JP3183273B2 - 熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーの乾燥方法 - Google Patents

熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーの乾燥方法

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JP3183273B2
JP3183273B2 JP28055298A JP28055298A JP3183273B2 JP 3183273 B2 JP3183273 B2 JP 3183273B2 JP 28055298 A JP28055298 A JP 28055298A JP 28055298 A JP28055298 A JP 28055298A JP 3183273 B2 JP3183273 B2 JP 3183273B2
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  • Processing And Handling Of Plastics And Other Materials For Molding In General (AREA)
  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性飽和ノル
ボルネン系ポリマーの乾燥方法に関し、さらに詳しく
は、熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーを成形前に高
温条件下で乾燥する方法に関する。熱可塑性飽和ノルボ
ルネン系ポリマーを成形前に乾燥することにより、ミク
ロボイドのない成形品を得ることができる。したがっ
て、本発明の乾燥方法によれば、耐熱性、耐水性、強度
などに優れると共に、ミクロボイドなどの微細な欠陥の
ない成形品を得ることができる。
【0002】
【従来の技術】一般に、ポリオレフィン系ポリマーは、
炭素と水素だけからなり不飽和結合を持たない構造であ
るため、水との親和性が低く、水分を吸収、透過せず、
また、酸、アルカリ、その他の薬品や各種溶剤に対する
耐性が高いという特徴を持っている。その代表的なもの
がポリエチレンとポリプロピレンであり、溶融押出成形
によりシートやフィルム、筒や棒状に成形して広範な用
途に用いられている。しかしながら、これら従来の材料
は、耐熱性が十分ではなく、70〜80℃以下の比較的
低い温度で加熱変形してしまい、それ以上の温度では使
用できないという欠点があった。また、これらの材料
は、透明性が悪く、光学用途には使用できなかった。
【0003】一方、例えば、光ィスク基板やプラスチ
ックレンズ等の光学用透明プラスチック成形材料とし
て、ポリカーボネート(PC)およびポリメチルメタク
リレート(PMMA)が主として用いられてきた。しか
しながら、PCは複屈折が大きく、また、PMMAは吸
水性が大きく、耐熱性も不十分であり、ますます高度化
する要求に応えることが困難となってきている。
【0004】最近、ノルボルネン系モノマーの開環重合
体の水素添加物やノルボルネン系モノマーとエチレンと
の付加型ポリマーのような熱可塑性飽和ノルボルネン系
ポリマーが、光ディスク基板などの光学用プラスチック
成形材料として注目をあびてきている(特開昭60−2
6024号、特開昭64−24826号、特開昭60−
168708号、特開昭61−115912号、特開昭
61−120816号など)。
【0005】これらの熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリ
マーは、一種のポリオレフィン系ポリマーであり、他の
ポリオレフィン同様優れた耐水性、耐薬品性、耐溶剤性
を示し、かつ、ガラス転移温度100℃以上の高い耐熱
性を持つポリマーが合成可能で、さらに90%以上の全
光透過率を持った透明性に優れた材料である。
【0006】以上のことから、熱可塑性飽和ノルボルネ
ン系ポリマーは、耐熱性を有するポリオレフィン材料と
して各種用途への使用が可能であるだけではなく、小さ
な複屈折と優れた透明性、耐水性、耐熱性を兼ね備えた
透明材料として、光学用途などへの展開が可能である。
【0007】しかしながら、これらの熱可塑性飽和ノル
ボルネン系ポリマーは、ポリエチレンやポリプロピレ
ン、PMMAに比べると脆く、シートやフィルム、棒状
に押出成形すると、割れるか折れ易く十分な強度のもの
が得られていない。また、しばしば、押出成形品の中に
泡状の欠陥が生じ、表面に目に見えるほど大きな条痕と
なってあらわれたり、さらに強度を低下させるという問
題点があった。また、目に見えるような大きな条痕がな
くとも、光学顕微鏡等を用いて詳細に観察してみると、
目では見えない微細なボイドやクラック状の欠陥(以
下、「ミクロボイド」という)が内部に発生することが
多く、これまで、熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー
の押出成形では、ミクロボイドの全く無い成形物は得ら
れていなかった。
【0008】シート状またはフィルム状成形品を得る他
の方法として、ポリマーを適当な溶剤の溶液としてキャ
ストし、溶剤を蒸発させるキャスト法があり、この方法
によれば、ミクロボイドのほとんど無い成形品が得られ
る。ところが、たとえ数μm程度の薄さの成形品であっ
ても、溶剤が完全には蒸発せず、数%程度残留するた
め、十分な強度が得られなかったり、使用しているうち
に、少しづつ残留溶剤が蒸発して、成形品の特性が変化
したり、あるいは蒸発した溶剤が、該成形品の周囲に組
み込まれている他の構成部品等に悪影響を与えるなどの
問題点がある。フィルム状またはシート状成形品は、耐
久性の観点から引張強度が800kg/cm2以上、好
ましくは900kg/cm2以上を必要とするが、キャ
スト法ではこのような十分な強度を持ったものが得られ
ていない。
【0009】したがって、従来、熱可塑性飽和ノルボル
ネン系ポリマーからなるシート状またはフィルム状成形
品であって、微細なボイドやクラック状の欠陥の発生が
全くなく、引張強度で800kg/cm2以上の十分な
強度を持ったのもは提供されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ミク
ロボイドのない成形品を与えることができる熱可塑性
ノルボルネン系ポリマーを提供することにある。本発
明の他の目的は、耐熱性、耐水性、強度等に優れるとと
もに、発泡や条痕等による欠陥のない成形品を与えるこ
とができる熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーを提供
