JP3284558B2 - 熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シート及びその製造方法 - Google Patents

熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シート及びその製造方法

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JP3284558B2
JP3284558B2 JP8925091A JP8925091A JP3284558B2 JP 3284558 B2 JP3284558 B2 JP 3284558B2 JP 8925091 A JP8925091 A JP 8925091A JP 8925091 A JP8925091 A JP 8925091A JP 3284558 B2 JP3284558 B2 JP 3284558B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性ノルボルネン
系樹脂から成るシートに関する。さらに詳しくは、光学
材料として好ましい性質を有し、複屈折が小さく、光学
特性の劣化の少ない熱可塑性ノルボルネン系樹脂のシー
ト及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光学用プラスチック材料としてポリカー
ボネート、ポリメチルメタクリレートなどが知られてい
るが、ポリカーボネートは複屈折が大きく、また、ポリ
メチルメタクリレートは吸水性が大きく、耐熱性も不十
分であるという欠点があった。
【0003】熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーは透
明性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性等に優れていることか
ら、種々の用途に用いることができ、さらに複屈折が小
さいことから特に光ディスク基板などの光学用プラスチ
ック成形材料として有用であることが知られている。
【0004】光学用プラスチック材料から成るシートの
製造方法は、射出成形法、押し出し成形法、溶液流延法
が知られている。しかし、射出成形法、熱プレス法、押
し出し成形法で作られた熱可塑性飽和ノルボルネン系樹
脂のシートは複屈折が大きく、1.2mm以上の厚さの
板では複屈折の絶対値を20nm以下にすることができ
たが、厚さ1mm以下のシートでは、精密射出成形でも
複屈折の絶対値の最大値を20nm以下にすることはで
きなかった。また、これらのシートは表面粗さが大きい
という欠点があった。
【0005】溶液流延法による熱可塑性飽和ノルボルネ
ン系樹脂のシートの製造方法も知られている(特開昭6
1−281404号、特開昭62−29191号、特開
昭62−181365号、特開昭62−206704号
など)が、記載されている方法で本発明者らがシートを
作製したところ、充分に乾燥できず、溶媒が少なくても
数重量%以上、多い場合には10重量%以上の濃度で残
留した。また、高温で乾燥するとシート表面が発泡する
などの問題も生じた。
【0006】一般に、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂
は、溶媒が多量に残留すると光学材料用樹脂としての好
ましい性質のひとつである耐熱性が低下してしまう。ま
た、そのような樹脂を用いて成形した情報記録用光学素
子を長時間使用すると、金属膜との接着性が悪くフクレ
が発生する等、溶媒が周囲に悪影響を与えることがあっ
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光学
材料として好ましい性質を有し、複屈折が小さく、光学
特性の劣化の少ない熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂の
シート及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】かくして本発明によれ
ば、ガラス転移温度が110℃以上残留溶媒濃度が0.
5重量%以下の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂から成
り、複屈折が20nm以下、及び熱可塑性飽和ノルボル
ネン系樹脂を10重量%以上の濃度で溶解できる沸点1
00℃以上の溶剤を主成分とする溶媒に熱可塑性飽和ホ
ルボルネン系樹脂を溶解し、流延し、最高温度100℃
以下で残留溶媒濃度が10重量%以下になるまで乾燥
し、さらに110℃以上で残留溶媒濃度が0.5重量%
以下に乾燥させる該シートの製造方法が提供される。
【0009】(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂)本発
明で使用する熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂の具体例
としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を必要
に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のご
ときポリマー変性を行った後に水素添加した樹脂、ノル
ボルネン系モノマーを付加型重合させた樹脂、ノルボル
ネン系モノマーとα−オレフィンを付加型共重合させた
樹脂などが挙げられる。重合、及び水素添加の方法は特
に限定されず、常法に従って行えばよい。
【0010】ノルボルネン系モノマーとして、例えば、
ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアル
キリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネ
