JP3429700B2 - 高電子移動度トランジスタ - Google Patents

高電子移動度トランジスタ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体装置に関
し、さらに詳しくは高電子移動度トランジスタ(HEM
T)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯電話や衛星放送や衛星通信な
どで、マイクロ波やミリ波といった高周波での通信シス
テムが飛躍的に発展している。これらのシステムにおい
て、信号送信部には高出力増幅器が不可欠であるが、シ
ステムの高周波化に伴い、高周波特性に優れたデバイス
として高電子移動度トランジスタ(HEMT)が高出力
用素子として使用される機会がますます増えている。
【0003】以下において、高周波高出力用に用いられ
る従来のHEMTの構造および動作を図面を参照して説
明する。図1は、従来のHEMTの構造を示す断面図で
ある。図1に示されるように、従来のHEMTは、半絶
縁性GaAs基板1の上に電子走行層としてのノンドー
プGaAs層2、スペーサ層としてのノンドープAlx
Ga1-xAs層4、電子供給層としてのn+ −AlxGa
1-xAs層5、ノンドープAlxGa1-xAs層6、ノン
ドープGaAs層7、n+ −GaAs層8が順次積層さ
れ、さらにゲート電極9とソース電極10及びドレイン
電極11が形成されている。また、ノンドープGaAs
層2とノンドープAlxGa1-xAs層4との間には、二
次元電子ガス層3が形成される。このように、高出力増
幅に用いられるHEMTでは、ゲート耐圧の向上を意図
してゲート電極9の直下やゲート電極9の横には、ノン
ドープAlxGa1-xAs層6やノンドープGaAs層7
のようにノンドープ層 (もしくはn- 層)を用いるこ
とが多い。また、ノンドープAlxGa1-xAs層4やn
+−AlxGa1-xAs層5に用いられるAlxGa1-x
sのxの値としては、2次元電子ガスの面密度を向上さ
せるためにはある程度大きな値が望ましいが、逆に大き
すぎるとドナー不純物準位が深くなって二次元電子ガス
層3の電子濃度は頭打ちになり、かつ、光応答特性をも
つなど動作が不安定になるため0.2〜0.3程度が選
ばれることが多い。
【0004】図2は、この従来のHEMTの熱平衡状態
でのエネルギーバンドを示す図である。図2において
は、価電子帯Evと伝導帯Ecとフェルミ準位EF及び
基底状態のエネルギー準位E0や第一励起状態のエネル
ギー準位E1の関係が示される。
【0005】また図3は、この従来のHEMTの熱平衡
状態での電子濃度分布を示す図である。なお、この例で
はノーマリ・オン型の素子の場合が示される。そして、
図4は3端子動作でのドレイン電流を増加させるために
ゲートを順方向にバイアスした状態でのHEMTのエネ
ルギーバンドを示す図である。また、図5は上記バイア
ス状態でのHEMTの電子濃度分布を示す図である。図
2及び図3に示される熱平衡状態では電子供給層である
+ −AlxGa1-xAs層5は完全に空乏化していた
が、ゲート電極9に印加する順方向電圧が増加するにつ
れ、このn+ −AlxGa1-xAs層5の中に電荷中性領
域が出現しその領域が拡大していく。すなわち、図5に
示されるように、n+ −AlxGa1-xAs層5の電子濃
度が高くなっていく。ここで、電子供給層であるn+
AlxGa1-xAs層5中では電子のドリフト速度が電子
走行層であるノンドープGaAs層2に比べ低くなり、
また、電子は電子供給層5からゲート電極9へと流れる
ため、伝達コンダクタンスgmの急激な低下が引き起こ
される。図6は、伝達コンダクタンスgmのゲート電圧
Vg依存性を示す図である。図6において、破線60が
従来のHEMTの特性を表しており、実線61が後記す
る本発明の実施の形態にかかるHEMTの特性を表して
いる。
【0006】さらに、従来のHEMTにおいては、上記
の電子濃度の頭打ちを回避し、光応答特性を改良するた
めに図1に示される電子供給層としてのn+ −Alx
1-xAs層5のかわりにn+ −GaAsとi−AlA
sとからなる超格子構造を用いたものが考案されてい
る。すなわち、ドナー不純物準位が深くなるのは、アル
