本実施形態に係る積層延伸フィルムは、少なくとも、a層及びb層を有する積層延伸フィルムであって、積層延伸フィルムの全光線透過率が55〜85%であり、a層の内部には、空隙部が存在しており、a層の空隙部は、後述の測定法に従って測定される、一方向の平均長x1が30〜300μmであり、かつ、他方向の平均長y1が30〜300μmであることを特徴としている。以下、本実施形態に係る積層延伸フィルムについて詳述する。
なお、本明細書において、数値範囲の「〜」とは、以上と以下とを意味する。即ち、α〜βという表記は、α以上β以下、或いは、β以上α以下を意味し、範囲としてα及びβを含む。
[積層延伸フィルムの積層構成と物性]
本実施形態に係る積層延伸フィルムは、少なくとも、a層及びb層を備える積層構成を有している。本実施形態に係る積層延伸フィルムは、a層及びb層に加えて、さらに後述のc層などの他の層を有していてもよい。また、後述の通り、a層、b層、さらにc層などの各層は、それぞれ、単層であってもよいし、複層であってもよい。また、これらの層が複層である場合、複層に含まれる各層は、互いに隣接していてもよいし、間に他の層が積層されていてもよい。すなわち、本実施形態に係る積層延伸フィルムが、例えばa層が2層、b層が1層積層された構成を備えている場合の積層構成としては、a層/a層/b層がこの順に積層された積層構成、a層/b層/a層がこの順に積層された積層構成が挙げられる。なお、本実施形態に係る積層延伸フィルムがa層を2層以上有する場合、各a層をa1層、a2層、a3層等のように数字(番号)を付与することがあり、以下の各a層についても同様である。
本実施形態に係る積層延伸フィルムの積層構成の具体例としては、少なくともa層/b層が順に積層された積層構成;少なくともa層/b層/c層がこの順に積層された積層構成;少なくともb層/a層/c層がこの順に積層された積層構成;少なくともa層/a層/b層がこの順に積層された積層構成;少なくともa1層/b層/a2層がこの順に積層された積層構成などが挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る積層延伸フィルムの積層構成は、a層/b層/c層がこの順に積層された3層積層構成;b層/a層/c層がこの順に積層された3層積層構成;a1層/a2層/b層がこの順に積層された3層積層構成;a1層/b層/a2層がこの順に積層された3層積層構成が好ましく、b層/a層/c層がこの順に積層された3層積層構成がさらに好ましい。
本実施形態に係る積層延伸フィルムは、全光線透過率が55〜85%である。全光線透過率がこのような範囲にあることにより、積層延伸フィルムが半透明性を呈し、後述の空隙部との相乗効果により白さの不均一性に優れる。その結果、優れた紙様の質感(特に、和紙などの質感)が奏されやすくなる。優れた紙様の質感を奏する観点から、本実施形態に係る積層延伸フィルムの全光線透過率としては、好ましくは59〜78%であり、より好ましくは61〜76%であり、さらに好ましくは64〜74%である。積層延伸フィルムの全光線透過率は、それぞれ、例えば後述の積層延伸フィルムの製造方法を採用することによって、好適に上記範囲に設定することができる。本実施形態に係る積層延伸フィルムは、全光線透過率が55%以上であることにより、後述の空隙部に基づく白さの不均一性が目視にて確認しやすく、また、85%以下であることにより、透明性が高過ぎず、結果として、紙様の質感が好適に奏される。
また、本実施形態に係る積層延伸フィルムのヘーズは、特に制限されないが、積層延伸フィルムが半透明性を呈し、例えば紙様の質感が奏されやすくなる観点から、好ましくは30〜95%であり、より好ましくは45〜90%であり、さらに好ましくは50〜90%である。
本実施形態に係る積層延伸フィルムの全光線透過率を55〜85%とするためには、例えば、後述のa層を構成する樹脂の組成、融点、ガラス転移温度、a層及び/又はb層の厚さ、a層を構成する樹脂の混合方法、a層を形成する際の樹脂組成物の押出温度、延伸温度、延伸倍率、延伸速度などを調整する方法が挙げられる。
本発明において、積層延伸フィルムの全光線透過率は、JIS−K7361−1:1997の規定に、ヘーズは、JIS−K7136:2000の規定に準拠して測定される値であり、例えば日本電色工業株式会社製ヘーズメーターNDH−5000等を用いて測定することができる。全光線透過率及びヘーズについては、積層延伸フィルムの主面の任意の5箇所(無作為に選択した5箇所)について測定を行い、それぞれ平均値を積層延伸フィルムの全光線透過率及びヘーズとする。
本実施形態に係る積層延伸フィルムは、無機粒子などの無機物の脱落による包装物の汚染や、印刷用途での印刷版の汚れ、また、断裁時に切断面が荒れることや断裁刃の消耗が早い等の問題を防ぐために、灰分が、好ましくは積層延伸フィルムの全質量を基準に、1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。灰分の下限値は、特に制限されないが、少ないほど好ましく、例えば0.01質量%、0質量%等である。本発明では、灰分は、JIS K 7250−1:2006のA法に準じて測定することができる。
本実施形態に係る積層延伸フィルムの厚み(総厚み)としては、その使用用途にもよるが、10〜150μmであることが好ましく、より好ましくは15〜100μm、さらに好ましくは20〜60μm、特に好ましくは25〜45μmであり、最も好ましくは25〜40μmである。積層延伸フィルムの厚みが10μm以上であると、十分な強度が得られやすい。また、積層延伸フィルムの厚みが150μm以下であると、延伸性や生産性に優れる。なお、積層延伸フィルムの厚み(総厚み)は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
[積層延伸フィルムの各層]
(a層)
a層は、その内部に所定の空隙部を有する層である。限定的な解釈を望むものではないが、少なくともa層とb層を備える本実施形態に係る積層延伸フィルムにおいては、a層が所定の空隙部を備えていることにより、空隙1個あたりの、空隙部とその周囲の樹脂との屈折率差による光の散乱の強度が大きくなり、その周囲の樹脂との光の散乱の強度との差が顕著になることによって、白さの不均一性が優れるため、本実施形態に係る積層延伸フィルムが、白さの不均一性に優れ、かつ、a層に加えてb層を備えていることによる製造工程における破断が生じ難い(即ち優れた生産性を有する)積層延伸フィルムとなっていると考えられる。
a層の空隙部は、下記の測定法に従って測定される一方向の平均長x1が、30〜300μmであり、かつ、他方向の平均長y1が、30〜300μmであることを特徴としている。x1及び/又はy1が30μm以上であることにより、空隙1個あたりの、空隙部とその周囲の樹脂との屈折率差による光の散乱の強度が十分となり、その周囲の樹脂との光の散乱の強度の差が大きくなることによって、優れた白さの不均一性が発揮され、x1及び/又はy1が300μm以下であることにより、製造工程における破断が生じ難くなる。
<空隙部の平均長x1の測定法>
a層の厚み方向とは垂直方向である一方向に沿って、積層延伸フィルムをa層の厚み方向に切断して、a層の厚み方向の断面Xを露出させる。次に、断面Xを走査型電子顕微鏡で観察し、1つの視野内に空隙部が20〜50個含まれるように、観察倍率を調整して断面Xの画像を取得する。この際、断面Xの画像のスケールを用いて、画像の1ピクセル当たりの長さを計算する。次に、当該画像中に観察される空隙部のうち、前記一方向のピクセル数を測定し、1ピクセル当たりの長さをかけることによって前記一方向の長さとする。このうち、長さが大きい順に10個の空隙部について、前記一方向の長さの平均値を算出する。積層延伸フィルムの任意の3箇所で切断、画像取得、測定及び算出を行い、当該3箇所での平均値を平均して、一方向の平均長x1とする。
<空隙部の平均長y1の測定法>
a層の厚み方向とは垂直方向であり、かつ、前記一方向とも垂直方向である他方向に沿って、積層延伸フィルムをa層の厚み方向に切断して、a層の厚み方向の断面Yを露出させる。次に、断面Yを走査型電子顕微鏡で観察し、1つの視野内に空隙部が20〜50個含まれるように、観察倍率を調整して断面Yの画像を取得する。この際、断面Yの画像のスケールを用いて、画像の1ピクセル当たりの長さを計算する。次に、当該画像中に観察される空隙部のうち、前記他方向のピクセル数を測定し、1ピクセル当たりの長さをかけることによって前記他方向の長さとする。このうち、長さが大きい順に10個の空隙部について、前記他方向の長さの平均値を算出する。積層延伸フィルムの任意の3箇所で切断、画像取得、測定及び算出を行い、当該3箇所での平均値を平均して、他方向の平均長y1とする。
空隙部の平均長x1の測定に関して、前記の一方向とは、a層の厚み方向とは垂直方向であれば、特に制限されず、任意の一方向を選択することができるが、好ましくは積層延伸フィルムの縦方向(すなわち、MD(Machine Direction)の方向。流れ方向、長手方向等と称されることもある。)を一方向とすることが好ましい。また、空隙部の平均長y1の測定に関して、前記の他方向とは、a層の厚み方向とは垂直方向であり、かつ、前記の一方向とも垂直方向であればよいが、前記の一方向として積層延伸フィルムの縦方向(MDの方向)を選択すれば、他方向は、積層延伸フィルムの横方向(TD(Transverse Direction)の方向。幅方向等と称されることもある。)となる。例えば、積層延伸フィルムが、縦方向と横方向に2軸延伸されたものである場合には、延伸時に空隙部の形状も形成されるため、空隙部の平均長x1及び平均長y1は、それぞれ、積層延伸フィルムの縦方向(MDの方向)及び横方向(TDの方向)に沿った長さとすることが好適である。なお、本実施形態に係る積層延伸フィルムにおいては、少なくとも1つの前記一方向と、これに垂直な1つの前記他方向について、空隙部の平均長x1,y1を測定した場合に、当該所定の空隙部を有していればよく、複数の一方向及び他方向について空隙部の平均長x1,y1を測定した場合に、全ての場合に当該所定の空隙部を有している必要はない。
空隙部の平均長x1及び平均長y1の具体的な測定は、それぞれ、実施例に記載の方法によって行うことができる。
白さの不均一性をより一層向上させつつ、積層延伸フィルムの製造工程における破断を抑制する観点から、a層の空隙部の平均長x1は、好ましくは40〜250μmであり、より好ましくは45〜230μmであり、さらに好ましくは50〜200μmである。a層が1層である場合は、x1が100〜200μmであることが特に好ましく、a層が2層以上である場合は、x1が50〜100μmであることが特に好ましい。同様の観点から、a層の空隙部の平均長y1は、好ましくは40〜250μmであり、より好ましくは45〜230μmであり、さらに好ましくは50〜200μmである。a層が1層である場合はy1が100〜200μmであることが特に好ましく、a層が2層以上である場合はy1が50〜100μmであることが特に好ましい。a層の空隙部の平均長x1,y1は、それぞれ、例えば後述の積層延伸フィルムの製造方法(後述のa層を構成する樹脂の組成、融点、ガラス転移温度、a層およびb層の厚さ、a層を構成する樹脂の混合方法、a層を形成する際の樹脂の押出温度、延伸温度、延伸倍率、延伸速度など)を採用することによって、好適に上記範囲に設定することができる。
また、白さの不均一性をより一層向上させつつ、積層延伸フィルムの製造工程における破断を抑制する観点から、a層の空隙部の厚み方向の平均長zは、好ましくは0.5〜6μmであり、より好ましくは1〜5μmである。a層の空隙部の平均長zは、例えば後述の積層延伸フィルムの製造方法(後述のa層を構成する樹脂の組成、融点、ガラス転移温度、a層およびb層の厚さ、a層を構成する樹脂の混合方法、a層を形成する際の樹脂の押出温度、延伸温度、延伸倍率、延伸速度など)を採用することによって、好適に上記範囲に設定することができる。a層の空隙部の厚み方向の平均長zの測定方法は、以下の通りである。
