JP7159890B2 - フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フィルムの製造方法に関する。
搬送などに有利であるために、熱可塑性樹脂は通常ペレット状に成形され、このペレットを原料として、押出成形品(例えば、フィルム)が製造されている。一方、近年、光学的な用途に用いられる樹脂フィルムの需要が増加し、樹脂フィルムには高い透明性などの、優れた光学的特性が求められている。樹脂フィルムの品質向上のため、様々な技術が開発されている(特許文献1~7)。
特許第4977786号公報 特開2008-093830号公報 特開2002-113758号公報 特開2003-118008号公報 特開2000-015662号公報 特開2017-066270号公報 特開平07-224155号公報
結晶化させた熱可塑性樹脂を、押出成形に際し溶融するためには、結晶性を有さない重合体を含む熱可塑性樹脂と比較して通常高い温度が必要である。熱可塑性樹脂を高い温度に曝すと、熱可塑性樹脂に溶存する酸素により、熱可塑性樹脂の劣化が進む場合がある。そのため、結晶化させた熱可塑性樹脂からなるペレットを溶融し、フィルム状に押出成形すると、劣化した樹脂に起因する異物がフィルムに混入して、十分な品質のフィルムが得られない場合がある。
そのため、ペレット中の酸素量を低減することが求められている。
本発明者は、熱可塑性樹脂を結晶化させると、その後に熱可塑性樹脂からなるペレットの溶存酸素量を低減させにくいことを見出した。
一方で、ペレットの熱可塑性樹脂を十分に結晶化させて溶融押出を安定的に行うことも必要である。
したがって、結晶性を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなるペレットを原料として、異物数の少ないフィルムを安定的に製造する方法が求められている。
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、原料のペレットを、所定の温度T1(℃)で乾燥させた後、所定の温度T2(℃)で加熱することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1] 結晶性を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる第1のペレットを温度T1(℃)で乾燥して第2のペレットを得る工程(1)と、
前記第2のペレットを、温度T2(℃)で加熱して、前記熱可塑性樹脂を結晶化させて第3のペレットを得る工程(2)と、
前記第3のペレットを溶融し押し出す工程(3)とをこの順で含み、
前記熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度がTg1(℃)であり、結晶化温度がTc1(℃)であり、融点がTm1(℃)であり、
T1は、条件(a):
(Tg1-20)℃≦T1≦(Tc1-15)℃ 条件(a)
を満たし、
T2は、条件(b1)又は条件(b2):
(Tc1+100)℃≦Tm1のとき(Tc1-10)℃≦T2<(Tc1+100)℃ 条件(b1)
(Tc1+100)℃>Tm1のとき(Tc1-10)℃≦T2<Tm1 条件(b2)
を満たす、フィルムの製造方法。
[2] 前記第3のペレットの溶存酸素量が、30ppm以下である、[1]に記載のフィルムの製造方法。
[3] 前記第3のペレットにおける前記熱可塑性樹脂の結晶化発熱量が、10mJ/mg以下である、[1]又は[2]に記載のフィルムの製造方法。
[4] 前記結晶性を有する重合体が、結晶性を有する脂環式構造含有重合体である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[5] 前記結晶性を有する脂環式構造含有重合体が、結晶性を有する、ジシクロペンタジエン開環重合体の水素化物である、[4]に記載のフィルムの製造方法。
[6] 前記工程(1)において、温度T1(℃)で前記第1のペレットを乾燥する時間が10分間以上である、[1]~[5]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
本発明によれば、結晶性を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなるペレットを原料として、異物数の少ないフィルムを安定的に製造する方法を提供できる。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
[1.フィルムの製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係るフィルムの製造方法は、工程(1)、工程(2)、及び工程(3)をこの順で含む。
工程(1)では、結晶性を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる第1のペレットを温度T1(℃)で乾燥して第2のペレットを得る。
工程(2)では、前記第2のペレットを、温度T2(℃)で加熱して、前記熱可塑性樹脂を結晶化させて第3のペレットを得る。
工程(3)では、前記第3のペレットを溶融し押し出す。
以下、各工程について詳細に説明する。
[1.1.工程(1)]
工程(1)に用いられる第1のペレットは、結晶性を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる。ここで、重合体が結晶性を有することは、重合体が融点Tmを有することにより確認できる。重合体の融点Tmは、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。以下、結晶性を有する重合体を、結晶性重合体ともいう。