ミニウム原子とドナーであるシリコン原子の相互作用で
あるから、アルミニウム原子とシリコン原子を空間的に
分離してやれば、この問題を回避できる。
【0007】図7は、n+ −GaAs13とi−AlA
s12とからなる超格子構造を有する電子供給層のエネ
ルギーバンドを、バンドの曲がりを省略して示したもの
である。図7に示されるように、この電子供給層の実効
的なエネルギーバンドギャップEgは超格子構造により
量子化された電子の基底状態のエネルギー準位EQeとホ
ールの基底状態のエネルギー準位EQhとの差で定義さ
れ、n+ −GaAs13の層の厚さを適当な値に選べ
ば、n+ −AlxGa1-xAs層5においてxが0.3程
度の場合と同様かそれ以上の大きさとすることができ
る。よって、このような超格子構造とされたHEMTの
電子供給層では、熱平衡状態において超格子の井戸部
(n+ −GaAs層)に電子が局在することはない。な
お図7において、i−AlAs12の伝導帯Ecのレベ
ルはΓ点での値に基づくものである。
【0008】しかしながら、かかる構成においても高ド
レイン電流時には二次元電子ガス層3中の電子が加速さ
れて電子供給層に流れ込んでしまい、伝達コンダクタン
スgmの急激な低下を引き起こす。 また図8は、従来
のHEMTの3端子特性と、高出力動作時の負荷線80
を示す図である。図8において、高電流域81では伝達
コンダクタンスgmが低下するため、出力電力は低下す
る。また、おおよそ負荷線80全体にわたっての伝達コ
ンダクタンスgmの平均値で決まる電力利得も低下する
こととなる。さらには、肩電圧(Knee voltage)近傍
で伝達コンダクタンスgmが低下することにより、ドレ
イン効率や電力付加効率の低下も引き起こされる。そし
てこれらの欠点は、HEMTを高出力増幅用に用いる場
合には大きな問題となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の問題
を解消するためになされたものであり、高出力かつ高利
得で高効率な動作を実現する高電子移動度トランジスタ
を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、n型半導
体層とノンドープ半導体層とからなる超格子構造を有す
る電子供給層を備えた高電子移動度トランジスタにおい
て、n型半導体層はアルミニウム混晶比が0.2〜0.
3の砒化アルミニウムガリウムで形成され、ノンドープ
半導体層は、砒化アルミニウムガリウムで形成されると
ともに、該砒化アルミニウムガリウムのアルミニウム混
晶比は直接遷移形から間接遷移形へ移行する臨界混晶比
近傍とされたことを特徴とする高電子移動度トランジス
タを提供することによって達成される。
【0011】また上記目的は、さらに上記ノンドープ半
導体層が、該ノンドープ半導体層のΓ点における伝導帯
のエネルギーレベルをX点やL点におけるエネルギーレ
ベルよりも低くする組成を持った砒化アルミニウムガリ
ウムで形成された高電子移動度トランジスタを提供する
ことによって達成される。
【0012】また上記目的は、さらに上記ノンドープ半
導体層を形成する砒化アルミニウムガリウムのアルミニ
ウム混晶比が0.4〜0.5である高電子移動度トラン
ジスタを提供することによって達成される。
【0013】発明におけるこれらの手段によれば、大
きなドレイン電流が流れる時においても伝達コンダクタ
ンスが高い値に維持される高電子移動度トランジスタを
得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下において、本発明の実施の形
態を図面を参照して詳しく説明する。
【0015】図9は、本発明の実施の形態にかかる高周
波高出力増幅用の高電子移動度トランジスタの構造を示
す断面図である。図9に示されるように、この高電子移
動度トランジスタは、図1に示された従来の高電子移動
度トランジスタと同様な構造を有するが、電子走行層を
より高い移動度及びドリフト速度が期待できるIn0.2
Ga0.8Asで形成することとしている。より具体的に
は、半絶縁性GaAs基板1の上にi―GaAs層から
なる厚さ5000Åのバッファ層1a、ノンドープIn
0.2Ga0.8Asからなる厚さ130Åの電子走行層2