ン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2
−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−
エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等
の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒ
ドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナ
フタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置
換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−
メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,
5,6,7,8,8a−オクタヒドロナルタレン、6−
エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,
5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−
エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4
a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、
6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4
a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、
6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4
a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、
6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4
a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、
6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−
1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナ
フタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例え
ば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,
8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾイン
デン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3
a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10
a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ
アントラセン;等が挙げられる。
【0011】なお、本発明においてはノルボルネン系モ
ノマーを公知の方法で開環重合させる場合には、本発明
の効果を実質的に妨げない範囲において開環重合可能な
他のシクロオレフィン類を併用することができる。この
ようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シ
クロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシ
クロペンタジエンなどのごとき反応性の二重結合を1個
有する化合物が例示される。
【0012】本発明で使用する熱可塑性飽和ノルボルネ
ン系樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、実用
上1万〜20万、好ましくは2万〜15万、より好まし
くは2万5千〜12万である。数平均分子量が小さすぎ
ると機械的強度が劣り、大きいすぎると複屈折が劣り、
また流延の操作性が悪くなる。
【0013】また、ノルボルネン系モノマーの開環重合
体を水素添加する場合、水素添加率は耐熱劣化性、耐光
劣化性などの観点から、90%以上、好ましくは95%
以上、より好ましくは、99%以上とする。
【0014】(添加物)本発明で用いる熱可塑性飽和ノ
ルボルネン系樹脂には、所望により、他の樹脂や、帯電
防止剤、老化防止剤、染料などの添加物を配合すること
ができる。また、表面粗さを小さくするため、レベリン
グ剤の添加が好ましい。レベリング剤は、例えば、フッ
素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリン
グ剤、シリコーン系レベリング剤など塗料用レベリング
剤を用いることができ、それらの中でも溶媒との相溶性
の良いものが好ましく、添加量は、通常は5〜50,0
00ppm、好ましくは10〜20,000ppmであ
る。
【0015】(溶媒)熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂
を流延するには、溶媒に溶解する必要がある。使用する
溶媒は沸点が100℃以上、好ましくは120℃以上の
ものであり、好ましくは25℃において固形分濃度10
重量%であっても樹脂を均一に溶解できるものである。
沸点が低いものはシートの乾燥中に表面からの溶媒の揮
発が速すぎるため乾燥ムラとして数分の1mmから数m
m程度の幅で高さ数〜数百μmの波ができ、表面が粗く
なるという問題がある。さらに、乾燥効率の観点から沸