<空隙部の厚み方向の平均長zの測定法>
a層の空隙部の平均長x1及びy1の測定において、それぞれ、前記の一方向及び他方向の長さが大きい順に10個の空隙部を選択する。次に、これらの空隙部について、それぞれ、a層の厚み方向の長さを測定して平均値を算出する。この平均値の算出を、a層の空隙部の平均長x1及びy1の測定と同じく、積層延伸フィルムについて、それぞれ任意の3箇所(無作為に選択した3箇所)で前記の切断、画像取得、測定及び算出を行い、合計6箇所(一方向について3箇所、他方向について3箇所)での平均値を平均して、a層の空隙部の厚み方向の平均長zとする。
a層の内部に上記所定の空隙部を形成して、白さの不均一性をより一層向上させつつ、積層延伸フィルムの製造工程における破断を抑制する観点から、a層は、融点が150℃以上の結晶性熱可塑性樹脂Aと、結晶性熱可塑性樹脂Aとは非相溶である熱可塑性樹脂Bとを含有することが好ましい。これにより、結晶性熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとの屈折率差や、空隙部とこれらの樹脂との屈折率差により、積層延伸フィルムの透過率が低下する。さらに、結晶性熱可塑性樹脂Aと、結晶性熱可塑性樹脂Aとは非相溶である熱可塑性樹脂Bとの界面において、a層を形成する際の延伸時に上記所定の空隙部が好適に形成されやすい。
本発明において、結晶性とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素流下、−40℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持し、20℃/分で−40℃まで冷却し、−40℃で5分間保持した後、再び20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線に明確な溶融ピークが現れることをいう。一方、非晶性とは、DSCを用いた上記測定において明確な溶融ピークが現れないことをいう。これらの基準に基づいて、樹脂の結晶性及び非晶性を判断することができる。
結晶性熱可塑性樹脂Aの融点は、a層の内部に上記所定の空隙部を好適に形成する観点から、好ましくは150〜175℃であり、より好ましくは152〜170℃であり、さらに好ましくは154〜168℃であり、特に好ましくは155〜165℃である。
結晶性熱可塑性樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は、50℃以下が好ましく、−30℃〜30℃がより好ましい。これにより、延伸によってa層を形成する際に、結晶性熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとの界面に所定の空隙部が形成され易くなる。また、延伸フィルムの生産性や得られる積層延伸フィルムの耐熱性、柔軟性、低温もろさ等が良好となる。
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂Aの融点およびガラス転移温度(Tg)は、それぞれ、例えばパーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSCを用いて測定することができる。
結晶性熱可塑性樹脂Aの、230℃および2.16kgにおけるメルトマスフローレイト(以下、MFRとも記載する)は、好ましくは0.5〜10g/10分、より好ましくは1〜8g/10分、さらに好ましくは2〜6g/10分、特に好ましくは2.5〜6g/10分である。メルトマスフローレイトを上記範囲内とすることで、樹脂の流動性が適度な範囲となり、本実施形態に係る積層延伸フィルムを、精度良い厚みで作製することができる。また、結晶性熱可塑性樹脂A中で熱可塑性樹脂Bの微細分散物の大きさを制御し易くなり、所望の空隙部が形成され易く、かつ所望の全光線透過率が得られやすくなる。なお、熱可塑性樹脂Bの微細分散物自体は、中空状態ではなく中実状態(又は非中空状態ともいう)である。
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂Aのメルトマスフローレイトは、JIS K 7210:1999(A法)の規定に準拠して準拠した値であり、例えば株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサを用いて測定することができる。
結晶性熱可塑性樹脂Aは、融点が150℃以上である結晶性の熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、結晶性ポリオレフィン系樹脂、結晶性アセタール系樹脂、結晶性ポリエステル系樹脂、および結晶性ポリアミド系樹脂のうち、融点が150℃以上であるもの等が挙げられる。これらを単独でまたは、後述の非相溶の樹脂でなければ、2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、結晶性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、とりわけ、上述の結晶性熱可塑性樹脂Aの融点を示す結晶性ポリオレフィン系樹脂が、延伸性に優れ、適当なフィルム延伸温度で所望の全光線透過率や空隙部を有する積層延伸フィルムが得られ易くなるため好ましい。
結晶性ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等を単量体とする単独重合体または共重合体等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上の混合物として用いることができる。これらのなかでも、結晶性ポリプロピレン系樹脂が好ましく、特に、結晶性プロピレン単独重合体および結晶性のプロピレンとエチレンとの共重合体(以下、結晶性プロピレン−エチレン共重合体ともいう)からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。結晶性熱可塑性樹脂Aに結晶性プロピレン単独重合体(結晶性ポリプロピレン単独重合体)を用いる場合、積層延伸フィルムの機械強度や耐熱性が向上しやすい傾向がある。結晶性熱可塑性樹脂Aに結晶性プロピレン−エチレン共重合体を用いる場合、積層延伸フィルムの低温での折り割れ性が良化し、かつ表面光沢度を下げやすい傾向がある。
結晶性熱可塑性樹脂Aは、結晶性プロピレン単独重合体のみを使用したり、結晶性プロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン等との共重合体および/または他の重合体との混合物を使用したり、プロピレンとエチレン等との共重合体および/または他の重合体のみを使用したりすることができる。また、結晶性熱可塑性樹脂Aは、要求される品質に応じて、樹脂の種類を使い分けることもできる。上記他の重合体は、結晶性熱可塑性樹脂Aとして用いることができる任意の重合体であってよく、上述の結晶性プロピレン単独重合体およびプロピレンとエチレン等との共重合体以外の、結晶性ポリオレフィン系樹脂、結晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリアミド系樹脂、結晶性アセタール系樹脂等であってよい。結晶性熱可塑性樹脂Aとして、結晶性プロピレン単独重合体と結晶性プロピレン−エチレン共重合体との2成分を組み合わせて使用してもよい。この場合、結晶性プロピレン単独重合体と結晶性プロピレン−エチレン共重合体との好ましい質量比率は、結晶性プロピレン単独重合体(P1):結晶性プロピレン−エチレン共重合体(P2)=90:10〜99.5:0.5であり、より好ましい質量比率はP1:P2=93:7〜99:1であり、さらに好ましい質量比率はP1:P2=95:5〜97:3である。
結晶性プロピレン単独重合体としては、結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂が好ましい。本発明では、結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂は、好ましくは、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって求められる立体規則性度であるメソペンタッド分率([mmmm])が、好ましくは90〜98%であり、より好ましくは92〜97%である。メソペンタッド分率[mmmm]が90%以上であると、高い立体規則性成分により樹脂の結晶性が向上し、高い熱安定性、機械強度が得られる。また、前述の空隙部を大きくし易い傾向、全光線透過率を高くし易い傾向がある。一方、メソペンタッド分率[mmmm]を好ましくは98%以下とすることで、延伸性が良好となる。また、前述の空隙部を小さくし易い傾向、全光線透過率を低くし易い傾向がある。
上記メソペンタッド分率([mmmm])を測定するための高温NMR装置には、特に制限はなく、ポリオレフィン類の立体規則性度が測定可能な一般に市販されている高温型核磁気共鳴(NMR)装置、例えば日本電子株式会社製高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)JNM−ECP500を用いることができる。観測核は13C(125MHz)であり、測定温度は135℃、溶媒にはオルト−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(体積混合比=4/1))が用いられる。高温NMRによる方法は、公知の方法、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、610頁」に記載の方法により行うことができる。測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔5.5sec、積算回数4500回、シフト基準はCH3(mmmm)=21.7ppmとされる。
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrm等)に由来する各シグナルの強度積分値より百分率で算出される。mmmmやmrrm等に由来する各シグナルの帰属に関し、例えば「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等のスペクトルの記載が参照される。上記メソペンタッド分率([mmmm])は、ポリプロピレン樹脂の重合条件や触媒の種類、触媒量等の重合条件を、適宜調整することによってコントロールすることができる。
結晶性プロピレン単独重合体としては、公知の方法、例えばチタン、アルミニウム化合物からなるチーグラー触媒系を用い、炭化水素溶媒中でプロピレンを重合する方法、液状プロピレン中で重合する方法(バルク重合)、気相で重合する方法等により製造したものを用いることができる。また、市販の生成物を用いることもできる。代表的な市販品としては、例えば株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)シリーズのうち単独重合体のもの、サンアロマー株式会社製のPC412A等、日本ポリプロ株式会社製のノバテック(登録商標)シリーズのうち単独重合体のもの、Borealis社製Daployシリーズ、大韓油化工業株式会社製5014Lシリーズ、住友化学株式会社製の住友ノーブレン(登録商標)シリーズのうち単独重合体のもの等が挙げられる。
