JP3521493B2 - 微生物によるナフトールの製造法 - Google Patents

微生物によるナフトールの製造法

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JP3521493B2 JP21592294A JP21592294A JP3521493B2 JP 3521493 B2 JP3521493 B2 JP 3521493B2 JP 21592294 A JP21592294 A JP 21592294A JP 21592294 A JP21592294 A JP 21592294A JP 3521493 B2 JP3521493 B2 JP 3521493B2
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は染料、色素および香料の
原材料として有用なナフトールの製造法に関する。さら
に詳しくは、安全性が高くかつ大規模な製造が可能な、
微生物を用いたナフトールの有利な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】ナフトールの工業的な製法としては、ナ
フタレンのスルホン酸塩をアルカリ溶融する方法が一般
的であり、ナフタレンを酸化してナフトールを工業的に
製造する方法は行なわれていない。なぜならば、工業的
な酸化反応は過酸を用いる反応と電極酸化反応に大別で
きるが、過酸を用いる反応では爆発性のため危険であ
り、また電極酸化は反応の種類が限定されるので、ナフ
トールの製造には適していないためである。
【0003】一方、微生物を用いた酸化反応は、爆発の
危険性もなく、微生物の種類を選択すれば工業的に有用
な手段になりうる。しかし、微生物によるナフタレンの
代謝では、緑膿菌がナフトジオールを経由してサリチル
酸を生産する経路はよく知られているが、ナフトールを
生産する経路は知られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる問題を
解決するためになされたものであり、安全性が高く、か
つ大規模での反応に適用しうるナフトールの有利な製造
法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明はナフタレンにバ
シラス属に属する微生物を作用させて酸化反応を行なう
工程ならびに反応液からナフトールを採取する工程を含
んでなるナフトールの製造法に関する。
【0006】前記微生物はバシラス セレウスであるこ
とが好ましく、前記酸化反応は希釈された培地中、とく
には2〜20倍に希釈された培地中で行なわれることが好
ましい。また、前記酸化反応は、たとえばカラギーナン
などからなる支持体に固定化された微生物が用いられ、
該固定化の際にたとえばアセトン、ジメチルスルホキシ
ドなどの有機溶媒が用いられると好ましい。
【0007】
【実施例】本発明に使用されうる微生物は、バシラセア
エ(Bacillaceae )科のバシラス属に属するグラム陽性
の有芽胞桿菌であり、好ましくはバシラス セレウス
Bacillus cereus )、とくに好ましくは平成6年3月
7日に工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した、
受託番号 FERM P−14210である。バシラス
セレウスは土壌常在の通性嫌気性菌で、耕地、河川、
公園、山林などあらゆる土壌中に芽胞の状態で分布して
おり、周毛性べん毛を有し、運動性を示すグラム陽性の
有芽胞桿菌であって菌体の中央またはやや中央に楕円形
の芽胞が存在する。
【0008】前記微生物の培養には、通常、微生物の培
養に用いられる栄養源を含む液体培地が使用されうる。
前記栄養源は、炭素源および窒素源として肉エキス、ペ
プトンなどが用いられる。さらに、たとえばリン、マグ
