JP3417480B2 - 樹脂組成物及びそれからなる光学材料 - Google Patents

樹脂組成物及びそれからなる光学材料

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JP3417480B2
JP3417480B2 JP2001075995A JP2001075995A JP3417480B2 JP 3417480 B2 JP3417480 B2 JP 3417480B2 JP 2001075995 A JP2001075995 A JP 2001075995A JP 2001075995 A JP2001075995 A JP 2001075995A JP 3417480 B2 JP3417480 B2 JP 3417480B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性飽和ノル
ボルネン系樹脂から成る樹脂組成物及びそれからなる光
学材料に関し、さらに詳しくは、接着性に優れた熱可塑
性飽和ノルボルネン系樹脂組成物及びそれからなる光学
材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から光学材料に用いられる樹脂とし
てポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリカーボ
ネート(PC)が知られている。しかし、PMMAは透
明性に優れているが、耐熱性、耐湿性などの点で問題が
あり、また、PCは耐熱性、耐湿性はPMMAよりも優
れているが、複屈折が大きいなどの問題があり、透明
性、耐熱性、耐湿性、低複屈折性などの全てに優れた熱
可塑性飽和ノルボルネン系樹脂が光学材料として注目さ
れている。
【0003】しかし、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂
には接着剤、着色するための塗料、保護コート用または
微細構造形成用の紫外線硬化型塗料、各種の無機膜、有
機膜との接着性が低いという問題があった。接着性を改
良する方法として、接着性を改良することを目的とし
て、各種のプライマー処理や薬品、活性エネルギー線処
理が検討されているが、成形品の製造工程、加工工程に
これらの処理を加えることは生産効率の点で好ましくな
い。
【0004】そこで、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂
を変性したり、配合剤を加えたりして、接着性を改良す
ることが検討されている。
【0005】例えば、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂
にゴム質重合体を1〜40重量%グラフト重合すること
が知られている(特開平3−54220号)が、このよ
うな方法は生産効率の点で好ましくない。また、得られ
た樹脂も必ずしも透明ではなかった。
【0006】また、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂に
ゴム質重合体を1〜50重量%添加した組成物が金属と
の接着性がよくなること、この組成物を透明にするため
には樹脂との屈折率の差が小さいゴム質重合体を用いれ
ばよいことが知られていた(特開平3−112646
号)。しかし、熱可塑性ノルボルネン系樹脂にゴム質重
合体を多量に添加するとガラス転移温度(Tg)が低下
するという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、鋭意研
究の結果、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂に配合剤を
微小なミクロドメインとして分散させることにより、各
種の塗料や膜との接着性が改良でき、透明性などの外観
も良好であることを見い出し、本発明を完成するに到っ
た。
【0008】
【課題を解決するための手段】かくして本発明によれ
ば、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂及びそれと非相溶
である配合剤からなり、配合剤の量熱可塑性飽和ノル
ボルネン系樹脂100重量部に対して、0.001〜
0.8重量部である熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂組
成物及びそれからなる光学材料が提供される。
【0009】(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂)本発
明の熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、特開平3−148
82号や特開平3−122137号などで公知の樹脂で
あり、具体的には、ノルボルネン系単量体の開環重合
体、その水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重