結晶性のプロピレンとエチレンとの共重合体としては、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体がいずれも好ましく用いられ、エチレン50質量%以下を共重合体中に含有するものがより好ましい。代表的な市販品としては、例えば株式会社プライムポリマー社製プライムポリプロ(登録商標)シリーズのうち共重合体のもの、日本ポリプロ株式会社製のノバテック(登録商標)シリーズのうち共重合体のものおよびウィンテック(登録商標)シリーズ、住友化学株式会社製の住友ノーブレン(登録商標)シリーズのうち共重合体のもの等が挙げられる。
結晶性ポリアミド系樹脂としては、開環重合系脂肪族ポリアミド、アミド系エラストマー等が挙げられ、例えばナイロン12(PA12)のうち150℃以上の融点を有するもの等を用いることができる。結晶性ポリアミド系樹脂は、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
結晶性アセタール系樹脂としては、ポリオキシメチレン樹脂、ポリオキシエチレン樹脂等の単独重合体、これらの共重合体等が挙げられる。結晶性アセタール系樹脂は、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
a層において、結晶性熱可塑性樹脂Aは、a層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上、さらに一層好ましくは85質量%以上、特に好ましくは86質量%以上の量で用いることができる。また、結晶性熱可塑性樹脂Aは、a層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97.5質量%以下、さらに好ましくは96質量%以下、さらに一層好ましくは94質量%以下、特に好ましくは93質量%以下の量で用いることができる。例えば結晶性熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとを含有するa層が2層以上の複層である場合、結晶性熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとを含有する層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、それぞれの層において、結晶性熱可塑性樹脂Aの質量%が上記範囲内となることが好ましい。結晶性熱可塑性樹脂Aを上記範囲で用いることにより、延伸性や機械強度に優れた積層延伸フィルムが得られやすくなる。また、a層に上記所定の空隙部を形成しやすくなる。
熱可塑性樹脂Bは、前記の結晶性熱可塑性樹脂Aとは非相溶であり、熱可塑性を備える樹脂である。
熱可塑性樹脂Bが、結晶性熱可塑性樹脂Aとは非相溶であるとは、結晶性熱可塑性樹脂Aに対して熱可塑性樹脂Bを混合した際に、熱可塑性樹脂Bの混合割合が増加すると、ヘーズが上昇するものであることを意味する。熱可塑性樹脂Bは、例えば、結晶性熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとを質量比1:1で混合したものを厚み100μmのシート状に押出成形した場合に、そのヘーズが20%以上となるものであることが好ましい。
熱可塑性樹脂Bは、非晶性であることが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂Bは、上述のDSC測定において、融点は確認されないが、ガラス転移温度(Tg)は確認される熱可塑性樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度(Tg)としては、好ましくは220℃以下であり、より好ましくは190℃以下であり、さらに好ましくは185℃以下である。また、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度は、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは135℃以上であり、さらに一層好ましくは150℃以上であり、特段好ましくは155℃以上であり、特に一層好ましくは170℃以上である。熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度が上記範囲内であれば、a層の延伸の際に、結晶性熱可塑性樹脂Aと、熱可塑性樹脂Bとの界面において、上記所定の空隙部が形成され易いため好ましい。
本発明において、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度(Tg)は、例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSCを用いて測定することができる。
熱可塑性樹脂Bは、260℃および2.16kgにおけるメルトマスフローレイトが、好ましくは0.1〜15g/10分、より好ましくは0.5〜13g/10分、さらに好ましくは1〜11g/10分であると、結晶性熱可塑性樹脂Aとの混合および分散性に優れ、所望の全光線透過率の範囲の半透明性が得られ易く好ましい。また、a層の内部に上記所定の空隙部が形成されやすい。
本発明において、熱可塑性樹脂Bのメルトマスフローレイトは、JIS K 7210:1999(A法)の規定に準拠し、ただし260℃および2.16kgの条件で測定される値であり、例えば株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサを用いて測定することができる。
熱可塑性樹脂Bとしては、環状オレフィンと直鎖オレフィンとの共重合体等の非晶性環状オレフィン共重合体、共重合したポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエン等のような直鎖状、分岐状または環状のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、フッ素系樹脂等を例示することができる。これらのなかでも、共重合するモノマー種が多様であり、モノマー種による材料物性の調整が容易であることから、非晶性環状オレフィン共重合体、共重合したポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、またはこれらの混合物等が好ましい。特に非晶性環状オレフィン共重合体を用いた場合には、上記所定の空隙部が形成されやすく、さらに好適な全光線透過率が得られるため好ましい。その理由は必ずしも定かではないが、非晶性環状オレフィン共重合体は、溶融密度と固体密度の密度比が小さく、溶融押出から冷却までの過程における樹脂収縮性が結晶性熱可塑性樹脂Aとは大きく異なるため、上記所定の空隙部が形成されやすいと推測される。
熱可塑性樹脂Bとしては、これらの樹脂を単独で使用してもよく、また2種以上の熱可塑性樹脂Bを併用することもできる。
非晶性環状オレフィン共重合体とは、シクロアルケン、ビシクロアルケン、トリシクロアルケン、およびテトラシクロアルケンからなる群から選択される少なくとも1種の環状オレフィンと、エチレンおよびプロピレン等の直鎖オレフィンとからなる共重合体である。
環状オレフィンとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、1−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−i−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、7−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン、2−メチル−トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン、5−メチル−トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン、トリシクロ[4.4.0.12.5]−3−デセン、10−メチル−トリシクロ[4.4.0.12.5]−3−デセン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、およびそれらの誘導体等を例示することができる。
非晶性環状オレフィン共重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば、環状オレフィン共重合体中の環状オレフィン成分の含有量を多くし、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量を少なくすることにより、上記範囲内に調節することができる。好ましくは、環状オレフィン成分の含有量は70〜90質量%であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量は30〜10質量%である。より好ましくは、環状オレフィン成分の含有量は75〜85質量%であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量は25〜15質量%である。さらに好ましくは、環状オレフィン成分の含有量は77〜83質量%であり、エチレン等の直鎖オレフィン成分の含有量は23〜17質量%である。
環状オレフィンとしては、生産性、透明性および容易な高Tg化の観点から、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンともノルボルネンともいう)およびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセンともいう)およびその誘導体が好ましい。直鎖オレフィン成分としては、反応性の観点から、エチレン、プロピレン、及び1−ブテンからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましく、エチレンがより好ましい。
また、環状オレフィンおよび直鎖オレフィンの他に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、他の共重合可能な不飽和単量体成分を共重合させることもできる。そのような他の共重合可能な不飽和単量体は、分子量調整剤として作用してよく、その例として、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の3〜20個の炭素原子を有するα−オレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルシクロヘキセン、シクロオクテン、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネル、テトラシクロドデセン、2−メチルテトラシクロドデセン、2−エチルテトラシクロドデセン等を挙げることができる。
さらに、熱可塑性樹脂Bとして、非晶性環状オレフィン共重合体の水素添加物を使用することもできる。向上した耐熱劣化性および耐候劣化性がもたらされることから、二重結合のほぼ全てが水素添加により飽和された水素添加物が好ましい。水素添加物の水素添加率は、好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上である。
熱可塑性樹脂Bは市販されているものを用いてもよい。代表的な市販品としては、例えば、Topas Advanced Polymers GmbH製トパス(登録商標)6015S−04、6017S−04、6013M−07等、三井化学株式会社製アペル(登録商標)APL6015T、JSR株式会社製JSR ARTON(登録商標)F4520等が挙げられる。
