JP5243753B2 - 筒状包装体 - Google Patents

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Description

本発明は、チーズ、ソーセージ、かまぼこ、ハム等の加工食品を充填物とする筒状包装体に関する。
チーズ、ソーセージ、かまぼこ、ハム等の加工食品が充填された筒状フィルムを密封し個々の包装体を得る場合の密封手段として、筒状フィルムの端部を金属製のワイヤクリップで結紮する(なお、結紮とは、所定の長さの直線状のワイヤを金型を用いて丸く潰すことをいう)方法が知られていた。そして、このように金属製のワイヤクリップで結紮する方法で得られた筒状包装体においては、金属製のワイヤクリップが障害となるため金属探知機による製品検査ができず不便であったので、筒状フィルムの端部を集束シールする方法が行われるようになってきた。しかしながら、筒状フィルムの端部を集束シールする方法で得られた筒状包装体においては、金属製のワイヤクリップで結紮する方法で得られた筒状包装体と比較して、シール部分或いはその近傍でピンホールが生じ易くなるという問題があった。
そこで、このような問題を解決するために、例えば、特開昭63−272637号公報(特許文献1)や特開2005−231639号公報(特許文献2)には、充填物と、長手方向の両端部が集束シールされて前記充填物が充填されている筒状の母材フィルムと、前記母材フィルムが集束シールされた部分において前記母材フィルムに溶着されている補強テープとを備える筒状包装体が記載されている。
しかしながら、上記特許文献等に記載されているような筒状包装体は、筒状フィルムにおけるピンホールや包装体の密封性の点で未だ必ずしも充分なものではなかった。
特開昭63−272637号公報 特開2005−231639号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、筒状フィルムにおけるピンホールの発生が充分に抑えられ、密封性が充分に優れた筒状包装体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)充填物と、(B)長手方向の両端部が集束シールされることにより前記充填物が充填されている、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルムからなる筒状の母材フィルムと、(C)前記母材フィルムが集束シールされた部分を巻回し覆うように前記母材フィルムに溶着されている、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルムからなる補強テープとを備える筒状包装体において、前記補強テープの溶着前における熱収縮率及び引張割線弾性率を特定の範囲とすることにより、筒状フィルムにおけるピンホールの発生が充分に抑えられ、密封性が充分に優れた筒状包装体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の筒状包装体は、(A)充填物と、(B)長手方向の両端部が集束シールされることにより前記充填物が充填されている、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルムからなる筒状の母材フィルムと、(C)前記母材フィルムが集束シールされた部分を巻回し覆うように前記母材フィルムに溶着されている、塩化ビニリデンモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体を含有するポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルムからなる補強テープとを備える筒状包装体であって、
溶着前における前記補強テープの長手方向の熱収縮率Rが10〜27%の範囲であり、且つ溶着前における前記補強テープの長手方向の引張割線弾性率Eが250〜450MPaの範囲であることを特徴とするものである。
また、本発明の筒状包装体においては、前記補強テープが溶着される前における前記筒状の母材フィルムの短手方向の熱収縮率Rと前記熱収縮率Rとが下記数式(F1):
−8% ≦ R−R ≦ 9% ・・・(F1)
で表される条件を満たし、且つ、
前記補強テープが溶着される前における前記筒状の母材フィルムの短手方向の引張割線弾性率Eと前記引張割線弾性率Eとが下記数式(F2):
−120MPa ≦ E−E ≦ 80MPa ・・・(F2)
で表される条件を満たすことが好ましい。
さらに、本発明の筒状包装体においては、前記補強テープが、78〜84質量%の塩化ビニリデンモノマーと22〜16質量%の塩化ビニルモノマーとの共重合体を含有するポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルムからなることが好ましい。
