JP3564940B2 - クロロガリウムフタロシアニン結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のクロロガリウムフタロシアニン結晶の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真感光体に使用される光導電物質には、種々の無機系及び有機系の光導電物質が知られている。有機系光導電物質は、それを電子写真感光体に使用した場合、膜の透明性、良好な成膜性、可撓性を有し、無公害であるとともに、比較的低コストである等の利点があるために、従来から種々のものについて研究開発され、提案されてきている。また、従来の有機光導電物質について、その感光波長領域を近赤外線の半導体レーザの波長領域にまで伸ばすことにより、レーザプリンタ、デジタル複写機、FAX等のデジタル記録用の感光体として使用する要求が高まっており、半導体レーザ用の有機光導電物質として幾つかのものが提案されている。なかでも、特にフタロシアニン化合物については、その結晶型と電子写真特性との関係について数多くの報告が行われている。
【0003】
一般に、フタロシアニン化合物は、その製造方法または処理方法の相違により、幾つかの結晶型に分かれること及びその結晶型が異なるとフタロシアニン化合物の光電変換特性に大きな影響を及ぼすことが知られている。フタロシアニン化合物の結晶型については、例えば、無金属フタロシアニンについて見ると、α、β、ε、π、τ、X等の結晶型が知られており、また、クロロガリウムフタロシアニンに関しても、その結晶型と電子写真特性について多くの報告があり、例えば、特開平5−194523号公報及び特開平5−98181号公報には、特定のブラッグ角度に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶及びそれを用いた電子写真感光体が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のフタロシアニン化合物、特にクロロガリウムフタロシアニン結晶は、光感度及び耐久性の電子写真特性が必ずしも十分なものではなく、また、結着樹脂中における分散性にも問題があることから、更なる改善が望まれていた。
また、電子写真感光体の光感度は、含有される光導電物質により殆ど一義的に決まるものであるから、露光光源が必要とする光感度と一致しないと、文字の太りや細り及び解像度等の問題を起こすことがあり、高品質な画像を得るための感光体設計に制約を設けるものである。そこで、感光体の光感度を変化させるには、感光体層中の結着樹脂及び有機溶剤を種々変更する等の方法が採用されているが、感光体の構成上結着樹脂や有機溶剤として使用できるものが限られているから、現実には感光体の光感度を要求に応じて変えることは困難である。
【0005】
近年、感光体の光感度を所望の感度に適合させるものとして、例えば、特開平5−173345号公報には、異なる結晶型を有するフタロシアニンを混合し、その混合比を変化させて光感度を調整する方法及び特開平8−67829号公報には、中心金属の異なるフタロシアニンとしてチタニルフタロシアニンとバナジルフタロシアニンを混合して光感度を調整する方法が提案されている。しかしながら、これらに開示されている感光体は、繰り返し使用すると、電位変動が大きかったり、使用環境により電気特性が大きく変化する等の問題がある。さらに、複数のフタロシアニンを混合する方法は、フタロシアニンの製造工程が複雑化し、コストアップ要因ともなるため、実際には満足できるものではなかった。そこで、感光体に用いられる光導電物質の感度制御因子等を把握し、様々な光感度への要望に適応できる光導電物質の出現が望まれている。
【0006】
本発明は、従来技術における上記した実情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、高光感度を有し、耐久性が高く、優れた画像品質が得られるという良好な電子写真特性を示すとともに、結着樹脂中における分散性に優れたクロロガリウムフタロシアニン結晶の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、特定のクロロガリウムフタロシアニン結晶を乾式粉砕処理により結晶変換した後、メディアを用いることなく、特定の有機溶媒中で撹拌混合する湿式処理において、特定の撹拌時間及び特定の温度条件下で得られるクロロガリウムフタロシアニン結晶が、電子写真用光導電物質として非常に優れた性能を発現することを確認するとともに、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のクロロガリウムフタロシアニン結晶の製造方法は、I型クロロガリウムフタロシアニン結晶を乾式粉砕処理により結晶変換した後、非プロトン極性溶媒中で撹拌混合して湿式処理するクロロガリウムフタロシアニン結晶の製造方法において、該湿式処理が、温度を20〜70℃の範囲及び撹拌時間を2〜100時間の範囲で行われることを特徴とする。また、得られるクロロガリウムフタロシアニン結晶は、一次粒子径が0.15μm以下であり、かつ、BET法による比表面積値が30m2 /g以上であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法において、原料として使用するI型クロロガリウムフタロシアニン結晶は、次のようにして製造される。