熱可塑性樹脂に含まれる結晶性重合体は、通常熱可塑性を有する。
結晶性重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。結晶性重合体が共重合体である場合、結晶性重合体はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
結晶性重合体の融点Tmは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点を有する重合体を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れたフィルムを得ることができる。
結晶性重合体のガラス転移温度Tgは、好ましくは0℃以上、より好ましくは50℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。
結晶性重合体の結晶化温度Tcは、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
結晶性重合体のガラス転移温度と結晶化温度との差(Tc-Tg)は、20℃以上であることが好ましい。
結晶性重合体の融点、ガラス転移温度、及び結晶化温度は、窒素雰囲気下で320℃に加熱した試料を液体窒素で急冷し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温する条件で測定しうる。
結晶性重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する結晶性重合体は、成形加工性と可撓性とのバランスに優れる。
結晶性重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する結晶性重合体は、成形加工性に優れる。
結晶性重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
結晶性重合体の例としては、結晶性を有するポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン);結晶性を有する脂環式構造含有重合体(例、ノルボルネン系重合体);結晶性を有するセルロースエステル(例、トリアセチルセルロース);結晶性を有するポリ塩化ビニル;結晶性を有するポリビニルアルコール;結晶性を有するポリスチレン;結晶性を有するポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート);結晶性を有するポリアミド;結晶性を有するポリイミド;結晶性を有するポリアセタール;結晶性を有するポリカーボネート;結晶性を有するポリフェニレンスルフィド;結晶性を有するポリアリレート;及び、結晶性を有するポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。熱可塑性樹脂は、結晶性重合体を、1種単独で含んでいてもよく、2種以上の任意の比率の組み合わせとして含んでいてもよい。熱可塑性樹脂に含まれる結晶性重合体の総重量に対して、ある1種の結晶性重合体の含有率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98重量%以上であり、好ましくは100重量%以下である。
前記結晶性重合体の中でも、機械的強度、耐熱性、成形性などに優れることから、結晶性を有する脂環式構造含有重合体が好ましい。
脂環式構造含有重合体とは、分子内に脂環式構造を有する重合体であって、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物をいう。また、結晶性重合体として、脂環式構造含有重合体を、1種単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。結晶性重合体の総重量に対して、ある1種の脂環式構造含有重合体の含有率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98重量%以上であり、好ましくは100重量%以下である。
脂環式構造含有重合体が有する脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れるフィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
脂環式構造含有重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、可撓性をより高めることができる。
また、脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
前記の脂環式構造含有重合体としては、例えば、下記の重合体(α)~重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、可撓性に優れるフィルムが得られ易いことから、結晶性を有する脂環式構造含有重合体としては、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素化物等であって、結晶性を有するもの。
具体的には、脂環式構造含有重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものがより好ましく、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特に好ましくは100重量%の重合体をいう。
ジシクロペンタジエンの開環重合体に含まれていてもよい、ジシクロペンタジエン由来の構造単位以外の構造単位の例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構造単位が挙げられる。