合体、ノルボルネン系単量体とオレフィンの付加型重合
体などが挙げられる。
【0010】ノルボルネン系単量体も、上記公報や特開
平2−227424号、特開平2−276842号など
で公知の単量体であって、例えば、ノルボルネン、その
アルキル、アルキリデン、芳香族置換誘導体およびこれ
ら置換または非置換のオレフィンのハロゲン、水酸基、
エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミ
ド基、シリル基等の極性基置換体、例えば、2−ノルボ
ルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメ
チル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネ
ン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−
2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノル
ボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル
−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フ
ェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル
−2−ノルボルネン等;ノルボルネンに一つ以上のシク
ロペンタジエンが付加した単量体、その上記と同様の誘
導体や置換体、例えば、1,4:5,8−ジメタノ−
1,2,3,4,4a,5,8,8a−2,3−シクロ
ペンタジエノナフタレン、6−メチル−1,4:5,8
−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オ
クタヒドロナフタレン、1,4:5,10:6,9−ト
リメタノ−1,2,3,4,4a,5,5a,6,9,
9a,10,10a−ドデカヒドロ−2,3−シクロペ
ンタジエノアントラセン等;シクロペンタジエンの多量
体である多環構造の単量体、その上記と同様の誘導体や
置換体、例えば、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒ
ドロジシクロペンタジエン等;シクロペンタジエンとテ
トラヒドロインデン等との付加物、その上記と同様の誘
導体や置換体、例えば、1,4−メタノ−1,4,4
a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレ
ン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,
8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフ
タレン等;等が挙げられる。
【0011】ノルボルネン系単量体の重合は公知の方法
でよく、必要に応じて、水素添加することにより、熱可
塑性ノルボルネン系樹脂水素添加物とすることができ
る。
【0012】なお、本発明においてはノルボルネン系単
量体を公知の方法で開環重合させる場合には、本発明の
効果を実質的に妨げない範囲において開環重合可能な他
のシクロオレフィン類を併用することができる。このよ
うなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シク
ロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシク
ロペンタジエンなどのごとき反応性の二重結合を1個以
上有する化合物が例示される。
【0013】本発明で使用する熱可塑性飽和ノルボルネ
ン系樹脂の数平均分子量は、トルエン溶媒によるGPC
(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法で測
定して、10,000〜200,000、好ましくは2
0,000〜150,000、より好ましくは25,0
00〜120,000である。数平均分子量が小さすぎ
ると機械的強度が劣り、大きすぎると成形性が悪くな
る。
【0014】また、ノルボルネン系単量体の開環重合体
を水素添加する場合、水素添加率は耐熱劣化性、耐光劣
化性などの観点から、90%以上、好ましくは95%以
上、より好ましくは、99%以上とする。
【0015】(配合剤)本発明の配合剤とは熱可塑性飽
和ノルボルネン系樹脂と非相溶性のものであって、熱可
塑性飽和ノルボルネン系樹脂中にミクロドメインを形成
して分散できるものであれば、特に限定されないが、有
機高分子化合物が好ましく、特にガラス転移温度が40
℃以下のゴム質重合体が好ましい。なお、ブロック共重
合したゴム質重合体などでガラス転移温度が2点以上あ
る場合があるが、その場合は、最も低いガラス転移温度
が40℃以下であれば本発明のガラス転移温度が40℃
以下のゴム質重合体として用いることができる。
