JP3566225B2 - 果実有効成分の抽出方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は果実の果肉,果皮から有効成分としてのエキスを非加熱で抽出する果実有効成分の抽出方法に関し、特には果実からほぼ完全にエキス分を抽出することができるとともに、海洋深層水の併用に伴って該海洋深層水に含まれているミネラル成分を有効に生かすことができる果実有効成分の抽出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から果実の有効成分であるエキス分を抽出して、このエキス分を各種のドリンク,ゼリー,水菓子,キャンデー等の原料として利用する手段が知られており、果実特有の風味を持つ多種多様な製品が消費者に提供されている。従来果実からエキス分を抽出する方法として、一般に砂糖漬と呼称される手段が用いられている。この方法はビン又は樽などの容器内に収穫した原材料としての果実を入れ、その上から砂糖を覆せて重しを乗せ、冷蔵状態として1ヶ月〜12ヶ月程度保持することにより、浸透圧によって低糖濃度の果実,果皮から高糖濃度の砂糖へエキス分を抽出する方法である。
【0003】
上記浸透圧によるエキス分抽出方法は、砂糖を抽出剤として利用した自然糖液抽出法であり、果実を破壊しなくてもエキス分を抽出することができる。一方で従来から柚子その他の果実を機械的に搾汁して果汁を得る手段も多く用いられているが、搾汁後の残滓である果皮はそのまま廃棄されているのが実状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、浸透圧によって低糖濃度の果実から高糖濃度の砂糖へエキス分を抽出する従来方法は、果実への砂糖の浸透が不充分であるため果実の有効成分を完全に抽出することができず、エキス分の抽出量が少ない上、品質が必ずしも良好であるとはいえないという問題がある。更に抽出量を多くするために容器内に入れた果実に砂糖を覆せたまま冷蔵状態として12ヶ月間といった長期間保持する間にエキス分の酸化とか微生物的変質による風味の劣化または腐敗が生じる惧れがある。
【0005】
更に従来の抽出エキス分には人体が必要とする天然の微量元素(ミネラル)が充分に含まれておらず、健康食品として必ずしも満足するものが得られていないという課題がある。特に近時は天然に存在する微量元素の重要性が見直されている現状にある。
【0006】
また、浸透圧によりエキス分を抽出することによって高糖濃度の砂糖により原材料としての果実の「砂糖やけ」に起因して、抽出されたエキス分の味覚の変動が生じる難点があり、エキス分を抽出した後の残滓も多い上、この残滓に砂糖の持つ高糖濃度成分が残存するため、残滓を果樹園等の土壌に還元することができないという課題がある。
【0007】
更に従来から行われている機械的搾汁手段により果汁を得た後の残滓である果皮には果汁の約5倍のVC(ビタミンC)を始めとしてガン抑制物質及び香り成分と人体に有効なエキス分が多く残存しており、果皮を単に産業廃棄物として廃棄することは資源の有効利用の観点からも好ましくないという問題がある。
【0008】
一方、近時は海洋深層水の持つ清浄性と豊富なミネラル成分が需要者の注目を浴びてブームを呼び、該海洋深層水を脱塩処理した水が飲料水の分野に進入している現状にある。上記の海洋深層水は、現在世界中でも「ノルウエー沖」、「ハワイ沖」、「高知県の室戸岬沖」の3ケ所のみで実用的に取水されており、通常海洋表層で見られる風波とか表層温度変化に伴う対流,混合も生じない環境下にある海水で、地上で使用されている各種の油類とか化学物質に起因する海洋汚染の影響を受けることがなく、しかも海水中の溶存有機物が非常に少なく、極めて清浄であるという特徴がある。
【0009】
海洋表層水と海洋深層水の各種項目に関して分析した結果をみると、水温平均は海洋表層水の21℃に対して海洋深層水は13.1℃と低く、pHは同8.19に対して7.87、DO(溶存酸素)は同8.33mg/Lに対して7.28mg/L、TOCは1.60mg/Lに対して0.98mg/Lで、ともに海洋深層水の方が低いが、生菌数は海洋表層水の10〜10に対して海洋深層水は10であって一桁以上も低くなっており、しかも病原生物はほとんど含まれていないため、海水に由来する魚病菌による病気に関する惧れは全くない。