重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体は、炭素原子で形成された環構造を有し、該環中に炭素-炭素二重結合を有する化合物である。環状オレフィン単量体の例としては、ノルボルネン系単量体等が挙げられる。また、重合体(α)が共重合体である場合には、環状オレフィン単量体として、単環の環状オレフィンを用いてもよい。
ノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を含む単量体である。ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:エチリデンノルボルネン)及びその誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)等の、2環式単量体;トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体等の、3環式単量体;7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン:1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8-エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン及びその誘導体等の、4環式単量体;などが挙げられる。
前記の単量体において置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;プロパン-2-イリデン等のアルキリデン基;フェニル基等のアリール基;ヒドロキシ基;酸無水物基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;などが挙げられる。また、前記の置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。
単環の環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエン等の環状ジオレフィン;等が挙げられる。
環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、重合体(α)は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
環状オレフィン単量体には、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するものがありうる。環状オレフィン単量体としては、エンド体及びエキソ体のいずれを用いてもよい。また、エンド体及びエキソ体のうち一方の異性体のみを単独で用いてもよく、エンド体及びエキソ体を任意の割合で含む異性体混合物を用いてもよい。中でも、脂環式構造含有重合体の結晶性が高まり、耐熱性により優れるフィルムが得られ易くなることから、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましい。例えば、エンド体又はエキソ体の割合が、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。また、合成が容易であることから、エンド体の割合が高いことが好ましい。
重合体(α)及び重合体(β)は、通常、そのシンジオタクチック立体規則性の度合い(ラセモ・ダイアッドの割合)を高めることで、結晶性を高くすることができる。重合体(α)及び重合体(β)の立体規則性の程度を高くする観点から、重合体(α)及び重合体(β)の構造単位についてのラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
ラセモ・ダイアッドの割合は、13C-NMRスペクトル分析により、測定しうる。具体的には、下記の方法により測定しうる。
オルトジクロロベンゼン-d4を溶媒として、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、重合体試料の13C-NMR測定を行う。この13C-NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン-d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定する。これらシグナルの強度比に基づいて、重合体試料のラセモ・ダイアッドの割合を求めうる。
重合体(γ)及び(δ)の製造に用いる環状オレフィン単量体としては、重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(γ)の製造においては、単量体として、環状オレフィン単量体に組み合わせて、環状オレフィン単量体と共重合可能な任意の単量体を用いうる。任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等の炭素原子数2~20のα-オレフィン;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらの中でも、α-オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
環状オレフィン単量体と任意の単量体との量の割合は、重量比(環状オレフィン単量体:任意の単量体)で、好ましくは30:70~99:1、より好ましくは50:50~97:3、特に好ましくは70:30~95:5である。
環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、及び、環状オレフィン単量体と任意の単量体を組み合わせて用いる場合は、重合体(γ)は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
