JPH06277079A - パラトルイル酸の製造方法 - Google Patents

パラトルイル酸の製造方法

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JPH06277079A
JPH06277079A JP25087793A JP25087793A JPH06277079A JP H06277079 A JPH06277079 A JP H06277079A JP 25087793 A JP25087793 A JP 25087793A JP 25087793 A JP25087793 A JP 25087793A JP H06277079 A JPH06277079 A JP H06277079A
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paraxylene
paratoluic acid
microorganism
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JP25087793A
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Masaharu Ishikura
倉 正 治 石
Daizo Takeuchi
内 大 造 武
Tokio Iizuka
塚 時 男 飯
Kenichi Uehara
原 健 一 上
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】エネルギーをほとんど要せずに微生物による変
換によってパラキシレンから感光色素、蛍光染料、防黴
剤、顔料、農薬等の原料として有用なパラトルイル酸を
効率よく、安価に製造するパラトルイル酸の製造方法の
提供。 【構成】ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微生物
を用いて、パラキシレンをパラトルイル酸に変換するパ
ラトルイル酸の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パラキシレンを微生物
を用いて変換しパラトルイル酸を製造する方法に関す
る。さらに詳しく述べると、ロドコッカス(Rhodococcu
s)属に属する微生物を培養し、培養液にパラキシレンを
添加して、培養液中に変換生成され蓄積したパラトルイ
ル酸を採取することからなるパラトルイル酸の製造方法
に関する。また、パラキシレンからパラトルイル酸に変
換する速度の速い微生物を培養し、効率よくパラトルイ
ル酸を製造する方法に関する。そして、使用する微生物
を反応液から容易に分離し、パラトルイル酸を製造する
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】微生物によるパラキシレンからパラトル
イル酸への転換では、パラキシレンを唯一の炭素源とす
るシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aerugi
nosa)のパラキシレン代謝経路でパラトルイル酸を検出
し、20ml(17.32g)のパラキシレンから最大
3.6gのパラトルイル酸(収率21%)を得ている
(Toshio OMORI et al, Agr. Biol. Chem., Vol.31, N
o.11, 1337〜1342頁, 1967) 。しかし、ロドコッカス
属を用いてパラキシレンをパラトルイル酸に変換した例
はなく、高い変換率でパラキシレンから微生物変換によ
りパラトルイル酸を製造した例はない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、常温
・常圧で進行する経済的な微生物転換法を利用して、パ
ラトルイル酸を製造する新規な方法を提供することであ
る。本発明の他の目的は、パラキシレンをパラトルイル
酸に変換する変換速度の高い菌体を培養し、パラトルイ
ル酸を効率よく製造する方法を提供することである。ま
た、本発明の別の目的は、反応液から微生物菌体を分離
するのを容易にし、回分式または連続式で反応を行う方
法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、パラトル
イル酸の製造方法において化学合成法よりも、省エネル
ギー的な微生物の物質変換能に着目した。すなわち、微
生物にその増殖を支える基質(出発物質)を与えて増殖
させ、この培養液にパラキシレンを共存させて、これを
酸化・変換させるコ・オキシデーション(Co-oxidatio
n)の方法によってパラトルイル酸を生成させ、生成物
(パラトルイル酸)を分解させることなく著量蓄積させ
る方法を完成することを目的とした。
【0005】そこで、本発明者らはコ・オキシデーショ
ンによりパラキシレンからパラトルイル酸を生産する能
力を持つ微生物を検索した結果、ロドコッカスに属する
細菌菌株に、パラキシレンをパラトルイル酸に変換する
菌株を見いだした。さらに詳しくは、ロドコッカス・エ
スピーM192株が、上述したように、コ・オキシデー
ション作用によりパラキシレンを変換して、パラトルイ
ル酸を生成することができることを知見し、また、パラ
キシレンをパラトルイル酸に変換する菌株を、培養時
に、窒素源として、硝酸ナトリウムおよびペプトン、炭
素源として、マンニトールを用いて培養することにより
この微生物の増殖が高まることにより多くの菌体を得る
ことができ、また窒素源として、硝酸アンモニウム、炭
素源としてマルトースを用いて培養することによりパラ
キシレンをパラトルイル酸に変換する変換速度の速い菌
体を得られることを知見し、さらに、反応液から使用し
た微生物を分離し易く、回分式あるいは連続式で反応を
行なえる方法を知見し、本発明に至った。
【0006】すなわち、本発明は、ロドコッカス(Rhod
ococcus)属に属する微生物を用いて、パラキシレンをパ
ラトルイル酸に変換するパラトルイル酸の製造方法を提
供する。
【0007】微生物ロドコッカス・エスピーM192株
を用いて、パラキシレンをパラトルイル酸に変換するパ
ラトルイル酸の製造方法を提供する。