【0010】
ミネラル成分としての栄養塩類の項目でもNO−Nは海洋表層水の1.49μg−at/Lに対して海洋深層水では25.9μg−at/L、PO−Pは同0.34μg−at/Lに対して1.65μg−at/L、SiO−Siは同13.6μg−at/Lに対して64.2μg−at/Lと海洋深層水の方が遙かに大きくなっている。他の微量元素の項目でも海洋表層水よりも海洋深層水の方が含有量が高いという分析結果が得られている。
【0011】
そこで本発明はこのような従来の果実のエキス分抽出方法が有している課題を解消して、果実及び果皮から引き出されるエキス分の抽出量と品質を高めるとともに海洋深層水の使用に伴って天然微量元素(ミネラル成分)の含有量を増大して味覚を高め、かつ、抽出されたエキス分の味覚の変動が生じることがなく、搾汁後の果皮の使用による資源の有効利用をはかるとともにエキス分を抽出した後の残滓を果樹園等の土壌に還元することができる果実有効成分の抽出方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、原材料としての果実を摩砕処理して砂糖と混合した後、該混合物と所定量の水と混合し、ねかし工程を経て水中に果実のエキス分を抽出すること、及び原材料としての果実を摩砕処理して砂糖と混合した後、該混合物と所定量の水と混合し、ねかし工程を経て水中に果実の一次エキス分抽出を行い、更に固液分離手段を用いて二次エキス分抽出を行う果実有効成分の抽出方法を基本手段として提供する。そして、固液分離手段としての遠心分離機を用い、或いは固液分離手段としてメッシュの篩を用いる。
【0013】
また、原材料と砂糖との混合物を、そのまま冷凍保管し、必要に応じて冷凍保管した原材料と砂糖の混合物を所定量の水と混合する手段、原料の果実として搾汁残滓である果皮を使用する手段、原材料と砂糖の混合物と水との重量比を1:5以上とした手段を提供する。更に、原材料と砂糖の混合物に加える水として、海面下200メートル以深の深海から取水した海洋深層水の脱塩水,もしくは海洋深層水の原水を所定濃度に希釈した水,又は海洋深層水の濃縮水を所定濃度に添加した水を用いた手段を提供する。
【0014】
かかる果実有効成分の抽出方法によれば、原材料としての果実もしくは果皮の一定量を計量し、摩砕処理を行った後に砂糖の一定量を原材料に混合・撹拌すると、摩砕処理によって原材料と砂糖との接触面積が増大して該原材料を低糖濃度から高糖濃度に変化させることができる。この原材料と砂糖の混合物を必要に応じて冷凍保管後、計量した所定量の水を添加して混合・撹拌し、ねかし工程により一次エキス分抽出が行われるので、更に原材料と砂糖の混合物に水を添加したものを固液分離手段によって二次エキス分抽出を行うことにより抽出エキス分と小量の残滓が得られる。残滓は水分量の高いペースト状態を呈しており、果実のエキス分はほとんど抽出されているのでそのまま土壌へ還元することができる。
【0015】
原材料と砂糖の混合物に添加する水として、海面下200メートル以深の深海から取水した海洋深層水の脱塩水,もしくは海洋深層水の原水を所定濃度に希釈した水,又は海洋深層水の濃縮水を所定濃度に添加した水を用いることにより、海洋深層水に含まれているミネラル成分を有効に生かすとともに該海洋深層水のミネラルバランスを再現することができて健康食品としても好ましい抽出果実有効成分が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明にかかる果実有効成分の抽出方法の具体的な実施形態を説明する。本発明は従来の浸透圧によるエキス分を抽出する方法に代えて、原材料としての果実もしくは搾汁残滓である果皮などをミンチ処理及び摩砕処理してから直ちに砂糖と混合し、そのまま冷凍してから所定量の水と混合して水中に原料果実のエキス分を引き出し、更に遠心分離機等の固液分離手段を用いてエキス分を抽出することが特徴となっている。
