JP2009066767A - 環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法及び装置、並びに環状オレフィン系樹脂フィルム及び光学フィルム - Google Patents

環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法及び装置、並びに環状オレフィン系樹脂フィルム及び光学フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】環状オレフィン系樹脂の分解を抑制し、ゲル状異物の少ない面質の良好な環状オレフィン系樹脂フィルムを得る。
【解決手段】
環状オレフィン系樹脂を、シリンダ32内にスクリュー38を備えた押出機22により溶融し、該溶融樹脂を押出機22から吐出してダイ24に供給すると共に、ダイ24からシート状に溶融樹脂を押し出して冷却固化することによりフィルムを製造する環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法において、環状オレフィン系樹脂として230〜260℃における溶融粘度が500〜3000Pa・sである樹脂を用いると共に、押出機22のスクリュー圧縮比を1.5〜3.5にする。
【選択図】 図2

Description

本発明は環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法及び装置に係り、特に液晶表示装置に好適な品質を有する環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法及び装置に関する。
液晶表示装置の偏光板の保護フィルム、あるいは光学補償フィルム(位相差膜)や反射防止フィルムを製造する際の基材フィルムとしては、光学特性に優れたセルロースエステル系樹脂フィルムが一般的に使用されている。しかし、セルロースエステル系樹脂フィルムは吸湿性が高いため、湿度により収縮してレターデーションむらを発生し易いという問題があった。
このことから、光学特性に優れ且つ吸湿性の小さなフィルムとして、環状オレフィン系樹脂フィルムが提案されている。
環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、押出機で溶融した樹脂をダイからシート状に押し出した後、冷却固化してフィルム状にする溶融製膜法(例えば特許文献1)がある。
特開2005−099097号公報
しかしながら、上記溶融製膜法において、環状オレフィン系樹脂を溶融する際、高い剪断力を比較的長時間付与すると環状オレフィン系樹脂が分解し、ゲル状異物を生成し易いという問題があった。このため、製膜後のフィルムを光学用途に使用した際に、光学欠陥の原因になる虞があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ゲル状異物が少なく、均質な環状オレフィン系樹脂フィルムを得ることができる環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法及び装置、その製造方法で製造された環状オレフィン系樹脂フィルム並びに光学フィルムを提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、環状オレフィン系樹脂を、シリンダ内にスクリューを備えた押出機により溶融し、該溶融樹脂を前記押出機から吐出してダイに供給すると共に、該ダイからシート状に溶融樹脂を押し出して冷却固化することによりフィルムを製造する環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法において、前記環状オレフィン系樹脂として230〜260℃における溶融粘度が500〜3000Pa・sである樹脂を用いると共に、前記押出機のスクリュー圧縮比を1.5〜3.5にすることを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法を提供する。
請求項1によれば、230〜260℃における溶融粘度が500〜3000Pa・sである比較的高粘度の環状オレフィン系樹脂を溶融・混練する際、押出機のスクリュー圧縮比を1.5〜3.5の範囲にするので、押出機内における高剪断領域を少なくすることができる。これにより、環状オレフィン系樹脂が分解してゲル状異物を生成するのを抑制し、充分に溶融・混練できる。したがって、ゲル状異物の少ない面質の良好な環状オレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。
なお、スクリュー圧縮比とは、溶融樹脂を定量輸送する供給部と、溶融樹脂を混練・圧縮する圧縮部と、混練・圧縮された溶融樹脂を押出機の吐出口に搬送しながら吐出量を計量する計量部と、を備えた押出機において、供給部と計量部の容積比(シリンダ内径とスクリュー軸径との間の容積比)をいう。スクリュー圧縮比は1.5〜3の範囲がより好ましい。また、請求項1において、溶融粘度とはゼロ剪断粘度をいい、例えば、プレート型レオメーター等で測定できる。なお、環状オレフィン系樹脂の230〜260℃(好ましくは250〜260℃)における溶融粘度が1000〜1500Pa・sであることがより好ましい。
請求項2は請求項1において、前記スクリューに、ミキシングエレメントを備えたミキシングセクションが設けられると共に、前記シリンダ内径をDとしたとき、前記ミキシングセクションの押出方向の長さが1D以上3D以下であることを特徴とする。
ミキシングセクションでは、環状オレフィン系樹脂に比較的高い剪断力がかかる。請求項2によれば、このミキシングセクションが配置される押出方向長さを上記範囲とすることで、溶融樹脂に過剰な剪断力がかかるのを抑制できる。これにより、環状オレフィン系樹脂が分解してゲル状異物を生成するのを抑制し、充分に溶融・混練できる。
請求項3は請求項2において、前記ミキシングエレメントの径方向先端と前記押出機のシリンダ内壁面との間隙は1〜2mmであることを特徴とする。
請求項3によれば、ミキシングエレメントの径方向先端とシリンダ内壁面との間隙を上記範囲のように比較的大きくとることで、環状オレフィン系樹脂に過剰な剪断力がかかるのを抑制できる。
請求項4は請求項2又は3において、前記ミキシングエレメントが、バリヤータイプであることを特徴とする。
請求項4によれば、溶融樹脂を効率よく混練できる。
請求項5は請求項1〜4の何れか1項において、前記押出機よりも下流側において、前記押出機から吐出された溶融樹脂中のゲル状異物を除去する第1の濾過工程と、前記第1の濾過工程において除去したよりも小さいゲル状異物を除去する第2の濾過工程と、を備えた2段濾過を行うことを特徴とする。
請求項6は請求項5において、前記第1の濾過工程は、濾過精度30〜100μmのフィルタ濾材により前記溶融樹脂中のゲル状異物を除去し、前記第2の濾過工程は、濾過精度3〜50μmのリーフディスクフィルタにより前記ゲル状異物を除去することを特徴とする。
請求項5及び請求項6によれば、一度でゲル状異物を除去するよりも高い濾過精度が得られると共に、ゲル状異物による目詰まりを生じ難くし、フィルタライフを向上することができる。
請求項7は請求項6において、前記リーフディスクフィルタは、金属繊維の焼結体と粉状体の焼結体との積層構造を有することを特徴とする。
請求項7によれば、リーフディスクフィルタは、微小な空隙を形成する粉状体の焼結体(焼結パウダともいう)と金属繊維の焼結体(焼結繊維フィルタともいう)の積層構造を有するので、溶融樹脂中のゲル状異物を高い濾過精度で除去できる。
請求項8は請求項6又は7において、前記第2の濾過工程において、前記リーフディスクフィルタを通過する前記溶融樹脂の濾過圧を1MPa以上10MPa以下にすることを特徴とする。
請求項8によれば、溶融樹脂の濾過抵抗が過大になるのを抑制すると共に、ゲル状異物によるリーフディスクフィルタの目詰まりを生じ難くし、フィルタライフを向上することができる。
本発明の請求項9は前記目的を達成するために、請求項1〜8の何れか1に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルムを提供する。
請求項9によれば、環状オレフィン系樹脂の分解によりゲル状異物が生成するのを抑制し、良好な面質の環状オレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。
請求項10は請求項11において、前記環状オレフィン系樹脂フィルムにおいて、粒径20μm以上のゲル状異物が10個/m以下であることを特徴とする。
請求項10によれば、良好な面質の環状オレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。なお、ゲル状異物の個数は、製膜後のフィルムに透過光を照射して、CCDで撮像した後、画像処理することにより測定できる。
本発明の請求項11は前記目的を達成するために、請求項10に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムを用いたことを特徴とする光学フィルムを提供する。