【0008】さらに、前記微生物の菌体を、パラキシレ
ンを添加した培地で培養するパラトルイル酸の製造方法
を提供する。
【0009】また、前記微生物の菌体をパラキシレンを
添加した培地で増殖させた後、その微生物の菌体を回収
し、得られた菌体を用いてパラキシレンをパラトルイル
酸に変換するパラトルイル酸の製造方法を提供する。
【0010】さらに、前記微生物の菌体を培養して増殖
させた後、パラキシレンを添加して培養を継続し、パラ
キシレンをパラトルイル酸に変換するパラトルイル酸の
製造方法を提供する。微生物を培養するのに用いる培地
中に、窒素源として硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム
および/またはペプトンが含有されているのが好まし
い。微生物を培養するのに用いる培地中に、炭素源とし
てマンニトールおよび/またはマルトースが含有されて
いるのが好ましい。
【0011】パラキシレンからパラトルイル酸を生成す
る能力を有する微生物をゲル状担体に固定化し、エネル
ギー源とパラキシレンとを含有する水溶液と接触反応さ
せるパラトルイル酸の製造方法を提供する。前記パラキ
シレンからパラトルイル酸を生成する能力を有する微生
物が、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)M1
92であるのが好ましい。前記ゲル状担体として、アル
ギン酸、カッパ−カラギーナンまたはポリアクリルアミ
ドからなる群から選ばれるいずれかの担体を用いるのが
好ましい。前記エネルギー源とパラキシレンとを含有す
る水溶液を連続的または間欠的に補給しながら前記固定
化微生物と接触反応させるのが好ましい。
【0012】以下に、本発明を詳細に説明する。本発明
で使用する微生物は、ロドコッカス(Rhodococcus)属と
同定される細菌菌株であって、パラキシレンをパラトル
イル酸に変換する能力のある菌株であればよい。特に、
ロドコッカス・エスピーM192(Rhodococcus sp. M1
92)であるのが好ましい。
【0013】本発明で使用する微生物の内、ロドコッカ
ス・エスピーM192の起源および同定に用いられる方
法は、特願平04−178171号の明細書に記載のと
おりである。
【0014】具体例としては、Rhodococcus sp. M192の
識別のための表示で示される微生物として平成04年0
3月17日付で、受託番号微工研寄第12882号(F
ERM P−12882)として微工研に受託された微
生物を使用することができる。
【0015】さらに、新たに土壌から単離した菌株で、
バージース・マニュアル・オブ・システマチック・バク
テリオロジー(Bergery's Mannual of Systematic Bacte
riology)に記載の同定方法により、ロドコッカス属、特
に、ロドコッカス・エスピーM192株の菌株であると
同定した菌株であってもよい。
【0016】本発明の製造方法は、微生物を増殖させる
工程および微生物を利用してパラキシレンをパラトルイ
ル酸に変換する工程を包含する。また、微生物を増殖さ
せる工程(増殖工程)と微生物を利用してパラキシレン
をパラトルイル酸に酸化する工程(変換工程)は、別々
の工程であっても、同時に行われる工程であってもよ
い。
【0017】すなわち、本発明の製造方法は、ロドコッ
カス・エスピーM192株の菌体のコ・オキシデーショ
ン作用を利用することにより、微生物の培養液中に出発
物質を共存させ、微生物の増殖は、変換させたい出発物
質とは別の増殖に必要な炭素源、窒素源で行い、増殖し
た微生物が培養液中に共存した出発物質を酸化変換させ
ること、あるいは増殖した微生物を分離回収した後、回
収した微生物の菌体を新たな培地に懸濁した反応液を調
製して、変換反応に必要なエネルギー源、例えばグルコ
ース、グリセリンなどを供給しながら、微生物の酸化能
を利用して出発物質(基質)を酸化変換させることであ
る。
【0018】本発明の製造方法では、微生物ロドコッカ
ス属のロドコッカス・エスピーM192株を用いて工業
的規模でパラキシレンをパラトルイル酸に酸化すること
ができる。
【0019】本発明の製造方法で使用する微生物を増殖
する(増殖工程)ための培地としては、通常の細菌用培
地を使用してもよいが、この菌株が良好に成育できる培
地で、かつ微生物による変換を進行させるものであれ
ば、いかなる組成の培地も使用できる。この時に用いる
培地は、培地成分として、適当な炭素源、窒素源および
無機塩などを含有し得る。
【0020】また、本発明の製造方法で、変換工程に使
用する培地は、増殖工程用と同様の培地を用いてもよ
く、また異なる培地を用いてもよい。また、菌体を増殖
させた後、菌体のパラトルイル酸に対する変換作用を維
持できる溶媒、例えば生理食塩水の様な溶液を培地の代
わりに用いてもよい。変換用の培地成分には、前記菌体
を増殖するための培地に含まれる成分と同じ成分を含み
うる。例えば、変換用の培地に、グリセリン、フルクト
ース、グルコースなどの炭素源を含有する生理食塩水を
用いてもよい。
【0021】炭素源としては、本発明に用いる菌株が利
用できる任意の炭素源を使用できる。かかる炭素源とし
て、リボース、グルコース、フルクトース、マンノー
ス、マルトースなどの糖類、マンニトール等の糖アルコ
ール、大豆油、オリーブ油などの脂質、メタノール、エ
タノール、グリセロールなどのアルコール、コハク酸、
マロン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの有機酸、廃
糖蜜などの農産物残渣が例示できる。中でも、炭素源と
して、マンニトールまたはマルトースを用いるのが好ま
しい。
【0022】菌体増殖用の培地の場合には、上述したよ
うな本発明に用いる菌体が利用しうる1種または2種以
上の炭素化合物を任意に炭素源として利用できる。
【0023】また、変換培養用の培地の場合には、増殖
用に使用した全ての炭素源が利用できるが、グルコー
ス、グリセリン、マンニトール、マルトース、フルクト
ース、ラクトースなど本発明に用いる菌体の利用しやす