まず、1,3−ジイミノイソインドリンを三塩化ガリウムと有機溶剤中で加熱縮合させることによりI型クロロガリウムフタロシアニン結晶が製造される。このとき使用する有機溶剤としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、メトキシナフタレン、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン等の反応不活性な高沸点溶剤が望ましい。また、加熱縮合温度は130〜220℃、好ましくは140〜180℃の範囲が選択される。
【0010】
次に、上記の方法により得られたI型クロロガリウムフタロシアニン結晶は、乾式粉砕処理されて高感度なクロロガリウムフタロシアニンに結晶変換される。この乾式粉砕に使用される装置としては、振動ミル、自動乳鉢、サンドミル、ダイノーミル、スエコミル、コボールミル、アトライター、遊星ボールミル、ボールミル等が挙げられる。乾式粉砕した後のクロロガリウムフタロシアニン結晶の平均粒径は、粉砕時間を調整することにより、0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下になるようにすることが好ましい。
【0011】
次に、本発明において、乾式粉砕された後のクロロガリウムフタロシアニン結晶は、非プロトン極性溶媒の存在下に湿式処理が行われる。この湿式処理工程は、メディアを用いることなく撹拌混合により行うことが一つの特徴である。この湿式処理工程に使用される非プロトン極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられるが、特に、ジメチルスルホキシドを用いることが好ましい。
【0012】
本発明における湿式処理は、上記の非プロトン極性溶媒を用いた混合液の温度が20〜70℃の範囲であり、好ましくは20〜50℃の範囲で行われる。混合液の温度がそれより高温になると、得られる結晶粒子は、粗大に成長するか又はその比表面積が減少するために、塗布液中において分散性が低下する。一方、混合液の温度がそれより低温になると、融点が約19℃であるジメチルスルホキシド等は凍結して撹拌不能になるから、上記の範囲に設定することが好ましい。クロロガリウムフタロシアニン結晶と極性溶媒の使用割合は、特に制限されないが、両者の接触効率を向上させるには1:5〜1:100の範囲が好ましい。
【0013】
また、本発明における上記した湿式処理は、混合液の撹拌時間が2〜100時間の範囲であり、好ましくは6〜50時間の範囲である。これより撹拌時間が少ないと、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の少なくとも7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶に変換することが不十分となり、そのために結晶性が低く塗布液中における分散性が低下する。一方、撹拌時間を長くすると、特に混合液温度も高い場合には、結晶粒子が粗大に成長するか又はその比表面積が減少することにより、塗布液中における分散性が低下する。その分散性が低下すると、黒ポチ、白ポチ等の画質欠陥を生じたり、塗布液の経時安定性が悪化して、ポットライフが短くなる等の不具合を生じる。
【0014】
本発明における湿式処理工程に使用する撹拌装置には、短時間に槽内全体を均一な混合液に撹拌できるものを選択することが理想的である。また、撹拌タンクは、底部にクロロガリウムフタロシアニン結晶が溜まらないような曲面を有するものを用いることが好ましく、また、側面には邪魔板を設置し、対流が激しく起こるようにすることが好ましい。攪拌用の翼には、上下に対流を起こせる形状のものが好ましい。その撹拌速度は50〜1000rpmの範囲が好ましく、より好ましくは100〜500rpmの範囲である。この撹拌は、高速にして撹拌効率を高くすると、溶剤中のクロロガリウムフタロシアニン結晶の濃度局在が無くなり、バラツキが防止されて、得られる結晶の品質安定に寄与することができる。本発明に使用される撹拌装置としては、具体的には、スリーワンモーター(TYPE300G、HEIDON社製)、IKA攪拌機(RW20.n、IKAラボアテクニック社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明においては、上記したように、クロロガリウムフタロシアニン結晶を非プロトン極性溶媒中で撹拌混合する湿式処理を行うことにより、結晶型が変換されて、目的とするCuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の少なくとも7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶を得ることができる。特に、得られるクロロガリウムフタロシアニン結晶の中で、塗布液としたときの分散性が良好であるから、特に一次粒子径が0.15μm以下であり、かつ、BETによる比表面積の測定値が、30m2 /g以上のものが好ましく、より好ましくは、30〜60m2 /gのものである。
【0016】