請求項11によれば、光学的な品質に優れたフィルムを得ることができる。なお、光学フィルムとしては、例えば、液晶表示装置などに用いられる各種フィルム(光学補償フィルム、反射防止フィルム等)が挙げられる。
本発明の請求項12は前記目的を達成するために、シリンダ内にスクリューを備え、環状オレフィン系樹脂を溶融する押出機と、前記押出機よりも下流側に設けられ、前記押出機から吐出される溶融樹脂が供給されると共に、該溶融樹脂をシート状に押し出すダイと、前記ダイよりも下流側に設けられ、該シート状に押し出された溶融樹脂を冷却固化する冷却ドラムと、を備えた環状オレフィン系樹脂フィルムの製造装置において、前記押出機のスクリュー圧縮比が1.5〜3.5であることを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルムの製造装置を提供する。
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂の分解を抑制し、ゲル状異物の少ない面質の良好な環状オレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。
以下添付図面に従って本発明に係る環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法及び装置の好ましい実施の形態について説明する。
本実施の形態は、環状オレフィン系樹脂(特に、シクロオレフィンコポリマー)に剪断力を付与しながら溶融・混練する工程において、環状オレフィン系樹脂の分解が生じないように剪断力を調整するための方法である。
まず、本発明に係る環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法について説明する。
図1は、環状オレフィン系樹脂フィルムの製造装置の概略構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、製造装置10は、主として、延伸前の環状オレフィン系樹脂フィルム12を製造する製膜工程部14と、製膜工程部14で製造された環状オレフィン系樹脂フィルム12を縦延伸する縦延伸工程部16と、横延伸する横延伸工程部18と、延伸された環状オレフィン系樹脂フィルム12を巻き取る巻取工程部20と、より構成される。
製膜工程部14では、押出機22で溶融された環状オレフィン系樹脂がダイ24からシート状に吐出され、回転する冷却ドラム26上でキャストされて急冷固化され、環状オレフィン系樹脂フィルム12が得られる。この環状オレフィン系樹脂フィルム12は、冷却ドラム26から剥離された後、縦延伸工程部16、横延伸工程部18に順に送られて延伸され、巻取工程部20でロール状に巻き取られる。これにより、延伸された環状オレフィン系樹脂フィルム12が製造される。
以下、各工程部の詳細について説明する。
図2は、製膜工程部14の押出機22の構成を示す断面図である。図3は、押出機22における単軸スクリューの変形例を示す断面図である。
図2に示すように、押出機22は単軸スクリュー型の押出機であり、シリンダ32内に単軸スクリュー38を備えている。単軸スクリュー38は、スクリュー軸34にスクリュー羽根36が取りつけられており、回転自在に支持されるとともに不図示のモータによって回転駆動されるように構成されている。
シリンダ32の外周部には、不図示のジャケットが取りつけられており、所望の温度に温度制御できるようになっている。シリンダ32の供給口40には不図示のホッパーが取り付けられており、このホッパーから環状オレフィン系樹脂が供給口40を介してシリンダ32内に供給される。
シリンダ32内は供給口40側から順に、供給口40から供給された環状オレフィン系樹脂を定量輸送する供給部(Aで示す領域)と、環状オレフィン系樹脂を混練・圧縮する圧縮部(Bで示す領域)と、混練・圧縮された環状オレフィン系樹脂を吐出口42に搬送しながら吐出量を計量する計量部(Cで示す領域)とで構成される。
本発明では、環状オレフィン系樹脂として、230〜260℃における溶融粘度が500〜3000Pa・sのものを用いるが、この環状オレフィン系樹脂は、溶融工程で高い剪断力が過剰に付与されるとゲル状異物を生成し易い。そこで、本発明では、環状オレフィン系樹脂に高い剪断力が過剰に付与されないように、押出機22のスクリュー圧縮比を1.5〜3.5にすることが重要である。
230〜260℃における溶融粘度が上記500〜3000Pa・sを満たす環状オレフィン系樹脂としては、例えば、TOPAS 6013(数平均分子量:7万ポリプラスチック製)を挙げることができる。その他、本発明に使用される環状オレフィン系樹脂の具体例については、後述する。
スクリュー圧縮比とは、背圧をかけて混練するために成形材料を溶融状態で圧縮する程度をいい、供給部Aと計量部Cとの容積比(すなわち供給部Aの単位長さ当たりの容積÷計量部Cの単位長さ当たりの容積)で表される。具体的には、スクリュー圧縮比は、供給部Aのスクリュー軸34の外径をd1、計量部Cのスクリュー軸34の外径をd2、シリンダ内径をDとすると、{(D−d1)}/{(D−d2)}で近似的に表される(ご確認下さい)。
なお、スクリュー圧縮比が1.5を下回って小さすぎると十分に混練されず、未溶解部分が発生し、剪断発熱が小さく結晶の融解が不十分となる。逆に、スクリュー圧縮比が3.5を上回って大きすぎると、剪断応力がかかり過ぎて発熱により樹脂が劣化したり、分子の切断が起こり分子量が低下したりする。これにより、溶融樹脂が不均一となってしまい、押出機22の吐出圧の変動が大きくなってしまう。したがって、押出機22の吐出圧変動を小さくし、フィルムの厚さムラを小さくするためには、スクリュー圧縮比は1.5〜3.5の範囲が好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
また、押出機22のL/Dは20〜50に設定されることが好ましい。L/Dとは、図2のシリンダ内径(D)に対するシリンダ長さ(L)の比である。すなわち、L/Dが20を下回って小さすぎると、溶融不足や混練不足となり、圧縮比が小さい場合と同様に微細な結晶が残存し易くなる。逆に、L/Dが50を上回って大きすぎると、押出機22内での環状オレフィン系樹脂の滞留時間が長くなり過ぎ、樹脂の劣化を起こし易くなる。また、滞留時間が長くなると分子の切断が起こり、分子量が低下してしまう。したがって、押出機22の吐出圧変動を小さくし、フィルムの厚みムラを小さくするためには、L/Dは20〜50の範囲が好ましく、25〜45の範囲がより好ましく、30〜40の範囲が特に好ましい。
さらに、押出機22のシリンダ内径Dと供給部Aの溝部径a1との関係において、D/a1が10以下に設定されていることが好ましい。D/a1が10以下となるように、供給部Aの溝部径a1を深くすることで、樹脂がスクリュー38に接触しながら輸送されるので、供給部Aで熱可塑性樹脂を均一に溶融することができるので、この均一な溶融樹脂を圧縮部Bに安定して供給することができる。
そして、押出機22の圧縮部Bの長さは、圧縮部Bの長さを1としたときに、供給部Aと計量部Cのそれぞれの長さは1.5倍〜5倍の長さに設定することが好ましい。このように、圧縮部Bの長さを供給部Aや計量部Cよりも短くして急圧縮・短時間溶融を行うことで発生する吐出圧変動を、圧縮部Bの前後における供給部Aと計量部Cとの長さを長くすることで吸収することができる。圧縮部Bの長さを1としたときに、供給部Aと計量部Cのそれぞれの長さが1.5倍未満では、急圧縮・短時間による吐出圧変動を吸収する効果が殆どなく、5倍を越えても吸収効果が変わらないからである。
また、押出機22の圧縮部Bにおいて、スクリュー38が図3に示すようにダブルフライト型であることが好ましい。ダブルフライト型のスクリュー38は、スクリュー軸34に主フライト(スクリュー羽根)36aに加えて、副フライト36bを追加したものであり、通常、副フライト36bは、主フライト36aよりも高さが低く、ピッチも大きく形成されている。これによって、副フライト36bの前方で溶融した樹脂を、未溶融で残っている樹脂から副フライト36bの後方に分離しつつ送ることができるので、樹脂の均一な可塑化を図ることができる。
また、押出機22の計量部Cや、圧縮部Bと計量部Cとの間などには、ミキシングセクションが設けられている。ミキシングセクションは、ミキシングエレメント44を備えており、ミキシングエレメント44の径方向先端(図5の壁(メインフライト)48の面)とシリンダ32の内壁面との間隙dcが1〜2mmになるように構成されている。これにより、供給部A、圧縮部Bを経て溶融された環状オレフィン系樹脂に高い剪断力を付与して効率よく混練することができる。したがって、圧縮部Bにおいて混練不足が生じても、ミキシングセクションにおいて混練不足を確実に解消できる。