ネシウム、鉄、マンガン、NaClなどの無機物質およびビ
タミン類などが適宜混合されうる。そのような培地の例
としては、たとえば蒸留水に魚(カツオ)肉エキス、ポ
リペプトン、NaClを溶解した液体培地があげられる。培
地は滅菌することが必要である。滅菌は通常の高圧蒸気
滅菌などにより行なうことができる。
【0009】前記微生物は、本発明の製造法に用いる前
に、通常の条件、たとえば、pH5〜9、好ましくはp
H6.5 〜7.5 にて、15〜40℃、好ましくは25〜35℃の温
度で所望の濁度となるまで、12〜48時間、前培養を行な
ってもよい。前培養を行なった培養物の中に直接基質を
加えて反応を行なってもよいし、基質を入れた反応用の
溶液中に前記培養物を適量加えてもよいし、または前培
養後に遠心分離によって菌体を集めて反応に用いてもよ
い。
【0010】反応の際に用いられる液体の種類はとくに
限定されないが、蒸留水、前記した液体培地などを用い
てもよい。希釈された液体培地を用いると反応の収率が
上昇するので好ましい。
【0011】本発明における「希釈された培地」および
「希釈培地」とは、通常用いられる量の栄養源を含有す
る液体培地を希釈してえられる培地を意味するが、少な
くとも炭素源が通常用いられる量より少なく含有され
る、好ましくは1/2〜1/20量、より好ましくは1/
5〜1/10量含有される培地をも含みうる。前記液体培
地の培地1000ml中に栄養源の含有量はたとえば魚肉(カ
ツオ)エキス(和光純薬社製、魚肉エキス((カツオ
製)、水分30%含有)10g、ポリペプトン(日本製薬社
製、総窒素12.5〜 14.5 %、アミノ酸窒素5.0 〜6.5 %
含有)10g、NaCl2gである。希釈された液体培地は、
好ましくは2〜20倍、より好ましくは5〜10倍に滅菌水
を用いて希釈されたものである。
【0012】反応液中の微生物の菌体量は、菌体が基質
および反応液に適切に接触しうるように選択するとよ
く、1〜10g菌体/100 ml反応液、好ましくは2〜5g
菌体/100 ml反応液で行なうとよい。菌体の量が少ない
と基質との接触の効率が低く、また菌体の量が多すぎる
と菌体による反応の効率が低下する。
【0013】菌体は、前記の前培養された菌体をそのま
ま用いてもよいが、支持体に固定化された菌体を用いる
とくり返し利用でき、また、プロダクトインヒビション
の原因となりうるナフトールを流通循環法、回分法(バ
ッチ法)または半回分法などによって反応液から除くこ
とができ、さらに連続的に多量のナフタレンを反応させ
ることができるので、好ましい。支持体用材料としては
たとえばカラギーナン、アルギン酸、寒天類などの、海
藻からえられた多糖類を含む種々のゲル化基剤、または
ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアク
リル酸(塩)などのゲル化能を有する吸水性ポリマーが
あげられる。これら支持体用材料のうちとくにカラギー
ナン、アルギン酸を用いることが好ましい。支持体の形
状はとくに限定されないが好ましくは球状である。たと
えば、ゲル化にともなって菌体を固定化する手順とし
て、支持体用材料を含む液体を加熱して溶解したのち
冷却し、ゲル化時に菌体を加える、支持体用材料を溶
液としたのち菌体を加え、ナトリウム塩、カルシウム塩
などの金属塩溶液中に滴下してゲル化させる、などがあ
げられる。支持体用材料のゲル化にともなって菌体を固
定化する際、アセトン、ジメチルスルホキシドなどの有
機溶媒が添加される。前記においては支持体用材料を
含む液体を加熱溶解ののち、熱による菌体への影響およ
び熱によって前記有機溶媒が蒸発することを考慮して、
固定化を30〜55℃にて行なうことが好ましい。前記支持
体用材料としてカラギーナンを用いての手順を行なう
ばあい、固定化は以下の方法にしたがって行なうとよ