次に、本発明の製造方法により得られるクロロガリウムフタロシアニン結晶を電子写真感光体の光導電材料として使用する場合について説明する。
本発明において、クロロガリウムフタロシアニン結晶は、電子写真感光体の感光層が単層構造のもの、あるいは電荷発生層と電荷輸送層とに機能分離された積層構造のもの等の如何なるものにも適用することができる。
導電性基体としては、従来から使用されている如何なるものを用いてもよい。また、導電性基体の表面は、必要に応じて、画質に影響のない範囲で各種の処理を行うことができる。例えば、表面の陽極酸化処理、液体ホーニング等による粗面化処理、薬品処理、着色処理等を行うことができる。積層型感光体の場合には、導電性基体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが積層された感光層が設けられるが、その積層の順序はいずれが基体側にあってもよい。
【0017】
電荷発生層は、本発明の製造方法により得られるクロロガリウムフタロシアニン結晶及び適当な結着樹脂溶液より構成される。また、電荷発生材料としては、クロロガリウムフタロシアニン結晶のほかに、他の公知の電荷発生材料を併用してもよい。さらに、結着樹脂には、公知のものを適宜使用できる。電荷発生材料と結着樹脂の配合(重量)比は、40:1〜1:4、好ましくは20:1〜1:2である。電荷発生材料の比率が高すぎると塗布液の安定性が低下し、一方、低すぎると光感度が低下するので、上記の範囲に設定することが好ましい。
【0018】
電荷発生材料の分散に使用される溶剤としては、結着樹脂を溶解するものの中から適宜選択することができる。また、分散手段としては、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ボールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コボールミル、ロールミル等の方法が利用できる。また、塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μmの範囲、好ましくは0.03〜2μmの範囲である。
【0019】
電荷輸送層は、電荷輸送材料と結着樹脂より構成され、電荷輸送材料は公知のものが適宜使用できる。結着樹脂には、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリエステル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリスルホン、ポリメタクリル酸エステル、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン等が用いられる。電荷輸送材料と結着樹脂の配合(重量)比は、5:1〜1:5、好ましくは3:1〜1:3である。電荷輸送材料の比率が高すぎると電荷輸送層の機械的強度が低下し、一方、低すぎると感度が低下するので、上記の範囲に設定するのが好ましい。また、電荷輸送材料が成膜性を有するものを用いる際には、上記結着樹脂は使用しなくてもよい。
【0020】
電荷輸送層は、上記電荷輸送材料と結着樹脂とを適当な溶剤に溶解し、塗布することによって形成されるが、これらの塗布方法としては、上記の電荷発生層におけると同様の方法が用いられる。電荷輸送層の膜厚は、5〜50μmの範囲であり、好ましくは10〜40μmの範囲に形成することが好ましい。
【0021】
電子写真感光体において、感光層が単層構造の場合には、感光層はクロロガリウムフタロシアニン結晶及び電荷輸送材料が結着樹脂に分散された光導電層より形成される。この際、電荷輸送材料としては、公知のものが適宜使用でき、また、結着樹脂としては、上記したものと同様なものを使用できるから、感光層は上記したいずれかの方法により形成することができる。その際、電荷輸送材料と結着樹脂との配合(重量)比は、1:20〜5:1に設定するのが好ましく、また、クロロガリウムフタロシアニン結晶と電荷輸送材料との配合(重量)比は、1:10〜10:1に設定することが好ましい。
また、本発明においては、必要に応じて、感光層と基体の間に下引き層を設けてもよい。下引き層は、基体からの不必要な電荷の注入を阻止するために有効なものであり、感光体の帯電性を向上させる作用を有している。さらに、感光層と基体との接着性を向上させる作用も有している。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、「部」は「重量部」を意味する。
合成例1(I型クロロガリウムフタロシアニン結晶の合成)
1,3−ジイミノイソインドリン30部、三塩化ガリウム9.1部をジメチルスルホキシド230部中に入れ、160℃において4時間反応させた後、その生成物を瀘別して、ジメチルスルホキシドで洗浄し、続いてイオン交換水で洗浄し、ついで湿ケーキを60℃において48時間真空乾燥させることにより、I型クロロガリウムフタロシアニン結晶28部を得た。得られたI型クロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を、図1に示す。
【0023】
合成例2