上記のような結晶性を有する脂環式構造含有重合体は、例えば、国際公開第2016/067893号に記載の方法により、製造しうる。
第1のペレットの材料である熱可塑性樹脂は、前記結晶性重合体の他に、任意の成分を含みうる。
熱可塑性樹脂に含まれうる任意の成分の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤などの配合剤;結晶性を有さない重合体が挙げられる。これらの任意の成分は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱可塑性樹脂における、結晶性重合体の割合は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは98重量%以上であり、100重量%以下としうる。熱可塑性樹脂における結晶性を有する重合体の割合を前記範囲の下限値以上とすることにより、フィルムの機械的強度及び耐熱性を高めることができる。
熱可塑性樹脂は、通常結晶性を有する。熱可塑性樹脂が結晶性を有することは、熱可塑性樹脂が融点Tm1を有することにより確認できる。重合体の融点Tm1は、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
熱可塑性樹脂の融点Tm1は、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点を有する熱可塑性樹脂を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れたフィルムを得ることができる。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg1は、好ましくは0℃以上、より好ましくは50℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。
熱可塑性樹脂の結晶化温度Tc1は、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは250℃以上、より好ましくは200℃以下である。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度と結晶化温度との差(Tc1-Tg1)は、20℃以上であることが好ましい。
熱可塑性樹脂の融点、ガラス転移温度、及び結晶化温度は、窒素雰囲気下で320℃に加熱した試料を液体窒素で急冷し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温する条件で測定しうる。
前記熱可塑性樹脂からなるペレットの形状は、特に限定されず、円柱状、楕円柱状、角柱状(例、四角柱状)であってよい。
工程(1)では、前記第1のペレットを温度T1(℃)で乾燥して第2のペレットを得る。T1は、通常下記条件(a)を満たす。
(Tg1-20)℃≦T1≦(Tc1-15)℃ 条件(a)
前記条件(a)において、Tg1は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表し、Tc1は熱可塑性樹脂の結晶化温度を表す。
温度T1は、通常(Tg1-20)℃以上であり、通常(Tc1-15)℃以下、好ましくは(Tc1-20)℃以下である。
温度T1を、前記範囲内に収めることで、ペレットから製造されるフィルムの異物数を低減できる。
その理由としては、本発明を限定するものではないが、以下が考えられる。
ペレットの熱可塑性樹脂を一旦結晶化させると、その後にペレットの溶存酸素量を低減させにくいことを本発明者は見出した。ペレットの熱可塑性樹脂を結晶化させる工程の前に、結晶化温度に満たない前記温度T1でペレットの乾燥を行うことにより、ペレットの溶存酸素量を低減でき、その結果、酸素による熱可塑性樹脂の劣化を抑制し、発生するフィルムの異物数を低減できると考えられる。
また、温度T1を、前記上限値以下とすることにより、第2のペレットの溶存酸素量を低減しつつ、第2のペレットの互着を抑制できる。
工程(1)において、温度T1(℃)で第1のペレットを乾燥する時間は、好ましくは10分間以上、より好ましくは30分間以上、更に好ましくは60分間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは18時間以下、更に好ましくは12時間以下である。温度T1での乾燥時間を前記範囲内に収めることで、効果的にフィルムの異物数を低減できる。
工程(1)では、第1のペレットを、好ましくは前記条件(a)を満たす一定温度で、好ましくは10分間以上、より好ましくは30分間以上、更に好ましくは60分間以上乾燥することが好ましい。
一定温度とは、本発明の効果を阻害しない程度に変動する温度であってもよく、例えば、ある温度を中心として、±5℃、±3℃、又は±2℃の範囲で変動する温度であってもよい。
工程(1)を行う雰囲気は特に限定がなく、例えば、大気下;窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行いうる。好ましくは、工程(1)は、大気下で行われる。本実施形態におけるフィルムの製造方法によれば、工程(1)を大気下で行った場合であっても、製造されるフィルムの異物数を低減できる。そのため、工程(1)に用いられる装置を簡易な装置としうる。
工程(1)を行う圧力は特に限定がなく、大気圧下、減圧下で行いうる。好ましくは、工程(1)は大気圧下で行われる。本実施形態におけるフィルムの製造方法によれば、工程(1)を大気圧下で行った場合であっても、製造されるフィルムの異物数を低減できる。そのため、工程(1)に用いられる装置を簡易な装置としうる。