【0016】本発明のゴム質重合体の例としては、乳化
重合または溶液重合したスチレン・ブタジエン・ゴム、
ハイスチレンゴムなどのランダムまたはブロック・スチ
レン・ブタジエン系共重合体、これらの水素添加物;イ
ソプレン・ゴム、その水素添加物;クロロプレンゴム、
その水素添加物;エチレン・プロピレン共重合体、エチ
レン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレ
フィン共重合体などの飽和ポリオレフィンゴム;エチレ
ン・プロピレン・ジエン共重合体、α−オレフィン・ジ
エン共重合体、ジエン共重合体、イソブチレン・イソプ
レン共重合体、イソブチレン・ジエン共重合体などのジ
エン系重合体、これらのハロゲン化物、ジエン系重合体
またはそのハロゲン化物の水素添加物;アクリロニトリ
ル・ブタジエン共重合体、その水素添加物;フッ化ビニ
リデン・三フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン
・六フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・六
フッ化プロピレン・四フッ化エチレン共重合体、プロピ
レン・四フッ化エチレン共重合体などのフッ素ゴム;ウ
レタンゴム、シリコーンゴム、ポリエーテル系ゴム、ア
クリルゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、エピ
クロルヒドリンゴム、プロピレンオキサイドゴム、エチ
レンアクリルゴムなどの特殊ゴム;ノルボルネン系単量
体とエチレンまたはα−オレフィンの共重合体、ノルボ
ルネン系単量体とエチレンとα−オレフィンの三元共重
合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネ
ン系単量体の開環重合体水素添加物などのノルボルネン
系ゴム質重合体の内樹脂組成物の主成分の熱可塑性飽和
ノルボルネン系樹脂と非相溶のもの;スチレン・ブタジ
エン・スチレン・ゴム、スチレン・イソプレン・スチレ
ン・ゴム、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン
・ゴムなどの芳香族ビニル系モノマー・共役ジエンのラ
ンダム共重合体、これらの水素添加物;スチレン・ブタ
ジエン・スチレン・ゴム、スチレン・イソプレン・スチ
レン・ゴム、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレ
ン・ゴムなどの芳香族ビニル系モノマー・共役ジエンの
直鎖状または放射状ブロック共重合体、それらの水素添
加物などのスチレン系熱可塑性エラストマーをはじめ、
ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑
性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エ
ラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ
素系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー
が挙げられる。
【0017】これらの中でも、芳香族ビニル系モノマー
と共役ジエン系モノマーの共重合体、その水素添加物、
及び本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂と非相溶
のノルボルネン系ゴム質重合体が、熱可塑性飽和ノルボ
ルネン系樹脂との分散性が良く、好ましい。芳香族ビニ
ル系モノマーと共役ジエン系モノマーの共重合体はブロ
ック共重合体でもランダム共重合体でも良い。耐候性の
点から芳香環以外の部分を水添しているものがより好ま
しい。具体的には、スチレン・ブタジエンブロック共重
合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重
合体、スチレン・イソプレン・ブロック共重合体、スチ
レン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、およ
びこれらの水素添加物、スチレン・ブタジエン・ランダ
ム共重合体などが挙げられる。
【0018】また、本発明の配合剤は、それを添加する
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂の屈折率との差が好ま
しくは0.02以下、より好ましくは0.015以下、
特に好ましくは0.01以下の屈折率を有するものであ
る。屈折率の差が大きいものを混合すると、多量に添加
した場合に不透明となりやすい。熱可塑性飽和ノルボル
ネン系樹脂の種類が異なれば屈折率も異なるが、例え
ば、ゴム質重合体はモノマーの比率を変化させたり、主
鎖の不飽和結合の数を水素添加などにより変化させるこ
とにより、連続的に屈折率を変えることが可能である。