本発明によれば、筒状フィルムにおけるピンホールの発生が充分に抑えられ、密封性が充分に優れた筒状包装体を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の筒状包装体は、(A)充填物と、(B)長手方向の両端部が集束シールされることにより前記充填物が充填されている、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルムからなる筒状の母材フィルムと、(C)前記母材フィルムが集束シールされた部分を巻回し覆うように前記母材フィルムに溶着されている、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルムからなる補強テープとを備える筒状包装体であって、
溶着前における前記補強テープの長手方向の熱収縮率Rが10〜27%の範囲であり、且つ溶着前における前記補強テープの長手方向の引張割線弾性率Eが250〜450MPaの範囲であることを特徴とするものである。
本発明にかかる(A)充填物としては、特に限定されないが、例えば、チーズ、ソーセージ、かまぼこ、ハム等の加工食品が挙げられる。
本発明にかかる(B)母材フィルムは、長手方向の両端部が集束シールされることにより前記充填物が充填されている筒状のものである。そして、本発明にかかる母材フィルムは、ポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルムからなるものであることが必要である。本明細書において、ポリ塩化ビニリデン系樹脂とは、塩化ビニリデンを主成分とする共重合体樹脂のことをいう。このようなポリ塩化ビニリデン系樹脂は、酸素と水蒸気の遮断性に優れているため母材フィルムとして使用した場合に充填物の酸化や目減りといった劣化を抑え、商品価値を維持することができる。また、このようなポリ塩化ビニリデン系樹脂は、ホットフィル適性、ボイルやレトルトのような高温殺菌処理に対する適性も優れるため、チーズ、ソーセージ、かまぼこ、ハム等の加工食品を充填物とする筒状包装体の母材フィルムの材料として特に好適である。
本発明にかかる母材フィルムの厚みは、特に限定されないが、20〜80μmの範囲にあることが好ましく、30〜60μmの範囲にあることがより好ましい。厚みが前記下限未満では、得られる筒状包装体において、輸送時等における外部からの衝撃や摩擦によるピンホールが生じ易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると母材フィルム端部の集束が不充分となり、補強テープを含めて溶着しない部分を生じて、得られる筒状包装体の密封性が不充分となる傾向にある。
本発明にかかる母材フィルムの材料であるポリ塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデンと塩化ビニリデン以外のモノマーとを共重合させることにより得ることができる。このような塩化ビニリデン以外のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、このようなポリ塩化ビニリデン系樹脂には、溶融押出性、熱安定性、延伸性、柔軟性、着色、充填物との剥離性等の特性を付与するために、可塑剤、安定剤、滑剤、着色剤、界面活性剤、梨地化剤等の添加剤を添加してもよい。
本発明にかかる母材フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、前記ポリ塩化ビニリデン系樹脂を溶融押出機により加熱溶融して管状ノズルから押出し、急冷後にインフレーション法等の手段によって二軸延伸する方法が採用される。また、本発明にかかる母材フィルムとして使用できるポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルムとしては、例えば、クレハ社製の商品名称クレハロン(Krehalon)が挙げられる。
本発明にかかる(C)補強テープは、前記母材フィルムが集束シールされた部分を巻回し覆うように前記母材フィルムに溶着されているものである。そして、本発明にかかる補強テープは、ポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルムからなるものであることが必要である。補強テープとしてポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルムからなるものを用いることによって、補強テープと前記母材フィルムとの溶着性が増す。
また、本発明にかかる補強テープの溶着前における長手方向の熱収縮率Rは10〜27%の範囲にあることが必要である。熱収縮率が10%未満では、得られる筒状包装体の両端部においてピンホールを充分に抑制することができず、得られる筒状包装体の密封性が不充分となり、他方、27%を超えると、補強テープとして使用する前の寸法変化や過収縮による縮れが生じ、また、補強テープが収縮し硬化した部分が周辺にある包装体と接触することにより傷つきピンホールを誘発する恐れがある。また、得られる筒状包装体の密封性と補強テープとしての寸法変化等とのバランスという観点から、このような補強テープの溶着前における長手方向の熱収縮率Rは、13〜25%の範囲にあることが好ましく、15〜25%の範囲にあることがより好ましい。