することにある。
【0011】本発明者らは、成形用材料として熱可塑性
飽和ノルボルネン系ポリマーを用いた成形品を詳細に検
討した結果、熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーの押
出成形物は、目視では欠陥のないように見えても、光学
顕微鏡を用いて詳細に観察すると、内部に微細なボイド
やクラック状の欠陥が発生し易いことを見いだした。
【0012】本発明者らは、このミクロボイドの問題を
解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性飽和ノルボ
ルネン系ポリマーを溶融押出して得たペレットを、押出
成形加工前に、高温条件、例えば、ガラス転移温度(T
g)よりやや低い温度条件下で乾燥してから使用するこ
とにより、ミクロボイドのない成形品の得られることを
見出した。この乾燥処理は、熱可塑性飽和ノルボルネン
系ポリマーからなる成形用材料を射出成形する場合にも
有効である。このようにして得られた成形品は、高温・
高湿度下での耐久性にも優れており、長期間にわたり、
ミクロボイドが発生しない。
【0013】熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーとし
ては、適当な範囲の分子量および分子量分布を持った熱
可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーが、成形した場合
に、十分な強度を持つことから好ましい。また、従来の
熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーには、未反応モノ
マー、溶剤などの低揮発成分が混入しており、これが発
泡による強度の低下や表面の条痕の原因であることが判
明した。これらのポリマー中に含まれる揮発成分を0.
3重量%以下とすることにより、押出成形した場合に
も、発泡や目に見える大きな条痕の発生を抑制すること
ができる。これらの熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマ
ーに配合する酸化防止剤の種類によっては、発泡による
強度の低下や表面の条痕の発生が助長されることが判明
したが、特定の低揮発性の酸化防止剤を選択使用するこ
とにより、それらの特性を損なうことなく、ポリマーの
分解や劣化、着色等の問題が解決できることを見出し
た。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至っ
たものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれ
ば、熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーを成形前に高
温条件下で乾燥することを特徴とする熱可塑性飽和ノル
ボルネン系ポリマーの乾燥方法が提供される。
【0015】また、本発明によれば、以下のような発明
の実施の態様が提供される。 1. ペレット化した熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリ
マーを成形前に予備乾燥する前記の乾燥方法。 2. ペレット化した熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリ
マーが、酸化防止剤を含有するものである前記の乾燥方
法。 3. 酸化防止剤が、20℃における蒸気圧が10-6
a以下のものである前記の乾燥方法。
【0016】4. 熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマ
ーを、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)より低い高
温条件下で乾燥する前記の乾燥方法。 5. (Tg−30)〜(Tg−5)℃の温度条件下で
乾燥する前記の乾燥方法。 6. (Tg−20)〜(Tg−5)℃の温度条件下で
乾燥する前記の乾燥方法。 7. 高温条件下で1時間以上乾燥する前記の乾燥方
法。 8. 真空乾燥する前記の乾燥方法。
【0017】9. 空気または窒素雰囲気下で乾燥する
前記の乾燥方法。10. 熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーが、高速
液体クロマトグラフィーにより測定した数平均分子量
(Mn)が50,000〜500,000、重量平均分
子量(Mw)が100,000〜2,000,000、
分子量分布(Mw/Mn)が2.2以上であり、かつ、
該ポリマー中に含まれる揮発成分が0.3重量%以下の
ポリマーである前記の乾燥方法。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。 (熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー) 本発明が対象とする成形用材料は、熱可塑性飽和ノルボ
ルネン系ポリマーであって、その具体例として下記に一
般式〔I〕および/または〔II〕で表される構造単位
を有するポリマーを挙げることができる。 一般式〔I〕
【0019】
【化1】
【0020】〔ただし、式中、R1およびR2は、水素、
炭化水素残基またはハロゲン、エステル、ニトリル、ピ
リジルなどの極性基で、それぞれ同一または異なってい
てもよく、また、R1およびR2は、互いに環を形成して
もよい。nは、正の整数である。qは、0または正の整
数である。〕 一般式〔II〕
【0021】
【化2】
【0022】〔ただし、式中、R3およびR4は、水素、
炭化水素残基またはハロゲン、エステル、ニトリル、ピ
リジルなどの極性基で、それぞれ同一または異なってい
てもよく、また、R3およびR4は、互いに環を形成して
もよい。lおよびmは、正の整数である。pは、0また
は正の整数である。〕
【0023】一般式〔I〕で表される構造単位を有する
ポリマーは、単量体として、例えば、ノルボルネン、並
びにそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、
例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,6−ジメ
チル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネ
ン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−
2−ノルボルネン等;ジシクロペンタジエン、2,3−
ジヒドロジシクロペンタジエン、これらのメチル、エチ
ル、プロピル、ブチル等のアルキル置換体、およびハロ
