JP3643449B2 - 多層フィルム、それからなる包装容器および包装製品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシール層とシール補助層からなるシール部を有する多層フィルムに関する。詳しくは、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィン(以下、「メタロセン触媒ポリオレフィン」と略称する。)から主としてなるシール層を有するフィルム成形性、シール性に優れた柔軟な多層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、メタロセン触媒ポリオレフィンはシール性、ホットタック性、透明性が優れているが、フィルム成形し難い欠点を有する。また、包装体の形態にも依るが、柔軟な多層フィルムとして使われる分野では、シール性、フィルム強度、耐熱性の点で不十分なものが多い。
このようなメタロセン触媒ポリオレフィンを使用した次の包装体が提案されている。特開平6−8383号公報(ベケレ)にはシール強度を改善したクックインフィルムが開示されている。このフィルムのシール層にはポリアミドのブレンド、芯層及び外層にはメタロセン触媒エチレン−ブテンコポリマーが使用され、少なくともシール層は架橋されている。特開平7ー1680号公報(ベケレ)には、エチレン、アクリル酸エステルおよびマレイン酸無水物とメタクリル酸グリシジルから選ばれた三元共重合体とエチレンービニルアルコール共重合体とのブレンド樹脂からなる酸素遮断層を少なくとも1層有する低酸素透過性フィルムで、シール層でない一方の表面層にメタロセン触媒ポリオレフィンをブレンドするものが開示されている。特開昭59ー143639号公報(オバール)には、第1の層(シール層)が第2の層(収縮層)より軟化点の高い、例えばプロピレンーエチレンランダム共重合体やアイオノマー樹脂からなり、第2の層(収縮層)は、配向させた場合に全体の多層フィルムの収縮温度がこの第2の層の収縮温度によって実質的に規制されるに十分な厚さを有する例えば同一厚みのエチレンと酢酸ビニル共重合体や線状低密度ポリエチレンからなり、第3の層(接着層)は変性されたポリエチレンからなり、第4の層(ガス不透過層)は加水分解されたエチレンー酢酸ビニル共重合体からなり、さらに第5の層(接着層)および第6の層(耐磨耗層)からなる6層収縮フィルムが開示されている。特開平6−210810号公報(ラメシュ)には、バックシームし得る多層フィルムの開示がある。 これはプロピレンを基とするコポリマーが約50重量%以上と約0.90g/cc未満の密度を有する均一系エチレンアルファーオレフィンコポリマーのブレンド物のヒートシーリング層を備える熱収縮性多層フィルムである。特開平6−320685号公報(大森等)には、ポリオレフィン系多層フィルムの開示がある。 ガスバリヤー性樹脂層とオレフィン系樹脂層からなり、オレフィン系樹脂が最内層と最外層の両方に配置される多分散度3未満のエチレン系共重合体と中間層のエチレンとメタクリル酸との共重合体であり、表面層より電子線照射される。特開平6−166157号公報(吉井)には、ガスバリヤー性樹脂、多分散度が2.5未満のメタロセン触媒ポリオレフィン系樹脂の多層中空プラスチックス製容器の開示がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はメタロセン触媒ポリオレフィンを使用し、フィルム成形性、シール性に優れた柔軟な多層フィルムを提供することにある。メタロセン触媒ポリオレフィンは、前記のような優れた特徴と共に、前記のような問題や欠点もある。 メタロセン触媒ポリオレフィンの大きな特徴としては、溶融張力が小さいことにある。また分子量分布が狭いため、溶融状態において分子の絡み合いが十分に起こらないので、フィルム成型時にメルトフラクチャが発生し易くフィルム表面性が低下するとともに、インフレーション法のバブル不安定、Tダイ法のドローレゾナンス性が低く、安定したフィルム成形が困難である。シール性も理想的なシール形状になればシール強度は強いが、一般的には最適シール条件範囲が狭いのでシール部の樹脂が流れ、薄くなって強度が発現し難い。メタロセン触媒ポリオレフィンの主鎖に長鎖分岐(Long Chain Branch)を選択的に導入したりして改善されるが、十分でない場合もある。
このように、メタロセン触媒ポリオレフィンをシール層に配置しただけではフィルム成形性、シール性に優れた柔軟な多層フィルムが得難く、更に改善の余地が残されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、結晶融点105〜145℃のメタロセン触媒ポリオレフィン90〜0質量%と、結晶融点70〜105℃未満のメタロセン触媒ポリオレフィン10〜100質量%(両者の合計は100質量%)とのメタロセン触媒ポリオレフィン単独またはメタロセン触媒ポリオレフィンを主成分とし、副成分との混合物からなるシール層と、分子中に酸素原子を含む少なくとも1種の単量体とエチレンとの共重合体を含むシール補助層とからなる多層フィルムであって、シール補助層を構成する共重合体の結晶融点がシール層を構成するメタロセン触媒ポリオレフィンの結晶融点より低く、該多層フィルムの2.5%伸度の引張割線弾性率が150〜450MPaである多層フィルムが、フィルム成形性、シール性に優れた柔軟な多層フィルムであることを見い出し、本発明に至った。
【0005】