用いる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂の屈折率に応じ
て、適当な屈折率を有するゴム質重合体を選択すること
が好ましい。
【0019】(添加)本発明においては配合剤は熱可塑
性飽和ノルボルネン系樹脂に適量添加して、熱可塑性飽
和ノルボルネン系樹脂中でミクロドメインを形成し、分
散させる。添加量が多すぎれば、樹脂組成物のガラス転
移温度が大きく低下し、ミクロドメインは形成されない
か、凝集してしまうため分散しない。添加量が少なすぎ
れば、本願の効果が得られない。例えば、ゴム質重合体
を配合剤とする場合には、熱可塑性飽和ノルボルネン系
樹脂100重量部に対して、ゴム質重合体である配合剤
は0.001〜0.8重量部、好ましくは0.003〜
0.6重量部、より好ましくは0.005〜0.4重量
部の割合で添加する。
【0020】添加する方法は配合剤が熱可塑性飽和ノル
ボルネン系樹脂中でミクロドメインを形成して十分に分
散する方法であれば、特に限定されない。例えば、ゴム
質重合体を配合剤とする場合には、ミキサー、二軸混練
機などで樹脂温を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤
に溶解して分散させて凝固法、キャスト法、または直接
乾燥法により溶剤を除去する方法などがある。
【0021】混練する場合には、樹脂温度がTg+50
℃〜Tg+150℃の温度で、十分にシェアをかける。
樹脂温度が低すぎると粘度が高くなり混練が困難であ
り、高すぎると樹脂やゴム質重合体が劣化し、粘度や融
点の差により両者がうまく混練できない。
【0022】例えば、ラボプラストミル(東洋精機製)
を用いる場合、二軸異方向ミキサーモードで回転数20
〜30rpmで、フィード・レートを調節して滞留時間
を1〜10分程度にして混練すれば、通常、熱可塑性飽
和ノルボルネン系樹脂中にゴム質重合体を直径0.3μ
m以下のミクロドメインを形成して分散させることがで
きる。通常、二軸混練機においては、L/Dを25以
上、好ましくは30以上にし、滞留時間を1〜10分程
度にする。滞留時間が長いほど、ミクロドメインを形成
しやすいが、樹脂やゴム質重合体が劣化しやすいので、
用いる樹脂、ゴム質重合体、混練に用いる装置の組み合
せによって、予備的に混練して、その組み合せにあった
回転数、滞留時間等を決めなければならない。
【0023】なお、ミクロドメインはゴム質重合体を配
合剤とする場合には、ほぼ球形となり、粒子間での粒径
のばらつきは小さい。通常、直径0.3μm以下、好ま
しくは0.2μm以下である。この粒径であれば、後述
のようにゴム質重合体を添加による熱可塑性飽和ノルボ
ルネン系樹脂組成物の透明性の低下は小さく、問題とな
らない。他の配合剤の場合も、ミクロドメインはほぼ球
形となることが好ましく、粒子間での粒径のばらつきが
ないことが好ましく、直径0.3μm以下、特に0.2
μm以下となることが好ましい。なお、ミクロドメイン
が球形とならない場合でも、そのミクロドメインを閉じ
込めることのできる最小の球の直径が0.3μm以下、
特に0.2μm以下となることが好ましい。
【0024】(添加剤)本発明で用いる熱可塑性飽和ノ
ルボルネン系樹脂には、所望により、各種添加剤を添加
してもよい。樹脂に用いられる添加剤は樹脂と相溶性の
あるものであり、フェノール系やリン系などの老化防止
剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤などがある。溶液流延法
でシートを成形する場合には、表面粗さを小さくするた
め、レベリング剤の添加も好ましい。レベリング剤は、
例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹
脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤など塗料
用レベリング剤を用いることができ、それらの中でも溶
媒との相溶性の良いものが好ましく、添加量は、通常は
5〜50,000ppm、好ましくは10〜20,00
0ppmである。
【0025】(熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂組成
物)本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂組成物
は、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂のマトリックス中
に配合剤が通常、直径0.3μm以下、好ましくは0.
2μm以下のミクロドメインを形成して分散している。
情報ディスクや赤外線センサーなどの情報処理につかわ
れる単色光の波長は300nm〜1000nm程度、人
間に見える可視光は400nm〜800nm程度であ
る。これらの光の波長よりも配合剤の直径が小さく、
0.3μm以下、特に0.2μm以下のミクロドメイン
を形成していれば光が散乱しにくいため、熱可塑性飽和
ノルボルネン系樹脂組成物は、透明性に優れる。