ゲン等の極性基置換体;ジメタノオクタヒドロナフタレ
ン、そのアルキルおよび、またはアルキリデン置換体、
およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル
−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,
7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−
1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,
7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデ
ン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,
6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロ
ロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,
6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シア
ノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,
6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリ
ジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,
6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メト
キシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,
4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン
等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,
9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8
a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾンデン、
4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,
4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,
11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセ
ン等を1種または2種以上使用し、公知の開環重合方法
により重合して得られる開環重合体を、通常の水素添加
方法により水素添加して製造される飽和ポリマーであ
る。目的とする開環重合体水素添加物(飽和ポリマー)
のガラス転移温度(Tg)を100℃以上とするには、
これらのノルボルネン系モノマーの中でも4環体また5
環体のものを使用するか、これらを主成分とし、2環体
や3環体のモノマーと併用することが好ましい。特に、
複屈折の点では、4環体の低級アルキル置換体またはア
ルケニル置換体を主成分とすることが好ましい。
【0024】一般式〔II〕で表される構造単位を有す
るポリマーは、単量体として、前記のごときノルボルネ
ン系モノマーの1種以上と、エチレンを公知の方法によ
り付加共重合して得られるポリマーおよび/またはその
水素添加物であって、いずれも飽和ポリマーである。
【0025】また、熱可塑性飽和ノルボルネン系モノマ
ーは、重合体〔I〕および〔II〕の製造過程で、分子
量調節剤として、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキ
センなどのα−オレフィンを存在させたり、あるいはシ
クロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロ
ヘプテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロシクロペ
ンタジエン等のシクロオレフィンなどの他のモノマー成
分を少量成分として添加することにより、共重合したポ
リマーであっても構わない。
【0026】本発明における熱可塑性飽和ノルボルネン
系ポリマーは、トルエンを溶剤とする高速液体クロマ
グラフィー(HLC)分析により測定した数平均分子量
(Mn)が50,000〜500,000、好ましく
は、60,000〜200,000、重量平均分子量
(Mw)が100,000〜2,000,000、好ま
しくは100,000〜1,000,000であって、
その分子量分布(Mw/Mn)が2.2以上であること
が好ましい。
【0027】MnおよびMwが上記範囲より小さいと、
押出成形してフィルムやシート、棒などを成形した場合
に、十分な強度をもつ成形品が得られない。逆に、この
範囲よりも大きいと成形性が悪くなり、押出成形使用と
しても粘度が高すぎるため成形が困難である。また、適
当な溶剤に溶解してキャストや紡糸しようとしても溶剤
に対する溶解性が不十分である。しかも、そのような高
分子量ポリマーは、合成反応を制御するのが難しく、品
質の安定した材料が得られないという不都合が生じる。
また、分子量分布(Mw/Mn)は、2.2以上である
ことが好ましく、より好ましくは2.4以上、特に好ま
しくは2.8以上である。
【0028】一般に、熱可塑性ポリマーは、分子量分布
の小さい、単分散に近いポリマーほど強度と成形性のバ
ランスに優れていて性能が良いとされている。しかしな
がら、本発明のように分子量の比較的大きなポリマーを
押出成形して、例えば、シートやフィルムにする場合、
溶融状態から冷却されて固まっていく過程において、単
分散の分子がある温度において一瞬に同時に固まるより
も、いろいろな分子量の分子が分子量の大きい方から順
番に段々と固まって行く場合の方が、応力が残留せず、
全体に平坦で奇麗な成形品が得られる。熱可塑性飽和ノ
ルボルネン系ポリマーでは、ポリマーが剛直であり、さ
らに耐熱性が高く成形温度が300℃近くのかなりの高
温になるため、この傾向が特に顕著である。このため、
本発明の目的のためには、分子量分布は2.2以上であ
ることが好ましく、より好ましくは2.4以上、特に好
ましくは2.8以上である。分子量分布が、この範囲よ
り小さい場合には、押出成形がしにくく、平滑性や光学
的特性などの良好な成形品が得難いという欠点がある。
【0029】分子量分布(Mw/Mn)が大きくなるに
したがって、成形性が改良される。一般的に、ポリカー