い。蒸留水120 mlに対してκ−カラギーナン1.0 〜2.0
g、好ましくは1.2 〜1.6 gを添加して45〜55℃にて溶
解し、菌体2〜5gを加える。この液に0.1 〜2.0 ml、
好ましくは0.5 〜1.5 ml、最も好ましくは1.0 mlのアセ
トンを加えたのち、21〜25ゲージ、好ましくは21
〜22ゲージの注射針を取付けた注射器を用いて2〜3
%塩化カリウム水溶液500 〜1000ml中に滴下し、最大直
径が1〜5mm、好ましくは2〜4mm、とくに好ましくは
約3mmである粒状の菌体固定化物をうる。
【0014】基質であるナフタレンに前記微生物を反応
させる際、ナフタレンを粉砕したものをそのまま添加し
てもよいが、ナフタレンは水に難溶性であるため、有機
溶媒を少量用いて(1〜10ml有機溶媒/100 ml反応液、
1〜50mg基質/ml有機溶媒、好ましくは4〜5mg基質/
ml有機溶媒)溶解した後に添加するとよい。有機溶媒は
メタノール、アセトニトリルのような親水性が高いもの
を用いたばあいにナフトールが生成しにくいので、親水
性の低いもの、たとえばアセトン、ジメチルスルホキシ
ドなどが好ましい。基質は反応初期に一括して添加して
も、分割して添加してもよい。基質は反応液中1%(w/
v) 以下程度、好ましくは0.01〜0.1 %(w/v) となるよ
う添加するとよい。加える基質濃度が高すぎてもまた低
すぎても、反応率は低下する。反応はたとえばL字管ま
たは坂口フラスコなどを用いて、通常15〜40℃、好まし
くは25〜35℃にて、反応産物量が一定値に達するまで5
〜30時間、好ましくは12〜24時間行なう。固定化菌体を
用いたばあい、反応は48〜96時間、好ましくは60〜80時
間行なう。反応産物量は、おそらくはプロダクトインヒ
ビションにより一定値にとどまると考えられるので、反
応産物を反応液中から逐次採取しながら反応を継続する
ことにより、さらに高い収率がえられる。
【0015】反応時のpHは6.0 〜9.0 、好ましくはp
H6.5 〜8.0 に調製するとよい。6.0 より低いpHでは
反応が充分に行なわれず、5.0 より低いpHで行なうと
反応の効率はいちじるしく低下する。反応は通常、振と
うまたは撹拌しながら行なう。 反応終了後、ナフトー
ルを反応液から採取するには、一般的な単離方法が採用
されうる。すなわち、反応液より遠心などによって菌体
を除去したのち、エチルエーテルまたは酢酸エチルなど
を用いて2〜3回程度抽出し、乾燥、減圧濃縮などを行
なう。えられた抽出物は、カラム、好ましくはシリカゲ
ルカラムに付して精製し、ナフトールを単離する。シリ
カゲルカラムにて精製する際、石油エーテル/ジエチル
エーテル=8/2の溶媒を用いることが好ましい。精
製、単離した反応産物は、NMR、質量分析、元素分析
およびHPLCなどの通常の分析方法により分析されう
る。また単離した産物の定量は、HPLCなどを用いて
行なうことができる。
【0016】つぎに実施例により本発明をより詳細に説
明するが、これら実施例はもとより本発明の範囲を限定
するものではない。
【0017】実施例1 α−ナフトールの合成 坂口フラスコ(500 ml)4個に、魚肉エキス((カツオ
製)、和光純薬社製)10g、ポリペプトン(日本製薬社
製)10gおよびNaCl2gを蒸留水1000ml中に溶解
し、pH7.0 に調製して120 ℃で20分高圧蒸気滅菌した
培地をそれぞれ250 ml入れ、バシラス セレウス(富山
市五福地区の土壌より分離した菌を表1に示す各種検査
によって同定した。さらにこの菌は、平成6年3月7日
に工業技術院生命工学工業技術院研究所に寄託した(受
託番号 FERM P−14210))を一白金耳接種
して、28℃にて30時間振とう前培養し、充分に菌体を増
殖させた。つぎに基質であるナフタレンを30μモル/ml
アセトンの溶液として調製し、それぞれ15mlすなわち0.