熱可塑性樹脂Bは、a層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%以上の量で用いることができる。また、熱可塑性樹脂Bは、a層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3.5質量%以下の量で用いることができる。また、熱可塑性樹脂Bの含有量は、結晶性熱可塑性樹脂A100質量部に対して、好ましくは1〜12.5質量部、より好ましくは2〜9質量部、より好ましくは3〜6質量部である。熱可塑性樹脂Bを上記範囲で用いることにより、上記所定の空隙部が形成され易く、白さの不均一性をより一層向上させつつ、積層延伸フィルムの製造工程における破断がより好適に抑制される。
a層の樹脂成分としては、結晶性熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bの2成分とすることができる。また、a層の樹脂成分は、結晶性熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bに加えて、190℃及び2.16kgにおけるメルトマスフローレイトが1.0g/10分以下の結晶性熱可塑性樹脂Cを樹脂成分としてさらに含有することができる(即ち、結晶性熱可塑性樹脂Cの含有量は、a層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、0質量%であってもよく、また0質量%を超えていてもよい)。a層が、結晶性熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bに加えて結晶性熱可塑性樹脂Cを含有する場合、上記所定の空隙部が形成されやすく、紙の地合いのような白さの不均一性がさらに得られやすくなり、その結果、本実施形態に係る積層延伸フィルムを紙の代替として使用しやすくなる。また、本実施形態に係る積層延伸フィルムの製造工程における破断についても効果的に抑制し得る。
結晶性熱可塑性樹脂Cは、190℃及び2.16kgにおけるメルトマスフローレイトが、好ましくは0.7g/10分以下、より好ましくは0.5g/10分以下であり、さらに好ましくは0.02〜0.5g/10分であり、特に好ましくは0.1〜0.5g/10分である。メルトマスフローレイトが上記範囲内である場合、上記所定の空隙部が形成され易い。
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂Cのメルトマスフローレイトは、JIS K 7210:1999(A法)の規定に準拠して測定される値であり、例えば株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサを用いて測定することができる。
結晶性熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bと共に、結晶性熱可塑性樹脂Cを配合することによって、上記の所定の空隙部を好適に形成する観点から、結晶性熱可塑性樹脂Cの融点は、好ましくは100〜160℃であり、より好ましくは102〜145℃であり、さらに好ましくは105〜140℃である。
また、同様の観点から、結晶性熱可塑性樹脂Cのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−150〜−80℃であり、より好ましくは−140〜−90℃であり、さらに好ましくは−130〜−100℃である。
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂Cの融点は、例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSCを用いて測定することができる。
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂Cのガラス転移温度(Tg)は、例えば、NETZSCH社製DSC 200 F3 Maiaを用いて測定することができる。
結晶性熱可塑性樹脂Cとしては、例えば、結晶性ポリエチレン系樹脂、結晶性ポリプロピレン系樹脂、結晶性ポリスチレン系樹脂等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、結晶性熱可塑性樹脂Cとして結晶性ポリエチレン系樹脂を使用することが好ましく、結晶性熱可塑性樹脂Cが結晶性ポリエチレン系樹脂であることがより好ましい。
結晶性ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、及び低密度ポリエチレン(LDPE)からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましく、高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種がより好ましく、低密度ポリエチレンから選ばれた少なくとも一種、あるいは、高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンの二種の併用、であることがさらに好ましい。これにより光沢度および印刷適性を良好にし易く好ましい。ここで、高密度ポリエチレンとは、密度が0.942g・cm-3以上のポリエチレン(好ましくは、0.942g・cm-3以上0.965g・cm-3以下のポリエチレン)をいい、中密度ポリエチレンとは、密度が0.930g・cm-3以上0.942g・cm-3未満のポリエチレン(好ましくは、0.930g・cm-3以上0.941g・cm-3以下のポリエチレン)をいい、低密度ポリエチレンとは、0.910g・cm-3以上0.930g・cm-3未満(好ましくは、0.910g・cm-3以上0.929g・cm-3以下のポリエチレン)をいう。
本明細書において、低密度ポリエチレンは、直鎖状低密度ポリエチレンを包含する。直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数3〜20個のα−オレフィンから選択された1種以上のα−オレフィンとの共重合体であり、炭素数3〜20個のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、メタロセン触媒で重合され、従来触媒(チーグラー・ナッタ触媒)と比較してシャープな分子量分布を示す、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンを用いても良い。
結晶性熱可塑性樹脂Cは、市販されているものを用いてもよい。代表的な市販品としては、例えば、プライムポリマー株式会社製ハイゼックス(登録商標)7000F、ハイゼックス(登録商標)3300F、日本ポリプロ株式会社製のノバテック(登録商標)HF111K、ノバテック(登録商標)HE30、ノバテック(登録商標)LF280等が挙げられる。
結晶性熱可塑性樹脂Cがa層に含まれる場合、結晶性熱可塑性樹脂Cは、a層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上の量で用いることができる。また、結晶性熱可塑性樹脂Cは、a層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは13質量%以下の量で用いることができる。また、熱可塑性樹脂Cの含有量は、結晶性熱可塑性樹脂A100質量部に対して、好ましくは3〜50質量部であり、より好ましくは5〜35質量部であり、さらに好ましくは7〜25質量部であり、特に好ましくは10〜15質量部である。結晶性熱可塑性樹脂Cを上記範囲で用いることにより、上記所定の空隙部が形成され易く、白さの不均一性をより一層向上させつつ、積層延伸フィルムの製造工程における破断がより好適に抑制される。
a層において、結晶性熱可塑性樹脂Cを用いる場合、熱可塑性樹脂Bおよび結晶性熱可塑性樹脂Cの含有量の合計は、a層の樹脂成分の全質量を基準に、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは7〜30質量%であり、さらに好ましくは9〜25質量%であり、特に好ましくは10〜15質量%である。熱可塑性樹脂Bおよび結晶性熱可塑性樹脂Cの含有量の合計が上記範囲である場合、上記所定の空隙部が形成され易く、白さの不均一性をより一層向上させつつ、積層延伸フィルムの製造工程における破断がより好適に抑制される。
a層には、結晶性熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、および結晶性熱可塑性樹脂Cの他に、樹脂成分として、結晶性熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、および結晶性熱可塑性樹脂Cとは異なった融点やガラス転移温度(Tg)を示す結晶性樹脂および/または非晶性樹脂(以下、他の樹脂Rとも称する)を、延伸性の調整、低温耐衝撃性の調整、表面粗さの調整、剛度、強度、伸度等の各種物性の調整等を目的に、本発明の効果を損なわない範囲内で含有させてもよい。
他の樹脂Rとしては、特に限定されず、延伸フィルム用途に適したものとされる従来公知の樹脂を本発明においても適宜用いることができる。他の樹脂Rとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1−ペンテン)、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、およびそれらの共重合体樹脂、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等の、α−オレフィン同士の共重合体等が例示できる。また、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、およびそれらの共重合体、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体等のビニル単量体−ジエン単量体共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等のビニル単量体−ジエン単量体−ビニル単量体共重合体等が挙げられる。
a層に他の樹脂Rを含有する場合、このような他の樹脂Rの含有量は、a層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。他の樹脂Rの含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、0質量%、1質量%などである。
a層は、樹脂成分に加えて、必要に応じて、任意成分として、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、有機系および無機系滑剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤等が挙げられる。本発明の効果を損なわない範囲内の量で、このような添加剤を用いることができる。
なお、本実施形態に係る積層延伸フィルムは、炭酸カルシウム等の無機粒子を含有しなくても紙の質感を有する。よって、本発明の上記特徴を妨げないよう、a層中に無機粒子を、a層全質量の1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下又は0質量%(無機粒子を含有しない)等とすることが好ましい。このような実施形態では、無機粒子の脱落による汚染や、印刷用途での印刷版の汚れが無く、断裁時に切断面が荒れることや断裁刃の消耗が早い等の問題が抑制される。
