JP3945269B2 - シクロオレフィン系重合体の成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のシクロオレフィン系単量体を付加重合反応させることによって得られるシクロオレフィン系付加重合体、またはシクロオレフィン系付加共重合体を成形用樹脂材料として用い、これを溶融押出法により成形することによって製造する成形体に関する。
以下の記載において、「付加重合」および「付加重合体」の用語は、原則として、それぞれ、「付加共重合」および「付加共重合体」を包含する広義の概念を示すものと理解されるべきである。従って、例えば「シクロオレフィン系付加重合体」の用語は、特にそうでないことが明確な場合を除き、「シクロオレフィン系付加共重合体」を包含するものと理解されるべきである。
【0002】
【従来の技術】
近年、耐熱性を有する透明熱可塑性樹脂として、シクロオレフィン系重合体が注目されており、例えば、特開平1−132625号公報、特開平1−132626号公報、特開昭63−218726号公報、特開平2−133413号公報、特開昭61−120816号公報、特開昭61−115912号公報などに種々のシクロオレフィン系重合体が開示されている。
【0003】
一般に、シクロオレフィン系重合体よりなる樹脂は、非晶性で優れた高い透明性を有し、かつ分極率の異方性が小さいことにより光学的な歪みを生じにくいために低い複屈折性を示し、優れた電気絶縁性を有すると共に、高温高湿環境における優れた寸法安定性を有するものである。
このため、シクロオレフィン系重合体により得られる光学フィルム、導光板などのディスプレイ用光学部品、プラスチック光ファイバー、光学レンズ、光ディスク、光半導体封止材などの光学成形体は、優れた光学特性を有するものとして有用である。
【0004】
シクロオレフィン系重合体としては、シクロオレフィン系単量体の開環重合体、シクロオレフィン系単量体の開環重合体の水素添加物あるいはシクロオレフィン系単量体の付加重合体などがあるが、特に、その構造中に極性基を含有するものが、各種材料への密着性、後加工性の観点から好ましい。
【0005】
而して、従来、極性基を有するシクロオレフィン系単量体の開環重合体およびその水素添加物を、例えば、特開平9−324036号公報および特開平10−251342号公報には光学フィルムとして利用することが、特開平4−370121号公報および特開平6−238805号公報には透明導電性フィルムとして利用することが、特開平8−94852号公報には導光板として利用することが、また、特開平4−365003号公報および特開平8−160264号公報にはプラスティック光ファイバーとして利用することが開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの極性基を有するシクロオレフィン系単量体の開環重合体を溶融押出法の成形用樹脂材料として用いた場合には、水素添加物であってもその構造中に存在する微量の未水添不飽和結合に起因して、溶融成形時に成形用樹脂材料が熱劣化するため、得られる成形体は、シクロオレフィン系重合体の有する種々の好ましい特性が低下したものとなると共に、当該特性の経時的耐久性が小さい、という問題がある。
【0007】
具体的には、成形体が、例えばプラスチック光ファイバーとして用いられるものである場合には、経時的な色相の悪化に伴って光の伝送損失が増大したものとなり、成形体が光学フィルムとして用いられるものである場合には、樹脂材料の熱劣化に起因してゲルや焼けが生ずることにより、その表面に点状欠陥が生じてしまう、という問題があった。
【0008】
一方、極性基を有するシクロオレフィン系単量体の付加重合反応を高い効率で行う方法は知られておらず、従って、極性基を含有するシクロオレフィン系付加重合体よりなる成形体を高い効率で製造する方法も知られていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、極性基を有するシクロオレフィン系単量体の付加重合体よりなり、優れた光学特性、密着性および耐熱性を有する成形体を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の成形体は、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンを付加重合反応させて得られるシクロオレフィン系重合体を成形用樹脂材料としてこれを溶融押出法により成形することによって製造されたものであることを特徴とする。
【0013】
以上において、成形用樹脂材料が、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンと、これと共重合可能な共重合性単量体とを付加重合反応させて得られるものであることが好ましい。
また、シクロオレフィン系重合体を得るための単量体における8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンの割合が20重量%以上であることが好ましい。
また、成形用樹脂材料は、下記一般式(2)で表される遷移金属錯体化合物の存在下において付加重合反応が行われることにより得られるものであることが好ましい。
【0014】
【化2】
【0015】
式中、Mは、周期律表の第4族、第8族、第9族または第10族から選ばれた遷移金属原子を示す。
A1 およびA2 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、芳香族炭化水素基、炭化水素基で置換されたシリル基、アルコキシ基、アリロキシ基、エステル基、アミド基、アミノ基、スルホンアミド基、ニトリル基またはニトロ基を示し、これらのうちの2個以上の基が互いに連結して環を形成していてもよい。
Lは、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。
2つのXは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素原子含有基、窒素原子含有基、ホウ素原子含有基、硫黄原子含有基、リン原子含有基、ケイ素原子含有基、ゲルマニウム原子含有基またはスズ原子含有基を示し、これらのうちの2個以上の基が互いに連結して環を形成していてもよい。
Yは、酸素原子、硫黄原子または窒素原子からなるヘテロ原子であって、Yが酸素原子または硫黄原子であるときはA3 は存在せず、Yが窒素原子であるときはA3 が存在し、A3 は、炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基または置換もしくは非置換の炭素原子数6〜20のアリール基を示す。
【0016】
ここで、成形体は、光学フィルムもしくは光学シート、または光ファイバーとして好ましく用いることができる。
【0017】
【作用】