さらに、本発明においては、溶着前における前記母材フィルムの短手方向の熱収縮率Rと溶着前における前記補強テープの長手方向の熱収縮率Rとが下記数式(F1):
−9% ≦ R−R ≦ 8% ・・・(F1)
で表される条件を満たすことが好ましい。このように母材フィルム及び補強テープのそれぞれの熱収縮率の差を制御することにより、得られる筒状包装体の両端部においてピンホールの発生をより確実に抑えることができ、得られる筒状包装体の密封性が増す傾向にある。また、得られる筒状包装体の密封性を更に増すという観点から、R−Rの値は−7%以上であり且つ6%以下であることがより好ましく、−6%以上であり且つ4%以下であることが特に好ましい。R−Rの値が前記下限未満では、レトルト殺菌処理等の高温加熱処理の際に補強テープが過度に収縮するため、得られる筒状包装体の肩口部に位置する補強テープの端部にめくれが生じ易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、補強テープによる母材フィルムの集束シールされた部分の締め付けが不充分となるために、得られる筒状包装体の密封性が不充分となる傾向にあり、また補強テープが筒状包装体から脱離し易くなる傾向にある。なお、熱収縮率は、母材フィルム又は補強テープを試料フィルムとして、JIS:Z1709に記載の方法に準拠して測定することができる。すなわち、試料フィルムの長手方向又は短手方向に2点間の距離が100mmとなるように印をつけ、沸騰水に3分間浸漬した後に、水道水中で冷却する、その後、沸騰水に浸漬後の2点間の距離d(単位:mm)を測定し、沸騰水に浸漬した際の2点間の距離の減少値(100−d)mmの沸騰水に浸漬前の2点間の距離100mmに対する百分率を算出する。
また、本発明にかかる補強テープの溶着前における長手方向の引張割線弾性率Eは250〜450MPaの範囲にあることが必要である。引張割線弾性率が250MPa未満では、補強テープに充分な硬さがないため、母材フィルムの集束シールされた部分に補強テープを添える際に、補強テープを添える箇所のばらつきが生じ易くなり、そのため得られる筒状包装体の両端部においてピンホールを充分に抑制することができず、得られる筒状包装体の密封性が減じる。他方、引張割線弾性率が450MPaを超えると、母材フィルムの集束シールされた部分への補強テープの装着性(フィット性)が減じて、補強テープが母材フィルムと溶着しないことがあり、得られる筒状包装体の密封性が減じる。また、得られる筒状包装体の密封性と補強テープの硬さ等とのバランスという観点から、このような補強テープの溶着前における長手方向の引張割線弾性率Eは、260〜420MPaの範囲にあることが好ましく、270〜400MPaの範囲にあることがより好ましい。
さらに、本発明においては、溶着前における前記母材フィルムの短手方向の引張割線弾性率Eと溶着前における前記補強テープの長手方向の引張割線弾性率Eとが下記数式(F2):
−120MPa ≦ E−E ≦ 80MPa ・・・(F2)
で表される条件を満たすことが好ましい。このように母材フィルム及び補強テープのそれぞれの引張割線弾性率の差を制御することにより、得られる筒状包装体の両端部においてピンホールの発生をより確実に抑えることができ、得られる筒状包装体の密封性が増す傾向にある。また、得られる筒状包装体の密封性を更に増すという観点から、E−Eの値は−90MPa以上であり且つ70MPa以下であることがより好ましく、−70MPa以上であり且つ60MPa以下であることが特に好ましい。E−Eの値が前記下限未満では、補強テープが母材フィルムに対して相対的に硬くなりすぎる結果、母材フィルムの集束シールされた部分への補強テープの装着性(フィット性)が減じて、補強テープが母材フィルムと溶着しないことがあり、得られる筒状包装体の密封性が減じる傾向にある。他方、E−Eの値が前記上限を超えると、補強テープが母材フィルムに対して相対的に柔らかすぎる結果、補強テープによる母材フィルムの集束シールされた部分の締め付けが不充分となるために、得られる筒状包装体の密封性が減じる傾向にある。なお、引張割線弾性率は、母材フィルム又は補強テープを試料フィルムとして、引張り試験機(A&D社製テンシロン)を用い、JIS:K7113項目8.5に記載の方法に準拠して測定することができる。すなわち、試料フィルムの長手方向又は短手方向の試験長(チャック間距離)が100mmとなるように、引張り試験機に試料フィルムをセットし(測定条件:23℃、50%RH)、10mm/分の速度で引張り試験を行う。そして、規定ひずみ:εを0.025とし、試料フィルムの歪量が0.025に達するまでに要する応力:F(単位:N)を読み取り、さらに試料フィルムの断面積:S(単位:mm)から下記関係式:
(引張割線弾性率:E) = 〔F/(ε×S)〕
を用いて算出する。