【0017】
図1は本発明を適用した果実有効成分抽出工程の第1の実施例を示すフロー図であり、先ずステップ1で原材料としての果実を用意する。本発明における原材料としての果実には果実そのものの外に果汁を搾汁した残滓である果皮その他を含むものである。また、果実の種類には限定は無く、野菜に属するものも含むものである。原材料は予め冷凍保存しておいたものを用いることも可能である。後工程に備えてステップ2では砂糖を、ステップ3では水を予め準備しておく。詳細は後述するように、ステップ3で使用する水は水道水でも良いが、海面下200メートル以深の深海から取水した海洋深層水の脱塩水を用いることが好ましく、更には海洋深層水の原水を所定濃度に希釈した水,又は海洋深層水の濃縮水を所定濃度に添加した水を使用することもできる。
【0018】
次にステップ4で原材料の一定量を計量し、原材料が冷凍保存されている場合には、ステップ5で約2時間の解凍処理を行ってからステップ6でミンチ機による約3mm程度のミンチ処理を行い、更にステップ7で摩砕機を利用して約0.1mm〜1.0mm程度の摩砕処理を行う。摩砕とは原材料を細かくすりつぶす処理をいう。尚、原材料がワンステップで摩砕処理できる果実であるケースでは、ステップ6によるミンチ処理を省略して、解凍した原材料を直接ステップ7で摩砕処理しても良い。摩砕処理を行うのは、砂糖との接触をよくするためであり、特にサイズに限定があるわけではなく、前記したサイズ以上のもの或いは、それらが混在していても良い。
【0019】
ステップ8ではステップ2で準備した砂糖の一定量を計量し、ステップ9で前記により摩砕した原材料と砂糖を約20分間混合・撹拌する。混合・撹拌にはリボン式ミキサーを利用することが好ましい。前記ステップ7で原材料を摩砕処理することにより、原材料と砂糖との接触面積が大幅に増大するので、撹拌効果を高めて原材料を低糖濃度から高糖濃度に変化させることができる。砂糖の糖濃度は50%程度のものが好ましいが、果実の種類によって糖濃度が異なる場合もある。この砂糖は抽出剤としての機能の外、原材料の酸化防止機能と微生物繁殖防止剤としての機能を有している。また、砂糖の種類は、多々あるが基本的にどの種類でもよい。但し、種類によって味が変わるので味のレベルに応じて種類が決められる。
【0020】
ステップ10では、原材料と砂糖の混合物を保管のため−25℃で冷凍する。このステップ10の冷凍工程を省略して、直ちに次段の工程に進んでもよい。従って冷凍による保管時間は必要に応じて0時間〜3年程度とすることができる。このように原材料と砂糖の混合物を冷凍することにより、以下の工程で常温で作業しても果実の腐敗が発生せず、品質を良好に維持するとともに原材料の長期間貯蔵を可能にする作用が得られる。
【0021】
ステップ11ではステップ3で準備した水の所定量を計量し、ステップ12で原材料と砂糖の混合物に計量した水を添加して約40分間混合・撹拌する。混合・撹拌にはリボン式ミキサーを用いる。そしてステップ13ではねかし工程により一次エキス分抽出を行う。ねかし時間は12時間から18時間程度にするのがよい。本発明は原材料と砂糖との混合物と大量の水を混合し、混合物から水の方に果実の有効成分を抽出することに特徴を有するものであり、原材料と砂糖の混合物と水との重量比は1:3〜5以上のものが好ましい。
【0022】
上記ねかし工程により高糖濃度となっている原材料から糖濃度の低い水中に果実のエキス分が抽出される。次にステップ14では、一次エキス分が抽出された水を固液分離手段としての遠心分離機にかけて二次エキス分抽出を行う。この遠心分離機の回転は1260(回転/分,400G)程度とする。そしてステップ15によりエキス分類を行って抽出されたエキス分16と残滓17を得る。
【0023】
具体的な配分例として、ステップ1の原材料に冷凍保存した柚子皮2.0kgを用いて、ステップ9で原材料と混合・撹拌する砂糖を2.161kg、ステップ12で添加する水を16.014kgにすると、抽出されたエキス分16は19.35kg、残滓17は0.39kgである。