工程(1)を行うための装置は特に限定がなく、例えば、ホッパードライヤー、熱風循環式棚型乾燥器、棚型真空乾燥器、撹拌型真空乾燥器などの乾燥機が挙げられる。
[1.2.工程(2)]
工程(2)では、第2のペレットを、温度T2(℃)で加熱して、熱可塑性樹脂を結晶化させて第3のペレットを得る。
温度T2は、通常下記条件(b1)又は(b2)を満たす。
(Tc1+100)℃≦Tm1のとき(Tc1-10)℃≦T2<(Tc1+100)℃ 条件(b1)
(Tc1+100)℃>Tm1のとき(Tc1-10)℃≦T2<Tm1 条件(b2)
前記条件(b1)及び(b2)において、Tc1(℃)は、熱可塑性樹脂の結晶化温度を表し、Tm1は熱可塑性樹脂の融点を表す。
工程(1)と工程(2)との間には、第2のペレットを搬送する工程、第2のペレットを温度T2(℃)まで加熱する工程などの、任意の工程を行いうる。工程(1)と工程(2)との間の任意の工程は、第2のペレットを室温以上、好ましくは25℃以上に保持しながら行うことが好ましい。
温度T2は、通常(Tc1-10)℃以上、好ましくは(Tc1-5)℃以上、より好ましくは(Tc1)以上である。
温度T2は、(Tc1+100)℃≦Tm1のとき、通常(Tc1+100)℃未満、好ましくは(Tc1+70)℃以下、より好ましくは(Tc1+50)℃以下である。
温度T2は、(Tc1+100)℃>Tm1のとき、通常Tm1未満、好ましくはTm1未満且つ(Tc1+70)℃以下、より好ましくはTm1未満且つ(Tc1+50)℃以下である。
温度T2が前記温度範囲内であることにより、熱可塑性樹脂の結晶化を促進できる。また、工程(3)における、押し出し操作の安定性(押出安定性)を向上させることができる。
工程(2)において、温度T2(℃)で第2のペレットを加熱する時間は、好ましくは10分間以上、より好ましくは20分間以上、更に好ましくは30分間以上であり、好ましくは10時間以下、より好ましくは7時間以下、更に好ましくは5時間以下である。温度T2での加熱時間を前記範囲内に収めることで、熱可塑性樹脂の結晶化をより効果的に促進できる。
工程(2)を行う雰囲気は特に限定がなく、例えば、大気下;窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行いうる。好ましくは、工程(2)は、大気下で行われる。本実施形態におけるフィルムの製造方法によれば、工程(2)を大気下で行った場合であっても、製造されるフィルムの異物数を低減できる。そのため、工程(2)に用いられる装置を簡易な装置としうる。
工程(2)を行う圧力は特に限定がなく、大気圧下、減圧下で行いうる。好ましくは、工程(2)は大気圧下で行われる。本実施形態におけるフィルムの製造方法によれば、工程(2)を大気圧下で行った場合であっても、製造されるフィルムの異物数を低減できる。そのため、工程(2)に用いられる装置を簡易な装置としうる。
工程(2)を行うための装置は特に限定がなく、例えば、工程(1)を行うための装置として挙げられた装置と同様の装置を用いうる。
工程(2)は、第2のペレットを撹拌しながら行ってもよい。例えば、容器内に第2のペレットを入れ、撹拌翼で第2のペレットを撹拌しながら所定の温度で加熱してもよい。第2のペレットを撹拌しながら加熱することにより、より効果的に熱可塑性樹脂の結晶化を促進できる。
工程(2)において、熱可塑性樹脂が結晶化していることは、例えば、工程(2)を経たペレット(第3のペレット)1mg当たりの結晶化発熱量が、10mJ/mg以下であることにより確認できる。ここで、結晶化発熱量は、以下の方法で求めうる。
窒素雰囲気下で、示差走査熱量計(DSC)により、試料を30℃から10℃/分で昇温して、結晶化促進に伴う発熱ピークのピーク面積を求め、ピーク面積と及び用いた試料の重量とから試料の1mg当たりの結晶化発熱量(mJ/mg)を求めうる。
結晶化発熱量は、通常0mJ/mg以上である。
第3のペレットにおける熱可塑性樹脂の結晶化発熱量は、好ましくはペレット1mg当たり、10mJ/mg以下であり、より好ましくは5mJ/mg以下であり、更に好ましくは3mJ/mg以下であり、理想的には0mJ/mgであり、0mJ/mg以上であってもよい。
工程(2)の前に工程(1)を行うことにより、第3のペレットの溶存酸素量を効果的に低減できる。
ペレットの溶存酸素量は、昇温脱離ガス分析装置を用いて測定できる。昇温脱離ガス分析の条件は、例えば、窒素雰囲気下、試料を室温から60℃/minで150℃まで昇温後、50分間としうる。
第3のペレットの溶存酸素量は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは27ppm以下、更に好ましくは20ppm以下、理想的には0ppmであるが、0ppm以上としうる。第3のペレットの溶存酸素量を前記範囲内とすることにより、製造されるフィルムの異物数を効果的に低減できる。
[1.3.工程(3)]
工程(3)では、第3のペレットを溶融し押し出す。工程(2)と工程(3)との間には、第3のペレットを搬送する工程、第3のペレットを溶融温度まで加熱する工程などの、任意の工程を行いうる。工程(2)と工程(3)との間の任意の工程は、第2のペレットを室温以上、好ましくは25℃以上に保持しながら行うことが好ましい。
第3のペレットを溶融し、押し出す装置としては、特に限定はなく、従前公知の押出機を用いうる。押出機の例としては、単軸式押出機及び二軸式押出機が挙げられる。
押出機には、通常ダイが取り付けられ、溶融された熱可塑性樹脂は通常ダイから押し出されてフィルム状に成形される。
ダイの例としては、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ及びTダイが挙げられる。