45mモル添加した。添加後、28℃にて24時間振とうし、
酸化反応を行なった。反応終了後、450 ×g、10分間の
遠心分離によって菌体を除去し、反応液を400 mlのエチ
ルエーテルで2回抽出して、えられた合計800mlの溶液
を減圧下で濃縮した。抽出した反応産物はついでシリカ
ゲルカラム(Kieselgel 60 、1×30cm、溶媒:石油エー
テル/ジエチルエーテル=8/2)にて精製し、α−ナ
フトールを単離した。単離したα−ナフトールはHPL
C(カラム C−18、4mm φ ×150 mm、溶媒:メタ
ノール/水(3/7〜9/1)グラジエント法、流速1
ml/min 、検出波長230 nm)により純度を確認したの
ち、1H−NMR(重クロロホルム、400 MHz)、質
量分析(分子イオンピークM/E=144.0 )および元素
分析(測定値 C:83.17 (%)、H:5.79(%)、
N:0.00(%)、計算値 C:83.33 (%)、H:5.55
(%)、N:0.00(%))で構造を確認した。 1H−N
MRのチャートを図1に示す。
【0018】また、えられた反応液10mlを酢酸エチル2
mlで3回抽出したものを前記と同様のHPLCを用いて
内部標準法により、α−ナフトールの定量を行なった。
【0019】
【表1】
【0020】実施例2 低温下でのα−ナフトールの合
成 酸化反応を23℃で行なったことを除いては実施例1と同
様の操作を行ない、えられるα−ナフトールの定量分析
を行なった。
【0021】実施例3 高温下でのα−ナフトールの合
成 酸化反応を33℃で行なったことを除いては実施例1と同
様の操作を行ない、えられるα−ナフトールの定量分析
を行なった。
【0022】実施例4 高pHでのα−ナフトールの合
成 酸化反応をpH8.1 で行なったことを除いては実施例1
と同様の操作を行ない、えられるα−ナフトールの定量
分析を行なった。
【0023】比較例1 コントロールの反応 基質を添加しないことを除いては実施例1と同様の操作
を行ない、α−ナフトールの定量分析を行なった。
【0024】実施例1〜4および比較例1でえられた結
果を表2に示す。
【0025】結果は、 反応率(%)=[(反応前のナフタレン量−反応後のナ
フタレン量)/反応前のナフタレン量]×100 選択率(%)=(生成したα−ナフトール量/消費した
ナフタレン量)×100 収率(%)=(生成したα−ナフトール量/反応前のナ
フタレン量)×100 で表した。表2の結果より明らかなように、反応温度28
℃、pH7.0 が反応の至適条件であった。
【0026】
【表2】
【0027】実施例5 リンを添加した培地を用いたα
−ナフトールの合成 培養および反応培地にリンとしてNH4 2 PO4 を0.
5 g/l添加したことを除いては実施例1と同様の操作
を行ない、えられるα−ナフトールの定量分析を行なっ
た。
【0028】実施例6 マグネシウムを添加した培地を
用いたα−ナフトールの合成 培養および反応培地にマグネシウムとしてMgSO4
7H2 Oを0.5 g/l添加したことを除いては実施例1
と同様の操作を行ない、えられるα−ナフトールの定量
分析を行なった。
【0029】実施例7 鉄を添加した培地を用いたα−
ナフトールの合成 培養および反応培地に鉄としてFe(NO3 2 を0.02
g/l添加したことを除いては実施例1と同様の操作を
行ない、えられるα−ナフトールの定量分析を行なっ
た。
【0030】実施例8 マンガンを添加した培地を用い
たα−ナフトールの合成 培養および反応培地にマンガンとしてMnCl2 ・4H
2 Oを0.02g/l添加したことを除いては実施例1と同
様の操作を行ない、えられるα−ナフトールの定量分析
を行なった。
【0031】実施例5〜8でえられた結果を表3に示
す。無機物質としてFe(NO3 2を添加することに
より若干選択率および収率が上昇することがわかった。
【0032】
【表3】
【0033】実施例9 α−ナフトールの合成 500 mlの坂口フラスコに実施例1で使用したと同様の培
地を250 ml入れて、バシラス セレウスを一白金耳接種
して、28℃にて30時間振とう前培養し、菌体を増殖させ
た。450 ×g、10分間遠心分離を行なって菌体を集め、
湿重量を測定すると2.9 gであった。基質であるナフタ
レンを30μモル/mlアセトンの溶液として調製し、6.0
mlすなわち180 μモルを新しい培地(実施例1に示した
と同じ組成の培地)100 mlとともに菌体に添加した。28