【0024】
上記の説明において、高糖濃度の原材料から低糖濃度の水中に果実のエキス分を効率的に抽出するには、抽出前の糖濃度と抽出後の糖濃度の差が大きいことが要件の一つである。水抽出前の糖濃度と水抽出後の糖濃度の差が大きければ大きいほど抽出効果は高まる。例えば果実に砂糖を混合した段階で糖濃度を示すブリックス(Bx)50よりもブリックス(Bx)60の方が抽出効果が大きくなる。水抽出後の段階で、ブリックス(Bx)20よりブリックス(Bx)5の方が効果が大きい。しかしブリックス(Bx)60の高糖濃度では「砂糖やけ」により味覚が低下し、また、ブリックス(Bx)5での水抽出は、エキス濃度が薄すぎて原料として配合上、適さない場合もある。従って、最終製品の用途に応じて砂糖の量と水の量を決定する。
【0025】
また、残滓17は水分量80%,酸度0.06%のペースト状態を呈しており、果実のエキス分はほとんど抽出されているのでそのまま土壌へ還元することができる。原材料である柚子皮の水分量は93%,酸度0.25%であり、従来法による残滓の水分量は43%,酸度0.17%であるから、本発明による残滓17の酸度が低くて容易に分解可能であるため、土壌へ還元しやすい状態であることが分かる。
【0026】
図2は本発明の第2の実施例を示すフロー図であり、ステップ1〜ステップ13の工程は第1の実施例と同一であるため、同一の符号を付して表示してある。第2の実施例では、ステップ13のねかし工程により12時間〜18時間程度の一次エキス分抽出を行ってから、ステップ18によって一次エキス分が抽出された水を固液分離手段としての100メッシュの篩にかけて二次エキス分抽出を行う。そして前記と同様にステップ15によりエキス分類を行って抽出されたエキス分16と残滓17を得る。
【0027】
尚、ステップ18で使用する篩のメッシュの大きさによってもエキス分16の苦味などに影響するので、果実の種類に応じてメッシュの大きさの変更及び前記ステップ7での原材料の摩砕処理レベルを変更することが必要である。
【0028】
第2の実施例におけるステップ1の原材料として冷凍保存した柚子皮2.0kgを用いて、ステップ9で原材料と混合・撹拌する砂糖を2.161kg、ステップ12で添加する水を16.014kgにすると、抽出されたエキス分16は17.15kg、残滓17は2.635kgである。
【0029】
図3は本発明の比較例を示すフロー図であり、前記第1の実施例(図1)のステップ2で準備した砂糖を用いずに水分にエキス分を抽出する工程例を示している。ステップ1〜ステップ15の工程は第1の実施例と同一であるため、同一の符号を付して表示してある。この比較例では、冷凍保存されている原材料をステップ5で解凍処理してからステップ6でミンチ機による約3mm程度のミンチ処理を行い、ステップ7で摩砕機を利用して約0.1〜1.0mm程度の摩砕処理を行ってから砂糖を混合せずにステップ10で保管のため−25℃で冷凍する。そしてステップ12で計量した水を添加して約40分間混合・撹拌し、ステップ13で18時間のねかし工程により一次エキス分抽出を行ってからステップ14で遠心分離機にかけて二次エキス分抽出を行う。更にステップ15によりエキス分類を行って抽出されたエキス分16と残滓17を得ている。
【0030】
比較例におけるステップ1の原材料として冷凍保存した柚子皮2.0kgを用いて、ステップ12で添加する水を18.175kgにすると、抽出されたエキス分16は18.7kg、残滓17は1.067kgである。
【0031】
表1は前記第1,第2の実施例と比較例について、原材料配合例とエキス取れ高,エキス糖濃度,歩留,残滓量,残滓/配合を示した一覧表である。原材料として搾汁残滓である果皮を用いた。
【0032】
【表1】
Figure 0003566225
【0033】
