ら問題なく行うことができ、開封性も良好であった。さらに、実施例4におけるタルクの添加も、支持層押出機内で容易に行うことができた。
【0020】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の複合フィルムは、
(1)ドライラミネート法を使用せずに調製することができるので、支持層の前処理が不要であり、且つ残留溶剤による気泡及び臭気の問題が無い;
(2)支持層とそれ以外の層からなる複合フィルムとを別個に調製すればよいので、該支持層への無機フィラーの添加等の修飾を容易に行うことができ、またイージーピール層に対する粘度上の制限がなくなる;
(3)さらに支持層とそれ以外の層からなる複合フィルムとを連続してインラインで融着する場合には、高い生産性で製造することができる。

Claims (6)

  1. ポリプロピレン樹脂を含む支持層、ガスバリアー層及びシール層が順次積層されてなる深絞り成形用フィルムにおいて、該支持層と該ガスバリアー層との間に、該支持層のポリプロピレン樹脂と熱融着性の樹脂を含む層をさらに備え、該熱融着性の樹脂を含む層は、その一の表面側が該支持層と熱融着されてなり且つ他の表面側が接着性樹脂層を介してガスバリアー層と積層されており、及び該支持層の厚みが100μm以上1000μm以下であることを特徴とする深絞り成形用複合フィルム。
  2. 前記熱融着性の樹脂がポリプロピレンホモポリマー樹脂またはポリプロピレン−ポリエチレンコポリマー樹脂であることを特徴とする請求項1記載の深絞り成形用複合フィルム。
  3. 前記シール層表面にイージーピール性樹脂層が施与されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1つに記載の深絞り成形用複合フィルム。
  4. 前記支持層が無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の深絞り成形用複合フィルム。
  5. ポリプロピレン樹脂を含む支持層、ガスバリアー層及びシール層が順次積層されてなる深絞り成形用フィルムの製造において、
    (イ)該支持層のポリプロピレン樹脂と熱融着性の樹脂を含む層、ガスバリアー層及びシール層を共押出しして複合フィルムを調製し、
    (ロ)前記複合フィルムとは別個に、支持層フィルムを厚みが100μ m 以上1000μm以下となるように押出して調製し、
    (ハ)前記複合フィルムの前記熱融着性の樹脂を含む層と前記支持層フィルムとを熱融着させる、
    ことを特徴とする深絞り成形用複合フィルムの製造方法。
  6. 前記工程(ハ)が、工程(イ)及び(ロ)と連続的に行われることを特徴とする請求項5記載の方法。
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