℃にて振とうして酸化反応を開始し、開始後0、3、
6、12、および24時間ののちのα−ナフトールの収率を
実施例1と同様の方法で10mlの反応液を酢酸エチル2ml
で3回抽出したものをHPLCを用いて測定した。
【0034】図2にα−ナフトールの収率の経時的変化
を示す。反応後24時間で約20%の収率がえられた。
【0035】実施例10 生理食塩水中でのα−ナフトー
ルの合成 実施例9と同様の菌体培養を行ない菌体を集め、湿重量
を測定すると3.9 gであった。基質であるナフタレンを
30μモル/mlアセトンの溶液として調製し、6.0 mlすな
わち180 μモルを滅菌した生理食塩水100 mlとともに菌
体に添加した。実施例9と同様に28℃にて酸化反応を開
始し、開始後0、3、6、12、および24時間ののちのα
−ナフトールの収率を測定した。
【0036】図3にα−ナフトールの収率の経時的変化
を示す。反応後約12時間でおよそ15%の収率となり、そ
れ以上長時間反応を行なっても収率は増大しなかった。
【0037】実施例11 基質として粉末状のナフタレン
を用い、生理食塩水中で行なったα−ナフトールの合成 実施例9と同様の菌体培養を500 mlの培地を用いて行な
い菌体を集め、湿重量を測定すると4.4 gであった。基
質であるナフタレン0.1 g(約780 μモル)をつぶして
粉状とし、滅菌した生理食塩水100 mlとともに菌体に添
加した。実施例9と同様に28℃にて酸化反応を開始し、
開始後0、6、12、24、36および72時間ののちのα−ナ
フトールの生成量を測定した。
【0038】図4にα−ナフトールの生成量の経時的変
化を示す。反応後36時間で生成量は最大となるものの、
収率は約1%程度であり、有機溶媒に溶解しないで基質
を添加するときわめて反応の効率が低いが、反応は起こ
ることが明らかとなった。
【0039】実施例12 希釈培地を用いたα−ナフトー
ルの合成 実施例1と同様にバシラス セレウスを29℃にて48時間
振とう前培養して菌体を増殖させたのち、遠心分離(40
0 ×g、10分)によって湿菌体をえた。
【0040】実施例1に記載の液体培地に滅菌水を加え
て2倍、5倍、10倍および20倍の倍率で希釈した培
地を調製した。各培地および滅菌蒸留水250ml 中に前記
菌体(湿重量1.5 g)を加え、アセトン6mlに溶解した
ナフタレン23mgをそれぞれ滴下して、滴下後29℃にて80
時間まで振とう培養することにより反応を行なった。そ
れぞれ10、20、30、60および80時間後(20倍希釈培地お
よび蒸留水を用いたばあいにおいては10および30時間後
のみ)に生成したα−ナフトールの収率を定量した。
【0041】図5に各々の収率の経時変化を示し、表4
に30時間後の各収率の数値を示す。
【0042】
【表4】
【0043】希釈倍率10倍までの範囲においては、希釈
倍率が高いほど、α−ナフトールの収率が高く、また、
より短時間で高収率に達することがわかった。
【0044】これは、希釈により反応系に存在する炭素
源が不足するため、菌体がナフタレンを炭素源として利
用しようとすることに起因すると思われる。
【0045】また20倍希釈培地および蒸留水を用いた結
果、10倍希釈培地におけるよりも速やかに高収率に達す
るが、長期間にわたって高収率が維持されるとはいえな
いことが示唆された。
【0046】実施例13 希釈培地中、菌体を大量に用い
て行なったα−ナフトールの合成 湿重量6.5 gの菌体を用いて、5倍希釈の培地中で実施
例12に記載したと同様の条件で反応を行なった。
【0047】72時間後のα−ナフトールの収率は29.4%
であった。
【0048】前記の結果のように菌体量に比例してα−
ナフトールの収率が増加しないのは、生成したα−ナフ
トールが反応率30%前後に達すると酸化反応を阻害する
ためであると考えられた。
【0049】実施例14〜16 カラギーナンに固定化した
菌体を用いたα−ナフトールの合成 実施例1と同様にバシラス セレウスを29℃にて48時間
振とう前培養して菌体を増殖させたのち、遠心分離によ
って湿菌体をえた。
【0050】この菌体2gを、κ−カラギーナン(和光
純薬社製)700 mgを蒸留水60mlに55℃にて溶解した水溶
液に加え、ついでアセトンを実施例14では0.5 ml、実施
例15では1.0 ml、実施例16では1.5 ml添加した。この液
体を2%塩化カリウム水溶液300 ml中に21ゲージの注
射針を備えた注射器を用いて滴下し、直径約3mmの粒状