表1によれば、原材料を2.0kg用いた際の従来法の残滓量が14.178kgであるのに対して、第1の実施例の残滓量は0.390kg,第2の実施例の残滓量は2.635kgであり、特に第1の実施例では従来法に比べて残滓量が98%も減少しており、歩留も57.2%から95.9%と1.7倍もアップしていることが判明した。また、比較例のように砂糖を用いずにエキス分を水抽出する方法ではエキス糖濃度が1.0と低く、第1の実施例よりも抽出量が少ないことが分かる。
【0034】
表2は原材料として搾汁残滓である柚子皮を用いた場合における従来法と第1の実施例との残滓の成分を比較した結果を示している。
【0035】
【表2】
Figure 0003566225
【0036】
表2によれば、従来法による残滓の水分量が42.95%であるのに対して第1の実施例による残滓の水分量は79.35%と多くなっており、酸度は0.17%から0.06%へ小さくなっている。これにより第1の実施例の残滓は自然環境中で分解されやすくなっていることが判明した。
【0037】
表3は従来法と第1の実施例との抽出エキスの成分を比較した結果を示している。
【0038】
【表3】
Figure 0003566225
【0039】
表3中のBxは糖濃度を示しており、従来法と第1の実施例とがほぼ同じ値になるような配合でテストを行った。また、色差のLは明度、aは赤(+)と緑(−)の度合いを示し、bは黄(+)と青(−)の度合いを示している。aとbの数値が大きくなると鮮やかな色になり、この数値が0になるに従って無彩色か灰色に近い色になる。表3によれば、第1の実施例は従来法に比べてpHが3.98と低く、酸味度については従来法に比べて11.4倍も強くなっており、柚子皮からのエキス分抽出が十分に行われたことが分かる。色差については明度Lはほとんど差がみられなかったが、aとbの数値は大きく異なり、第1の実施例は従来法に比べて黄緑色が強く、より鮮やかな色合が得られたことが分かる。VCについては従来法に比べて第1の実施例は約2.3倍多く含まれており、柚子皮の持つVCを効率よく抽出できることが判明した。
【0040】
次に前記表1の原材料配合例により、本発明の第1,第2の実施例と従来法に基づいて調製した抽出エキスの各試料を、パネラー21名が色,味,香りを5段階評価法により判定した官能検査を説明する。先ず表4は第1の実施例と従来法の抽出エキスの色を比較した結果を、表5は味を比較した結果を、表6は香りを比較した結果をそれぞれ示している。
【0041】
【表4】
Figure 0003566225
【0042】
【表5】
Figure 0003566225
【0043】
【表6】
Figure 0003566225
【0044】
表4によれば、抽出エキスの色は第1の実施例の方が柚子皮の黄色が濃く出ており、従来法による抽出エキスの色は薄く、評価点も83:26と圧倒的に第1の実施例が高い判定結果となった。表5によれば、抽出エキスの味についても第1の実施例の方が従来法の抽出エキスよりもおいしいと判定したパネラーが多く、評価点も67:35と第1の実施例の方がおいしいという判定結果となった。更に表6によれば、抽出エキスの香りについても第1の実施例の方が従来法の抽出エキスよりも香りがやや強いか普通であって、従来法による抽出エキスの香りは弱いと判定したパネラーが多く、評価点も71:28と第1の実施例の方が圧倒的に良いという判定結果となった。
【0045】
表7〜表9は本発明の第1の実施例と比較例に基づいて調製した抽出エキスの各試料を、前記パネラー21名が色,味,香りを5段階評価法により判定した官能検査結果を示している。表7は抽出エキスの色を比較した結果を、表8は味を比較した結果を、表9は香りを比較した結果をそれぞれ示している。尚、表1によれば比較例の糖濃度Bxは1.0であるが、本官能検査では比較例の抽出エキスに砂糖を加えてBxを11.0に調整してから官能検査を行った。
【0046】
【表7】
Figure 0003566225
【0047】
【表8】
Figure 0003566225
【0048】
【表9】
Figure 0003566225
【0049】