ミキシングセクションの長さLm(押出方向の長さ)は、1D以上3D以下にすることが好ましい。すなわち、ミキシングセクションの長さを1D未満にすると、未溶融部の溶融や溶融樹脂の混練には不充分であり、ミキシングセクションの長さを3Dよりも大きくすると、剪断力がかかり過ぎて溶融樹脂が過剰に発熱し、熱劣化するためである。
さらに、溶融樹脂の発熱を抑制し且つ更に高効率で混練するために、計量部Cに複数のミキシングセクションを設けることもできる。このとき、各ミキシングセクションの長さは同じである必要はなく、1D以上3D以下の範囲を満たせば任意に設定できる。
図4は、バリヤータイプのミキシングエレメント44の構成を示す概略図である。このうち、図4(a)は、マードック型のミキシングエレメント44であり、図4(b)は、ユニメルト(登録商標)型のミキシングエレメント44である。図5は、ピンタイプのミキシングエレメント44’の構成を示す概略図である。
図4(a)において、符号52は樹脂の流入溝でありその上流側はさらに上流のスクリュー溝46と連通しており、下流側は閉塞されている。また、符号54は樹脂の流出溝であり、その上流側は閉塞されており、下流側は開放されている。樹脂流入溝の両側の壁の内、スクリュー回転に対して押し側の壁はバリヤー50であり、シリンダ32内壁との間隙を通して溶融樹脂は隣の流出溝54に流れ込むことができるようになっている。しかし、未溶融の樹脂はこの間隙を通過することができないので流入溝を下流に向かって流れ、その間に受ける加熱と剪断により次第に溶融し、より下流側から隣の流出溝54に流れ込む。
バリヤー50の頂上(径方向先端)とシリンダ32の内壁面との間隙は、1〜2mmであることが好ましい。一方、樹脂流入溝52の反対側の壁即ちスクリュー回転に対して背面側の壁(メインフライト)48とシリンダ32の内壁面との間隙は上記間隙より小さく、スクリュー羽根36とシリンダ32内壁との間隙と同程度にされており、溶融樹脂はこの間隙を通過することはできない。このようにお互いに隣り合った樹脂の流入溝52と流出溝54はスクリューの円周上に複数対設けられる。以上のようにして上流のスクリューから供給される未溶融樹脂を含む溶融樹脂は、ミキシングセクションにおいて均一な溶融状態となり下流に送られることになる。
また、図4(b)に示されるユニメルト(登録商標)型のミキシングエレメント44’は、幾何学的には、図4(a)に示したミキシングエレメント44をスクリューの芯を軸として捩じられた形状をなしている。捩じりの方向は、スクリュー本体のスクリュー羽根36の捩じり方向と同一である。したがって、ミキシングエレメント44’自体に樹脂の送り能力を与えることができる。また、このミキシングエレメント44’では、樹脂の流入溝52の深さが下流に行くに従い浅くなるようにされているので、樹脂の滞留部分が生じる可能性をミキシングエレメント44よりも低減できる。
また、図5に示すように、ミキシングエレメント44’’のスクリューは、螺旋状のスクリュー羽根36’を有し、このスクリュー羽根36’が形成する溝部にミキシングピン56が挿入されている。このようなミキシングピン56を有することにより、溶融樹脂は通常の螺旋状のスクリュー羽根36’のみを有する場合より、横方向にも強い混練を受けるようになる。このように、縦方向及び横方向に強力に混合することにより、溶融樹脂を均質化してダイ24へ送り出すことができる。この他、ミキシングエレメントとしては、特に図示しないが、Dray型、Troester型、ダムリング型、ダルメージ型及びDIS型等が使用できる(学会誌プラスチックスVol.58.No.3参照)。
このようにして均一溶融の効果に優れたミキシングセクションによって、更に均一に樹脂を溶融できる。なお、複数のミキシングセクションを設ける場合、種類の異なるミキシングエレメントを組み合わせることもできる。
また、押出機22の供給部Aのスクリュー38の押出温度を200〜300℃の範囲にすることで、環状オレフィン系樹脂を溶融し易くする。押出機22の供給部Aの温度が200℃を下回って低すぎると、結晶の融解が不十分となり、溶融樹脂に微細な結晶が残存してしまう。逆に、押出機22の供給部Aの温度が300℃を超えて高すぎると、環状オレフィン系樹脂が供給部Aのスクリュー38部分に粘着してしまい、供給部Aのスクリュー38部分に粘着した樹脂は圧縮部Bに送られ難くなるため、熱により劣化してしまう。したがって、押出温度は、200〜300℃にするのが好ましく、220〜290℃にするのがより好ましく、230〜260℃にするのが更に好ましい。
更に、押出機22の供給部Aにおいて、スクリュー38の温度変化を±1℃以内にすることが好ましい。この温度変化の制御は、例えばスクリュー38内に水又はオイルを循環させ、後に述べる配管23に取り付けられたアルミ鋳込みヒータ又は熱媒ヒータを使用することで可能となる。
なお、押出機22における溶融条件としては、環状オレフィン系樹脂のペレットを押出機22に入れ、100℃以上200℃以下で1分以上10時間以下脱水した後、混練押出しする。混練は、1軸或いは2軸の押出機を使用できる。
以上のように押出機22を構成することにより、製造装置10において製造される環状オレフィン系樹脂フィルムのゲル状異物による面状故障を抑制することができる。
上記の如く構成された押出機22によって環状オレフィン系樹脂が溶融され、その溶融樹脂が吐出口42から配管23を介してダイ24(図1参照)に連続的に送られる。
上記押出機22とダイ24との間を接続する配管23には、図1に示すように、溶融樹脂中のゲル状異物を濾過するために、フィルタ濾材によりブレーカープレート式の濾過を行う第1濾過部60と、更に高精度にゲル状異物を濾過するためのリーフディスクフィルタを組み込んだ第2濾過部62と、が設けられている。
第1濾過部60は、押出機から吐出される溶融樹脂中の比較的大きいサイズのゲル状異物をフィルタ濾材により濾過できるように構成されている。このようなフィルタ濾材としては、例えば、目開き(濾過精度とも称する)が10〜300μmの金属メッシュフィルタや焼結繊維フィルタ等が使用できる。
フィルタ濾材の濾過精度は高い方が好ましいが、濾材の耐圧や濾材の目詰まりによる濾圧上昇から、濾過精度は3〜30μmがより好ましい。
第2濾過部62としては、濾過精度の高い濾材が使用され、第1濾過部60において除去するゲル状異物よりも更に小さいサイズのゲル状異物を除去するように構成されている。このような濾材としては、高温高圧下で使用される点から鉄鋼材料が好ましく、鉄鋼材料の中でも特にステンレス鋼、スチール等が好ましく、更に腐食の点から特にステンレス鋼が望ましい。
図6は、第2濾過部62の構成を示す概略図である。なお、第2濾過部62は後述するスタチックミキサ27よりも上流側に配設されることが好ましい。
第2濾過部62は、主として、溶融樹脂の供給口64と排出口66とを有する円筒形状の濾過ハウジング68と、濾過ハウジング68内に設けられた複数の円盤形状の金属製濾材(以下、リーフディスクフィルタ70の例で説明する)と、より構成されている。
リーフディスクフィルタ70は、下流側の一端が濾過ハウジング68の下流側の内壁面に支持固定されたシャフト72に複数固定されている。シャフト72内には、下流に向かって拡径する流路74が形成されており、後述するリーフディスクフィルタ70の内周面に形成された孔76(図7参照)とシャフト72内の流路74とを連通する連通路78(連通孔)が形成されている。
図7は、リーフディスクフィルタ70を示す概略図である。このうち、図7(a)は、リーフディスクフィルタ70の斜視図であり、図7(b)は、リーフディスクフィルタの表面71近傍の断面の様子を示す断面模式図である。
図7(a)に示すように、リーフディスクフィルタ70の内周面には、孔径0.1μm以上50μm以下の多数の孔76が形成され、リーフディスクフィルタ70で濾過された溶融樹脂を流路74内に取り込めるように構成されている。リーフディスクフィルタ70の径D2等は、押出機22からの溶融樹脂の供給量や滞留時間に応じて適宜設定される。
リーフディスクフィルタの表面71には、図7(b)に示すように、焼結繊維フィルタ71Aと焼結パウダ71Bの積層構造が形成されている。
焼結繊維フィルタ71Aは、金属長繊維を焼結して形成される焼結濾材であり、繊維間の隙間(濾過精度とも称する)は10μm以下であることが好ましい。
焼結パウダ71Bは、金属粉末を焼結して形成される焼結濾材であり、この焼結濾材に形成される微小な隙間がフィルタ機能を果たしている。この微小な隙間(濾過精度とも称する)のサイズは、10μm以下であることが好ましい。このように、焼結繊維フィルタ71Aに焼結パウダ71Bを重ねる構造とすることで、リーフディスクフィルタ70全体としての濾過精度、フィルタライフを向上できる。
これにより、押出機22で溶融された溶融樹脂は、供給口64から円盤形状に形成されたリーフディスクフィルタ70内に供給され、リーフディスクフィルタ70で濾過される。この際、リーフディスクフィルタの表面71では、微小なゲル状異物が焼結繊維フィルタ71Aと焼結パウダ71Bにより段階的に除去される。そして、溶融樹脂は孔76(図7参照)内を流通し、シャフト72内の連通路78を介して流路74を流れた後、排出口66から排出される。これにより、溶融樹脂中の微細なゲル状異物が除去される。