本発明の成形体は、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンを含む単量体から得られるシクロオレフィン系付加重合体を成形用樹脂材料として用い、これを溶融押出法によって成形することにより製造されるため、得られる成形体は、溶融押出法によって製造されるにもかかわらず、熱劣化が生じることがなく、従って、本来シクロオレフィン系付加重合体の有する優れた光学特性、密着性および耐熱性などを確実に有するものとなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の成形体は、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセン(以下、「特定のシクロ単量体」ともいう。)を、必要に応じて用いられる共重合性単量体と共に、上記の一般式(2)で表される特定の遷移金属錯体化合物の存在下において、あるいは更に必要に応じて用いられる他の物質の共存下において、付加重合反応させ、これにより得られるシクロオレフィン系付加重合体を成形用樹脂材料として用いて溶融押出法により成形することによって得られる成形体(以下、「溶融押出成形体」ともいう。)である。
【0019】
シクロオレフィン系付加重合体の製造において、原料として特定のシクロ単量体を用いることにより、得られるシクロオレフィン系付加重合体は、高いガラス転移温度と高い耐候性、並びに各種材料との優れた密着性をバランス良く有するものとなる。
【0020】
また、特定のシクロ単量体は、その合成が容易であり、得られるシクロオレフィン系付加重合体が吸湿性の低いものとなる。
【0032】
樹脂材料を構成するシクロオレフィン系付加重合体の製造においては、特定のシクロ単量体のみを用いて付加重合反応を行ってもよいが、特定のシクロ単量体と共重合可能な単量体(以下、「共重合性単量体」という。)を用いて共重合することもできる。
用いられる共重合性単量体の種類を適宜選択することにより、得られるシクロオレフィン系付加重合体を、要求される耐熱性を損なわずに、例えば熱加工性などの種々の特性が、特定のシクロ単量体のみを付加重合させて得られるシクロオレフィン系付加重合体に比して向上したものとすることが可能である。従って、溶融押出法により成形をする場合においても、加工温度を過剰に高い温度とする必要がなく、樹脂材料に熱劣化を生じさせることなしに、当該成形樹脂材料が本来有する優れた光学特性などが確実に維持された成形体を得ることができる。
このような共重合性単量体としては、例えば、下記一般式(1)で表されるシクロオレフィン系単量体を挙げることができる。
【0033】
【化3】
〔式中、R 1 〜R 4 は、それぞれ独立に,水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す。R 1 〜R 4 は、それぞれ独立に、芳香族または複素環を有する基であってもよく、炭素原子数1〜5のアルキレン基を介して結合していてもよい。更に、R 1 またはR 2 と、R 3 またはR 4 とは、互いに結合して単環構造または多環構造を形成していてもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数であり、m+p=0〜4である。〕
【0034】
このような特定の共重合性単量体の具体例としては、
(1)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(2)トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−8−デセン、
(3)トリシクロ[4.4.0.12,5 ]−3−ウンデセン、
(4)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
(5)ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]−4−ペンタデセン、
(6)ペンタシクロ[7.4.0.12,5 .19,12.08,13]−3−ペンタデセン、
(7)5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(8)5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(9)5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(10)5−イソプロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0035】
(11)5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(12)5−n−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(13)5−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(14)5−n−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(15)5−n−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(16)ペンタシクロ[8.4.0.12,5 .19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、
(17)ヘプタシクロ[8.7.0.13,6 .110,17 .112,15 .02,7 .011,16 ]−4−エイコセン、
(18)ヘプタシクロ[8.8.0.14,7 .111,18 .113,16 .03,8 .012,17 ]−5−ヘンエイコセン、
(19)5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(20)5−ナフチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0036】
(21)5−ビフェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
(22)8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
(23)8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
(24)8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
(25)8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
(26)1,2−(2H,3H,−[1,3]エピシクロペンタ)−1,2−ジヒドロアセナフチレン、
(27)1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン
などを挙げることができる。
【0037】
また、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、オクタヒドロナフタレン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィン化合物類、並びにこれらのシクロオレフィン化合物がアルキル基、ビニル基あるいは極性基で置換された誘導体から選ばれた特定のシクロ単量体を共重合性単量体として用いることができる。
【0038】