ボネートのように耐熱性が高く、剛性の高いポリマーで
は、溶融状態から急激に冷却されると、内部に歪みが生
じて、平坦な成形物が得られないという現象が起きやす
い。熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーでも同様のこ
とがある。例えば、押出機でTダイから押出して、シー
ト状に引き取る場合、ロールの温度を高くしてやらない
と平坦なシートが引けないという現象が起こる。Tgが
140℃程度のポリマーの場合、ロール温度を120〜
140℃に上げることにより、平坦に引くことができ
る。しかし、通常は、ロールの加熱は、水による場合が
多く、ロールの温度を最高でも90℃位までしか上げら
れないことが多い。
【0030】分子量分布が2.2未満の場合では、ロー
ルの温度を約140℃とポリマーのガラス転移温度付近
まで上げても、うまく成形できないが、2.2以上では
110〜130℃程度にロールの温度を上げることによ
り、平坦な成形物が成形可能となる。さらに、分子量分
布が2.8以上に広がると、ますます成形性が改良さ
れ、90〜100℃位のロール温度でも平坦で、内部歪
みのない成形物が可能となる。分子量分布の上限は、特
にないが、あまり大きくなりすぎると、Mnが大きく
て、溶融粘度の高い割りには充分な強度が得られないこ
と、およびそのようなポリマー自体の合成が難しくなる
ことから、概ね6.0以下が好ましい。
【0031】このような分子量(Mn、Mw)と分子量
分布(Mw/Mn)を持った熱可塑性飽和ノルボルネン
系ポリマーは、合成反応において、例えば、触媒の使用
量を加減したり、重合温度を変えたり、分子量調節剤を
用いる場合にはその種類や量を加減したり、さらには、
モノマーをプロップで反応系に後添加したり、あるいは
分子量の小さいものと大きなものを別々に合成しておい
てこれらをブレンドして分子量分布を広げる等の方法に
より製造することができる。
【0032】合成したポリマーの分子鎖中に残留する不
飽和結合を水素添加反応により飽和させる場合には、耐
光劣化や耐候劣化性などの観点から、水素添加率を90
%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%
以上とする。本発明におけるポリマーは、耐熱性および
成形性の観点から、Tgが100℃以上、好ましくは1
20〜200℃、さらに好ましくは130〜180℃で
あることが望ましい。
【0033】(揮発成分の低減方法) 熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーは、通常の合成方
法では0.5重量%以上の揮発成分を含むのが一般的で
ある。本発明の成形材料は、熱可塑性飽和ノルボルネン
系ポリマーの中に含まれる揮発成分が、0.3重量%以
下、好ましくは0.2重量%以下、さらに好ましくは
0.1重量%以下のものであることが望ましい。本発明
においては、示差熱重量測定装置(セイコー電子工業社
製TG/DTA200)を用いて、30℃から350℃
までの加熱減量を求め、その量を揮発成分の含有量とす
る。揮発成分の含有量が上記範囲より多いと、約250
〜350℃の温度で押出成形した場合に、揮発成分が成
形中に揮発し、発泡して成形品内部の欠陥になったり、
強度を低下させたり、あるいは表面に条痕となって現れ
たりする。
【0034】揮発分の低減方法としては、例えば、貧溶
媒によるポリマー凝固法では、凝固を繰り返し実施する
方法がある。直接乾燥法では、250℃以上、30To
rr以下で、薄膜乾燥機や押出乾燥機を用いて乾燥する
ことが望ましい。また、予めポリマーの溶媒溶液を数十
%に濃縮した後に、直接乾燥することもできる。もちろ
ん、これらの方法に限定されるものではない。これらの
方法によって製造された熱可塑性飽和ノルボルネン系ポ
リマーは、実質的に非晶性であり、透明性、寸法安定
性、耐熱性、吸水性に優れ、透湿性がほとんど認めら
れない。
【0035】(酸化防止剤) 本発明において、前記熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリ
マー100重量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を
0.01〜5重量部の割合で配合すると、成形加工時の
ポリマーの分解や着色を効果的に防止することができ
る。
【0036】酸化防止剤としては、20℃における蒸気
圧が10-5Pa以下、特に好ましくは10-8Pa以下の
酸化防止剤が望ましい。蒸気圧が10-5Paより高い酸
化防止剤は、押出成形する場合に発泡したり、また、高
温にさらされたときに成形品の表面から酸化防止剤が揮
散するという問題が起こる。本発明で使用できる酸化防
止剤としては、例えば、次のようなものを挙げることが
でき、これらのうちの一種または数種を組合せて用いて
もよい。
【0037】ヒンタードフェノール系 2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,
6−ジ−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル
−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t
−ブチル−α−メトキシ−p−ジメチル−フェノール、
2,4−ジ−t−アミルフェノール、t−ブチル−m−
クレゾール、4−t−ブチルフェノール、スチレン化フ
ェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソー
ル、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、オ
クタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒド
ロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブ
チル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエ
チルエステル、4,4′−ビスフェノール、4,4′−
ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,
2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチル
フィノール)、2,2′−−メチレン−ビス−(4−メ
チル−6−α−メチルシクロヘキシルフェノール)、
4,4′−メチレン−ビス−(2−メチル−6−t−ブ
チルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2,