点が200℃以下のものが好ましい。また、樹脂を溶解
しにくいものは、固形分濃度が高い溶液が得られないた
め、必要な厚さに流延しにくく、また、溶媒の蒸発・乾
燥過程でシートが濁りやすいという問題がある。
【0016】溶媒としては、例えば、芳香族溶剤やハロ
ゲン化芳香族溶剤等が挙げられ、具体的には、トルエ
ン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、トリ
メチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベン
ゼン、クロロベンゼン等が挙げられ、その中でもキシレ
ン、エチルベンゼン、クロロベンゼンが好ましい。シク
ロヘキサンやクロロホルムは熱可塑性飽和ノルボルネン
系樹脂を溶解するが沸点が低く、またベンゼンは沸点の
ほかに溶解性が不充分であり、これらは単独使用には向
かない。
【0017】溶媒は、単一溶媒でも、混合溶媒でもよ
い。また、これらの溶媒以外でも混合溶媒として25℃
の固形分濃度で10重量%以上樹脂を均一に溶解できる
ものであれば、ベンゼンやシクロヘキサンの他にテトラ
ヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、n−ヘキ
サン、n−オクタン等の直鎖の炭化水素等を含んでいて
もよい。
【0018】これらの条件を良好に満たすものとして
は、沸点が100℃以上のキシレン、エチルベンゼン等
の芳香族系溶剤を50%以上含有するものがある。
【0019】(溶液)流延に用いる樹脂溶液濃度4〜6
0重量%、好ましくは6〜50重量%、より好ましくは
8〜45重量%である。濃度が薄すぎると粘度が低くシ
ートの厚さの調整が困難であり、濃度が濃すぎると粘度
が高く操作性が悪い。
【0020】(流延)樹脂溶液を流延する方法は、特に
限定されず、ポリカーボネートなどの光学材料に用いら
れる一般の流延方法(例えば、「プラスチックフィルム
−加工と応用−」、プラスチックフィルム研究会編、技
報堂出版、1971年7月10日発行、第38〜44
頁、第78〜79頁、「プラスチックフィルム読本」、
松田敏宏編、株式会社プラスチックス・エージ、昭和4
1年12月10日発行、第106〜108頁等)を用い
ればよい。具体的には樹脂溶液をバーコーター、Tダ
イ、バー付きTダイなどを用いて、平板またはロール上
に流延すればよい。
【0021】(乾燥)本発明においては流延したシート
を2段階に分けて乾燥する。まず、第1段階の乾燥とし
て、100℃以下で残留溶媒濃度が10重量%以下、好
ましくは5重量%以下になるまで乾燥する。乾燥は50
℃以上で行うことが好ましい。温度が低すぎると乾燥が
進まず、温度が高すぎると発泡する。
【0022】次いで、第2段階の乾燥として、110℃
以上、好ましくは110℃〜250℃で残留溶媒濃度が
0.5重量%以下になるまで乾燥する。第1段階の乾燥
終了後に連続して乾燥しても、一旦冷却した後に再加熱
して乾燥してもよい。温度が低すぎると乾燥が進まず、
温度が高すぎると、酸素の存在下では酸化により樹脂が
劣化する。
【0023】これらの乾燥工程においては、必ずしも、
乾燥過程において残留溶媒濃度を測定しながら乾燥する
必要はない。前もって、使用するポリマーの種類、量、
溶媒の種類、量などを検討して、100℃以下の所定温
度で残留溶媒濃度が10重量%以下になる乾燥時間など
の条件、110℃以上の特定温度で残留溶媒濃度が0.
5重量%以下になる乾燥時間などの条件を求めておき、
その条件で乾燥を行えばよい。
【0024】(シートの特性)本発明のシートは複屈折
の絶対値の最大値が20nm以下、好ましくは10nm
以下、特に好ましくは5nm以下である。また、複屈折
の面内のばらつきは、±20nm以下、好ましくは±1
0nm以下、特に好ましくは±5nm以下である。
【0025】耐熱性については用いる熱可塑性飽和ノル
ボルネン系樹脂の種類と用いた溶媒の種類、残留溶媒濃
度によって決定される。残留溶媒濃度が高いほど、耐熱
性は低下する。本発明のシートを形成している熱可塑性
飽和ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)で1
10℃以上、好ましくは120℃以上、特に好ましくは
130℃以上である。
【0026】本発明のシートは厚さは2μm〜1mm、
好ましくは5μm〜500μmのものである。厚さは流
延させる樹脂の種類、樹脂溶液の濃度、量と流延する面
積で決まる。本発明のシートの厚さムラは全面において
平均厚さの±5%以内、好ましくは±2%以内である。
【0027】また、本発明のシートは表面粗さが小さ
い。表面粗さは中心線平均粗さであるRa値で通常0.
1μm以下、好ましくは0.05μm以下、さらに好ま
しくは0.02μm以下である。
【0028】さらに、残留溶媒濃度が0.5重量%以下
であるため、長時間の使用においても、残留溶媒の乾燥
で重量や厚さが変化することなく、また、残留溶媒がに
じみ出ることにより周囲に悪影響をおよぼすこともな
く、さらに光学特性の劣化が少ない。
【0029】(用途)本発明のシートは表面に記録薄膜
を設けた光ディスク、光カード、光フロッピー、光テー
プ、その他各種メモリ等の光反射型、磁気型、及び色素
系の情報記録用光学素子の基板のほか、プレス加工して
スポーツ用ゴーグル、自動車等のヘッドランプやテール
ランプのレンズやカバー等のプラスチックレンズや、表
面に透明導電膜を設けたタッチ電極や液晶基板、液晶表
示の位相板、スクリーンや偏光フィルム、CRT用防眩
フィルター、偏光板の保護層等の情報表示用の透明板、
電子デバイス等の絶縁膜、薬品容器、光学分析用容器、
飲料容器、食品容器、包装用フィルムなどに用いること
ができる。
【0030】
【実施例】以下に参考例、実施例、及び比較例を挙げて
本発明をさらに具体的に説明する。なお、参考例、実施