また、本発明にかかる補強テープの溶着前における厚みは、10〜150μmの範囲にあることが好ましく、30〜120μmの範囲にあることがより好ましく、40〜100μmの範囲にあることが特に好ましい。厚みが前記下限未満では、筒状包装体の製造工程において両端部に巻き付けるのが困難となり、また、補強テープとしての強度が不足する傾向にある。他方、厚みが前記上限を超えると、母材フィルムの集束シールされた部分と溶着しないことがあり、得られる筒状包装体の密封性が減じる傾向にある。
本発明にかかる補強テープの材料であるポリ塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデンと塩化ビニリデン以外のモノマーと共重合させることにより得ることができる。このような塩化ビニリデン以外のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらの中でも、塩化ビニリデンとの反応性に優れ、また得られる共重合体の物性の制御が容易となるという観点から、塩化ビニルが好ましい。
また、このようなポリ塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデン78〜84質量%(より好ましくは79〜83質量%、特に好ましくは80〜82質量%)と、前記塩化ビニル22〜16質量%(より好ましくは21〜17質量%、特に好ましくは20〜18質量%)との共重合体を含有するものであることが好ましい。塩化ビニリデンの配合量が前記下限未満では、溶融押出し延伸製膜する際において結晶化が充分に進行せず、安定した製膜を行うことが困難となる傾向にあり、また得られる補強テープの耐熱性が不足することによって、レトルト殺菌処理等の高温加熱処理により得られる筒状包装体が破裂するという問題を生ずる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、結晶性の増大に伴う融点の上昇のために、溶融押出の負荷が大きくなる傾向にある。
さらに、このようなポリ塩化ビニリデン系樹脂には、得られる補強テープの熱収縮率や引張割線弾性率を制御するために、例えば、セバシン酸ジブチル等の可塑剤、エポキシ化植物油等の安定剤、脂肪酸エステル等の滑剤、炭酸カルシウム等の梨地化剤を添加してもよい。
また、本発明においては、前記母材フィルムと前記補強テープとの親和性を更に増し、得られる筒状包装体の密封性を更に増すという観点から、前記母材フィルムの材料であるポリ塩化ビニリデン系樹脂と前記補強テープの材料であるポリ塩化ビニリデン系樹脂とにおける、両者の還元粘度の差の絶対値が0.01以下であり、且つ両者のアセトン抽出量の差の絶対値が5%以下であることが好ましい。
なお、ポリ塩化ビニリデン系樹脂の還元粘度及びアセトン抽出量については、前記母材フィルム及び前記補強テープをそれぞれテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、それぞれのTHF溶液にTHF溶液の体積の4倍量のメタノールを加えたときに沈殿した画分を回収して試料として測定することができる。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂の還元粘度(単位:l/g)については、JIS:K7367に記載の方法に準拠して、シクロヘキサノンを溶媒とし30℃における値を以下のようにして測定する。すなわち、50ml容共栓付三角フラスコに試料80mgを正確に秤量し、シクロヘキサノンをホールピペットで20ml加える(シクロヘキサノン溶液中の試料濃度として4g/l)。その後、共栓をしてクリップ固定し、70〜80℃で1時間かけて適宜撹絆しながら試料を溶解させて溶液を得る。その後、その溶液を室温まで冷却し、同容量の三角フラスコに濾過し、ろ液を測定試料とする。次いで、その測定試料を温度30℃の恒温水槽中にて、塩化ビニル樹脂用のウベ・ローデ型粘度計を使用して測定試料の落下時間を測定する。測定は3回繰り返し、測定値が±0.2秒以内なら終了し、それを超えたときはデータが揃うまで測定を繰り返す。このようにして得られる測定試料の落下時間から、下記関係式:
・比粘度 ηrel = T/T
(T:測定試料の落下秒数、T:純シクロヘキサノン溶媒の落下秒数)
・相対粘度 ηsp = 1 − ηrel
・還元粘度 ηsp/C = ηsp/4
を用いて算出する。
樹脂のアセトン抽出量については、以下のようにして測定する。すなわち、円筒濾紙に試料10gを量り取り、上部に脱脂綿を乗せてソックスレー抽出器に入れる。予めガラスビーズを入れ、乾燥して質量を量った平底フラスコにアセトン約120mlを入れ、ソックスレー抽出器に取り付けて70℃にて24時間抽出する。抽出終了後、70℃でアセトンをドライアップし、その後乾燥させ平底フラスコの質量を秤量し、平底フラスコの風袋質量をもとに、その質量変化量からアセトンに抽出した試料の質量を測定し、アセトンに抽出した試料の質量の抽出前の試料の質量10gに対する百分率を算出する。