6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1′−メチレン
−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルナフトール)、4,
4′−ブチリデン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−
メタ−クレゾール)、2,2′−チオ−ビス−(4−メ
チル−6−t−ブチルフェノール)、ジ−o−クレゾー
ルスルフィド、2,2′−チオ−ビス−(2−メチル−
6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス
(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′
−チオ−ビス−(2,3−ジ−sec−アミルフェノー
ル)、1,1′−チオ−ビス−(2−ナフトール)、
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルエー
テル、1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,
5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピ
オネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6
−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリ
ノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチ
レンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロ
キシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオビス
(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N′
−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ビス(3,5−ジ
−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチ
ル)カルシウム、1,3,5−トリメチル−2,4,6
−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ
ベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス
〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシ
フェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル
−2,4,6,−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4
−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−
ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシア
ヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシジェニル)
プロピオネート〕等。
【0038】アミノフェノール類 ノルマルブチル−p−アミノフェノール、ノルマルブチ
ロイル−p−アミノフェノール、ノルマルペラゴノイル
−p−アミノフェノール、ノルマルラウロイル−p−ア
ミノフェノール、ノルマルステアロイル−p−アミノフ
ェノール、2、6−ジ−t−ブチル−α−ジメチル、ア
ミノ−p−クレゾール等。
【0039】ハイドロキノン系 ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノ
ン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、ハイドロ
キノンメチルエーテル、ハイドロキノンモノベンジルエ
ーテル等。
【0040】ホスファイト系 トリホスファイト、トリス(3,4−ジ−t−ブチルフ
ェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォ
スファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェ
ニル)−4,4′−ビフェニレンフォスファナイト、2
−エチルヘキシルオクチルフォスファイト等。
【0041】その他 2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、ジカテコール
ボレート−ジ−o−トリルグアニジン塩、ニッケル−ジ
メチルジチオカーバメイト、ニッケル−ペンタメチレン
ンジチオカルバネート、メルカプトベンズイミダゾー
ル、2−メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩等。
【0042】(その他の成分) 本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーには、酸
化防止剤以外の添加剤として、本発明の目的を損なわな
い範囲で各種の帯電防止剤、滑材、界面活性剤、紫外線
吸収剤等を添加して用いてもよい。また、光学用材料以
外の用途に用いる場合には、必要に応じて、ガラス繊維
等のフィラー、染料、顔料等の添加剤を添加して用いて
もよい。
【0043】(ペレット化および予備乾燥) プラスチック材料は、通常、直径1〜7mm程度、長さ
4〜8mm程度のペレットとして供給され、これを押出
成形法や射出成形法により所望の形状に成形加工され
る。ところで、一般に、合成後のポリマーは、凝固法や
直接乾燥法により合成の際に使用した溶剤を除去し、こ
れに前述した各種添加剤を必容量添加し、熱可塑性飽和
ノルボルネン系ポリマーの場合では、概ね230℃以上
の温度の溶融状態で所定の直径のストランド状に押出
し、次いで適当なストランドカッターにより所望の長さ
に刻んでペレットとする。
【0044】通常のプラスチック材料では、このペレッ
トをそのまま成形加工するが、例えば、ポリカーボネー
ト樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等の吸湿性が高
かったり、分解し易い樹脂では、ペレットの保存中に水
分を吸着したり、分解物により、そのまま成形すると、
激しく発泡したり、成形品の表面に大きな条痕などの欠