熱安定剤および酸化防止剤の例としては、フェノール系、ヒンダードアミン系、ホスファイト系、ラクトン系、トコフェロール系の熱安定剤や酸化防止剤が例示される。さらに具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン株式会社製「Irganox(登録商標)1010」)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゼン(BASFジャパン株式会社製「Irganox(登録商標)1330」)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン株式会社製「Irgafos(登録商標)168」)等が挙げられる。これらのなかでも、フェノール系酸化防止剤系から選ばれた少なくとも1種あるいはそれらの組み合わせ、フェノール系とホスファイト系との組み合わせ、フェノール系とラクトン系との組み合わせ、およびフェノール系とホスファイト系とラクトン系との組み合わせが、積層延伸フィルムの化学的な安定性を付与する観点から好ましい。
滑剤の例としては、有機系滑剤および無機系滑剤が挙げられる。有機系滑剤として、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等脂肪族アミド、ラウリル酸ジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミン、脂肪族モノグリセライド、脂肪族ジグリセライド、シリコーン架橋ポリマーが挙げられる。また無機系滑剤として、シリカ、アルミナ等が挙げられる。印刷用途で、印刷版への滑剤の転写が少ないため印刷版を汚しにくい点で、有機系滑剤が好ましい。
塩素捕獲剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、金属石鹸類、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
帯電防止剤の例としては、アルキルメチルジベタイン、アルキルアミンジエタノール、アルキルアミンエタノールエステル、アルキルアミンジエタノールジエステル等が挙げられる。これらのうち2種類以上の帯電防止剤を併用しても良く、さらに脂肪族アルコールを併用しても良い。
それらのなかでも、ステアリルジエタノールアミンモノステアリン酸エステルとステアリルジエタノールアミンとを併用すると、帯電防止性能に優れ、印刷適性が向上することから好ましい。
帯電防止剤の代表的な市販品の例としては、花王株式会社製エレクトロストリッパーシリーズ等が挙げられる。
a層の厚み(総厚み)としては、上記所定の空隙部を有すれば、特に制限されないが、白さの不均一性をより一層向上させつつ、積層延伸フィルムの製造工程における破断を好適に抑制する観点から、下限については、好ましくは6μm以上、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは8μm以上、特に好ましくは9μm以上であり、上限については、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。なお、本実施形態に係る積層延伸フィルムにおいて、a層が複層により構成されている場合、複数のa層の厚みの合計が、上記の厚みとなればよい。複数のa層において、各a層の厚みについても、上記の範囲とすることができる。
(b層)
b層は、前記のa層と共に、本実施形態に係る積層延伸フィルムに積層されている層である。b層は、a層とは異なる層である。すなわち、b層は、上記の測定方法によって測定される、平均長x1が30〜300μmであり、かつ、他方向の平均長y1が30〜300μmである上記所定の空隙部を有していない。
b層は、a層が有する当該所定の条件を充足しない空隙部を有していてもよいし、実質的に空隙部を有していなくてもよい。b層が空隙部を有する場合、例えば上記の測定方法によって測定される、平均長x1が30μm未満であり、かつ、他方向の平均長y1が30μm未満である空隙部を有することが好ましい。すなわち、b層が空隙部を有する場合にも、その大きさは、a層が有する空隙部よりも相対的に小さいことが好ましい。
a層による白さの不均一性をより一層向上させつつ、製造工程における積層延伸フィルムの破断をより好適に抑制する観点から、b層は、融点が150℃以上の結晶性熱可塑性樹脂Aを含有することが好ましい。結晶性熱可塑性樹脂Aの詳細については、前記のa層について説明したとおりである。
b層において、結晶性熱可塑性樹脂Aの割合としては、b層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。b層において、結晶性熱可塑性樹脂Aの割合は、b層に含まれる樹脂成分の全質量を基準に、実質的に100質量%であってもよい。
b層は、樹脂成分に加えて、必要に応じて、任意成分として、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、a層で例示したものと同じものが例示される。
b層の厚み(総厚み)としては、特に制限されないが、a層による白さの不均一性をより一層向上させつつ、製造工程における積層延伸フィルムの破断をより好適に抑制する観点から、下限については、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、上限については、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下で、さらに好ましくは24μm以下ある。なお、本実施形態に係る積層延伸フィルムにおいて、b層が複層により構成されている場合、複数のb層の厚みの合計が、上記の厚みとなればよい。複数のb層において、各b層の厚みについても、上記の範囲とすることができる。
本実施形態に係る積層延伸フィルムにおいて、a層による白さの不均一性をより一層向上させつつ、製造工程における積層延伸フィルムの破断をより好適に抑制する観点から、b層の厚さに対する、a層の厚さの比(a層の厚さ/b層の厚さ)としては、下限については、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.55以上であり、上限については、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.7以下である。
また、前述の通り、本実施形態に係る積層延伸フィルムは、炭酸カルシウム等の無機粒子を含有しなくても紙の質感を有する。よって、本発明の上記特徴を妨げないよう、b層中に無機粒子を、b層全質量の1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下又は0質量%(無機粒子を含有しない)等とすることが好ましい。
a層による白さの不均一性をより一層向上させつつ、製造工程における積層延伸フィルムの破断をより好適に抑制する観点から、本実施形態に係る積層延伸フィルムにおいて、a層の一方の主面と、b層の一方の主面とは、互いに接面していることが好ましい。
本実施形態に係る積層延伸フィルムにおいて、少なくとも一方の表面は、a層又はb層によって構成されていることが好ましい。
(c層)
本実施形態に係る積層延伸フィルムにおいては、a層及びb層に加えて、さらにc層を備えていてもよい。c層は、a層とは異なる層である。すなわち、c層は、上記の測定方法によって測定される、平均長x1が30〜300μmであり、かつ、他方向の平均長y1が30〜300μmである空隙部を有していない。
c層は、例えば、ヒートシール性を備える層であることが好ましい。本実施形態に係る積層延伸フィルムの片面および/または両面に、ヒートシール性を有するc層を備えることにより、本実施形態に係る積層延伸フィルムを包装用途等に好適に使用することができる。
本実施形態に係る積層延伸フィルムがヒートシール性を有するc層を備える場合、少なくとも一方の表面が、a層又はb層によって構成されており、かつ、他方の表面がc層によって構成されていることが好ましい。
ヒートシール性を有するc層に用いる樹脂としては、例えば、融点が150℃未満の結晶性熱可塑性樹脂Dが挙げられる結晶性熱可塑性樹脂Dは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
結晶性熱可塑性樹脂Dの融点は、150℃未満であって、c層にヒートシール性を付与できれば特に制限されず、例えば、125℃以上150℃未満、好ましくは127〜148℃であり、より好ましくは130〜145℃である。
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂Dの融点は、例えば、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSCを用いて測定することができる。
結晶性熱可塑性樹脂Dの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン等の炭素原子数が2〜10のα−オレフィン系モノマーからなる群から選択された2種以上のランダム共重合体またはブロック共重合体が好ましい。これらの共重合体は単独で、または混合して使用することができる。
結晶性熱可塑性樹脂Dとして特に好ましいのは、結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、α−オレフィンとしてはエチレンまたは炭素原子数が4〜20のα−オレフィン等が挙げられ、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を用いることが好ましく、エチレンもしくはブチレンを用いたコポリマーもしくはターポリマーを用いることが特に好ましい。例えば、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体(住友化学工業株式会社製FL6741G)が好ましい。c層には本発明の効果を損なわない範囲内で、アクリル樹脂系微粒子やシリカ等のブロッキング防止剤を併用してよい。
c層の厚み(総厚み)としては、特に制限されないが、c層にヒートシール性を付与する観点などから、下限については、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、上限については、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下である。なお、本実施形態に係る積層延伸フィルムにおいて、c層が複層により構成されている場合、複数のc層の厚みの合計が、上記の厚みとなればよい。複数のc層において、各c層の厚みについても、上記の範囲とすることができる。
本実施形態に係る積層延伸フィルムは、白さの不均一性に優れているため、例えば、和紙などの紙の代替として好適に使用し得る。また、本実施形態に係る積層延伸フィルムがヒートシール性を有している場合には、食品包装用途に好ましく用いることができる。
本実施形態に係る積層延伸フィルムは、例えば、包装用、食品包装用、薬品包装用、装飾用、ラベル用、テープ用基材、印刷用基材、ポスター用紙、感熱紙基材、記録用紙基材等に好適に用いることができる。
本実施形態に係る積層延伸フィルムとしては、特に制限されないが、例えば、下記の[積層延伸フィルムの製造方法]の欄で示す方法によって製造することができる。
[積層延伸フィルムの製造方法]
次に、本実施形態に係る積層延伸フィルムの製造方法について説明する。本実施形態に係る積層延伸フィルムの製造方法によれば好適に上記本実施形態に係る積層延伸フィルムを得ることができる。但し、本実施形態に係る積層延伸フィルムの製造方法は、下記の製造方法に限定されない。
本実施形態に係る積層延伸フィルムは、少なくともa層とb層を構成する素材(樹脂組成物)をそれぞれ押し出し成形し、延伸を施すことによって製造することができる。前述の通り、本実施形態に係る積層延伸フィルムは、c層などの他の層を積層してもよい。なお、本実施形態に係る積層延伸フィルムにおいて、a層、b層、及びc層の詳細や、これらの積層構成などの詳細については、前述の通りである。