合成例1で得られたI型クロロガリウムフタロシアニン結晶5部を、直径12mmのアルミナ製ビーズ50部とともにアルミナ製ポットに入れた。これを振動ミル(MB−1型、中央化工機社製)に装着し、これを100時間乾式粉砕してクロロガリウムフタロシアニン結晶4.5部を得た。得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を、図2に示す。
【0024】
実施例1
合成例2で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶4部とジメチルスルホキシド30部とを、メカニカルスターラーとしてスリーワンモーター(TYPE300G、HEIDON社製)を設けた2L円筒型容器に入れて、混合液温度40℃において15時間に亘り撹拌速度250rpmで撹拌した後、イオン交換水で洗浄し、瀘別した。次いで、60℃において48時間真空乾燥することにより一次粒子径が0.1μm弱のクロロガリウムフタロシアニン結晶3.6部を得た。得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を、図3に示す。
【0025】
実施例2
合成例2で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶4部とジメチルスルホキシド40部とを、メカニカルスターラーとしてスリーワンモーター(TYPE300G、HEIDON社製)を設けた2L円筒型容器に入れて、混合液温度40℃において20時間に亘り撹拌速度250rpmで撹拌した後、イオン交換水で洗浄し、瀘別した。次いで、60℃において48時間真空乾燥することにより一次粒子径が0.1μm弱のクロロガリウムフタロシアニン結晶3.6部を得た。得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図は、図3と同一のスペクトルを示した。
【0026】
実施例3
合成例2で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶4部とジメチルスルホキシド40部とを、メカニカルスターラーとしてスリーワンモーター(TYPE300G、HEIDON社製)を設けた2L円筒型容器に入れて、混合液温度40℃において25時間に亘り撹拌速度250rpmで撹拌した後、イオン交換水で洗浄し、瀘別した。次いで、60℃において48時間真空乾燥することにより一次粒子径が0.1μm弱のクロロガリウムフタロシアニン結晶3.6部を得た。得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図は、図3と同一のスペクトルを示した。
【0027】
実施例4
合成例2で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶4部とジメチルスルホキシド40部とを、メカニカルスターラーとしてスリーワンモーター(TYPE300G、HEIDON社製)を設けた2L円筒型容器に入れて、混合液温度30℃において25時間に亘り撹拌速度250rpmで撹拌した後、イオン交換水で洗浄し、瀘別した。次いで、60℃において48時間真空乾燥することにより一次粒子径が0.05μmのクロロガリウムフタロシアニン結晶3.6部を得た。得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図は、図3と同一のスペクトルを示した。
【0028】
実施例5
合成例2で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶4部とジメチルスルホキシド40部とを、メカニカルスターラーとしてスリーワンモーター(TYPE300G、HEIDON社製)を設けた2L円筒型容器に入れて、混合液温度50℃において25時間に亘り撹拌速度250rpmで撹拌した後、イオン交換水で洗浄し、瀘別した。次いで、60℃において48時間真空乾燥することにより一次粒子径が0.1μmのクロロガリウムフタロシアニン結晶3.6部を得た。得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図は、図3と同一のスペクトルを示した。
【0029】
比較例1
合成例2で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶4部とジメチルスルホキシド40部とを、メカニカルスターラーとしてスリーワンモーター(TYPE300G、HEIDON社製)を設けた2L円筒型容器に入れて、混合液温度80℃において25時間に亘り撹拌速度250rpmで撹拌した後、イオン交換水で洗浄し、瀘別した。次いで、60℃において48時間真空乾燥することにより一次粒子径が0.15μmのクロロガリウムフタロシアニン結晶4部を得た。得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図は、図3と同一のスペクトルを示した。
【0030】
比較例2
合成例2で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶4部とジメチルスルホキシド40部とを、メカニカルスターラーとしてスリーワンモーター(TYPE300G、HEIDON社製)を設けた2L円筒型容器に入れて、混合液温度40℃において1時間に亘り撹拌速度250rpmで撹拌した後、イオン交換水で洗浄し、瀘別した。次いで、60℃において48時間真空乾燥することにより一次粒子径が0.05μmのクロロガリウムフタロシアニン結晶4部を得た。得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を、図4に示す。