陥が発生するため、使用する前にその樹脂のガラス転移
温度以下で数時間予備乾燥してから成形するという方法
が一般的になっている。
【0045】しかしながら、熱可塑性飽和ノルボルネン
系ポリマーは吸湿性が小さく、また、保存中に分解する
ような成分も含まないことから、従来、この予備乾燥は
不要と考えられ、予備乾燥なしに成形されていた。実際
に予備乾燥を試みても、揮発成分はほとんど検出されな
い。ところが、驚くべきことに、熱可塑性飽和ノルボル
ネン系ポリマーのペレットを予備乾燥したところ、予備
乾燥なしでは目視では見えない微細なボイドやクラック
状の欠陥が成形品に発生しているのに対して、これらの
ミクロボイドのない成形品の得られることが見出され
た。
【0046】このようにして得られた成形品は、成形後
においてもミクロボイドの発生がなく、さらに、例え
ば、70℃以上、相対湿度80%以上20時間以上の高
温高湿度下での耐久試験後にもミクロボイドが発生しな
い。また、この乾燥処理は、射出成形する場合にも有効
であることも確認した。
【0047】予備乾燥の条件としては、温度が高く、乾
燥時間の長い方が効果的であるが、温度が樹脂のガラス
転移温度を超えて高すぎるとペレットどうしが熱融着し
て使用しにくくなることと、数時間で効果が飽和するこ
とから、好ましくは(Tg−30)〜(Tg−5)℃、
特に好ましくは(Tg−20)〜(Tg−5)℃で、好
ましくは1時間以上、特に好ましくは2時間以上処理す
ることが望ましい。
【0048】乾燥は、真空乾燥でも、空気または窒素雰
囲気下での常圧乾燥でも、効果がある。乾燥処理終了か
ら成形に使用するまでの時間は、短いに越したことはな
いが、特に短時間である必要はなく、数日以上経過して
も効果は失われない。
【0049】(成形方法) 本発明の乾燥方法により得られる熱可塑性飽和ノルボル
ネン系ポリマーは、特に押出成形に適しているが、これ
に限定するものではない。押出成形では、溶融押出機を
用い、熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーを250〜
300℃程度に加熱し、T型またはマニホール型のダイ
から押出し、各種ロールで巻き取ることにより、シート
やフィルムに成形加工することができる。この場合、熱
可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーは、耐熱性が高く、
剛性が高いことから、ロールで急激に冷やすとポリカー
ボネート同様表面が波うって平坦に成形できないため、
1段目および2段目の巻き取り・冷却ロールを、前述し
たとおり、分子量分布(Mw/Mn)の値にしたがっ
て、70〜140℃程度の比較的高温にして、除冷する
のが適当である。また、シート状の成形物を、さらに一
軸または二軸方向に延伸して加工することも可能であ
る。
【0050】他に、カレンダーロールによる加工や、強
度とガス透過性をさらに補うために、ポリエチレンやポ
リプロピレン等の他のオレフィン系樹脂、ポリエチレン
テレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル
やポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化炭化水素系の樹脂
等と共押出加工やラミネート加工を行なうことも可能で
ある。また、適当なダイから押し出すことにより、棒状
やファイバー状、チューブ状に押出成形することができ
る。これらの押出成形品を、ガラス転移温度以下の温度
で延伸して、さらに細い棒やチューブ状に加工すること
もできる。さらに、強度を増すために、加熱または紫外
線や電子線等の放射線照射による架橋もできる。この場
合、適当な架橋剤を用いることが効果的である。架橋剤
は、公知のものが使用でき、例えば、ジビニルベンゼン
等のビニル基を複数有するモノマー類;ジアリルフタレ
ート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチ
ロールプロパントリメタクリレート等の多官能アクリレ
ート類;トリアリルイソシアヌレート等のイソシアヌレ
ート類;液状ポリブタジエン等の不飽和結合を複数有す
るポリマー類が挙げられる。
【0051】本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリ
マーは、溶融押出成形以外に、次のような成形方法が可
能である。熱プレスにより、シート状に成形することが
できる。また、熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーを
ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶
剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン
等の脂環族炭化水素系溶剤、クロロホルム、モノクロル
ベンゼン等のハロゲン系溶剤に溶解し、これらの溶液を
平板上にキャスティングしたり、ロール上にキャスティ
ングして、成膜することが可能である。分子量の比較的
大きなポリマーについては、上記溶剤溶液から糸状に紡
ぐこともできる。分子量の比較的小さなポリマーは、通
常の射出成形の可能であるほか、回転成形など一般的な
熱可塑性樹脂の加工方法が適用可能である。
【0052】(光学用材料および導電性複合材料) 本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー(成形用
材料)は、非晶質であり、透明性に優れ、複屈折が小さ
いという特徴があるため、各種光学用材料として、特
に、光学記録媒体の基板材料として適している。
【0053】本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリ
マーから得られた成形品は、その表面に、真空蒸着やス
パッタリング等の薄膜形成方法によって、金属、金属酸
化物、金属窒化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物等
を、目的に応じ、単層または多層に成膜することができ
る。この際、真空中でかなりの高温にさらされることも
あるが、本発明によって得られた成形品は、揮発分が少
なく、アウトガスが少ないため、短時間でチェンバーを
所定の真空度に引くことができ、また、表面に「フク
レ」等の発生のない平坦な膜を成膜することができる。
【0054】透明基板上に、光学的に記録および/また
は読み出し可能な記録薄膜を設けて記録媒体を製造する
ことができる。記録薄膜(記録層)を形成する記録材料
としては、公知の任意の希土類−遷移金蔵アモルファス
合金でよく、例えば、Tb−Fe系合金(特公昭57−