表7によれば、抽出エキスの色は第1の実施例の方が比較例よりもやや濃いか普通と答えたパネラーが多く、評価点も72:62と第1の実施例がやや高い判定結果となった。表8によれば抽出エキスの味についても第1の実施例の方がややおいしいと判定したパネラーが8名あり、評価点は58:57という判定結果となった。表9によれば、抽出エキスの香りについては第1の実施例が普通かやや弱いと判定したパネラーもあったが、評価点は57:51と第1の実施例の方がやや良いという判定結果となった。
【0050】
比較例は砂糖を用いずに水分にエキス分を抽出しているため、理論的に変敗等に対しては第1の実施例よりも劣っており、夏場を含めて年間を通したエキス調製時に微生物的変質を防止するための厳密な温度管理が要求される。
【0051】
表10〜表12は本発明の第1の実施例と第2の実施例に基づいて調製した抽出エキスの各試料を、前記パネラー21名が色,味,香りを5段階評価法により判定した官能検査結果を示している。表10は抽出エキスの色を比較した結果を、表11は味を比較した結果を、表12は香りを比較した結果をそれぞれ示している。
【0052】
【表10】
Figure 0003566225
【0053】
【表11】
Figure 0003566225
【0054】
【表12】
Figure 0003566225
【0055】
表10によれば、抽出エキスの色は第2の実施例の方がやや薄いと答えたパネラーが5名あり、評価点も70:62と第1の実施例がやや高い判定結果となった。表11によれば抽出エキスの味の評価は別れており、評価点も60:59という互角の判定結果となった。表12によれば、抽出エキスの香りについても評価は別れており、評価点も59:57と互角の判定結果となった。従って第1と第2の実施例の官能検査結果によれば両者間に質的な差はほとんどないが、前記表1に記載したように歩留と残滓量の点で遠心分離法を用いた第1の実施例の方がやや優位にあるといえる。
【0056】
表13〜表15は本発明の第1の実施例と従来法に基づいて調製した抽出エキスを用いて作製した柚子ゼリーを前記パネラー21名が色,味,香りについて5段階評価法により判定した官能検査結果を示している。表13は柚子ゼリーの色を比較した結果を、表14は味を比較した結果を、表15は香りを比較した結果をそれぞれ示している。
【0057】
【表13】
Figure 0003566225
【0058】
【表14】
Figure 0003566225
【0059】
【表15】
Figure 0003566225
【0060】
表13によれば、柚子ゼリーの色は第1の実施例の方が柚子皮の黄色が濃く出ており、従来法による抽出ゼリーの色は薄く、評価点も69:32と圧倒的に第1の実施例が高い判定結果となった。表14によれば、柚子ゼリーの味についても第1の実施例の方が従来法の柚子ゼリーよりもおいしいかややおいしいと判定したパネラーが多く、評価点も63:38と第1の実施例の方がおいしいという判定結果となった。更に表15によれば、柚子ゼリーの香りについても第1の実施例の方が従来法の柚子ゼリーよりも香りが強いかやや強く、従来法による柚子ゼリーの香りは弱いと判定したパネラーが多く、評価点も62:34と第1の実施例の方が圧倒的に良いという判定結果となった。
【0061】
表16〜表18は本発明の第1の実施例と従来法に基づいて調製した抽出エキスを用いて作製した山桃ゼリーを前記パネラー21名が色,味,香りについて5段階評価法により判定した官能検査結果を示している。表16は山桃ゼリーの色を比較した結果を、表17は味を比較した結果を、表18は香りを比較した結果をそれぞれ示している。
【0062】
【表16】
Figure 0003566225
【0063】
【表17】
Figure 0003566225
【0064】
【表18】
Figure 0003566225
【0065】
表16によれば、山桃ゼリーの色は第1の実施例の方がとても美しい又は美しいとし、従来法による山桃ゼリーの色は少しきたない又はきたないと答えたパネラーが多く、評価点も80:41と圧倒的に第1の実施例が高い判定結果となった。表17によれば、山桃ゼリーの味についても第1の実施例の方が従来法の山桃ゼリーよりもおいしいかややおいしいと判定したパネラーが多く、評価点も74:58と第1の実施例の方がおいしいという判定結果となった。更に表18によれば、本発明にかかる山桃ゼリーの香りについても、その香りが強く、よいと判定したパネラーが多いという判定結果となった。