工程(3)では、複数種の第3のペレットをそれぞれ溶融して、マルチマニホールドダイなどの共押出用のダイから押し出してもよい。
第3のペレットを溶融する温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度などに応じて適宜設定されうるが、通常150℃以上350℃以下である。
[1.4.任意の工程]
本実施形態のフィルムの製造方法は、前記工程(1)~(3)以外に、任意の工程を含みうる。任意の工程の例としては、ペレットを搬送する工程、ペレットを所定の温度まで加熱する工程、押し出された熱可塑性樹脂をフィルム状に成形する工程、熱可塑性樹脂から成形されたフィルムを、冷却する工程、フィルムを延伸する工程、フィルムを裁断する工程、及びフィルムを巻き取る工程が挙げられる。
[2.フィルム]
本実施形態のフィルムの製造方法により製造されるフィルムは、異物数が低減されているため、偏光板の保護フィルム、位相差フィルム、フィルムセンサー基材などの光学フィルムとして、好適に使用できる。
製造されるフィルムの寸法には限定はなく、使用目的に応じて適宜設定できる。フィルムの厚みは、例えば、5μm~200μmとしうる。フィルムの幅は、例えば、100mm~2500mmとしうる。フィルムは、例えば長尺のフィルムとしうる。ここで、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
[評価方法]
(重合体の重量平均分子量及び数平均分子量)
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量を、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム「HLC-8320」(東ソー社製)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定条件は、下記のとおりである。
・カラム:Hタイプカラム(東ソー社製)
・溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
(水素化反応における水素化率)
オルトジクロロベンゼン-d4を溶媒とした145℃におけるH-NMRを測定し、測定結果から水素化反応における水素化率を求めた。
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合)
オルトジクロロベンゼン-d4を溶媒として、150℃でinverse-gated decoupling法を適用して13C-NMR測定を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。具体的には、オルトジクロロベンゼン-d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、ラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
(ガラス転移温度(Tg、Tg1)、結晶化温度(Tc、Tc1)、及び融点(Tm、Tm1))
窒素雰囲気下で320℃に加熱した試料を液体窒素で急冷し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温し、その吸熱ピークの極小値又は発熱ピークの極大値より、試料のガラス転移温度(Tg、Tg1)、結晶化温度(Tc、Tc1)、及び融点(Tm、Tm1)を求めた。
Tg、Tg1は吸熱ピークの極小値、Tc、Tc1は発熱ピークの極大値、Tm、Tm1は吸熱ピークの極小値である。
(熱可塑性樹脂の結晶化発熱量)
あらかじめ、熱可塑性樹脂の結晶化温度(Tc1)を、前記の方法で求めた。
次いで、窒素雰囲気下で、示差走査熱量計(DSC)を用いて、試料を30℃から10℃/分で昇温し、(Tc1±10)℃の範囲に存在する、結晶化促進に伴う発熱ピークのピーク面積を求め、ピーク面積と用いた試料の重量とから、試料の1mg当たりの結晶化発熱量(mJ/mg)を求めた。(Tc1±10)℃の範囲に発熱ピークが観察されない場合は試料の結晶化発熱量は、0mJ/mgであるとした。
(溶存酸素量)
昇温脱離ガス分析装置「EMD-WA1000S/W」(ESCO社製)を用いて、窒素雰囲気下で、試料を室温から60℃/minで150℃まで昇温後、50分間の条件で昇温脱離ガス分析を行うことにより、試料の溶存酸素量を求めた。
(ペレット互着の程度)
工程(1)により得られたペレット(第2のペレット)100gを目視により観察して、ペレットの互着の程度を下記基準に従い評価した。
良:2~3粒のペレットが互着している箇所が2箇所以下である。
可:2~3粒のペレットが互着している箇所が、3箇所以上9箇所以下である。
不良:2~3粒のペレットが互着している箇所が、10箇所以上であるか、又は4粒以上のペレットが互着している箇所が、1箇所以上である。
(フィルムの異物数)
ペレットを押出成形法により厚み100μmのフィルムに成形し、幅手方向中央部から、10cm×10cmの寸法のフィルム片を切り取った。このフィルム片について、長手方向のサイズが100μm以上である異物数を計数して、下記基準により異物数を評価した。
良:長手方向のサイズが100μm以上である異物個数が50個未満である。
不良:長手方向のサイズが100μm以上である異物個数が50個以上である。
(押出安定性)
ペレットを押出成形法により厚み100μmのフィルムに成形する際の押出安定性を下記基準により評価した。下記基準における膜厚変動は、フィルムの幅手方向中央部の厚みを、接触式膜厚計により、搬送方向に30cm間隔で5点測定し、5点の測定値の算術平均値を100%とした場合の変動値(%)である。
良:膜厚変動が±5%以下であり、且つ製造を停止せずに溶融樹脂を押し出すことができる。
可:膜厚変動が±5%より大きいが、製造を停止せずに溶融樹脂を押し出すことができる。