本発明で使用されるメタロセン触媒ポリオレフィンの製造に用いられるメタロセン触媒とは、遷移金属をπ電子系の不飽和環状化合物で挟んだ構造を有する化合物からなる触媒を云う。金属の種類や配位子の構造を変え、特定の助触媒と組み合わせることにより、エチレン系、スチレン系、プロピレン系等各種ポリオレフィンの重合触媒として作用する。またメタロセン触媒は、Kaminsky触媒、Kaminsky−Sinn触媒、シングルサイト触媒、均一系触媒とも呼ばれる。メタロセン触媒の特徴は活性点の均一性にあり、生成するポリマーの分子量、分子量分布、組成、組成分布の均一性が高まる。例えばコモノマーの量が多いほど密度とともに融点も低くなり、フィルム強度や透明性が向上するが、耐熱性やフィルム成形性が低下する。メタロセン触媒ポリオレフィンによれば、コモノマーを主鎖に対して均一な分布で導入できるので、部分的に、特に低分子量分子にコモノマー含量が多くなるチーグラ触媒系と較べてフィルムにした際のべたつきなどの問題が生じ難く、袋に成形した場合、フィルム開口性のよい袋が得られる。「プラスチックス」Vol.44,No.10,P81,第17図には従来の触媒で重合したLLDPEとメタロセン触媒で重合したLLDPEの密度とコモノマー量との関係が図示されており、シングルサイト触媒品は同じコモノマー含量のマルチサイト触媒品に比べて密度が低いことがわかる。PPS Report No.53,October,1994,P7の図14にはチーグラー触媒LLDPEに較べたメタロセン触媒LLDPEの比重と融点の関係が示されており、コモノマー含有量が増加すると融点が大きく低下するメタロセン触媒LLDPEが示されている。また同頁2、図1にはATREF(Analytical Temperature Rising Elution Fractionation)法による溶出温度に対する溶出ポリマー分布の関係が示されており、メタロセン触媒LLDPEは溶出ポリマー分布が1ピークであるのに対し、チーグラー触媒によるLLDPEは溶出ポリマー分布が3ピークであることが示されている。
この内、拘束幾何触媒(constrained geometry catalyst)は、ダウ・ケミカル社が開発したメタロセン触媒の一種である。拘束幾何触媒を用いて得られるエチレン・α−オレフィン共重合体は、1000炭素数当たりの長鎖分岐の数が、好ましくは約0.01〜約3、より好ましくは約0.01〜約1、最も好ましくは約0.05〜約1の実質的に線状のポリエチレン系樹脂である。該エチレン・α−オレフィン共重合体は、分子構造中に約6炭素数以上の鎖状の長鎖分岐が選択的に導入されているため、ポリマーに優れた物性と良好な成形加工性が付与される。ダウ・ケミカル社からアフィニティーという商品名で販売され、α−オレフィンはオクテン−1である。
本発明はこのようなメタロセン触媒ポリオレフィンの特徴を生かし、成形性、シール性に優れた柔軟な多層フィルムを提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の多層フィルムを構成するシール層は、例えばインフレーションフィルムの内側層としたときに、密封(例えば、熱シールやクリップ等を含む機械的、物理的なシール)可能な樹脂層であり、シール補助層はシール層に隣接する樹脂層である。そしてシール層に配置するメタロセン触媒ポリオレフィンの特徴を生かし、且つ、その欠点を補うためにシール補助層を配するシール部を形成する。即ち、シール層のメタロセン触媒ポリオレフィンはシール性、ホットタック性、透明性に優れているが、その単独層だけでは十分な機能が得られず、押出加工性、フィルム成形性に難点があり、特にメタロセン触媒ポリオレフィンの最適シール条件の範囲が狭いためにシール強度が発現し難いので、前記のようなシール補助層の配置が望ましい。
拘束幾何触媒ポリオレフィンのエチレン・α−オレフィン共重合体のうち、密度0.895g/cm3 を超え0.906g/cm3 までの共重合体と密度0.908〜0.915g/cm3の共重合体の混合物がよく用いられる。α−オレフィンの含有量が12〜15質量%未満の共重合体と7質量%〜10質量%の共重合体の混合物である。α−オレフィン含有量が多過ぎて、密度が小さ過ぎるものは、フィルムに加工することが難しく(例えば、インフレーション成形加工におけるフィルム折り畳み時の皺が発生すると共に製袋性が低下する)、耐熱性が不足し、逆に、α−オレフィン含有量が少な過ぎ、密度が大き過ぎるものは、延伸加工性が難しく、高い熱収縮応力および熱収縮率が得難い。
【0007】
シール層は、メタロセン触媒ポリオレフィンを主成分とするが、好ましくはメタロセン触媒ポリオレフィンが50〜100質量%であることが望ましい。
シール層に配置されるメタロセン触媒ポリオレフィンとしては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ブテン系樹脂が用いられる。特にエチレン系樹脂としては、エチレンを主成分として副成分がプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などの炭素数10までのα−オレフィンとの共重合体が含まれ、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)などである。プロピレン系樹脂やブテン系樹脂としては、そのホモポリマーまたはエチレンや他のα−オレフィン、例えばプロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などから選ばれる単量体との共重合体であってもよい。特に、メタロセン触媒によるエチレン系樹脂は、シール性、ホットタック性、透明性が良いので、好んで選択される。
【0008】
包装体の形態による耐熱性、開口性が考慮される場合、メタロセン触媒ポリオレフィンの結晶融点を86℃以上にすることが好ましく、メタロセン触媒ポリオレフィンの結晶融点86℃未満を選択し混合する際には、その比率が40質量%以下であることが好ましい。
【0009】
シール層が混合樹脂からなる場合、メタロセン触媒ポリオレフィンのうち最多量を占めるメタロセン触媒ポリオレフィンの結晶融点が、シール補助層を構成する樹脂のうち最多量を占める樹脂の結晶融点より高いことが製袋性(シール性)を確保する上で好ましい。