【0066】
前記第1,第2の実施例のステップ3で使用する水として、海面下200メートル以深の深海から取水した海洋深層水の原水か脱塩水、もしくは該海洋深層水の濃縮水を用いた場合の作用について説明する。本発明で採用した海洋深層水は、室戸岬沖の水深320メートル地点から取水した海水であり、深層水中に含まれている三態窒素のうち、アンモニア態窒素,亜硝酸態窒素はごく僅かであり、生物に与える影響は小さく、硝酸態窒素についても表層部では微量であったが、水深が増加するにつれて濃度が高まり、水深200メートル以深の水中での無機溶存態窒素の95%以上が硝酸態窒素で24μM存在している。その他リン酸態リンが1.7μM、珪酸態珪素が41μM溶存しており、いずれも表層部の5〜10倍以上の栄養塩濃度を有している。
【0067】
海洋深層水中に含まれている天然元素とは、Fe(鉄)、I(沃素)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Zn(亜鉛)、Co(コバルト)、Mo(モリブデン)、Se(セレン)、Cr(クロム)、Sn(スズ)、V(バナジウム)、F(フッ素)、Si(ケイ素)、Ni(ニッケル)、As(ヒ素)の15元素であり、これらの元素が海洋深層水に全てバランス良く含まれていることが大きな特徴となっている。従って海洋深層水は海洋好熱性微生物の培養とか増殖に対しても大きな潜在能力を秘めた海水であるといえる。このような潜在能力は、近年メダイやコンブ、深海サンゴ等の養殖実験に利用されて大きな成果を上げていることからも実証されている。特に前記ノルウエー沖の海洋深層水は、フィヨルド深層水と呼ばれてサケ養殖に適していることが報告されている。
【0068】
海洋深層水中の生菌数は表層水中のそれと比較して、一桁又はそれ以上少なくなっており、しかも病原生物はほとんど含まれていないため、海洋好熱性微生物の培養に採用した際の安全性が極めて高いという大きな特徴がある。本発明はこのような海洋深層水に含まれている天然元素を果実のエキス分に取り入れることによって、海洋深層水に含まれているミネラル成分を有効に生かすとともに該海洋深層水のミネラルバランスを再現することができて健康食品としても好ましい果実エキスを得ることができる。
【0069】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば原材料としての果実もしくは果皮をミンチ処理と摩砕処理を行った後に砂糖の一定量を原材料に混合・撹拌することにより、摩砕処理によって原材料と砂糖との接触面積が増大して該原材料を低糖濃度から高糖濃度に容易に変化させることができるので、その後に計量した水を添加して混合・撹拌することによって水中に一次エキス分抽出が行われ、この水を固液分離手段にかけて二次エキス分抽出を行うことにより、エキス分と残滓を得ることができる。従って従来法のように単に浸透圧によって低糖濃度の果実から高糖濃度の砂糖へエキス分を抽出する手段と異なり、果実への砂糖の浸透が充分となって果実から引き出されるエキス分の抽出量が多く、抽出量を多くするために従来法のように砂糖を覆せたまま冷蔵状態として長期間保持する必要性がないため、エキス分の酸化とか微生物的変質による風味の劣化,または腐敗が生じる惧れがなく、抽出エキスの品質を高めることができる。よって、本発明によれば、果実有効成分を新鮮な状態で抽出することができ、しかも果皮からも抽出できて、抽出量が多い。そして、抽出された果実有効成分は風味が豊かで、色調が良く、栄養成分が豊富であるとともに、鮮度がよい。また、海洋深層水を使用することでえぐ味が消えて味がよくなる。冷凍工程を入れるので、必要な時に随時、適量利用できる。
【0070】