更に、エチレン、プロピレン、ブテンなどのオレフィン化合物類、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル基含有環状飽和炭化水素化合物類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニルなどのビニル基含有芳香族化合物類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリロニトリルおよびアクリルアミドよりなる群から選ばれた特定のオレフィン化合物を共重合性単量体として使用することもできる。
【0039】
以上の特定のオレフィン化合物を共重合性単量体として用いる場合に、当該特定のオレフィン化合物の種類は、最終的に得られる重合体に求められる特性に応じて選択されるが、通常、エチレンを用いることが好ましく、この場合には、他のオレフィン化合物を用いる場合に比して大きな重合活性が得られるため、高い重合転化率が得られると共に、得られる重合体のガラス転移温度(Tg)を比較的広範囲で制御することができるため、溶融押出法により成形するために好適な加工特性を確保することが容易となる。溶融押出法に供される重合体のガラス転移温度は、通常、100〜300℃、好ましくは100〜250℃、より好ましくは100〜200℃とされる。
特定のオレフィン化合物の使用量は、得られる重合体に求められる特性に応じて適宜定められるが、通常、特定のシクロ単量体/特定のオレフィン化合物の質量比の値が100/0〜20/80、好ましくは90/10〜30/70の範囲となる量とされる。
【0040】
また、必要に応じて、特定のシクロ単量体の付加重合反応または特定のシクロ単量体と共重合性単量体との付加重合反応を、主鎖に炭素−炭素間二重結合を有する不飽和炭化水素系重合体の存在下に行ってもよい。
この場合には、得られるシクロオレフィン系付加重合体の構造に、当該不飽和炭化水素系重合体がグラフト重合によって結合することから、最終的に得られる重合体よりなる成形体を、機械的な特性が制御されたものとすることが可能となる。このような不飽和炭化水素系重合体の具体例としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどを挙げることができる。
【0041】
また、生成される重合体の分子量を調節するために、付加重合反応系に、環状非共役ポリエンを共存させる手段を利用することができる。
このような環状非共役ポリエンの具体例としては、例えば1,4−シクロヘキサジエン、1−メチル−1,4−シクロヘキサジエン、3−メチル−1,4−シクロヘキサジエン、1,2−ジメチル−1,4−シクロヘキサジエン、1,4−ジメチル−1,4−シクロヘキサジエン、1,2,4,5−テトラメチル−1,4−シクロヘキサジエン、1−イソプロピル−4−メチルシクロヘキサ−1,4−ジエン(γ−テルピネン)などの置換もしくは非置換のシクロヘキサジエン化合物類、1,4−シクロヘプタジエンなどの置換もしくは非置換のシクロヘプタジエン化合物類、1,4−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1−メチル−1,5−シクロオクタジエン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエンなどの置換もしくは非置換のシクロオクタジエン化合物類、1,5,9−シクロドデカトリエンなどの置換もしくは非置換のシクロドデカトリエン類などを挙げることができる。これらのうち、特に置換もしくは非置換のシクロオクタジエン化合物類を用いることが好ましい。
これらは、単独で、または2種以上を併用することができる。
【0042】
環状非共役ポリエンの使用量は、用いられる特定の遷移金属錯体化合物に対しモル比で0.01〜500倍の範囲であり、好ましくは0.1〜100倍の範囲であり、更に好ましくは0.2〜50倍の範囲である。
【0043】
本発明において、樹脂材料とされるシクロオレフィン系付加重合体の分子量は、重合条件などによって制御することができるが、通常、固有粘度(ηinh)が0.2〜5dL/g、好ましくは0.4〜1.5dL/g、特に好ましくは0.45〜1.00dL/gとなる大きさであることが好ましい。
【0044】
また、当該シクロオレフィン系付加重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が8,000〜500,000、重量平均分子量(Mw)が20,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。
【0045】
更に、当該シクロオレフィン系付加重合体のガラス転移温度は、用いる単量体の種類によっても異なり、従って単量体を選択することによって適宜制御することが可能である。実際の重合体のガラス転移温度は、当該重合体の溶融押出成形体の用途によって所望される範囲が異なるが、通常は100〜300℃、好ましくは100〜250℃、より好ましくは100〜200℃である。
【0046】
シクロオレフィン系付加重合体の製造においては、上記の特定のシクロ単量体の付加重合反応のための触媒として、従来公知の触媒を利用することも可能であるが、特に一般式(2)で表される特定の遷移金属錯体化合物を用いることが好ましい。
一般式(2)において、Mは、周期律表の第4族、第8族、第9族または第10族から選ばれた遷移金属原子であって、具体的には、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ti、ZrまたはHfであり、好ましくはFe、Co、NiまたはPdであり、更に好ましくはNiまたはPdである。
【0047】
A1 およびA2 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アリル基など)、芳香族炭化水素基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基、このようなアリール基であってメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの置換基が1〜5個結合したものなど)、炭化水素基で置換されたシリル基、アルコキシ基、アリロキシ基、エステル基、アミド基、アミノ基、スルホンアミド基、ニトリル基またはニトロ基を示し、これらのうちの2個以上の基が互いに連結して環を形成していてもよい。これらのうち好ましいものは、フェニル基、アントラセニル基、特に好ましいものはアントラセニル基である。
【0048】
Lは、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、好ましくはトリフェニルフォスフィン残基またはアセトニトリル残基である。
【0049】
2つのXは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素原子含有基、窒素原子含有基、ホウ素原子含有基、硫黄原子含有基、リン原子含有基、ケイ素原子含有基、ゲルマニウム原子含有基またはスズ原子含有基を示し、これらのうちの2個以上の基が互いに連結して環を形成していてもよい。