20691号)、Dy−Fe系合金(特公昭57−20
692号)、Cd−Tb−Fe系合金(特開昭56−1
26907号)、Cd−Tb−Dy−Fe系合金(特開
昭57−94948号)、Cd−Co系合金(特開昭5
4−121719号)、Tb−Fe−Co系等が挙げら
れる。これらの希土類−遷移金属アモルファス層は、蒸
着、スパッタリング、イオンプレーティング等の薄膜形
成方法で形成するのが好ましい。このアモルファス層の
厚さは、一般に500〜1500Åである。また、相変
化型記録材料を記録層としてもよく、例えば、Ge−T
e系、Sb−Te系、In−Sb系、Ge−Sb−Te
系、In−Sb−Te系等が挙げられる。これらの相変
化型の記録材料は、蒸着、スパッタリング、イオンプレ
ーティング等の方法で形成することが好ましい。このア
モルファス層の厚さは一般に500〜2000Åであ
る。
【0055】有機色素系記録材料も使用することがで
き、例えば、メチン・ポリメチン系(ジアニン:インド
ロニン型、チアゾール型等、クロコニウム類、スクアリ
リウム類)(特開昭58−1713696号);キノン
類;ナフトキノン類、アントラキノン類(特開昭59−
199291号、特開昭58−112793号);フタ
ロシアニン系(金属フタロシアニン類)(特開昭61−
235188、特開昭59−11292号);ジチオー
ル系(ジチオール金属錯体類)(特開昭57−1109
0号);その他、テトラヒドコリン類、ジオキサン類、
ジチアジン類、チアピリリウム類、ポリフィリン類(特
開昭58−197088、特開昭61−235188
号、特開昭59−78891号)等を挙げることができ
る。この有機色素系記録材料の成膜後の膜厚は、一般に
500〜5000Åである。
【0056】また、例えば、Te−CS2、Pb−Te
−Se、Te−C、TeO2、Sb−Se、Bl−Te
等や、バブル形成等の形状変化を用いて追記型記録カー
ド等にも利用できる。さらに、金、白金、アルミニウム
等を反射膜として用いることができる。
【0057】光記録媒体には、表面に表面保護層を設け
たり、記録層と本発明のポリマーからなる基板との間
に、保護層、反射層、誘電層を設けてもよい。これら保
護層等の層形成材料としては、例えば、CdS、ZnS
e、SiO2、Si、Si3N、Si34、AlN、Ti
2、TaO2、TaO2、MgF2等の無機物、あるいは
紫外線硬化樹脂等の有機物を挙げることができる。さら
に、光カード等では他の材料直接貼り合せて用いること
があり、その場合は、貼り合せ方法として、溶剤、ホッ
トメルト、UV硬化型接着剤等通常の接着剤の他に、高
周波、超音波接着方法が使用される。
【0058】(用途) 本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーは、自動
車用、医療用等を含めた短距離情報伝送用のプラスチッ
ク光ファイバーおよびそのコネクター類;情報をピック
アップするためのレンズ、プロジェクター用のレンズ、
メガネレンズ、スポーツ用ゴーグル、自動車等のヘッド
ランプおよびテールランプのレンズおよびカバー等のプ
ラスチックレンズ;表面に透明導電膜を設けたタッチ電
極や液晶基板等、スクリーンや偏光フィルム、CRT用
の防眩フィルター等の情報表示用の透明板;耐湿性と絶
縁性を生かして、電子デバイス等の絶縁膜、耐湿コーテ
ィング;注射器、ピペット、薬品容器、光学分析用の容
器やフィルム等の医療用具;自動車用のフロントガラ
ス、オートバイの風防、航空機用窓材、住宅用窓、透明
シャッター、照明器具等の窓材および鏡;ジュース、
酒、炭酸飲料等の飲料容器、食品容器;包装用フィル
ム、適当なフィラー、染料、顔料等を加えて溶剤に溶か
して耐湿塗料などの用途に有用である。
【0059】また、表面に導電性膜を形成した複合材料
の用途としては、透明性膜を設けて、タッチ電極や液晶
基板等に使用可能である他、高周波回路基板、コンデン
サー用フィルム等の電子デバイス用材料としても有用で
ある。表面に記録薄膜を設けた光記録媒体としては、光
カード、光フロッピー、光テープ、その他コンピュータ
用の各種メモリ等の反射型および色素系の情報記録媒体
として有用である。
【0060】
【実施例】以下に、合成例及び実施例を挙げて、本発明
を具体的に説明する。以下の例において、特に断りのな
い限り、部および%は重量基準である。
【0061】[合成例1] (開環重合体の合成) 窒素雰囲気下、200リットルの反応器中に、脱水した
トルエン90部、トリエチルアルミニウム0.5部、ト
リエチルアミン1.4部、および1−ヘキセン0.08
部を入れた。温度を20℃に保ちながら、エチルテトラ
シクロドデセン(ETD)30部、および四塩化チタン
0.17部を1時間にわたって連続的に反応系に添加
し、重合反応を行なった。ETDと四塩化チタンの全量
を添加後、1時間反応を行なった。次いで、イソプロピ
ルアルコール/アンモニア水(0.5部/0.5部)混
合溶液を添加して反応を停止した後、反応生成物を50
0部のイソプロピルアルコール中に注ぎ、凝固した。凝
固した重合体を60℃で10時間、真空乾燥し、開環重
合体25.5部を得た。
【0062】(水素添加反応) 得られた開環重合体をシクロヘキサン200部に溶解
し、200リットルオートクレーブ中にパラジウム/カ
ーボン触媒(担持量:5%)0.6部を加え、水素圧7
0kg/cm2、温度140℃で4時間、水素添加反応
を行なった。
【0063】(後処理) 水素添加触媒を濾過して除去した後、反応溶液をイソプ
ロピルアルコール600部中に注ぎ、凝固を行なった。
得られた水素添加物を、60℃で10時間、真空乾燥し
た後、シクロヘキサンに再溶解して10%の溶液とし
た。イソプロピルアルコール600部中に注ぎ、再度凝
固した。前記と同様にして乾燥・凝固をもう一度行なっ
た後、各々得られた水素添加物を90℃で48時間、真
空乾燥し、水素添加物22.6部を得た。収率は75%
であった。
【0064】(ポリマーの特性) 得られた水素添加物の水素添加率は、1H−NMRスペ
クトル分析によると、99%以上であった。また、トル
エンを溶剤に用いた高速液体クロマトグラフィー(HL
C)分析(東ソー社製、HLC802Lにより、TSK
gelG5000H−G4000Hをカラムとして、温
度38℃、流量1.0ml/分で測定)で分子量(ポリ
スチレン換算)を測定した結果、数平均分子量(Mn)
7.0×104、重量平均分子量(Mw)17.5×1
4、分子量分布(Mw/Mn)2.5であった。DS
C分析によりガラス転移温度(Tg)を測定し、揮発分
量を熱重量分析(TGA)により、窒素雰囲気下、昇温
速度10℃/分で30℃から350℃までの加熱減量と
して測定したところ、Tgは142℃で、揮発分は0.