い有機化合物や単糖類が望ましい。炭素源の含有量は、
炭素源の種類によっても異なるが、培地中0.2重量%
以上であるのが望ましい。
【0024】また、特にマンニトールまたはマルトー
ス、あるいは両者の混合物を用いる場合、下記の濃度で
用いるのが菌体の増殖、パラトルイル酸の変換速度を向
上する点で好ましい。マンニトールの濃度は、培地中
0.1〜100g/L、特に6〜50g/Lであるのが
菌体が十分に増殖するので好ましい。マルトースである
場合、マルトースの濃度は、培地中0.1〜100g/
L、特に2〜50g/Lであるのがパラトルイル酸の変
換速度を低下しないので好ましい。
【0025】また、マンニトールとマルトースの混合物
を用いる場合、マンニトールとマルトースとの混合割合
は、5:95〜95:5(重量比)であって、合計量
で、培地中0.1〜100g/Lであるのが、菌体の増
殖およびパラトルイル酸の変換速度の点で好ましい。
【0026】窒素源としては、とくに限定されないが、
肉エキス、ペプトン、酵母エキス、コーンスティープリ
カー、カザミノ酸、尿素などの有機窒素源、および硝酸
アンモニウム、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなど
の無機窒素源が利用できる。有機窒素源を用いた場合、
これには炭素も含まれているので、別の炭素源を新たに
加えることは、増殖用培地の場合には必ずしも必要では
ない。中でも、ペプトン、硝酸ナトリウムであるのが菌
体の増殖の点から、硝酸アンモニウムであるのがパラト
ルイル酸への転換速度の点から好ましい。また、窒素源
として、ペプトン、硝酸アンモニウムおよび硝酸ナトリ
ウムの単独であっても、二種以上の混合物であってもよ
い。
【0027】ペプトンを用いる場合、ペプトンの濃度
は、培地中0.1〜100g/L、特に1〜50g/L
であるのが菌体が十分に増殖するので好ましい。硝酸ナ
トリウムを用いる場合、硝酸ナトリウムの濃度は、培地
中0.1〜100g/L、特に1〜50g/Lであるの
が菌体が十分に増殖する点で好ましい。硝酸アンモニウ
ムを用いる場合、硝酸アンモニウムの濃度は、培地中
0.1〜100g/L、特に1〜50g/Lであるのが
パラトルイル酸の変換速度が低下しないので好ましい。
【0028】また、ペプトン、硝酸アンモニウムおよび
硝酸ナトリウムの二種以上の混合物であってもよい。硝
酸アンモニウムの場合、ペプトンや酵母エキスと併用し
ないほうがパラトルイル酸の変換速度が速い。また、硝
酸ナトリウムの場合、ペプトンとの組み合わせが、菌体
の増殖の点で好ましい。硝酸ナトリウムとペプトンとの
混合割合は、10:90〜90:10(重量比)であっ
て、合計量で培地中0.1〜100g/Lであるのが菌
体の増殖の点で好ましい。
【0029】無機塩類としては、各種の硫酸塩、リン酸
塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、カ
リウム塩などが使用できる。さらに、微量の重金属塩
(例えば鉄塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、モリブデン
塩、コバルト塩など)を培地に含有させてもよい。
【0030】培養方法としては、振盪培養法、深部通気
攪拌培養法などの方法により行なうことができる。培養
温度は25〜35℃、pHは中性付近が望ましい。培養
日数は反応の進行に応じて決めることができるが、通常
は、菌体の増殖工程に1〜2日が適当である。2日を超
えると、副産物を生じることから望ましくない。また、
菌体の変換工程で基質の変換に数時間から2日が適当で
ある。2日を超えると、蓄積されたトルイル酸の分解が
おこるから好ましくない。
【0031】そして、窒素源として、硝酸アンモニウ
ム、硝酸ナトリウムまたはペプトン、あるいはそれらの
混合物をもちいる場合、および炭素源として、マンニト
ール、またはマルトース、あるいはそれらの混合物を用
いる場合、菌体の増殖が高くなり、パラキシレンをパラ
トルイル酸に変換する変換速度が、著しく向上し、工業
的に多量にパラトルイル酸を製造することができる点で
優れている。
【0032】本発明の製造方法で変換工程の出発物質
(基質)となるパラキシレンは、水に難溶性であるため
に、ポリオキシエチレンソルビタン、脂肪酸エステルな
どの各種の界面活性剤を培地に添加することも可能であ
る。また、必要に応じて、脂肪酸エステル系、シリコン
系等の消泡剤を添加してもよい。
【0033】本発明の製造方法に用いるパラキシレン
は、菌体の増殖培養(増殖工程)または変換培養(変換
工程)の開始時、増殖培養または変換培養の途中のいず
れか1回以上で添加することができる。
【0034】また、菌体の増殖後添加する場合、パラキ
シレンを添加する時期は、菌体濃度が、660nmの吸
光度で、1.0から10.0の時に添加するのが望まし
い。パラキシレンの添加方法としては、一度にあるいは
少量づつ添加してもよいし、また、経時的に添加する場
合、増殖後1日目、2日目に分割して添加してもよい。
さらに、パラキシレンがつねに0.09〜0.5重量%
となるように連続的に添加してもよい。
【0035】添加するパラキシレンの培養液中の濃度
は、3重量%以下、特に1重量%以下であることが好ま
しく、さらに0.09〜0.5重量%であるのが好まし
い。3重量%超では、微生物が充分に作用しなくなるの
で好ましくない。
【0036】パラキシレンを添加する時期は、菌体増殖
前に添加するのに比べて菌体の増殖後に添加したほうが
パラキシレン変換率が、5〜10%高い。
【0037】さらに、増殖工程および変換工程を、パラ
キシレンを添加する時期の組み合わせで考えると、以下
の組み合わせが例示される。 1)パラキシレンを、増殖工程の開始点で加え、増殖工
程と変換工程を同時に行う。さらに、増殖の途中でパラ
キシレンを加えてもよい。 2)微生物を増殖させた後、パラキシレンを加えて、変
換反応を行う。パラキシレンの添加は、変換工程の途
中、または、開始点と途中の両方で行う。 3)増殖工程の後に菌体を培地から分離し、回収して変
換反応の培地に移植する。パラキシレンの添加は、増殖
工程と変換工程とに各々少なくとも1回以上行う。パラ