これらのXで示される原子または基の具体的なものとしては、水素原子、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびアリル基などの炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、例えばフェニル基およびメシチル基などの炭素原子数6〜9のアリール基などを挙げることができる。
【0050】
Yは、酸素原子、硫黄原子または窒素原子からなるヘテロ原子であって、Yが酸素原子または硫黄原子であるときはA3 は存在せず、Yが窒素原子であるときにのみA3 が存在し、A3 は、炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基または置換もしくは非置換の炭素原子数6〜20のアリール基を示す。
【0051】
付加重合反応においては、必要に応じて、以下に示すようなアルミニウム、ニッケル、またはホウ素による有機金属化合物を反応系に共存させることができる。これらの有機金属化合物は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この有機金属化合物は、いわゆる助触媒としての作用を有すると考えられる。
【0052】
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリドなどの一般的なアルキルアルミニウム化合物やメチルアルミノキサン、メチルアルミノキサン誘導体などを挙げることができる。
【0053】
上記有機ニッケル化合物の具体例としては、例えば、ニッケルビスシクロオクタジエン、ニッケルビスオクトエートなどを挙げることができる。
【0054】
上記有機ホウ素化合物の具体例としては、例えば、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロ)ボロン、トリス(ペンタフルオロ)フェニルボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロン、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などを挙げることができる。
【0055】
上記の有機金属化合物のうち、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ニッケルビスシクロオクタジエンおよびメチルアルミノキサンが好ましく、特に好ましくはニッケルビスシクロオクタジエンである。
【0056】
シクロオレフィン系付加重合体には、各種の用途に適した特性を備えるものとするために、例えば機械的性質を向上させる目的で、例えばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、金属フレーク、ガラスビーズ、ミルドファイバー、カオリン、硫酸バリウム、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛ウイスカー、チタン酸カリウムウイスカーなどの充填材の1種または2種以上を混合することができる。
【0057】
本発明に用いるシクロオレフィン系付加重合体には、種々の添加剤を添加することができる。
添加剤としては酸化防止剤を添加することができ、この酸化防止剤としては、特に限定されるものではなく、種々の公知の酸化防止剤を用いることができるが、その具体例としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、3,9−ビス−[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキスピロ[5,5’]ウンデカン、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルフェニルメタン、2,2’−ジオキシ−3,3’−t−ブチル−5,5’−ジエチルフェニルメタン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどのフェノール系酸化防止剤;ヒドロキノン系酸化防止剤;
【0058】
または例えばトリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤を挙げることができ、これらの酸化防止剤の1種または2種以上を添加することができる。
【0059】
以上において、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよびトリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを特に好ましく用いることができる。
これにより、シクロオレフィン系付加重合体の熱安定性および酸化安定性を向上させることができ、例えば溶融押出法による成形に伴う熱劣化を効果的に抑制することができる。
【0060】
酸化防止剤は、シクロオレフィン系付加重合体100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部添加されることが好ましく、酸化防止剤の添加量が過少である場合には、溶融押出法による成形時における熱安定性付与の効果が不十分であり、一方、当該添加量が過多である場合には、成形体表面におけるブリードアウトにより外観や光学特性の低下を招く可能性がある。
【0061】
他の添加剤の具体例としては、例えば紫外線吸収剤、離型剤、難燃剤、抗菌剤、木粉、カップリング剤、石油樹脂、可塑剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、シリコーンオイル、発泡剤などの公知の添加剤を挙げることができ、これらは適宜配合することができる。
【0062】
紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3" ,4" ,5" ,6" −テトラヒドロフタルイミドメチル)5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノンを挙げることができる。
【0063】
以上の添加剤としては、重量減少温度が高く、かつ、蒸気圧が低いものを用いることが好ましく、例えば、酸化防止剤および紫外線吸収剤としては、5%重量減少温度が300℃以上、特に特に好ましくは330℃以上であるものを用いるが好ましく、かつ、常温常圧環境における蒸気圧が3×10-7Pa以下、特に好ましくは3×10-9Pa以下であるものを用いることが特に好ましい。
以上のような条件を備えた添加剤を用いることにより、溶融押出機によりシクロオレフィン系付加重合体を溶融し、適当なダイから押出す際においても、当該添加剤が分解および揮発することが抑制され、ダイライン、フィッシュアイなどの発生を確実に防止することができる。
【0064】
シクロオレフィン系付加重合体に添加される添加剤の量あるいは割合は、得られる材料の目的あるいは用途に応じた範囲とされる。例えばシクロオレフィン系付加重合体における透明性は、一般に、添加剤の添加によって低下するが、例えば光学材料として用いられる成形体においては、通常、波長領域400〜830nmの光に対する光線透過率が80%以上、好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上の透明性を有するものであることが好ましい。
