JP3572281B2 - 海洋深層水を利用した発酵健康食品及びその製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は海洋深層水を利用した発酵健康食品及びその製造方法に関し、特には効能が認められているものの苦みや臭みがあって食用に適していない原料食品、例えばうこん,よもぎ,朝鮮人参,田三七人参を海洋深層水を媒体として発酵させることにより、苦みや臭みを抑制するとともに海洋深層水に含まれているミネラル成分を有効に生かして、まろやかな味わいを持つ発酵健康食品とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から成分の有用性の面で健康食品としての効能が認められているが、苦みや臭みがある原料食品、例えばうこん,よもぎ,朝鮮人参,田三七人参をそのまま食品として製品化しても、苦みや臭みが障害となって多くの人に敬遠されてしまい、消費者の食用に供することができないという問題がある。
【0003】
一方、近時は海洋深層水の持つ清浄性と豊富なミネラル成分が需要者の注目を浴びてブームを呼び、該海洋深層水を脱塩処理した水が飲料水の分野に進入している現状にある。上記の海洋深層水は室戸岬沖その他の複数個所で実用的に取水されており、通常海洋表層で見られる風波とか表層温度変化に伴う対流,混合も生じない環境下にある海水で、地上で使用されている各種の油類とか化学物質,農薬等の有害物質に起因する海洋汚染の影響を受けることがなく、しかも海水中の溶存有機物が非常に少なく、微生物的な観点から極めて清浄であるという特徴を有している。水温は年間平均で13℃以下という低温であり、人体が必要とする多くの天然元素を含んでいる。
【0004】
表1は海洋表層水と海洋深層水の各種項目に関して分析した結果を示す一覧表であり、一般項目をみると、水温平均は海洋表層水の21℃に対して海洋深層水は13.1℃と低く、pHは同8.19に対して7.87、DOは同8.33mg/Lに対して7.28mg/L、TOCは1.60mg/Lに対して0.98mg/Lで、ともに海洋深層水の方が低いが、生菌数は海洋表層水の103〜104に対して海洋深層水は102であり、一桁以上も低くなっている。
【0005】
【表1】
【0006】
ミネラル成分としての栄養塩類の項目では、NO3−Nは海洋表層水の1.49μg−at/Lに対して海洋深層水では25.9μg−at/L、PO4−Pは同0.34μg−at/Lに対して1.65μg−at/L、SiO2−Siは同13.6μg−at/Lに対して64.2μg−at/Lと海洋深層水の方が遙かに大きくなっている。他の微量元素の項目でも海洋表層水よりも海洋深層水の方が含有量が高いという分析結果が得られている。
【0007】
また、海洋深層水の脱塩水を原子吸光光度法により分析した結果、カルシウムが0.4mg/L、マグネシウムが1.0mg/L含まれていることが判明した。更に海洋深層水の濃縮水を同様に原子吸光光度法により分析した結果、カルシウムが560mg/L、マグネシウムが1700mg/Lも含まれているという結果が得られた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記したように、うこん,よもぎ,朝鮮人参,田三七人参などの原料食品は、成分の有用性から健康食品としての効能が認められているが、従来は原料食品をそのまま、もしくは加熱処理と味付け処理を施して食品用に供していたため、原料食品の持つ苦みや臭みが強烈であってきわめて食し難く、健康に良いことが分かっていても多くの人に敬遠されてしまうという課題がある。
【0009】
一方、近時は天然に存在する微量元素の重要性が見直されてきており、健康食品においても、この微量元素を供給することのできるものの提供が期待されている。
【0010】
他方で海水は微量元素を多く含んでおり、飲料その他の食品に添加する塩として優れているが、海洋汚染の進んだ現代では海水中の表層水はそのままでは添加することはできない。そこで近時では海洋深層水を脱塩処理した水が多く利用されているが、脱塩作業時に各種の栄養塩類及び微量元素等のミネラル成分の多くが除去されてしまうことが多く、前記表1中の海洋深層水の持つミネラルバランスを実現しているとはいい難いという問題がある。
【0011】
そこで本発明はこのような従来の健康食品が有している課題を解消して、苦みや臭みがあって食用に適していない原料食品を、海洋深層水を媒体として発酵させることにより、苦みや臭みを抑制するとともに海洋深層水に含まれている多くの天然微量元素(ミネラル)を含み、まろやかな味わいを持つ発酵健康食品を得ることを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、海洋深層水中に原料食品と発酵源とを混合して所定時間発酵させ、発酵後に海洋深層水中から原料食品を取りだして、蒸気で蒸す蒸着工程、乾燥工程、冷却工程を実施して作製した海洋深層水を利用した発酵健康食品とその製造方法を基本手段としている。上記発酵工程、蒸着工程、冷却工程の終了後に粉砕して、粉状の食品とするか、発酵工程、蒸着工程、冷却工程の終了後にスライスして、平板状の食品とする。