【0026】本発明の樹脂組成物の透明性は、ゴム質重
合体の屈折率、添加量、ミクロドメインの直径、分散状
態などによって異なるが、通常、厚さ3mmの板状成形
品の400〜700nmの光線透過率は50%以上であ
り、屈折率、添加量、分散状態を調整することにより、
80%以上、さらには90%以上にすることも可能であ
る。
【0027】また、本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン
系樹脂組成物の成形品は、耐熱性、耐薬品性、誘電特
性、剛性はゴム質重合体の添加量が少ないため、添加し
ない熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーと実質的に同
じである。
【0028】樹脂組成物の成形方法は特に限定されな
い。目的に応じて、射出成形法、ブロー成形法、インジ
ェクションブロー成形法、回転成形法、真空成形法、押
出成形法、カレンダー成形法、溶液流延法などが可能で
ある。
【0029】本発明の樹脂組成物の成形品は、ゴム質重
合体を添加しない熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂と比
較して、接着においては、フェノール系接着剤、ポリエ
ステル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着
剤等の熱硬化性接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリ
ビニルアルコール系接着剤、ポリ塩化ビニル系接着剤、
ニトロセルロース系接着剤等の熱可塑性樹脂接着剤、ブ
タジエンアクリロニトリルゴム系接着剤やネオプレン系
接着剤等の接着剤など;塗装においては、エナメル等の
油性ペイント、速乾ニスやアルコール溶性フェノール樹
脂ワニス等の酒精塗料、エチルセルロースラッカー等の
セルロース塗料、ビニル樹脂ワニス等の合成樹脂塗料、
合成ゴムラテックス塗料等の水性塗料、塩化ゴム塗料等
のゴム系塗料等の塗料と;ハードコート層や保護コート
層の形成においては、メラミン系、アルキッド系、ウレ
タン系、アクリル系等の熱硬化型有機系コート剤、多官
能アクリル系紫外線硬化型有機系コート剤、シリコーン
系コート剤等のコート剤など;スタンパー等の微細構造
を塗布した塗料に転写するいわゆる2P法においては、
紫外線硬化型アクリル系塗料や反応硬化型エポキシ系塗
料など;光学ディスク等に成形した場合においては、真
空蒸着法やスパッタリング法などによって蒸着したニッ
ケル、アルミニウム、金等の反射率の高い金属からなる
金属反射膜やTb−Fe−Co系合金等からなる光磁気
記録膜など;などとの接着性に優れている。
【0030】また、本発明の樹脂組成物は、熱可塑性飽
和ノルボルネン系ポリマーに比べて高温下での耐湿性に
優れている。熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーは耐
熱性、耐湿性に優れているが、その成形品は、例えば、
オートクレーブによる121℃の加圧スチーム滅菌など
の高温高湿処理においては、透明性が低下することがあ
った。それに対し、本発明の樹脂組成物の成形品は、透
明性の低下は実質的に認められない。
【0031】本発明の樹脂組成物の用途としては、この
ような性質を活かせる、例えば、スチームアイロンの水
タンク、電子レンジ用の部品や容器、プリント配線基
板、高周波回路基板、導電性の透明性または非透明のシ
ート、スピーカーの振動板、半導体製造用キャリア、照
明器具のカバーや飾りつけ、電線の被覆材、絶縁フィル
ム、コンデンサーフィルム、電子素子の封止材などの電
気分野;食品包装用フィルム、義歯床材料、各種薬品容
器、食品容器、化粧品容器、活栓、血液などの機器検査
用セル、医療用チューブ、血液や輸液のバッグ、耐薬品
性のコーティング、ディスポーザーブルのシリンジや容
器などの食品医療用途;カメラ部品、各種計器・機器類
のハウジングや容器などの工業部品;各種シート、ヘル
メット、プロテクター、眼鏡のノーズガードなどの日用
雑貨;風防ガラスや窓ガラスの代替などの分野に広く応
用できるほか、さらに特にその透明性を活かして、光磁
気ディスク、色素系ディスク、音楽用コンパクトディス
ク、画像音楽同時録再型ディスクなどの情報ディスク基
板;カメラ、VTR、複写機、OHP、プロジェクショ
ンTV、プリンターなどに使われる撮像系または投影系
のレンズやミラーレンズ;情報ディスクやバーコードな
どの情報をピックアップするためのレンズ;自動車ラン
プやメガネ・ゴーグルのレンズ;光ファイバーやそのコ
ネクターなどの情報転送部品;光カードなどのディスク
以外の形状の情報記録の基板、液晶基板、位相差フィル
ム、偏光フィルム、導光板、保護防湿フィルムなどの情
報記録、情報表示分野のフィルムやシートなどの光学材
料として好適である。
【0032】
【実施例】以下に参考例、実施例、及び比較例を挙げて