【0010】
これらの特徴とフィルム成形性、耐熱性とを加味して、シール層は結晶融点105〜145℃、好ましくは105〜125℃のメタロセン触媒ポリオレフィン90〜0質量%、好ましくは90〜25質量%と、結晶融点70〜105℃未満、好ましくは86〜105℃未満のメタロセン触媒ポリオレフィン10〜100質量%(両者の合計は100質量%)、好ましくは10〜75質量%とのメタロセン触媒ポリオレフィン単独またはメタロセン触媒ポリオレフィンを主成分とし、副成分との混合物とする。特に、結晶融点が86〜100℃のメタロセン触媒ポリオレフィンを含めると一次加工や二次加工の場合にさらに好ましい。
本発明で用いるメタロセン触媒ポリオレフィンは重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)(多分散度)が好ましくは3未満、より好ましくは1.5〜2.8、更に好ましくは1.9〜2.2である。なお、多分散度は、ユニバーサルキャリブレーション法、すなわち、分子量既知のポリスチレンを標準物質としてGPC法によりMwおよびMnを測定することにより求めることが出来る。このようなメタロセン触媒ポリオレフィンを用いることにより、オリゴマーや低重合度のポリマーの含有量が少なく、フィルムにした際のべたつきを抑えることができる。
【0011】
熱収縮性多層フィルムである場合は、105〜145℃のメタロセン触媒ポリオレフィンを25質量%以上使用すると耐ボイル性、耐クッキング性がより改善されるので好ましい。結晶融点の測定はパーキンエルマー社製(PERKIN−ELMER)のDSCにより測定した。 他の触媒を使用して製造したポリオレフィンを混合してもよい。他の触媒を使用したポリオレフィンの混合量は、メタロセン触媒ポリオレフィンの優れたシール性やホットタック性等を発現させるため、好ましくは50質量%未満、より好ましくは40〜0質量%である。他の触媒により製造されたポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、LLDPE,VLDPE、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
熱収縮性多層フィルムの耐ボイル性、耐クッキング性の改善のために、特に、拘束幾何触媒ポリオレフィンを用いる場合、α−オレフィン含有量7〜10質量%、密度0.908〜0.915g/cm3の共重合体を、25質量%以上使用することが好ましい。
【0012】
拘束幾何触媒を用いて得られる線状のエチレン・α−オレフィン共重合体は、分子内に長鎖分岐を有し他のメタロセン触媒を用いて得られるポリエチレン系樹脂、例えば、エクソン社のイグザクト(EXACT)に比べ、広い加工範囲(剪断速度範囲)でメルトフラクチャーが発生し難い。このエチレン・α−オレフィン共重合体は、溶融粘度の剪断速度依存性が大きく、高剪断速度下で、溶融粘度低下が大きく、且つ、他の従来のメタロセン触媒を用いて得られるポリエチレン系樹脂に比べ、押出機のモーターのロードがあまり上昇せず、樹脂背圧が小さいなどの特徴がある。このエチレン・α−オレフィン共重合体は、メルトストレングスが大きく、製膜時のバブルプロセスでのバブルの安定性の点でも優れている。
【0013】
本発明のシール補助層は、シール層と接着性のよい樹脂からなり、また電子線照射により一次加工性、二次加工性、耐熱性が向上し、熱殺菌時の包装体の強度、冷間輸送時の包装体強度を低下させない樹脂からなることが好ましい。シール補助層の役割は、シール安定性、照射効果、延伸性を付与することである。シール補助層に用いられる樹脂は、シール層に配置されるメタロセン触媒ポリオレフィンの結晶融点より低く、分子中に酸素原子を含むエチレンと共重合可能な少なくとも1種の単量体とエチレンとの共重合体樹脂(含酸素エチレン共重合体)、またはそれらの混合樹脂からなっている。その例として、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸または前記不飽和酸の炭素数が1〜4のアルキルエステルとの共重合体樹脂、それらから誘導されるアイオノマー樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は混合して用いてもよい。また、前記の含酸素エチレン共重合体以外の樹脂と混合してもよいが、含酸素エチレン共重合体が主成分であることが好ましい。混合物の場合、前述のように最多量用いられている樹脂の結晶融点が、シール層を構成するメタロセン触媒ポリオレフィンの最多量のものの結晶融点より低いことが好ましい。
【0014】
前記共重合体樹脂としては、延伸成形性、耐熱性、電子線照射架橋性の点から、エチレン含量80〜95質量%のエチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルから選ばれた少なくとも1種の単量体20〜5質量%との共重合体、またはそれらの混合物が好ましい。なお、シール補助層にもフィルムの透明性を阻害しない程度に、メタロセン触媒ポリオレフィンやエチレン・α−オレフィン共重合体を添加してもよい。
シール補助層の共重合体樹脂としては、エチレンと酢酸ビニル共重合体は比較的安価であるので、好適に使用される。
【0015】
電子線照射架橋する場合は、通常、シール補助層を介してシール層とは反対側にある最外層の側から行われる。例えば多層フィルムを共押出しで製造する場合、シール層を最内層とした筒状溶融体(パリソン)を得て、このパリソンを急冷、あるいは急冷せずに、平らにし、電子線照射を行う。電子線の照射線量は約2〜約20メガラッド(メガラッド=100万ラッド=10kGy)である。