なお、第2濾過部62において、耐圧、フィルタライフの適性を確保するために、リーフディスクフィルタを通過する前記溶融樹脂の濾過圧を1MPa以上10MPa以下にすることが好ましい。また、リーフディスクフィルタ70の装填枚数を調整することもできる。また、図1では、濾過は2段階で行う例を示したが、1段階又は3段階以上の多段階でもよい。
配管23内には、図1に示すように、スタチックミキサ27が配置されている。スタチックミキサ27は、長方形の板を180°ねじった形のエレメント27a、27a…を有している。このようなスタチックミキサ27の配管23内を溶融樹脂が通ることで、溶融樹脂を混合することができ、溶融樹脂の温度ムラ及び粘度ムラが抑制される。ここで、スタチックミキサ27を4段以上設けること(エレメント27aは4枚以上とすること)が好ましい。これにより、溶融樹脂は2=16分割以上されるとともに、溶融樹脂は1エレメントごとに回転方向が替わり急激な慣性力の反転を受け乱流攪拌されるので、溶融樹脂の温度ムラ及び粘度ムラが更に抑制される。
また、配管23、第1濾過部60、及び第2濾過部62における温度ムラを±1℃以内にすることが好ましい。この温度変化の制御は、例えばスクリュー38内に水又はオイルを循環させ、配管23に取り付けられたアルミ鋳込みヒータ又は熱媒ヒータを使用することで可能となる。
このように、環状オレフィン系樹脂フィルム12の溶融製膜において、配管23内にスタチックミキサ27を配置し、溶融樹脂の温度ムラ及び粘度ムラを低減することができる。
ダイ24に送られた溶融樹脂は、ダイ24からシート状に押し出され、冷却ドラム26上にキャストされて冷却固化され、環状オレフィン系樹脂フィルム12が製膜される。なお、ダイ24から押し出された際の溶融樹脂の温度は、熱劣化や着色を防止するために、Tg+70℃以上、Tg+120℃以下が好ましい。また、ダイ24のリップクリアランスをd、ダイ24から吐出される溶融樹脂の厚みをwとした際、リップクリアランス比d/wは1.5〜10の範囲に制御することが好ましい。さらに、ダイ24は、そのスリットが、鉛直方向と、冷却ドラム26の回転方向に45°で傾斜した方向との範囲で形成されることが好ましい。
冷却ドラム26の温度は、80〜170℃が好ましく、90℃以上160℃以下がより好ましく、100℃以上150℃以下が更に好ましい。
また、図1に示すように、ダイ24出口から押し出された溶融樹脂が冷却ドラム26上に着地するまでの距離(La)が100mm以下であることが好ましい。この範囲にすることで、環状オレフィン系樹脂フィルムの幅方向においてレターデーション(Re)分布が生じるのを抑制することができる。ここで、レターデーション(Re)分布は最大値と最小値の差である。なお、図1ではキャスティングロールを用いる例で説明したが、これに限定されることはなく、タッチロールを用いることもできる。
このようにして製膜された環状オレフィン系樹脂フィルムには、粒径20μm以上のゲル状異物が10個/m以下であることが好ましい。ゲル状異物の個数は、製膜後のフィルムに透過光を照射して、CCDで撮像した後、画像処理することにより測定できる。
環状オレフィン系樹脂フィルムの厚さは、30〜200μmの範囲が好ましく、40〜160μmの範囲がより好ましく、50〜120μmの範囲が更に好ましい。環状オレフィン系樹脂フィルムの厚さが30μm未満であると、強度が不足し取り扱い性に問題が生じ、200μmより厚いと折り曲げにくく取り扱い性に問題が生じやすい。
製膜工程部14で製膜された未延伸の環状オレフィン系樹脂フィルム12は、例えば液晶表示装置の保護フィルムとして好適に使用できる。
また、未延伸の環状オレフィン系樹脂フィルム12を基材フィルムとして光学補償フィルムを製造する際は、図1に示すように更に縦延伸工程部16と横延伸工程部18との少なくとも1つの延伸工程を行う。これにより、環状オレフィン系樹脂フィルム12中の分子を配向させ、面内のレターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)を発現させる。ここで、レターデーションRe、Rthは、以下の式で求められる。
Re(nm)=|n(MD)−n(TD)|×T(nm)
Rth(nm)=|{(n(MD)+n(TD))/2}−n(TH)|×T(nm)
式中のn(MD)、n(TD)、n(TH)は長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率を示し、Tはnm単位で表した厚みを示す。
図1に示すように、環状オレフィン系樹脂フィルム12は、先ず、縦延伸工程部16で長手方向に縦延伸される。縦延伸工程部16では、環状オレフィン系樹脂フィルム12が予熱された後、環状オレフィン系樹脂フィルム12が加熱された状態で、二つのニップロール28、30に巻き掛けられる。出口側のニップロール30は、入口側のニップロール28よりも早い搬送速度で環状オレフィン系樹脂フィルム12を搬送しており、これによって、環状オレフィン系樹脂フィルム12が縦方向に延伸される。
縦延伸された環状オレフィン系樹脂フィルム12は、横延伸工程部18に送られ、幅方向に横延伸される。横延伸工程部18では例えばテンターを好適に用いることができる。このテンターによって、環状オレフィン系樹脂フィルム12の幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に延伸する。この横延伸によって、レターデーションRthを一層大きくすることができる。
縦延伸工程部16及び横延伸工程部18において、延伸倍率は1.0〜2.5倍程度であることが好ましく、1.0〜2倍程度であることがより好ましく、これらの範囲で所定の残留位相差(レターデーション)になるように調整する。延伸倍率が低すぎるとレターデーションの絶対値が上がらずに所定の値とならず、高すぎると破断することもある。
縦延伸及び横延伸は、通常、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度Tg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行うことが好ましい。Tg〜Tg+50℃の温度範囲であれば、フィルムの破断や分子配向不足がなく所望の光学補償フィルムが得られる。また、Re及びRthは、延伸以外にもフィルムの厚さを制御することにより調整することができ、厚いほどRe及びRthの値が大きくなる。
延伸後の環状オレフィン系樹脂フィルムは、Re及びRthは20〜500nmであり、25〜300nmであることが好ましく、25〜200nmであることが更に好ましい。また、延伸後の環状オレフィン系樹脂フィルムのRe及びRthのバラツキ(Re及びRthむら)は小さいほど好ましい。具体的には、波長550nmのRe及びRthのバラツキは、通常±10%以下であることが好ましく、±7%以下であることがより好ましく、±5%以下であることが更に好ましい。
Re及びRthの面内でのバラツキや厚さムラは、延伸時に応力が環状オレフィン系樹脂フィルムに均等にかかるようにすることで小さくすることができる。そのためには、均一な温度分布下、好ましくは±5℃以内、更に好ましくは±2℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内に温度を制御した環境で延伸することが望ましい。
なお、Re、Rthは、以下のように測定することができる。すなわち、フィルムの幅方向に等間隔で10点サンプリングし、これを25°C、60%rhにて4時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃60%RHにおいて、サンプルフィルム表面に対し垂直方向及び遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定する。これにより、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出する。
延伸された延伸環状オレフィン系樹脂フィルムは巻取工程部20において巻取機に巻き取られる。
以上のように、本発明を適用することにより、環状オレフィン樹脂を溶融する工程において、環状オレフィン樹脂に高いせん断力がかかり過ぎるのを抑制できる。これにより、環状オレフィン系樹脂の分解を抑制し、ゲル状異物の少ない面質の良好な環状オレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。
以下、本発明に使用される各種材料について説明する。
本発明において使用される環状オレフィン系樹脂(シクロオレフィン樹脂)としては、後述するシクロオレフィン樹脂−A、および、シクロオレフィン樹脂−Bのいずれも好ましく用いることができる。
(シクロオレフィン樹脂−A/開環重合型)