得られた抽出エキスは高糖濃度の砂糖に起因する「砂糖やけ」がないため、抽出されたエキス分の味覚の変動がなくなり、抽出された果実エキスを各種のドリンク,ゼリー,水菓子,キャンデー,ジャム,ケーキ,和菓子等の製造時に添加して風味を高めることができる。また、エキス分を抽出した後の残滓は果実のエキス分がほとんど抽出されているので小量であり、しかも残滓には高糖濃度成分が残存せず、酸度が少なく水分量の高いペースト状態を呈しているので、この残滓を果樹園等の土壌に還元しても直ちに分解されて何らの問題も生じない。
【0071】
また、従来の機械的搾汁手段により果汁を得た後の残滓である果皮を、単に産業廃棄物として廃棄せずに有効利用することができるので、資源の有効利用の観点からも好ましく、かつ、果皮に残存しているエキス分,ビタミンC(VC)を始めとしてガン抑制物質及び香り成分を効果的に利用することができる。
【0072】
更に原材料と砂糖の混合物に添加する水として、海洋深層水の原水か脱塩水、もしくは該海洋深層水の濃縮水を用いることにより、海洋深層水に含まれている人体に必須の塩としてのミネラル成分を有効に生かすとともに該海洋深層水のミネラルバランスを再現することができて健康食品としても好ましい抽出果実有効成分が得られる。
【0073】
従って本発明によれば、果実及び果皮から引き出されるエキス分の抽出量と品質を高めるとともに海洋深層水の使用に伴ってミネラル成分の含有量を増大して味覚を高め、搾汁後の果皮の使用による資源の有効利用をはかるとともにエキス分を抽出した後の小量の残滓も果樹園等の土壌に還元することができる果実有効成分の抽出方法を提供することができる。
【0074】
なお、本発明は、従来法として砂糖漬による糖抽出法との対比でテストデータを出したが、糖抽出法の他の一般的な抽出法としては、加熱による水抽出がある。この方法は容易であるため、一般に多く用いられているが、熱による色、香り、栄養成分の著しい損傷、酸化防止剤、微生物繁殖防止剤としての砂糖が加わらないため、作業中の発酵、腐敗、老化が進行する等の大きな欠点があり、すぐれた果実有効成分を抽出することにおいて、抽出の質、量ともに本発明に遠く及ばない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した果実有効成分抽出工程の第1の実施例を示すフロー図。
【図2】本発明の第2の実施例を示すフロー図。
【図3】本発明の比較例を示すフロー図。
整理番号 P3284

Claims (8)

  1. 原材料としての果実を摩砕処理して砂糖と混合した後、該混合物と所定量の水と混合し、ねかし工程を経て水中に果実のエキス分を抽出することを特徴とする果実有効成分の抽出方法。
  2. 原材料としての果実を摩砕処理して砂糖と混合した後、該混合物と所定量の水と混合し、ねかし工程を経て水中に果実の一次エキス分抽出を行い、更に固液分離手段を用いて二次エキス分抽出を行うことを特徴とする果実有効成分の抽出方法。
  3. 固液分離手段としての遠心分離機を用いた請求項1又は2記載の果実有効成分の抽出方法。
  4. 固液分離手段としてメッシュの篩を用いた請求項1又は2記載の果実有効成分の抽出方法。
  5. 原材料と砂糖との混合物を、そのまま冷凍保管し、必要に応じて冷凍保管した原材料と砂糖の混合物を所定量の水と混合する請求項1,2,3又は4記載の果実有効成分の抽出方法。
  6. 原料の果実として搾汁残滓である果皮を使用する請求項1,2,3,4又は5記載の果実有効成分の抽出方法。
  7. 原材料と砂糖の混合物と水との重量比を1:5以上とした請求項1,2,3,4,5又は6記載の果実有効成分の抽出方法。
  8. 原材料と砂糖の混合物に加える水として、海面下200メートル以深の深海から取水した海洋深層水の脱塩水,もしくは海洋深層水の原水を所定濃度に希釈した水,又は海洋深層水の濃縮水を所定濃度に添加した水を用いた請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の果実有効成分の抽出方法。
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