例、及び比較例において数平均分子量はトルエンを溶媒
とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法に
よって、水素添加率は1H−NMRによって、Tgはシ
ートの一部を試料としてDSC法によって、複屈折は波
長633nmのダブルパス法によって、残留溶媒濃度は
温度200℃のガスクロマトグラフィによって、厚みは
ダイヤル式厚みゲージによって測定した。光線透過率は
分光光度計によって波長400〜700nmの範囲につ
いて波長を連続的に変化させて測定し、最小の透過率を
そのシートの光線透過率とした。また、Ra値は触針式
膜圧計(TENCOR社製、アルファ・ステップ20
0)で長さ1mmに渡って数カ所測定した。
【0031】参考例1 6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4
a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン
(以下、MTDという)に、重合触媒としてトリエチル
アルミニウムの15%シクロヘキサン溶液10部、トリ
エチルアミン5部、および四塩化チタンの20%シクロ
ヘキサン溶液10部を添加して、シクロヘキサン中で開
環重合し、得られた開環重合体をニッケル触媒で水素添
加してポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をイソプ
ロピルアルコール中で凝固させ、乾燥し、粉末状の樹脂
を得た。この樹脂の数平均分子量は40,000、水素
添加率は99.8%以上、Tgは142℃、残留溶媒濃
度は0.05%であった。
【0032】参考例2 MTDとエチレンを重合触媒としてジクロロエトキシオ
キソバナジウム/エチルアルミニウムセスキクロリドを
用いて、トルエン中で付加共重合し、ポリマー溶液を得
た。このポリマー溶液をイソプロピルアルコール中で凝
固させ、乾燥し、粉末状の樹脂を得た。この樹脂のMT
D/エチレン共重合比率は13C−NMR法で48/52
(モル比)、数平均分子量は45,000、Tgは14
3℃、残留溶媒濃度は0.07%であった。
【0033】参考例3 MTDとジシクロペンタジエンとの混合モノマー(モル
比でMTD/ジシクロペンタジエンが7/3)を重合触
媒としてトリエチルアルミニウムの15%シクロヘキサ
ン溶液10部、トリエチルアミン5部、および四塩化チ
タンの20%シクロヘキサン溶液10部を添加して、開
環重合し、ニッケル触媒を添加して水素添加してポリマ
ー溶液を得た。このポリマー溶液を、290℃、到達真
空度0.5torrの直接乾燥法で乾燥し、ストランド状に
押し出し、カッティングし、ペレット状のポリマーを得
た。このポリマーのMTD/ジシクロペンタジエン共重
合比率は残留モノマー量から7/3(モル比)であると
推定された。数平均分子量は55,000、水素添加率
は99.8%以上、Tgは140℃、残留溶媒は温度2
00℃のガスクロマトグラフィで検出されなかった。
【0034】実施例1 参考例1の樹脂15gをクロロベンゼン85gに溶解
し、樹脂溶液組成物を得た。この樹脂溶液を表面研磨さ
れたガラス板上にたらし、これをバーコーターにより幅
約300mm、長さ500mmに流延した。これを第1
段階の乾燥としてガラス板ごと空気還流型のオーブン中
で25℃から90℃まで30分かけて昇温させて乾燥さ
せた。室温まで冷却後、シートの一部を切取り、残留溶
媒濃度を測定したところ、1.2重量%であった。次い
で、第2段階の乾燥として140℃のオーブンで90分
乾燥し、室温に冷却後、樹脂膜をガラス板から剥離し、
周囲10mm幅を切り落としてシートを得た。このシー
トの残留溶媒濃度は0.12重量%であった。
【0035】このシートの表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、発泡、スジ、キズなどは観察されなかっ
た。Tgは139℃、平均厚さは42μmで厚さのばら
つきは最大でも±1μm以下、両面ともRa値は0.0
2μm以下、光線透過率は90.2%、複屈折の絶対値
の最大値は全面で2nm以下であった。
【0036】実施例2 参考例2の樹脂10gをエチルベンゼン90gに溶解
し、実施例1と同様に流延した。これを第1段階の乾燥
としてガラス板ごと空気還流型のオーブン中で25℃か
ら80℃まで30分かけて昇温させて乾燥させた。室温
まで冷却後、シートの一部を切取り、残留溶媒濃度を測
定したところ、1.9重量%であった。次いで、第2段
階の乾燥として130℃のオーブンで90分乾燥し、室
温に冷却後、樹脂膜をガラス板から剥離し、周囲10m
m幅を切り落としてシートを得た。このシートの残留溶
媒濃度は0.06重量%であった。
【0037】このシートの表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、発泡、スジ、キズなどは観察されなかっ
た。Tgは141℃、平均厚さは10μmで厚さのばら
つきは最大でも±0.3μm以下、両面ともRa値は
0.02μm以下、光線透過率は90.5%、複屈折の
絶対値の最大値は全面で2nm以下であった。
【0038】実施例3 参考例3の樹脂20gをクロロベンゼン80gに溶解
し、樹脂溶液組成物を得た。この樹脂溶液を表面研磨さ
れたSUS306板上にたらし、これをバーコーターに
より幅約300mm、長さ500mmに流延した。これ
を第1段階の乾燥としてガラス板ごと空気還流型のオー
ブン中で25℃から90℃まで30分かけて昇温させて
乾燥させた。室温まで冷却後、シートの一部を切取り、
残留溶媒濃度を測定したところ、2.5重量%であっ
た。次いで、第2段階の乾燥として140℃のホットプ
レート上に移して90分乾燥し、室温に冷却後、樹脂膜
をSUS306板から剥離し、周囲10mm幅を切り落
としてシートを得た。このシートの残留溶媒濃度は0.