また、シール補助層を含むフィルムを電子線照射しておき、これに他の層を積層してもよい。電子線照射により、少なくともシール補助層が架橋されていることが望ましい。樹脂の種類により架橋効果は異なるが、例えばシール補助層として用いられるエチレン・酢酸ビニル共重合体などはα−オレフィンより照射効率がよい。シール補助層以外の層については電子線照射により架橋されていても、いなくてもよい。
後記するように本発明の多層フィルムがガスバリヤー層を有し、ガスバリヤー層を含めて照射される場合、ガスバリヤー性樹脂として塩化ビニリデン共重合体を用いると黄褐色味が増すが、グリセリン脂肪酸エステルなどの添加剤によって変色を抑えることができる。
α線、β線、γ線、電子線、X線は電離性放射線の一種であるが、架橋効果の観点および取り扱いが容易であることから電子線が特に好ましい。照射条件は、電子線の場合は、加速電圧が150〜500kV、照射線量が10〜200kGyの範囲が好ましい。
【0016】
シール補助層の厚みは、シール層の主体であるメタロセン触媒ポリオレフィンの溶融張力が小さいこと、照射架橋の効果をシール補助層に付加することを考慮して、シール層より大きく、好ましくはシール層の約1.5〜約2.5倍である。一方、シール層の厚みは3μm程度まで薄くすることができ、高価なメタロセン触媒ポリオレフィンを使用することによる多層フィルムの価格にとっても有利になる。また、シール層の厚みは押出加工性の点から、好ましくは多層フィルム全体の厚みの半分未満、更に好ましくは20μm以下である。
【0017】
メタロセン触媒ポリオレフィンの特徴を十分に生かすために、シール部を形成することにより、柔軟な多層フィルムが使用される多くの分野でフィルム成形性を改善し、押出し加工性、延伸成形性、高速製袋(シール)性、シール強度などの一次加工性、また深絞り加工やスキンパック加工などの二次加工性、食品包装時のドリップ流出を抑えるための熱収縮性、熱殺菌のための耐ボイル性、調理のための耐クッキング性などを得ることができる。
【0018】
最外層はシール補助層を介してシール層の反対側に位置する。最外層はシール時のシールバーに粘着し難いことが、連続的にシールする自動包装機や高速製袋機を使用する場合には重要である。本発明の多層フィルムの場合、最外層に使用する樹脂は、密度が0.900g/cm3以下のメタロセン触媒ポリオレフィンを含まないことが好ましく、更にアイオノマー樹脂、延伸成形する際に結晶配向性の小さいプロピレンとエチレンランダム共重合体も好ましくない。熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレンとビニルアルコール共重合体、チーグラー触媒のα−オレフィン、例えば線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸またはそれら不飽和酸のアルキルエステルとの共重合体などのメタロセン触媒ポリオレフィン以外のエチレン系樹脂を最外層に使用すれば、連続的なシール性に優れた柔軟な多層フィルムが得られる。
メタロセン触媒ポリオレフィンのうち拘束幾何触媒ポリオレフィン、特に、α−オレフィンがオクテン−1である場合、オクテン−1含有量12〜15質量%未満、密度0.895を超え0.905g/cm3迄の共重合体と、オクテン−1含有量7〜10質量%、密度0.908〜0.915g/cm3の共重合体との混合物である場合、シール層のみならず、他の層、例えば中間層、最外層に用いることができる。
更に、スリップ剤を比較的多く添加しなくても延伸加工時のフィルム折り畳み時の皺発生の頻度が非常に少なく、製袋性が低下しないばかりか、高い熱収縮応力および熱収縮率、耐熱性を有する多層フィルムが得られる。
【0019】
本発明の多層フィルムには、シール層およびシール補助層以外の層に、特に好ましくは中間層の少なくとも一層にガスバリヤー層が含まれていてもよい。ガスバリヤー層としては、例えば塩化ビニリデン共重合体、エチレンとビニルアルコール共重合体、メタキシリレンジアミンとアジピン酸の重縮合により生成されるポリアミドやテレフタル酸およびイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンより生成されるポリアミドなどの芳香族ナイロンおよび非晶質ナイロン、アクリロニトリルを主成分とする共重合樹脂などから選択される。また塩化ビニリデン共重合体を主体とし、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸またはそれら不飽和酸のアルキルエステルとの共重合体、またはMBS樹脂から選ばれた少なくとも1種の共重合体などの混合樹脂組成物、ケン化度が95モル%以上のエチレンとビニルアルコール共重合体を主体とし、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレンと酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸エステル共重合体、ケン化度が95モル%未満のエチレンとビニルアルコール共重合体などとの混合樹脂組成物、前記芳香族ナイロンや非晶質ナイロンと脂肪族ナイロンなどとの混合樹脂組成物も含まれる。また、特に柔軟性が要求される場合、エチレンとビニルアルコール共重合体系が選択されるが、塩化ビニリデン共重合体系が最も好ましい。ガスバリヤー層の厚みは、包装体に要求されるガスバリヤー性の程度に応じて適宜選択される。塩化ビニリデンと共押出しする場合には、その層の厚みは熱安定性と耐寒性からフィルム総厚みの30%以下が好ましい。