【0065】
また、添加剤は、シクロオレフィン系付加重合体の電気的特性にも影響を与える。例えば、電気絶縁材料として用いられるシクロオレフィン系付加重合体では、体積固有抵抗値が1016Ωcm以上、特に5×1016Ωcm以上であること、誘電率が102 Hz、106 Hz、および109 Hzの各周波数のいずれにおいても3以下、特に2.5以下であること、また重合体の誘電正接が102 Hz、106 Hz、および109 Hzの各周波数のいずれにおいても10-3以下、特に7×10-4以下であることが好ましい。
【0066】
以上において、本発明の溶融押出成形体を形成する樹脂材料を構成するシクロオレフィン系付加重合体においては、その内部に、ゲルがほとんど存在しないこと、或いは、ゲルが実質上存在しないことが好ましい。
シクロオレフィン系付加重合体の内部にゲルがほとんど、または実質上存在しないことにより、例えばその表面に点状欠陥がないフィルム、シートなどを製造することができ、特に、高い表面精度を有する光学フィルムまたは光学シートを製造することができ、また、例えば光の散乱が抑制された導光板または光ファイバーを製造することができ、特に、十分な光学特性を有する光ファイバーまたは導光板を製造することができる。
【0067】
そして、光学用途に用いる成形体を製造する場合には、シクロオレフィン系付加重合体の1g中に含まれるゲルの数が、例えば30個以下であることが好ましく、特に20個以下であることが好ましく、更に10個以下であることが好ましい。
ここで、シクロオレフィン系付加重合体中に含まれるゲルの数の測定法を下記に示す。
【0068】
<シクロオレフィン系付加重合体中のゲルの測定>
予め孔径が0.1μmのメンブランフィルターを用いて濾過を行い、0.1μm以上の異物を完全に除去した、溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)中に、シクロオレフィン系付加重合体1gを溶解して重合体溶液を調製し、この重合体溶液を孔径が0.5μmのメンブランフィルターを用いて吸引濾過する。
そして、重合体溶液を濾過した前記孔径が0.5μmメンブランフィルターを過熱炉中で加熱し、これにより当該メンブランフィルター上に残留した、茶色のゲルを実体顕微鏡で観察し、目視にて、その長軸が10μm以上の大きさのゲルのみをカウントする。
【0069】
また、本発明の溶融押出成形体を形成する樹脂材料を構成するシクロオレフィン系付加重合体においては、その内部に、異物がほとんど存在しないこと、或いは、異物が実質上存在しないことが好ましい。
シクロオレフィン系付加重合体の内部に異物がほとんど、または実質上存在しないことにより、例えばその表面に点状欠陥がないフィルム、シートなどを製造することができ、特に、高い表面精度を有する光学フィルムまたは光学シートを製造することができ、また、例えば光の散乱が抑制された導光板または光ファイバーを製造することができ、特に、十分な光学特性を有する光ファイバーまたは導光板を製造することができる。
【0070】
そして、光学用途に用いる成形体を製造する場合には、シクロオレフィン系付加重合体中に、長軸が50μm以上である異物が全く存在しないことが好ましく、さらに、長軸が20μm以上の異物が全く存在しないことが好ましく、特に長軸が10μm以上の異物が全く存在しないことが好ましい。
シクロオレフィン系付加重合体中に含まれる異物の数の測定法は下記のとおりである。
【0071】
<シクロオレフィン系付加重合体中の異物の測定>
予め孔径が0.1μmのメンブランフィルターを用いて濾過を行い、0.1μm以上の異物を完全に除去した、溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)中に、シクロオレフィン系付加重合体10gを溶解して重合体溶液を調製し、この重合体溶液を、パーティクルカウンター(光散乱法)を利用して、長軸がそれぞれ10μm以上、20μm以上、50μm以上である異物の個数をカウントする。
【0072】
以上において、シクロオレフィン系付加重合体は、公知の他の重合体と共に樹脂組成物を構成するものであってもよく、この樹脂組成物を樹脂材料としてもよい。ここで他の重合体としては、スチレン系樹脂、スチレン系エラストマー、α−オレフィン樹脂、α−オレフィンエラストマー、アクリル系樹脂、アクリル系エラストマー、特開平9−221577などで開示している炭化水素樹脂、ポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。
【0073】
本発明において、樹脂材料とされるシクロオレフィン系付加重合体が、少なくとも1種の極性基を含有するものであることにより、当該樹脂材料から得られる溶融押出成形体は、反射防止または表面硬度を高めるためのコーティング処理、他成形体との接着などの二次加工などに対する好ましい加工性を備えたものとなる。
【0074】
<シクロオレフィン系付加重合体の溶融押出成形>
溶融押出法を利用した溶融押出成形体の製造においては、種々の公知の溶融押出機を用いることができ、このような溶融押出機としては、通常、単軸式押出機、二軸式押出機、または衛星式多軸押出機を挙げることができる。
【0075】
これらの種々の溶融押出機においては、例えば押出機シリンダーに、溶融押出し中に発生する揮発成分を除去するためのベント機能が備えられたもの、また、目的とする成形体の種類などに応じて、溶融押出機からの吐出量を安定化するためのギアポンプが備えられたもの、および/または樹脂材料中の異物、溶融押出中に生成される焼け・ゲルなどを除去するための、例えばキャンドル型、ディスク型のフィルターが備えられたものなどを適宜利用することができる。ここで、目的とする成形体が光学部品である場合には、当該フィルターとして、濾過精度が3〜100μm、好ましくは5〜50μm、特に好ましくは5〜30μmのものを用いることができる。
【0076】
これら種々の溶融押出機において、その構成部品の材質は特に制限されるものではないが、例えばシリンダー、スクリュー、ダイスなどの材質としては、例えばSCM系の鋼鉄、SUSなどのステンレス材などを挙げることができる。
また、押出機シリンダーの内面ならびに押出機スクリュー表面、ダイス内面、ダイスリップ部においては、例えばクロム、ニッケル、チタンなどのメッキ処理、PVD(Physical Vapor Deposition)法などによる、例えばTiN、TiCN、CrN、DLC(ダイアモンド状カーボン)などの被膜形成処理、タングステンカーバイトまたはその他のセラミックによる溶射処理、窒化処理などが施されていることが好ましい。以上のような表面処理を施すことにより、押し出される重合体との摩擦係数を小さく制御することができると共に、重合体の均一な溶融状態を得ることができ、しかも、当該樹脂材料の焼け・ゲルの発生を防止することができる。
【0077】
ここで、溶融押出法において成形加工を行う成形条件としては、用いられる溶融押出機の種類、目的とされる成形体の形状などに応じて異なるが、例えば樹脂温度(押出機シリンダー温度)が200〜450℃、好ましくは240〜350℃とされ、溶融押出時のせん断速度が1〜500(1/Sec.)、好ましくは2〜350(1/Sec.)、より好ましくは5〜200(1/Sec.)とされる。