不良:溶融樹脂の押し出しの際に、バレル内で樹脂が固着して樹脂が供給されない問題が生じ、製造を停止する必要がある。
[製造例1]
内部を窒素置換した金属製耐圧反応容器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)のシクロヘキサン溶液(濃度70%)42.8部(ジシクロペンタジエンとして30部)、1-ヘキセン1.9部を加え、全容を53℃に加熱した。
一方、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解して得られた溶液に、ジエチルアルミニウムエトキシドのn-ヘキサン溶液(濃度19%)0.061部を加えて10分間攪拌し、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を前記反応器内に添加し、53℃で4時間、開環重合反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液200部に、停止剤として、1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃で1時間攪拌し、重合反応を停止させた。その後、ハイドロタルサイト様化合物(製品名「キョーワード(登録商標)2000」、協和化学工業社製)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。濾過助剤(製品名「ラヂオライト(登録商標)#1500」昭和化学工業社製)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(製品名「TCP-HX」、ADVANTEC東洋社製)を用いて、吸着剤を濾別し、ジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液を得た。
この溶液の一部を用いて、ジシクロペンタジエン開環重合体の分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は28,100、数平均分子量(Mn)は8,750、分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
精製処理後の、ジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液200部(重合体含有量30部)に、シクロヘキサン100部、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加し、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。反応液は、固形分が析出したスラリー液であった。
反応液を遠心分離することにより、固形分と溶液とを分離し、固形分を、60℃で24時間減圧乾燥し、結晶性を有する重合体としての、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物28.5部を得た。
水素化反応における不飽和結合の水素化率は99%以上、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物のガラス転移温度Tgは93℃、融点Tmは262℃であった。ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。結晶化温度Tcは130℃であった。
[製造例2]
製造例1で得たジシクロペンタジエン開環重合体水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」、BASFジャパン社製)0.8部を混合した後、混合物を二軸押出し機(TEM-37B、東芝機械社製)に投入し、熱溶融押出し成形によりストランド状の成形体を得た後、これをストランドカッターにて細断し、原料ペレット(第1のペレット)を得た。原料ペレット(第1のペレット)は、ジシクロペンタジエン開環重合体の水素化物を含む熱可塑性樹脂からなる。このジシクロペンタジエン開環重合体の水素化物を含む熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度Tg1が93℃、融点Tm1が262℃、結晶化温度Tc1が130℃であった。
二軸押出し機の運転条件を以下に示す。
・バレル設定温度:270~280℃
・ダイ設定温度:250℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダー回転数:50rpm
[実施例1]
(工程(1):乾燥工程)
製造例2で得た原料ペレットをホッパードライヤー(カワタ社製「チャレンジャーIIIDFB-50Z」)に入れ、これを73℃(すなわち、Tg1-20℃)で240分乾燥を行った。
得られたペレット(第2のペレット)の溶存酸素量は19ppmであった。得られたペレットについて、互着の程度を上記方法により評価した。
(工程(2):結晶化工程)
次いで得られたペレットを撹拌槽(カワタ社製結晶化ユニットCR-1)に入れ、これを130℃(すなわち、Tc1)で60分、回転数10rpmの条件で攪拌し、第2のペレットの樹脂に対して結晶化処理を行い、製品ペレット(第3のペレット)を得た。得られた製品ペレット(第3のペレット)の溶存酸素量は17ppmであった。また、製品ペレット(第3のペレット)を試料として結晶化発熱量を測定したところ、3mJ/mg以下であった。
(工程(3):押出工程)
得られた製品ペレットを用いて以下の条件で押出成形処理を行い、幅150mm、厚み100μmの樹脂フィルムを得た。