18重量%であった。
【0039】このシートの表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、発泡、スジ、キズなどは観察されなかっ
た。Tgは138℃、平均厚さは250μmで厚さのば
らつきは最大でも±5μm以下、両面ともRa値は0.
02μm以下、光線透過率は90.4%、複屈折の絶対
値の最大値は全面で2nm以下であった。
【0040】実施例4 参考例1の樹脂10gをクロロベンゼン90gに溶解
し、実施例1と同様に流延した。これを第1段階の乾燥
としてガラス板ごとホットプレート上に移し、25℃か
ら90℃まで60分かけて昇温させて乾燥させた。室温
まで冷却後、シートの一部を切取り、残留溶媒濃度を測
定したところ、4.2重量%であった。次いで、第2段
階の乾燥としてホットプレート上で25℃から120℃
に90分かけて昇温し、さらに140℃で60分間乾燥
した。室温に冷却後、樹脂膜をガラス板から剥離し、周
囲10mm幅を切り落としてシートを得た。このシート
の残留溶媒濃度は0.44重量%であった。
【0041】このシートの表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、発泡、スジ、キズなどは観察されなかっ
た。Tgは135℃、平均厚さは38μmで厚さのばら
つきは最大でも±0.5μm以下、両面ともRa値は
0.02μm以下、光線透過率は90.5%、複屈折の
絶対値の最大値は全面で2nm以下であった。
【0042】実施例5 参考例1の樹脂15gをクロロベンゼン85gに溶解
し、実施例1と同様に流延した。これを第1段階の乾燥
としてガラス板ごとホットプレート上に移し、55℃で
30分間、さらに90℃で30分間乾燥させた。室温ま
で冷却後、シートの一部を切取り、残留溶媒濃度を測定
したところ、2.0重量%であった。次いで、第2段階
の乾燥としてホットプレート上で110℃で30分間、
さらに140℃で60分間乾燥した。室温に冷却後、樹
脂膜をガラス板から剥離し、周囲10mm幅を切り落と
してシートを得た。このシートの残留溶媒濃度は0.1
1重量%であった。
【0043】このシートの表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、発泡、スジ、キズなどは観察されなかっ
た。Tgは140℃、平均厚さは100μmで厚さのば
らつきは最大でも±2μm以下、両面ともRa値は0.