【0078】
以上において、樹脂温度が200℃未満である場合には樹脂材料を均一に溶融させることができず、一方、樹脂温度が450℃を超える場合には、溶融時において樹脂材料に熱劣化が生じ、当該樹脂材料の色相が悪化、焼け・ゲルなどが発生することとなり、高品質な成形体の製造が困難となる。
【0079】
また、押出時のせん断速度が1(1/Sec.)未満である場合には、樹脂材料を均一に溶融させることができず、従って、当該樹脂材料を安定して押出すことが困難となり、一方、せん断速度が500(1/Sec.)を超える場合には、せん断力が過大となるために樹脂材料および添加物が分解・劣化し、得られる成形体の表面において発泡、ダイラインの形成、異物の付着等の欠陥が生じてしまう。
【0080】
以上の種々の溶融押出機を用いて溶融押出による成形を行う際には、樹脂材料を構成するシクロオレフィン系付加重合体中に含まれている水分、溶存する例えば酸素などのガス、残溶剤などの揮発成分などを除去し、得られる成形体における色相の悪化、ゲル・焼けによる点状欠陥の発生などを一層確実に抑制するために、当該樹脂材料を押出機に投入する前に、予め、適宜の温度、例えば当該樹脂材料を構成するシクロオレフィン系付加重合体のガラス転移温度以下の温度で乾燥処理を行うことが好ましい。
【0081】
樹脂材料の乾燥処理においては、種々の公知の乾燥機を利用することができ、例えば熱風乾燥機、除湿乾燥機、真空乾燥機、流動層乾燥機、不活性ガス循環式乾燥機などを好適に利用することができる。以上において、真空乾燥機または種々の窒素循環式乾燥機を好ましく利用することができ、これにより、シクロオレフィン系付加重合体中の揮発成分、溶存ガスを高い効率で除去することが可能であり、得られる成形体における色相の悪化、ゲル・焼けによる点状欠陥の発生などを効果的に抑制することができる。
このような乾燥処理は、通常、(シクロオレフィン系付加重合体のTg−80)℃〜(シクロオレフィン系付加重合体のTg−10)℃の温度範囲で、1時間〜10時間程度行なわれる。
以上のシクロオレフィン系付加重合体よりなる樹脂材料は、溶融押出機における種々の形状のダイから押出されることにより、所望の形状を有する成形体に成形される。
【0082】
<シート状成形体またはフィルム状成形体>
シート状または、フィルム状の成形体は、溶融押出機に備えつけられるダイとしてフラットダイを用い、このフラットダイより押出されたものを、冷却ロールよりなる冷却機構に導き、その後密着固化させることにより成形、製造することができる。
フラットダイとしては、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、コートハンガーダイなどを挙げることができるが、これらの中では、コートハンガーダイ、マニホールドダイを用いることが好ましい。
【0083】
冷却ロールは、例えば押出機シリンダー、ダイスの内表面と同様に、適宜の表面処理が施されていることが好ましい。これにより、押出された溶融状態の樹脂材料が冷却ロールへ密着することが防止されることにより成形体における厚み斑の発生が抑制され、冷却ロールにおける表面精度が高いものとなり、しかも、冷却ロールの表面硬度が高いものとなることにより耐傷性が向上する。その結果、優れた品質を有するシート状成形体またはフィルム状成形体を、高い効率で製造することができる。
【0084】
密着固化させる手段としては、例えばニップロール方式、静電印加方式、エアーナイフ方式、バキュームチャンバー方式、カレンダー方式などを挙げることができ、シート状成形体またはフィルム状成形体において要求される厚さ、およびその用途などに応じて適宜の機構のものを選択することができる。
【0085】
シート状成形体またはフィルム状成形体は、特に限定されるものではないが、例えばその厚みが0.01〜5mmであることが好ましく、特に0.03mm〜3mmであることが好ましく、更に、0.03〜2mmものであることが好ましい。
シート状成形体またはフィルム状成形体の厚さが5mmを超える場合には、均一な幅を有するシート状成形体またはフィルム状成形体を押出し、成形することが困難になる場合がある。一方、シート状成形体またはフィルム状成形体の厚みが0.01mm未満である場合には、シート状成形体またはフィルム状成形体において強靭性が不足することとなり、製造時あるいは後加工を施す際に破断などの問題が生じやすくなる場合がある。
【0086】
本発明で得られる溶融押出シート状成形体またはフィルム状成形体は、従来知られている開環重合体によるものと同等に好ましい光学特性を備えると共に、更に、高い透明性、優れた耐熱性、および種々の基体物質材料に対する高い密着性を備えるものであり、しかも、これら種々の特性の経時的耐久性が高く、例えば低吸湿性で耐候性に優れたものであるという特徴を有し、光学用途、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、拡散フィルム、液晶基板、PDP前面板、EL基板、タッチパネル基板、偏光フィルム、反射防止フィルム、電子ペーパー基板などのディスプレイ用途、光記録媒体であるディスク用フィルム、バックライトもしくはフロントライト用の導光板などとして利用することができる。
【0087】
更に、当該シート状成形体またはフィルム状成形体は、優れた電気絶縁性を示すものであるため、硬質プリント基板、フレキシブルプリント基板、多層プリント配線板などの回路基板材料として好適に用いることができ、特に、高周波特性が要求される衛星通信機器用などの高周波回路基板、透明導電性フィルムの基板として好適に用いることができる。
【0088】
<ファイバー状成形体>
また、上記溶融押出機において、適宜の形状を有するダイを選択して用いることにより、ファイバー状成形体を製造することができ、このようなファイバー状成形体は、光ファイバーとして用いることができる。
この光ファイバーは、例えば自動車のエンジンルームのような、高温雰囲気下においても使用することができ、樹脂材料が耐候性に優れたものであることから、長期間にわたり安定して信号を伝送することが可能である。
【0089】
<その他の溶融押出成形体>
更に、上記溶融押出機において、適宜の形状を有するダイを選択して用いることにより、棒状成形体、チューブ状成形体など種々の形状の成形体を得ることができる。
このような成形体としては、例えば優れた電気絶縁性を活かして、電線およびケーブル用被覆材料、電子機器、複写機、コンピューター、プリンターなどのOA機器、計器類、テレビおよびビデオカメラなどのボディー材料、パラボラアンテナ、フラットアンテナ、レーダーなどを格納するドームの構造部材材料などの絶縁成形体を得ることができる。
【0090】
本発明の溶融押出成形体の表面には、例えば、無機化合物、シランカップリング剤などの有機シリコーン化合物、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂などからなるハードコート層を形成することができる。これによって、成形体または製品の耐熱性、光学特性、耐薬品性、耐摩耗性および透湿性など種々の特性を向上させることが可能となる。