本発明の筒状包装体は、以上説明したような充填物、母材フィルム及び補強テープを備えるものである。このような筒状包装体を製造する方法としては、例えば、母材フィルムを筒状に成形しながら、充填物を充填し、その後、超音波シールによって母材フィルムの端部を集束しつつ、補強テープを添えてシールして密封し、筒状包装体を得る方法を採用することができる。そして、このような方法に用いる装置としては、例えば、クレハ社製の商品名称KAP自動充填包装機を用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
先ず、塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)の重合時におけるモノマー仕込み質量比(VD/VC)が80/20の共重合体に、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、セバシン酸ジブチル(DBS)及びエポキシ化植物油を配合し、さらに界面活性剤及び梨地化剤を少量加えて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を得た。そして、得られたポリ塩化ビニリデン系樹脂を、直径90mmの押出機スクリューを用いて溶融押出し、二軸延伸した後に裁断して補強テープを得た。得られた補強テープは、厚みが80μmであり、幅が16mmであり、長手方向(以下、場合により「MD」という)の熱収縮率が24%であり、長手方向(MD)の引張割線弾性率が287MPaであるものであった。
次に、得られた補強テープと母材フィルム(クレハ社製、商品名称クレハロン#DT567R、フィルム幅:90mm)とを用い、充填物(魚肉スリミ52質量%、水22質量%、豚脂12質量%、澱粉10質量%、及び食塩、リン酸塩、調味料等からなるペースト)を自動充填包装機(クレハ社製、商品名称KAP3000型自動充填包装機)にて充填し、筒状包装体を得た。すなわち、母材フィルムを筒状に成形しながら、充填物を充填し、超音波シールによって母材フィルムの端部を集束しつつ、補強テープを添えて溶融シールし密封して筒状包装体を得た。なお、筒状の母材フィルムにおいては、折幅(円周の半分の長さ)が40mm、カット長(筒状包装体から充填物を抜き取り、残った筒状の母材フィルムを平らに押し広げて長手方向に測定した長さのことをいう。)が225mm、質量が90gとなるように条件を調整した。また、母材フィルムの長手方向(MD)及び短手方向(以下、場合により「TD」という)の熱収縮率は、それぞれ24%及び19%であり、長手方向(MD)及び短手方向(TD)の引張割線弾性率は、それぞれ330MPa及び286MPaであった。また、自動充填包装機の運転条件は、以下に示した通りとし、充填速度は150本/分とした。
ホーン・アンビルクリアランス:0.1mm
シール圧力:450kPa
振幅ボリューム目盛:69(16μm相当)
シールデザイン:フラット6.5mmシール幅
縦シール条件:ローレット目を設けた加工品
集束度合い:直径2mm
フィルムカッター:オルファ社製市販刃。
(実施例2)
先ず、塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)の重合時におけるモノマー仕込み質量比(VD/VC)が80/20の共重合体に、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、セバシン酸ジブチル(DBS)及びエポキシ化植物油を配合し、さらに界面活性剤及び梨地化剤を少量加えて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を得た。そして、得られたポリ塩化ビニリデン系樹脂を、直径50mmの押出機スクリューを用いて溶融押出し、二軸延伸した後に裁断し、その後、温度60℃のギアーオーブン中にて43時間の熱処理を施して、補強テープを得た。得られた補強テープは、厚みが85μmであり、幅が15mmであり、長手方向(MD)の熱収縮率が21%であり、長手方向(MD)の引張割線弾性率が324MPaであるものであった。
次に、実施例1で用いた補強テープに代えて上記のようにして得られた補強テープを用いた以外は実施例1と同様にして筒状包装体を得た。
(実施例3)
先ず、塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)の重合時におけるモノマー仕込み質量比(VD/VC)が81/19の共重合体に、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、セバシン酸ジブチル(DBS)及びエポキシ化植物油を配合し、さらに界面活性剤及び梨地化剤を少量加えて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を得た。そして、得られたポリ塩化ビニリデン系樹脂を、直径50mmの押出機スクリューを用いて溶融押出し、二軸延伸した後に裁断し、その後、温度60℃のギアーオーブン中にて43時間の熱処理を施して、補強テープを得た。得られた補強テープは、厚みが85μmであり、幅が15mmであり、長手方向(MD)の熱収縮率が19%であり、長手方向(MD)の引張割線弾性率が379MPaであるものであった。