本発明で使用されるシクロオレフィン系樹脂(シクロオレフィン樹脂−A)としては、例えば、(1)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を、必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のごときポリマー変性を行なった後に、水素添加した樹脂、(2)ノルボルネン系モノマーを付加型重合させた樹脂、(3)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加型共重合させた樹脂などが挙げることができる。重合方法および水素添加方法は、常法により行なうことができる。
ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン;等が挙げられる。
(シクロオレフィン系樹脂−B/開環重合型)
また、シクロオレフィン系樹脂として、下記一般式(1)〜(4)で表わされるものを挙げることができ、これらのうち、下記一般式(1)で表されるものが特に好ましい。
Figure 2009066767
〔一般式(1)〜(4)中、A、B、CおよびDは、水素原子または1価の有機基を示し、これらのうち少なくとも1つは極性基である。〕
これらのシクロオレフィン樹脂の重量平均分子量としては、通常5,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは8,000〜200,000である。
本発明におけるシクロオレフィン樹脂としては、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報などに記載されている樹脂などを挙げることができる。
これらの樹脂の中でも、ノルボルネン系モノマーを付加重合して得られるものが特に好ましい。
これらのシクロオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)は80℃以上230℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは120℃以上180℃以下である。飽和吸水率は1質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.8質量%以下とされる。前記一般式(1)〜(4)で表わされるシクロオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)および飽和吸水率は、置換基A、B、C、Dの種類を選択することにより制御することができる。
本発明におけるシクロオレフィン樹脂としては、下記一般式(5)で表わされる少なくとも1種のテトラシクロドデセン誘導体を単独で、或いは、当該テトラシクロドデセン誘導体と、これと共重合体可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体を用いてもよい。
Figure 2009066767
(式中、A、B、CおよびDは、水素原子または1価の有機基を示し、これらのうち少なくとも1つは極性基である。)
前記一般式(5)で表わされるテトラシクロドデセン誘導体において、A、B、CおよびDのうち少なくとも1つが極性基であることにより、他の材料との密着性、耐熱性などに優れた偏光フィルムを得ることができる。さらに、この極性基が−(CH2nCOOR(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、nは0〜10の整数を示す。)で表わされる基であることが、最終的に得られる水添重合体(偏光フィルムの基材)が高いガラス転移温度を有するものとなるので好ましい。特に、この−(CH2nCOORで表わされる極性置換基は、一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体の1分子あたりに1個含有されることが吸水率を低下させる点から好ましい。前記極性置換基において、Rで示される炭化水素基の炭素数が多くなるほど得られる水添重合体の吸湿性が小さくなる点では好ましいが、得られる水添重合体のガラス転移温度とのバランスの点から、当該炭化水素基は、炭素数1〜4の鎖状アルキル基または炭素数5以上の(多)環状アルキル基であることが好ましく、特にメチル基、エチル基、シクロヘキシル基であることが好ましい。
さらに、−(CH2nCOORで表わされる基が結合した炭素原子に、炭素数1〜10の炭化水素基が置換基として結合されている一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体は、得られる水添重合体の吸湿性が低いものとなるので好ましい。特に、この置換基がメチル基またはエチル基である一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体は、その合成が容易な点で好ましい。具体的には、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エンが好ましい。これらのテトラシクロドデセン誘導体、およびこれと共重合可能な不飽和環状化合物の混合物は、例えば特開平4−77520号公報第4頁右上欄12行〜第6頁右下欄第6行に記載された方法によってメタセシス重合、水素添加することができる。
これらのシクロオレフィン系樹脂は、クロロホルム中、30℃で測定される固有粘度(ηinh)が、0.1〜1.5dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.4〜1.2dl/gである。また、水添重合体の水素添加率としては、60MHz、1H−NMRで測定した値が50%以上とされ、好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以上である。水素添加率が高いほど、得られるシクロオレフィンフィルムは、熱や光に対する安定性が優れたものとなる。該水添重合体中に含まれるゲル含有量が5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下である。
さらに下記構造のシクロオレフィン樹脂(付加重合型)を本発明のフィルムに使用することができる。本発明では、シクロオレフィン樹脂として、[A-1]:炭素原子数が2〜20のα-オレフィンと下記式(I)で表されるシクロオレフィンとのランダム共重合体の水素添加物、[A-2]:下記式(I)で表されるシクロオレフィンの開環重合体または共重合体の水素添加物などを挙げることができる。
Figure 2009066767
これらのシクロオレフィン樹脂は、DSCで測定したガラス転移温度(Tg)が、70℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは70〜250℃であり、特に120〜180℃が好ましい。
また、これらのシクロオレフィン樹脂は、非晶性または低結晶性であり、X線回折法によって測定される結晶化度が、通常20%以下であり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは2%以下である。
また、本発明のシクロオレフィンは、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が、通常0.01〜20dl/gであり、好ましくは0.03〜10dl/g、さらに好ましくは0.05〜5dl/gであり、ASTM D1238に準じ260℃荷重2.16kgで測定した溶融流れ指数(MFR)は、通常0.1〜200g/10分であり、好ましくは1〜100g/10分、さらに好ましく5〜50g/10分である。
さらに、シクロオレフィン樹脂の軟化点は、サーマルメカニカルアナライザー(TMA)で測定した軟化点として、通常30℃以上であり、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80〜260℃である。
上記式(I)で表わされるシクロオレフィン樹脂の構造の詳細について述べる。
上記式(I)中、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1である。なお、qが1の場合には、R a およびR b は、それぞれ独立に、下記に示す原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
1 〜R 18 ならびにR a およびR b は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。これらの炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。さらに上記式(I)において、R 1 5 〜R 18 がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかも、このようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。
上記式(I)で示される環状オレフィンを、より具体的に次に例示する。一例として
Figure 2009066767