【0091】
また、成形体の表面には、前記ハードコートによる表面加工の他、種々の二次加工を行うことが可能である。このような二次加工の例としては、反射防止加工、接着加工、熱融着加工、超音波融着加工、電磁融着加工、コロナ放電加工、切削、表面パターン圧着、表面切削、塗装、パターン印刷などを挙げることができる。
【0092】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「 重量%」 を示す。
【0093】
<重合例1>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン2600gと、一般式(2)においてA1 がアントラセニル基、A2 がフェニル基、Lがトリフェニルホスフィン残基、Xが−CH(CH3 )2 、Yが酸素原子、Mがニッケルである遷移金属錯体化合物0.0375モルと、ニッケルビスシクロオクタジエン0.075モルとを、内部雰囲気がエチレンガスにより置換され、乾燥トルエン5Lが充填された反応容器に仕込み、当該反応容器の系内を10℃に維持すると共に、エチレンガスを1L/minで循環させた状態において、3時間付加重合反応処理を行った。
【0094】
その結果、重合平均分子量が73.5×103 、Mw/Mnの値が1.6のシクロオレフィン系付加重合体(以下、「樹脂(a)」という。)1800gが得られた。この反応における特定のシクロ単量体の重合転化率は65%であった。なお、示差走査熱量測定法(DSC)を利用してガラス転移温度(Tg)を測定したところ、155℃であった。
【0095】
<重合例2>
乾燥トルエン10Lを反応容器に充填し、当該反応容器の系内にエチレンガスを1.5L/minで循環させたこと以外は重合例1と同様に付加重合反応処理を行った。
【0096】
その結果、重合平均分子量が10.5×104 、Mw/Mnの値が2.0のシクロオレフィン系付加重合体(以下、「樹脂(b)」という。)2200gが得られた。この反応における特定のシクロ単量体の重合転化率は65%であった。なお、示差走査熱量測定法(DSC)を利用してガラス転移温度(Tg)を測定したところ、130℃であった。
【0097】
<重合例3>
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン225部と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン25部と、1−ヘキセン52部と、トルエン750部とを、窒素置換した反応容器内に仕込んで単量体溶液を形成し、この単量体溶液を60℃に加熱した。
【0098】
次いで、当該単量体溶液に、濃度が1.5モル/Lであるトリメチルアルミニウムのトルエン溶液0.62部と、t−ブタノール:メタノール:タングステンの比率が0.35モル /0.3モル /1モルである、濃度が0.05モル/Lのt−ブタノール/メタノールで変性した六塩化タングステンのトルエン溶液3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は98%であった。
【0099】
このようにして得られた開環重合体溶液4000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6 H5 )3 ]3 0.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2 、反応温度165℃の条件下で3時間加熱攪拌することにより水素添加反応を行った。
【0100】
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧し、多量のメタノール中で凝固させた後、乾燥させて比較用の水素添加共重合体(以下、「樹脂(c)」という。)を得た。
このようにして得られた水素添加共重合体について、 1H−NMRを用いて水素添加率を測定したところ、99.9%であった。また、示差走査熱量測定法(DSC)を利用してガラス転移温度(Tg)を測定したところ、141℃であった。
【0101】
更に、比較用として、以下の一般的な光学用樹脂を用意した。
メタクリル樹脂:PMMA(以下、「樹脂(d)」という。);比重=1.19、Tg=108℃
ポリカーボネート樹脂:PC(以下、「樹脂(e)」という。);比重=1.20、Tg=146℃
ポリエステル樹脂:PET(以下、「樹脂(f)」という。);比重=1.39、Tg= 69℃
【0102】
(試験フィルムの溶融押出成形)
<実施例1>
樹脂(a)を真空乾燥機中において80℃で4時間乾燥させた後、先端に500mmTダイを装着した50mmφ押出機を用いて、押出機シリンダー設定温度を285〜305℃に設定し、せん断速度が32(1/Sec.)である条件で溶融押出してフィルム状に成形した。Tダイより溶融押出されたフィルムは、金属製のキャストドラムと、このキャストドラムにその周方向に沿って圧接する様に設けられた金属製の無端ベルトとの間を通過させることにより挟圧して、当該無端ベルトに圧着させてフィルム表面を高精度に加工した後、当該無端ベルトから剥離して、幅450mm、厚さ100μmのフィルムを製造した。ここで、冷却キャストドラムの温度は148℃に設定した。
【0103】
<実施例2>
樹脂(b)を用い、押出機シリンダー温度を260〜280℃、冷却キャストドラムの温度を123℃に設定した他は、実施例1と同様にして幅450mm、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0104】
<比較例1>
樹脂(c)を用い、押出機シリンダー温度を270〜290℃、冷却キャストドラムの温度を135℃に設定した他は、実施例1と同様にして幅450mm、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0105】
<比較例2>
樹脂(d)を用い、押出機シリンダー温度を240〜260℃、冷却キャストドラムの温度を100℃に設定した他は、実施例1と同様にして幅450mm、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0106】
<比較例3>
樹脂(e)を用い、押出機シリンダー温度を280〜300℃、冷却キャストドラムの温度を140℃に設定した他は、実施例1と同様にして幅450mm、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0107】
<比較例4>
樹脂(f)を用い、押出機シリンダー温度を230〜260℃、冷却キャストドラムの温度を65℃に設定した他は、実施例1と同様にして幅450mm、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0108】
実施例1、2および比較例1〜4のそれぞれの溶融押出フィルムについて、フィルムの表面性、全光線透過率および耐候性、他材料への密着性、耐熱性の評価を以下の手法により行った。
【0109】
<フィルムの表面性(点状欠陥の個数)>