次に、実施例1で用いた補強テープに代えて上記のようにして得られた補強テープを用いた以外は実施例1と同様にして筒状包装体を得た。
(実施例4)
先ず、塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)の重合時におけるモノマー仕込み質量比(VD/VC)が81/19の共重合体に、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、セバシン酸ジブチル(DBS)及びエポキシ化植物油を配合し、さらに界面活性剤及び梨地化剤を少量加えて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を得た。そして、得られたポリ塩化ビニリデン系樹脂を、直径90mmの押出機スクリューを用いて溶融押出し、二軸延伸した後に裁断して補強テープを得た。得られた補強テープは、厚みが80μmであり、幅が16mmであり、長手方向(MD)の熱収縮率が19%であり、長手方向(MD)の引張割線弾性率が309MPaであるものであった。
次に、実施例1で用いた補強テープに代えて上記のようにして得られた補強テープを用いた以外は実施例1と同様にして筒状包装体を得た。
(実施例5)
先ず、塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)の重合時におけるモノマー仕込み質量比(VD/VC)が80/20の共重合体に、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、セバシン酸ジブチル(DBS)及びエポキシ化植物油を配合し、さらに界面活性剤及び梨地化剤を少量加えて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を得た。そして、得られたポリ塩化ビニリデン系樹脂を、直径90mmの押出機スクリューを用いて溶融押出し、二軸延伸した後に裁断し、その後、温度60℃のギアーオーブン中にて43時間の熱処理を施して、補強テープを得た。得られた補強テープは、厚みが80μmであり、幅が16mmであり、長手方向(MD)の熱収縮率が17%であり、長手方向(MD)の引張割線弾性率が357MPaであるものであった。
次に、実施例1で用いた補強テープに代えて上記のようにして得られた補強テープを用いた以外は実施例1と同様にして筒状包装体を得た。
(実施例6)
先ず、塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)の重合時におけるモノマー仕込み質量比(VD/VC)が81/19の共重合体に、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、セバシン酸ジブチル(DBS)及びエポキシ化植物油を配合し、さらに界面活性剤及び梨地化剤を少量加えて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を得た。そして、得られたポリ塩化ビニリデン系樹脂を、直径90mmの押出機スクリューを用いて溶融押出し、二軸延伸した後に裁断し、その後、温度60℃のギアーオーブン中にて43時間の熱処理を施して、補強テープを得た。得られた補強テープは、厚みが80μmであり、幅が16mmであり、長手方向(MD)の熱収縮率が13%であり、長手方向(MD)の引張割線弾性率が346MPaであるものであった。
次に、実施例1で用いた補強テープに代えて上記のようにして得られた補強テープを用いた以外は実施例1と同様にして筒状包装体を得た。
(比較例1)
先ず、塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)の重合時におけるモノマー仕込み質量比(VD/VC)が80/20の共重合体に、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、セバシン酸ジブチル(DBS)及びエポキシ化植物油を配合し、さらに界面活性剤及び梨地化剤を少量加えて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を得た。そして、得られたポリ塩化ビニリデン系樹脂を、直径90mmの押出機スクリューを用いて溶融押出し、二軸延伸した後に裁断し、その後、温度110℃の熱風を20秒間吹き付ける処理(熱風処理)を施して、補強テープを得た。得られた補強テープは、厚みが80μmであり、幅が16mmであり、長手方向(MD)の熱収縮率が5%であり、長手方向(MD)の引張割線弾性率が318MPaであるものであった。
次に、実施例1で用いた補強テープに代えて上記のようにして得られた補強テープを用いた以外は実施例1と同様にして筒状包装体を得た。
(比較例2)
先ず、ポリ塩化ビニリデン系樹脂に含まれるATBC及びDBSの添加量を減量した以外は実施例2と同様にして補強テープを得た。得られた補強テープは、厚みが83μmであり、幅が15mmであり、長手方向(MD)の熱収縮率が20%であり、長手方向(MD)の引張割線弾性率が501MPaであるものであった。