キシレンの添加時期は、各工程の開始点、または、開始
点と途中の両方で行う。 上記1)で、工程の途中で、パラキシレンを加えても良
い。上記2)の方法では、菌体を増殖後、菌体の培養液
にパラキシレンを添加して培養を継続することが望まれ
る。
【0038】また、上記3)で、増殖工程の後に菌体を
培地から分離し、回収する方法は、通常行なわれる培地
から微生物を分離する方法を用いることができるが、例
えば10000×G前後に加重し、20分程度遠心分離
機にかけて沈澱物として回収することができる。得られ
た沈澱物を新鮮な培地に添加し変換工程に移る。
【0039】さらにまた、菌体を用いてパラキシレンを
パラトルイル酸に変換する際に、菌体を包括固定化し
て、固定化菌体として変換に用いることができる。
【0040】本発明に用いられるゲル状担体は、アルギ
ン酸ナトリウム、カッパ−カラギーナン、ポリアクリル
アミド等、通常に使用される担体であれば、いずれでも
用いることができる。
【0041】例えば、アルギン酸は、高分子ナトリウム
塩溶液中に菌体を加えておいて、これを塩化カルシウム
水溶液中でゲル化する、またはビーズ状のゲルを得る。
また、カッパ−カラギーナンは、加温高分子溶液中に菌
体を加えておいて、これを冷塩化カリウム水溶液中でゲ
ル化する、または、ビーズ状のゲルを得る。その1例を
挙げると、ロドコッカス・エスピーM192株の培養菌
体にアルギン酸ナトリウム塩水溶液等を加えて、30〜
40℃付近で、30分程度加温して、塩化カルシウム水
溶液中で、ゲル化し、固定化微生物(菌体)を得ること
ができる。
【0042】また、ポリアクリルアミドは、構成するモ
ノマー溶液中に菌体を加え、架橋剤、重合促進剤等を添
加して高分子を合成し、この高分子のゲル中に菌体を包
括させる。担体をゲル状にするために、架橋剤、重合開
始剤、重合促進剤を加えるてもよい。架橋剤としては、
N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−プ
ロピレンビスアクリルアミド、ジアクリルアミドジメチ
ルエステル等が挙げられる。重合開始剤としては、過硫
酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。重合
促進剤としては、ジメチルアミノプロピオニトリル、
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等
が挙げられる。
【0043】包括固定化方法は、通常公知の微生物菌体
の固定化法によって行うことができる。担体中の菌体の
濃度は、1〜20重量%であるのが好ましい。1重量%
未満では、反応効率が悪く、また20重量%を超えると
菌体の漏洩が激しくなるので好ましくない。菌体をゲル
中に包括固定化すると、ゲルを介して菌体にパラキシレ
ンやエネルギー源となる物質が自由に接することがで
き、しかも、菌体が担体から離れることもないので、パ
ラトルイル酸の生産性が向上する。
【0044】次に、得られた固定化菌体を用い、パラキ
シレンとエネルギー源とを含んだ水溶液の存在下で、パ
ラキシレンを固定化菌体と接触反応させることにより、
パラキシレンをパラトルイル酸に変換することによりパ
ラトルイル酸を製造する。ここで使用する固定化された
菌体は、パラキシレンをパラトルイル酸に変換する触媒
として作用し、ゲル状担体の形状は、球状でも、ブロッ
ク状でも、膜状や線・棒状などであってもよい。好まし
くは、1〜5mm角のブロック状あるいは球状成形す
る。
【0045】パラキシレンとエネルギー源とを含有する
水溶液(以下、パラキシレンの水溶液とする)は、変換
基質であるパラキシレンと、反応のエネルギー源となる
物質を含み、菌体の変換作用を維持でき、固定化菌体を
崩壊させない水溶液であればいかなる組成の溶液であっ
てもよい。生理食塩水、緩衝液等を含有してもよい。
【0046】エネルギー源としては、ロドコッカス・エ
スピーM192株が利用できる物質であれはいかなるの
もでもよいが、生成したパラトルイル酸の精製のため
に、グリセリン、エタノール等のアルコール類、グルコ
ース、フルクトースなどの糖類などのように、単一組成
のものが好ましい。pHを安定させるために、リン酸緩
衝液等を加えることができる。パラキシレンの水溶液に
リン酸緩衝液を添加する場合、0.01〜0.2Mであ
るのが好ましい。0.01M未満ではpHの安定が得ら
れず、0.2Mを超えると、生成物の分離の際、反応液
を酸性とするのに多量の酸を必要とするため効率が悪
い。
【0047】固定化菌体とパラキシレンとの接触反応
は、固定化菌体とパラキシレンとを反応容器に入れ、空
気または酸素の存在下で行われる。パラキシレンの水溶
液中のパラキシレンの含有量は、0.09〜0.5重量
%であるのが好ましい。0.09重量%未満では、反応
効率が悪く、0.5重量%を超えると変換速度が遅くな
るので好ましくない。また、エネルギー源は、パラキシ
レンの水溶液中0.09〜1.0重量%含有するのが好
ましい。0.09重量%未満では、副反応のためパラト
ルイル酸の収率が低下し、1.0重量%を超えると、変
換速度が遅くなるので好ましくない。
【0048】本発明の製造方法は、回分式で間欠的にパ
ラキシレンの水溶液を注入しても、また連続式で連続し
てパラキシレンの水溶液を注入しても行うことができ
る。変換は、反応容器に固定化菌体を入れ、パラキシレ
ンとエネルギー源とを含有する水溶液を加えて、18〜
36℃で、反応が終了するまで振盪する。振盪は、往復
振盪であっても、回転振盪であってもよく、50〜30
0rpmであるのが好ましい。回分式の場合、1回変換
が終了すれば、反応溶液を回収し、さらにまた新しいパ
ラキシレンの水溶液(反応溶液)を加え、すなわち、反
応溶液を間欠的に補給して、何度も繰り返すことが可能
である。本発明の方法では、固定化菌体を使用するの
で、反応溶液を回収するのは、短時間に効率よく回収で
きる点で優れている。また、連続式の場合、反応器に固
定化菌体、およびパラキシレンとエネルギー源とを含有
する水溶液を添加し反応容器の一方の口からパラキシレ
ンとエネルギー源とを含む水溶液をポンプなどで連続的