本発明をさらに具体的に説明する。なお、碁盤目剥離試
験は次のようにして行った。
【0033】成形した板に形成されたアルミニウム膜や
塗膜膜の上から、カッターにより1mm間隔でタテ、ヨ
コ各11本の切れ目を入れて1mm四方の碁盤目を10
0個作り、セロハン粘着テープ(積水化学社製)を貼
り、粘着テープを90°方向に剥す。試験結果は、剥離
しなかった目の数を%で表して示す。
【0034】実施例1 ZEONEX 280(日本ゼオン株式会社製熱可塑性
飽和ノルボルネン系樹脂、ガラス転移温度140℃、3
0℃における屈折率1.5241)のペレット100重
量部に対して0.2重量部のフェノール系老化防止剤ペ
ンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−タ
ーシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオ
ネート)と0.2重量部のスチレン・エチレン・ブタジ
エン・スチレン・ブロック共重合体(旭化成工業株式会
社製タフテックH1051、クラム状、30℃における
屈折率1.5173)を混合し、二軸混練機(東洋精機
製、ラボプラストミル、異方向、樹脂温度180℃、ス
クリュー回転数50rpm)で混練した。トルクは徐々
に低下し、混練開始から4分でほぼ一定となり、さらに
続けて10分間混練した。
【0035】組成物の塊を取り出し、熱プレス(樹脂温
度200℃、300kgf/cm2、3分)で20mm
×15mm、厚さ3.0mmの板を成形した。この板は
透明で、400〜700nmでの光線透過率は最小で9
0.1%であった。この板に真空蒸着法により厚さ10
0nmのアルミニウム膜を形成し、碁盤目剥離試験にか
けたところ、100%で良好な接着性を示した。
【0036】この板を約0.05μmの厚さにスライス
し、四酸化ルテニウムでポリスチレン部分を染色し、透
過型電子顕微鏡により観察したところ、ゴム質重合体は
樹脂のマトリックス中で直径約0.02μmのほぼ球状
のミクロドメイン構造をとっていた。このペレットのガ
ラス転移温度は140℃であった。
【0037】同じ混練した樹脂の塊を樹脂温260℃で
インジェクションブロー成形し、筒状部分の平均厚み3
mm、内容積100mlの円筒状細口ビンを成形した。
容器は透明で、一部を切り出して、ヘイズメータでヘイ
ズを測定したところ0.5%であった。
【0038】この容器を100℃の沸騰水中で30分間
加熱、121℃のスチーム下で30分加熱、85℃・9
0%RHで48時間放置したが、いずれの場合も目視お
よび50倍の倍率の顕微鏡観察で、外観の変化は認めら
れなかった。
【0039】実施例2 ZEONEX 280のペレット100重量部に対して
0.2重量部のフェノール系老化防止剤ペンタエリスリ
チル−テトラキス(3−(3,5−ジ−ターシャリーブ
チル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)と
0.3重量部のスチレン・エチレン・ブタジエン・スチ
レン・ブロック共重合体(旭化成工業株式会社製タフテ
ックH1051)を混合し、二軸混練機(東芝機械製、
TEM−35B、同方向、スクリュー径37mmΦ、L
/D=31.1、樹脂温度235℃、スクリュー回転数
150rpm、滞留時間約2分、処理速度10kg/h
r)で混練しストランド状に押し出し、ストランドカッ
ターで切ってペレットとした。
【0040】このペレットを約0.05μmの厚さにス
ライスし、四酸化ルテニウムでポリスチレン部分を染色
し、透過型電子顕微鏡により観察したところ、ゴム質重
合体は樹脂のマトリックス中で直径約0.01μmのほ
ぼ球状のミクロドメイン構造をとっていた。このペレッ
トのガラス転移温度は139℃であった。
【0041】このペレットを用いて、樹脂温度270℃
で射出成形し、50mm×50mm、厚さ3.0mmの
板を作成した。この板の400〜700nmでの光線透
過率は最小で90.5%であった。この板にアクリルラ
ッカー系黒色遮光塗料(関西ペイント社製、アクリック
#1000(A))をスプレー塗布し、50℃のエアオ
ーブン中で30分乾燥し、厚さ約0.15mmに塗装し
た。塗装膜を碁盤目剥離試験にかけたところ、100%
の良好な接着性を示した。
【0042】実施例3 0.3重量部のスチレン・エチレン・ブタジエン・スチ
レン・ブロック共重合体に代えて0.7重量部のスチレ
ン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体(日本ゼ
オン株式会社製、Quintac3421、ペレット
状、30℃における屈折率1.5276)を用いる以外
は実施例2と同様にペレットとした。
【0043】実施例1と同様に染色し、観察したとこ
ろ、直径約0.19μmのほぼ球状のミクロドメイン構
造をとっていることが分かった。このペレットのガラス
転移温度は130℃であった。
【0044】実施例2と同様に厚さ3.0mmの板を作