で示されるビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(=ノルボルネン)(上記一般式中において、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)および該化合物に炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
この置換炭化水素基として、5-メチル、5,6-ジメチル、1-メチル、5-エチル、5-n-ブチル、5-イソブチル、7-メチル、5-フェニル、5-メチル-5-フェニル、5-ベンジル、5-トリル、5-(エチルフェニル)、5-(イソプロピルフェニル)、5-(ビフェニル)、5-(β-ナフチル)、5-(α-ナフチル)、5-(アントラセニル)、5,6-ジフェニルなどを例示することができる。
さらに他の誘導体として、シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン誘導体を例示することができる。
この他、トリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]-3-デセン、2-メチルトリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]-3-デセン、5-メチルトリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]-3-デセンなどのトリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]-3-デセン誘導体、トリシクロ[4.4.0.1 2,5 ]-3-ウンデセン、10-メチルトリシクロ[4.4.0.1 2,5 ]-3-ウンデセンなどのトリシクロ[4.4.0.1 2,5 ]-3-ウンデセン誘導体、
Figure 2009066767
で示されるテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]-3-ドデセン、およびこれに炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
その炭化水素基として、8-メチル、8-エチル、8-プロピル、8-ブチル、8-イソブチル、8-ヘキシル、8-シクロヘキシル、8-ステアリル、5,10-ジメチル、2,10-ジメチル、8,9-ジメチル、8-エチル-9-メチル、11,12-ジメチル、2,7,9-トリメチル、2,7-ジメチル-9-エチル、9-イソブチル-2,7-ジメチル、9,11,12-トリメチル、9-エチル-11,12-ジメチル、9-イソブチル-11,12-ジメチル、5,8,9,10-テトラメチル、8-エチリデン、8-エチリデン-9-メチル、8-エチリデン-9-エチル、8-エチリデン-9-イソプロピル、8-エチリデン-9-ブチル、8-n-プロピリデン、8-n-プロピリデン-9-メチル、8-n-プロピリデン-9-エチル、8-n-プロピリデン-9-イソプロピル、8-n-プロピリデン-9-ブチル、8-イソプロピリデン、8-イソプロピリデン-9-メチル、8-イソプロピリデン-9-エチル、8-イソプロピリデン-9-イソプロピル、8-イソプロピリデン-9-ブチル、8-クロロ、8-ブロモ、8-フルオロ、8,9-ジクロロ、8-フェニル、8-メチル-8-フェニル、8-ベンジル、8-トリル、8-(エチルフェニル)、8-(イソプロピルフェニル)、8,9-ジフェニル、8-(ビフェニル)、8-(β-ナフチル)、8-(α-ナフチル)、8-(アントラセニル)、5,6-ジフェニル等を例示することができる。
さらには、(シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物などのテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]-3-ドデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.1 3,6 .0 2,7 .0 9,13 ]-4-ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.1 2,5 .1 9,12 .0 8,13 ]-3-ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.1 2,5 .1 9,12 .0 8,13 ]-3-ヘキサデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.1 3,6 .0 2,7 .0 9,14 ]-4-ヘキサデセンおよびその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.1 3,6 .1 10,13 .0 2,7 .0 9,14 ]-4-ヘプタデセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.1 2,9 .1 4,7 .1 11,17 .0 3,8 .0 12,16 ]-5-エイコセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.1 3,6 .1 10,17 .1 12,15 .0 2,7 .0 11,16 ]-4-エイコセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.1 2,9 .1 4,7 .1 11,18 .0 3,8 .0 12,17 ]-5-ヘンエイコセンおよびその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.1 2,9 .1 4,7 .1 11,18 .1 13,16 .0 3,8 .0 12, 17 ]-5-ドコセンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.1 4,7 .1 13,20 .1 15,18 .0 2, 10 .0 3,8 .0 12,21 .0 14,19 ]-5-ペンタコセンおよびその誘導体などが挙げられる。
これらのシクロオレフィン樹脂の具体例は、上記した通りであるが、より具体的なこれらの化合物の構造については、特開平7-145213号公報明細書の段落番号[0032]〜[0054]に示されている。
また、これらのシクロオレフィン樹脂の合成法については、特開2001-114836号公報明細書の段落番号[0039]〜[0068]を参考に実施することができる。
また本発明のシクロオレフィン樹脂(付加重合型)として下記のものも使用可能である。
下式I,II,II’,III,IV,V又はVI
Figure 2009066767
(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7及びR8は、同じか又は異なっていて、水素、例えば線状又は枝分れC1〜C8-アルキル基、C6〜C18-アリール基、C7〜C20-アルキレンアリール基、環式又は非環式C2〜C20-アルケニル基のようなC1〜C20-炭化水素基であり、もしくは飽和、不飽和又は芳香族の環を形成し、また同じ基R1〜R8は、異なる式I〜VIにおいて異なっていても良く、またnは、0〜5である)で表される少なくとも一種類の環式オレフィンの重合単位、及び、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、0〜99モル%の、下式VII
Figure 2009066767
(式中、R9,R10,R11及びR12は、同じか又は異なっていて、水素、例えばC1〜C8-アルキル基又はC6〜C18-アリール基のような線状又は枝分れ、飽和又は不飽和のC1〜C20-炭化水素基である)で表される一種類以上の非環式オレフィンから誘導される重合単位を含むポリマーから成る組から選択される少なくとも一種類のシクロオレフィンコポリマーであっても良い。
また、シクロオレフィンポリマーは、式I〜VIを有するモノマーの少なくとも一種類を開環重合し、次に得られた生成物を水素化することによって得ることもできる。
また、更に、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として0〜45モル%の、下式VIII
Figure 2009066767
(式中、nは2〜10の数である)で表される一種類以上の単環式オレフィンから誘導される重合単位を含むことができる。
環式、特に多環式オレフィンから誘導される重合単位の割合は、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、好ましくは3〜75モル%である。非環式オレフィンから誘導される重合単位の割合は、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、好ましくは5〜80モル%である。