【0031】
比較例3
合成例2で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶4部とジメチルスルホキシド40部とを、メカニカルスターラーとしてスリーワンモーター(TYPE300G、HEIDON社製)を設けた2L円筒型容器に入れて、混合液温度40℃において120時間に亘り撹拌速度250rpmで撹拌した後、イオン交換水で洗浄し、瀘別した。次いで、60℃において48時間真空乾燥することにより一次粒子径が0.1μmのクロロガリウムフタロシアニン結晶4部を得た。得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図は、図3と同一のスペクトルを示した。
【0032】
参考例A
まず、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM−1、積水化学工業社製)8部をn−ブチルアルコール152部に加えて撹拌溶解させて、5重量%のポリビニルブチラール溶液を生成した。次に、トリブトキシジルコニウム・アセチルアセトネートの50%トルエン溶液(商品名:ZC540、松本交商社製)100部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:A1100、日本ユニカー社製)10部及びn−ブチルアルコール130部を混合した溶液を、上記のポリビニルブチラール溶液中に加えて、スターラーで撹拌し、下引き層形成用の塗布液を調整した。得られた塗布液を直径40mm×長さ319mmのアルミニウムパイプ上に浸漬塗布し、150℃において10分間加熱乾燥させて層厚1.0μmの下引き層を形成した。
一方、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM−S、積水化学工業社製)1部を、予め酢酸n−ブチル49部に溶解した溶液に、実施例1で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶1部を添加して5時間サンドミルで分散させて、これを酢酸n−ブチルで希釈して固形分濃度3.0重量%の電荷発生層形成用塗布液を調整した。得られた塗布液を上記した下引き層の上にリング塗布機によって塗布し、100℃において10分間加熱乾燥させて層厚0.20μmの電荷発生層を形成した。なお、分散後の上記クロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折により分散前の結晶型と比較して変化していないことを確認した。
次に、得られた電荷発生層の上に電荷輸送層を形成させた。即ち、N,N′−ビス−(p−トリル)−N,N′−ビス−(p−エチルフェニル)−3,3′−ジメチルベンジジン4部を電荷輸送材料とし、ポリカーボネートZ樹脂6部と共に、モノクロロベンゼン40部に溶解させ、得られた溶液を浸漬塗布装置を用いて上記電荷発生層上に塗布し、115℃で60分加熱乾燥させて層厚18μmの電荷輸送層を形成させることにより、電子写真感光体を作製した。
【0033】
参考例B
参考例Aにおいて、電荷発生材料として使用する実施例1で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶に代えて、実施例2で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶を使用したこと以外は、参考例Aとすべて同様にして電子写真感光体を作製した。
参考例C
参考例Aにおいて、電荷発生材料として使用する実施例1で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶に代えて、実施例3で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶を使用したこと以外は、参考例Aとすべて同様にして電子写真感光体を作製した。
【0034】
参考例D
参考例Aにおいて、電荷発生材料として使用する実施例1で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶に代えて、実施例4で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶を使用したこと以外は、参考例Aとすべて同様にして電子写真感光体を作製した。
参考例E
参考例Aにおいて、電荷発生材料として使用する実施例1で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶に代えて、実施例5で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶を使用したこと以外は、参考例Aとすべて同様にして電子写真感光体を作製した。
【0035】
比較例A