塩化ビニリデン共重合体は、塩化ビニリデンと塩化ビニリデンに共重合可能な少なくとも1種のモノエチレン系不飽和単量体との共重合体を含む。共重合体中のモノエチレン系不飽和単量体の量は40〜2質量%、押出加工性とガスバリヤー性とのバランスから好ましくは35〜4質量%である。モノエチレン系不飽和単量体としては塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリルニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、ビニルアルキルエーテル、ビニルアルキルケトン、アクロレイン、アリルエステルおよびエーテル、ブタジエンまたはクロロプレンを含む。三元、四元以上の共重合体であってもよい。好ましくは塩化ビニル、アルキル基の炭素数1〜8個を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートとしてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートが好ましい。押出加工性を改善するために、重量平均分子量の異なる公知の塩化ビニリデンを混合したものを使用してもよい。重量平均分子量7万以下のものを30質量%以下混合することが好ましい。
【0020】
接着層は接着力が十分でない場合に各層間に配置される。接着樹脂としては、熱可塑性重合体、共重合体、三元共重合体およびこれらの樹脂の不飽和カルボン酸変性物もしくは該酸変性物の金属変性物など、ならびにこれらを含む混合物が好ましい。例えば、エチレンと酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸エチル共重合体、およびマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸またはこれらの無水物などで変性されたオレフィン共重合体、熱可塑性ポリウレタンエラストマーのブレンド樹脂などがある。その厚みは5μm以下、更に好ましくは1〜3μmである。特に接着層を構成する樹脂が無水物などで変性されたもの、例えば、無水マレイン酸をグラフト化したものは、樹脂凝集力が弱く、樹脂価格も高価であるので、厚みを薄く抑えることが望ましい。シール層とシール補助層の間に接着層を配置してもよい。シール補助層そのものが接着層の役割をしてもよい。しかしながら、シール層とシール補助層の間の接着力が本発明の効果を有する程度に必要である。
【0021】
その他、多層フィルムに使用する樹脂として、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂がある。これらの樹脂層を用いることにより本発明の多層フィルムで採用する前記のシール部と併せて、更に高製袋性、耐熱性に優れた多層フィルムにすることができる。柔軟な多層フィルムを得るにはポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂を中間層に配置するとよいが、最外層に配置するときは0.5〜3μmの厚みにすることが好ましい。最外層が厚すぎるとガスバリヤー層との界面などで剥離し易く、フィルム成形性をともに満足するには多層フィルムの2.5%伸度の引張割線弾性率が150〜450MPaの範囲であることが必要であり、フィルム厚みが30μm以上のときでも2.5%伸度の引張割線弾性率は150〜450MPaの範囲であり、好ましくは150〜400MPaである。
【0022】
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6−9(以下共重合ナイロンを示す)、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン6−66、ナイロン6−69、ナイロン6−66−610などから選ばれた少なくとも1種の脂肪族ナイロン、ヘキサメチレンジアミンと芳香族二塩基酸を含む芳香族ナイロンおよび非晶質ナイロンが使用される。
【0023】
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、酸成分が芳香族二塩基酸から選ばれ、代表的なものとしてテレフタル酸、イソフタル酸があり、グリコール成分が脂肪族グリコール、脂環族グリコールまたは芳香族グリコールから選ばれたグリコール残基からなり、代表的なものとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどである。本発明の多層フィルムには、酸成分またはグリコール成分が、二成分系または三成分系の共重合ポリエステルが好んで使用される。
【0024】
前記ポリアミド樹脂や熱可塑性ポリエステル樹脂には、必要に応じて熱可塑性ポリウレタン系樹脂などの樹脂を混合してもよい。なおガスバリヤー層として塩化ビニリデン共重合体と共押出しする場合には、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶融点が200℃以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の目的を損なわない程度に本発明の多層フィルムを構成する各層の樹脂には、加工添加剤、界面活性剤(防曇性、スリップ性などを付与するもの)、帯電防止剤が含まれてもよい。また、加工肉などの食品と密着性を上げるために、シール層側や最外層側からコロナ放電処理を行ってもよい。
フィルムの滑り性を向上させるために、それぞれの表面層に滑剤を適量添加してもよいが、その好ましい滑剤の例としては、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、シリカ等を挙げることができる。これらの滑剤は、通常マスターバッチの形で加える。その好ましい添加量は、表面層に対して、滑剤20質量%含有マスターバッチの場合、1〜10質量%である。なお、表面層を選択すれば、滑剤の添加量をごく少量にするか、無添加とすることができる。
【0026】