本実施形態に係る積層延伸フィルムの各層を構成する素材を押し出し成形する際には、素材をブレンド・溶融させて、押し出し成形可能な状態にする。素材をブレンド・溶融させる方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
ブレンド法としては、例えば、ドライブレンド法およびメルトブレンド法等が挙げられる。例えばa層を構成する樹脂組成物を調製する場合、ドライブレンド法では、樹脂ペレットや粉体(例えば、前述の結晶性熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、結晶性熱可塑性樹脂C、さらには樹脂Rなどのペレットや粉体)等を、必要に応じて添加剤と共に、タンブラーやミキサー等のバッチ式混合装置または連続計量式混合装置を用いてドライブレンドする。また、メルトブレンド法では、樹脂ペレットや粉体等を、必要に応じて添加剤と共に、混練機に供給し、溶融混練してメルトブレンド樹脂組成物を得る。b層、c層などの各層についても、それぞれの素材を同様にしてブレンドすることができる。ドライブレンド法よりもメルトブレンド法の方がa層の空隙部が小さくなる傾向があり、空隙部の大きさが所望のサイズとなるよう、ブレンド法を選択するのが好ましい。すなわち、ブレンド法の選択より、本実施形態に係る積層延伸フィルムの全光線透過率や、a層の空隙部の平均長x1,y1、さらには平均長zを前述の範囲に好適に設定し易くなる。
溶融混練に用いる混練機としては公知の混練機を使用できる。例えば、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、またはそれ以上の多軸スクリュータイプを用いることができる。さらに、2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のいずれのスクリュータイプの混錬機も用いることができる。本発明では、同方向回転の2軸スクリュータイプの混練機が、混錬時の原料の供給量とスクリュー回転数を調節して、延伸後のフィルムのa層の空隙部の大きさを制御し易いため好ましい。すなわち、当該混練機によって、積層延伸フィルムのa層の空隙部の平均長x1,y1、さらには平均長zを前述の範囲に好適に設定し易くなる。
例えば、2軸スクリュータイプの混錬機のスクリューは、必要に応じてニーディングディスク等の混合(分配)性および/又は混錬(分散)性が強い構造を有していても良い。混合性および/又は混錬性はニーディングディスク部の長さやスクリュー噛合率等により調節できる。1軸スクリュータイプの混錬機のスクリューは、必要に応じてマドック、ピンミキサー、パイナップル型ミキサー、ダルメージ、東芝機械(株)製ユニメルト(登録商標)、(株)日本製鋼所製メルター(登録商標)等の、混合性および/又は混錬性が強い構造を有していても良い。またスクリューは、ダブルフライトもしくはバリアフライト等と呼称される、主フライトと副フライトとが配されている、樹脂の未溶融物を減少させる効果のある構造を有しても良くまた好ましい。混合性および/又は混錬性は、これらスクリューの構造や長さ等により調節できる。混合性および/又は混錬性が良いと、a層の空隙部が小さくなる傾向があり、空隙部の大きさが所望のサイズとなるよう、スクリュータイプやスクリュー構造を選択することができる。
溶融混練の混練温度は、200〜260℃の範囲の温度が好ましく、210〜240℃の範囲の温度がより好ましい。混錬温度が高いとa層の空隙部が小さくなる傾向があり、混練温度によって、空隙部の大きさが所望のサイズとなるよう、混錬温度を調節することができる。すなわち、混練温度を調整することにより、得られる積層延伸フィルムのa層の空隙部の平均長x1,y1、さらには平均長zを前述の範囲に好適に設定し得る。溶融混練の際の樹脂の劣化防止のため、窒素等の不活性ガスでパージしてもよい。ここで、混錬温度は、混錬機のヒーターの温度であるが、複数のヒーターを用いて部分ごとに違う温度にする場合は、最も高い温度のものを混錬温度とする。
溶融混練された樹脂組成物は、一般的に公知の造粒機を用いて、ストランド状に押し出して、ホットカット、水中カット、ストランドカット等の処理により適当な大きさのペレットにしてから押出機に供給してもよく、溶融状態のまま配管を通じて押出機に供給しても良い。
上述の通り得られたドライブレンド樹脂組成物および/またはメルトブレンド樹脂組成物は、押出機に供給し、加熱溶融して、フィルター等により樹脂の未溶融物や粗大分散体、および異物等を除去した後、Tダイよりシート状に溶融押出することができる。フィルターの濾過精度は、1〜1000μmが好ましく、3〜500μmがより好ましく、5〜200μmがさらに好ましく、8〜100μmが特に好ましい。
押出機のスクリュータイプに制限は無く、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、またはそれ以上の多軸スクリュータイプを用いることができる。本発明では1軸スクリュータイプの押出機の方が、延伸時に前記所定の空隙部を好適に形成させ易いため好ましい。
押出機のスクリューは、必要に応じてマドック、ピンミキサー、パイナップル型ミキサー、ダルメージ、東芝機械(株)製ユニメルト(登録商標)、(株)日本製鋼所製メルター(登録商標)等の、混合性および/又は混錬性が強い構造を有していても良い。スクリューの混合性および/又は混錬性が良いとa層の空隙部が小さくなる傾向があり、空隙部の大きさが所望のサイズとなるよう、スクリュータイプやスクリュー構造を選択するのが好ましい。
スクリューは、JIS B 8650:2006に定義されるスクリュー圧縮比が2〜5の範囲であることが好ましく、2.5〜4.5の範囲であることがより好ましい。スクリュー圧縮比を2以上とすると、空隙部を小さくして破断を抑制する効果が高まり、スクリュー圧縮比を5以下とすることで、空隙部を大きくして白さの不均一性を得る効果が高まる。
スクリューは、ダブルフライトもしくはバリアフライト等と呼称される、主フライトと副フライトとが配されている、樹脂の未溶融物を減少させる効果のある構造を有しても良くまた好ましい。
押出機は、所定の大きさの空隙部を形成させ易くするため、JIS B 8650:2006に定義されるスクリューL/Dが22〜40の範囲であることが好ましく、25〜35の範囲であることがより好ましい。スクリューL/Dを22以上とすると、空隙系を小さくして破断を抑制する効果が高まり、スクリューL/Dを40以下とすることで、空隙部を大きくして白さの不均一性を得る効果が高まる。
押出時のスクリューの回転数が高いとa層の空隙部が小さくなる傾向があり、空隙部の大きさが所望のサイズとなるようなスクリュー回転数にて所望の押出量が得られるような押出量の押出機を使用するのが好ましい。
押出温度は、200〜260℃の範囲の温度が好ましく、210〜240℃の範囲の温度がより好ましい。押出温度が高いとa層の空隙部が小さくなる傾向があり、空隙部の大きさが所望のサイズとなるよう、押出温度を調節するのが好ましい。ここで押出温度は押出機のヒーターの温度であるが、複数のヒーターを用いて部分ごとに違う温度にする場合は、最も高い温度のものを押出温度とする。押出の際の樹脂の熱劣化防止のため、窒素等の不活性ガスでパージしてもよい。
積層フィルム(延伸に供する前の積層フィルム)を得るための積層方法は、従来公知の方法、例えば、共押出法、ラミネート法、ヒートシール法等を用いることができる。したがって、本実施形態に係る延伸積層フィルムは、例えば、少なくともa層及びb層を構成する素材をそれぞれ共押出して積層フィルムとし、これを延伸したものであってもよいし、少なくともa層及びb層を構成する素材の各無延伸フィルムを互いに貼り合わせて得られる多層無延伸フィルムを延伸したものであってもよい。
共押出法としては、溶融樹脂を金型手前のフィードブロック内で接触させるダイ前積層法、金型、例えばマルチマニホールドダイの内部の経路で接触させるダイ内積層法、同心円状の複数リップから吐出し接触させるダイ外積層法等が挙げられる。
共押出法において、各層の形成に用いる樹脂組成物の質量比率は、各層の厚み等に応じて適宜調整する。
本実施形態に係る延伸積層フィルムにおいては、例えばa層の形成において、結晶性熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを用いることにより、結晶性熱可塑性樹脂Aとは非相溶の熱可塑性樹脂Bが、結晶性熱可塑性樹脂A中で様々な大きさで分散した状態となり、後の延伸工程により熱可塑性樹脂Bの周囲に上記所定の空隙部を形成することができ、白さの不均一性に優れた積層延伸フィルムが得られ、かつ、製造工程における積層延伸フィルムの破断が好適に抑制される。
ラミネート法としては、Tダイ法に用いる溶融押出成型法の設備を使用し、溶融樹脂のフィルムを他のフィルム上に直接押し出して積層フィルムを成型する押出ラミネート法等が挙げられる。
ヒートシール法としては、貼り合わせた複数のフィルム(各層を形成するフィルム)に加熱した金属体をフィルム外部から押し当て、伝導した熱がフィルムを溶融させて接着する外部加熱法、および高周波の電波や超音波によってフィルムに熱を発生させ接合する内部発熱法等が挙げられる。
本発明では、上記の積層方法を単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。
また、例えばa層が2層以上の層から構成される場合、各a層を構成する素材は、それぞれ、同一であってもよいし、または異なっていてもよい。b層、c層についても、同様である。
押し出された樹脂シート(フィルム)は、例えば、25℃以上120℃未満の温度に設定した少なくとも1個以上の金属ドラム上に、エアナイフや他のロール、または静電気等により密着させるといった公知の方法によりシート状に成形され、原反シート(原反フィルム)となる。
白さの不均一性に優れた積層延伸フィルムとし、かつ、製造工程における積層延伸フィルムの破断を好適に抑制する観点から、金属ドラムのより好ましい温度は30〜100℃であり、さらに好ましい温度は40〜70℃である。
本実施形態に係る積層延伸フィルムを得るための延伸方法としては、周速差を設けたロール間で延伸する方法、テンター法、チューブラー法等公知の方法を用いることができる。延伸方向としては、一軸延伸、二軸延伸、斜め方向への二軸延伸等が可能であり、二軸以上の延伸では、逐次延伸および同時延伸がいずれも適用可能である。これらのうち、全光線透過率の均一なフィルムが得られ易い点から、テンター法による同時二軸延伸方法、テンター法による逐次二軸延伸方法、および周速差を設けたロール間で縦(流れ、MD)延伸した後テンター法にて横(巾、TD)延伸する逐次二軸延伸方法が好ましい。
例えば、a層についての延伸は、通常、フィルム温度(Ts)が、a層中に含まれる結晶性熱可塑性樹脂Aの融点Tm(A)とガラス転移温度Tg(A)との間の温度となるように行うことが好ましい。また、ここでフィルム温度Tsは、フィルムが延伸開始される時点のフィルムの温度であるが、逐次二軸延伸等の多段延伸において各段でのフィルム温度が異なる場合は、それらのうち最も低いフィルム温度をTsとする。
加えて、Tsがa層中に含まれる熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度Tg(B)以下であると、延伸時に熱可塑性樹脂Bが変形できず、結晶性熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとの界面間に好適に前記所定の空隙部を形成しやすくなり、白さの不均一性に優れた積層延伸フィルムが得られ、かつ、製造工程における積層延伸フィルムの破断が好適に抑制される。