08%であった。
【0065】(ペレット化) 得られた熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー100部
に対して、酸化防止剤として、1,3,5−トリメチル
−2,4,6−トリス(3,5−ターシャリーブチル−
4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(チバガイギー社
製、商標名イルガノックス1330、蒸気圧1.3×1
-12Pa)を0.2部加え、ヘンシェルミキサーで混
合後、押出機を用いて230℃でペレットを作成した。
【0066】(成形) サーモプラスチック社製30mmφの押出機を使用し、
樹脂温度を280℃に昇温加熱して溶融し、T型ダイか
ら押出成形して、幅20cm、厚さ100μmのフィル
ムを得た。この際、引き取りロールの温度は、1段目1
30℃、2段目121℃であった。目視により観察した
ところ、フィルムの表面に条痕はなく、内部の発泡もみ
られず、透明で欠陥のないフィルムが得られた。引張り
強さを測定したところ900kg/cm2の強度であっ
た。また、このフィルムを、偏光軸を互いに直行させた
2枚の偏光板の間に挟んで回転させて観察したところ、
明るく見える部分はなく、複屈折はなかった。さらに、
このフィルムをエアーオーブン中で110℃で48時間
加熱したが、着色はなかった。
【0067】[実施例1] 予備乾燥の効果を見るために、次のような実験を行なっ
た。合成例1で得られたペレットをそのまま合成例1と
同様の条件で押出成形し、厚さ500μmのシート状成
形品を得た。シートの引張強度は、900kg/cm2
であった。この成形品を目視で観察したところ、透明で
目だった大きな欠陥はなかったが、さらに400倍の光
学顕微鏡で10視野観察し、ミクロボイドを数えたとこ
ろ、大きさ5μm程度のミクロボイドが観察された。ま
た、このシートを80℃、相対湿度90%の恒温恒湿ボ
ックス中に1000時間保持した後に取り出して目視観
察したところ、全体に白濁し小さなクラック状欠陥が多
数観察された。同様に合成例1のペレットに対して、温
風乾燥機で各種乾燥条件を変えて予備乾燥を行なった後
に成形加工したシートに対する試験結果を上記の結果と
合わせて表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】(注)顕微鏡観察の評価基準は以下のとお
りである。 A:ミクロボイドなし、 B:ミクロボイドの個数2以下、 C:ミクロボイドの個数4以下、 D:ミクロボイドの個数5以上。
【0070】
【発明の効果】本発明の乾燥方法によれば、ミクロボイ
ドなどの微細な欠陥のない成形品を与えることができる
熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーが提供される。本
発明により得られた熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマ
ーは、耐熱性、耐水性、強度等に優れた成形用材料であ
って、発泡等による欠陥がなく、特に、乾燥処理するこ
とによりミクロボイドのない成形品を与えることができ
る。本発明により得られる熱可塑性飽和ノルボルネン系
ポリマーは、透明性などの光学的特性に優れているた
め、光学用途に適しており、また、導電性複合材料とし
ても適している。本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系
ポリマーから得られた透明基板を用いて、耐久性等に優
れた光記録媒体を製造することができる。
フロントページの続き (72)発明者 夏梅 伊男 神奈川県川崎市川崎区夜光1−2−1 日本ゼオン株式会社 研究開発センター 内 (56)参考文献 特開 昭51−131568(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 61/06 - 61/08

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーを
    成形前に高温条件下で乾燥することを特徴とする熱可塑
    飽和ノルボルネン系ポリマーの乾燥方法。
  2. 【請求項2】 ペレット化した熱可塑性飽和ノルボルネ
    ン系ポリマーを成形前に予備乾燥する請求項1記載の乾
    燥方法。
  3. 【請求項3】 ペレット化した熱可塑性飽和ノルボルネ
    ン系ポリマーが、酸化防止剤を含有するものである請求
    項2記載の乾燥方法。
  4. 【請求項4】 熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー
    を、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)より低い高温
    条件下で乾燥する請求項1ないし3のいずれか1項に記
    載の乾燥方法。
  5. 【請求項5】 (Tg−30)〜(Tg−5)℃の温度
    条件下で乾燥する請求項4記載の乾燥方法。
  6. 【請求項6】 真空乾燥する請求項1ないし5のいずれ
    か1項に記載の乾燥方法。
  7. 【請求項7】 空気または窒素雰囲気下で乾燥する請求
    項1ないし5のいずれか1項に記載の乾燥方法。
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