リサイクルの観点から、本発明の特性を阻害しない程度にメタロセン触媒ポリオレフィンを含む多層フィルムの粉砕品を各層に混合あるいは独立層として配置してもよい。通常、粉砕品はシール性やフィルム外観を考慮して、シール層、最外層以外の中間層に用いられる。メタロセン触媒ポリオレフィンの溶融張力が小さいので、塩化ビニリデン共重合体やエチレンとビニルアルコール共重合体に混合されると、押出機やダイ金型内の流動性が改善されてフィルムの厚みの均一性が得易い。ガスバリヤー層の樹脂に前記粉砕品を混合する場合、ガスバリヤー性や透明性の要求レベルによるが、混合比率を好ましくは約10質量%以下に、更に好ましくは約5%以下とする。またガスバリヤー層には、例えば塩化ビニリデン共重合体層に他の塩化ビニリデン共重合体の単層フィルムの粉砕品を混合あるいは独立層として配置してもよい。
【0027】
本発明の多層フィルムの製造は共押出法が一般的であるが、押出被覆法、ラミネート法、これらの組み合わせによっても得られる。また、本発明の多層フィルムはパウチ、バッグ形態の袋物類、深絞り成形による底材や蓋材、骨付き肉の充填前の保護用フィルム等の包装容器の素材として用いることができる。更に、多層フィルムを使用してアルミ蒸着、シリカ蒸着などを施した別のフィルム、シートを積層して新たな包装材料としてもよい。
【0028】
本発明の多層フィルムは、複数の押出機を使用して、各材料から共押出法により共押出パリソンを押出し、公知のダブルバブルプロセス方式で延伸加工することができる。延伸配向して熱収縮性を付与した本発明の多層フィルムは、共押出しインフレーション法、Tダイによる延伸法などで作製され、食品包装用として好適に用いられる。その収縮率はそれぞれの使用分野で異なるが、例えば生肉包装の低温熱収縮は70℃で長手方向、幅方向に少なくとも約30%、加工肉包装の熱殺菌は90〜95℃で約25〜約50%、トレー包装の乾熱加熱による収縮は100℃で約35〜約50%である。これらの用途における多層フィルムとしては、その総厚みは10〜120μm、更には20〜100μmであることが好ましい。
多層フィルムの層構成を例示するとシール層側から最外層側へ向かって、(1)表面層/シール補助層/ガスバリヤー層/表面層、(2)表面層/シール補助層/ガスバリヤー層/中間層/表面層、(3)表面層/シール補助層/接着剤/(ガスバリヤー層/接着剤/)中間層/表面層、などが挙げられる。
【0029】
本発明の多層フィルムを製造する際のフィルム成形性を満足するには、多層フィルム全体の2.5%伸度の引張割線弾性率が150〜450MPaの範囲であることが必要であり、フィルム厚みが30μm以上の場合は、2.5%伸度の引張割線弾性率が150〜400MPaであることが好ましい。良好な成形性とは、押出加工が安定して行えること、延伸成形もトラブルなくできることを意味する。その結果均一な肉厚みのフィルムが得られる。フィルムが均一な肉厚みであれば、高速製袋性につながる。多層フィルムの2.5%伸度の引張割線弾性率が150〜450MPaの範囲であるとこれらの特性が得られ易く、更に、フィルムが柔らか過ぎ、硬すぎもなく内容物充填の取扱いがよく、また自動包装機械にも掛かり易い。
【0030】
【実施例】
以下、実施例につき説明するが、本発明の範囲内である限り本実施例に制限されるものではない。
【0031】
実施例および比較例には、次の樹脂を使用した。なお、メタロセン触媒による下記エチレン・α−オレフィン共重合体の多分散度は、何れも3未満である。
またメルトインデックス(MI)は190℃、2.16kg荷重による。更にまた、「部」は「質量部」を示す。
(1)MePE−1:メタロセン触媒によるエチレン・ヘキセン−1共重合体(エクソン社製「イグザクト9017」,結晶融点112℃,MI/3.0,密度0.920g/cm3)
(2)MePE−2:メタロセン触媒(拘束幾何触媒)によるエチレン・オクテン−1共重合体(ダウケミカル社製「アフィニティーFM1570」,結晶融点108℃,MI/1.0,密度0.915g/cm3)、分子量分布Mw/Mnは1.9〜2.2の範囲である。
(3)MePE−3:メタロセン触媒(拘束幾何触媒)によるエチレン・オクテン−1共重合体(ダウケミカル社製「アフィニティーPL1880」,結晶融点100℃,MI/1.0,密度0.902g/cm3)、分子量分布Mw/Mnは1.9〜2.2の範囲である。
(4)MePE−4:メタロセン触媒によるエチレン・ブテン−1共重合体(エクソン社製「イグザクト3010C」,結晶融点87℃,MI/3.5,密度0.900g/cm3)
(5)MePE−5:メタロセン触媒によるエチレン・ブテン−1共重合体(エクソン社製「イグザクト4011」,結晶融点78℃,MI/2.2,密度0.885g/cm3)
(6)EVA−1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量6質量%,結晶融点96℃,MI/3.3)
(7)EVA−2:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量10質量%,結晶融点91℃,MI/1.5)
(8)EVA−3:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量15質量%,結晶融点84℃,MI/1.5)
(9)EVA−4:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量15質量%,結晶融点82℃,MI/4.2)
(10)EVA−5:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量25質量%,結晶融点70℃,MI/2)
(11)M−EVA:カルボン酸変性のエチレン・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体
(12)EEA−1:エチレン・エチルアクリレート共重合体(エチルアクリレート含量7質量%,結晶融点97℃,MI/1.5)