シクロオレフィンコポリマーは、好ましくは、一種類以上の多環式オレフィン、特に式I又は式IIIで表される多環式オレフィンから誘導される重合単位、及び、式VIIで表される一種類以上の非環式オレフィン、特に2〜20個の炭素原子を有するα-オレフィンから誘導される重合単位から成っている。好ましくは、特に、式I又は式IIIで表される多環式オレフィンから誘導される重合単位、及び式VIIで表される非環式オレフィンから誘導される重合単位から成るシクロオレフィンコポリマーである。好ましくは、更に、式I又は式IIIで表される多環式モノオレフィンから誘導される重合単位、式VIIで表される非環式モノオレフィンから誘導される重合単位、及び少なくとも二つの二重結合を含む環式又は非環式オレフィン(ポリエン)、例えばノルボルナジエンのような特に環式、好ましくは多環式のジエン、特に好ましくは例えばC2〜C20-アルケニル基を運ぶビニルノルボルネンのような多環式アルケンから誘導される重合単位から成るターポリマーである。
本発明にしたがうシクロオレフィンポリマーは、好ましくはノルボルネン構造をベースとするオレフィン、特に好ましくはノルボルネン、テトラシクロドデセン、所望ならば、ビニルノルボルネン又はノルボルナジエンを含む。また、好ましくは、例えば2〜20個の炭素原子を有するα-オレフィン、特に好ましくはエチレン又はプロピレンのような末端二重結合を有する非環式オレフィンから誘導される重合単位を含むシクロオレフィンコポリマーである。特に好ましくは、ノルボルネン・エチレンコポリマー及びテトラシクロドデセン・エチレンコポリマーである。
ターポリマーの中では、特に好ましくは、ノルボルネン・ビニルノルボルネン・エチレンターポリマー、ノルボルネン・ノルボルナジエン・エチレンターポリマー、テトラシクロドデセン・ビニルノルボルネン・エチレンターポリマー、及びテトラシクロドデセン・ビニルテトラシクロドデセン・エチレンターポリマーである。ポリエン、好ましくはビニルノルボルネン又はノルボルナジエンから誘導される重合単位の割合は、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、0.1〜50モル%、特に好ましくは0.1〜20モル%であり、式VIIで表される非環式モノオレフィンの割合は、0〜99モル%、好ましくは5〜80モル%である。上記ターポリマーでは、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、0.1〜99モル%、好ましくは3〜75モル%である。
好ましくは、本発明にしたがうシクロオレフィンコポリマーは、式Iで表される多環式オレフィンから誘導することができる重合単位及び式VIIで表される非環式オレフィンから誘導することができる重合単位を含む少なくとも一種類のシクロオレフィンコポリマーを含む。
このようなシクロオレフィンコポリマーは特開平10-168201の段落番号[0019]〜[0020]に従い合成することができる。
上記シクロオレフィン系樹脂には、以下の各種添加剤を含むことができる。
(1)酸化防止剤
本発明におけるシクロオレフィン系樹脂には、公知の酸化防止剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジエチルフェニルメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]、2,4,8,10−テトラオキスピロ[5,5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト;紫外線吸収剤、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどを添加することによって安定化することができる。また、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
これらの酸化防止剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、通常0.1〜3質量部、好ましくは0.2〜2質量部である。
さらに、シクロオレフィン系樹脂には、所望により、フェノール系やリン系などの老化防止剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤、易滑剤などの各種添加剤を添加してもよい。
(2)安定剤
本発明では、安定剤としてホスファイト系化合物、亜リン酸エステル系化合物のいずれか、もしくは両方を用いることが好ましい。これらの安定剤の配合量は、シクロオレフィン樹脂に対して0.005〜0.5質量%であるのが好ましく、0.01〜0.4質量%であるのがより好ましく、0.02〜0.3質量%であるのがさらに好ましい。
(i)ホスファイト系安定剤
具体的なホスファイト系安定剤は、特に限定されないが、式(2)〜(4)で示されるホスファイト系安定剤が好ましい。
Figure 2009066767
Figure 2009066767
Figure 2009066767
前記各式中、R1、R2,R3、R4、R5、R6、R’1、R’2、R’3・・・R’p、R’p+1は水素または炭素数4〜23のアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アルコキシアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ポリアリールオキシアルキル基、ポリアルコキシアルキル基およびポリアルコキシアリール基から成る群から選択された基を示す。但し、一般式(2)(3)(4)の各同一式中で全てが水素になることはない。一般式(3)中で示されるホスファイト系安定剤中のXは脂肪族鎖、芳香核を側鎖に有する脂肪族鎖、芳香核を鎖中に有する脂肪族鎖および前記鎖中に2個以上連続しない酸素原子を包含する鎖から成る群から選択された基を示す。また、k、qは1以上の整数、pは3以上の整数を示す。)
これらのホスファイト系安定剤のk、qの値は好ましくは1〜10である。k、qの値を1以上にすることで加熱時の揮発性が小さくなり、10以下にすることでセルロースアセテートプロピオネートとの相溶性が向上するため好ましい。また、また、pの値は3〜10が好ましい。pを3以上の値とすることで加熱時の揮発性が小さくなり、10以下にすることでセルロースアセテートプロピオネートとの相溶性が向上するため好ましい。
下記一般式(2)で表されるホスファイト系安定剤の具体例としては、下記式(5)〜(8)で表されるものが好ましい。
Figure 2009066767
Figure 2009066767
Figure 2009066767
Figure 2009066767
また、下記一般式(3)で表されるホスファイト系安定剤の具体例としては、下記式(9)(10)(11)で表されるものが好ましい。
Figure 2009066767
Figure 2009066767
Figure 2009066767
(ii)亜リン酸エステル系安定剤
亜リン酸エステル系安定剤は、例えばサイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
(iii)その他の安定剤
その他、弱有機酸、チオエーテル系化合物、エポキシ化合物等を安定剤として配合してもよい。
弱有機酸とは、pKaが1以上のものであり、本発明の作用を妨害せず、着色防止性、物性劣化防止性を有するものであれば特に限定されない。例えば酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
チオエーテル系化合物としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、パルミチルステアリルチオジプロピオネートが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
エポキシ化合物としては、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールAより誘導されるものが挙げられ、エピクロルヒドリンとグリセリンからの誘導体やビニルシクロヘキセンジオキサイドや3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレートの如き環状のものも用いることができる。また、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油や長鎖−α−オレフィンオキサイド類なども用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
溶融粘度は、プレート型レオメーター(例えばPhysica社製 MCR301型)を用いて、下記条件で測定できる。すなわち、プレートとして25mmφ平行板を用い、環状オレフィン系樹脂の測定温度260℃、ギャップ1mm、剪断速度0.01(/秒)(ほぼゼロに近い状態)とし、サンプルセット後5分後に環状オレフィン系樹脂の溶融粘度を測定する。
以下、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