溶融押出フィルムのTD方向の中央部を使用して、10cm角の試験用サンプルを5枚切り出した。各試験用サンプルを目視で観察してそれぞれ点状欠陥の個数をカウントし、その表面に存在する点状欠陥の個数の平均値を求めた。試験用サンプルの表面に存在する点状欠陥の個数(平均値)が2個以下のものを○、2〜5個のものを△、5個以上のものを×として評価した。
評価結果を下記表1に示す。
【0110】
<全光線透過率>
溶融押出フィルムのTD方向の中央部を、縦40mm×横80mmの大きさに切り取って試験用サンプルとした。HAZEメーター(スガ試験機株式会社)HGM−2DP型を使用して当該試験用サンプルの全光線透過率の測定を行った。1種の試験用サンプルについて測定は3回行い、その平均値を当該フィルムの全光線透過率とした。
評価結果を下記表1に示す。
【0111】
<耐候性>
溶融押出フィルムのTD方向の中央部を、縦40mm×横80mmの大きさに切り取って試験用サンプルとし、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)中において、ブラックパネル温度63℃、雨ナシの条件でそれぞれ500時間または1000時間保持させた。各試験用サンプルにおける全光線透過率、YI値変化を測定し、各試験用サンプルの暴露試験前後の値を比較して耐候性評価を行った。なお、YI値は多光源分光測色計MSC−5N(スガ試験機株式会社製)を使用して測定を行い、1枚の試験用サンプルについて測定は10回行い、平均値を当該フィルムのYI値とした。
【0112】
<フィルム耐候性総合評価>
上記、1000時間耐候性試験の結果から、以下の基準によってフィルム耐候性の総合評価を行った。
・○;全光線透過率の変化が−2%以下、かつ、YI値変化が+10.00以下のもの
・△;全光線透過率の変化が−5%以下、かつ、YI値変化が+15.00以下で、上記○の概念に入らないもの
・×;全光線透過率の変化が−5%以上またはYI値変化が+15.00以上のもの
評価結果を下記表1に示す。
【0113】
<耐熱性試験>
フィルムを5cm角に切り取って試験用サンプルとし、120℃に保持されたオーブン中に1000時間放置した。オーブン投入後の試験用サンプルの変形性を測定し、フィルムの耐熱変形性を評価した。試験用サンプルの収縮率が1%以下のものを○、1〜3%のものを△、3%を超えるものを×として評価を行った。
評価結果を下記表1に示す。
【0114】
<密着性試験>
密着性を評価する試験用サンプルとして、溶融押出フィルム上に反射防止膜を次に示す方法によって作製した。
150mm×10mm厚さ100μmのフィルム片の片面に10-4Torrの真空下で、140nmの膜厚でSiO2 を蒸着させ、さらにTiO2 を120nmの膜厚で、最外層にSiO2 を170nmで蒸着をそれぞれ行って試験用サンプルを得た。この試験用サンプルを85℃のギアオーブン中に300時間放置した後、反射防止膜側に1mm×1mmのマス目100個をカッターナイフで刻み、セロハンテープ剥離試験を行った。セロハンテープ剥離試験の結果を以下の評価基準に従って密着性の評価とした。
○;剥離された目の数が0のもの
△;剥離された目の数が1〜10個のもの
×;剥離された目の数が10個を超えるもの
評価結果を下記表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
以上において、実施例1および実施例2では、点状欠陥が少なく表面性に優れると共に、高い透過性を有するものであって、しかも優れた耐候性および、耐熱性を備えたフィルムを得ることができた。これに対し、比較例1〜4では点状欠陥が少ないフィルムが得られなかった。
更に、本発明のフィルムは他材料に対して優れた密着性を示し、二次加工性にも優れた材料であることがわかる。
以上の結果から、本発明の溶融押出成形体は従来の光学樹脂で製造された光学部品に対して優れた性質を示すことがわかる。
【0117】
【発明の効果】
本発明の成形体は、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンを含む単量体から得られるシクロオレフィン系付加重合体よりなる成形用樹脂材料を溶融押出法に供することにより製造されるため、当該溶融押出法においても当該成形用樹脂材料に熱劣化が生じることがなく、本来シクロオレフィン系付加重合体が有する優れた光学特性、密着性および耐熱性などが確実に得られるものである。
Claims (5)
- 8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンを付加重合反応させて得られるシクロオレフィン系重合体を成形用樹脂材料としてこれを溶融押出法により成形することによって製造されたものであることを特徴とする成形体。
- 成形用樹脂材料が、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンと、これと共重合可能な共重合性単量体とを付加重合反応させて得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
- シクロオレフィン系重合体を得るための単量体における8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]−3−ドデセンの割合が20重量%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形体。
- 成形用樹脂材料は、下記一般式(2)で表される遷移金属錯体化合物の存在下において付加重合反応が行われることにより得られるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の成形体。
A 1 およびA 2 は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、芳香族炭化水素基、炭化水素基で置換されたシリル基、アルコキシ基、アリロキシ基、エステル基、アミド基、アミノ基、スルホンアミド基、ニトリル基またはニトロ基を示し、これらのうちの2個以上の基が互いに連結して環を形成していてもよい。
Lは、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。
2つのXは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素原子含有基、窒素原子含有基、ホウ素原子含有基、硫黄原子含有基、リン原子含有基、ケイ素原子含有基、ゲルマニウム原子含有基またはスズ原子含有基を示し、これらのうちの2個以上の基が互いに連結して環を形成していてもよい。
Yは、酸素原子、硫黄原子または窒素原子からなるヘテロ原子であって、Yが酸素原子または硫黄原子であるときはA 3 は存在せず、Yが窒素原子であるときはA 3 が存在し、A 3 は、炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基または置換もしくは非置換の炭素原子数6〜20のアリール基を示す。〕 - 光学フィルムもしくは光学シート、または光ファイバーとして用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の成形体。
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