(13)EEA−2:エチレン・エチルアクリレート共重合体(エチルアクリレート含量15質量%,結晶融点85℃,MI/1.5)
(14)VLDPE:エチレン・ブテン−1共重合体(密度0.902,結晶融点115℃,MI/2.0)
(15)LLDPE:エチレン・4−メチルペンテン−1共重合体(密度0.922g/cm3,結晶融点120℃,MI/2.1)
(16)PP:ポリプロピレン・エチレンランダム共重合体(エチレン含量7質量%,結晶融点137℃)
(17)IO:アイオノマー(Naタイプ,結晶融点87℃)
(18)PVDC−1:塩化ビニリデン共重合体100質量部に安定剤と可塑剤を各5質量部からなる
(19)PVDC−2:塩化ビニリデン共重合体100質量部にエチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル28質量%)を3質量部および安定剤と可塑剤を各5質量部混合
(20)EVOH−1:エチレン・ビニルアルコール共重合体(エチレン含量44モル%,ケン化度99%)
(21)EVOH−2:EVOH−1の100質量部にエチレン・酢酸ビニル共重合体3質量部を混合
(22)NY−1:ナイロン6−66共重合体(結晶融点195℃)
(23)NY−2:ナイロン6−12共重合体(結晶融点120℃)
(24)PET−1:ポリエチレンテレフタレート(酸成分中のテレフタール酸95モル%,イソフタール酸5モル%,結晶融点237℃)
(25)PET−2:ポリエチレンテレフタレート(酸成分中のテレフタール酸90モル%,イソフタール酸10モル%,結晶融点225℃)
(26)A−NY:ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とイソフタル酸との重縮合物、三井デュポン社製「シーラーPA 3426」、密度1.18、結晶融点を示さず
【0032】
(実施例1〜2,比較例1)
表1−1に示した層構成の6層積層体をシール層(第1層)を最内層として共押出しした。得られた筒状溶融体(パリソン)の最外層(第6層)の側から10メガラッドの電子線照射し、加熱後、インフレーション法により長手方向に3.2倍、幅方向に3倍延伸してフィルム厚さが第1層から順に10/20/1/8/1/18(μm)の多層フィルムを得た。実施例1および2のフィルムは、2.5%伸度の引張割線弾性率が縦、横共に150〜180MPa、熱収縮率が縦、横共に38〜43%(測定温度70℃)の範囲であった。
得られた多層フィルムを製袋機にかけ、円形底付けシールした袋を作製した。作製した袋に生肉を充填し、充填時の袋の開口性、熱収縮させて肉とフィルムとの密着の状態、シール部からの漏れ、ドリップの発生状況、落下テストによる破袋の有無を観察した。その結果を表1−2に示した。
【0033】
なお熱収縮率は、試料片を縦(フィルムの長手方向)、横(フィルムの幅方向)に各々10cmの長さに切り取り、実施例に示した温度に5秒間浸漬した後取り出し、縦、横の長さを測定し、もとの長さに対する熱処理後の長さの割合を百分率で表示した。
また2.5%伸度の引張割線弾性率は、JIS K7127により測定したものである。
【0034】
【表1】
【0035】
(実施例3〜5,比較例2〜3)
表2−1に示した層構成の6層積層体をシール層(第1層)を最内層として共押出しした。得られた筒状溶融体(パリソン)の最外層(第6層)の側から12メガラッドの電子線照射し、加熱後、インフレーション法により長手方向に2.8倍、幅方向に2.5倍延伸してフィルム厚さが第1層から順に12/18/1/8/1/14(μm)の多層フィルムを得た。実施例3〜5のフィルムは、2.5%伸度の引張割線弾性率が縦、横共に200〜220MPa、熱収縮率が縦、横共に45〜50%(測定温度90℃)の範囲であった。比較例2の多層フィルムは光沢が乏しかった。
得られた多層フィルムを製袋機にかけ、サイドシールして袋を作製した。作製した袋に加工肉を充填し、95℃、10分の熱殺菌を行い、肉とフィルムとの密着の状態、シール部からの破袋、ドリップの発生状況を観察した。その結果を表2−2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
(実施例6〜8,比較例4)
表3−1に示した層構成の8層積層体をシール層(第1層)を最内層として共押出した。得られた筒状溶融体(パリソン)の最外層(第8層)の側から8メガラッドの電子線照射し、加熱後、インフレーション法により長手方向に3.2倍、幅方向に3.0倍延伸してフィルム厚さが第1層から順に8/20/2/10/2/10/2/4(μm)(実施例6,7および比較例4)、および18/10/2/10/2/10/2/4(μm)の多層フィルムを得た。
実施例6〜7のフィルムは、2.5%伸度の引張割線弾性率が縦、横共に220〜240MPa、熱収縮率が縦/横共に40〜45%(測定温度85℃)の範囲であった。実施例7の多層フィルムは僅かにパール状を呈していた。
得られた多層フィルムを製袋機にかけ、円形底付けシールした袋を作製した。作製した袋に豚肉を充填し、充填時の袋の開口性、熱収縮させて肉とフィルムとの密着の状態、シール部からの漏れ、ドリップの発生状況、落下テストによる破袋の有無を観察した。その結果を表3−2に示した。
【0038】
【表3】
【0039】
(実施例9,比較例5)
表4−1に示した層構成の7層積層体をシール層(第1層)を最内層として共押出しした。得られた筒状溶融体(パリソン)の最外層(第7層)の側から4メガラッドの電子線照射し、加熱後、インフレーション法により長手方向に2.6倍、幅方向に2.5倍延伸してフィルム厚さが第1層から順に10/11/1.5/5/11/1.5/4(μm)の多層フィルムを得た。実施例9、比較例5のフィルムは2.5%伸度の引張割線弾性率が縦、横ともに370〜390MPa、熱収縮率が縦/横ともに40〜45%(測定温度90℃)の範囲であった。得られた多層フィルムをピロー包装機にかけ、加工肉を三方シールで包装し、包装適性を評価した。充填した加工肉包装体を95℃、10分の熱殺菌を行い、肉とフィルムとの密着の状態、シール部から破袋、ドリップの発生状況を観察した。その結果を表4−2に示した。