成したところ、400〜700nmでの光線透過率は最
小で90.2%であった。この板に真空蒸着法により厚
さ100nmのアルミニウム膜を形成し、碁盤目剥離試
験にかけたところ、100%で良好な接着性を示した。
【0045】比較例1 ゴム質重合体を混合しないこと以外は実施例1と同様の
ペレットを用い、射出成形して3.0mmの板を作成し
たところ、400〜700nmでの光線透過率は最小で
90.8%であった。実施例1と同様にアルミニウム膜
を形成し、碁盤目剥離試験にかけたところ、86%の接
着性を示した。
【0046】比較例2 ゴム質重合体を0.5重量部の代わりに8重量部を混合
し、実施例3と同様に混練した。混練機のトルクは徐々
に低下し、一定のトルクになった10分後に混練を終了
した。
【0047】この組成物を実施例1と同様に染色し、観
察したところ、部分的には、直径約0.25μmの球状
のミクロドメインと、それが凝集して2〜5μm程度の
球状の粒子となっているものが認められた。
【0048】この組成物を、実施例3と同じ条件で20
mm×15mm、厚さ3.0mmの板を成形した。実施
例1と同様にアルミニウム膜を形成し、碁盤目剥離試験
にかけたところ、100%の良好な接着性を示した。し
かし、この板は目視でも濁っており、400〜700n
mでの光線透過率は30〜42%しかなかった。
【0049】比較例3 ZEONEX 280のペレット100重量部に対して
0.2重量部のフェノール系老化防止剤ペンタエリスリ
チル−テトラキス(3−(3,5−ジ−ターシャリーブ
チル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を混
合し、2軸混練機(東洋精機製、ラボプラストミル、異
方向、樹脂温度180℃、スクリュー回転数50rp
m)で混練した。3分間混練したところで、スチレン・
エチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体
(旭化成工業株式会社製タフテックH1051、実施例
2で使用したものと同じ)3.0重量部を加え、さらに
1分間混練した。
【0050】この混練物を実施例3と同様に板に成形
し、染色し、観察したところ、ゴム質重合体は約1μm
の厚さの層状になっており、均一に分散していなかっ
た。
【0051】実施例1と同様に射出成形して3.0mm
の板を作成したところ、400〜700nmでの光線透
過率は最小で72%であった。実施例1と同様にアルミ
ニウム膜を形成したところ、表面に斑状に模様ができ
た。碁盤目剥離試験にかけたところ、54%の接着性を
示した。
【0052】
【発明の効果】これらの結果から、本発明の樹脂組成物
は、各種の塗料や膜との接着性、透明性に優れ、光学材
料として用いることができることが判る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小原 禎二 神奈川県川崎市川崎区夜光一丁目2番1 号 日本ゼオン株式会社 総合開発セン ター内 (72)発明者 夏梅 伊男 東京都千代田区丸の内二丁目6番1号 日本ゼオン株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−106963(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 65/00

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂及びそ
    れと非相溶である配合剤からなり、配合剤の量熱可塑
    性飽和ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、0.
    001〜0.8重量部である熱可塑性飽和ノルボルネン
    系樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 配合剤が有機高分子化合物である請求項
    1記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 有機高分子化合物がゴム質重合体である
    請求項2記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂組成
    物。
  4. 【請求項4】 高温下での耐湿性に優れる請求項1、
    2、または3記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂組
    成物。
  5. 【請求項5】 請求項1、2、3、または4記載の樹脂
    組成物からなる光学材料。
  6. 【請求項6】 請求項1、2、3、または4記載の樹脂
    組成物からなる容器。
  7. 【請求項7】 請求項1、2、3、または4記載の樹脂
    組成物からなるフィルム又はシート。
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