に注入することで反応溶液を補給し、また他方の口から
注入速度と同じ割合で反応液を回収する。反応容器は、
必要に応じて温度調節を行い、反応に必要な空気または
酸素を送り込む。
【0049】反応溶液の注入速度は、変換反応のすすみ
具合により調整し、原料が残らないようにする。反応温
度は、18〜36℃、通気量は、0.01〜1vvmで
あるのが好ましい。本発明の方法によれば、変換反応を
連続式に行っても、菌体はゲル中に固定化されているの
で、菌体が反応液に混ざることがないため、従来の休止
菌体、培養菌体を用いる方法と比べて簡単に反応液と変
換用菌体の分離を行なうことが可能で、反応溶液の注入
速度が早すぎることで生じる反応液中の菌体が流されて
でてしまったり、菌体が崩壊するような現象を起こさな
いので、煩雑な反応条件の設定を行うことなく、安定し
て大量のパラキシレンをパラトルイル酸に変換すること
ができる。
【0050】本発明の製造方法による変換工程では、ロ
ドコッカス・エスピーM192株の存在下で、パラキシ
レンが、パラトルイル酸に酸化変換され、著量蓄積され
る。変換反応終了後、生成したパラトルイル酸を培養液
から分離・精製する方法は、一般の有機化合物の分離・
精製と同様に、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、
中和、濃縮、結晶化等の当業者に周知の手段を適宜組み
合わせることにより行なうことができる。例えば、反応
液から菌体などの固体を遠心分離あるいは、デカンテー
ション、濾過によって除去した後、上清を濃縮し、つい
で濃縮液を酸性にして、パラトルイル酸を沈澱させて固
液分離する方法、あるいは上清を酸性にした後に、ジエ
チルエーテル、酢酸エチル、トルエン、クロロホルムな
どの有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒によって抽出す
ることにより分離する方法がある。このようにして得ら
れた組成生物を各種クロマトグラフィー、再結晶あるい
はこれらを組み合わせることによって精製することがで
きる。
【0051】本発明の方法により製造されるパラトルイ
ル酸は、感光色素、蛍光染料、防黴剤、顔料、農薬など
の原料として有用である。
【0052】
【実施例】以下に、実施例により本発明をさらに具体的
に説明する。本実施例は、本発明の方法によるパラキシ
レンからパラトルイル酸への微生物による変換を例示す
る。使用した培地は、下記組成の培地(I)〜(VI)
であった。
【0053】(培地(I)の培地組成) リン酸水素2ナトリウム 3.0g リン酸水素1カリウム 2.0g 尿素 2.0g 硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g 炭酸ナトリウム 0.1g 塩化カルシウム・2水塩 0.01g 硫酸鉄・7水塩 0.005g グリセリン 2.0g 酵母エキス 1.0g イオン交換水 1.0L pH 6.8 (pH調製後、120℃、1.2kg/cm2、20分間滅菌
して使用)
【0054】(培地(II)の培地組成) リン酸水素2ナトリウム 3.0g リン酸水素1カリウム 2.0g 尿素 2.0g 硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g 炭酸ナトリウム 0.1g 塩化カルシウム・2水塩 0.01g 硫酸鉄・7水塩 0.005g マルトース 2.0g 硝酸アンモニウム 2.0g イオン交換水 1.0L pH 6.8 (pH調製後、120℃、1.2kg/cm2、20分間滅菌
して使用)
【0055】(培地(III) の培地組成) リン酸水素2ナトリウム 3.0g リン酸水素1カリウム 2.0g 硝酸ナトリウム 2.0g 硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g 炭酸ナトリウム 0.1g 塩化カルシウム・2水塩 0.01g 硫酸鉄・7水塩 0.005g マンニトール 15.0g ペプトン 1.0g イオン交換水 1.0L pH 6.8 (pH調製後、120℃、1.2kg/cm2、20分間滅菌
して使用)
【0056】(培地(IV)の培地組成) リン酸水素2ナトリウム 3.0g リン酸水素1カリウム 2.0g 尿素 2.0g 硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g 炭酸ナトリウム 0.1g 塩化カルシウム・2水塩 0.01g 硫酸鉄・7水塩 0.005g マンニトール 10.0g 酵母エキス 1.0g イオン交換水 1.0L pH 6.8 (pH調製後、120℃、1.2kg/cm2、20分間滅菌
して使用)
【0057】(培地(V) の培地組成) リン酸水素2ナトリウム 3.0g リン酸水素1カリウム 2.0g 尿素 2.0g 硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g 炭酸ナトリウム 0.1g 塩化カルシウム・2水塩 0.01g 硫酸鉄・7水塩 0.005g マルトース 2.0g 酵母エキス 1.0g イオン交換水 1.0L pH 6.8 (pH調製後、120℃、1.2kg/cm2、20分間滅菌
して使用)
【0058】(培地(VI ) の培地組成) リン酸水素2ナトリウム 3.0g リン酸水素1カリウム 2.0g 塩化アンモニウム 2.0g 硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g 炭酸ナトリウム 0.1g 塩化カルシウム・2水塩 0.01g 硫酸鉄・7水塩 0.005g グリセリン 2.0g 酵母エキス 1.0g イオン交換水 1.0L pH 6.8 (pH調製後、120℃、1.2kg/cm2、20分間滅菌
して使用)
【0059】また、パラキシレンをパラトルイル酸に変
換する変換速度は、次のような方法によって測定した。
培養終了後、培養液の一部を回収し、OD610 を測定す
ることにより、得られる菌体の濃度を、反応液中の単位
体積当たりの乾燥重量で菌体量(g drycell/
L)として求めた。さらに、この培養液に、変換基質で