・成形機:Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機(製品名「Measuring Extruder Type Me-20/2800V3」、Optical Control Systems社製)
・バレル温度設定:280℃~290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:60rpm
・フィルム巻き取り速度:0.3m/分
[実施例2~4及び比較例1~4]
下記事項以外は実施例1と同様にして製品ペレットを得、これを用いて樹脂フィルムを製造した。
・工程(1)における温度条件及び時間並びに工程(2)における温度条件及び時間を表1又は表2に記載のとおりとした。実施例2~4及び比較例1~4においては、Tg1及びTc1はそれぞれ、製造例2で得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を含む熱可塑性樹脂のガラス転移温度(93℃)及び結晶化温度(130℃)を示す。
[実施例5]
下記事項以外は実施例1と同様にして製品ペレットを得、これを用いて樹脂フィルムを製造した。
・工程(1)において、製造例2で得た原料ペレットに代わりにポリエチレンテレフタレート(PET)ペレット(ユニチカ社製「NEH-2070」、ガラス転移温度Tg1=70℃、融点Tm1=250℃、結晶化温度Tc1=165℃)を用いた。
・工程(1)における温度条件及び時間並びに工程(2)における温度条件及び時間を表1に記載のとおりとした。実施例5においては、Tg1及びTc1はそれぞれ、PETのガラス転移温度(70℃)及び結晶化温度(165℃)を示す。
実施例1~5における製造条件及び評価結果を表1に示す。比較例1~4における製造条件及び評価結果を表2に示す。
下記表における略号は、下記の意味を示す。
「結晶性COP」:製造例2で得られた、ジシクロペンタジエン開環重合体の水素化物を含む熱可塑性樹脂からなるペレット
「PET」:ポリエチレンテレフタレートペレット(ユニチカ社製「NEH-2070」)
また、注釈は下記の意味を示す。
「*1」:工程(2)を行わなかった。
「*2」:工程(1)後のペレットを試料として測定された値である。
「*3」:押出安定性が不良であり、フィルムを製造できず異物数の評価を行えなかった。
Figure 0007159890000001
Figure 0007159890000002
以上の結果から、以下が分かる。
工程(2)を行わず、ペレットにおける熱可塑性樹脂の結晶化が不十分である比較例1の方法では、押出安定性が不良である。
工程(1)における乾燥の温度が条件(a)を満たしていない比較例2~4の方法では、工程(1)又は工程(2)後におけるペレットの溶存酸素量が多く、製造されるフィルムの異物数が多い。
さらに詳細には、先に条件(b1)を満たす温度T2で熱可塑性樹脂の結晶化を行い、次いで条件(a)を満たす温度T1で乾燥する比較例3の方法では、工程(2)後におけるペレットの溶存酸素量が多く、製造されるフィルムの異物数が多い。
また、工程(1)における乾燥の温度が、条件(a)を満たさず、(Tg1-20)℃よりも低い比較例4の方法も、工程(2)後におけるペレットの溶存酸素量が多く、製造されるフィルムの異物数が多い。
一方、実施例の方法では、押出安定性が良好であると同時に、工程(2)後におけるペレットの溶存酸素量が低く、製造されるフィルムの異物数が少ない。

Claims (5)

  1. 結晶性を有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる第1のペレットを温度T1(℃)で乾燥して第2のペレットを得る工程(1)と、
    前記第2のペレットを、温度T2(℃)で加熱して、前記熱可塑性樹脂を結晶化させて第3のペレットを得る工程(2)と、
    前記第3のペレットを溶融し押し出す工程(3)とをこの順で含み、
    前記熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度がTg1(℃)であり、結晶化温度がTc1(℃)であり、融点がTm1(℃)であり、
    前記結晶性を有する重合体は、結晶性を有する脂環式構造含有重合体であり、前記脂環式構造含有重合体は、分子内に脂環式構造を有する重合体であって、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物であり、
    T1は、条件(a):
    (Tg1-20)℃≦T1≦(Tc1-15)℃ 条件(a)
    を満たし、
    T2は、条件(b1)又は条件(b2):
    (Tc1+100)℃≦Tm1のとき(Tc1-10)℃≦T2<(Tc1+100)℃ 条件(b1)
    (Tc1+100)℃>Tm1のとき(Tc1-10)℃≦T2<Tm1 条件(b2)
    を満たす、フィルムの製造方法。
  2. 前記第3のペレットの溶存酸素量が、30ppm以下である、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  3. 前記第3のペレットにおける前記熱可塑性樹脂の結晶化発熱量が、10mJ/mg以下である、請求項1又は2に記載のフィルムの製造方法。
  4. 前記結晶性を有する脂環式構造含有重合体が、結晶性を有する、ジシクロペンタジエン開環重合体の水素化物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
  5. 前記工程(1)において、温度T1(℃)で前記第1のペレットを乾燥する時間が10分間以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
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