【0040】
【表4】
【0041】
(実施例10〜11)
表5−1に示した層構成の7層積層体をシール層(第1層)を最内層として共押出しした。得られた筒状溶媒体(パリソン)を加熱後、インフレーション法により長手方向に3倍、幅方向に3倍延伸した後スリットし、2枚のフィルムを得た。フィルム厚さは第1層から順に3/7/1/2.5/4.5/1/1(μm)(実施例10)、4/9/1/4/1/1(μm)(実施例11)であった。
実施例10および11のフィルムは2.5%伸度の引張割線弾性率が縦、横ともに400ー45MPa、熱収縮率が縦/横ともに43〜47%(測定温度100℃)の範囲であった。
得られた多層フィルムを包装機にかけ、スライスハムを置いたトレーを三方シールし、オーブンを通過させた後のフィルムの密着状態、シール部からの漏れの有無を観察した。その結果を表5−2に示した。
【0042】
【表5】
【0043】
(実施例12〜13,比較例6)
表6−1に示した層構成の6層積層体をシール層(第1層)を最内層として共押出しした。筒状溶融体が押出機ダイを流出した直後にインフレーション成形し、スリットし、2枚のフィルムを得た。フィルム厚さは、第1層から順に15/30/2/2(μm)(実施例12)、12/30/1/5/1/1(μm)(実施例13)、15/30/2/2(μm)(比較例6)であった。実施例12〜13のフィルムは、2.5%伸度の引張割線弾性率が縦、横共に300〜350MPa、の範囲であった。また測定温度90℃、5秒では縦、横共に熱収縮を示さなかった。
得られた多層フィルムをピロー包装機械にかけ、加工肉を三方シールで包装し、包装適性を評価した。また充填した加工肉を95℃、10分の熱殺菌を行い、肉とフィルムとの密着の状態、シール部からの破袋、ドリップの発生状況を観察した。その結果を表6−2に示した。
【0044】
【表6】
【0045】
【発明の効果】
シール層、シール補助層のシール部を採用することにより、メタロセン触媒ポリオレフィンの欠点であるフィルム成形性を改善し、押出成形性、延伸成形性、高速製袋(シール)性、シール強度などの一次加工性、また深絞り加工やスキンパック加工などの二次加工性、フィルムが熱収縮性を要求されるものである場合には食品包装時のドリップ流出を抑えるための熱収縮性、熱殺菌のための耐ボイル性、調理のための耐クッキング性などを得ることができる。
Claims (16)
- 結晶融点105〜145℃のメタロセン触媒ポリオレフィン90〜0質量%と、結晶融点70〜105℃未満のメタロセン触媒ポリオレフィン10〜100質量%(両者の合計は100質量%)とのメタロセン触媒ポリオレフィン単独またはメタロセン触媒ポリオレフィンを主成分とし、副成分との混合物からなるシール層と、分子中に酸素原子を含む少なくとも1種の単量体とエチレンとの共重合体を含むシール補助層とからなる多層フィルムであって、シール補助層を構成する共重合体の結晶融点がシール層を構成するメタロセン触媒ポリオレフィンの結晶融点より低く、該多層フィルムの2.5%伸度の引張割線弾性率が150〜450MPaであることを特徴とする多層フィルム。
- シール補助層の厚みがシール層の厚みより大きい請求項1記載の多層フィルム。
- メタロセン触媒ポリオレフィンのうち最多量を占めるメタロセン触媒ポリオレフィンの結晶融点が、シール補助層を構成する樹脂のうち最多量を占める樹脂の結晶融点より高いことを特徴とする請求項1または2記載の多層フィルム。
- 多層フィルムの厚みが30μm以上の場合に、2.5%伸度の引張割線弾性率が150〜400MPaである請求項1〜3のいずれかに記載の多層フィルム。
- シール補助層が電子線照射により架橋している請求項1〜4のいずれかに記載の多層フィルム。
- シール層のメタロセン触媒ポリオレフィンがエチレン系樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の多層フィルム。
- メタロセン触媒ポリオレフィンが多分散度3未満である請求項6記載の多層フィルム。
- メタロセン触媒ポリオレフィンが拘束幾何触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体であり、α−オレフィン含有率が12〜15重量%未満、密度0.895を超え0.906g/cm3 までの共重合体とα−オレフィン含有率が7〜10重量%、密度0.908〜0.915g/cm3の共重合体の混合物である請求項1〜5のいずれかに記載の多層フィルム。
- シール補助層がエチレン含量80〜95質量%のエチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルまたはアクリル酸ブチルから選ばれた少なくとも1種の単量体との共重合体樹脂からなる請求項1〜8のいずれかに記載の多層フィルム。
- ガスバリヤー層を含む請求項1〜9のいずれかに記載の多層フィルム。
- 熱収縮性を有する請求項1〜10のいずれかに記載の多層フィルム。
- シール層が最内層に配置された請求項1〜11のいずれかに記載の多層フィルムからなる包装容器。
- シール層で互いに密封された請求項12記載の包装容器。
- 請求項12または13記載の包装容器で包装物が包装された包装製品。
- 包装物が食品である請求項14記載の包装製品。
- 食品が肉製品である請求項15記載の包装製品。
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