本発明では、以下の関係式:
Tg(B)>Ts>Tg(A)
が満たされることにより、空隙部の大きさが好適となり、所望の全光線透過率および紙の地合いのような白さの不均一性を備えた、生産性の良い積層延伸フィルムが得られるため好ましく、
Tg(B)>Tm(A)>Ts>Tg(A)
が満たされることがさらに好ましい。
TsとTg(B)の差が大きいと空隙部は大きくなる傾向があり、Tsは好ましくはTg(B)より3〜60℃低いと、より好ましくはTg(B)より5℃〜50℃低いと、空隙部の大きさが好適となり、白さの不均一性と生産性の良い積層延伸フィルムが得られ易く好ましい。
逐次二軸延伸方法としては、使用する樹脂の融点およびガラス転移温度により延伸温度や延伸倍率を調整する必要があるが、まず、原反シートを好ましくは100〜180℃、より好ましくは120〜170℃のフィルム温度(Ts)に保ち、周速差を設けたロール間に通して、あるいはテンター法にて、縦方向に好ましくは2〜10倍、より好ましくは2.5〜8倍、さらに好ましくは3〜6倍に延伸する。引き続き、当該延伸フィルムをテンター法にて、好ましくは100〜180℃、より好ましくは120〜175℃のフィルム温度(Ts)で、横方向に好ましくは2〜12倍、より好ましくは2.5〜11.5倍、さらに好ましくは3〜11倍に延伸した後、緩和、熱セットを施し巻き取る。なお延伸時の温度を下げる、延伸倍率を上げる、あるいは延伸速度を上げると、空隙部の大きさが大きくなる傾向がある。所望のサイズとなるよう延伸温度、延伸倍率、延伸速度を適宜調節するのが好ましい。
積層フィルムを延伸することにより、a層中において、上記所定の空隙部を形成する。これにより、白さの不均一性に優れた積層延伸フィルムが得られ、かつ、製造工程における積層延伸フィルムの破断が好適に抑制される。なお、a層が結晶性熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを含んでいる場合、結晶性熱可塑性樹脂A中で分散している熱可塑性樹脂B自体は、中空状態ではなく中実状態(又は非中空状態ともいう)である。
巻き取られた積層延伸フィルムは、好ましくは20〜45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施した後、所望の製品幅に断裁することができる。こうして白さの不均一性に優れた積層延伸フィルムが得られ、かつ、製造工程における積層延伸フィルムの破断が好適に抑制される。
積層延伸フィルムには、オンラインもしくはオフラインにて、必要に応じてコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等を行うことができる。特に、積層延伸フィルムを印刷用途で使用する場合には、積層延伸フィルムの片面および/または両面に、印刷インキの濡れ広がりや密着性の改善等を目的に、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の処理を行うことが好ましい。本発明では、積層延伸フィルム表面のJIS K 6768:1999のぬれ張力が36〜45mN/mであると好ましく、38〜44mN/mであるとより好ましい。
あるいは、同様のぬれ張力を有し、さらに平滑性をも有する印刷適性付与層を本実施形態に係る積層延伸フィルムに設けてもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
[樹脂の融点及びガラス転移温度(Tg)]
DSC装置として、パーキン・エルマー社製入力補償型DSC、DiamondDSCを用い、以下の手順により樹脂の融点(mp)及びガラス転移温度測定した。各樹脂を5mg量り取り、アルミニウム製のサンプルホルダーに詰め、DSC装置にセットした。窒素流下、−40℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持し、20℃/分で−40℃まで冷却し、−40℃で5分間保持した。その後再び20℃/分で300℃まで昇温する際のDSC曲線より、樹脂の融点及びガラス転移温度を測定した。JIS K 7121:2012の9.1(1)に定める溶融ピーク(複数の溶融ピークを示す場合は最大の溶融ピーク)を融点とし、JIS K 7121:2012の9.3(1)に定める中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。なお−50℃以下のガラス転移温度の測定には、NETZSCH社製DSC 200 F3 Maiaを用いて、窒素流下、−150℃から0℃まで20℃/分の速度で昇温し、0℃で5分間保持し、20℃/分で−150℃まで冷却し、−150℃で5分間保持した。その後再び20℃/分で0℃まで昇温する際のDSC曲線より、樹脂のガラス転移温度を測定し、JIS K 7121:2012の9.3(1)に定める中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。表1中のmp及びTgの単位は℃である。
[樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)]
JIS K 7210:1999(A法)に準じて、ただし下記の温度および荷重にて、株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサを用いて樹脂のMFRを測定した。結晶性熱可塑性樹脂A,Dについては、測定温度230℃及び荷重2.16kgの条件で測定し、熱可塑性樹脂Bについては、測定温度260℃及び荷重2.16kgの条件で測定した。また、結晶性熱可塑性樹脂Cについては、測定温度190℃及び荷重2.16kgの条件で測定した。
[積層延伸フィルムの総厚み]
マイクロメーター(JIS B−7502:1994)を用いて、JIS K−7130:1999(A法)に準拠し、任意の10箇所(無作為に選択した10箇所)について、積層延伸フィルムの厚みを測定し、10箇所の厚みの平均値を、積層延伸フィルムの厚み(総厚み)とした。
[積層延伸フィルムの各層の厚み]
積層延伸フィルムの一部をサンプリングし、これをエポキシ樹脂にて包埋した。次に、積層延伸フィルムの厚み方向に、切片作製装置にて切削して、積層延伸フィルムの縦断面(MDの方向の断面)を露出させた。該縦断面を株式会社日立ハイテクノロジーズ社製走査電子顕微鏡S−3600Nを用いて倍率2000倍にて撮影し、スケールにて各層の厚み比率を計測した。そして、該比率と、上記で測定した積層延伸フィルムの総厚みとから、積層延伸フィルムの各層厚みを算出した。
[a層の空隙部の平均長x1及びy1の測定]
積層延伸フィルムの一部をサンプリングし、エポキシ樹脂にて包埋した。次に、切片作製装置にてa層の厚み方向に切削して、積層延伸フィルムの縦断面(MDの方向の断面)を露出させた。得られた縦断面(MDの方向)について、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製走査電子顕微鏡S−3600Nを用いて、1画面中に空隙部が20〜50個入るように、観察倍率(100〜5000倍)を調整し、縦断面(MDの方向)の画像を取得した。この際、縦断面の画像のスケールを用いて、画像の1ピクセル当たりの長さを計算した。次に、画像中に観察される各空隙部について、MDの方向のピクセル数を測定し、1ピクセル当たりの長さをかけることによってMDの方向の長さとした。次に、長さが大きい順に10個の空隙部のMDの方向の長さの平均値を算出した。積層延伸フィルムの任意の3箇所(無作為に選択した3箇所)で上記の切断、画像取得、測定及び算出を行い、当該3箇所での平均値を平均して、MDの方向の平均長x1とした。
また、a層の空隙部の平均長y1については、積層延伸フィルムの縦断面(MDの方向の断面)の代わりに、積層延伸フィルムの横断面(TDの方向の断面)の画像を同様にして取得し、当該画像中に観察される空隙部について、TDの方向の長さが大きい順に10個の空隙部のTDの方向の長さの平均値を算出し、さらに、積層延伸フィルムの任意の3箇所(無作為に選択した3箇所)で上記の切断、画像取得、測定及び算出を行い、当該3箇所での平均値を平均して、TDの方向の平均長y1とした。
[a層の空隙部の厚み方向の平均長zの測定]
a層の空隙部の平均長x1及びy1の測定において、それぞれ、MD,TDの方向の長さが大きい順に10個の空隙部を選択した。次に、これらの空隙部について、それぞれ、a層の厚み方向の長さを測定して平均値を算出した。この平均値の算出を、a層の空隙部の平均長x1及びy1の測定と同じく、積層延伸フィルムについて、それぞれ任意の3箇所(無作為に選択した3箇所)で上記の切断、画像取得、測定及び算出を行い、合計6箇所(縦方向3箇所、横方向3箇所)での平均値を平均して、a層の空隙部の厚み方向の平均長zとした。
[積層延伸フィルムの全光線透過率及びヘーズ]
日本電色工業株式会社製ヘーズメーターNDH−5000を用い、全光線透過率はJIS−K7361−1:1997の規定に、ヘーズはJIS−K7136:2000のの規定に準拠して、積層延伸フィルムの主面の任意の5箇所(無作為に選択した5箇所)について全光線透過率及びヘーズを測定し、平均値をそれぞれ積層延伸フィルムの全光線透過率及びヘーズとした。なお、実施例1〜6,8,9及び比較例1〜7,9については、a層側から測定し、実施例7及び比較例8については、b層側から測定した。
[白さの不均一性(10cm)]
床置き型の蛍光灯から5cm離れたところに積層延伸フィルムを配置し、積層延伸フィルムから10cm離れたところに立って目視観察した。白さの不均一性を、以下の基準に従って評価した。なお、実施例1〜6,8,9及び比較例1〜7,9については、a層側から観察し、実施例7及び比較例8については、b層側から観察した。
A:白さに大きな不均一性(ムラ)があり、紙の代替として好適に使用可能
B:白さに十分な不均一性(ムラ)があり、紙の代替として使用可能
C:白さの不均一性(ムラ)があり、紙の代替として使用可能
D:白さの不均一性(ムラ)が若干見られるが、紙の代替として不十分
E:白さの不均一性(ムラ)は見られず均一である
[白さの不均一性(100cm)]
床置き型の蛍光灯から5cm離れたところに積層延伸フィルムを配置し、積層延伸フィルムから100cm離れたところに立って目視観察した。白さの不均一性を、以下の基準に従って評価した。なお、実施例1〜6,8,9及び比較例1〜7,9については、a層側から観察し、実施例7及び比較例8については、b層側から観察した
A:白さに大きな不均一性(ムラ)があり、紙の代替として好適に使用可能
B:白さに十分な不均一性(ムラ)があり、紙の代替として使用可能
C:白さの不均一性(ムラ)があり、紙の代替として使用可能
D:白さの不均一性(ムラ)が若干見られるが、紙の代替として不十分
E:白さの不均一性(ムラ)は見られず均一である
[ヒートシール性]
23℃、50%RHの環境下において、MDの方向250mm、TDの方向50mmにカットした各積層延伸フィルム(実施例1〜7及び比較例1〜5、8)のサンプル2枚のヒートシール面(c層の表面)同士を重ね合わせた状態で、熱傾斜式ヒートシーラー HG−100−2(株式会社東洋精機製作所製)を用い、シール温度110℃、シール圧力200KPa、シール時間2秒、ヒートシール部の幅(積層延伸フィルムのMDの方向に相当)1cmの条件でヒートシール処理を行った。次いで23℃に調温したサンプルのTDの方向を25mmにカットした。その後、引張試験機 テクノグラフTGI−1kN(ミネベア株式会社製)を用いて、2枚の積層延伸フィルムのそれぞれの端部を上と下のチャックで挟み、引っ張り速度300mm/分で180°剥離した。その際の応力の最大値を測定した。上記測定3回の平均値をヒートシール部の接着強度(N/25mm)とした。ヒートシール性を、以下の基準に従って評価した。