あるパラキシレンを加えて変換反応を行った。一定時間
後に反応液の一部を回収し、遠心分離によって菌体を分
離して、高速液体クロマトグラフィによってこのこの反
応液に含まれるパラトルイル酸の量(g/L)を測定す
る。菌体量と生成したパラトルイル酸の量から、変換速
度(g/g−dry cell/hr)を求めた。
【0060】(実施例1)上記培地(I)100mlに
ロドコッカス・エスピーM192株の菌株1白金耳を接
種し、pH6.8、30℃で1夜振盪培養(180rp
m)した。得られた培養液の10mlを、新たに培地
(I)を100ml仕込んだ300ml容三角フラスコ
に接種して1日間振盪培養を行った。培養条件は30
℃、pH6.8、180rpmであった。培養開始1日
後および2日後にパラキシレンを各々0.1gづつ添加
して合計3日間の培養を行った。
【0061】培養終了後、遠心分離によって菌体を除
き、減圧下で20mlに濃縮し、上清に塩酸を加えpH
1とした後、20mlの酢酸エチルで3回抽出を行っ
た。有機層をあわせて濃縮乾固し、粗結晶を得た。粗結
晶をジイソプロピルエーテル:イソプロピルアルコール
の1:1混合溶媒により再結晶させて、0.22g(8
6%)の精製物を得た。
【0062】得られた物質は、元素分析、IR、 1H−
NMR測定によって、パラトルイル酸と確認された。 元素分析値(C8 8 2 ) 計算値:C 70.57%、H 5.92%、O 2
3.50% 実測値:C 70.49%、H 5.91%、O 2
3.59%1 H−NMR:(σppm、溶媒トリフルオロ酢酸、内
部標準TMS) 2.47(s,3H)、7.30(d,2H)、8.0
2(d,2H) IR(KBr):2976、1680、1612、14
18、1284、753、541(cm-1
【0063】(実施例2)培地(I)の組成の培地に、
その培地に対して0.2重量%のパラキシレンを添加し
た培地100mlにロドコッカス・エスピーM192株
を1白金耳接種してpH6.8、30℃で1夜振盪(1
80rpm)培養した培養液10mlを、新たに培地
(I)に、その培地に対して0.2重量%のパラキシレ
ンを添加した培地100mlを仕込んだ300ml容三
角フラスコに接種して2日間、30℃、pH6.8、1
80rpmの振盪培養で培養を行った。2日後の培養液
中のパラトルイル酸の生成量は0.22g(78%)で
あった。
【0064】培養液からのパラトルイル酸の分離・精製
は、遠心分離によって菌体を除き、上清に塩酸を加えp
H1とした後、この酸性溶液よりジエチルエーテルでパ
ラトルイル酸を抽出分離し、抽出液を減圧濃縮すること
により粗結晶を得た。この粗結晶を実施例1と同様にジ
イソプロピルエーテル:イソプロピルアルコールの1:
1混合溶媒から再結晶することによりパラトルイル酸の
白色結晶0.20g(70%)を得た。
【0065】(実施例3)上記培地(I)100mlを
仕込んだ300ml容三角フラスコ6本を使用し、ロド
コッカス・エスピーM192株をそれぞれのフラスコに
1白金耳接種し、30℃、pH6.8、180rpmで
18時間振盪培養した。得られた培養液600mlを母
菌として、新たに上記培地(I)7Lを仕込んだ10L
のジャー・ファーメンターに添加し、同時に基質として
パラキシレン15gを添加して培養を行った。1日後さ
らに、パラキシレン12gを添加して培養を継続し、合
計2日間の培養を行った。培養条件は、温度30℃、p
H6.8、攪拌300rpm、通気量0.5容量/容量
/分であった。培養終了後10,000×Gで20分間の遠心
分離によって菌体を除き、塩酸によりpH1とした後、
実施例1と同様に処理して粗結晶パラトルイル酸31.
5g(91%)を得た。
【0066】(実施例4)上記培地(I)100mlを
仕込んだ300ml容三角フラスコ3本を使用し、ロド
コッカス・エスピーM192株をそれぞれのフラスコに
1白金耳接種し、30℃、pH6.8、180rpmで
18時間振盪培養した。得られた培養液300mlを母
液として、新たに上記培地(I)に、その培地に対して
0.2重量%のパラキシレンを添加した培地3.5Lを
仕込んだ5L容ジャー・ファーメンターに前記母菌30
0mlを添加し、30℃、pH6.8、攪拌300rp
m、通気量0.5容量/容量/分の培養条件で2日間培
養を行った。2日後に菌体を10,000×Gで、20分の遠
心分離によって集菌した。菌体収量は、1.93g/Lで
あった。
【0067】集菌した生菌体全体をグリセリン0.1重
量%を含有する生理食塩水500mlに懸濁し、これに
パラキシレン1.5gを添加して30℃、180rpm
で攪拌しながら12時間反応させた。反応終了後、実施
例1との同様の方法によりパラトルイル酸を抽出し、精
製して再結晶によりパラトルイル酸1.35gを得た。
収率は70%であった。
【0068】(実施例5)上記培地(IV)100mlを仕
込んだ300ml容三角フラスコに、ロドコッカス・エ
スピーM192株(微工研菌寄第12882号)の菌体
一白金耳を接種し、30℃、pH6.8で24時間、1
80rpmで振盪培養した。得られた培養液の10ml
を、上記培地(IV) 100mlを仕込んだ300ml容
三角フラスコに接種して振盪培養を行った。培養条件
は、温度30℃、pH6.8、振盪速度180rpmで
あった。24時間後に、培養を終了し、培養液を500
0×Gで10分間、5℃で遠心分離し、湿菌体510m
gを得た。得られた菌体を生理食塩水を用いて2回洗浄
し、5000×Gで10分間、5℃で遠心分離し、凍結
乾燥して、乾燥菌体180mgを得た。結果を表1に示
した。
【0069】(実施例6〜9)培地(IV) 中、炭素源と
して、マンニトールの代わりに、表1に示される同重量
の種々の糖類を用いた培地100mlに、ロドコッカス
・エスピーM192株の菌体を一白金耳接種し、24時
間振盪培養を行った。培養条件は、温度30℃、pH
6.8、180rpmであった。得られた培養液の10
mlを、この実施例6〜9で最初に使用した各培地10
0mlを仕込んだ300ml容三角フラスコに接種して
振盪培養を行った。培養条件は、温度30℃、pH6.