【0013】
前記海洋深層水は、該海洋深層水の原水,脱塩水,濃縮水の何れか1種又は複数種を用いる。また、前記発酵源としての微生物に、乳酸菌,酵母菌,麹菌の中から選択した1種又は複数の微生物を用いる。
【0014】
かかる海洋深層水を利用した発酵健康食品によれば、うこん,よもぎ,朝鮮人参,田三七人参などの成分の有用性から、健康食品としての効能が認められていても原料食品の持つ苦みや臭みが強烈であって食し難く、多くの人に敬遠されてしまう原料食品から苦みや臭みを緩和して食用に適した健康食品が提供可能となる。上記発酵工程、蒸着工程、冷却工程の終了後に粉砕して粉状の食品とするか、スライスして平板状の食品とすることにより、食品の使用目的に応じて使い分けることができる。また、発酵の媒体として海洋深層水の原水,脱塩水,濃縮水の何れか1種又は複数種を用いることによって発酵効率が高められるとともに、健康用としても好ましい発酵健康食品が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明にかかる海洋深層水を利用した発酵健康食品及びその製造方法の具体的な実施形態を説明する。本発明で用いる苦みや独特の臭みがあって味覚の強い原料食品として、前記うこん,よもぎ,朝鮮人参,田三七人参の外、ギムネマ,目薬の木,アケビ,アガリスク,アマチャズル,柿草子,ガルシニア,黒カリン,ショウブ,サラシアオブロンガ,センナ,冬虫夏草,はぶ草,ヤーコン,アンデスマカ人参等が挙げられる。
【0016】
図1は本実施形態にかかる発酵健康食品の製造工程例を示すフロー図であり、先ずステップ1でうこん、よもぎ,朝鮮人参,田三七人参等の苦みや独特の臭みがあって味覚の強い原料食品を用意し、ステップ2で原料食品の殺菌処理を行う。この殺菌処理は原料食品に付着している雑菌をなくして、後段の微生物による発酵が行いやすい状態を作るためである。上記のステップと並行してステップ3で海面下200メートル以深の深海から取水した海洋深層水を用意し、ステップ4で該海洋深層水の濾過を行ってから海洋深層水の脱塩水16、濃縮水17を得る。15は海洋深層水の原水であり、前記ステップ3で用意した海洋深層水と同一のものである。この原水15については濾過等の処理を行わない。
【0017】
ステップ5では、前記海洋深層水の原水15、脱塩水16もしくは濃縮水17の何れか1種又は複数種を調合タンクに入れて、この水中にステップ2で殺菌処理した原料食品とともに乳酸菌,酵母菌,麹菌の中から選択した1種又は複数の微生物である発酵源18を加えて混合し、ステップ6で任意の時間発酵させる。この発酵により原料食品から食品特有の成分が逃げることがなくなり、海洋深層水は発酵を促進する作用とともに原料食品の持っている苦みとか臭みを和らげ、かつ、海洋深層水に含まれているミネラル成分を浸透させる作用がある。
【0018】
上記発酵後に調合タンク内の海洋深層水から原料食品を取り出して、ステップ7で蒸気で蒸す蒸着工程を実施して発酵を停止させる。蒸着時間は約30分とする。次にステップ8で乾燥工程を行って原料食品が持っている水分値まで乾燥し、ステップ9で冷却工程を行い、更にステップ10で粉砕工程を行ってからステップ11で袋詰め等の包装工程を行ってステップ12で製品が完成する。ステップ10の粉砕工程に代えてスライス工程を行って、平板状の食品とすることもできる。
【0019】
製品に塩分とミネラルを補給するため、前記ステップ9の冷却工程で用いる水は従来の水道水等を用いずに海洋深層水の原水15もしくは該海洋深層水の濃縮水17を冷却水として使用して、噴射、混合後に冷却して塩入り発酵健康食品に仕上げることもできる。
【0020】
表2は本実施形態を適用した発酵うこんと、通常のうこんの100g当たりの成分を分析した結果である。発酵うこんは糖質,食物繊維,タンニン,クルクミン,ビタミンEが通常のうこんよりも多く含まれており、タンパク質,脂質,灰分,ナトリウム,カリウム,マンガン,亜鉛,鉄,マグネシウムは通常のうこんの方が若干多く含まれていることが分かる。表3は発酵うこんと通常のうこんから抽出した成分を分析した結果であるが、両者間には大差がない。
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
表2,表3から本実施形態を採用した発酵うこんと通常のうこんの成分値には若干の相違があるが、両者はほぼ近似した成分値を保持しているものと言える。
【0024】
本発明で採用した海洋深層水は、室戸岬沖の水深320メートル地点から取水した海水であり、深層水中に含まれている三態窒素のうち、アンモニア態窒素,亜硝酸態窒素はごく僅かであり、生物に与える影響は小さく、硝酸態窒素についても表層部では微量であったが、水深が増加するにつれて濃度が高まり、水深200メートル以深の水中での無機溶存態窒素の95%以上が硝酸態窒素で24μM存在している。その他リン酸態リンが1.7μM、珪酸態珪素が41μM溶存しており、いずれも表層部の5〜10倍以上の栄養塩濃度を有している。