a、二次元電子ガス層3、ノンドープAl0.5Ga0.5
sからなる厚さ40Åのスペーサ層4a、n+ −Al
0.2Ga0.8Asからなる厚さ40Åでキャリア濃度が2
×1018cm-3の電子供給層5a、Al0.2Ga0.8As
からなる厚さ200Åでキャリア濃度が2×1016cm
-3の障壁層6a、GaAsからなる厚さ300Åでキャ
リア濃度が2×1016cm-3のキャップ層7a、n+
Al0.2Ga0.8Asからなる厚さ20Åでキャリア濃度
が2×1018cm-3のエッチング・ストッパ層7b、G
aAsからなる厚さ800Åでキャリア濃度が2×10
18cm-3のオーミック・コンタクト層8a、SiNから
なる表面保護膜17が順次積層され、ゲート電極9とソ
ース電極10及びドレイン電極11が形成される。
【0016】また、ゲート電極9はゲート長が0.25
μmでWSi/AuのT型ゲート構造とし、ソース電極
10とドレイン電極11はAuGe/Ni/Auで形成
するとともにこれらの電極間の距離を4μmとした。
【0017】このような高電子移動度トランジスタのパ
ワー特性を20GHzで評価したところ、従来の高電子
移動度トランジスタと比べて、利得で約1dB、出力電
力で約0.5dB、電力付加効率で約5%の改善がみら
れた。
【0018】なお、本発明においては、電子走行層をi
−GaAsで形成した高電子移動度トランジスタも同様
に考えることができるが、以下においては、この場合の
高電子移動度トランジスタの性質について説明する。
【0019】図10は、本発明の実施の形態にかかる高
電子移動度トランジスタが熱平衡状態にあるときのエネ
ルギーバンドを示す図である。また、図11は、その高
電子移動度トランジスタの高ドレイン電流時のエネルギ
ーバンドを示す図であり、電子供給層側における電子の
基底状態のエネルギー準位EQeが図示される。ここで、
電子供給層を超格子構造とすれば、後で説明するように
スペーサ層4aのバリア高さを最大化できるため、高ド
レイン電流時においてエネルギー準位EQeを二次元電子
ガス層3中の電子のエネルギーよりも高い値に設定で
き、その結果として電子濃度分布は図12に示されるよ
うになる。すなわち、電子供給層における電子の存在確
率が従来より低くなる。また、二次元電子ガス層の電子
濃度はより高い値となるため、図6の実線61に示され
るように、大きなドレイン電流が流れる状態においても
高い伝達コンダクタンスを維持することができる。
【0020】図13に示されるように、AlxGa1-x
s系においては、混晶比xの値が大きくなるにつれてΓ
点での伝導帯Ec(Γ)のレベルは高くなっていくが、
X,L点での伝導帯Ec(X,L)のレベルは逆に低く
なって行く。そして、混晶比xが臨界混晶比xc(〜
0.5)以上ではΓ点の伝導帯Ec(Γ)よりもX,L
点での伝導帯Ec(X,L)の方が低いエネルギーとな
っている。ここにおいて、臨界混晶比xc以下の混晶比
では直接遷移形であり、臨界混晶比xc以上の混晶比で
は間接遷移形となる。
【0021】ここで、電子供給層の超格子構造におい
て、バンドギャップが広い方の材料(本実施の形態にお
いてはノンドープAl0.5Ga0.5As)はできるだけ伝
導帯Ecのレベルが高い方がスペーサ層4aのバリア高
さを高くできるという点で望ましいが、上記のようにA
xGa1-xAs系の場合に混晶比xの値を臨界混晶比x
cより大きくすると、Γ点の伝導帯Ec(Γ)よりも
X,L点での伝導帯Ec(X,L)の方がレベルが低く
なり実効的な伝導帯の値が小さくなってしまう。したが
って、xの値としては0.5程度が最適である。
【0022】また、バンドギャップが狭い方の材料(本
実施の形態においてはn+−Al0.2Ga0.8As)も、
二次元電子ガス層3中の電子を効果的に閉じ込めるため
には伝導帯Ecのレベルが高い方がよいが、この層には
ドナー不純物(Si)がドーピングされるため、混晶比
xの値を大きくしすぎると不純物準位が深くなるという
問題が生じる。このことから、n型半導体層のアルミニ
ウム混晶比xは0.2程度が最適である。
【0023】なお、本発明の実施の形態をn+−Al0.2
Ga0.8Asとi−Al0.5Ga0.5Asの超格子構造で