の菌体固定化物を作製した。ついでこの固定化物を200
メッシュの金網を用いてろ過し、液体を除去したのち25
0 mlの液体培地中に入れ、アセトン6mlに溶解したナフ
タレン23mgを滴下して、29℃にて反応を開始した。21日
後まで3日ごとに反応液を交換し、その都度ナフタレン
溶液(23mg/6mlアセトン)を追加しながら反応を継続
し、経時的にα−ナフトールの収率を定量した。
【0051】比較例2 固定化の際にアセトンの添加を行なわなかった以外は実
施例14と同様に固定化および反応を行なった。
【0052】表5に実施例14〜16および比較例2でえら
れた結果を示す。
【0053】
【表5】
【0054】表5から明らかなように、固定化を行なう
際アセトンを添加してえられた固定化菌体を用いると、
反応開始3日後において反応の収率が向上した。6〜21
日後に収率が低下するのは菌体の増殖率が次第に低下す
るためであると思われる。
【0055】実施例17 固定化の際に加えるアセトンの量を0.5 mlとし、実施例
14と同様に固定化を行なったのち、実施例14と同様の条
件で72時間後まで反応を継続し、0、24、48、72時間後
に生成したα−ナフトールの収率を定量した。
【0056】比較例3 固定化の際にアセトンを加えなかったこと以外は実施例
17と同様に、固定化ならびに反応を行ない、α−ナフト
ールの収率を定量した。
【0057】図6に実施例17および比較例3における各
々の収率の経時変化を示し、表6に各々の48時間後およ
び72時間後におけるα−ナフトールの収率の数値を示し
た。
【0058】
【表6】
【0059】図6および表6から明らかなように、固定
化の際に0.5 mlのアセトンを添加することで、α−ナフ
トールの収率は向上した。
【0060】
【発明の効果】本発明によれば、所定の微生物をナフタ
レンに作用させることにより、安全性が高く、かつ工業
的規模でナフトールを生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造法によってえられたα−ナフトー
ルの 1H−NMRの結果を示す図である。
【図2】本発明の実施例9において合成されたα−ナフ
トールの収率の経時的変化を示す図である。
【図3】本発明の実施例10において合成されたα−ナフ
トールの収率の経時的変化を示す図である。
【図4】本発明の実施例11におけるα−ナフトール生成
量の経時的変化を示す図である。
【図5】本発明の実施例12におけるα−ナフトールの収
率の経時的変化を示す図である。
【図6】本発明の実施例17および比較例3におけるα−
ナフトールの収率の経時的変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 糸井 泰 大阪市鶴見区鶴見1−1−9 荒川化学 工業株式会社研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−207392(JP,A) Arch Microbiol. (1984),Vol.138,No.4,p. 283−286 Chemistry Letters (1994),No.7,p.1315−1316 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 3/00 - 11/00 C12N 1/00 CA(STN) BIOSIS/MEDLINE/WPID S(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ナフタレンにバシラス セレウス FE
    RM P−14210を作用させて酸化反応を行なう工
    程ならびに反応液からナフトールを採取する工程を含ん
    でなるナフトールの製造法。
  2. 【請求項2】 前記酸化反応が希釈された培地中で行な
    われる請求項記載の製造法。
  3. 【請求項3】 前記培地が2〜20倍に希釈された培地
    である請求項記載の製造法。
  4. 【請求項4】 前記酸化反応を行なう工程において、前
    記微生物が支持体に固定化されており、該固定化の際に
    有機溶媒が添加される請求項1、2または3記載の製造
    法。
  5. 【請求項5】 前記支持体がカラギーナンからなり、前
    記有機溶媒がアセトンまたはジメチルスルホキシドであ
    る請求項記載の製造法。
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