【0025】
海洋深層水中に含まれている生体の発育上で必須の天然元素とは、Fe(鉄)、I(沃素)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Zn(亜鉛)、Co(コバルト)、Mo(モリブデン)、Se(セレン)、Cr(クロム)、Sn(スズ)、V(バナジウム)、F(フッ素)、Si(ケイ素)、Ni(ニッケル)、As(ヒ素)の15元素であり、これらの元素が海洋深層水に全てバランス良く含まれていることが大きな特徴となっている。従って海洋深層水は海洋生物の生長とか増殖に対しても大きな潜在能力を秘めた海水であるといえる。このような潜在能力は、近年メダイやコンブ、深海サンゴ等の養殖実験に利用されて大きな成果を上げていることからも実証されている。特にノルウエー沖の海洋深層水は、フィヨルド深層水と呼ばれてサケ養殖に適していることが報告されている。
【0026】
海洋深層水中の生菌数は、前記表1中に示したように表層水中のそれと比較して、1桁又はそれ以上少なくなっており、しかも病原生物はほとんど含まれていないため、海水に由来する魚病菌による病気に関する惧れは全くなく、発酵健康食品に採用した際の安全性が極めて高いという大きな特徴がある。本発明はこのような海洋深層水に含まれている天然元素を発酵健康食品に採り入れることによって、生体の発育を促進するという従来の健康食品では実現することができない特性を持つ食品を提供することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、うこん,よもぎ,朝鮮人参,田三七人参などの健康食品としての効能が認められていても原料食品の持つ苦みや臭みが強烈であって多くの人に敬遠されてしまう原料食品を、海洋深層水中に発酵源としての微生物とともに混合して所定時間発酵させてから蒸着工程、乾燥工程、冷却工程を実施して発酵健康食品を得たことにより、原料食品の持つ苦みや臭みを緩和して食用に適したまろやかな味わいを持つ健康食品を提供することができる。上記発酵工程、蒸着工程、冷却工程の終了後に粉砕して粉状の食品とするか、又はスライスして平板状の食品とすることによって使用目的に応じて使い分けることができる。
【0028】
特に発酵の媒体として海洋深層水の原水,脱塩水,濃縮水の何れか1種又は複数種を用いることによって発酵効率が高められ、しかも得られた食品の中に海洋深層水に含まれている各種の栄養塩類及び微量元素等のミネラル成分の多くが補給され、海洋深層水のミネラルバランスを再現した発酵健康食品が得られる。また、人体に必須の塩として海水中の天然塩が微量元素を多く含んでおり、健康食品に添加する塩としても最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態にかかる発酵健康食品の製造工程例を示すフロー図。
【符号の説明】
1…原料食品
3…海洋深層水
5…調合タンク
6…発酵工程
7…蒸着工程
9…冷却工程
10…粉砕工程
11…包装工程
12…製品
15…原水
16…脱塩水
17…濃縮水
18…発酵源
Claims (7)
- 海洋深層水中に原料食品と発酵源とを混合して所定時間発酵させ、発酵後に海洋深層水中から原料食品を取りだして、蒸気で蒸す蒸着工程、乾燥工程、冷却工程を実施して作製したことを特徴とする海洋深層水を利用した発酵健康食品。
- 発酵工程、蒸着工程、冷却工程の終了後に粉砕して、粉状の食品とした請求項1に記載の海洋深層水を利用した発酵健康食品。
- 発酵工程、蒸着工程、冷却工程の終了後にスライスして、平板状の食品とした請求項1に記載の海洋深層水を利用した発酵健康食品。
- 前記海洋深層水は、該海洋深層水の原水,脱塩水,濃縮水の何れか1種又は複数種を用いた請求項1,2又は3に記載の海洋深層水を利用した発酵健康食品。
- 前記発酵源としての微生物に、乳酸菌,酵母菌,麹菌の中から選択した1種又は複数の微生物を用いた請求項1,2,3又は4に記載の海洋深層水を利用した発酵健康食品。
- 原料食品として、うこん,よもぎ,朝鮮人参,田三七人参,ギムネマ,目薬の木,アケビ,アガリスク,アマチャズル,柿草子,ガルシニア,黒カリン,ショウブ,サラシアオブロンガ,センナ,冬虫夏草,はぶ草,ヤーコン,アンデスマカ人参を用いた請求項1,2,3,4又は5に記載の海洋深層水を利用した発酵健康食品。
- 苦みや独特の臭みがあって味覚の強い原料食品を殺菌処理してから、海洋深層水中に該原料食品と発酵源としての微生物を混合して所定時間発酵させ、発酵後に海洋深層水中から原料食品を取りだして、蒸気で蒸す蒸着工程、乾燥工程、冷却工程を実施して作製したことを特徴とする海洋深層水を利用した発酵健康食品の製造方法。
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