(環状オレフィン系樹脂フィルムの製膜)
環状オレフィン系樹脂(TOPAS 6013、数平均分子量:7万、ポリプラスチック製)を、単軸スクリュー押出機(東芝機械製、スクリュー径:φ90mm、L/D:30、圧縮比:2.0、シリンダ内径D:90mm)により、押出温度230℃、ライン速度10m/分にて100μmの厚さのフィルムを作製した。
ミキシングエレメントとしてバリヤータイプのものを使用し、クリアランスを1.5mm、段数を1Dとした。また、第1濾過部60としてはメッシュ径が30μmの焼結フィルタを使用し、第2濾過部62としては、焼結繊維と焼結パウダを積層したリーフディスクフィルタ(濾過精度が5μm径)を使用した。
そして、製膜した環状オレフィン系樹脂フィルムのゲル状異物数を測定した。また、第1、第2濾過部における濾過圧、フィルタ寿命を測定した。ゲル状異物個数は、単位面積あたりの粒径20μm程度のゲル状異物を目視でカウントすることにより測定した。なお、総合評価は、以下の基準で行った。
◎…極めて良好(ゲル状異物個数が30個/m未満、且つフィルタ寿命が10日以上)
○…良好(ゲル状異物個数が30個/m以上100個/m未満、且つフィルタ寿命が7日以上10日未満)
△…製品上問題ないレベル(ゲル状異物個数が100個/m以上300個/m未満、又はフィルタ寿命が7日未満)
×…悪い(ゲル状異物個数が300個/m以上)
この結果を図8の表1に示す。
[実施例2〜4]
スクリュー圧縮比を表1のように変更した以外は、実施例1と同様とした。この結果を表1に示す。
[実施例5]
ミキシングエレメントをピンタイプに変更した以外は、実施例1と同様とした。この結果を表1に示す。
[実施例6、7]
ミキシングエレメントの各種条件を変更した以外は、実施例1と同様とした。この結果を表1に示す。
[実施例8、9]
第2濾過部62のフィルタを焼結繊維のみ、又は焼結パウダのみに変更した以外は、実施例1と同様とした。この結果を表1に示す。
[実施例10、11]
第1濾過部60のフィルタ、又は第2濾過部62のフィルタのいずれか一方を行わなかった以外は、実施例1と同様とした。この結果を表1に示す。
[比較例1、2]
スクリュー圧縮比を表1のように変更した以外は、実施例1と同様とした。この結果を表1に示す。
表1に示すように、スクリュー圧縮比を1.5〜3.5の範囲を満たす実施例1〜11では、いずれもゲル状異物の個数300個/m未満と少なく、良好な品質のフィルムが得られることがわかった。
これに対して、スクリュー圧縮比が上記範囲よりも高い比較例1では、ゲル状異物の個数が極めて多くなり、品質は悪化した。また、スクリュー圧縮比が上記範囲よりも低い比較例2では、十分に混練できておらず、未溶融部分が確認された。
また、ミキシングエレメントの段数が増加すると、1D〜3Dではゲル状異物が比較的少ないが、5Dでは増加することがわかった(実施例3、6、及び7)。ミキシングエレメントとしては、ピンタイプよりもバリヤータイプの方がゲル状異物少なかった(実施例5)。
また、第1濾過部60のフィルタ、第2濾過部62のフィルタの何れか一方でしか濾過しなかった場合、両方を用いて濾過した場合よりもゲル状異物が増加した(実施例1、10及び11)。同様に、下段フィルタにおいて、焼結繊維又は焼結パウダのいずれか一方でしか濾過しなかった場合も、両方とも使用した場合よりもゲル状異物が増加した(実施例1、8及び9)。
以上から、本発明を適用することで、フィルタ寿命の低下等の製造上の問題を起こすことなく、ゲル状異物を低減できることが確認できた。
本実施形態における環状オレフィン系樹脂フィルムの製造装置の構成を説明する説明図である。 図1における押出機の構成を示す概略図である。 図2における押出機のスクリューを示す概略図である。 本実施形態におけるバリヤータイプのミキシングエレメントを示す概略図である。 本実施形態におけるピンタイプのミキシングエレメントを示す概略図である。 本実施形態における第2濾過部の構成を示す断面模式図である。 図6のリーフディスクフィルタを説明する斜視図である。 本実施例の結果を示す表図である。
符号の説明
10…製造装置、12…環状オレフィン系樹脂フィルム、14…製膜工程部、16…縦延伸工程部、18…横延伸工程部、20…巻取工程部、22…押出機、24…ダイ、26…冷却ドラム、32…シリンダ、34…スクリュー軸、36、36’…スクリュー羽根、38…スクリュー、40…供給口、42…吐出口、44、44’…ミキシングエレメント、46…スクリュー溝、48…メインフライト、50…バリヤー、52…流入溝、54…流出溝、56…ミキシングピン、60…第1濾過部、62…第2濾過部、A…供給部、B…圧縮部、C…搬送計量部、D…シリンダ内径、L…シリンダ長さ

Claims (12)

  1. 環状オレフィン系樹脂を、シリンダ内にスクリューを備えた押出機により溶融し、該溶融樹脂を前記押出機から吐出してダイに供給すると共に、該ダイからシート状に溶融樹脂を押し出して冷却固化することによりフィルムを製造する環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法において、
    前記環状オレフィン系樹脂として230〜260℃における溶融粘度が500〜3000Pa・sである樹脂を用いると共に、前記押出機のスクリュー圧縮比を1.5〜3.5にすることを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  2. 前記スクリューに、ミキシングエレメントを備えたミキシングセクションが設けられると共に、
    前記シリンダ内径をDとしたとき、前記ミキシングセクションの押出方向の長さが1D以上3D以下であることを特徴とする請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記ミキシングエレメントの径方向先端と前記押出機のシリンダ内壁面との間隙は1〜2mmであることを特徴とする請求項2に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  4. 前記ミキシングエレメントが、バリヤータイプであることを特徴とする請求項2又は3に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  5. 前記押出機よりも下流側において、前記押出機から吐出された溶融樹脂中のゲル状異物を除去する第1の濾過工程と、
    前記第1の濾過工程において除去したよりも小さいゲル状異物を除去する第2の濾過工程と、
    を備えた2段濾過を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  6. 前記第1の濾過工程は、濾過精度30〜100μmのフィルタ濾材により前記溶融樹脂中のゲル状異物を除去し、
    前記第2の濾過工程は、濾過精度3〜50μmのリーフディスクフィルタにより前記ゲル状異物を除去することを特徴とする請求項5に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  7. 前記リーフディスクフィルタは、金属繊維の焼結体と粉状体の焼結体との積層構造を有することを特徴とする請求項6に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  8. 前記第2の濾過工程において、前記リーフディスクフィルタを通過する前記溶融樹脂の濾過圧を1MPa以上10MPa以下にすることを特徴とする請求項6又は7に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  9. 請求項1〜8の何れか1に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルム。
  10. 前記環状オレフィン系樹脂フィルムにおいて、粒径20μm以上のゲル状異物が10個/m以下であることを特徴とする請求項9に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
  11. 請求項10に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムを用いたことを特徴とする光学フィルム。
  12. シリンダ内にスクリューを備え、環状オレフィン系樹脂を溶融する押出機と、前記押出機よりも下流側に設けられ、前記押出機から吐出される溶融樹脂が供給されると共に、該溶融樹脂をシート状に押し出すダイと、前記ダイよりも下流側に設けられ、該シート状に押し出された溶融樹脂を冷却固化する冷却ドラムと、を備えた環状オレフィン系樹脂フィルムの製造装置において、
    前記押出機のスクリュー圧縮比が1.5〜3.5であることを特徴とする環状オレフィン系樹脂フィルムの製造装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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