02μm以下、光線透過率は90.5%、複屈折の絶対
値の最大値は全面で2nm以下であった。
【0044】実施例6 エチルベンゼン80重量部にシクロヘキサン20重量部
を加えた溶媒85gに参考例1の樹脂15gを溶解し、
実施例1と同様に流延した。これを第1段階の乾燥とし
てガラス板ごと空気還流型のオーブン中で25℃から9
0℃まで60分かけて昇温させて乾燥させた。室温まで
冷却後、シートの一部を切取り、残留溶媒濃度を測定し
たところ、2.5重量%であった。次いで、第2段階の
乾燥としてホットプレート上に移し、130℃で120
分間乾燥した。室温に冷却後、樹脂膜をガラス板から剥
離し、周囲10mm幅を切り落としてシートを得た。こ
のシートの残留溶媒濃度は0.35重量%であった。
【0045】このシートの表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、発泡、スジ、キズなどは観察されなかっ
た。Tgは132℃、平均厚さは20μmで厚さのばら
つきは最大でも±0.5μm以下、両面ともRa値は
0.02μm以下、光線透過率は90.3%、複屈折の
絶対値の最大値は全面で2nm以下であった。
【0046】実施例7 エチルベンゼン90重量部にテトラヒドロフラン10重
量部を加えた溶媒を用いるほかは実施例6と同様にして
シートを得た。空気還流型のオーブン中で25℃から9
0℃まで60分かけて昇温させて乾燥させた後の残留溶
媒濃度は2.1重量%、130℃で120分間乾燥した
後のシートの残留溶媒濃度は0.35重量%であった。
【0047】このシートの表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、発泡、スジ、キズなどは観察されなかっ
た。Tgは134℃、平均厚さは30μmで厚さのばら
つきは最大でも±0.5μm以下、両面ともRa値は
0.02μm以下、光線透過率は90.3%、複屈折の
絶対値の最大値は全面で2nm以下であった。
【0048】比較例1 参考例2の樹脂10gをトルエン90gに溶解し、実施
例1と同様に流延した。これを25℃で3日間放置して
乾燥させた。室温に冷却後、樹脂膜をガラス板から剥離
し、周囲10mm幅を切り落としてシートを得た。シー
トの一部を切取り、残留溶媒濃度を測定したところ、1
5.3重量%であった。
【0049】このシートの表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、発泡、スジ、キズなどは観察されなかっ
たが、Tgは100℃以下で光学材料としては耐熱性が
不十分であった。
【0050】比較例2 比較例1で作製したシートをオーブンで130℃で90
分乾燥させた。室温に冷却後、樹脂膜をガラス板から剥
離し、周囲10mm幅を切り落とした。この樹脂膜の残
留溶媒濃度は1.2重量%であった。
【0051】この樹脂膜の表面を目視および光学顕微鏡
で観察したところ、スジ、キズなどは観察されなかった
が、発泡が認められた。発泡のないごく狭い範囲で測定
したところ、Tgは116℃、平均厚さは38μmで厚
さのばらつきは最大でも±0.5μm以下、ガラスと接
触していなかった面のRa値も0.02μm以下、光線
透過率は90.5%、複屈折の絶対値の最大値は全面で
2nm以下であった。しかし、全体としては1cm2あた
り5〜6ヶ所の割合で発泡により半径約0.5mmの半
球状に隆起しており、シートと呼べるものではなかっ
た。樹脂膜のガラスと接触していなかった面全体として
のRa値の最大値は少なくとも100μm以上であっ
た。
【0052】比較例3 参考例1の樹脂25gをシクロヘキサン75gに溶解
し、実施例1と同様に流延した。これを第1段階の乾燥
としてガラス板ごと空気還流型のオーブン中で40℃で
3日間乾燥させた。室温まで冷却後、シートの一部を切
取り、残留溶媒濃度を測定したところ、12.3重量%
であった。次いで、第2段階の乾燥としてホットプレー
ト上に移し、120℃で180分間乾燥した。室温に冷
却後、樹脂膜をガラス板から剥離し、周囲10mm幅を
切り落とした。この樹脂膜の残留溶媒濃度は3.5重量
%であった。
【0053】この樹脂膜の表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、発泡が認められ、スジ、キズがあり、大
きく波うっていた。Tgは100℃以下で光学材料とし
ては耐熱性が不十分であった。平均厚さは100μm
で、全体として1cm2あたり3〜5ヶ所の割合で発泡に
より半径約0.3〜0.5mmの半球状に隆起してお
り、シートと呼べるものではなかった。また、ガラスと
接触していなかった面のRa値の最大値は発泡していな
い部分でも5μm以上もあった。
【0054】比較例4 参考例1の樹脂20gをキシレン80gに溶解し、実施
例1と同様に流延した。これをガラス板ごと空気還流型
のオーブン中で140℃で30分乾燥させた。