8、振盪速度180rpmであった。24時間後に、培
養を終了し、培養液を5000×Gで10分間、5℃で
遠心分離し、湿菌体を得た。得られた菌体を生理食塩水
を用いて2回洗浄し、5000×Gで10分間、5℃で
遠心分離し、凍結乾燥して、乾燥菌体を得た。各実施例
の湿菌体の量と乾燥菌体の量の結果を表1に示した。
【0070】
【0071】(実施例10)上記培地(III)100ml
を仕込んだ300ml容三角フラスコに、ロドコッカス
・エスピーM192株(微工研菌寄第12882号)の
菌体一白金耳を接種し、30℃、pH6.8で24時
間、180rpmで振盪培養した。得られた培養液の1
0mlを、上記培地(III)100mlを仕込んだ300
ml容三角フラスコに接種して振盪培養を行った。培養
条件は、温度30℃、pH6.8、振盪速度180rp
mであった。24時間後に、培養を終了し、培養液を5
000×Gで10分間、5℃で遠心分離し、湿菌体12
00mgを得た。得られた菌体を生理食塩水を用いて2
回洗浄し、5000×Gで10分間、5℃で遠心分離
し、凍結乾燥して、乾燥菌体445mgを得た。結果を
表2に示した。
【0072】(実施例11〜17)天然窒素源であるペ
プトンと、合成窒素源である硝酸ナトリウムの代わり
に、下記表2に記載の各種の窒素源を実施例10と同量
用いる以外は培地(III) と同じ培地100mlを用い
て、実施例10と同様に、ロドコッカス・エスピーM1
92株の菌体一白金耳を接種し、30℃、pH6.8、
振盪速度180rpmで24時間振盪培養を行った。使
用した窒素源の種類は、下記表2に示した。得られた培
養液の10mlを、この実施例11〜17で最初に使用
した各培地100mlを仕込んだ300ml容三角フラ
スコに接種して振盪培養を行った。培養条件は、温度3
0℃、pH6.8、振盪速度180rpmであった。2
4時間後に、培養を終了し、培養液を5000×Gで1
0分間、5℃で遠心分離し、湿菌体を得た。得られた菌
体を生理食塩水を用いて2回洗浄し、5000×Gで1
0分間、5℃で遠心分離し、凍結乾燥して、乾燥菌体を
得た。各実施例の湿菌体の量と乾燥菌体の量の結果を、
表2に示した。
【0073】
【0074】(実施例18)上記培地(V) 100mlを
仕込んだ300ml容三角フラスコに、ロドコッカス・
エスピーM192株(微工研菌寄第12882号)の菌
体一白金耳を接種し、30℃、pH6.8で24時間、
180rpmで振盪培養した。得られた培養液の10m
lを、上記培地(V)100mlを仕込んだ300ml容
三角フラスコに接種して振盪培養を行った。培養条件
は、温度30℃、pH6.8、振盪速度180rpmで
あった。24時間後に、OD610 を測定するために、こ
の反応液の一部を採集した後、変換の基質であるパラキ
シレンを、培地中の濃度が0.1重量%となるように添
加し続けて、培養を行った。反応に用いた菌体の量は、
このときのOD610 を用いて算出し、2.8mg/ml
であった。さらに、24時間後、この反応液の一部を取
り、高速液体クロマトグラフィ分析を行った。その結
果、パラキシレンからパラトルイル酸への変換反応は、
9.3mg/g−dry−cell/hr)であった。
結果を表3に示した。
【0075】(実施例19〜22)培地(V)中、炭素源
として、マルトースの代わりに、表3に示される同重量
の種々の糖類を用いた培地100mlに、ロドコッカス
・エスピーM192株の菌体を一白金耳接種し、24時
間で振盪培養を行った。培養条件は、温度30℃、pH
6.8、180rpmであった。得られた培養液の10
mlを、この実施例19〜22で最初に使用した各培地
100mlを仕込んだ300ml容三角フラスコに接種
して振盪培養を行った。培養条件は、温度30℃、pH
6.8、振盪速度180rpmであった。24時間後
に、OD610 を測定するために、この反応液の一部を回
収し、変換基質であるパラキシレンを培地中の濃度で
0.1重量%となるように加えて培養を続けた。さら
に、24時間後に、この反応液の一部を取り、高速液体
クロマトグラフィ分析を行った。このようにして得られ
たパラキシレンをパラトルイル酸に変換する変換速度
を、下記表3に示した。
【0076】
【0077】(実施例23)上記培地(II)100m
lを仕込んだ300ml容三角フラスコに、ロドコッカ
ス・エスピーM192株(微工研菌寄第12882号)
の菌体一白金耳を接種し、30℃、pH6.8で24時
間、180rpmで振盪培養した。得られた培養液の1
0mlを、上記培地(II)100mlを仕込んだ30
0ml容三角フラスコに接種して振盪培養を行った。培
養条件は、温度30℃、pH6.8、攪拌速度180r
pmであった。24時間後に、OD610 を測定するため
に、この反応液の一部を採集した後、変換基質であるパ
ラキシレンを反応液中の濃度で0.1重量%になるよう
に添加して培養を続けた。反応に用いた菌体の量は、O
610 により算出し、3.8mg/mlであった。さら
に、4時間後に、この反応液の一部を取り、高速液体ク
ロマトグラフィで分析を行った。その結果、パラキシレ
ンをパラトルイル酸に変換する変換速度は、21.7m
g/g(乾燥藻体)/hrであった。結果を表4に示し
た。
【0078】(実施例24〜27)窒素源として、硝酸
アンモニウムの代わりに、下記表4に記載の各種の窒素
源を用いる以外は培地(II)と同じ培地100mlを
用いて、実施例23と同様に、ロドコッカス・エスピー
M192株の菌体一白金耳を接種し、30℃、pH6.