A:4N以上〜6N未満:ヒートシール強度が適度であり、開封性に優れる。
B:6N以上〜8N未満:ヒートシール強度が若干強いが、実用可能な程度に開封性が良好である。
C:8N以上:ヒートシール強度が強く、開封に難あり。
D:4N未満:ヒートシール強度が弱く、実用不可である。
[延伸時の破断回数(10回)]
各実施例及び比較例において、延伸時に積層延伸フィルムが破断した割合(10回の製造において、延伸時に破断が発生した回数)を測定した。
[延伸時の破断回数(20回)]
各実施例及び比較例において、延伸時に積層延伸フィルムが破断した割合(20回の製造において、延伸時に破断が発生した回数)を測定した。
〔実施例1〕
a層の形成にあたり、結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SP(株式会社プライムポリマー製、結晶性ポリプロピレン単独重合体、MFR=3g/10分、融点160℃、ガラス転移温度−7℃)87質量部、熱可塑性樹脂BとしてTOPAS(登録商標)6017S−04(ポリプラスチックス株式会社製、非晶性ノルボルネン−エチレン共重合体、ガラス転移温度178℃、MFR=1.4g/10分)3質量部、結晶性熱可塑性樹脂Cとしてノバテック(登録商標)HE30(日本ポリエチレン株式会社製、結晶性ポリエチレン単独重合体、MFR=0.3g/10分、融点108℃、ガラス転移温度−120℃)10質量部をミキサーにてドライブレンドして、a層(空隙部を有する)用の原料を調製した。
b層の形成にあたり、結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SP100質量部を用いて、b層用の原料とした。
c層の形成にあたり、結晶性熱可塑性樹脂DとしてFL6741G(住友化学株式会社製、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、融点130℃)90質量部、及びタフマーXM7070(三井化学株式会社製、プロピレン−ブテン共重合体、融点75℃)10質量部をミキサーにてドライブレンドして、c層用の原料を調製した。
a層(空隙部を有する)用の原料を一軸スクリュータイプ押出機α(スクリューL/D=32)に、b層用の原料を一軸スクリュータイプ押出機β(スクリューL/D=32)に、c層用の原料を一軸スクリュータイプ押出機γ(スクリューL/D=32)にそれぞれホッパーから投入して230℃で溶融させ、これらを3層マルチマニホールドダイ内部にてa層/b層/c層が順に積層された3層積層樹脂層として押し出した。一軸スクリュータイプ押出機αと一軸スクリュータイプ押出機βと一軸スクリュータイプ押出機γの押出樹脂量の質量比率はα:β:γ=1:3.1:0.25とした。押し出された樹脂シートのc層側を、45℃に制御した冷却ドラム上にエアナイフを用い空気圧で押しつけながら冷却することにより樹脂シートを固化した。このようにして原反シートを得た。
得られた原反シートに対して、ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機KAROを用いて延伸を行った。延伸方法は、縦方向(MDの方向)に延伸した後、横方向(TDの方向)に延伸する逐次二軸延伸方法にて実施した。延伸倍率は、表1に記載のとおりである。設定温度158℃のオーブン内にてフィルム温度(Ts)を138℃まで予熱し、まず縦方向に延伸速度6倍/秒にて4.6倍まで延伸した。次いで同オーブン内にてフィルム温度(Ts)を141℃まで予熱し、横方向に延伸速度1倍/秒にて10倍まで延伸した。次いで同オーブン内にて、緩和速度0.5倍/秒にて横方向を9.0倍まで緩和し、次いで10秒間熱セットした後、オーブンより排出して室温へ冷却し、厚み35μmの積層延伸フィルムを得た。これにより、実施例1の積層延伸フィルムを得た。なお、各層の厚さは、a層が8μm、b層が25μm、c層が2μmであった。
[実施例2]
一軸スクリュータイプ押出機αと一軸スクリュータイプ押出機βと一軸スクリュータイプ押出機γの押出樹脂量の質量比率をα:β:γ=1:1.54:0.15とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層延伸フィルムを得た。なお、各層の厚さは、a層が13μm、b層が20μm、c層が2μmであった。
[実施例3]
結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SPを85質量部、熱可塑性樹脂BとしてTOPAS(登録商標)6017S−04を5質量部用いた以外は、実施例2と同様にして実施例3の積層延伸フィルムを得た。
[実施例4]
結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SPを77質量部、熱可塑性樹脂BとしてTOPAS(登録商標)6017S−04を3質量部、結晶性熱可塑性樹脂Cとして、ノバテック(登録商標)HE30を20質量部とした以外は、実施例2と同様にして実施例4の積層延伸フィルムを得た。
[実施例5]
結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SPを97質量部、熱可塑性樹脂BとしてTOPAS(登録商標)6017S−04を3質量部用いた以外は、実施例2と同様にして実施例5の積層延伸フィルムを得た。
[実施例6]
結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SPを85質量部、熱可塑性樹脂BとしてTOPAS(登録商標)6015S−04を5質量部、結晶性熱可塑性樹脂Cとしてノバテック(登録商標)HE30を10質量部用いた以外は、実施例2と同様にして実施例6の積層延伸フィルムを得た。
[実施例7]
a層(空隙部を有する)用の原料を一軸スクリュータイプ押出機βに、b層用の原料を一軸スクリュータイプ押出機αに、c層用の原料を一軸スクリュータイプ押出機γにそれぞれホッパーから投入した以外は、実施例2と同様にしてb層/a層/c層が順に積層された実施例7の積層延伸フィルムを得た。なお、前記押出機αと前記押出機βと前記押出機γの押出樹脂量の質量比率はα:β:γ=1:0.65:0.1とした。各層の厚さは、b層が20μm、a層が13μm、c層が2μmであった。
[実施例8]
a層(空隙部を有する)用の原料を一軸スクリュータイプ押出機α及びγに、b層用の原料を一軸スクリュータイプ押出機βにそれぞれホッパーから投入し、一軸スクリュータイプ押出機αと一軸スクリュータイプ押出機βと一軸スクリュータイプ押出機γの押出樹脂量の質量比率をα:β:γ=1:3.4:1とした以外は、実施例1と同様にしてa層/b層/a層(a1層/b層/a2層)が順に積層された実施例8の積層延伸フィルムを得た。各層の厚さは、a1層が6.5μm、b層が22μm、a2層が6.5μmであった。
[実施例9]
a層(空隙部を有する)用の原料を一軸スクリュータイプ押出機α及びβに、b層用の原料を一軸スクリュータイプ押出機γにそれぞれホッパーから投入し、一軸スクリュータイプ押出機αと一軸スクリュータイプ押出機βと一軸スクリュータイプ押出機γの押出樹脂量の質量比率をα:β:γ=1:1:3.4とした以外は、実施例1と同様にしてa層/a層/b層(a1層/a2層/b層)が順に積層された実施例8の積層延伸フィルムを得た。各層の厚さは、a1層が6.5μm、a2層が6.5μm、b層が22μmであった。
[比較例1]
結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SPを100質量部用いて、a層(空隙部を有する)用の原料とした以外は、実施例2と同様にして比較例1の積層延伸フィルムを得た。
[比較例2]
押出樹脂量の質量比率をα:β:γ=1:5.6:0.4とした以外は、実施例1と同様にして比較例2の積層延伸フィルムを得た。各層の厚さは、a層が5μm、b層が28μm、c層が2μmであった。
[比較例3]
結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SPを70質量部、熱可塑性樹脂BとしてTOPAS(登録商標)6017S−04を20質量部、結晶性熱可塑性樹脂Cとしてノバテック(登録商標)HE30を10質量部用いた以外は、実施例2と同様にして比較例3の積層延伸フィルムを得た。
[比較例4]
熱可塑性樹脂BとしてTOPAS(登録商標)8007F−04(ポリプラスチックス株式会社製、非晶性ノルボルネン−エチレン共重合体、ガラス転移温度78℃、MFR=32g/10分)を用いた以外は実施例6と同様にして比較例4の積層延伸フィルムを得た。
[比較例5]
結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SPを93.75質量部、酸化チタン(TiO2)が80%濃度のF−300SPをベースとするマスターバッチを6.25質量部とした以外は、実施例2と同様にして比較例5の積層延伸フィルムを得た。このとき酸化チタン(TiO2)単体は5質量部となる。
[比較例6]
結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SPを94質量部、熱可塑性樹脂BとしてTOPAS(登録商標)6017S−04を6質量部用いてa層(空隙部を有する)用の原料とし、一軸スクリュータイプ押出機δ(スクリューL/D=20)のみに投入して245℃にて溶融させ原反シートを得た。原反シートの延伸方法は実施例1と同様にして比較例6の単層延伸フィルムを得た。比較例6の単層延伸フィルムは、35μmのa層のみからなる単層延伸フィルムであった。
[比較例7]
205℃にて溶融させた以外は、比較例6と同様にして比較例7の単層延伸フィルムを得た。
[比較例8]
結晶性熱可塑性樹脂Aとしてプライムポリプロ(登録商標)F−300SPを94質量部、熱可塑性樹脂BとしてTOPAS(登録商標)6017S−04を6質量部用いて、a層(空隙部を有する)用の原料とし、結晶性熱可塑性樹脂Aとしてウィンテック(登録商標)WFW5T(日本ポリプロ株式会社製、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、230℃及び2.16kgにおけるMFR=3.5g/10分、融点142℃、ガラス転移温度−19℃)100質量部を用いて、b層用の原料とし、a層(空隙部を有する)用の原料を一軸スクリュータイプ押出機βに、b層用の原料を一軸スクリュータイプ押出機αに、c層用の原料を一軸スクリュータイプ押出機γにそれぞれホッパーから投入し一軸スクリュータイプ押出機αと一軸スクリュータイプ押出機βと一軸スクリュータイプ押出機γの押出樹脂量の質量比率をα:β:γ=1:9.67:1とした以外は、実施例1と同様にしてb層/a層/c層が順に積層された比較例8の積層延伸フィルムを得た。なお、各層の厚さは、b層が3μm、a層が29μm、c層が3μmであった。
[比較例9]
押出樹脂量の質量比率をα:β:γ=1:9.67:1とした以外は、実施例8と同様にしてa層/b層/a層(a1層/b層/a2層)が順に積層された比較例9の積層延伸フィルムを得た。なお、各層の厚さは、a1層が3μm、b層が29μm、a2層が3μmであった。
※表1,2において、比較例6,7ではa層のみの単層であるため、「積層延伸フィルム」は、単層延伸フィルムを意味する。
表2に示される通り、実施例1〜9の積層延伸フィルムは、少なくとも、a層及びb層を有する積層延伸フィルムであって、全光線透過率が55〜85%であり、a層の内部の空隙部の一方向の平均長x1が30〜300μmであり、他方向の平均長y1が、30〜300μmであり、白さの不均一性に優れ、かつ、製造工程における破断が生じ難いことが分かる。