参考例Aにおいて、電荷発生材料として使用する実施例1で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶に代えて、比較例1で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶を使用したこと以外は、参考例Aとすべて同様にして電子写真感光体を作製した。
比較例B
参考例Aにおいて、電荷発生材料として使用する実施例1で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶に代えて、比較例2で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶を使用したこと以外は、参考例Aとすべて同様にして電子写真感光体を作製した。
比較例C
参考例Aにおいて、電荷発生材料として使用する実施例1で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶に代えて、比較例3で得たクロロガリウムフタロシアニン結晶を使用したこと以外は、参考例Aとすべて同様にして電子写真感光体を作製した。
【0036】
上記各参考例及び比較例で得られた電子写真感光体を評価するために、レーザプリンタ(XP−11:富士ゼロックス社製)を用いて、以下の測定を行った。この操作は、20℃、50%RHの環境下で、グリッド印加電圧−600Vのスコロトロン帯電器で帯電し(A)、780nmの半導体レーザを用いて、1秒後に7.0mJ/m2 の光を照射して放電を行い(B)、更に、3秒後に50mJ/m2 の赤色LED光を照射して除電を行う(C)というプロセスによって、各部の電位を測定した。この場合、(A)の電位VH は高い程、感光体の受容電位が高いために、コントラストを高くすることが可能であり、(B)の電位VL は低い程、高感度であり、(C)VRPの電位は低い程残留電位が少なく、画像メモリー及びカブリが少ない感光体であると評価することができる。また、10,000回の繰り返し帯電・露光後の各部の電位の測定も行った。さらに、これらの電子写真感光体をレーザプリンタ(商品名:4108、富士ゼロックス社製)に装着し、各種プリント画像について評価した。
上記の各参考例及び比較例に使用した電荷発生材料の比表面積値も記載した。得られた結果を表1に示す。なお、比表面積値は、BET式の比表面積測定器(フローソープII2300:島津製作所社製)を用いて測定した。
【0037】
【表1】
表1から明らかなように、参考例A〜Eで作製した電子写真感光体は、いずれも高感度であり、良好な電子写真特性を示し、また、画像品質も良好であった。また、これらは10,000回の繰り返し複写後の電気特性も安定している。また、実施例1〜3により得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶は、光感度及び比表面積値が相違しており、湿式処理工程の撹拌時間を長くする程、比表面積値が減少しVL も低くなることから、それらを制御できることが分かる。また、実施例4〜5で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶は、光感度及び比表面積値が異なり、湿式工程における混合液温度を高くする程、比表面積値が減少し、VL も高くなることから、それらを制御できることが分かる。
【0038】
一方、比較例A〜Cにおいて作製された電子写真感光体は、画像品質が不良であり、10,000回の繰り返し複写後の電気特性も不安定であることを示している。
【0039】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られるクロロガリウムフタロシアニン結晶は、特定の条件下に湿式処理するから、光感度及び比表面積値を調整することが可能である。本発明の製造方法により得られるクロロガリウムフタロシアニン結晶を感光層に含有させた電子写真感光体は、上記のように優れた電気特性を示し、良好な品質の画像を得ることができるとともに、繰り返し安定性の良好な電子写真特性を示すという優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例1で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を示す。
【図2】合成例2で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を示す。
【図3】実施例1で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を示す。
【図4】比較例2で得られたクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を示す。
Claims (1)
- I型クロロガリウムフタロシアニン結晶を乾式粉砕処理により結晶変換した後、非プロトン極性溶媒中で撹拌混合して湿式処理するクロロガリウムフタロシアニン結晶の製造方法において、該湿式処理が、温度を20〜70℃の範囲及び撹拌時間を2〜100時間の範囲で行われることを特徴とするクロロガリウムフタロシアニン結晶の製造方法。
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