8、振盪速度180rpmで24時間振盪培養を行っ
た。使用した窒素源の種類と使用量は、下記表4に示し
た。得られた培養液の10mlを、この実施例24〜2
7で最初に使用した各培地100mlを仕込んだ300
ml容三角フラスコに接種して振盪培養を行った。培養
条件は、温度30℃、pH6.8、振盪速度180rp
mであった。24時間後に、OD610 を測定するため
に、この反応液の一部を回収し、変換基質であるパラキ
シレンを培地中の濃度で0.1重量%となるように加え
て培養を続けた。さらに、4時間後に、この反応液の一
部を取り、高速液体クロマトグラフィ分析を行った。こ
のようにして得られたパラキシレンをパラトルイル酸に
変換する変換速度を、下記表4に示した。
【0079】
【0080】(実施例28)上記培地(VI) 50mlに
ロドコッカス・エスピーM192株の菌体を一白金耳接
種し、30℃、180rpmで1夜振盪培養した。得ら
れた培養液の10mlを培地(VI) 200mlを仕込ん
だ2L容三角フラスコ3本に接種し、1日間振盪培養を
行った。培養条件は、温度30℃、pH6.8、180
rpmであった。得られた培養液を遠心分離(1000
0×G,20分間)して集菌、洗浄を行った。得られた
湿菌体1.16gを1/15Mリン酸緩衝液25mlに
懸濁した。この懸濁液をアクリルアミドモノマー2.2
5g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.25
gを含有する1/15Mリン酸緩衝液に加え、十分に混
合した。得られた懸濁液に5%β−ジメチルアミノプロ
ピオニトリル5mlを加え、さらに1.0%過硫酸カリ
ウム4mlを加え十分に混合し、25℃で30分間放置
して固定化菌体(ゲル状)を得た。調製された固定化菌
体を5mm角のブロックに切断したものを、0.1重量
%のグリセリン、0.1重量%のパラキシレンを含有す
る1/15Mリン酸緩衝液50mlを仕込んだ300m
l容三角フラスコに加え、30℃で、24時間攪拌し
た。24時間ごとに、反応液と固定化菌体を濾過によっ
て分離し、固定化菌体を回収した。回収した固定化菌体
を用いて3回反応を行った。反応条件は、30℃、pH
6.8、180rpmであった。濾過により固定化菌体
を取除いた反応液を回収し、減圧下で20mlに濃縮
し、塩酸でpHを1とした後、20mlの酢酸エチルで
3回抽出を行った。有機層を合わせて濃縮乾固し、各々
24時間の反応で、それぞれ23mg、30mg、30
mgのパラトルイル酸を得た。(純度は、各々99、9
9および99%、収率は、各々36%、47%および4
7%であった。)
【0081】(実施例29)実施例28と同様にしてロ
ドコッカス・エスピーM192株の菌体を培養して、湿
菌体1.14gを得た。これを5mlの生理食塩水に懸
濁し、40℃程度に保持しておき、予め45℃に温めて
おいた3.5%カッパ−カラギーナン水溶液60ml
に、この菌体懸濁液を加えて十分に混合した。その後、
4℃の雰囲気下で1時間放冷し、冷却した2%塩化カリ
ウム水溶液を加えて、30分間放置して固定化菌体(ゲ
ル状)を得た。得られた固定化菌体を5mm角のブロッ
クに切断したものを、1.0重量%のグリセリンと1.
0重量%のパラキシレンを含有する1/15Mリン酸緩
衝液50mlを仕込んだ300ml容四つ口フラスコに
加え、通気攪拌を行った。反応は、0.1重量%のグリ
セリンと1.0重量%のパラキシレンを含有する1/1
5Mリン酸緩衝液を、10ml/hrで、フラスコ内に
送り込み、同じ速度で反応液を取り出し、24時間反応
を行った。反応条件は、30℃、pH6.8、回転速度
180rpm、通気量0.6vvmであった。回収され
た反応液を減圧下で濃縮し、塩酸でpHを1とした後、
30mlの酢酸エチルで3回抽出を行った。有機層を合
わせて濃縮乾固し、パラトルイル酸を260mg(純度
99%)得た。
【0082】
【発明の効果】本発明の方法によれば、微生物が行う酸
化反応によってパラキシレンから感光色素、蛍光染料、
防黴剤、顔料、農薬等の原料として有用なパラトルイル
酸をエネルギーをほとんど要せずに安価に製造すること
ができる。また、本発明の方法を用いれば、パラキシレ
ンからパラトルイル酸への変換反応の速度が高く、効率
よくパラトルイル酸を製造することができる。そして、
本発明の方法を用いれば、パラキシレンからパラトルイ
ル酸への変換反応後、反応液と微生物菌体を容易に分離
し、回分式あるいは連続式でパラトルイル酸を簡便に製
造することができる。
フロントページの続き (72)発明者 飯 塚 時 男 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究本部内 (72)発明者 上 原 健 一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究本部内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する微
    生物を用いて、パラキシレンをパラトルイル酸に変換す
    ることを特徴とするパラトルイル酸の製造方法。
  2. 【請求項2】前記微生物が、Rhodococcus sp.M192 (ロ
    ドコッカス・エスピーM192)である請求項1に記載
    のパラトルイル酸の製造方法。
  3. 【請求項3】前記微生物を、パラキシレンを添加した培
    地で培養する請求項1または2に記載のパラトルイル酸
    の製造方法。
  4. 【請求項4】前記微生物を培養して増殖させた後、パラ
    キシレンを添加して培養を継続し、パラキシレンをパラ
    トルイル酸に変換する請求項1または2に記載のパラト
    ルイル酸の製造方法。
  5. 【請求項5】前記微生物を培養して増殖させた後、該微
    生物の菌体を回収して、該菌体を用いて、パラキシレン
    をパラトルイル酸に変換する請求項1または2に記載の
    パラトルイル酸の製造方法。
  6. 【請求項6】前記微生物を培養するのに用いる培地中
    に、窒素源として硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウムお
    よび/またはペプトンが含有されている請求項1〜5の
    いずれかに記載のパラトルイル酸の製造方法。
  7. 【請求項7】前記微生物を培養するのに用いる培地中
    に、炭素源としてマンニトールおよび/またはマルトー
    スが含有されている請求項1〜6のいずれかに記載のパ
    ラトルイル酸の製造方法。
  8. 【請求項8】パラキシレンからパラトルイル酸を生成す
    る能力を有する微生物をゲル状担体に固定化し、エネル
    ギー源とパラキシレンとを含有する水溶液に接触して反
    応させることを特徴とするパラトルイル酸の製造方法。
  9. 【請求項9】前記パラキシレンからパラトルイル酸を生
    成する能力を有する微生物が、ロドコッカス・エスピー
    (Rhodococcus sp.)M192である請求項8に記載のパ
    ラトルイル酸の製造方法。
  10. 【請求項10】前記ゲル状担体として、アルギン酸、カ
    ッパ−カラギーナンまたはポリアクリルアミドからなる
    群から選ばれるいずれかの担体を用いる請求項8または
    9に記載のパラトルイル酸の製造方法。
  11. 【請求項11】前記エネルギー源とパラキシレンとを含
    有する水溶液を連続的または間欠的に補給しながら前記
    固定化微生物と接触反応させる請求項8〜10のいずれ
    かに記載のパラトルイル酸の製造方法。
JP25087793A 1993-02-01 1993-10-07 パラトルイル酸の製造方法 Withdrawn JPH06277079A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002238551A (ja) * 2001-02-21 2002-08-27 Marine Biotechnol Inst Co Ltd 揮発性芳香族炭化水素分解能を有する新規菌株及びその用途

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