【0055】この樹脂膜の表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、激しい発泡が認められ、全く光学材料と
して使用できるものではなかった。また、Tgも100
℃以下であった。
【0056】比較例5 参考例1の樹脂15gをクロロホルム(沸点61.2
℃)85gに溶解し、実施例1と同様に流延した。これ
を第1段階の乾燥としてガラス板ごと空気還流型のオー
ブン中で25℃から90℃に90分かけて昇温して乾燥
させた。室温まで冷却後、シートの一部を切取り、残留
溶媒濃度を測定したところ、0.10重量%であった。
次いで、第2段階の乾燥としてホットプレート上で、1
20℃で30分間乾燥した。室温に冷却後、樹脂膜をガ
ラス板から剥離し、周囲10mm幅を切り落としてシー
トを得た。このシートの残留溶媒濃度は0.05重量%
であった。
【0057】このシートの表面を目視および光学顕微鏡
で観察したところ、発泡はなかったが、表面が大きく波
うっていた。Tgは141℃、平均厚さは20μmで厚
さのばらつきの最大値は±約4μm、ガラスと接触して
いなかった面のRa値の最大値は約8μmであった。複
屈折は少なくとも300nm以上であった。
【0058】比較例6 参考例3の樹脂を樹脂温280℃で溶融し、スクリュー
径40mmの押出機で、幅300mmのTダイから押し
出して、110℃に熱した鏡面仕上げのロールに流延
し、シートを得た。
【0059】このシートの表面を目視および光学顕微鏡
で観察したが、発泡はなかったが、スジ、キズがあっ
た。Tgは139℃、平均厚さは200μmで厚さのば
らつきの最大値は±約15μm、ロールに接触していな
かった面のRa値の最大値は約0.08μmであった。
光線透過率は90.1%、複屈折の絶対値の最大値は1
25nmで面内での複屈折の絶対値のばらつきは±10
0nmであった。
【0060】実施例8 実施例4で得たシートを縦横10cmの正方形に切り、
ガラスと接触していた面にニッケルを真空蒸着した。こ
のニッケル蒸着シートを温度90℃湿度85%の恒温恒
湿槽内に100時間保持し、目視および光学顕微鏡で観
察したが、フクレ、ニッケルの腐食は認められなかっ
た。
【0061】比較例7 比較例1で得たシートを縦横10cmの正方形に切り、
ガラスと接触していた面にニッケルを真空蒸着した。こ
のニッケル蒸着シートを温度90℃湿度85%の恒温恒
湿槽内に100時間保持し、目視および光学顕微鏡で観
察したところ、金属層と樹脂層の間に空隙ができるフク
レが多数発生し、ニッケルも腐食が認められた。
【0062】
【発明の効果】本発明のシートは、複屈折の絶対値の最
大値が20nm以下、Tgが110℃以上、厚さはμ
m以上1mm以下、厚さムラは全面において平均厚さの
±5%以内であり、残留溶媒濃度が0.5重量%以下で
あるため、長時間の使用においても、残留溶媒の乾燥で
重量や厚さが変化することなく、また、残留溶媒がにじ
み出ることにより周囲に悪影響をおよぼすこともなく、
さらに光学特性の劣化が少ない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B29K 86:00 B29K 86:00 B29L 7:00 B29L 7:00 C08L 45:00 C08L 45:00 65:00 65:00 (72)発明者 夏梅 伊男 神奈川県川崎市川崎区夜光1−2−1 日本ゼオン株式会社 研究開発センター 内 審査官 天野 宏樹 (56)参考文献 特開 昭62−215611(JP,A) 特開 昭62−252407(JP,A) 特開 平1−240517(JP,A) 特開 昭60−190313(JP,A) 特開 平3−223328(JP,A) 特開 平4−320203(JP,A) 特開 平4−361230(JP,A) 特開 平11−166039(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/18 B29C 41/12 B29C 41/46

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラス転移温度が110℃以上、残
    留溶媒濃度が0.5重量%以下の熱可塑性飽和ノルボル
    ネン系樹脂から成り、厚さが2μm〜1mmで残留溶媒
    濃度が0.5重量%以下で複屈折が最大値で20nm以
    下のシート。
  2. 【請求項2】 熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を
    沸点100℃以上の溶媒に溶解し、流延し、最高温度1
    00℃以下で残留溶媒濃度が10重量%以下になるまで
    乾燥し、さらに110℃以上で残留溶媒濃度が0.5重
    量%以下になるまで乾燥させる請求項1記載のシートの
    製造方法。
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