説明したが、半導体材料はGaAs/AlGaAs系に
限られるものではない。
【0024】
【発明の効果】上述の如く、本発明によれば、高出力か
つ高利得で高効率な動作を実現する高電子移動度トラン
ジスタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来のHEMTの構造を示す断面図で
ある。
【図2】図2は、従来のHEMTの熱平衡状態でのエネ
ルギーバンドを示す図である。
【図3】図3は、従来のHEMTの熱平衡状態での電子
濃度分布を示す図である。
【図4】図4は、3端子動作でのドレイン電流を増加さ
せるためにゲートを順方向にバイアスした状態での従来
のHEMTのエネルギーバンドを示す図である。
【図5】図5は、バイアス状態での従来のHEMTの電
子濃度分布を示す図である。
【図6】図6は、伝達コンダクタンスのゲート電圧依存
性を示す図である。
【図7】図7は、n+ −GaAsとi−AlAsとから
なる超格子構造を有する電子供給層のエネルギーバンド
を、バンドの曲がりを省略して示したものである。
【図8】図8は、従来のHEMTの3端子特性と、高出
力動作時の負荷線を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態にかかる高周波高
出力増幅用の高電子移動度トランジスタの構造を示す断
面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態にかかる高電
子移動度トランジスタが熱平衡状態にあるときのエネル
ギーバンドを示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態にかかる高電
子移動度トランジスタの高ドレイン電流時のエネルギー
バンドを示す図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態にかかる高電
子移動度トランジスタの高ドレイン電流時の電子濃度分
布を示す図である。
【図13】図13は、AlxGa1-xAs系における伝導
帯の混晶比依存性を示す図である。
【符号の説明】
1 半絶縁性GaAs基板 1a バッファ層 2 ノンドープGaAs層 2a 電子走行層 3 二次元電子ガス層 4 ノンドープAlxGa1-xAs層 4a スペーサ層 5 n+−AlxGa1-xAs層 5a 電子供給層 6 ノンドープAlxGa1-xAs層 6a 障壁層 7 ノンドープGaAs層 7a キャップ層 7b エッチング・ストッパ層 8 n+ −GaAs層 8a オーミック・コンタクト層 9 ゲート電極 10 ソース電極 11 ドレイン電極 12 i−AlAs 13 n+ −GaAs 17 表面保護膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/338 H01L 29/778 H01L 29/812

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 n型半導体層とノンドープ半導体層とか
    らなる超格子構造を有する電子供給層を備えた高電子移
    動度トランジスタにおいて、 前記n型半導体層はアルミニウム混晶比が0.2〜0.
    3の砒化アルミニウムガリウムで形成され、 前記ノンドープ半導体層は、砒化アルミニウムガリウム
    で形成されるとともに、該砒化アルミニウムガリウムの
    アルミニウム混晶比は直接遷移形から間接遷移形へ移行
    する臨界混晶比近傍とされたことを特徴とする高電子移
    動度トランジスタ。
  2. 【請求項2】 前記ノンドープ半導体層は、該ノンドー
    プ半導体層のΓ点における伝導帯のエネルギーレベルを
    X点やL点におけるエネルギーレベルよりも低くする組
    成を持った砒化アルミニウムガリウムで形成された請求
    項1に記載の高電子移動度トランジスタ。
  3. 【請求項3】 前記ノンドープ半導体層を形成する砒化
    アルミニウムガリウムのアルミニウム混晶比が0.4〜
    0.5である請求項2に記載の高電子移動度トランジス
    タ。
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