次に、実施例1で用いた補強テープに代えて上記のようにして得られた補強テープを用いた以外は実施例1と同様にして筒状包装体を得た。
(比較例3)
先ず、ポリ塩化ビニリデン系樹脂に含まれるATBC及びDBSの添加量を増量した以外は実施例2と同様にして補強テープを得た。得られた補強テープは、厚みが83μmであり、幅が15mmであり、長手方向(MD)の熱収縮率が21%であり、長手方向(MD)の引張割線弾性率が236MPaであるものであった。
次に、実施例1で用いた補強テープに代えて上記のようにして得られた補強テープを用いた以外は実施例1と同様にして筒状包装体を得た。
(比較例4)
先ず、塩化ビニリデン(VD)と塩化ビニル(VC)の重合時におけるモノマー仕込み質量比(VD/VC)が77/23の共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして補強テープを得た。得られた補強テープは、厚みが81μmであり、幅が15mmであり、長手方向(MD)の熱収縮率が30%であり、長手方向(MD)の引張割線弾性率が285MPaであるものであった。
次に、実施例1で用いた補強テープに代えて上記のようにして得られた補強テープを用いた以外は実施例1と同様にして筒状包装体を得た。
<筒状包装体の密封性の評価>
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた筒状包装体の密封性を以下のようにして評価した。すなわち、筒状包装体に貯湯式レトルト殺菌装置(日阪製作所社製、商品名称フレーバーエース)を用い、温度120℃、設定圧力2.5kg/cmにて15分間のレトルト処理を行ったものを試料とした。レトルト処理を行った翌日に、100本の試料を無作為に抽出し、これらを0.4質量%青色1号色素溶液に浸漬して温度37℃の条件下において5日間放置した。その後、試料を色素溶液中から取り出し、外表面を水洗してからフィルムを開封して、中身の充填物ヘの着色の有無を調べることによって密封性を評価した。なお、色素溶液が浸透して中身の充填物に着色が認められたものを密封不良品と判定し、試料100本中における密封不良品の本数の割合(百分率)を求めて密封不良率とした。そして、密封不良率が10%以下であれば「合格」と判定し、それ以外の場合を不合格と判定した。得られた結果、並びに実施例及び比較例で用いた補強テープの厚み、熱収縮率〔長手方向(MD)、短手方向(TD)、MD/TD〕及び引張割線弾性率〔長手方向(MD)〕を表1に示す。
Figure 0005243753
表1に示した結果から明らかなように、本発明の筒状包装体(実施例1〜6)は、筒状包装体の密封性が優れたものであった。
以上説明したように、本発明によれば、筒状フィルムにおけるピンホールの発生が充分に抑えられ、密封性が充分に優れた筒状包装体を提供することが可能となる。
したがって、本発明の筒状包装体は、チーズ、ソーセージ、かまぼこ、ハム等の加工食品を充填物とする筒状包装体として有用である。

Claims (3)

  1. (A)充填物と、(B)長手方向の両端部が集束シールされることにより前記充填物が充填されている、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルムからなる筒状の母材フィルムと、(C)前記母材フィルムが集束シールされた部分を巻回し覆うように前記母材フィルムに溶着されている、塩化ビニリデンモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体を含有するポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルムからなる補強テープとを備える筒状包装体であって、
    溶着前における前記補強テープの長手方向の熱収縮率Rが10〜27%の範囲であり、且つ溶着前における前記補強テープの長手方向の引張割線弾性率Eが250〜450MPaの範囲であることを特徴とする筒状包装体。
  2. 前記補強テープが溶着される前における前記筒状の母材フィルムの短手方向の熱収縮率Rと前記熱収縮率Rとが下記数式(F1):
    −8% ≦ R−R ≦ 9% ・・・(F1)
    で表される条件を満たし、且つ、
    前記補強テープが溶着される前における前記筒状の母材フィルムの短手方向の引張割線弾性率Eと前記引張割線弾性率Eとが下記数式(F2):
    −120MPa ≦ E−E ≦ 80MPa ・・・(F2)
    で表される条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の筒状包装体。
  3. 前記補強テープが、78〜84質量%の塩化ビニリデンモノマーと22〜16質量%の塩化ビニルモノマーとの共重合体を含有するポリ塩化ビニリデン系樹脂のフィルムからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の筒状包装体。
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